IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本カーバイド工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132197
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】粘着剤組成物及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20230914BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230914BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230914BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J7/38
B32B27/00 M
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037381
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 美南海
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
(72)【発明者】
【氏名】守山 史朗
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AB16
2H149BA02
2H149BA12
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA03W
2H149FA05X
2H149FA08X
2H149FA08Z
2H149FA12Z
2H149FA66
2H149FD22
2H149FD25
4F100AH03B
4F100AK02A
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AL05B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100CB05B
4F100EH46
4F100EJ86
4F100GB41
4F100JA07B
4F100JK06
4F100JL13B
4F100JN10A
4J004AA10
4J004AB01
4J004DB03
4J004FA08
4J040DF021
4J040EF302
4J040GA05
4J040GA07
4J040HD30
4J040HD36
4J040HD37
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA23
4J040LA01
4J040LA06
4J040LA08
4J040MA10
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】低透湿性の基材に対する密着性に優れ、かつ、高温環境下に置かれた場合に生じ得る基材の収縮、並びに、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る発泡及び剥がれを良好に抑制できる粘着剤層の形成が可能な粘着剤組成物、及び積層体の提供。
【解決手段】水酸基及びカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体と、1分子中の平均イソシアネート基数が2.5以上3.0以下の範囲であるトリレンジイソシアネート系化合物と、1分子中の平均イソシアネート基数が2.0以上2.5未満の範囲であるジフェニルメタンジイソシアネート系化合物と、を含み、上記トリレンジイソシアネート系化合物に対する上記ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物の含有質量比が、2以下である粘着剤組成物、及びその応用。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基及びカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体と、
1分子中の平均イソシアネート基数が2.5以上3.0以下の範囲であるトリレンジイソシアネート系化合物と、
1分子中の平均イソシアネート基数が2.0以上2.5未満の範囲であるジフェニルメタンジイソシアネート系化合物と、
を含み、
前記トリレンジイソシアネート系化合物に対する前記ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物の含有質量比が、2以下である粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系重合体が、水酸基を有する単量体に由来する構成単位及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含み、
前記(メタ)アクリル系重合体における前記水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の範囲であり、
前記(メタ)アクリル系重合体における前記カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して0.1質量%以上3.0質量%以下の範囲である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記トリレンジイソシアネート系化合物の含有量が、前記(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲であり、
前記ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物が、前記(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.01質量部以上1.0質量部以下の範囲である請求項1又は請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量が、40万以上250万以下の範囲である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
片面又は両面に、(メタ)アクリル系樹脂及びシクロオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む層を備えた偏光板と、
前記層上に設けられ、かつ、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、
を備える積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粘着剤組成物及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示装置は、2枚のガラス基板の間に液晶層が挟持された液晶セルと、液晶セルの両面に配置される偏光板とを備えている。液晶セルと偏光板との貼り合わせには、液晶表示装置の視認性を確保する観点から、(メタ)アクリル系の粘着剤組成物が多用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、偏光板等の光学部材用として好適な(メタ)アクリル系の粘着剤組成物として、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体と、ポリイソシアネート化合物のアダクト体であって、2官能性のアダクト体と3官能性以上のアダクト体との含有割合が、重量比で100:0ないし10:90である架橋剤を含むことを特徴とする粘着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-262103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、偏光板の基材には、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムが使用されてきたが、大気中の水分の吸着による偏光子の劣化を抑制する観点から、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)フィルム、シクロオレフィン樹脂(COP)フィルム等の低透湿性のフィルムが使用されつつある。偏光板の基材としてTACフィルムを使用する際には、基材表面のケン化処理によって、極性基が基材表面に存在するため、基材と粘着剤層との密着性は優れる。しかし、PMMA及びCOPは、分子構造に起因して極性が低く、また、極性基を有さないため、基材と粘着剤層との密着性は、TACの場合と比較して劣る。偏光板は、収縮率の異なる部材を積層して構成されており、温度の変化によって収縮しやすい。近年のディスプレイの大型化及び狭額縁化に伴い、偏光板に用いられる粘着剤組成物には、苛酷な環境下に置かれた場合に生じ得る偏光板の収縮をより良好に抑制可能な粘着剤層を形成できることが求められる傾向にある。しかし、基材と粘着剤層との密着性が悪いと、粘着剤層が偏光板の収縮に追従できないため、粘着剤層に偏光板の収縮による応力がかかり、液晶セルからの粘着剤層の剥がれが生じ得る。また、基材と粘着剤層との密着性が悪いと、粘着剤層が偏光板からのアウトガスを抑制できず、発泡が生じ得る。
【0006】
本開示は、上記のような状況に鑑みてなされたものである。
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、低透湿性の基材に対する密着性に優れ、かつ、高温環境下に置かれた場合に生じ得る基材の収縮、並びに、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る発泡及び剥がれを良好に抑制できる粘着剤層の形成が可能な粘着剤組成物を提供することにある。
本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、低透湿性の基材に対する密着性に優れ、かつ、高温環境下に置かれた場合に生じ得る基材の収縮、並びに、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る発泡及び剥がれを良好に抑制できる粘着剤層を備える積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 水酸基及びカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体と、1分子中の平均イソシアネート基数が2.5以上3.0以下の範囲であるトリレンジイソシアネート系化合物と、1分子中の平均イソシアネート基数が2.0以上2.5未満の範囲であるジフェニルメタンジイソシアネート系化合物と、を含み、上記トリレンジイソシアネート系化合物に対する上記ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物の含有質量比が、2以下である粘着剤組成物。
<2> 上記(メタ)アクリル系重合体が、水酸基を有する単量体に由来する構成単位及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含み、上記(メタ)アクリル系重合体における上記水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の範囲であり、上記(メタ)アクリル系重合体における上記カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して0.1質量%以上3.0質量%以下の範囲である<1>に記載の粘着剤組成物。
<3> 上記トリレンジイソシアネート系化合物の含有量が、上記(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲であり、上記ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物が、上記(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.01質量部以上1.0質量部以下の範囲である<1>又は<2>に記載の粘着剤組成物。
<4> 上記(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量が、40万以上250万以下の範囲である<1>~<3>のいずれか1つに記載の粘着剤組成物。
