(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132171
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】車両構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
B62D25/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037343
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】濱岡 由典
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BA13
3D203BB06
3D203BB08
3D203BB12
3D203BB16
3D203BB20
3D203BB22
3D203CA23
3D203CA53
3D203CA57
3D203DB05
(57)【要約】
【課題】左右一対のフロントサイドメンバに一対の後広がり状傾斜部を設けた場合においても、簡易な構成によって車体強度を高くし、車両の前突時における耐荷重性を優れたものとすることが可能な車両構造を提供する。
【解決手段】車両構造Aは、左右一対のフロントサイドメンバ3の後広がり状傾斜部35の前端部35aどうしを橋渡し接続し、かつフロアトンネル部12および一対のリインフォース本体部13aを横切るようにして車幅方向に延びるクロスメンバ6を備えており、各トンネルリインフォース13の前側延設部13bおよびリインフォース本体部13aの前寄り領域、クロスメンバ6の車幅方向外端寄り領域6b、および各フロントサイドメンバ3の一部は、車両底面視において枠状をなし、かつ互いに直接または間接的に接合された枠状構造部Bとして構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部において、車幅方向に互いに間隔を隔てた配置で車両前後方向に延びている左右一対のフロントサイドメンバと、
これら一対のフロントサイドメンバの上側に配設され、かつフロアトンネル部を形成しているフロア部と、
前記一対のフロントサイドメンバよりも車幅方向内方側において、車幅方向に互いに間隔を隔てた配置で前記フロアトンネル部に沿うようにして車両前後方向に延びる一対のリインフォース本体部、およびこれら一対のリインフォース本体部の前部から車幅方向外方側に屈曲または湾曲して前記一対のフロントサイドメンバに接合されている一対の前側延設部を有している左右一対のトンネルリインフォースと、
を備えており、
前記一対のフロントサイドメンバのうち、前記一対の前側延設部との接合箇所よりも車両後方側の位置には、車両後方側ほど車幅方向外方側に位置する一対の後広がり状傾斜部が設けられている、車両構造であって、
前記一対の後広がり状傾斜部の前端部どうしを橋渡し接続し、かつ前記フロアトンネル部および前記一対のリインフォース本体部を横切るようにして車幅方向に延びるクロスメンバを、さらに備えており、
前記各トンネルリインフォースの前記前側延設部および前記リインフォース本体部の前寄り領域、前記クロスメンバの車幅方向外端寄り領域、および前記各フロントサイドメンバの一部は、車両底面視において枠状をなし、かつ互いに直接または間接的に接合された枠状構造部として構成されていることを特徴とする、車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両構造の一例として、特許文献1に記載のものがある。
同文献に記載の車両構造は、車両前部の骨格部材として、左右一対のフロントサイドメンバを備えている。これら一対のフロントサイドメンバは、車両の下部において、車幅方向に互いに間隔を隔てた配置とされて車両前後方向に延びている。
一方、車両のフロア部の車幅方向略中央部には、フロアトンネル部が設けられているが、このフロアトンネル部を補強するための手段として、トンネルリインフォース(インナトルクメンバ)が設けられている。このトンネルリインフォースは、フロアトンネル部の基部に沿って車両前後方向に延びるリインフォース本体部、およびこのリインフォース本体部の前部から車幅方向外方側に屈曲または湾曲してフロントサイドメンバに一端が接合された前側延設部が設けられている。この前側延設部は、いわゆるインナトルクボックスに相当し、この前側延設部の存在により、車体強度がさらに高められている。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、たとえば車両がハイブリッド自動車やバッテリ電気自動車である場合、比較的大きなサイズのバッテリをフロア部(フロントフロア部)上に搭載する手段がよく採用されている。この場合、一対のフロントサイドメンバが、バッテリよりも車幅方向外方側に配置されるようにすることが望ましい。そのための手段として、一対のフロントサイドメンバに、車両後方側ほど車幅方向外方側に位置するように平面視において傾斜した一対の後広がり状傾斜部を設け、かつこれら一対の後広がり状傾斜部を、バッテリの車幅方向外方側(左右両側)に配置させる手段がある。
