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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132216
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】目地カバー装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/68 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037406
(22)【出願日】2022-03-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000110365
【氏名又は名称】ドーエイ外装有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英夫
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DH31
2E001EA01
2E001FA04
2E001FA71
2E001GA01
2E001LA18
2E001PA01
2E001PA08
(57)【要約】
【課題】他の敷地との境界が近い場合であっても、目地部の開口を塞ぐことができ、かつ、地震時には躯体等が破損することなく揺れ動きを吸収することができる目地カバー装置を提供すること。
【解決手段】目地カバー装置は、免震装置の免震力が作用する一方の躯体と、他方の躯体との間の前記目地部を塞ぐ目地カバー装置であって、目地カバー装置は、他方の躯体の壁部の垂直部分に垂直固定部が設けられ、該垂直固定部から一方の躯体側に所定長突出する回転制限部を有する固定カバー部と、垂直の取付け基端部が前記垂直固定部に固定され、一方、水平の可動端部に前記回転制限部に上方方向への回転範囲が記載される可動カバー部を備えるヒンジ部材と、回転制限部に接続し、少なくとも地震が終わって一方の躯体が通常の状態になったときは、可動カバー部を初期位置の姿勢に戻す引上げ手段とで構成され、前記可動カバー部は、地震によって前記目地部が狭くなった際に、下方へ回動して揺れ動きを吸収する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震装置の免震力が作用する一方の躯体と、他方の躯体との間の前記目地部を塞ぐ目地カバー装置であって、
前記目地カバー装置は前記他方の躯体の上端部付近に前記一方の躯体側に突出するように設けられた固定カバー部と、前記他方の躯体又は前記固定カバー部にヒンジ部材を介して前記固定カバー部に連続するように取り付けられた可動カバー部と、可動カバー部に接続され少なくとも地震が終わって前記一方の躯体が通常の状態になったときは、前記可動カバー部を初期位置の姿勢に戻す引上げ手段と、前記可動カバー部の上面が通常状態において前記固定カバー部と略平坦となるように前記可動カバー部の回動を制限する回動制限手段とで構成され、前記可動カバー部は、地震によって前記目地部が狭くなった際に、下方へ回動して揺れ動きを吸収する目地カバー装置。
【請求項2】
前記引上げ手段は、前記可動カバー部に取り付けられたワイヤーと、前記ワイヤーに滑車を介して接続されたおもりと、前記おもりの下端部を支持する支持具とで構成されることを特徴とする請求項1に記載の目地カバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震時に免震装置の免震力が作用する一方の躯体と、この躯体の壁部と他方の躯体の間の壁部の間の目地部を塞ぐ目地カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震時に免震装置の免震力が作用する一方の躯体と他方の躯体の間の目地部に設けられる目地装置の一例として、「目地部を介して設けられた一方の躯体の上面よりも上部に位置する部位の、他方の躯体の外壁面に形成された目地部を覆う突出躯体と、前記一方の躯体の目地部側の上部に、先端部が上方へ回動可能に取付けられたステップ板と、このステップ板を常時ほぼ水平状態、あるいは前記目地部の開口部を覆うように支持することができるとともに、前記目地部が狭くなると該ステップ板の先端部を上方へ回動させることができ、目地部が広くなるとステップ板をほぼ水平にできるステップ板支持機構と、前記目地部が狭くなると前記ステップ板の先端部を上方へ回動させる一端部が該ステップ板の先端部寄りの部位に取付けられ、他端部が前記突出躯体の先端部寄りの部位に取付けられたワイヤー、チエーン、コイルスプリングが介装されたワイヤー、コイルスプリング等の引上げ紐とからなることを特徴とする目地装置」等が知られている(特許文献1)。
【0003】
このような目地装置は、一方の躯体側に十分なスペースを有する場合には他方の躯体に突出躯体等を設けるとともにこの突出躯体に支持されたステップ板を設けることにより目地部を塞ぐことができる。
【0004】
