(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132233
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】積層鉄心、積層鉄心の製造方法および順送り金型装置
(51)【国際特許分類】
H02K 1/16 20060101AFI20230914BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
H02K1/16
H02K15/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037431
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 慎一郎
【テーマコード(参考)】
5H601
5H615
【Fターム(参考)】
5H601AA09
5H601CC01
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601GA02
5H601GB12
5H601GB33
5H601GC12
5H601GC34
5H601KK02
5H601KK21
5H601KK30
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP06
5H615SS05
5H615SS18
5H615SS33
(57)【要約】
【課題】リフタへの接着剤の付着を抑制すること。
【解決手段】積層鉄心は、積層された複数の鉄心片と、互いに隣接する鉄心片同士を接着する接着剤と、を備える。鉄心片は、環状のヨーク部と、ヨーク部から径方向に沿って突出する複数のティース部とを有する。接着剤は、ヨーク部の全体またはティース部の全体のうち少なくとも一方において、鉄心片の中心軸からの径方向距離が異なり且つ周方向に均等に配置される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の鉄心片と、
互いに隣接する前記鉄心片同士を接着する接着剤と、
を備え、
前記鉄心片は、環状のヨーク部と、前記ヨーク部から径方向に沿って突出する複数のティース部とを有し、
前記接着剤は、前記ヨーク部の全体または前記ティース部の全体のうち少なくとも一方において、前記鉄心片の中心軸からの径方向距離が異なり且つ周方向に均等に配置される
積層鉄心。
【請求項2】
前記鉄心片は、所定の方向に沿って配置される領域を有し、
前記領域には、前記接着剤が塗布されない
請求項1に記載の積層鉄心。
【請求項3】
前記接着剤は、周方向に千鳥状に配置される
請求項1または2に記載の積層鉄心。
【請求項4】
積層方向に沿って隣接する前記接着剤同士は、平面視で互いに重なって配置される
請求項1~3のいずれか一つに記載の積層鉄心。
【請求項5】
積層方向に沿って隣接する前記接着剤同士は、平面視で互いに異なる位置に配置される
請求項1~3のいずれか一つに記載の積層鉄心。
【請求項6】
金属板の下面を複数のリフタによって支持しながら前記金属板を所定の方向に順送りする工程と、
前記金属板の下面のうち、環状のヨーク部と、前記ヨーク部から径方向に沿って突出する複数のティース部とを有する鉄心片となる鉄心片領域に対して接着剤を塗布する工程と、
前記鉄心片領域を打ち抜き加工して、前記鉄心片を形成する工程と、
互いに隣接する前記鉄心片同士を前記接着剤で接着しながら、複数の前記鉄心片を積層する工程と、
を含み、
前記塗布する工程は、前記接着剤が前記ヨーク部の全体または前記ティース部の全体のうち少なくとも一方において、前記鉄心片の中心軸からの径方向距離が異なり且つ周方向に均等に配置され、且つ前記鉄心片には前記接着剤が塗布されない領域が前記所定の方向に沿って配置され、
前記順送りする工程は、少なくとも1つの前記リフタが前記領域を通過するように前記金属板の下面を複数の前記リフタによって支持する
積層鉄心の製造方法。
【請求項7】
前記塗布する工程において、前記接着剤は、周方向に千鳥状に配置される
請求項6に記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項8】
前記積層する工程において、積層方向に沿って隣接する前記接着剤同士は、平面視で互いに重なって配置される
請求項6または7に記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項9】
前記積層する工程において、積層方向に沿って隣接する前記接着剤同士は、平面視で互いに異なる位置に配置される
請求項6または7に記載の積層鉄心の製造方法。
【請求項10】
所定の方向に順送りされる帯状の金属板をプレス加工して、環状のヨーク部と、前記ヨーク部から径方向に沿って突出する複数のティース部とを有する鉄心片を形成する上型および下型と、
前記下型に設けられ、前記金属板が順送りされる際に前記金属板の下面を支持する複数のリフタと、
前記下型に設けられ、前記金属板の下面に接着剤を塗布する塗布ユニットと、
を備え、
前記塗布ユニットは、前記接着剤が前記ヨーク部の全体または前記ティース部の全体のうち少なくとも一方において、前記鉄心片の中心軸からの径方向距離が異なり且つ周方向に均等に配置され、且つ前記鉄心片には前記接着剤が塗布されない領域が前記所定の方向に沿って配置されるように前記金属板の下面に前記接着剤を塗布し、
少なくとも1つの前記リフタは、前記領域を通過するように前記金属板の下面を支持する