<5> 片面又は両面に、(メタ)アクリル系樹脂及びシクロオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む層を備えた偏光板と、上記層上に設けられ、かつ、<1>~<4>のいずれか1つに記載の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える積層体。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態によれば、低透湿性の基材に対する密着性に優れ、かつ、高温環境下に置かれた場合に生じ得る基材の収縮、並びに、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る発泡及び剥がれを良好に抑制できる粘着剤層の形成が可能な粘着剤組成物が提供される。
本開示の他の実施形態によれば、低透湿性の基材に対する密着性に優れ、かつ、高温環境下に置かれた場合に生じ得る基材の収縮、並びに、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る発泡及び剥がれを良好に抑制できる粘着剤層を備える積層体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の粘着剤組成物及び積層体について、詳細に説明する。以下に記載する要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0010】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0011】
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0012】
本開示において、粘着剤組成物中の各成分の量は、粘着剤組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、粘着剤組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
【0013】
本開示において、「(メタ)アクリル系単量体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体を意味する。
本開示において、「(メタ)アクリル系重合体」とは、(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位を含み、かつ、(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位の占める割合が50質量%以上である重合体を意味する。
【0014】
本開示において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド」及び「メタクリルアミド」の両方を包含する用語である。
【0015】
本開示において、「n-」はノルマルを意味し、「i-」はイソを意味し、「s-」はセカンダリーを意味し、「t-」はターシャリーを意味する。
【0016】
本開示において、「ポリマー」と「重合体」とは、同義である。
【0017】
[粘着剤組成物]
本開示の粘着剤組成物は、水酸基及びカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体と、1分子中の平均イソシアネート基数が2.5以上3.0以下の範囲であるトリレンジイソシアネート系化合物と、1分子中の平均イソシアネート基数が2.0以上2.5未満の範囲であるジフェニルメタンジイソシアネート系化合物と、を含み、上記トリレンジイソシアネート系化合物に対する上記ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物の含有質量比が、2以下である。
本開示の粘着剤組成物は、低透湿性の基材に対する密着性に優れ、かつ、高温環境下に置かれた場合に生じ得る基材の収縮、並びに、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る発泡及び剥がれを良好に抑制できる粘着剤層の形成が可能である。
【0018】
本開示の粘着剤組成物がこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。但し、以下の推測は、本開示の粘着剤組成物を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0019】
本開示の粘着剤組成物は、水酸基及びカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体を架橋する架橋剤として、1分子中の平均イソシアネート基数が2.5以上3.0以下の範囲であるトリレンジイソシアネート系化合物(以下、「3官能性のTDI系化合物」ともいう。)と、1分子中の平均イソシアネート基数が2.0以上2.5未満の範囲であるジフェニルメタンジイソシアネート系化合物(以下、「2官能性のMDI系化合物」ともいう。)と、を特定の割合で含む。
本開示の粘着剤組成物において、3官能性のTDI系化合物は、水酸基及びカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体との架橋反応により、三次元網目構造を形成する。3官能性のTDI系化合物による架橋は、(メタ)アクリル系重合体の分子鎖同士の絡み合いを強め、粘着剤層に高い凝集力を発現させる。この高い凝集力は、粘着剤層による基材の収縮抑制に寄与すると考えられる。
一方で、3官能性の架橋剤のみによる架橋では、架橋構造が三次元網目構造によって固定されるため、形成される粘着剤層は柔軟性に乏しく、基材への密着性は劣る。この点、本開示の粘着剤組成物では、3官能性のTDI系化合物に加えて、2官能性のMDI系化合物を使用するため、2官能性のMDI系化合物による二次元のネットワーク構造が形成され、粘着剤層の柔軟性が良化される。この柔軟性の良化により、低透湿性の基材に対する粘着剤層の密着性は優れると考えられる。
そして、本開示の粘着剤組成物では、3官能性のTDI系化合物と2官能性のMDI系化合物とを特定の割合で併用するため、形成される粘着剤層に対し、適度な柔軟性と適度に高い凝集力とがバランス良く付与されると考えられる。
また、2官能性のMDI系化合物による架橋は、MDI系化合物が芳香環を2つ有することで、適度に剛直な架橋となる。このため、形成される粘着剤層には、適度な弾性が付与される。また、2官能性のMDI系化合物による架橋では、芳香環による立体障害が生じるため、架橋部位で架橋構造の網目が広がる。このため、形成される粘着剤層には、適度な応力緩和性が付与される。本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、適度な弾性及び適度な応力緩和性を有するため、苛酷な環境下に置かれた場合に生じ得る基材の収縮、発泡及び剥がれを良好に抑制できると考えられる。
【0020】
ところで、形成される粘着剤層に柔軟性を付与する方法としては、例えば、2官能性の架橋剤であり、構造的に柔軟な脂肪族イソシアネート化合物であるヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)系化合物を使用することも考えられる。しかし、HMDI系化合物は、TDI系化合物及びMDI系化合物と比較して反応性が低い。また、イソシアネート基がメチレン基を介して芳香環に結合しているキシリレンジイソシアネート(XDI)系化合物もTDI系化合物及びMDI系化合物と比較して反応性が低い。理由としては、アルキレン基の誘起効果による電子供与性がイソシアネート基の分極を弱めることで、イソシアネート基の炭素における求核反応性が低下するためと考えられる。このため、HMDI系化合物及びXDI系化合物に代表される2官能性の架橋剤を、3官能性のTDI系化合物と併用すると、先に3官能性のTDI系化合物が素早く反応し、三次元網目構造のみの架橋構造が形成されてしまうため、その後に反応する2官能性の架橋剤であるHMDI系化合物及びXDI系化合物は、TDI系化合物が架橋した構造を補強することにとどまり、粘着剤層への柔軟性の付与には貢献しないと考えられる。
これに対し、本開示の粘着剤組成物では、3官能性のTDI系化合物と同程度の高い反応性を有する2官能性のMDI系化合物とを併用するため、3官能性のTDI系化合物と2官能性のMDI系化合物とが、水酸基及びカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体に対し、ほぼ同時に作用すると考えられる。これにより、2官能性のMDI系化合物による二次元の架橋を適度に進行させながら、3官能性のTDI系化合物による三次元網目構造の架橋構造を形成させることができるため、適度な柔軟性と適度に高い凝集力とを両立させた粘着剤層を形成できると考えられる。
【0021】
以上のことから、本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、低透湿性の基材に対する密着性に優れ、かつ、高温環境下に置かれた場合に生じ得る基材の収縮、並びに、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る発泡及び剥がれを良好に抑制できると推測される。
【0022】
本開示では、「水酸基及びカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体」を「特定(メタ)アクリル系重合体」ともいう。また、本開示では、「1分子中の平均イソシアネート基数が2.5以上3.0以下の範囲であるトリレンジイソシアネート系化合物」を「特定トリレンジイソシアネート系化合物」ともいう。また、本開示では、「1分子中の平均イソシアネート基数が2.0以上2.5未満の範囲であるジフェニルメタンジイソシアネート系化合物」を「特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物」ともいう。
【0023】
〔特定(メタ)アクリル系重合体〕
本開示の粘着剤組成物は、水酸基及びカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体〔即ち、特定(メタ)アクリル系重合体〕を含む。
特定(メタ)アクリル系重合体中の水酸基及びカルボキシ基は、後述の特定トリレンジイソシアネート系化合物及び特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物が有するイソシアネート基と架橋反応し得る。
本開示の粘着剤組成物は、特定(メタ)アクリル系重合体を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0024】
特定(メタ)アクリル系重合体は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。特定(メタ)アクリル系重合体が共重合体である場合、上記共重合体は、2種以上の(メタ)アクリル系単量体を共重合したものであってもよく、(メタ)アクリル系単量体と(メタ)アクリル系単量体以外の単量体とを共重合したものであってもよい。
特定(メタ)アクリル系重合体は、例えば、水酸基及びカルボキシ基のいずれも有しない(メタ)アクリル系重合体に、水酸基及びカルボキシ基を置換により導入したものであってもよく、水酸基を有し、かつ、カルボキシ基を有しない(メタ)アクリル系重合体に、カルボキシ基を置換により導入したものであってもよく、カルボキシ基を有し、かつ、水酸基を有しない(メタ)アクリル系重合体に、水酸基を置換により導入したものであってもよい。また、特定(メタ)アクリル系重合体は、例えば、水酸基を有する単量体と、カルボキシ基を有する単量体との共重合体であってもよい。
【0025】
特定(メタ)アクリル系重合体の好ましい態様は、特定(メタ)アクリル系重合体が、後述の水酸基を有する単量体に由来する構成単位及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含むことにより、水酸基及びカルボキシ基を有する態様である。
【0026】
<水酸基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。本開示において、「水酸基を有する単量体に由来する構成単位」とは、水酸基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0027】
水酸基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
