(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132232
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】リードフレームおよびリードフレームの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
H01L23/50 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037430
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古野 綾太
【テーマコード(参考)】
5F067
【Fターム(参考)】
5F067AA04
5F067AB03
5F067BB10
5F067BD05
5F067DA00
5F067DA11
5F067DA16
5F067DC17
5F067EA04
(57)【要約】
【課題】リードフレームの生産性を向上させること。
【解決手段】リードフレームは、ダイパッドと、ダイパッドの周囲に配置されるリードと、ダイパッドを支持するサポートバーと、を備える。また、サポートバーは、一方の主面において、針状の酸化物で覆われる被覆部と、針状の酸化物で覆われない露出部と、を有する。また、サポートバーにおいて、リードに対して側面視で傾斜する屈曲部には、露出部が配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイパッドと、
前記ダイパッドの周囲に配置されるリードと、
前記ダイパッドを支持するサポートバーと、
を備え、
前記サポートバーは、一方の主面において、針状の酸化物で覆われる被覆部と、前記針状の酸化物で覆われない露出部と、を有し、
前記サポートバーにおいて、前記リードに対して側面視で傾斜する屈曲部には、前記露出部が配置される
リードフレーム。
【請求項2】
前記サポートバーにおいて、前記屈曲部の外側に隣接する平坦部には、前記露出部が配置される
請求項1に記載のリードフレーム。
【請求項3】
前記露出部は、表面に凹凸形状を有する
請求項1または2に記載のリードフレーム。
【請求項4】
ダイパッドと、前記ダイパッドの周囲に配置されるリードと、前記ダイパッドを支持するサポートバーと、を含むパターンを金属板に形成する工程と、
前記サポートバーの一方の主面に、針状の酸化物で覆われる被覆部を形成する工程と、
前記一方の主面に形成された被覆部の一部をレーザで除去し、露出部を形成する工程と、
前記露出部が設けられる部位が前記リードに対して側面視で傾斜するように、前記サポートバーを屈曲させる工程と、
を含むリードフレームの製造方法。
【請求項5】
前記露出部を形成する工程は、前記リードに対して側面視で傾斜する屈曲部の外側に隣接する平坦部にも、前記露出部を形成する
請求項4に記載のリードフレームの製造方法。
【請求項6】
前記レーザは、波長が1000(nm)~1100(nm)である
請求項4または5に記載のリードフレームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、リードフレームおよびリードフレームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、たとえば、リードフレームと、その上に搭載された半導体チップと、半導体チップを封止する封止樹脂とを備える。かかる半導体装置の製造工程では、リードフレームと、その上に搭載された半導体チップとを熱硬化性樹脂で覆い、これを加熱して硬化させる。
【0003】
また、半導体装置の信頼性を向上させるために、リードフレームの表面に針状の酸化物を形成することで、リードフレームと封止樹脂との密着性を向上させる技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、半導体装置において、ダイパッドを支持するサポートバーを屈曲させて、ダイパッドの高さとリードの高さとを変える技術が用いられている。しかしながら、上記の従来技術では、サポートバーを屈曲させる際に針状の酸化物が金型に容易に付着したり脱落した酸化物が金型に堆積したりするため、針状の酸化物が堆積した金型を頻繁に清掃する必要があった。これにより、リードフレームの生産性が低下してしまう恐れがあった。