しかしながら、他の敷地との境界が一方の躯体近傍に存在し、突出躯体等を設けることができない場合には、このような目地部を塞ぐことが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-046431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、他の敷地との境界が近い場合であっても、目地部の開口を塞ぐことができ、かつ、地震時には躯体等が破損することなく揺れ動きを吸収することができる目地カバー装置を提供することを目的としている。
【0007】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の目地カバー装置は、免震装置の免震力が作用する一方の躯体と、他方の躯体との間の前記目地部を塞ぐ目地カバー装置であって、前記目地カバー装置は前記他方の躯体の上端部付近に前記一方の躯体側に突出するように設けられた固定カバー部と、前記他方の躯体又は前記固定カバー部にヒンジ部材を介して前記固定カバー部に連続するように取り付けられた可動カバー部と、可動カバー部に接続され少なくとも地震が終わって前記一方の躯体が通常の状態になったときは、前記可動カバー部を初期位置の姿勢に戻す引上げ手段と、前記可動カバー部の上面が通常状態において前記固定カバー部と略平坦となるように前記可動カバー部の回動を制限する回動制限手段とで構成され、前記可動カバー部は、地震によって前記目地部が狭くなった際に、下方へ回動して揺れ動きを吸収する。
【0009】
請求項2に記載の目地カバー装置の前記引上げ手段は、前記可動カバー部に取り付けられたワイヤーと、前記ワイヤーに滑車を介して接続されたおもりと、前記おもりの下端部を支持する支持具とで構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1及び請求項2に記載の各発明においては、例えば固定カバー部に連続するように取り付けられた可動カバー部を設けられているので、地震によって目地部が狭くなった場合に、可動カバー部が下方へ回動して地震による揺れ動きを吸収することができる。
(2)付勢手段により地震による揺れ動きが終了した場合には、可動カバー部を自動的に原点(初期位置の姿勢)に復帰させることができるので、確実に目地部を塞ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1乃至図6は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図7乃至図9は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
図1】第1の実施形態の目地カバー装置の縦断面図。
図2】一方の躯体、他方の躯体及び目地部の説明図。
図3】可動カバー部の説明図。
図4】地震で目地部が少し狭くなった状態の動作説明図。
図5】地震で目地部がさらに狭くなった状態の動作説明図。
図6】地震で目地部が広くなった状態の動作説明図。
図7】第2の実施形態の目地カバー装置の縦断面図。
図8】地震で目地部が狭くなった状態の動作説明図。
図9】地震で目地部が広くなった状態の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0013】
図1乃至図6に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は一方の躯体3と他方の躯体4の間の目地部(隙間)2を塞ぐ目地カバー装置である。
【0014】
まず図1に於いて、目地カバー装置1は、他方の躯体4の上端部に前記一方の躯体3側に突出するように形成された固定カバー部5と、前記他方の躯体4にヒンジ部材6を介して前記固定カバー部5に連続するように取り付けられた可動カバー部7と、前記可動カバー部7を上方に回動するように付勢する付勢手段8と、前記可動カバー部7の上面が通常状態において前記固定カバー部5と略平坦となるように可動カバー部7の上方への回動を制限する回動制限手段9とで構成されている。
【0015】
符号10は番号を付さないベース部の上部に設置された免震装置10、3は免震装置の上端部に設置され、地震時、免震装置10の免震力が作用する一方の躯体、3aは境界線Bで示した敷地(図1では境界線Bよりも左側)に対する一方の躯体の図面上部の壁部、3bは前記壁部3aの図面下端部に連続すると共に、該壁部3aよりも目地部2の幅がやや広くなるように離間する垂直方向の壁部、5は前記他方の躯体4の上端部付近から一方の躯体3側の前記壁部3bの上端部側に向かって略直交するように突出する所定長の水平の回動制限手段9を有する固定カバー部、6は前記他方の躯体固定カバー部5のアングル部の内壁面側に配設され、その垂直方向の取付け基端部が前記垂直固定部に固定され、一方、該取付け基端部とは反対側の水平方向の可動端部にブロック状の可動カバー部7を一体的に備えるヒンジ部材、8は前記固定カバー部5の回動制限手段9に上方方向に回転が阻止される可動カバー部7に上端部が接続する引上げ部材(例えば付勢手段)である。第1実施形態の付勢手段8は、一方の躯体3の壁部3bの下端部に取り付けられた支持具15に支持されたおもり14、壁部3bの上端部に取り付けられ、かつ前記おもり14に下端部が接続するワイヤー12、このワイヤー12を案内する滑車13で構成されている。なお、前記可動カバー部7の大きさや形状は問わない。