水酸基を有する単量体としては、例えば、1分子中に少なくとも1つの水酸基とエチレン性不飽和基とを有する単量体が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、特に限定されず、例えば、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリルアミド基、及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0028】
水酸基を有する単量体の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
水酸基を有する単量体は、例えば、他の単量体との共重合性が良好である点において、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数が2~4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレートがより好ましい。
【0029】
特定(メタ)アクリル系重合体は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0030】
特定(メタ)アクリル系重合体が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体の全構成単位に対して、0.05質量%以上10.0質量%以下の範囲であることが好ましく、0.1質量%以上5.0質量%以下の範囲であることがより好ましく、0.1質量%以上3.0質量%以下の範囲であることが更に好ましく、0.2質量%以上1.0質量%以下の範囲であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体の全構成単位に対して0.05質量%以上であると、形成される粘着剤層は、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る発泡をより良好に抑制できる傾向を示す。
特定(メタ)アクリル系重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体の全構成単位に対して10.0質量%以下であると、形成される粘着剤層は、低透湿性の基材に対する密着性がより向上する傾向を示す。また、形成される粘着剤層は、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る剥がれをより良好に抑制できる傾向を示す。
【0031】
<カルボキシ基を有する単量体>
特定(メタ)アクリル系重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
本開示において「カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位」とは、カルボキシ基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0032】
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、1分子中に少なくとも1つのカルボキシ基とエチレン性不飽和基とを有する単量体が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、特に限定されず、例えば、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリルアミド基、及び(メタ)アクリロイル基が挙げられる。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0033】
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート〔例えば、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート〕、及びコハク酸誘導体(例えば、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸)が挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体であることが好ましい。カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、アクリル酸が好ましい。
【0034】
特定(メタ)アクリル系重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0035】
特定(メタ)アクリル系重合体がカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体の全構成単位に対して、0.05質量%以上5.0質量%以下の範囲であることが好ましく、0.1質量%以上3.0質量%以下の範囲であることがより好ましく、0.1質量%以上2.0質量%以下の範囲であることが更に好ましく、0.2質量%以上1.0質量%以下の範囲であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体の全構成単位に対して0.05質量%以上であると、形成される粘着剤層は、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る発泡をより良好に抑制できる傾向を示す。
特定(メタ)アクリル系重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体の全構成単位に対して5.0質量%以下であると、形成される粘着剤層は、低透湿性の基材に対する密着性がより向上する傾向を示す。また、形成される粘着剤層は、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る剥がれをより良好に抑制できる傾向を示す。
【0036】
特定(メタ)アクリル系重合体が水酸基を有する単量体に由来する構成単位及びカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率とカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率との組み合わせとしては、特定(メタ)アクリル系重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位に対して0.05質量%以上10.0質量%以下の範囲であり、特定(メタ)アクリル系重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位に対して0.05質量%以上5.0質量%以下の範囲である態様が好ましく、特定(メタ)アクリル系重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の範囲であり、特定(メタ)アクリル系重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位に対して0.1質量%以上3.0質量%以下の範囲である態様がより好ましく、特定(メタ)アクリル系重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位に対して0.1質量%以上3.0質量%以下の範囲であり、特定(メタ)アクリル系重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位に対して0.1質量%以上2.0質量%以下の範囲である態様が更に好ましく、特定(メタ)アクリル系重合体における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位に対して0.2質量%以上1.0質量%以下の範囲であり、特定(メタ)アクリル系重合体におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位に対して0.2質量%以上1.0質量%以下の範囲である態様が特に好ましい。
【0037】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。
本開示において、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。なお、本開示における「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体」には、カルボキシ基を有する単量体に該当する単量体、及び、水酸基を有する単量体に該当する単量体は包含されない。
【0038】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に限定されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、アクリル酸アルキルエステル単量体であってもよく、メタクリル酸アルキルエステル単量体であってもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が有するアルキル基は、無置換であってもよく、置換基(但し、カルボキシ基及び水酸基を除く。)を有していてもよいが、無置換であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が有するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が有するアルキル基の炭素数は、例えば、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましく、1~8であることが更に好ましく、1~4であることが特に好ましい。
【0039】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、n-ブチルアクリレート、メチルアクリレート、及びメチルメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0040】
特定(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0041】
特定(メタ)アクリル系重合体が(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体の全構成単位に対して、50.0質量%以上99.9質量%以下の範囲であることが好ましく、55.0質量%以上99.8質量%以下の範囲であることがより好ましく、60.0質量%以上99.8質量%以下の範囲であることが更に好ましく、65.0質量%以上99.8質量%以下の範囲であることが特に好ましい。
ここで、特定(メタ)アクリル系重合体における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系重合体の全構成単位に対して50.0質量%以上であることは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位が、特定(メタ)アクリル系重合体を構成する構成単位の主成分として含まれていることを意味する。
【0042】
<その他の構成単位>
特定(メタ)アクリル系重合体が含み得るその他の構成単位としては、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される芳香族環を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位;メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位;スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニルに由来する構成単位;アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニルに由来する構成単位;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルに由来する構成単位;等が挙げられる。
特定(メタ)アクリル系重合体がその他の構成単位を含む場合、その他の構成単位としては、芳香族環を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位が、白抜け抑制の観点から好ましい。
【0043】
特定(メタ)アクリル系重合体は、その他の構成単位を含む場合、その他の構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0044】
