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特開2023-132219ローラカッタユニットおよびそれが装着されたシールド掘進機のカッタヘッドまたはトンネルボーリングマシンのカッタヘッド
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  • 特開-ローラカッタユニットおよびそれが装着されたシールド掘進機のカッタヘッドまたはトンネルボーリングマシンのカッタヘッド 図1
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  • 特開-ローラカッタユニットおよびそれが装着されたシールド掘進機のカッタヘッドまたはトンネルボーリングマシンのカッタヘッド 図12
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132219
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】ローラカッタユニットおよびそれが装着されたシールド掘進機のカッタヘッドまたはトンネルボーリングマシンのカッタヘッド
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/087 20060101AFI20230914BHJP
   E21D 9/10 20060101ALI20230914BHJP
   E21B 10/12 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
E21D9/087 A
E21D9/087 C
E21D9/10 K
E21B10/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037411
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】森 竜生
【テーマコード(参考)】
2D054
2D129
【Fターム(参考)】
2D054BA06
2D054BB07
2D129AA04
2D129AA08
2D129AB05
2D129GA18
(57)【要約】
【課題】ローラカッタユニットを構成するローラカッタ本体の軸方向のずれを防止することができる。
【解決手段】シールド掘進機1のカッタヘッド2の前面に設けられたローラカッタRCにおいて、ローラカッタRCを構成するカッタアダプタ30の側板部33aとウェッジブロック50との対向面に、側板部33aを反対側の側板部33bに向かって移動させるような傾斜を設けた。これにより、片側の側版部33bをカッタサドル40の内側面に隙間無く密着させることができるので、ローラカッタRCを構成するローラカッタ本体20の軸方向のずれを防止することができる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラカッタ本体と、
前記ローラカッタ本体を回転自在の状態で支持する支持部材と、
前記ローラカッタ本体および前記支持部材を切羽側の切羽面と該切羽面側の裏側の裏面とから露出させた状態で取り囲み保持する筐体と、
前記ローラカッタ本体の回転軸方向の両方の側面側に設けられ、前記支持部材を前記筐体に着脱自在の状態で固定する固定部材と、
を備え、
前記ローラカッタ本体は、
中空円盤状のカッタ盤と、
前記カッタ盤の外周に沿って埋設された複数の超硬チップと、
を備え、
前記支持部材は、
前記カッタ盤の中空部に挿通された回転軸部と、
前記中空部の内周と前記回転軸部の外周との間に設けられた軸受部と、
前記回転軸部の軸方向の両端に接合された状態で設けられ、前記カッタ盤の両側面を覆うように設けられた一対の側板部と、
を備え、
前記ローラカッタ本体の回転軸方向の両方の側面側には、前記側板部と前記筐体との間に、前記筐体の裏面側から前記切羽面側に向かって次第に幅が狭くなるように延びる間隙部が形成されており、
前記固定部材は、前記間隙部の平面視での形状に合うように長手方向の一端部から他端部に向かって次第に幅が細くなるように形成されており、前記間隙部に前記固定部材が篏合されることにより前記支持部材を前記筐体に固定する構成になっており、
前記ローラカッタ本体の回転軸方向の少なくとも一方の側面側には、前記側板部において前記固定部材に対向し接する面に、前記側板部の幅が外部側から前記ローラカッタ本体の回転軸方向の中央に向かって次第に広くなるように傾斜が形成されているとともに、前記固定部材において前記側板部に対向し接する面に、前記固定部材の幅が外部から前記ローラカッタ本体の回転軸方向の中央に向かって次第に狭くなるように傾斜が形成されていることを特徴とするローラカッタユニット。
【請求項2】
前記ローラカッタ本体の回転軸方向の両方の側面側には、前記側板部の幅方向中央の両側に一対の前記間隙部が設けられており、前記一対の間隙部は、前記裏面から前記切羽面に向かって次第に離間するように設けられていることを特徴とする請求項1記載のローラカッタユニット。
【請求項3】
前記ローラカッタ本体には、2個以上の前記カッタ盤が互いに接合された状態で前記ローラカッタ本体の回転軸方向に沿って並設されていることを特徴とする請求項1または2記載のローラカッタユニット。
【請求項4】
前記固定部材は、前記筐体にボルトによって着脱自在の状態で接合されていることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のローラカッタユニット。
【請求項5】