ところが、このような手段を採用したのでは、フロントサイドメンバとトンネルリインフォースとを略同一間隔で車両前後方向に延びた構成とすることができず、後広がり状傾斜部とトンネルリインフォースとの車幅方向の相互間隔が大きくなる。また、後広がり状傾斜部の前端部は、平面視において屈曲しており、剛性断点となっているため、フロントサイドメンバに対して車両前方側から大きな荷重入力があった際には、前記前端部を起点としてフロントサイドメンバが屈曲変形を生じ易くなる。このようなことから、車体強度が低下する虞がある。
さらに、フロアトンネル部、およびトンネルリインフォースは、バッテリの搭載箇所よりも車両前方側にしか設けることができないこととなるため、小サイズ化する。その結果、車体強度は一層低下することとなる。これでは車両の前突が発生した際の耐荷重性(耐衝撃性)が悪化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、左右一対のフロントサイドメンバに一対の後広がり状傾斜部を設けた場合においても、簡易な構成によって車体強度を高くし、車両の前突時における耐荷重性を優れたものとすることが可能な車両構
造を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される車両構造は、車両前部において、車幅方向に互いに間隔を隔てた配置で車両前後方向に延びている左右一対のフロントサイドメンバと、これら一対のフロントサイドメンバの上側に配設され、かつフロアトンネル部を形成しているフロア部と、前記一対のフロントサイドメンバよりも車幅方向内方側において、車幅方向に互いに間隔を隔てた配置で前記フロアトンネル部に沿うようにして車両前後方向に延びる一対のリインフォース本体部、およびこれら一対のリインフォース本体部の前部から車幅方向外方側に屈曲または湾曲して前記一対のフロントサイドメンバに接合されている一対の前側延設部を有している左右一対のトンネルリインフォースと、を備えており、前記一対のフロントサイドメンバのうち、前記一対の前側延設部との接合箇所よりも車両後方側の位置には、車両後方側ほど車幅方向外方側に位置する一対の後広がり状傾斜部が設けられている、車両構造であって、前記一対の後広がり状傾斜部の前端部どうしを橋渡し接続し、かつ前記フロアトンネル部および前記一対のリインフォース本体部を横切るようにして車幅方向に延びるクロスメンバを、さらに備えており、前記各トンネルリインフォースの前記前側延設部および前記リインフォース本体部の前寄り領域、前記クロスメンバの車幅方向外端寄り領域、および前記各フロントサイドメンバの一部は、車両底面視において枠状をなし、かつ互いに直接または間接的に接合された枠状構造部として構成されていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
一対のフロントサイドメンバの後広がり状傾斜部の車両前方側に隣接した箇所には、枠状構造部が設けられているが、この枠状構造部は、各トンネルリインフォースの前側延設部、リインフォース本体部の前寄り領域、所定のクロスメンバの車幅方向外端寄り領域、および各フロントサイドメンバの一部を利用して構成された高剛性の部位である。このため、車両の前突が発生し、車両前方側から衝突荷重が入力した場合には、この衝突荷重を前記した枠状構造部の位置で的確に受け止めることができ、それよりも車両後方側の領域(フロントサイドメンバの後広がり状傾斜部など)への荷重入力を抑制することが可能である。また、一対の後広がり状傾斜部の前端部どうしは、クロスメンバによって橋渡し接続されているため、フロントサイドメンバが前記前端部を起点として、容易に、かつ大きく屈曲変形することも適切に抑制される。
このようなことから、車両の前突が発生した場合の耐荷重性(耐衝撃性)を良好とし、フロントサイドメンバの後広がり状傾斜部が設けられた箇所やその周辺部に大きな変形を生じないようにすることが可能となる。本発明は、フロア部上に、たとえばバッテリなどの蓄電装置を搭載する場合において、この蓄電装置への衝突荷重入力を阻止し、蓄電装置の保護を図るような場合に最適である。