特定(メタ)アクリル系重合体がその他の構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系重合体におけるその他の構成単位の含有率は、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲において、適宜設定できる。
【0045】
-特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量-
特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう。)は、特に限定されないが、例えば、40万以上250万以下の範囲であることが好ましく、70万以上250万以下の範囲であることがより好ましく、100万以上250万以下の範囲であることが更に好ましく、120万以上250万以下の範囲であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量が40万以上であると、形成される粘着剤層は、高温環境下に置かれた場合に生じ得る基材の収縮、並びに、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る発泡をより良好に抑制できる傾向を示す。
特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、特定(メタ)アクリル系重合体の製造性の観点から、250万以下であることが好ましい。
【0046】
特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記の[1]~[3]に従って測定する。
[1]特定(メタ)アクリル系重合体の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定(メタ)アクリル系重合体を得る。
[2]上記(1)で得られたフィルム状の特定(メタ)アクリル系重合体とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、試料溶液に占める特定(メタ)アクリル系重合体の質量割合を意味する。
[3]下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として、特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量を求める。
【0047】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株)製〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)製〕
カラム:TSKgel GMHXL〔東ソー(株)製〕を4本使用
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料溶液の注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0048】
特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、単量体を重合させる際に、重合温度、重合時間、有機溶剤の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0049】
-特定(メタ)アクリル系重合体の含有率-
本開示の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系重合体は、特に限定されないが、例えば、粘着剤組成物中の全固形分量に対して、80.0質量%~99.9質量%であることが好ましく、85.0質量%~99.8質量%であることがより好ましく、90.0質量%~99.8質量%であることが更に好ましい。
【0050】
本開示において、「粘着剤組成物中の全固形分量」とは、粘着剤組成物が溶媒を含まない場合には、粘着剤組成物の全質量を意味し、粘着剤組成物が溶媒を含む場合には、粘着剤組成物から溶媒を除いた残渣の質量を意味する。
本開示において、「溶媒」とは、水及び有機溶剤を意味する。
【0051】
〔特定(メタ)アクリル系重合体の製造方法〕
特定(メタ)アクリル系重合体の製造方法は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系重合体は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、及び塊状重合法に代表される公知の重合方法で、既述の単量体を重合することにより製造できる。
重合方法としては、製造後に粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合法が好ましい。
【0052】
溶液重合法では、一般に、重合槽内に所定の有機溶剤、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、例えば、有機溶剤の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶剤、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。また、窒素気流中で反応させてもよい。
【0053】
重合反応時に用いられる有機溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素化合物、脂肪族系炭化水素化合物、脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、及びアルコール化合物が挙げられる。
重合反応時に用いられる有機溶剤としては、より具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素化合物、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪族系又は脂環族系炭化水素化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン化合物、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル化合物、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、及びt-ブチルアルコールに代表されるアルコール化合物が挙げられる。
【0054】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際しては、芳香族炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物等の重合反応中に連鎖移動を生じ難い有機溶剤の使用が好ましく、特に、特定(メタ)アクリル系重合体の溶解性、重合反応の容易さ等の観点から、酢酸エチルの使用が好ましい。
【0055】
重合反応時には、有機溶剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0056】
重合開始剤としては、例えば、通常の溶液重合法で用いられる有機過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ-i-プロピルペルオキシジカルボナート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカルボナート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、及び2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
アゾ化合物の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN〕、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN〕、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが挙げられる。
【0057】
重合反応時には、重合開始剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0058】
重合開始剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0059】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際しては、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、α-メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、及び9-フェニルフルオレンに代表される芳香族化合物、p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、及びp-ニトロトルエンに代表される芳香族ニトロ化合物、ベンゾキノン及び2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノンに代表されるベンゾキノン誘導体、トリブチルボランに代表されるボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、及び3-クロロ-1-プロペンに代表されるハロゲン化炭化水素化合物、クロラール及びフラルデヒドに代表されるアルデヒド化合物、炭素数1~18のアルキルメルカプタン化合物、チオフェノール及びトルエンメルカプタンに代表される芳香族メルカプタン化合物、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1~10のアルキルエステル化合物、炭素数1~12のヒドロキシアルキルメルカプタン化合物、並びに、ピネン及びターピノレンに代表されるテルペン化合物が挙げられる。
【0060】
特定(メタ)アクリル系重合体の製造に際し、連鎖移動剤を用いる場合、連鎖移動剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0061】
重合温度は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0062】
〔特定トリレンジイソシアネート系化合物〕
本開示の粘着剤組成物は、1分子中の平均イソシアネート基数が2.5以上3.0以下の範囲であるトリレンジイソシアネート系化合物〔即ち、特定トリレンジイソシアネート系化合物〕を含む。
本開示の粘着剤組成物は、特定トリレンジイソシアネート系化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0063】
特定トリレンジイソシアネート系化合物は、1分子中の平均イソシアネート基数が2.5以上3.0以下の範囲であり、2.7以上3.0以下の範囲であることが好ましい。
【0064】
本開示において、特定トリレンジイソシアネート系化合物の「1分子中の平均イソシアネート基数」は、下記の計算式により求められる値である。なお、下記の計算式における「特定トリレンジイソシアネート系化合物の数平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる。また、下記の計算式において、「イソシアネート基の濃度」とは、特定トリレンジイソシアネート系化合物に含まれるイソシアネート基の質量割合(単位:質量%)を意味する。また、下記の計算式における「イソシアネート基の式量」は、42である。
1分子中の平均イソシアネート基数
=(特定トリレンジイソシアネート系化合物の数平均分子量×イソシアネート基の濃度)/(イソシアネート基の式量×100)
【0065】
本開示における「トリレンジイソシアネート系化合物」には、例えば、トリレンジイソシアネート(「TDI」ともいう。)、トリレンジイソシアネートの多量体、トリレンジイソシアネートとポリオール系化合物〔例:トリメチロールプロパン(TMP)〕とのアダクト体、及びトリレンジイソシアネートのビウレット体が包含される。
トリレンジイソシアネートの具体例としては、2,4-トリレンジイソシアネート、及び2,6-トリレンジイソシアネートが挙げられる。
トリレンジイソシアネート系化合物の種類は、特に限定されないが、例えば、TDIとTMPとのアダクト体であることが好ましい。
【0066】
特定トリレンジイソシアネート系化合物としては、市販品を使用できる。
特定トリレンジイソシアネート系化合物の市販品の例としては、東ソー(株)製の「コロネート(登録商標) L-45E」及び「コロネート(登録商標) L」が挙げられる。