機器本体の先端側に回転自在の状態で設けられたカッタヘッドと前記機器本体の先端面に設けられた隔壁との間にチャンバを備えるシールド掘進機の前記カッタヘッドに請求項1~4の何れか一項に記載のローラカッタユニットが装着されたことを特徴とするシールド掘進機のカッタヘッド。
【請求項6】
前記固定部材に形成された傾斜によって前記支持部材が前記筐体に押し付けられる側は前記カッタヘッドの外周側であることを特徴とする請求項5記載のシールド掘進機のカッタヘッド。
【請求項7】
機器本体の先端側に回転自在の状態で設けられたカッタヘッドと、
前記機器本体を固定する第1の固定手段と、
前記機器本体において前記第1の固定手段より前方に設けられ前記機器本体を固定する第2の固定手段と、
前記第1の固定手段と前記第2の固定手段との間に伸縮自在の状態で設けられた伸縮手段と、
を備え、
前記第1の固定手段による固定時と前記第2の固定手段による固定時とで前記伸縮手段の伸縮を繰り返すことにより前記機器本体を前進させる機構を備えるトンネルボーリングマシンの前記カッタヘッドに請求項1~4の何れか一項に記載のローラカッタユニットが装着されたことを特徴とするトンネルボーリングマシンのカッタヘッド。
【請求項8】
前記固定部材に形成された傾斜によって前記支持部材が前記筐体に押し付けられる側は前記カッタヘッドの外周側であることを特徴とする請求項7記載のトンネルボーリングマシンのカッタヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラカッタユニットおよびそれが装着されたシールド掘進機のカッタヘッドまたはトンネルボーリングマシンのカッタヘッドに関し、例えば、ローラカッタユニットにローラカッタ本体を固定するための固定技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ローラカッタは、岩盤や硬い土砂地盤を破砕および切削する掘削部材であり、ローラカッタ本体と、これを回転自在の状態で支持するカッタアダプタと、カッタアダプタを保持した状態でシールド掘進機等のカッタヘッドに溶接されるカッタサドルと、カッタアダプタをカッタサドルに着脱自在の状態で固定するウェッジブロックとを有している。
【0003】
ローラカッタ本体は、中空円盤状のカッタ盤と、その外周先端部に設けられた複数の超硬チップとを有している。超硬チップは、カッタ盤の外周方向に沿って予め決められた間隔毎に埋設されている。
【0004】
カッタアダプタは、カッタ盤の径方向中央の中空部に挿通された回転軸部と、その回転軸部の外周とカッタ盤の中空部内周との間に設けられたベアリング軸受部と、回転軸部の軸方向両端部に接合された状態で設けられ、カッタ盤の両側面を覆い保護する一対の側板部とを有している。
【0005】
カッタサドルは、切羽側の主面およびその裏面を開口した状態で、ローラカッタ本体およびカッタアダプタを取り囲み保持する中空枠状の筐体により構成されている。ローラカッタ本体の側面を正面にして見たときに、カッタアダプタの側板部の径方向の両側面と、その両側面の各々に対向するカッタサドルの一部の面との間に、ローラカッタ本体の側面に沿ってカッタアダプタの外周側から中央側に向かって幅が次第に狭くなるように延びる一対の間隙部が形成されている。そして、その一対の間隙部の各々にウェッジブロックが嵌め込まれることによりカッタアダプタがカッタサドルに固定されている。
【0006】
ウェッジブロックは、上記した間隙部の平面視での形状に合うように、平面視で長手方向の一端部から他端部に向かって幅が次第に細くなるように延びる楔形状に形成されており、ウェッジブロックを間隙部の奥に押し込むほど、カッタアダプタをカッタサドルに強く押し付けることが可能になっている。また、ウェッジブロックはボルトによって着脱自在の状態でカッタサドルに螺合されている。これにより、ローラカッタ本体が摩耗した際には、掘削途中であってもシールド掘進機等の機内側からローラカッタ本体を交換することが可能になっている。
【0007】
なお、ローラカッタについては、例えば、特許文献1に記載があり、ウェッジブロックの平面視での形状を楔形にすることによりウェッジブロックのボルトを締め付けるとカッタアダプタがカッタサドルに押し付けられる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63-130896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ローラカッタは、主に硬質な地盤を切削するために使用されているので、ローラカッタ本体にブレ等が生じないようにカッタアダプタを強固に固定することが望ましい。カッタアダプタが強固に固定されていないと、ローラカッタ本体の刃先が切羽面の岩盤に対して安定せず、岩盤の破砕不良やローラカッタ本体の破損といった不具合が生じる場合がある。
【0010】
しかし、カッタアダプタとカッタサドルとの間には、施工しろとしての隙間がある。この隙間のうち、ローラカッタ本体の直径方向(回転軸部の軸方向に直交する方向)の隙間はウェッジブロックのボルトの締め付けによって無くすことができるが、ローラカッタ本体の厚さ方向(回転軸部の軸方向)の隙間はウェッジブロックのボルトを強く締め付けても残ってしまう結果、掘削時にローラカッタ本体が回転軸部の軸方向にずれてしまう、という課題がある。