【0016】
ところで、前記目地部2は、本実施形態では一方の躯体3の垂直方向の壁部3a、3bの例えば垂直壁面と、他方の躯体4の垂直方向の壁部の例えば垂直壁面との間の略水平方向の隙間として説明する。
【0017】
なお、この明細書に於いて、左右方向とは図1(正面視)における左右方向であり、前後方向とは図1における手前方向が前方向で奥方向が後方向であり、上下方向とは図1における上下方向をいう。また、本発明において躯体とは、建物、道路、スラブ、エレベーターシャフト等の目地プレートを設置可能な建造物をいい、出入口とはドアや扉の設けられた出入口だけではなく、人や車両等が通行できる通路も含むものである。また、「略当接」とは、接触している状態だけでなく、わずかな間隙を隔てて接近している状態も含むものである。
【0018】
前記目地カバー装置1は、図1に示すように、他方の躯体4の壁部の垂直面に垂直固定部が固定され、かつ、一方の躯体3側に所定長突出する水平部を有し、この水平部が回動制限手段9を兼ねる固定カバー部5と、前記他方の躯体4又は固定カバー部5、本実施形態では、固定カバー部5の前記壁部の垂直面に垂直取付け基端部が固定されたヒンジ部材6と、このヒンジ部材6の水平の可動端部に固定され、かつ常態時に水平の回動制限手段9の垂直端面に対してその内壁面が接触するブロック状の可動カバー部7と、前記可動カバー部7を上方に回動するように付勢する引上げ手段8の一例としての付勢手段8とで構成され、実施形態では、通常状態において、前記ブロック状の可動カバー部7の上面が前記固定カバー部5の水平部(回動制限手段9の上面)と略平坦状となると共に、水平の回動制限手段9の垂直端面とブロック状の可動カバー部7の内面が面接触状態となっている。
【0019】
したがって、通常時、該固定カバー部5の下面は、ヒンジ部材6の水平の可動端部に対して上方への回動を制限する回動制限機能を果たすことから、水可動カバー部7の上面は水平の回動制限手段9の上面を超えて上方方向へ回動しない。
【0020】
なお、好ましくは、ブロック状の可動カバー部7の上面が前記固定カバー部5の水平部の上面と略平坦状となると共に、水平部の垂直端面とブロック状の可動カバー部7の内面が面接触状態となるが、必ず可動カバー部7の上面と固定カバー部5の水平部の上面が略平坦状となる必要はない。また、固定カバー部5の水平部とブロック状の可動カバー部7の内面が面接触状態となる必要もない。
【0021】
一方の躯体3は、本実施形態では図2に示すように、アイソレーター等の免震装置10を備える免震構造の構造物であって、免震装置10に下端部が接続され、目地部2を介して壁面状の他方の躯体4が形成されている。また、本実施形態では、この他方の躯体4は境界B付近に設けられている。
【0022】
本発明においては一方の躯体3の外壁面3aと他方の躯体4の上端部の間に形成される前記免震ピット11の上部開口(水平方向の間隙)を目地部2としており、この目地部2を目地カバー装置1にて塞いでいる。
【0023】
他方の躯体4は、本実施形態では図2に示すように、前述のような非免震構造の壁状の構造物であり、一方の躯体3と目地部2を介して対向するように設けられている。本実施形態では他方の躯体4は、基礎部分に立設するように設けられ、一定の厚みのある壁面状の構造物となっている。この他方の躯体4は地表から約1500mm程度の高さを有し、免震ピット11の外周部から立ち上がるように設けられている。
【0024】
この他方の躯体4の上端部付近には、一方の躯体3側に突出する固定カバー部5が形成されている。本実施形態では、他方の躯体4の上端部に一体的に形成され、垂直固定部が固定され、かつ、一方の躯体3側に所定長突出する水平部を有するアングル状の固定カバー部5としているが、他方の躯体4の上端部付近に水平部のみを有する固定カバー部5を一体的に形成してもよいし、他方の躯体4とは別個に固定カバー部5を形成し、他方の躯体4の上端部付近に固定的に取り付けてもよい。
【0025】
この固定カバー部5は、地震によって目地部2が狭くなるように揺れ動いた場合であっても、固定カバー部5と一方の躯体3が衝突しない程度の長さに形成されている。なお、上端部付近とは、上端部を含む上端部近傍をいう。
【0026】
固定カバー部5よりも一方の躯体3側にはこの固定カバー部5の側面と略当接するように、固定カバー部5と連続する可動カバー部7が設けられている。
【0027】
この可動カバー部7は、図3に示すように、ヒンジ部材6によって他方の躯体4又は固定カバー部5に取り付けられており、付勢手段8によって常時上方へ回動するように付勢されている。ところで、本実施形態では可動カバー部7は、固定カバー部5の垂直取付部と水平部の角部付近に回動軸6aが位置するヒンジ部材6によって取り付けられているが、水平部のみを有する固定カバー部5とする場合には、他方の躯体4の内側の壁面にヒンジ部材6を介して可動カバー部7を取り付けてもよい。