【0067】
〔特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物〕
本開示の粘着剤組成物は、1分子中の平均イソシアネート基数が2.0以上2.5未満の範囲であるジフェニルメタンジイソシアネート系化合物〔即ち、特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物〕を含む。
本開示の粘着剤組成物は、特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0068】
特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物は、1分子中の平均イソシアネート基数が2.0以上2.5未満の範囲であり、2.0以上2.3以下の範囲であることが好ましい。
本開示において、特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物の「1分子中の平均イソシアネート基数」は、既述の特定トリレンジイソシアネート系化合物の「1分子中の平均イソシアネート基数」と同様の計算式により求められる値である。
【0069】
本開示における「ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物」には、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(「MDI」ともいう。)、ジフェニルメタンジイソシアネートの多量体、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリオール系化合物〔例:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)〕とのアダクト体、及びジフェニルメタンジイソシアネートのビウレット体が包含される。
ジフェニルメタンジイソシアネートの具体例としては、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物の種類は、特に限定されないが、例えば、MDIとPTMGとのアダクト体であることが好ましい。
【0070】
特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物としては、市販品を使用できる。
特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物の市販品の例としては、東ソー(株)製の「コロネート(登録商標) 4370」が挙げられる。
【0071】
本開示の粘着剤組成物における特定トリレンジイソシアネート系化合物に対する特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物の含有質量比(即ち、特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物の含有質量/特定トリレンジイソシアネート系化合物の含有質量)は、2以下である。
本開示の粘着剤組成物における特定トリレンジイソシアネート系化合物に対する特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物の含有質量比が2以下であると、高温環境下に置かれた場合に生じ得る基材の収縮を良好に抑制できる粘着剤層を形成し得る。このような観点から、本開示の粘着剤組成物における特定トリレンジイソシアネート系化合物に対する特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物の含有質量比は、1/100以上2/1以下の範囲であることが好ましく、1/50以上1/1以下の範囲であることがより好ましく、1/10以上1/1以下の範囲であることが更に好ましく、1/5以上1/2以下の範囲であることが特に好ましい。
【0072】
本開示の粘着剤組成物における特定トリレンジイソシアネート系化合物の含有量及び特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物の含有量は、本開示の粘着剤組成物が特定トリレンジイソシアネート系化合物及び特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物を含み、かつ、特定トリレンジイソシアネート系化合物に対する特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物の含有質量比が2以下であれば、特に限定されない。
本開示の粘着剤組成物は、例えば、低透湿性の基材に対する密着性により優れ、かつ、高温環境下に置かれた場合に生じ得る基材の収縮、並びに、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る発泡及び剥がれをより良好に抑制できる粘着剤層を形成する観点から、特定トリレンジイソシアネート系化合物の含有量が特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.1質量部以上7.0質量部以下の範囲であり、特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物が特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.01質量部以上1.0質量部以下の範囲であることが好ましく、特定トリレンジイソシアネート系化合物の含有量が特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲であり、特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物が特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.01質量部以上1.0質量部以下の範囲であることがより好ましく、特定トリレンジイソシアネート系化合物の含有量が特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.01質量部以上0.8質量部以下の範囲であり、特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物が特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.05質量部以上0.5質量部以下の範囲であることが更に好ましく、特定トリレンジイソシアネート系化合物の含有量が特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.1質量部以上0.5質量部以下の範囲であり、特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物が特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲であることが特に好ましい。
【0073】
〔シランカップリング剤〕
本開示の粘着剤組成物は、シランカップリング剤を含むことが好ましい。
本開示の粘着剤組成物がシランカップリング剤を含むと、形成される粘着剤層は、例えば、ガラスと貼り合わせた状態で低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に、発泡及び剥がれをより良好に抑制できる傾向を示す。理由としては、形成される粘着剤層とガラスとの相互作用がより適度に高まるためと推測される。
【0074】
シランカップリング剤の種類は、特に限定されない。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに代表される重合性不飽和基含有シラン化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシランに代表されるチオール基含有シラン化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランに代表されるエポキシ基含有シラン化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランに代表されるアミノ基含有シラン化合物、並びに、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0075】
シランカップリング剤としては、市販品を使用できる。
シランカップリング剤の市販品の例としては、信越化学工業(株)製の「KBM-803」、「KBM-802」、「X-41-1810」、「X-41-1811」、「X-41-1805」、「X-41-1818」、「KBM-403」、「KBM-303」、「KBM-402」、「KBE-402」、「KBE-403」、「X-41-1053」、「X-41-1056」、「KBM-9659」、「KBE-9007N」、及び「KBM-573」(いずれも商品名)が挙げられる。
【0076】
本開示の粘着剤組成物は、シランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0077】
本開示の粘着剤組成物がシランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0.1質量部以上1質量部以下の範囲であることが好ましく、0.1質量部以上0.5質量部以下の範囲であることがより好ましく、0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲であることが更に好ましい。
本開示の粘着剤組成物におけるシランカップリング剤の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して上記範囲内であると、形成される粘着剤層は、低透湿性の基材に対する密着性がより向上する傾向を示す。また、本開示の粘着剤組成物におけるシランカップリング剤の含有量が、特定(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して上記範囲内であると、形成される粘着剤層は、例えば、ガラスと貼り合わせた状態で低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に、発泡及び剥がれをより良好に抑制できる傾向を示す。
【0078】
〔有機溶剤〕
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含んでいてもよい。
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含むと、塗布性が向上し得る。
有機溶剤としては、例えば、既述の特定(メタ)アクリル系重合体の重合反応時に用いられる有機溶剤と同様のものが挙げられる。
【0079】
本開示の粘着剤組成物は、有機溶剤を含む場合、有機溶剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0080】
本開示の粘着剤組成物が有機溶剤を含む場合、有機溶剤の含有量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0081】
〔その他の成分〕
本開示の粘着剤組成物は、その効果を損なわない範囲で、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、特定(メタ)アクリル系重合体以外の重合体、架橋触媒、酸化防止剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)、帯電防止剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0082】
本開示の粘着剤組成物がその他の成分を含む場合、その他の成分の含有量は、本開示の粘着剤組成物の効果を損なわない範囲で、適宜設定できる。
【0083】
<粘着剤組成物の用途>
本開示の粘着剤組成物の用途は、特に限定されない。
本開示の粘着剤組成物は、低透湿性の基材に対する密着性に優れる粘着剤層を形成できるため、低透湿性の材料を使用した基材に用いられる粘着剤組成物として好適である。
低透湿性の材料は、特に限定されないが、厚さ40μmのフィルムを形成したときの透湿度が200g/(m・24hr)以下であるものが好ましい。