【0011】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、ローラカッタユニットを構成するローラカッタ本体の軸方向のずれを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明のローラカッタユニットは、ローラカッタ本体と、前記ローラカッタ本体を回転自在の状態で支持する支持部材と、前記ローラカッタ本体および前記支持部材を切羽側の切羽面と該切羽面側の裏側の裏面とから露出させた状態で取り囲み保持する筐体と、前記ローラカッタ本体の回転軸方向の両方の側面側に設けられ、前記支持部材を前記筐体に着脱自在の状態で固定する固定部材と、を備え、前記ローラカッタ本体は、中空円盤状のカッタ盤と、前記カッタ盤の外周に沿って埋設された複数の超硬チップと、を備え、前記支持部材は、前記カッタ盤の中空部に挿通された回転軸部と、前記中空部の内周と前記回転軸部の外周との間に設けられた軸受部と、前記回転軸部の軸方向の両端に接合された状態で設けられ、前記カッタ盤の両側面を覆うように設けられた一対の側板部と、を備え、前記ローラカッタ本体の回転軸方向の両方の側面側には、前記側板部と前記筐体との間に、前記筐体の裏面側から前記切羽面側に向かって次第に幅が狭くなるように延びる間隙部が形成されており、前記固定部材は、前記間隙部の平面視での形状に合うように長手方向の一端部から他端部に向かって次第に幅が細くなるように形成されており、前記間隙部に前記固定部材が篏合されることにより前記支持部材を前記筐体に固定する構成になっており、前記ローラカッタ本体の回転軸方向の少なくとも一方の側面側には、前記側板部において前記固定部材に対向し接する面に、前記側板部の幅が外部側から前記ローラカッタ本体の回転軸方向の中央に向かって次第に広くなるように傾斜が形成されているとともに、前記固定部材において前記側板部に対向し接する面に、前記固定部材の幅が外部から前記ローラカッタ本体の回転軸方向の中央に向かって次第に狭くなるように傾斜が形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の本発明のローラカッタユニットは、上記請求項1に記載の発明において、前記ローラカッタ本体の回転軸方向の両方の側面側には、前記側板部の幅方向中央の両側に一対の前記間隙部が設けられており、前記一対の間隙部は、前記裏面から前記切羽面に向かって次第に離間するように設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の本発明のローラカッタユニットは、上記請求項1または2記載の発明において、前記ローラカッタ本体には、2個以上の前記カッタ盤が互いに接合された状態で前記ローラカッタ本体の回転軸方向に沿って並設されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の本発明のローラカッタユニットは、上記請求項1~3の何れか一項に記載の発明において、前記固定部材は、前記筐体にボルトによって着脱自在の状態で接合されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の本発明のシールド掘進機のカッタヘッドは、機器本体の先端側に回転自在の状態で設けられたカッタヘッドと前記機器本体の先端面に設けられた隔壁との間にチャンバを備えるシールド掘進機の前記カッタヘッドに請求項1~4の何れか一項に記載のローラカッタユニットが装着されたことを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の本発明のシールド掘進機のカッタヘッドは、上記請求項5記載の発明において、前記固定部材に形成された傾斜によって前記支持部材が前記筐体に押し付けられる側は前記カッタヘッドの外周側であることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の本発明のトンネルボーリングマシンのカッタヘッドは、機器本体の先端側に回転自在の状態で設けられたカッタヘッドと、前記機器本体を固定する第1の固定手段と、前記機器本体において前記第1の固定手段より前方に設けられ前記機器本体を固定する第2の固定手段と、前記第1の固定手段と前記第2の固定手段との間に伸縮自在の状態で設けられた伸縮手段と、を備え、前記第1の固定手段による固定時と前記第2の固定手段による固定時とで前記伸縮手段の伸縮を繰り返すことにより前記機器本体を前進させる機構を備えるトンネルボーリングマシンの前記カッタヘッドに請求項1~4の何れか一項に記載のローラカッタユニットが装着されたことを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の本発明のトンネルボーリングマシンのカッタヘッドは、上記請求項7記載の発明において、前記固定部材に形成された傾斜によって前記支持部材が前記筐体に押し付けられる側は前記カッタヘッドの外周側であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ローラカッタユニットを構成するローラカッタ本体の軸方向のずれを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態であるシールド掘進機の内部を側面から透かして見せた要部構成図である。
図2図1のシールド掘進機を構成するカッタヘッドの正面図である。
図3】ローラカッタを切羽側から見た平面図である。
図4図3の矢印A1の方向から見たローラカッタの側面図である。
図5図3の矢印A2の方向から見たローラカッタの正面図である。
図6図3のI-I線の断面図である。
図7図1のローラカッタを裏面側から見た一部破断斜視図である。
図8図3のII-II線の断面図である。
図9図8の1個のウェッジブロックを分解して示した断面図である。
図10図1のローラカッタを裏面側から見た平面図である。
図11】比較のため本発明者が検討したローラカッタを裏面側から見た平面図である。
図12】本発明の他の実施の形態であるトンネルボーリングマシンの内部を側面から透かして見せた要部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0023】