【0006】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、生産性を向上させることができるリードフレームおよびリードフレームの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係るリードフレームは、ダイパッドと、前記ダイパッドの周囲に配置されるリードと、前記ダイパッドを支持するサポートバーと、を備える。また、前記サポートバーは、一方の主面において、針状の酸化物で覆われる被覆部と、前記針状の酸化物で覆われない露出部と、を有する。また、前記サポートバーにおいて、前記リードに対して側面視で傾斜する屈曲部には、前記露出部が配置される。
【0008】
実施形態の一態様に係るリードフレームの製造方法は、パターンを形成する工程と、被覆部を形成する工程と、露出部を形成する工程と、屈曲させる工程と、を含む。パターンを形成する工程は、ダイパッドと、前記ダイパッドの周囲に配置されるリードと、前記ダイパッドを支持するサポートバーと、を含むパターンを金属板に形成する。被覆部を形成する工程は、前記サポートバーの一方の主面に、針状の酸化物で覆われる被覆部を形成する。露出部を形成する工程は、前記一方の主面に形成された被覆部の一部をレーザで除去し、露出部を形成する。屈曲させる工程は、前記露出部が設けられる部位が前記リードに対して側面視で傾斜するように、前記サポートバーを屈曲させる。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の一態様によれば、リードフレームの生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、実施形態に係るリードフレームの模式図である。
【
図1B】
図1Bは、実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るリードフレームの製造工程の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図3A】
図3Aは、実施形態に係る酸化物形成工程について説明するための図である。
【
図3B】
図3Bは、実施形態に係る酸化物除去工程について説明するための図である。
【
図3C】
図3Cは、実施形態に係る屈曲工程について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するリードフレームおよびリードフレームの製造方法について説明する。なお、以下に示す実施形態により本開示が限定されるものではない。
【0012】
また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0013】
<リードフレームおよび半導体装置>
最初に、
図1A~
図1Cを参照しながら、実施形態に係るリードフレーム1および半導体装置100について説明する。
図1Aは、実施形態に係るリードフレーム1の模式図であり、
図1Bは、実施形態に係る半導体装置100を示す断面図である。
【0014】
図1Aに示すリードフレーム1は、QFP(Quad Flat Package)タイプの半導体装置100の製造に用いられるリードフレームについて示している。なお、本開示の技術は、その他のタイプ、たとえばSOP(Small Outline Package)などの半導体装置の製造に用いられるリードフレームに適用してもよい。
【0015】
実施形態に係るリードフレーム1は、たとえば平面視で帯形状を有し、長手方向に沿って複数の単位リードフレーム10が並んで形成されている。かかる単位リードフレーム10は、リードフレーム1を用いて製造される半導体装置100の一つ一つに対応する部位である。なお、リードフレーム1の長手方向に沿ってだけでなく、幅方向にも沿って複数の単位リードフレーム10が並んで形成されていてもよい。
【0016】
図1Aに示すように、単位リードフレーム10は、ダイパッド11と、複数のリード12と、複数のサポートバー13と、ダムバー14とを有する。なお、
図1Aには図示していないが、リードフレーム1における長辺側の側面にパイロット孔が並んで設けられていてもよい。
【0017】
ダイパッド11は、たとえば、単位リードフレーム10の中央部分に設けられる。かかるダイパッド11のおもて面側には、
図1Bに示すように、半導体素子101が搭載可能である。
【0018】
ダイパッド11は、複数のサポートバー13によって単位リードフレーム10の外縁部との間が連結され、単位リードフレーム10に支持される。かかる複数のサポートバー13は、たとえば、ダイパッド11の四隅にそれぞれ繋がっている。
【0019】