透湿度は、JIS Z 0208:2021の透湿度試験方法(カップ法)に準拠した方法により測定する。具体的には、以下の方法により測定する。厚さ40μmのフィルムを直径70mmの円盤状に切断した試験片を、約15gの塩化カルシウム(吸湿剤)を入れた透湿カップ(アルミニウム製カップ)に封入し、温度40℃及び湿度90%RHに設定した恒温恒湿機内に格納し、24時間静置する。この静置前後の塩化カルシウムの質量変化を測定することにより、透湿度〔単位:g/(m・24hr)〕を求める。
【0084】
低透湿性の材料としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0085】
本開示において、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位を含み、かつ、(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位の占める割合が50質量%以上である樹脂を意味する。
本開示において、「シクロオレフィン系樹脂」とは、環状オレフィン構造がポリマー鎖中に導入された非晶性のオレフィン樹脂であり、ノルボネン、テトラシクロドデセン、これらの誘導体等の環状オレフィンから得られる樹脂を意味する。シクロオレフィン系樹脂は、例えば、1種又は2種以上の環状オレフィンの開環重合体であってもよく、1種又は2種以上の環状オレフィンの付加重合体であってもよく、1種又は2種以上の環状オレフィンとα-オレフィン(例:エチレン、プロピレン等)とのランダム共重合体であってもよく、これら重合体の水素化物であってもよい。
【0086】
低透湿性の材料は、(メタ)アクリル系樹脂及びシクロオレフィン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、(メタ)アクリル系樹脂又はシクロオレフィン系樹脂であることがより好ましく、(メタ)アクリル系樹脂であることが更に好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)が好ましい。
シクロオレフィン系樹脂としては、シクロオレフィン樹脂(COP)であることが好ましい。本開示において、「シクロオレフィン樹脂」とは、1種又は2種以上の環状オレフィンのみからなる重合体を意味する。
【0087】
本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、例えば、低透湿性の材料であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)及びシクロオレフィン樹脂(COP)のみならず、トリアセチルセルロース(TAC)との密着性にも優れる。これらの樹脂は、いずれも偏光板を構成する部材(例えば、保護フィルム及び位相差フィルム)の材料として使用される。また、本開示の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、高温環境下に置かれた場合に生じ得る基材の収縮、並びに、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る発泡及び剥がれを良好に抑制できる。このため、本開示の粘着剤組成物は、偏光板に用いられる粘着剤組成物(所謂、偏光板用粘着剤組成物)として好適である。
本開示の粘着剤組成物の具体的な用途としては、偏光板と液晶セルのガラス基板とを貼り合わせる用途、偏光板を構成する位相差フィルムと保護フィルムとを貼り合わせる用途等が挙げられる。
【0088】
[積層体]
本開示の積層体は、片面又は両面に、(メタ)アクリル系樹脂及びシクロオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む層を備えた偏光板と、上記層上に設けられ、かつ、本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える。
本開示の積層体では、偏光板が備える(メタ)アクリル系樹脂及びシクロオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む層上に、本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層が設けられている。本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低透湿性の基材との密着性に優れるため、本開示の積層体は、(メタ)アクリル系樹脂及びシクロオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む層と、粘着剤層との密着性に優れる。また、本開示の積層体は、本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、高温環境下に置かれた場合でも偏光板が備える上記層の収縮が生じ難く、かつ、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合でも発泡及び剥がれが生じ難い。
【0089】
本開示の積層体は、偏光板を備える。
本開示の積層体が備える偏光板は、片面又は両面に、(メタ)アクリル系樹脂及びシクロオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む層(以下、「特定樹脂層」ともいう。)を備えている。
偏光板は、特定樹脂層を、片面のみに備えていてもよく、両面に備えていてもよい。
【0090】
特定樹脂層は、(メタ)アクリル系樹脂及びシクロオレフィン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む層である。
特定樹脂層は、(メタ)アクリル系樹脂及びシクロオレフィン系樹脂のうち、(メタ)アクリル系樹脂及びシクロオレフィン系樹脂の両方を含んでいてもよく、(メタ)アクリル系樹脂のみを含んでいてもよく、シクロオレフィン系樹脂のみを含んでいてもよい。
特定樹脂層中の全樹脂における(メタ)アクリル系樹脂及びシクロオレフィン系樹脂の占める割合は、特に限定されないが、例えば、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、
90質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であってもよい。
【0091】
特定樹脂層が(メタ)アクリル系樹脂を含む場合、(メタ)アクリル系樹脂は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)であることが好ましい。
特定樹脂層がシクロオレフィン系樹脂を含む場合、シクロオレフィン系樹脂は、シクロオレフィン樹脂(COP)であることが好ましい。
【0092】
特定樹脂層は、本開示の積層体の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、特定樹脂以外の成分を含んでいてもよい。
特定樹脂以外の成分としては、特定樹脂以外の樹脂、酸化防止剤、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)、帯電防止剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0093】
特定樹脂層の粘着剤層が設けられる側の面には、特定樹脂層と粘着剤層との密着性をより向上させる観点から、コロナ放電処理、プラズマ放電処理等の表面処理(所謂、易接着処理)が施されていてもよい。
【0094】
特定樹脂層の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm~100μmであることが好ましく、20μm~80μmであることがより好ましい。
ここでいう特定樹脂層の厚さは、片面の厚さを指す。
【0095】
本開示における「特定樹脂層の厚さ」は、特定樹脂層の平均厚さを意味する。
特定樹脂層の平均厚さは、以下の方法により求められる値である。
特定樹脂層の厚み方向において無作為に選択した10箇所の厚さを、膜厚計を用いて測定する。測定値の算術平均値を求め、得られた値を特定樹脂層の平均厚さとする。
【0096】
本開示の積層体は、本開示の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備える。
本開示の積層体が備える粘着剤層は、本開示の粘着剤組成物の硬化物を含む。硬化物には、例えば、特定トリレンジイソシアネート系化合物及び特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物によって架橋硬化してなる特定(メタ)アクリル系重合体の架橋物が含まれる。
【0097】
本開示の積層体が備える粘着剤層は、偏光板が備える特定樹脂層上に設けられている。
本開示の積層体が備える偏光板が両面に特定樹脂層を備える場合には、粘着剤層は、2つの特定樹脂層のうち、一方の特定樹脂層上にのみ粘着剤層が設けられていてもよく、両方の特定樹脂層上に粘着剤層が設けられていてもよい。
【0098】
本開示の積層体が備える粘着剤層の厚さは、特に限定されない。
粘着剤層の厚さは、一般には、1μm~100μmであり、5μm~50μmであることが好ましく、10μm~30μmであることがより好ましい。
【0099】
本開示における「粘着剤層の厚さ」は、粘着剤層の平均厚さを意味する。粘着剤層の平均厚さは、既述の特定樹脂層の平均厚さと同様の方法により求められる値である。
【0100】
本開示の積層体が備える偏光板は、例えば、保護フィルム、位相差フィルム等の機能性フィルムとして、特定樹脂層を備えることが好ましい。
偏光板が特定樹脂層を保護フィルム又は位相差フィルムとして備える場合、本開示の積層体の層構成としては、例えば、粘着剤層/偏光板[保護フィルム(特定樹脂層)/偏光子/保護フィルム(特定樹脂層)]、粘着剤層/偏光板[保護フィルム(特定樹脂層)/偏光子]、粘着剤層/偏光板[位相差フィルム(特定樹脂層)/偏光子/位相差フィルム(特定樹脂層)]、粘着剤層/偏光板[位相差フィルム(特定樹脂層)/偏光子]、粘着剤層/偏光板[保護フィルム(特定樹脂層)/偏光子/保護フィルム(特定樹脂層)]等の態様が挙げられる。
【0101】
本開示の積層体において、露出した粘着剤層の面は、剥離シートによって保護されていてもよい。一般に、剥離シートは、粘着シートを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
【0102】
剥離シートは、粘着剤層から容易に剥離できるものであれば、特に限定されない。
剥離シートとしては、例えば、片面又は両面に剥離処理剤による表面処理(所謂、易剥離処理)が施された樹脂フィルム、紙、合成紙、及びこれらの2種以上を積層した複合シートが挙げられる。
本開示では、樹脂フィルムの片面又は両面に剥離処理剤による表面処理(所謂、易剥離処理)が施された態様の剥離シートを「剥離フィルム」ともいう。
剥離処理剤としては、例えば、シリコーン系剥離処理剤(例:シリコーン)、ワックス系剥離処理剤(例:パラフィンワックス)、及びフッ素系剥離処理剤(例:フッ素系樹脂)が挙げられる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。
紙としては、例えば、上質紙及びコート紙が挙げられる。
剥離シートの膜厚は、特に限定されず、一般には20μm~180μmである。
【0103】
[積層体の作製方法]
本開示の積層体の作製方法は、特に限定されない。
本開示の積層体は、公知の方法により作製できる。
本開示の積層体を作製する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
なお、以下の方法では、偏光板の層構成が「特定樹脂層/偏光子/特定樹脂層」である場合を例に挙げて説明する。
【0104】
本開示の粘着剤組成物を剥離シートの易剥離処理面に塗布することにより、剥離シート上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、剥離シート上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、偏光板が備える特定樹脂層の面に重ねて貼り合わせた後、養生を行うことにより、剥離シート/粘着剤層/偏光板(特定樹脂層/偏光子/特定樹脂層)の積層構造を有する本開示の積層体を作製できる。
【0105】
別の方法としては、例えば、以下の方法も挙げられる。
本開示の粘着剤組成物を偏光板が備える特定樹脂層の面に塗布することにより、特定樹脂層上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、特定樹脂層上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を、剥離シートの易剥離処理面に重ねて貼り合わせた後、養生を行うことにより、剥離シート/粘着剤層/偏光板(特定樹脂層/偏光子/特定樹脂層)の積層構造を有する本開示の積層体を作製できる。