【0028】
このように固定カバー部5の垂直取付部と水平部の角部付近に回動軸6aが位置するヒンジ部材6によって可動カバー部7が取り付けられているため、ヒンジ部材6の羽状の取付部6bが固定カバー部5の底面に当接することにより可動カバー部7の上面が通常状態において前記固定カバー部5と略平坦となるように可動カバー部7の回動を制限している。換言すると、固定カバー部5の底面が可動カバー部7の回動を制限する回動制限手段9となっている。回動制限手段9は本実施形態のようにヒンジ部材6の取付部6bや可動カバー部7の側面等が固定カバー部5に当接するように構成することで回動制限手段9としてもよいし、ヒンジ部材6の回動を制限するような回動制限手段9を用いてもよい。
【0029】
引上げ手段8(例えば付勢手段8)は、可動カバー部7に取り付けられたワイヤー12と、前記ワイヤー12に滑車13を介して接続されたおもり14と、おもり14の下端部を支持する支持具15とで構成されている。
【0030】
滑車13は一方の躯体3の免震ピット11内の壁面3bの上部に固定されており、可動カバー部7よりも上方に設けられている。この滑車13を可動カバー部7よりも上方に設けることにより、可動カバー部7が常時上方へ回動するように付勢される。
【0031】
おもり14は通常時(図1の状態)においてワイヤー12がたるみなく張っている状態で設けられており、おもり14の下端部は支持具15に支持されている。この支持具15は一方の躯体3の壁面3bに固定されており、目地部2が狭くなってワイヤー12がたるんだ際におもり14が下方へ変位しないように支持している。このおもり14は可動カバー部7よりも重い重量のものが用いられる。
【0032】
地震で躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が少し狭くなると、図4に示すように、一方の躯体3が他方の躯体4に接近することでワイヤー12がたるみ、自重によって可動カバー部7がヒンジ部材6の回動軸6aを支点にやや下方へ回動する。
【0033】
その後、さらに目地部2が狭くなるように左右の躯体3、4が揺れ動くと、図5に示すように、可動カバー部7を直接押圧し、可動カバー部7を下方へ回動させる。このように可動カバー部7が下方へ回動することにより、他方の躯体4が境界Bの近傍に設けられている場合であっても、揺れ動き幅を確保することができ、躯体3、4や固定カバー部5等が破損することなく地震による揺れ動きを吸収することができる。
【0034】
地震による揺れ動きが終了すると、ワイヤー12のたるみがなくなり、おもり14によって可動カバー部7が上方へ付勢され、自動的に通常時の位置に復帰する。
【0035】
地震で躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が広くなると、図6に示すように、一方の躯体3と他方の躯体4が離間し地震による揺れ動きを吸収する。このとき一時的に目地部2に隙間が生じるものの、地震による揺れ動きが終了することにより一方の躯体3と他方の躯体4が通常時の位置に復帰することで、目地部が固定カバー部5と可動カバー部7により塞がれる。
【0036】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図7乃至図8に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0037】
図7乃至図9に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、可動カバー部7に取り付けられたワイヤー12と、前記ワイヤー12に滑車13を介して接続されたバネ16を用いた付勢手段8Aにした点で、このような付勢手段8Aを用いた目地カバー装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0038】
本実施形態のコイルスプリング16は、通常状態において自由長よりも伸長した状態で、かつ、その状態で可動カバー部7と略釣り合いがとれるものを用いている。地震によって目地部2が狭くなった場合には、コイルスプリング16の張力よりも可動カバー部7の自重が大きくなり可動カバー部7が下方へ回動する程度の張力を有するものが用いられる。
【0039】
付言すると、地震で躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が少し狭くなると、一方の躯体3が他方の躯体4に接近することでワイヤー12がたるむ。コイルスプリング16は通常の状態で自由長よりも伸長した状態で、かつ、その状態で可動カバー部7の自重と釣り合う張力を有しているので、ワイヤーのたるみによりコイルスプリングが収縮し、張力が減少する。それにより、コイルスプリング16の張力よりも可動カバー部7の自重が大きくなることにより、自重で可動カバー部7がヒンジ部材6の回動軸6aを支点にやや下方へ回動する。