(第1の実施の形態)
【0024】
まず、本実施の形態のシールド掘進機の構成例について図1を参照して説明する。図1は本実施の形態のシールド掘進機の内部を側面から透かして見せた要部構成図である。
【0025】
本実施の形態のシールド掘進機1は、例えば、カッタヘッド2で掘削された土砂に添加材を注入して練り混ぜることで生成された不透水性と塑性流動性(自由に変形および移動できる性質)とを有する泥土を、カッタヘッド2と機器本体3との間のチャンバ4内に充填した状態で掘進することにより、切羽の土圧に対抗する泥土圧を発生させて切羽の安定性を確保した状態で掘削を行う泥土加圧式のシールドマシンである。
【0026】
カッタヘッド2は、地盤を掘削するシールドカッタ盤であり、シールド掘進機1の先端頭部の前面に機器本体3の周方向に沿って正逆方向に回転可能な状態で設置されている。特に限定されるものではないが、カッタヘッド2の直径は、例えば、5360mm程度、カッタヘッド2の厚さは、例えば、610mmである。
【0027】
このカッタヘッド2の前面(切羽に対向する面)には、センターカッタC、ローラカッタ(ローラカッタユニット)RCおよびスクレーパツース(図1には図示せず)等が設置されている。センターカッタCやローラカッタRCは、主に地山を切り崩す掘削部品であり、スクレーパツースは、主に地山を切削する切削部品である。
【0028】
また、カッタヘッド2の外周には、コピーカッタCCが設置されている。コピーカッタCCは、急曲線施工時の余堀りやシールド掘進機1の姿勢制御等を行う役割を備えている。また、カッタヘッド2の裏面には、練混ぜ翼6が設置されている。練混ぜ翼6は、例えば、円柱状の突出部材で形成されており、カッタヘッド2が回転するとチャンバ4内の土砂と添加材とを撹拌混合する役割を備えている。なお、カッタヘッド2については、後ほど説明する。
【0029】
機器本体3は、前胴プレート(前胴部)3aと、その後方の後胴プレート(後胴部)3bと、その後方のテールシール3cとを備えている。
【0030】
前胴プレート3aおよび後胴プレート3bは、例えば円筒状の鋼製板により形成されており、機器本体3の外形を形成するとともに、機器本体3の内部に中空空間を形成する構成部である。この前胴プレート3aと後胴プレート3bとは、前胴プレート3aの後端側において後胴プレート3bの先端の球面軸受部が前胴プレート3aの内周面に接した状態で入り込むことで係合されている。
【0031】
テールシール3cは、掘進作業中に機器本体3の後部から機器本体3内に地下水等が入り込むのを防止する封止部材であり、後胴プレート3bの後端部において後胴プレート3bの内周に沿って枠状に設置されている。
【0032】
前胴プレート3aの前面側において、その前面から機器本体3の内方に後退した位置には、隔壁7が設置されている。隔壁7は、機器本体3内の中空空間を切羽側と機内側とに分ける鋼材板であり、この隔壁7の切羽側(すなわち、上記カッタヘッド2と隔壁7との間)に上記したチャンバ4が設けられている。なお、カッタヘッド2により掘削された土砂等は、カッタヘッド2の前裏面を貫通する貫通孔(図1には図示せず)を通じチャンバ4内に取り込まれる。
【0033】
一方、シールド掘進機1の機器本体3の機内側には、カッタ駆動体8、中折れジャッキ9a、シールドジャッキ9b、スクリューコンベア10、エレクタ11、土圧検出部12および添加材注入部13a,13b,13c等が設置されている。
【0034】
カッタ駆動体8は、カッタヘッド2を正逆方向に回転させるモータ(駆動源)であり、カッタヘッド2の正面内の外周近傍位置に、カッタヘッド2の周方向に沿って複数個並んで設置されている。なお、ここでは、カッタ駆動方式として外周支持駆動方式が例示されている。
【0035】
中折れジャッキ9aは、掘削機1の推進方向や姿勢を修正する機器であり、機器本体3内において前胴プレート3aと後胴プレート3bとを連結するように前胴プレート3aと後胴プレート3bとの境界を跨いだ状態で機器本体3の周方向に沿って複数個並んで設置されている。この中折れジャッキ9aに圧油を供給し前胴プレート3aと後胴プレート3bとを予め決められた方向および角度に屈折させた状態でシールド掘進機1を推進することでシールド掘進機1の推進方向や姿勢を制御することが可能になっている。
【0036】
シールドジャッキ9bは、機器本体3の後方に設置されたセグメントSGに反力をとってシールド掘進機1を前進させるための推進力を発生させる機器であり、機器本体3内において前胴プレート3aと後胴プレート3bとの境界を跨いだ状態で機器本体3の周方向に沿って複数個並んで設置されている。
【0037】
スクリューコンベア10は、チャンバ4内に取り込まれた土砂を機外に排出するための機器であり、機器本体3の底部において隔壁7を貫通しチャンバ4内に配置された土砂取込端部10aから機器本体3の後方において機器本体3の高さ方向中央より若干高い位置に配置された排出端部10bに向かって斜め上向きに連続的に延在した状態で設置されている。なお、ここでは、リボンスクリューコンベアが例示されている。
【0038】
エレクタ11は、セグメントSGを把持して掘削坑の内周方向に旋回し、掘削坑の内周方向の組立位置に移送する組立装置であり、エレクタ駆動用の油圧モータ(図示せず)等によって掘削坑の周方向に沿って回転可能な状態で後胴プレート3bの中空内に設置されている。
【0039】
土圧検出部12は、チャンバ4内の泥土圧を検出するセンサである。シールド掘進機1は、土圧検出部12によって検出されたチャンバ4内の泥土圧を管理することにより切羽の安定性を確保しながら掘進することが可能になっている。