【0106】
粘着剤組成物の塗布方法は、特に限定されない。
粘着剤組成物の塗布方法としては、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、バーコーター、アプリケーター等を用いる公知の方法が挙げられる。
粘着剤組成物の塗布量は、特に限定されず、例えば、形成する粘着剤層の厚さに応じて、適宜設定される。
【0107】
塗布膜の乾燥方法は、特に限定されない。
塗布膜の乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等の方法が挙げられる。
塗布膜の乾燥温度及び乾燥時間は、特に限定されず、塗布膜の厚さ、塗布膜中の有機溶剤の量等に応じて、適宜設定される。
乾燥条件の一例としては、熱風循環式乾燥機を用いて、70℃~120℃で30秒間~180秒間乾燥させる条件が挙げられる。
【0108】
養生の方法としては、例えば、雰囲気温度20℃~35℃及び相対湿度45%~55%の環境下に2日間~7日間静置する方法が挙げられる。
【実施例0109】
以下、本開示の粘着剤組成物を実施例により更に具体的に説明する。本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0110】
[(メタ)アクリル系重合体の製造]
〔製造例A-1〕
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び還流冷却器を備えた反応器内に、n-ブチルアクリレート〔n-BA;アクリル酸アルキルエステル単量体〕79.2質量部、フェノキシエチルアクリレート〔PHEA;その他の単量体〕20.0質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート〔2HEA;水酸基を有する単量体〕0.3質量部、アクリル酸〔AA;カルボキシ基を有する単量体〕0.5質量部、及び酢酸エチル〔有機溶剤〕70.0質量部を入れて混合し、混合物を得た後、反応器内を窒素置換した。
次いで、反応器内の混合物を撹拌しながら70℃に昇温した後、反応器内の混合物に、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN;重合開始剤〕0.02質量部と、酢酸エチル120.0質量部と、を逐次添加し、添加終了後に6時間保持して重合反応を完結させた。次いで、重合反応の完結により得られた溶液を、酢酸エチルを用いて、固形分濃度18.5質量%に希釈した後、冷却し、(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液を得た。
【0111】
ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液に占める(メタ)アクリル系重合体A-1の質量割合を意味する。以下において製造した(メタ)アクリル系重合体A-2~A-14の各溶液についても同様である。
【0112】
〔製造例A-2、A-3、及びA-6~A-14〕
製造例A-2、A-3、及びA-6~A-14では、(メタ)アクリル系重合体の単量体組成を表1に示す単量体組成に変更したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が18.5質量%である(メタ)アクリル系重合体A-2、A-3、及びA-6~A-14の各溶液を得た。
【0113】
〔製造例A-4及びA-5〕
製造例A-4及びA-5では、(メタ)アクリル系重合体を製造する際に、有機溶剤の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量を表1に示す重量平均分子量に調整したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が18.5質量%である(メタ)アクリル系重合体A-4及びA-5の各溶液を得た。
【0114】
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-14の単量体組成〔単位:質量%〕及び重量平均分子量(Mw)を表1に示す。
【0115】
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-14の重量平均分子量(Mw)は、既述の特定(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量の測定方法と同様の方法により測定した。
【0116】
(メタ)アクリル系重合体A-1~A-14のうち、(メタ)アクリル系重合体A-1~A-11は、本開示における特定(メタ)アクリル系重合体に該当する。
【0117】
【表1】
【0118】
表1に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
<水酸基を有する単量体>
「2HEA」:2-ヒドロキシエチルアクリレート
<カルボキシ基を有する単量体>
「AA」:アクリル酸
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体>
「n-BA」:n-ブチルアクリレート
「MA」:メチルアクリレート
「MMA」:メチルメタクリレート
<その他の単量体>
「PHEA」:フェノキシエチルアクリレート
【0119】
表1中、単量体組成の欄に記載の「-」は、その欄に該当する単量体を使用していないことを意味する。
【0120】
[粘着剤組成物の調製]
〔実施例1〕
(メタ)アクリル系重合体A-1の溶液540.5質量部(固形分として100質量部)と、特定トリレンジイソシアネート系化合物としてコロネート(登録商標) L-45E〔商品名、トリレンジイソシアネート(TDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、固形分濃度:45質量%、1分子中の平均イソシアネート基数:2.7、東ソー(株)製〕0.67質量部(固形分として0.3質量部)と、特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物としてコロネート(登録商標) 4370〔商品名、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)とのアダクト体、固形分濃度:100質量%、1分子中の平均イソシアネート基数:2.1、東ソー(株)製〕0.1質量部(固形分として0.1質量部)と、シランカップリング剤としてX-41-1810〔商品名、チオール基含有シラン化合物、固形分濃度:100質量%、信越化学工業(株)〕0.2質量部(固形分として0.2質量部)と、適量の酢酸エチル〔有機溶剤〕と、を十分に混合して、実施例1の粘着剤組成物を得た。
【0121】
〔実施例2~22〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表2に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~22の各粘着剤組成物を得た。
【0122】
〔比較例1~10〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表3に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1~10の各粘着剤組成物を得た。
【0123】
【表2】
【0124】
【表3】
【0125】
表2及び/又は表3に記載の成分の詳細は、以下に示すとおりである。
<TDI系化合物>
「コロネート L-45E」〔商品名、トリレンジイソシアネート(TDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、固形分濃度:45質量%、1分子中の平均イソシアネート基数:2.7、東ソー(株)製〕
<MDI系化合物>
「コロネート 4370」〔商品名、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)とのアダクト体、固形分濃度:100質量%、1分子中の平均イソシアネート基数:2.1、東ソー(株)製〕
【0126】
上記「コロネート L-45E」は、特定トリレンジイソシアネート系化合物に該当し、上記「コロネート 4370」は、特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物に該当する。
上記「コロネート」は、登録商標である。
【0127】
<その他の架橋剤>
<<ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物>>
「スミジュール N-75」〔商品名、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)のビウレット体、固形分濃度:75質量%、住化コベストロウレタン(株)製〕
<<キシリレンジイソシアネート系化合物>>
「タケネート D-110N」〔商品名、キシリレンジイソシアネート(XDI)とトリメチロールプロパン(TMP)とのアダクト体、固形分濃度:75質量%、三井化学(株)製〕
上記「スミジュール」及び「タケネート」は、いずれも登録商標である。
【0128】
<シランカップリング剤>
「X-41-1810」〔商品名、チオール基含有シラン化合物、固形分濃度:100質量%、信越化学工業(株)〕
「KBM-403」〔商品名、エポキシ基含有シラン化合物、固形分濃度:100質量%、信越化学工業(株)〕
【0129】
表2及び表3中、「配合量」の欄に記載の数値は、いずれも固形分換算値である。
表2及び表3中、「-」は、その欄に該当する成分を配合していないことを意味する。
表2及び表3では、「トリレンジイソシアネート系化合物に対するジフェニルメタンジイソシアネート系化合物の配合質量比」を「質量比(M/T)」と表記した。
【0130】
[粘着剤層付き偏光板(A)の作製]
シリコーン系剥離処理剤で表面処理(所謂、易剥離処理)された剥離フィルム〔タイプ:MRF、厚さ:38μm、三菱ケミカル(株)製〕の易剥離処理面に、上記にて調製した粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成した。なお、粘着剤組成物の塗布量は、後述の粘着膜の厚さが15μmとなる量とした。次いで、形成した塗布膜に対し、熱風循環式乾燥機を用いて、100℃の空気を風速3m/秒で60秒間吹き付けることにより、塗布膜を乾燥させ、剥離フィルム上に厚さ15μmの粘着膜を形成した。次いで、形成した粘着膜の露出した面と、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)層/偏光子を含むポリビニルアルコール(PVA)層/PMMA層の層構成を有する偏光板(厚さ:100μm)の一方のPMMA層の面と、を重ねて貼り合わせた後、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に7日間静置し、粘着膜を養生させることにより、剥離フィルム/粘着剤層/偏光板(PMMA層/PVA層/PMMA層)の層構成を有する粘着剤層付き偏光板(A)を作製した。
【0131】
[粘着剤層付き偏光板(B)の作製]
上記粘着剤層付き偏光板(A)の作製における操作と同様の操作を行い、剥離フィルム上に厚さ15μmの粘着膜を形成した。次いで、形成した粘着膜の露出した面と、シクロオレフィン樹脂(COP)層/偏光子を含むポリビニルアルコール(PVA)層/COP層の層構成を有する偏光板(厚さ:160μm)の一方のCOP層の面と、を重ねて貼り合わせた後、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に7日間静置し、粘着膜を養生させることにより、剥離フィルム/粘着剤層/偏光板(COP層/PVA層/COP層)の層構成を有する粘着剤層付き偏光板(B)を作製した。
【0132】
[粘着剤層付き偏光板(C)の作製]
上記粘着剤層付き偏光板(A)の作製における操作と同様の操作を行い、剥離フィルム上に厚さ15μmの粘着膜を形成した。次いで、形成した粘着膜の露出した面と、トリアセチルセルロース(TAC)層/偏光子を含むポリビニルアルコール(PVA)層/TAC層の層構成を有する偏光板(厚さ:150μm)の一方のTAC層の面と、を重ねて貼り合わせた後、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に7日間静置し、粘着膜を養生させることにより、剥離フィルム/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の層構成を有する粘着剤層付き偏光板(C)を作製した。