また、本発明においては、フロントサイドメンバの補強手段として、クロスメンバを用いているが、このクロスメンバは、フロアトンネル部およびトンネルリインフォースのリインフォース本体部を横切るようにして車幅方向に延びているため、フロアトンネル部も効果的に補強される。したがって、車両の耐荷重性をより優れたものとすることができる。
【0010】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る車両構造の一例を示す要部側面断面図である。
【
図4】
図3に示す車両構造からサスペンションメンバを取り外した状態の要部概略底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0013】
図1~
図7に示す車両構造Aは、車両1の前部の骨格部材としての左右一対のフロントサイドメンバ3(
図3および
図4では、網点模様部分)、前輪19を懸架するフロントサスペンションの構成要素としてのサスペンションメンバ4、フロアトンネル部12が形成されたフロア部11、左右一対のトンネルリインフォース13(
図4では、薄墨部分)、クロスメンバ6、追加のクロスメンバ7A,7B、およびバッテリ8を備えている。また、左右一対の枠状構造部Bも備えている。
なお、追加のクロスメンバ7A,7Bは、本願請求項1におけるクロスメンバには相当しない。
【0014】
一対のフロントサイドメンバ3は、車両1の前部の下部において、車幅方向に互いに間隔を隔てた配置で車両前後方向に延びている。
図5および
図6に示すように、各フロントサイドメンバ3は、たとえば断面ハット状の部材を用いて構成されており、車両1のフロア部11が設けられている箇所においては、このフロア部11の下面部に溶接されている。フロア部11の上面側には、
図5および
図6の仮想線で示すようにアッパメンバ90を設け、フロントサイドメンバ3が設けられた箇所の補強を図った構成とすることもできる。このアッパメンバ90は、フロア部11を挟んでフロントサイドメンバ3上に重なり、かつ溶接されている。
なお、本実施形態においては、前記したフロントサイドメンバ3と同様に、アッパメンバ90、クロスメンバ6、および追加のクロスメンバ7A,7Bは、いずれも断面ハット状の部材を用いて構成されている。ただし、本発明はこれに限定されない。
【0015】
図1に示すように、各フロントサイドメンバ3は、フロア部11の前部から車両前方側に延びた前上がり傾斜部30を有しており、この前上がり傾斜部30の車両前方側および車両後方側の領域は、略水平な領域とされている。
サスペンションメンバ4は、前輪19を支持するロアアーム40の基端部を回転可能に支持する部材であり、フロントサイドメンバ3の前上がり傾斜部30の下方に配され、前側および後側の取付け部9A,9Bを利用してフロントサイドメンバ3に取付けられている。
【0016】
図2および
図3に示すように、車両平面視(車両底面視も含み、以下同様)において、一対のフロントサイドメンバ3は、一対のフロント部32、内入り傾斜部33、幅狭部34、後広がり状傾斜部35、および後側延設部36がこれらの順序で一連に繋がった構成である。
一対のフロント部32は、エンジンなどのパワープラント2が配されたエンジンルーム10の両側に位置して車両前後方向に略直線状に延びている。一対の内入り傾斜部33は、サスペンションメンバ4の取付け箇所周辺部に位置しており、車両後方側ほど車幅方向相互間隔が狭くなるように車両平面視において傾斜している。一対の幅狭部34は、一対のフロントサイドメンバ3の他の部分と比較して、車幅方向の相互間隔が最も狭くされた
部分である。
【0017】
一対の後広がり状傾斜部35は、車両後方側ほど車幅方向相互間隔が広くなるように車両平面視において傾斜した部分である。これら一対の後広がり状傾斜部35が設けられていることにより、これらの後端に繋がっている後側延設部36は、バッテリ8よりも車幅方向外方側に位置し、後側延設部36およびバッテリ8の両者が互いに干渉しないように設定されている。
【0018】
フロア部11は、ダッシュパネル11aの後端部と、フロントフロアパネル11bの前端部とが接合部17を介して接合された構成である。この接合は、たとえばスポット溶接により図られている。フロア部11の車幅方向両端部は、左右一対のロッカ15に接合(溶接)されている。
【0019】