【0040】
添加材注入部13aは、チャンバ4内に上記添加材(作泥土材)を注入する配管部であり、隔壁7を貫通した状態で設置されている。添加材注入部13bは、シールド掘進機1の外周や切羽に対して上記添加材(作泥土材)を注入する配管部であり、前胴プレート3aの周方向に沿って複数箇所に設置されている。さらに、添加材注入部13cは、シールド掘進機1の外周に対して上記添加材(作泥土材)を注入する配管部であり、後胴プレート3bの周方向に沿って複数箇所に設置されている。
【0041】
次に、上記したカッタヘッド2の構成例について図2を参照して説明する。図2図1のシールド掘進機を構成するカッタヘッドの正面図である。
【0042】
カッタヘッド2は、例えば、円盤状のスポーク型のカッタヘッドで構成されており、十字状に組まれた2つのスポーク部2a,2bと、スポーク部2a,2bの隣接間の4箇所に設置されたカバー部2cと、スポーク部2a,2bの先端部同士を結ぶ外周リング部2rと、これらの部材間に形成された上記貫通孔2hとを備えている。
【0043】
カッタヘッド2の正面中央には、上記したセンターカッタCが設置されている。なお、センターカッタCに代えて、センタービットやコーンヘッド型のローラビット等のような他の掘削機用カッタ部材を設置してもよい。
【0044】
また、カッタヘッド2の正面内には、複数個のローラカッタRC(RC1,RC2)が設置されている。一方のローラカッタRC1は、スポーク部2a,2bの幅方向(短方向)中央にスポーク部2a,2bの長手方向に沿って所定間隔毎に並んだ状態で設置されている。なお、ローラカッタRC1に代えて、先行ビット等のような他の掘削機用カッタ部材を設置してもよい。
【0045】
他方のローラカッタRC2は、カバー部2c毎に2個ずつカッタヘッド2の周方向に沿って並んだ状態で設置されている。なお、各カバー部2cの2個のローラカッタRC2は、互いの傾斜角度(設置角度)を変えた状態で設置されている。
【0046】
また、カッタヘッド2の正面内においてスポーク部2a,2bの幅方向(短方向)の両側には上記した複数個のスクレーパツースSTがスポーク部2a,2bの長手方向に沿って並んだ状態で設置されている。
【0047】
さらに、カッタヘッド2の正面内においてスポーク部2a,2bには、例えば、ベントナイト系の添加材のような作泥土材をカッタヘッド2の前面の切羽に向けて注入するための複数の添加材注入部13d~13fが設置されている。なお、この添加材には、ベントナイト系の添加材に代えて気泡材を用いてもよいし、ベントナイト系の添加材と気泡材との両方を用いてもよい。
【0048】
次に、ローラカッタRCの一例として上記したローラカッタRC1の構成を図3図10を参照して説明する。
【0049】
図3はローラカッタを切羽側から見た平面図、図4図3の矢印A1の方向から見たローラカッタの側面図、図5図3の矢印A2の方向から見たローラカッタの正面図、図6図3のI-I線の断面図、図7図1のローラカッタを裏面側から見た一部破断斜視図、図8図3のII-II線の断面図、図9図8の1個のウェッジブロックを分解して示した断面図、図10図1のローラカッタを裏面側から見た平面図である。
【0050】
ローラカッタRC1は、ローラカッタ本体20と、カッタアダプタ(支持部材)30と、カッタサドル(筐体)40と、ウェッジブロック(固定部材)50a,50b(図7図10参照)とを有している。
【0051】
ローラカッタ本体20は、岩盤や硬い土砂地盤を破砕および切削するカッタ本体部分であり、カッタ盤21と、複数個の超硬チップ22とを有している。
【0052】
カッタ盤21は、ローラカッタ本体20の母材部分であり、例えば、中空円盤状に形成されている。すなわち、カッタ盤21の径方向の外周の刃先部は、その厚さがカッタ盤21の径方向の中央から外周に向かって次第に細くなるように形成されている。また、カッタ盤21の径方向の中央には、カッタ盤21の厚さ方向(回転軸方向)の両側面間を貫通する貫通孔21h(図6参照)が穿孔されている。
【0053】
ここで、ローラカッタRC1には、例えば、2個のカッタ盤21が互いに一体的に接合された状態でローラカッタ本体20の回転軸方向に沿って並設されている。なお、上記したローラカッタRC2(図2参照)は、カッタ盤21が1個であること以外の構成は、ローラカッタRC1と同じである。また、3個以上のカッタ盤21を互いに一体的に接合した状態でローラカッタ本体20の回転軸方向に沿って並設してもよい。
【0054】
カッタ盤21の構成材料は、例えば、入手が容易で、靱性が高く、機械的加工性に優れた、クロムモリブデン鋼材(SCM440H)等により構成されている。また、カッタ盤21の硬さは、例えば、HV500程度である。なお、HVは、硬さ基準の一つでピッカース硬さを示している。ただし、カッタ盤21の構成材料や硬さは、上記したものに限定されるものではなく種々変更可能である。
【0055】
このようなカッタ盤21の径方向の外周の刃先部には、カッタ盤21の径方向の外周に沿って予め決められた間隔毎に超硬チップ22がその先端面を露出させた状態で埋設されている。
【0056】
超硬チップ22は、ローラカッタ本体20の刃体部であり、主に地山を打撃し崩し、かき乱す機能等を有している。また、超硬チップ22は、例えば、円柱状に形成されている。これにより、掘削時に超硬チップ22に加わる応力をほぼ均等に分散させることができるので、超硬チップ22の強度を向上させることができる。
【0057】