複数のリード12は、ダイパッド11の周囲に並んで配置されており、それぞれの先端部12aが単位リードフレーム10の外縁部からダイパッド11に向かって伸びている。かかるリード12は、
図1Bに示すように、半導体装置100の接続端子として機能する。
【0020】
リード12は、先端部12aおよび基端部12bを有する。
図1Bに示すように、半導体装置100において、リード12の先端部12aにはCuやCu合金、Au、Au合金などで構成されるボンディングワイヤ102が接続される。そのため、リードフレーム1には、ボンディングワイヤ102との高い接合特性が求められる。ダムバー14は、隣接するリード12同士の間を接続する。
【0021】
半導体装置100は、リードフレーム1、半導体素子101およびボンディングワイヤ102に加えて、封止樹脂103を有する。封止樹脂103は、たとえば、エポキシ樹脂などで構成され、モールド工程などにより所定の形状に成型される。封止樹脂103は、半導体素子101やボンディングワイヤ102、ダイパッド11の表面、リード12の先端部12aなどを封止する。
【0022】
また、リード12の基端部12bは、半導体装置100の外部端子(アウターリード)として機能し、基板にはんだ接合される。また、ダイパッド11の裏面が封止樹脂103から露出するタイプやヒートスラグを設けるタイプの半導体装置100においては、それらの裏面が基板にはんだ接合される。
【0023】
なお、ダムバー14は、封止樹脂103を成型するモールド工程において、使用している樹脂が基端部12b(アウターリード)側に漏れ出さないためのダムの機能を有し、半導体装置100の製造工程において最終的に切断される。
【0024】
また、実施形態に係るリードフレーム1では、ダイパッド11およびリード12の先端部12aにめっき層3が形成される。かかるめっき層3は、たとえば、Ag(銀)を主成分として構成される。
【0025】
これにより、リードフレーム1とボンディングワイヤ102との接合を容易にすることができる。
【0026】
図1Cは、
図1Aに示すA-A線の矢視断面図であり、リードフレーム1のダイパッド11およびサポートバー13の断面構造を示す図である。
【0027】
図1Cに示すように、実施形態に係るリードフレーム1は、基材2と、めっき層3とを備える。基材2は、導電性を有する材料(たとえば、銅や銅合金などの金属材料)で構成される。めっき層3は、基材2の主面2aに形成され、たとえばAgを主成分とするめっき層である。
【0028】
なお、基材2とめっき層3との間に、金属拡散防止や耐熱性向上を目的として、Cu、Ni、Pd、Au、Ag等を主成分とするめっき層を、下地めっき層として少なくとも一層形成してもよい。また、Au、Pt、Pd、Ag等を主成分とするめっき層をめっき層3の表面に形成してもよい。
【0029】
図1Cに示すように、サポートバー13は、基端部21と、平坦部22と、屈曲部23とを有する。基端部21は、
図1Aに示したように、単位リードフレーム10の外縁部に繋がっている。平坦部22は、基端部21と屈曲部23との間に位置し、リード12(
図1A参照)と略等しい高さを有する平坦な部位である。
【0030】
屈曲部23は、たとえば、サポートバー13の先端部またはその近傍に位置し、基材2の主面2b側に向かうようにリード12に対して(すなわち、平坦部22に対して)傾斜する。これにより、ダイパッド11は、リード12に対して基材2の主面2b側に突出する。
【0031】
ここで、実施形態に係るサポートバー13は、主面2aにおいて、屈曲部23と、屈曲部23の外側に隣接する平坦部22aとに露出部32を有する。すなわち、サポートバー13は、
図1Cに示す主面2a側の領域Pにおいて、露出部32を有する。
【0032】
一方、サポートバー13は、
図1Cに示す主面2a側の領域P以外の領域(たとえば、基端部21、および基端部21と平坦部22aとの間に位置する平坦部22b)において、被覆部31を有する。
【0033】
かかる被覆部31とは、基材2の主面2aが針状の酸化物4(
図3A参照)で覆われる部位である。針状の酸化物4は、たとえば、針状の酸化銅である。また、露出部32とは、基材2の主面2aが針状の酸化物4で覆われず、基材2が露出する部位である。
【0034】
このように、基材2の主面2aに針状の酸化物4を配置することで、リードフレーム1と封止樹脂103(
図1B参照)との密着性を向上させることができる。したがって、実施形態によれば、半導体装置100の信頼性を向上させることができる。
【0035】
なお、実施形態では、針状の酸化物4が基材2の主面2bの少なくとも一部に配置されていてもよい。これにより、リードフレーム1と封止樹脂103との密着性をさらに向上させることができる。