【0040】
その後、さらに目地部2が狭くなるように左右の躯体3、4が揺れ動くと、図8に示すように、可動カバー部7を直接押圧し、可動カバー部7を下方へ回動させる。このように可動カバー部7が下方へ回動することにより、他方の躯体4が境界Bの近傍に設けられている場合であっても、揺れ動き幅を確保することができ、躯体3、4や固定カバー部5等が破損することなく地震による揺れ動きを吸収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は目地カバー装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0042】
1、1A:目地カバー装置、 2:目地部、
3:一方の躯体、 4:他方の躯体、
5:固定カバー部、 6:ヒンジ部材、
7:可動カバー部、 8、8A:引上げ手段、
9:回動制限手段、 10:免震装置、
11:免震ピット、 12:ワイヤー、
13:滑車、 14:おもり、
15:支持具、 16:コイルスプリング、
B:境界。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-12-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震装置の免震力が作用する一方の躯体と、他方の躯体との間の目地部を塞ぐ目地カバー装置であって、
前記目地カバー装置は前記他方の躯体の上端部付近に前記一方の躯体側に突出するように設けられた固定カバー部と、前記他方の躯体又は前記固定カバー部にヒンジ部材を介して前記固定カバー部に連続するように取り付けられた可動カバー部と、前記可動カバー部に接続され少なくとも地震が終わって前記一方の躯体が通常の状態になったときは、前記可動カバー部を初期位置の姿勢に戻す引上げ手段と、前記可動カバー部の上面が通常状態において前記固定カバー部と略平坦となるように前記可動カバー部の回動を制限する回動制限手段とで構成され、前記可動カバー部は、地震によって前記目地部が狭くなった際に、下方へ回動して揺れ動きを吸収する目地カバー装置。
【請求項2】
前記引上げ手段は、前記可動カバー部に取り付けられたワイヤーと、前記ワイヤーに滑車を介して接続されたおもりと、前記おもりの下端部を支持する支持具とで構成されることを特徴とする請求項1に記載の目地カバー装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震時に免震装置の免震力が作用する一方の躯体と、この躯体の壁部と他方の躯体の間の壁部の間の目地部を塞ぐ目地カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地震時に免震装置の免震力が作用する一方の躯体と他方の躯体の間の目地部に設けられる目地装置の一例として、「目地部を介して設けられた一方の躯体の上面よりも上部に位置する部位の、他方の躯体の外壁面に形成された目地部を覆う突出躯体と、前記一方の躯体の目地部側の上部に、先端部が上方へ回動可能に取付けられたステップ板と、このステップ板を常時ほぼ水平状態、あるいは前記目地部の開口部を覆うように支持することができるとともに、前記目地部が狭くなると該ステップ板の先端部を上方へ回動させることができ、目地部が広くなるとステップ板をほぼ水平にできるステップ板支持機構と、前記目地部が狭くなると前記ステップ板の先端部を上方へ回動させる一端部が該ステップ板の先端部寄りの部位に取付けられ、他端部が前記突出躯体の先端部寄りの部位に取付けられたワイヤー、チエーン、コイルスプリングが介装されたワイヤー、コイルスプリング等の引上げ紐とからなることを特徴とする目地装置」等が知られている(特許文献1)。
【0003】
このような目地装置は、一方の躯体側に十分なスペースを有する場合には他方の躯体に突出躯体等を設けるとともにこの突出躯体に支持されたステップ板を設けることにより目地部を塞ぐことができる。
【0004】
しかしながら、他の敷地との境界が一方の躯体近傍に存在し、突出躯体等を設けることができない場合には、このような目地部を塞ぐことが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-046431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、他の敷地との境界が近い場合であっても、目地部の開口を塞ぐことができ、かつ、地震時には躯体等が破損することなく揺れ動きを吸収することができる目地カバー装置を提供することを目的としている。
【0007】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の目地カバー装置は、免震装置の免震力が作用する一方の躯体と、他方の躯体との間の目地部を塞ぐ目地カバー装置であって、前記目地カバー装置は前記他方の躯体の上端部付近に前記一方の躯体側に突出するように設けられた固定カバー部と、前記他方の躯体又は前記固定カバー部にヒンジ部材を介して前記固定カバー部に連続するように取り付けられた可動カバー部と、前記可動カバー部に接続され少なくとも地震が終わって前記一方の躯体が通常の状態になったときは、前記可動カバー部を初期位置の姿勢に戻す引上げ手段と、前記可動カバー部の上面が通常状態において前記固定カバー部と略平坦となるように前記可動カバー部の回動を制限する回動制限手段とで構成され、前記可動カバー部は、地震によって前記目地部が狭くなった際に、下方へ回動して揺れ動きを吸収する。