超硬チップ22の構成材料は、例えば、硬さと坑折力とのバランスのよい(すなわち、摩耗および折損し難い)JIS・E5種の合金(JISで規格されたE5種の合金)からなり、例えば、炭化タングステン(WC)、炭化チタン(TiC)または炭化タンタル(TaC)等のような金属炭化物粒子を、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)または鉄(Fe)等のようなバインダー金属で結合した超硬質合金により構成されている。この超硬チップ22の硬さは、例えば、カッタ盤21よりも硬いHV940程度である。
【0058】
カッタアダプタ30は、ローラカッタ本体20を回転自在の状態で支持する支持部材であり、回転軸部31(図6参照)と、ベアリング軸受部(軸受部)32(図6参照)と、一対の側板部33a,33bとを有している。なお、ローラカッタ本体20が回転自在の状態で支持されていることにより、地山を切削する際の反力によってローラカッタ本体20が回転し、切羽に接触するローラカッタ本体20部分が変化し続けるので、ローラカッタ本体20の特定箇所だけが摩耗してしまうのを抑制または防止することができる。
【0059】
カッタアダプタ30の回転軸部31は、カッタ盤21の貫通孔21hに挿通されている。ベアリング軸受部32は、回転軸部31を回転自在の状態で軸支する部材であり、貫通孔21hの内周と回転軸部31の外周との間には設置されている。一対の側板部33a,33bは、ローラカッタ本体20の回転軸方向の両方の側面を覆い保護する鋼板であり、ボルト34(図6および図8等参照)によって回転軸部31と着脱自在の状態で接合されている。
【0060】
カッタサドル40は、ローラカッタ本体20およびカッタアダプタ30を内包した状態で保持する部材であり、ローラカッタ本体20およびカッタアダプタ30を取り囲む4枚の鋼製の側板部40a~40dにより構成された矩形枠状の筐体により形成されている。
【0061】
カッタサドル40において、切羽側の主面とその裏側の裏面とは開口されており、その各々の開口部からローラカッタ本体20およびカッタアダプタ30の一部が露出されている。このようなカッタサドル40は、シールド掘進機1のカッタヘッド2に溶接される。
【0062】
ここで、図7図9に示すように、ローラカッタ本体20の回転軸方向の両方の側面側には、カッタアダプタ30の側板部33a,33bの径方向における両方の側面と、その各々の側面に対向するカッタサドル40の側板部40a,40c内側の一部の面との間に一対の間隙部GP,GPが形成されている。
【0063】
この間隙部GPは、ローラカッタ本体20の回転軸方向の両方の側面側に、例えば、2箇所ずつ形成され、合計で4箇所形成されている。各々の側面側の一対の間隙部GP,GPは、カッタサドル40の裏面側(手前側)から切羽側の主面側(奥側)に向かって次第に離間するように斜めに延在している。
【0064】
また、一対の間隙部GP,GPの各々は、その幅が手前側から奥側に向かって次第に狭くなるように形成されている。さらに、各々の間隙部GPの奥側の終端部は、カッタサドル40の側板部40a,40c内側の一部により形成されており、その終端部には雌ネジ孔40hが穿孔されている。
【0065】
ウェッジブロック50a,50bは、カッタアダプタ30をカッタサドル40に固定するための固定部材であり、上記した間隙部GPに篏合されている。ウェッジブロック50a,50aは、ローラカッタ本体20の回転軸方向の一方の側面側に設置され、ウェッジブロック50b,50bは、ローラカッタ本体20の回転軸方向の他方の側面側に設置されている。
【0066】
各ウェッジブロック50a,50bの平面視での形状は、上記した間隙部GPの平面視での形状に合うように楔形状に形成されている。すなわち、ウェッジブロック50a,50bは、その幅が長手方向の一端部から他端部に向かって次第に細くなるように形成されている。
【0067】
このようなウェッジブロック50a,50bをカッタアダプタ30の側板部33a,33bおよびこれに対向するカッタサドル40の側板部40a,40cに密着させた状態で間隙部GPに嵌め込むことにより、カッタアダプタ30がカッタサドル40に固定されている。そして、ウェッジブロック50a,50bを間隙部GPの奥に押し込むほど、カッタアダプタ30をカッタサドル40に強く押し付けることが可能になっている。
【0068】
また、ウェッジブロック50a,50bには、その長手方向の両端面間を貫通するボルト孔50hが穿孔されている。このボルト孔50hには、ボルト51が挿通されている。ボルト51の先端部の外周には雄ネジ部が形成されている。このボルト51の先端部の雄ネジ部は、カッタサドル40の雌ネジ孔40hに螺合されている。これにより、カッタアダプタ30はカッタサドル40に着脱自在の状態で固定されている。その結果、ローラカッタ本体20が摩耗したときには、掘削工期中であってもシールド掘進機1の機内側からローラカッタ本体20をカッタアダプタ30とともに取り出し交換することが可能になっている。
【0069】
また、本実施の形態においては、図10に示すように、ローラカッタ本体20の回転軸方向の一方の側面側において、カッタアダプタ30の側板部33aの幅がローラカッタRC1の外側から内側に向かって次第に広くなるように、側板部33aにおいてウェッジブロック50a,50aに対向する両側面が傾斜している。また、各ウェッジブロック50a,50aの幅もローラカッタRC1の外側から内側に向かって次第に狭くなるように、各ウェッジブロック50a,50aにおいて側板部33aに対向する片側の側面面が傾斜している(傾斜構造)。
【0070】