【0036】
さらに、実施形態では、サポートバー13の主面2aにおいて、屈曲部23に露出部32が配置される。すなわち、実施形態では、主面2a側の屈曲部23に針状の酸化物4が設けられていない。
【0037】
これにより、パンチ41(
図3C参照)を主面2aに押し当てて基材2に屈曲部23を形成する際に、かかる屈曲部23上の針状の酸化物4がパンチ41によって削り取られ、パンチ41に付着することを抑制することができる。
【0038】
したがって、実施形態によれば、パンチ41に堆積した針状の酸化物4を清掃する作業の頻度を少なくできるため、リードフレーム1の生産性を向上させることができる。
【0039】
また、実施形態では、サポートバー13の主面2aにおいて、屈曲部23に隣接する平坦部22aに露出部32が配置されるとよい。すなわち、実施形態では、主面2a側の平坦部22aに針状の酸化物4が設けられていないとよい。
【0040】
これにより、ストリッパ43(
図3C参照)で基材2を支持しながら基材2に屈曲部23を形成する際に、ストリッパ43と当接する平坦部22a上の針状の酸化物4がストリッパ43に付着することを抑制することができる。
【0041】
したがって、実施形態によれば、ストリッパ43に堆積した針状の酸化物4を清掃する作業の頻度を少なくできるため、リードフレーム1の生産性をさらに向上させることができる。
【0042】
また、実施形態では、露出部32が、表面に凹凸形状を有するとよい。これにより、露出部32においてリードフレーム1と封止樹脂103との密着性を向上させることができる。したがって、実施形態によれば、半導体装置100の信頼性を向上させることができる。
【0043】
この露出部32表面の凹凸形状は、たとえば、以下に示すリードフレーム1の製造工程において、レーザ照射によって酸化物を除去して露出部32を形成する際に発生する熱によって形成することができる。
【0044】
<リードフレームの製造工程>
つづいて、実施形態に係るリードフレーム1の製造工程について、
図2~
図3Cを参照しながら説明する。
図2は、実施形態に係るリードフレーム1の製造工程の手順の一例を示すフローチャートである。なお、以下に示す製造工程において、めっき層3の図示およびめっき層3の形成工程についての説明は省略する。
【0045】
図2に示すように、まず、ダイパッド11(
図1A参照)と、リード12(
図1A参照)と、サポートバー13(
図1A参照)とを含むパターンを金属板に形成するパターン形成工程が行われる(ステップS1)。かかるパターンは、たとえば、平面視で
図1Aに示したようなパターンである。
【0046】
このパターン形成工程は、金属板をエッチング処理することで実施してもよいし、金属板をスタンピング加工することで実施してもよい。
【0047】
次に、所定のパターンが形成された金属板に対して、酸化物形成工程が行われる(ステップS2)。
図3Aは、実施形態に係る酸化物形成工程について説明するための図である。
図3Aに示すように、実施形態に係る酸化物形成工程では、基材2の主面2aに針状の酸化物4が形成され、主面2aに被覆部31が設けられる。
【0048】
かかる針状の酸化物4は、たとえば、基材2を強酸化性のアルカリ溶液に浸漬し、整流器の陽極側を基材2に接続し、陰極側を溶液槽内に配置した電極板に接続して、陽極酸化を行うことによって形成することができる。このようにして形成される針状の酸化物4は、酸化第一銅(Cu2O)と酸化第二銅(CuO)を含んでおり、層構造は有していなくてもよい。
【0049】
図2の説明に戻る。実施形態に係るリードフレーム1の製造工程では、酸化物形成工程につづいて、酸化物除去工程が行われる(ステップS3)。
図3Bは、実施形態に係る酸化物除去工程について説明するための図である。
【0050】
図3Bに示すように、実施形態に係る酸化物除去工程では、基材2の主面2aにおける所定の箇所に対してスポット状のレーザLが照射される。具体的には、基材2の主面2aにおける屈曲部23(
図3C参照)に対応する部位と、平坦部22a(
図3C参照)に対応する部位とにスポット状のレーザLが照射される。
【0051】
これにより、
図3Bに示すように、屈曲部23に対応する部位および平坦部22aに対応する部位で針状の酸化物4が除去され、露出部32が形成される。
【0052】
実施形態では、レーザLの波長が1000(nm)~1100(nm)であるとよい。レーザLの波長をかかる範囲に設定することで、基材2の主成分であるCu、およびめっき層3の主成分であるAgに対するレーザLの吸収率よりも、針状の酸化物4に対するレーザLの吸収率を高くすることができる。