【0009】
請求項2に記載の目地カバー装置の前記引上げ手段は、前記可動カバー部に取り付けられたワイヤーと、前記ワイヤーに滑車を介して接続されたおもりと、前記おもりの下端部を支持する支持具とで構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1及び請求項2に記載の各発明においては、例えば固定カバー部に連続するように取り付けられた可動カバー部を設けられているので、地震によって目地部が狭くなった場合に、可動カバー部が下方へ回動して地震による揺れ動きを吸収することができる。
(2)付勢手段により地震による揺れ動きが終了した場合には、可動カバー部を自動的に原点(初期位置の姿勢)に復帰させることができるので、確実に目地部を塞ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1乃至図6は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図7乃至図9は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
図1】第1の実施形態の目地カバー装置の縦断面図。
図2】一方の躯体、他方の躯体及び目地部の説明図。
図3】可動カバー部の説明図。
図4】地震で目地部が少し狭くなった状態の動作説明図。
図5】地震で目地部がさらに狭くなった状態の動作説明図。
図6】地震で目地部が広くなった状態の動作説明図。
図7】第2の実施形態の目地カバー装置の縦断面図。
図8】地震で目地部が狭くなった状態の動作説明図。
図9】地震で目地部が広くなった状態の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0013】
図1乃至図6に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は一方の躯体3と他方の躯体4の間の目地部(隙間)2を塞ぐ目地カバー装置である。
【0014】
まず図1に於いて、目地カバー装置1は、他方の躯体4の上端部に前記一方の躯体3側に突出するように形成された固定カバー部5と、前記他方の躯体4にヒンジ部材6を介して前記固定カバー部5に連続するように取り付けられた可動カバー部7と、前記可動カバー部7を上方に回動するように付勢する付勢手段8と、前記可動カバー部7の上面が通常状態において前記固定カバー部5と略平坦となるように可動カバー部7の上方への回動を制限する回動制限手段9とで構成されている。
【0015】
符号10は番号を付さないベース部の上部に設置された免震装置10、3は免震装置の上端部に設置され、地震時、免震装置10の免震力が作用する一方の躯体、3aは境界線Bで示した敷地(図1では境界線Bよりも左側)に対する一方の躯体の図面上部の壁部、3bは前記壁部3aの図面下端部に連続すると共に、該壁部3aよりも目地部2の幅がやや広くなるように離間する垂直方向の壁部、5は前記他方の躯体4の上端部付近から一方の躯体3側の前記壁部3bの上端部側に向かって略直交するように突出する所定長の水平の回動制限手段9を有する固定カバー部、6は前記他方の躯体固定カバー部5のアングル部の内壁面側に配設され、その垂直方向の取付け基端部が前記垂直固定部に固定され、一方、該取付け基端部とは反対側の水平方向の可動端部にブロック状の可動カバー部7を一体的に備えるヒンジ部材、8は前記固定カバー部5の回動制限手段9に上方方向に回転が阻止される可動カバー部7に上端部が接続する引上げ部材(例えば付勢手段)である。第1実施形態の付勢手段8は、一方の躯体3の壁部3bの下端部に取り付けられた支持具15に支持されたおもり14、壁部3bの上端部に取り付けられ、かつ前記おもり14に下端部が接続するワイヤー12、このワイヤー12を案内する滑車13で構成されている。なお、前記可動カバー部7の大きさや形状は問わない。
【0016】
ところで、前記目地部2は、本実施形態では一方の躯体3の垂直方向の壁部3a、3bの例えば垂直壁面と、他方の躯体4の垂直方向の壁部の例えば垂直壁面との間の略水平方向の隙間として説明する。
【0017】
なお、この明細書に於いて、左右方向とは図1(正面視)における左右方向であり、前後方向とは図1における手前方向が前方向で奥方向が後方向であり、上下方向とは図1における上下方向をいう。また、本発明において躯体とは、建物、道路、スラブ、エレベーターシャフト等の目地プレートを設置可能な建造物をいい、出入口とはドアや扉の設けられた出入口だけではなく、人や車両等が通行できる通路も含むものである。また、「略当接」とは、接触している状態だけでなく、わずかな間隙を隔てて接近している状態も含むものである。