ここで、図11は比較のため本発明者が検討したローラカッタを裏面側から見た平面図である。図11に示すローラカッタ100においては、ローラカッタ100を構成するローラカッタ本体101の回転軸方向の両方の側面側において、カッタアダプタ102の側板部102aとウェッジブロック103との対向面に上記した傾斜が形成されていない。この場合、ローラカッタ本体101の径方向における隙間(施工しろ)は、ボルト104を強く締め付けてウェッジブロック103を間隙部106の奥側に押し込むことにより無くすことができる。
【0071】
しかし、ローラカッタ本体101の回転軸方向の隙間(施工しろ)は、ボルト104を強く締め付けてウェッジブロック103を間隙部105の奥側に押し込んだとしても残ってしまう。このため、掘削時にローラカッタ本体101が回転軸方向にずれてしまい、ローラカッタ本体101の刃先部が切羽面の岩盤に対して不安定になる結果、岩盤の破砕不良やローラカッタ本体101の破損といった不具合が生じる場合がある。
【0072】
これに対して、本実施の形態においては、図10に示すように、ローラカッタ本体20の回転軸方向の片方の側面側において、カッタアダプタ30の側板部33aとウェッジブロック50a,50aとの対向面に上記した傾斜を設けることにより、ボルト51を締め付けてウェッジブロック50a,50aを奥側に押し込むほど、カッタアダプタ30の一方の側板部33aがウェッジブロック50a,50aによってローラカッタRC1の内側(ローラカッタ本体20の回転軸方向中央)に押される。このため、カッタアダプタ30およびローラカッタ本体20が、カッタサドル40の一方の側板部40a側から他方の側板部40c側に移動し、カッタアダプタ30の他方の側板部33bがカッタサドル40の側板部40cの内側面に押し付けられる。
【0073】
その結果、カッタアダプタ30の他方の側板部33bが、カッタサドル40の他方の側板部40cの内側面に密着し、カッタアダプタ30の他方の側板部33bとカッタサドル40の他方の側板部40cとの間の隙間(施工しろ)を無くすことができる。これにより、ローラカッタRC1を構成するローラカッタ本体20の回転軸方向のずれを防止することができ、掘削時にローラカッタ本体20の刃先部を切羽面の岩盤に対して安定させることができるので、岩盤の破砕不良やローラカッタ本体20の破損といった不具合を抑制または防止することができる。
【0074】
また、本実施の形態においては、カッタアダプタ30の側板部33a,33bの各々を挟むように一対の間隙部GP,GPを設け、その各々にウェッジブロック50a,50bを嵌め込み、4個のウェッジブロック50a,50bにより挟み込むようにしてカッタアダプタ30を固定することができる。また、カッタアダプタ30の側板部33aの幅方向(径方向)の両側部分を、一対のウェッジブロック50a,50aによってローラカッタRC1の外側から内側に向かってほぼ均等に押し付けることができる。これらにより、カッタアダプタ30を安定した状態でカッタサドル40に固定することができる。
【0075】
また、本実施の形態においては、ローラカッタ本体20の回転軸方向の他方の側面側においては、カッタアダプタ30の側板部33bとウェッジブロック50b,50bとの対向面が傾斜していない。すなわち、カッタアダプタ30の側板部33bおよびウェッジブロック50b,50bの各々の幅は、ローラカッタRC1の外側から内側に向かって次第に変化することなく同じになっている。
【0076】
ここで、ローラカッタ本体20の回転軸方向の両方の側面側において、カッタアダプタ30の側板部33a,33bとウェッジブロック50a,50bとの対向面を傾斜させて、カッタアダプタ30の一対の側板部33a,33bを、ローラカッタRC1の両側面側から内側中央に向かって押さえるようにしてもよい。
【0077】
しかし、その場合、一対の側板部33a,33bおよびウェッジブロック50a,50bに傾斜面を形成することになるので加工に手間がかかる。また、ローラカッタ本体20およびカッタアダプタ30をカッタサドル40内に設置する際に、ローラカッタ本体20の回転軸方向の両方の側面側から調整しなければならないので、その調整が難しい。
【0078】
これに対して、本実施の形態においては、ローラカッタ本体20の回転軸方向の一方の側面側のみに上記傾斜構造を設けることにより、カッタアダプタ30の側板部33a,33bおよびウェッジブロック50a,50bの加工の手間を軽減することができる。また、ローラカッタ本体20およびカッタアダプタ30の設置時の調整を容易にすることができる。
【0079】
さらに、掘削時にかかる荷重の負荷が大きい(セミドーム形状のセミ部分への設置の場合は特に荷重の負荷が大きい)ので、ローラカッタ本体20の回転軸方向の一方の側面側のみに上記傾斜構造を設け、シールド掘進機1のカッタヘッド2にローラカッタRC1を設置するときに、ローラカッタ本体20およびカッタアダプタ30がカッタヘッド2の外周側に押し付けられるようにローラカッタRC1を設置することにより、カッタサドル40全体で負荷を受け止めることができるとともに、ウェッジブロック50a側にかかる荷重を少なくし、ボルト51の緩みを防止することができる。
【0080】
(第2の実施の形態)
【0081】
図12は本実施の形態のトンネルボーリングマシンの内部を側面から透かして見せた要部構成図である。
【0082】
トンネルボーリングマシン(Tunnel Boring Machine、以下、TBMと略す)70の先端頭部には、カッタヘッド71が機器本体72の周方向に沿って正逆両方向に回転可能な状態で設置されている。
【0083】
カッタヘッド71の前面には、複数個のローラカッタRCが設置されており、掘削時には、ローラカッタRCを切羽の岩盤等に押し付けた状態でカッタヘッド71を回転させることにより岩盤等を圧砕しながら掘削を行うようになっている。ローラカッタRCの構成および効果は、前記第1の実施の形態と同じである。