【0053】
したがって、実施形態によれば、レーザLによって針状の酸化物4を効率的に除去できると共に、針状の酸化物4が配置されない部位(例えば、基材2が露出する部位、又はめっき層3が配置される部位)がレーザLによって変質することを抑制することができる。
【0054】
なお、本開示では、以下の条件で針状の酸化物4に対してレーザLを照射することで、針状の酸化物4が除去され、基材2の主面2aに露出部32が形成されることを確認した。
装置:KEYENCE社製レーザマーカ MD-X2500
レーザ波長:1064(nm)
レーザパワー:80(%)
スキャンスピード:1000(mm/s)
パルス周波数:80(kHz)
スポット可変:-40
印字回数:1(回)
品質調整レベル:標準
種類:塗り潰し
パターン:交差
方向:交互
塗り潰し線間隔:0.030(mm)
【0055】
一般的に金属(CuやAgなど)の光沢表面はレーザ光の吸収が低く、一方で酸化物はレーザ光の吸収が高いことから知られている。それをもとに、本願発明者は、リードフレームに形成された酸化膜を除去可能であると共に、基材2やめっき層3への影響がすくないレーザ波長は1000~1100(nm)が好ましいことを誠意努力の結果見出した。
【0056】
図2の説明に戻る。実施形態に係るリードフレーム1の製造工程では、酸化物除去工程につづいて、屈曲工程が行われる(ステップS4)。
図3Cは、実施形態に係る屈曲工程について説明するための図である。
【0057】
図3Cに示すように、主面2aに露出部32および被覆部31が形成された基材2が、パンチ41とダイプレート42との間に配置される。ダイプレート42には、パンチ41の形状と相補的な形状を有する凹部42aが形成される。
【0058】
パンチ41は、基材2を下方に向かって押圧しながらダイプレート42の凹部42aに挿入される。この際、基材2は、パンチ41の周囲に配置されたストリッパ43と、ダイプレート42の凹部42aを形成する外周部42bとの間に挟まれることによって固定される。
【0059】
そして、パンチ41の下降に伴ってサポートバー13が屈曲し、基材2のダイパッド11が下方に突出して、ダイプレート42の凹部42aの底部に押し付けられる。このような曲げ加工によって、サポートバー13に屈曲部23が形成される。
【0060】
なお、パンチ41が下降する代わりに、ダイプレート42が上昇して上述の曲げ加工が行われてもよい。また、パンチ41が下降するとともに、ダイプレート42が上昇して上述の曲げ加工が行われてもよい。
【0061】
このようにして、ダイパッド11が主面2b側に突出した形状を有するリードフレーム1が得られ、実施形態に係るリードフレーム1の製造工程が終了する。
【0062】
ここで、実施形態では、上述のように、主面2aにおける屈曲部23に対応する部位に露出部32が配置される。これにより、パンチ41を主面2aに押し当てて基材2に屈曲部23を形成する際に、かかる屈曲部23上の針状の酸化物4がパンチ41によって削り取られ、パンチ41に付着することを抑制することができる。
【0063】
したがって、実施形態によれば、パンチ41に堆積した針状の酸化物4を清掃する作業の頻度を少なくできるため、リードフレーム1の生産性を向上させることができる。
【0064】
また、実施形態では、サポートバー13の主面2aにおいて、屈曲部23に隣接する平坦部22aに露出部32が配置される。これにより、ストリッパ43で基材2を支持しながら基材2に屈曲部23を形成する際に、ストリッパ43と当接する平坦部22a上の針状の酸化物4がストリッパ43に付着することを抑制することができる。
【0065】
したがって、実施形態によれば、ストリッパ43に堆積した針状の酸化物4を清掃する作業の頻度を少なくできるため、リードフレーム1の生産性をさらに向上させることができる。
【0066】
たとえば、本開示では、酸化物除去工程が行われていない場合にリードフレーム1の生産性が30(%)であったのに対し、酸化物除去工程を行うことで、リードフレーム1の生産性を82(%)に向上させることができた。
【0067】
また、本開示では、酸化物除去工程が行われていない場合と、酸化物除去工程を行った場合とで、半導体装置100(
図1B参照)の耐熱性(すなわち、半導体装置100の組立工程の熱によって生成する基材の酸化膜剥離がないこと)に変化が無いことを確認した。
【0068】