順送り金型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、積層鉄心、積層鉄心の製造方法および順送り金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
帯状の電磁鋼板から金型によって所定の形状に打ち抜き形成された鉄心片を積層する積層鉄心の製造装置が知られている。このような製造装置において、たとえば、電磁鋼板の下面における所定の位置に対して接着剤を塗布した後に、鉄心片を打ち抜く技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、積層鉄心に利用される電磁鋼板は、モータの高効率化に対するニーズに応じて薄板化が進んでいる。そこで、打ち抜き途中の電磁鋼板の一部が搬送中に垂れ下がり金型と干渉することを防ぐため、リフタで電磁鋼板の下面を支持し、電磁鋼板を金型から持ち上げながら搬送する構成が知られている。
【0005】
しかしながら、接着剤が塗布された電磁鋼板をリフタで持ち上げた場合、電磁鋼板の下面に塗布された接着剤がリフタに付着してしまう恐れがあった。
【0006】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、リフタへの接着剤の付着を抑制することができる積層鉄心、積層鉄心の製造方法および順送り金型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る積層鉄心は、積層された複数の鉄心片と、互いに隣接する前記鉄心片同士を接着する接着剤と、を備える。前記鉄心片は、環状のヨーク部と、前記ヨーク部から径方向に沿って突出する複数のティース部とを有する。前記接着剤は、前記ヨーク部の全体または前記ティース部の全体のうち少なくとも一方において、前記鉄心片の中心軸からの径方向距離が異なり且つ周方向に均等に配置される。
【0008】
また、実施形態の一態様に係る積層鉄心の製造方法は、順送りする工程と、塗布する工程と、形成する工程と、積層する工程と、を含む。順送りする工程は、金属板の下面を複数のリフタによって支持しながら前記金属板を所定の方向に順送りする。塗布する工程は、前記金属板の下面のうち、環状のヨーク部と、前記ヨーク部から径方向に沿って突出する複数のティース部とを有する鉄心片となる鉄心片領域に対して接着剤を塗布する。形成する工程は、前記鉄心片領域を打ち抜き加工して、前記鉄心片を形成する。積層する工程は、互いに隣接する前記鉄心片同士を前記接着剤で接着しながら、複数の前記鉄心片を積層する。前記塗布する工程は、前記接着剤が前記ヨーク部の全体または前記ティース部の全体のうち少なくとも一方において、前記鉄心片の中心軸からの径方向距離が異なり且つ周方向に均等に配置され、かつ前記鉄心片には前記接着剤が塗布されない領域が前記所定の方向に沿って配置される。前記順送りする工程は、少なくとも1つの前記リフタが前記領域を通過するように前記金属板の下面を複数の前記リフタによって支持する。
【0009】
また、実施形態の一態様に係る順送り金型装置は、上型および下型と、複数のリフタと、塗布ユニットと、を備える。上型および下型は、所定の方向に順送りされる帯状の金属板をプレス加工して、環状のヨーク部と、前記ヨーク部から径方向に沿って突出する複数のティース部とを有する鉄心片を形成する。複数のリフタは、前記下型に設けられ、前記金属板が順送りされる際に前記金属板の下面を支持する。塗布ユニットは、前記下型に設けられ、前記金属板の下面に接着剤を塗布する。前記塗布ユニットは、前記接着剤が前記ヨーク部の全体または前記ティース部の全体のうち少なくとも一方において、前記鉄心片の中心軸からの径方向距離が異なり且つ周方向に均等に配置され、かつ前記鉄心片には前記接着剤が塗布されない領域が前記所定の方向に沿って配置されるように前記金属板の下面に前記接着剤を塗布する。少なくとも1つの前記リフタは、前記領域を通過するように前記金属板の下面を支持する。
【発明の効果】
【0010】
実施形態の一態様によれば、リフタへの接着剤の付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る積層鉄心の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る積層鉄心の製造装置の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るプレス加工装置の一例を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る下型の一例を示す平面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るプレス加工装置が実行する各製造工程の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態に係るプレス加工装置によって打ち抜き加工が施される電磁鋼板の一例を示す下面図である。
【
図7】
図7は、実施形態の変形例1に係るプレス加工装置によって打ち抜き加工が施される電磁鋼板の一例を示す下面図である。
【
図8】
図8は、実施形態の変形例2に係るプレス加工装置によって打ち抜き加工が施される電磁鋼板の一例を示す下面図である。
【
図9】
図9は、実施形態の変形例3に係るプレス加工装置によって打ち抜き加工が施される電磁鋼板の一例を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する積層鉄心、積層鉄心の製造方法および順送り金型装置について説明する。なお、以下に示す実施形態により本開示が限定されるものではない。
【0013】