バッテリ8は、フロア部11上のうち、たとえば車両用シート(不図示)の下方スペースに相当する領域に搭載されている。
図7によく表われているように、フロア部11には、適当な寸法で下方に窪んだ凹部18が設けられ、この凹部18上にバッテリ8が搭載されている。凹部18の底壁部18aの下面側には、底壁部18aを覆い、バッテリ8を保護するための保護カバー部材5(フロア用リインフォース)が接合されている。
追加のクロスメンバ7A,7Bは、バッテリ8の搭載箇所の強度を高め、バッテリ8の保護に役立つ部材であり、
図2によく表われているように、バッテリ8を車両前後方向において挟むように位置して車幅方向に延び、かつ左右一対のロッカ15の相互間に橋渡し接続されている。
【0020】
フロアトンネル部12は、フロア部11の前寄り領域の車幅方向中央部に設けられており、フロア部11の周辺部よりも上方に突出し、かつダッシュパネル11aから車両後方側に延びた下部開口および前部開口のトンネル状である。このフロアトンネル部12は、バッテリ8よりも車両前方側の領域に設けられている。
【0021】
図3および
図4によく表われているように、一対のトンネルリインフォース13は、一対のフロントサイドメンバ3よりも車幅方向内方側に位置し、フロアトンネル部12およびその周辺部を補強するための部材であり、リインフォース本体部13a、および前側延設部13bを含んでいる。
リインフォース本体部13aは、フロアトンネル部12の基部下面側に溶接され(
図5も参照)、かつ車両前後方向に略直線状に延びている。好ましくは、リインフォース本体部13aの後端部13a’は、フロア部11を介して追加のクロスメンバ7Aに接合されている。
前側延設部13bは、リインフォース本体部13aの前部から車幅方向外方に向けて屈曲または湾曲した部分であり、この前側延設部13bの先端部は、フロントサイドメンバ3の幅狭部34に接合されている。
【0022】
クロスメンバ6は、車幅方向に延び、一対のフロントサイドメンバ3どうしを橋渡し接続している。この点をより詳細に説明すると、各フロントサイドメンバ3の後広がり状傾斜部35の前端部35aは、それよりも前側の領域に対して車両平面視において屈曲した屈曲部となっている。これに対し、クロスメンバ6は、一対の前端部35aどうしを橋渡し接続し、かつフロアトンネル部12および一対のリインフォース本体部13aを横切るようにして車幅方向に延び、フロア部11の下面側に接合されている(
図6も参照)。
【0023】
一対の枠状構造部Bのそれぞれは、各トンネルリインフォース13の前側延設部13b、リインフォース本体部13aの前寄り領域、クロスメンバ6の車幅方向外端寄り領域6b、および各フロントサイドメンバ3の幅狭部34の計4箇所の部位が、車両平面視(車
両底面視)において略矩形の枠状をなし、かつ互いに接合された構造部である。
なお、前記4箇所の部位の接合は、これら各部が直接接触した状態で溶接などが施された直接的な接合態様と、たとえばそれらとは別の部材を介して互いに重なった配置とされた上で、それらに溶接などが施された間接的な接合態様とのいずれであってもよい(クロスメンバ6は、フロア部11の上面側に設けてもよいが、この場合には、クロスメンバ6は枠状構造部Bの他の構成部材に対し、フロア部11を介して間接的に接合される)。
枠状構造部Bは、サスペンションメンバ4の車両後方側に位置している。
枠状構造部Bの車幅方向外方側には、フロントサイドメンバ3とロッカ15との相互間を橋渡し接続するアウタトルクメンバ91が設けられている。
【0024】
本実施形態においては、
図4によく表われているように、枠状構造部Bの車両後方側に、一対の第1の後側枠状構造部C1、および第2の後側枠状構造部C2がさらに設けられている。
各第1の後側枠状構造部C1は、クロスメンバ6の車幅方向外端寄り領域6b、リインフォース本体部13aの後部寄り領域、フロントサイドメンバ3の後広がり状傾斜部35、および追加のクロスメンバ7Aの一部が、車両平面視(車両底面視)において枠状をなし、かつ互いに直接または間接的に接合された構造部である。後広がり状傾斜部35の後端部35bおよびリインフォース本体部13aの後端部13a’のそれぞれと、追加のクロスメンバ7Aとは、フロア部11を介して間接的に接合されている。
第2の後側枠状構造部C2は、クロスメンバ6の車幅方向中央寄り領域6a、一対のリインフォース本体部13aの後部寄り領域、および追加のクロスメンバ7Aの車幅方向中央寄りの一部が、車両平面視(車両底面視)において枠状をなし、かつ互いに直接または間接的に接合された構造部である。