また、本開示では、酸化物除去工程が行われていない場合と、酸化物除去工程を行った場合とで、誤ってレーザLが照射されためっき層3および基材2に対する形態変化等が無いことを確認した。
【0069】
また、本開示では、酸化物除去工程が行われていない場合と、酸化物除去工程を行った場合とで、誤ってレーザLが照射されためっき層3に対するボンディングワイヤ102(
図1B参照)の密着性に変化が無いことを確認した。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。たとえば、上記の実施形態では、露出部32において基材2が露出する例について示したが、本開示はかかる例に限られず、露出部32に針状の酸化物4とは異なる物質が付着していてもよい。
【0071】
また、上記の実施形態では、ダイパッド11の主面2b側が封止樹脂103から露出しない半導体装置100について示したが、本開示はかかる例に限られず、ダイパッド11の主面2b側が封止樹脂103から露出していてもよい。これにより、半導体素子101の放熱性を向上させることができる。
【0072】
なおこの場合、リードフレーム1の主面2b側には針状の酸化物4が設けられないほうがよい。なぜなら、ダイパッド11等を封止樹脂103で封止する封止工程において、針状の酸化物4によって金型とダイパッド11の主面2b側とを十分に密着できないため、主面2b側に封止樹脂103が漏れ、ダイパッド11を十分に露出できないからである。
【0073】
以上のように、実施形態に係るリードフレーム1は、ダイパッド11と、ダイパッド11の周囲に配置されるリード12と、ダイパッド11を支持するサポートバー13と、を備える。また、サポートバー13は、一方の主面2aにおいて、針状の酸化物4で覆われる被覆部31と、針状の酸化物4で覆われない露出部32と、を有する。また、サポートバー13において、リード12に対して側面視で傾斜する屈曲部23には、露出部32が配置される。これにより、リードフレーム1の生産性を向上させることができる。
【0074】
また、実施形態に係るリードフレーム1において、サポートバー13において、屈曲部23の外側に隣接する平坦部22aには、露出部32が配置される。これにより、リードフレーム1の生産性をさらに向上させることができる。
【0075】
また、実施形態に係るリードフレーム1において、露出部32は、表面に凹凸形状を有する。これにより、半導体装置100の信頼性を向上させることができる。
【0076】
また、実施形態に係るリードフレーム1の製造方法は、パターンを形成する工程(ステップS1)と、被覆部31を形成する工程(ステップS2)と、露出部32を形成する工程(ステップS3)と、屈曲させる工程(ステップS4)と、を含む。パターンを形成する工程(ステップS1)は、ダイパッド11と、ダイパッド11の周囲に配置されるリード12と、ダイパッド11を支持するサポートバー13と、を含むパターンを金属板に形成する。被覆部31を形成する工程(ステップS2)は、サポートバー13の一方の主面2aに、針状の酸化物4で覆われる被覆部31を形成する。露出部32を形成する工程(ステップS3)は、一方の主面2aに形成された被覆部31の一部をレーザLで除去し、露出部32を形成する。屈曲させる工程(ステップS4)は、露出部32が設けられる部位がリード12に対して側面視で傾斜するように、サポートバー13を屈曲させる。これにより、リードフレーム1の生産性を向上させることができる。
【0077】
また、実施形態に係るリードフレーム1の製造方法において、露出部32を形成する工程(ステップS3)は、リード12に対して側面視で傾斜する屈曲部23の外側に隣接する平坦部22aにも、露出部32を形成する。これにより、リードフレーム1の生産性をさらに向上させることができる。
【0078】
また、実施形態に係るリードフレーム1の製造方法において、レーザLは、波長が1000(nm)~1100(nm)である。これにより、レーザLによって針状の酸化物4を効率的に除去できると共に、針状の酸化物4が配置されない部位(例えば、基材2が露出する部位、又はめっき層3が配置される部位)がレーザLによって変質することを抑制することができる。
【0079】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 リードフレーム
2 基材
2a 主面(一方の主面の一例)
3 めっき層
4 針状の酸化物
11 ダイパッド
12 リード
13 サポートバー
21 基端部
22、22a、22b 平坦部
23 屈曲部
31 被覆部
32 露出部
L レーザ