【0133】
[測定及び評価]
1.密着性
上記にて作製した粘着剤層付き偏光板を、偏光板の吸収軸に対して長辺が0°になるように切断し、25mm×60mm(長辺)の大きさの試験片を準備した。次いで、準備した試験片の剥離フィルムを剥離し、粘着剤層の面を露出させた後、コロナ処理した。次いで、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔商品名:東洋紡エステル(登録商標)フィルム G2、厚さ:38μm、東洋紡(株)製〕の一方の面をコロナ処理した後、PETフィルムのコロナ処理面と、試験片の粘着剤層のコロナ処理面と、を重ねて貼り合わせ、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に24時間静置することにより、評価用サンプルを作製した。作製した評価用サンプルは、PETフィルム/粘着剤層/偏光板(PMMA層/PVA層/PMMA層)、PETフィルム/粘着剤層/偏光板(COP層/PVA層/COP層)、又は、PETフィルム/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の層構成を有する。
【0134】
上記にて作製した評価用サンプルについて、(株)エー・アンド・デイ製のシングルコラム型材料試験機(型番:STA-1225)を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で、偏光板からPETフィルムを長辺(60mm)方向に180°剥離した。剥離後のPETフィルムの剥離面を目視にて観察し、PETフィルムへの粘着剤層の転着の有無を確認するとともに、粘着剤層の転着が確認された場合には、PETフィルムに転着した粘着剤層の面積を測定し、貼り合わせ面積(即ち、評価用サンプルにおけるPETフィルムと粘着剤層とが貼り合わされた部分の面積)に対する割合を算出した。PETフィルムに転着した粘着剤層の面積の測定には、キーエンス(株)製のデジタルマイクロスコープ(型番:VHX-7000)の面積測定機能を用いた。PETフィルムに添着した粘着剤層の輪郭を手動でトレースした後、上記装置の機能を用いて粘着剤層の面積を測定し、貼り合わせ面積(25mm×60mm)に対する割合を算出した。そして、下記の評価基準に従って評価を行った。結果を表4及び表5に示す。
下記の評価基準において、「A」、「B」、「C」及び「D」は、実用可能なレベルであり、「A」であることが最も好ましい。
【0135】
-評価基準-
A:PETフィルムへの粘着剤層の転着が全く確認されなかった。
B:PETフィルムに転着した粘着剤層の面積が、貼り合わせ面積の0%を超えて5%未満の範囲であった。
C:PETフィルムに転着した粘着剤層の面積が、貼り合わせ面積の5%以上10%未満の範囲であった。
D:PETフィルムに転着した粘着剤層の面積が、貼り合わせ面積の10%以上30%未満の範囲であった。
E:PETフィルムに転着した粘着剤層の面積が、貼り合わせ面積の30%以上であった。
【0136】
2.収縮抑制
上記にて作製した粘着剤層付き偏光板を、偏光板の吸収軸に対して長辺が0°になるように切断し、62mm×110mm(長辺)の大きさの試験片を準備した。次いで、試験片の剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面と、ガラス板〔種類:ソーダガラス、松浪硝子工業(株)製〕の一方の面と、が接するように重ねた後、ラミネーターを用いて圧着し、試験片とガラス板とを貼り合わせることにより、試験用サンプルを作製した。作製した試験用サンプルは、ガラス板/粘着剤層/偏光板(PMMA層/PVA層/PMMA層)、ガラス板/粘着剤層/偏光板(COP層/PVA層/COP層)、又は、ガラス板/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の層構成を有する。
【0137】
上記にて作製した試験用サンプルを、処理温度50℃及び処理圧力5kg/cmの条件で20分間オートクレーブ処理した後、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に24時間静置した。この静置後の試験用サンプルを、雰囲気温度85℃及び10%RH以下の環境下(所謂、高温低湿環境下)に150時間静置した。この静置後の試験用サンプルの長辺(即ち、吸収軸に対して0°になる方)の長さを、デジタルマイクロスコープ〔型式:VHX-100F、キーエンス(株)製〕を用いて測定し、下記の計算式により収縮率を算出した。なお、算出した値は、小数点以下3桁目を四捨五入した。
収縮率(単位:%)
=[〔静置前の試験用サンプルの長辺の長さ(単位:mm)〕-〔静置後の試験用サンプルの長辺の長さ(単位:mm)〕]/静置前の試験用サンプルの長辺の長さ(単位:mm)×100
【0138】
算出した収縮率に基づき、下記の評価基準に従って評価を行った。結果を表4及び表5に示す。
下記の評価基準において、「A」、「B」、「C」及び「D」は、実用可能なレベルであり、「A」であることが最も好ましい。
【0139】
-評価基準-
A:試験用サンプルの収縮率が0.20%未満であった。
B:試験用サンプルの収縮率が0.20%以上0.35%未満の範囲であった。
C:試験用サンプルの収縮率が0.35%以上0.50%未満の範囲であった。
D:試験用サンプルの収縮率が0.50%以上1.00%未満の範囲であった。
E:試験用サンプルの収縮率が1.00%以上であった。
【0140】
3.耐久性(ヒートショック環境)
上記にて作製した粘着剤層付き偏光板を、偏光板の吸収軸に対して長辺が0°になるように切断し、62mm×110mm(長辺)の大きさの試験片を準備した。次いで、試験片の剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面と、ガラス板〔種類:ソーダガラス、松浪硝子工業(株)製〕の一方の面と、が接するように重ねた後、ラミネーターを用いて圧着し、試験片とガラス板とを貼り合わせることにより、試験用サンプルを作製した。試験用サンプルは、ガラス板/粘着剤層/偏光板(PMMA層/PVA層/PMMA層)の層構成を有する。作製した試験用サンプルは、ガラス板/粘着剤層/偏光板(PMMA層/PVA層/PMMA層)、ガラス板/粘着剤層/偏光板(COP層/PVA層/COP層)、又は、ガラス板/粘着剤層/偏光板(TAC層/PVA層/TAC層)の層構成を有する。
【0141】
上記にて作製した試験用サンプルを、処理温度50℃及び処理圧力5kg/cmの条件で20分間オートクレーブ処理した後、雰囲気温度23℃及び50%RHの環境下に24時間静置した。この静置後の試験用サンプルに対し、冷熱衝撃装置〔型式:TSA-301L-W、エスペック(株)製〕を用いて、雰囲気温度-40℃の環境下に0.5時間静置した後、雰囲気温度85℃の環境下に0.5時間静置するサイクルを300回繰り返す試験を行った。試験終了後、試験用サンプルの状態を目視により観察し、下記の評価基準に従って評価を行った。結果を表4及び表5に示す。
下記の評価基準において、「A」、「B」及び「C」は、実用可能なレベルであり、「A」であることが最も好ましい。
【0142】
-評価基準(発泡)-
A:試験用サンプルに発泡が全く確認されなかった。
B:試験用サンプルに発泡が僅かに確認されたが、実用上問題ないレベルであった。
C:試験用サンプルに発泡が確認されたが、実用上許容できるレベルであった。
D:試験用サンプルに発泡が顕著に確認され、実用上許容できないレベルであった。
【0143】
-評価基準(剥がれ)-
A:試験用サンプルに剥がれが全く確認されなかった。
B:試験用サンプルに剥がれが僅かに確認されたが、実用上問題ないレベルであった。
C:試験用サンプルに剥がれが確認されたが、実用上許容できるレベルであった。
D:試験用サンプルに剥がれが顕著に確認され、実用上許容できないレベルであった。
【0144】
【表4】
【0145】
【表5】
【0146】
表4に示すように、実施例1~22の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低透湿性の基材に対する密着性に優れることが確認された。また、実施例1~22の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に置かれた場合に生じ得る基材の収縮を良好に抑制できることが確認された。また、実施例1~22の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る発泡及び剥がれを良好に抑制できることが確認された。
【0147】
一方、表5に示すように、特定トリレンジイソシアネート系化合物を含まない比較例1の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に置かれた場合に生じ得る基材の収縮、及び、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る発泡を良好に抑制できないことが確認された。
特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物を含まない比較例2の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る発泡を良好に抑制できないことが確認された。
特定トリレンジイソシアネート系化合物に対する特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物の含有質量比が2を超える比較例3の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に置かれた場合に生じ得る基材の収縮を良好に抑制できないことが確認された。
特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物の代わりにヘキサメチレンジイソシアネート系化合物を含む比較例4の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る発泡を良好に抑制できないことが確認された。
特定ジフェニルメタンジイソシアネート系化合物の代わりにキシリレンジイソシアネート系化合物を含む比較例5の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低透湿性の基材に対する密着性が劣り、かつ、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る発泡を良好に抑制できないことが確認された。
特定トリレンジイソシアネート系化合物の代わりにヘキサメチレンジイソシアネート系化合物を含む比較例6の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に置かれた場合に生じ得る基材の収縮、及び、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る発泡を良好に抑制できないことが確認された。
特定トリレンジイソシアネート系化合物の代わりにキシリレンジイソシアネート系化合物を含む比較例7の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、高温環境下に置かれた場合に生じ得る基材の収縮を良好に抑制できないことが確認された。
(メタ)アクリル系重合体がカルボキシ基を有しない比較例8の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る発泡を良好に抑制できないことが確認された。
(メタ)アクリル系重合体が水酸基を有しない比較例9の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低温と高温とが繰り返される環境下に置かれた場合に生じ得る発泡を良好に抑制できないことが確認された。
(メタ)アクリル系重合体が水酸基及びカルボキシ基のいずれも有しない比較例10の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、低透湿性の基材に対する密着性が劣り、かつ、高温環境下に置かれた場合に生じ得る基材の収縮を良好に抑制できないことが確認された。