また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0014】
<積層鉄心>
最初に、実施形態に係る積層鉄心1の構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係る積層鉄心1の一例を示す斜視図である。積層鉄心1は、たとえば、固定子積層鉄心であり、固定子(ステータ)の一部である。
【0015】
なお、固定子は、積層鉄心1に巻線が取り付けられたものである。この固定子に回転子(ロータ)が組み合わされることによって、モータが構成される。
【0016】
図1に示すように、積層鉄心1は、たとえば円筒形状である。すなわち、積層鉄心1の中央部分には、中心軸Axに沿って延びる貫通孔1a(中心孔)が設けられている。貫通孔1a内には、回転子が配置可能である。
【0017】
積層鉄心1は、複数の鉄心片Wが積み重ねられた積層体である。鉄心片Wは、帯状の電磁鋼板MS(
図2参照)が所定形状に打ち抜かれた板状体である。
【0018】
なお、実施形態に係る積層鉄心1は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。この「転積」とは、鉄心片W同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の鉄心片Wを積層することをいう。転積は、主に積層鉄心1の板厚偏差を相殺することを目的に実施される。転積の角度は、任意の大きさに設定してもよい。
【0019】
鉄心片Wおよび積層鉄心1は、ヨーク部2と、複数のティース部3とを有する。ヨーク部2は、環状(たとえば、円環状)であり、中心軸Axを囲むように延びている。ヨーク部2の径方向における幅、内径、外径および厚さはそれぞれ、モータの用途および性能に応じて種々の大きさに設定しうる。
【0020】
各ティース部3は、ヨーク部2の内縁から中心軸Ax側に向かうようにヨーク部2の径方向に沿って延びている。すなわち、各ティース部3は、ヨーク部2の内縁から径方向に沿って突出している。
【0021】
たとえば、
図1の例では、12個のティース部3がヨーク部2に一体的に形成されている。各ティース部3は、ヨーク部2の周方向において、略等間隔で並んでいる。隣り合うティース部3の間には、巻線(図示せず)を配置するための空間として機能するスロット4が画定されている。
【0022】
また、高さ方向において隣接する鉄心片W同士は、接着剤B(
図6参照)によって接合されている。かかる接着剤Bの詳細については後述する。
【0023】
<製造装置>
つづいて、実施形態に係る積層鉄心の製造装置100について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、実施形態に係る積層鉄心の製造装置100の一例を示す概略図である。実施形態に係る製造装置100は、帯状の電磁鋼板MSから鉄心片W(
図1参照)の積層体10(
図3参照)を製造するように構成される。
【0024】
なお、以下参照する各図面では、理解を容易にするため、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向、X軸正方向を電磁鋼板MSの順送り方向、Y軸を電磁鋼板MSの幅方向とする直交座標系を示す場合がある。
【0025】
図2に示すように、製造装置100は、アンコイラー110と、送出装置120と、プレス加工装置130と、コントローラCtr(制御部)とを備える。プレス加工装置130は、順送り金型装置の一例である。
【0026】
アンコイラー110は、コイル材111を回転自在に保持するように構成される。コイル材111は、電磁鋼板MSがコイル状(渦巻状)に巻回されたものである。電磁鋼板MSは、金属板の一例である。
【0027】
送出装置120は、電磁鋼板MSを上下から挟み込む一対のローラ121、122を有する。一対のローラ121、122は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて回転および停止し、電磁鋼板MSをプレス加工装置130に向けて間欠的に順次送り出す(以下、「順送り」とも呼称する。)ように構成されている。すなわち、一対のローラ121、122は、電磁鋼板MSを搬送するための搬送手段としての機能を有する。
【0028】
プレス加工装置130は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作するように構成される。プレス加工装置130は、たとえば、複数のパンチP1~P4(
図3参照)を動作させて、送出装置120によって送り出される電磁鋼板MSに順次プレス加工(たとえば、打ち抜き加工や半抜き加工など)を施す。これにより、プレス加工装置130は、複数の鉄心片Wを形成するように構成される。
【0029】
プレス加工装置130は、下型140と、上型150と、プレス機160とを有する。下型140は、順送りされる電磁鋼板MSの下方に位置し、かかる電磁鋼板MSを下方から支持する。上型150は、順送りされる電磁鋼板MSの上方に位置し、上下動することにより電磁鋼板MSをプレス加工する。下型140および上型150の詳細については後述する。
【0030】
プレス機160は、上型150の上方に位置する。プレス機160のピストンは、上型150に設けられる複数のパンチを保持するパンチホルダ151(
図3参照)に接続されており、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。プレス機160が動作すると、そのピストンが伸縮して、上型150が全体的に上下動する。
【0031】