【0025】
次に、前記した車両構造Aの作用について説明する。
【0026】
まず、フロントサイドメンバ3には、後広がり状傾斜部35が設けられているため、車両1の前突が発生し、その衝突荷重がフロントサイドメンバ3に対してその車両前方側から作用すると、
図4に示すように、前端部35aを起点として後広がり状傾斜部35を、たとえば車幅方向外方側に屈曲させようとする回転力Mが発生する。これに対し、前端部35aには、クロスメンバ6が連結されており、このクロスメンバ6は、回転力Mに対抗する力Fを発生させる。したがって、後広がり状傾斜部35が、回転力Mに起因して容易に、かつ大きく屈曲変形することは適切に阻止される。
【0027】
また、車両1の前突が発生した場合には、たとえば衝突荷重に起因してサスペンションメンバ4が後退し、フロア部11の前部に突入する虞がある。これに対し、フロア部11の前部に設けられた一対の枠状構造部Bは、高剛性の部位であるため、サスペンションメンバ4の突入などの荷重入力を適切に受け止め、フロア部11が大きく変形、破損しないようにすることが可能である。枠状構造部Bにおいては、クロスメンバ6の存在により、トンネルリインフォース13とフロントサイドメンバ3との連結強度が高められているため、たとえばトンネルリインフォース13のみが荷重入力によって車両後方側に大きく押し込まれることをなくすことが可能である。フロントサイドメンバ3による荷重伝達性を良好にする作用も得られる。
【0028】
本実施形態においては、枠状構造部Bに加え、既述した一対の第1の後側枠状構造部C1、および第2の後側枠状構造部C2がさらに設けられているが、これらも枠状構造部Bと同様に高剛性の部位であり、車両前方側からの衝突荷重を効果的に受け止める役割を果たす。
このようなことから、車両前部の耐荷重性を良好なものとすることができる。バッテリ8に衝突荷重が強く作用することは適切に抑制され、バッテリ8の保護が適切に図られる
。
【0029】
本実施形態においては、フロア部11の前部を補強するための手段として、クロスメンバ6が用いられているが、このクロスメンバ6は、一対の後広がり状傾斜部35の前端部35aどうしを橋渡し接続し得る比較的小サイズのものでよい。また、本実施形態においては、フロア部11の前部の各部をかなりの肉厚に形成する必要もない。したがって、車両1の重量の増加や、製造コストの上昇を抑制することもできる。
【0030】
図8は、本発明の他の実施形態を示している。同図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付し、重複説明は省略する。
【0031】
図8に示す実施形態においては、クロスメンバ6が、フロアトンネル部12の断面形状に対応した屈曲状に形成された上で、フロアトンネル部12の内面部に接合されている。
このような構成によれば、クロスメンバ6によって、フロアトンネル部12自体をも補強することが可能となる。
本実施形態から理解されるように、本発明でいうクロスメンバは、車幅方向に真直状でなくてもよく、屈曲した形状とすることもできる。また、既述したとおり、クロスメンバは、フロア部の下面側に代えて、上面側に設けた構成とすることも可能である。
【0032】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る車両構造の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0033】
上述の実施形態においては、フロア部上にバッテリが搭載されている場合を一例として説明したが、フロア部上にバッテリとは別の蓄電装置(キャパシタなど)が搭載されている場合にも本発明を適用することができることは勿論のこと、フロア部11上に蓄電装置が搭載されているか否かには関係なく、本発明を適用することが可能である。
上述の実施形態においては、多くの部材が、断面ハット状部材を用いて構成されているが、本発明はこれに限定されず、それ以外の種々の形態の部材を用いることが可能である。
本発明の車両構造は、エンジン自動車に限らず、ハイブリッド車や電気自動車にも適用することができることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
A 車両構造
B 枠状構造部
1 車両
11 フロア部
12 フロアトンネル部
13 トンネルリインフォース
13a リインフォース本体部
13b 前側延設部
3 フロントサイドメンバ
35 後広がり状傾斜部
35a 前端部(後広がり状傾斜部の)
6 クロスメンバ