【0018】
前記目地カバー装置1は、図1に示すように、他方の躯体4の壁部の垂直面に垂直固定部が固定され、かつ、一方の躯体3側に所定長突出する水平部を有し、この水平部が回動制限手段9を兼ねる固定カバー部5と、前記他方の躯体4又は固定カバー部5、本実施形態では、固定カバー部5の前記壁部の垂直面に垂直取付け基端部が固定されたヒンジ部材6と、このヒンジ部材6の水平の可動端部に固定され、かつ常態時に水平の回動制限手段9の垂直端面に対してその内壁面が接触するブロック状の可動カバー部7と、前記可動カバー部7を上方に回動するように付勢する引上げ手段8の一例としての付勢手段8とで構成され、実施形態では、通常状態において、前記ブロック状の可動カバー部7の上面が前記固定カバー部5の水平部(回動制限手段9の上面)と略平坦状となると共に、水平の回動制限手段9の垂直端面とブロック状の可動カバー部7の内面が面接触状態となっている。
【0019】
したがって、通常時、該固定カバー部5の下面は、ヒンジ部材6の水平の可動端部に対して上方への回動を制限する回動制限機能を果たすことから、水可動カバー部7の上面は水平の回動制限手段9の上面を超えて上方方向へ回動しない。
【0020】
なお、好ましくは、ブロック状の可動カバー部7の上面が前記固定カバー部5の水平部の上面と略平坦状となると共に、水平部の垂直端面とブロック状の可動カバー部7の内面が面接触状態となるが、必ず可動カバー部7の上面と固定カバー部5の水平部の上面が略平坦状となる必要はない。また、固定カバー部5の水平部とブロック状の可動カバー部7の内面が面接触状態となる必要もない。
【0021】
一方の躯体3は、本実施形態では図2に示すように、アイソレーター等の免震装置10を備える免震構造の構造物であって、免震装置10に下端部が接続され、目地部2を介して壁面状の他方の躯体4が形成されている。また、本実施形態では、この他方の躯体4は境界B付近に設けられている。
【0022】
本発明においては一方の躯体3の外壁面3aと他方の躯体4の上端部の間に形成される前記免震ピット11の上部開口(水平方向の間隙)を目地部2としており、この目地部2を目地カバー装置1にて塞いでいる。
【0023】
他方の躯体4は、本実施形態では図2に示すように、前述のような非免震構造の壁状の構造物であり、一方の躯体3と目地部2を介して対向するように設けられている。本実施形態では他方の躯体4は、基礎部分に立設するように設けられ、一定の厚みのある壁面状の構造物となっている。この他方の躯体4は地表から約1500mm程度の高さを有し、免震ピット11の外周部から立ち上がるように設けられている。
【0024】
この他方の躯体4の上端部付近には、一方の躯体3側に突出する固定カバー部5が形成されている。本実施形態では、他方の躯体4の上端部に一体的に形成され、垂直固定部が固定され、かつ、一方の躯体3側に所定長突出する水平部を有するアングル状の固定カバー部5としているが、他方の躯体4の上端部付近に水平部のみを有する固定カバー部5を一体的に形成してもよいし、他方の躯体4とは別個に固定カバー部5を形成し、他方の躯体4の上端部付近に固定的に取り付けてもよい。
【0025】
この固定カバー部5は、地震によって目地部2が狭くなるように揺れ動いた場合であっても、固定カバー部5と一方の躯体3が衝突しない程度の長さに形成されている。なお、上端部付近とは、上端部を含む上端部近傍をいう。
【0026】
固定カバー部5よりも一方の躯体3側にはこの固定カバー部5の側面と略当接するように、固定カバー部5と連続する可動カバー部7が設けられている。
【0027】
この可動カバー部7は、図3に示すように、ヒンジ部材6によって他方の躯体4又は固定カバー部5に取り付けられており、付勢手段8によって常時上方へ回動するように付勢されている。ところで、本実施形態では可動カバー部7は、固定カバー部5の垂直取付部と水平部の角部付近に回動軸6aが位置するヒンジ部材6によって取り付けられているが、水平部のみを有する固定カバー部5とする場合には、他方の躯体4の内側の壁面にヒンジ部材6を介して可動カバー部7を取り付けてもよい。
【0028】
このように固定カバー部5の垂直取付部と水平部の角部付近に回動軸6aが位置するヒンジ部材6によって可動カバー部7が取り付けられているため、ヒンジ部材6の羽状の取付部6bが固定カバー部5の底面に当接することにより可動カバー部7の上面が通常状態において前記固定カバー部5と略平坦となるように可動カバー部7の回動を制限している。換言すると、固定カバー部5の底面が可動カバー部7の回動を制限する回動制限手段9となっている。回動制限手段9は本実施形態のようにヒンジ部材6の取付部6bや可動カバー部7の側面等が固定カバー部5に当接するように構成することで回動制限手段9としてもよいし、ヒンジ部材6の回動を制限するような回動制限手段9を用いてもよい。
【0029】
引上げ手段8(例えば付勢手段8)は、可動カバー部7に取り付けられたワイヤー12と、前記ワイヤー12に滑車13を介して接続されたおもり14と、おもり14の下端部を支持する支持具15とで構成されている。