【0084】
TBM70の機器本体72は、シールド掘進機1(図1参照)と同様に、前胴プレート(前胴部)72aと、その後方の後胴プレート(後胴部)72bと、その後方のテールシール72cとを備えている。ただし、TBM70においては、シールド掘進機1と異なり、カッタヘッド71と機器本体72との間の隔壁73に開口部が形成されており、その開口部を通じて、掘削された岩盤等をベルトコンベア74によって後方に運ぶようになっている。
【0085】
また、TBM70の機器本体72内には、上記したベルトコンベア74の他に、カッタ駆動体75、フロントグリッパ(第2の固定手段)76、メイングリッパ(第1の固定手段)77、スラストジャッキ(伸縮手段)78、シールドジャッキ79およびエレクタ80等が設置されている。
【0086】
カッタ駆動体75は、カッタヘッド71を回転駆動するための油圧式の駆動装置であり、前胴プレート72aの内周に沿って複数個並んで設置されている。
【0087】
フロントグリッパ76は、TBM70を掘削坑内で固定する機器であり、前胴プレート72aの内周に沿って複数個並んで設置されている。また、フロントグリッパ76は、TBM70の固定時には前胴プレート72aの表面から突出し、TBM70の固定解除時には前胴プレート72aの内側に収まるように、機器本体72の径方向に沿って伸縮可能な状態で設置されている。
【0088】
メイングリッパ77は、TBM70を掘削坑内で固定する機器であり、後胴プレート72bの両側面に設置されている。また、メイングリッパ77は、TBM70の固定時には後胴プレート72bの表面から突出し、TBM70の固定解除時には後胴プレート72bの内側に収まるように、機器本体72の径方向(左右横方向)に沿って伸縮可能な状態で設置されている。
【0089】
スラストジャッキ78は、TBM70を前進させるための推進機器であり、前胴プレート72aと後胴プレート72bとを跨ぐようにフロントグリッパ76とメイングリッパ77との間に設置されている。また、スラストジャッキ78は、機器本体72の軸方向(前後方向)に沿って伸縮可能な状態で設置されている。
【0090】
シールドジャッキ79は、シールド掘進機1と同様に、機器本体72の後方に設置されたセグメントSGに反力をとってTBM70を前進させるための推進機器であり、機器本体72の後胴プレート72bの内周に沿って複数個並んで設置されている。
【0091】
エレクタ60は、シールド掘進機1と同様に、セグメントSGを把持して掘削坑の内周に設置するセグメント組立装置であり、エレクタ駆動用の油圧モータ(図示せず)等によって掘削坑の周方向に沿って回転可能な状態で後胴プレート内に設置されている。
【0092】
本実施の形態のTBM70においては、前進の仕方が2種類あり、例えば、岩盤の硬さや掘削坑の傾斜角度等のような掘削条件に応じて、前進の仕方を選択することができるようになっている。
【0093】
第1の前進の仕方においては、シールド掘進機1と同様に、TBM70によって組立てたセグメントSGにシールドジャッキ79を押し付けて、シールドジャッキ79を伸ばすことにより前進する。
【0094】
第2の前進の仕方においては、フロントグリッパ76をTBM70の前胴プレート72aの内側に収容した状態でメイングリッパ77を伸ばして岩盤に押し付けることによりTBM70を固定した後、スラストジャッキ78を伸ばして前進する。続いて、スラストジャッキ78が伸びきったところで、フロントグリッパ76を伸ばして岩盤に押し付けることによりTBM70を固定した後、メイングリッパ77をTBM70の後胴プレート72bの内側に収容し、スラストジャッキ78を縮めることで、後胴プレート72bを前に引き寄せる。これを繰り返しながら前進する。
【0095】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0096】
前記実施の形態においては、リボンスクリュー型のスクリューコンベアを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく種々変更可能であり、例えば、リボン型と軸付き型とを組み合わせたスクリューコンベアを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上の説明では、本発明を泥土圧シールド掘進機に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、チャンバ内の泥水に所定の圧力を加えることにより切羽を安定させ、泥水を循環させることにより掘削土砂を輸送する仕組みを持つ泥水式シールド掘進機等、他のシールド掘進機にも適用できる。
【符号の説明】
【0098】
1 シールド掘進機
2 カッタヘッド
3 機器本体
4 チャンバ
6 練混ぜ翼
7 隔壁
8 カッタ駆動体
20 ローラカッタ本体
21 カッタ盤
21h 貫通孔
22 超硬チップ
30 カッタアダプタ
31 回転軸部
32 ベアリング軸受部
33a,33b 側板部
40 カッタサドル
40a~40d 側板部
40h 雌ネジ孔
50a,50b ウェッジブロック
50h ボルト孔
51 ボルト
70 TBM
71 カッタヘッド
72 機器本体
73 隔壁
74 ベルトコンベア
75 カッタ駆動体
76 フロントグリッパ
77 メイングリッパ
78 スラストジャッキ
79 シールドジャッキ
80 エレクタ
C センターカッタ
RC,RC1,RC2 ローラカッタ
CC コピービット
ST スクレーパツース
GP 間隙部
SG セグメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12