【0030】
滑車13は一方の躯体3の免震ピット11内の壁面3bの上部に固定されており、可動カバー部7よりも上方に設けられている。この滑車13を可動カバー部7よりも上方に設けることにより、可動カバー部7が常時上方へ回動するように付勢される。
【0031】
おもり14は通常時(図1の状態)においてワイヤー12がたるみなく張っている状態で設けられており、おもり14の下端部は支持具15に支持されている。この支持具15は一方の躯体3の壁面3bに固定されており、目地部2が狭くなってワイヤー12がたるんだ際におもり14が下方へ変位しないように支持している。このおもり14は可動カバー部7よりも重い重量のものが用いられる。
【0032】
地震で躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が少し狭くなると、図4に示すように、一方の躯体3が他方の躯体4に接近することでワイヤー12がたるみ、自重によって可動カバー部7がヒンジ部材6の回動軸6aを支点にやや下方へ回動する。
【0033】
その後、さらに目地部2が狭くなるように左右の躯体3、4が揺れ動くと、図5に示すように、可動カバー部7を直接押圧し、可動カバー部7を下方へ回動させる。このように可動カバー部7が下方へ回動することにより、他方の躯体4が境界Bの近傍に設けられている場合であっても、揺れ動き幅を確保することができ、躯体3、4や固定カバー部5等が破損することなく地震による揺れ動きを吸収することができる。
【0034】
地震による揺れ動きが終了すると、ワイヤー12のたるみがなくなり、おもり14によって可動カバー部7が上方へ付勢され、自動的に通常時の位置に復帰する。
【0035】
地震で躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が広くなると、図6に示すように、一方の躯体3と他方の躯体4が離間し地震による揺れ動きを吸収する。このとき一時的に目地部2に隙間が生じるものの、地震による揺れ動きが終了することにより一方の躯体3と他方の躯体4が通常時の位置に復帰することで、目地部が固定カバー部5と可動カバー部7により塞がれる。
【0036】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図7乃至図8に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0037】
図7乃至図9に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、可動カバー部7に取り付けられたワイヤー12と、前記ワイヤー12に滑車13を介して接続されたバネ16を用いた付勢手段8Aにした点で、このような付勢手段8Aを用いた目地カバー装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0038】
本実施形態のコイルスプリング16は、通常状態において自由長よりも伸長した状態で、かつ、その状態で可動カバー部7と略釣り合いがとれるものを用いている。地震によって目地部2が狭くなった場合には、コイルスプリング16の張力よりも可動カバー部7の自重が大きくなり可動カバー部7が下方へ回動する程度の張力を有するものが用いられる。
【0039】
付言すると、地震で躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が少し狭くなると、一方の躯体3が他方の躯体4に接近することでワイヤー12がたるむ。コイルスプリング16は通常の状態で自由長よりも伸長した状態で、かつ、その状態で可動カバー部7の自重と釣り合う張力を有しているので、ワイヤーのたるみによりコイルスプリングが収縮し、張力が減少する。それにより、コイルスプリング16の張力よりも可動カバー部7の自重が大きくなることにより、自重で可動カバー部7がヒンジ部材6の回動軸6aを支点にやや下方へ回動する。
【0040】
その後、さらに目地部2が狭くなるように左右の躯体3、4が揺れ動くと、図8に示すように、可動カバー部7を直接押圧し、可動カバー部7を下方へ回動させる。このように可動カバー部7が下方へ回動することにより、他方の躯体4が境界Bの近傍に設けられている場合であっても、揺れ動き幅を確保することができ、躯体3、4や固定カバー部5等が破損することなく地震による揺れ動きを吸収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は目地カバー装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0042】
1、1A:目地カバー装置、 2:目地部、
3:一方の躯体、 4:他方の躯体、
5:固定カバー部、 6:ヒンジ部材、
7:可動カバー部、 8、8A:引上げ手段、
9:回動制限手段、 10:免震装置、
11:免震ピット、 12:ワイヤー、
13:滑車、 14:おもり、
15:支持具、 16:コイルスプリング、
B:境界。