コントローラCtrは、たとえば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラムまたはオペレータからの操作入力などに基づいて、送出装置120およびプレス加工装置130を動作させるための指示信号を生成するように構成される。コントローラCtrは、送出装置120およびプレス加工装置130にこの指示信号をそれぞれ送信するように構成される。
【0032】
<プレス加工装置>
つづいて、実施形態に係るプレス加工装置130の詳細について、
図3および
図4を参照しながら説明する。
図3は、実施形態に係るプレス加工装置130の一例を示す概略断面図であり、
図4は、実施形態に係る下型140の一例を示す平面図である。
【0033】
なお、
図4では、理解を容易にするため、打ち抜き加工の最後の部分に対応する下型140について示すとともに、下型140の上方を通過する電磁鋼板MSなどの位置についても示している。
【0034】
図3に示すように、プレス加工装置130は、下型140と、上型150と、プレス機160とを備える。また、下型140は、ベース141と、ダイホルダ142と、ダイ部材D1~D4と、塗布ユニット143と、複数のガイドポスト144と、搬送機構145とを有する。
【0035】
ベース141は、たとえば床面上に固定されており、プレス加工装置130全体の土台として機能する。ダイホルダ142は、ベース141上に支持される。ダイホルダ142には、複数の排出孔C1~C4が形成される。ダイホルダ142は、たとえば、焼き入れなどの熱処理が施されていない鋼材(生材)で構成されてもよい。
【0036】
複数の排出孔C1~C4は、たとえば、ダイホルダ142の内部において上下方向に延びる。複数の排出孔C1~C4からは、電磁鋼板MSより打ち抜かれた材料(たとえば、鉄心片Wや廃材など)が排出される。
【0037】
ダイ部材D1~D4は、電磁鋼板MSの搬送方向において互いに隣接するように、ダイホルダ142の上部に取り付けられる。複数のダイ部材D1~D4は、電磁鋼板MSの搬送方向において、上流側から下流側に向けてこの順に並んでいる。また、ダイ部材D3とダイ部材D4との間には、塗布ユニット143が設けられる。
【0038】
ダイ部材D1~D3は、基本的に共通の構成である。ダイ部材D1は、ダイプレートD11と、ダイD12とを有する。ダイプレートD11は、中央部に形成される貫通孔内にダイD12を保持するように構成される。ダイプレートD11は、たとえば、焼き入れなどの熱処理が施された鋼材で構成される。
【0039】
ダイD12は、たとえば、炭化タングステンを含む超硬合金で構成される。ダイD12には、上下方向に貫通するダイ孔D13が形成される。かかるダイ孔D13は、上型150のパンチP1とともに、電磁鋼板MSを打ち抜き加工するためのユニットを構成する。
【0040】
また、ダイ孔D13は、ダイホルダ142の排出孔C1と連通している。ダイ孔D13内にパンチP1が挿抜されることで、ダイ孔D13の輪郭に沿った形状で電磁鋼板MSが打ち抜き加工される。電磁鋼板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C1を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。
【0041】
ダイ部材D2は、ダイプレートD21と、ダイD22とを有する。ダイプレートD21は、中央部に形成される貫通孔内にダイD22を保持するように構成される。ダイプレートD21およびダイD22の材質はそれぞれ、ダイプレートD11およびダイD12の材質と同じであってもよい。
【0042】
ダイD22には、上下方向に貫通するダイ孔D23が形成される。ダイ孔D23は、上型150のパンチP2とともに、電磁鋼板MSを打ち抜き加工するためのユニットを構成する。
【0043】
また、ダイ孔D23は、ダイホルダ142の排出孔C2と連通している。ダイ孔D23内にパンチP2が挿抜されることで、ダイ孔D23の輪郭に沿った形状で電磁鋼板MSが打ち抜き加工される。電磁鋼板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C2を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。
【0044】
ダイ部材D3は、ダイプレートD31と、ダイD32とを有する。ダイプレートD31は、中央部に形成される貫通孔内にダイD32を保持するように構成される。ダイプレートD31およびダイD32の材質はそれぞれ、ダイプレートD11およびダイD12の材質と同じであってもよい。
【0045】
ダイD32には、上下方向に貫通するダイ孔D33が形成される。ダイ孔D33は、上型150のパンチP3とともに、電磁鋼板MSを打ち抜き加工するためのユニットを構成する。
【0046】
また、ダイ孔D33は、ダイホルダ142の排出孔C3と連通している。ダイ孔D33内にパンチP3が挿抜されることで、ダイ孔D33の輪郭に沿った形状で電磁鋼板MSが打ち抜き加工される。電磁鋼板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C3を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。
【0047】
本開示では、たとえば、ダイ部材D1~D3による打ち抜き加工によって、貫通孔1a(
図2参照)に対応する鉄心片Wの貫通孔やスロット4(
図2参照)に対応する鉄心片Wの凹部が電磁鋼板MSに形成される。
【0048】
塗布ユニット143は、電磁鋼板MSの下面MS1(
図6参照)に対して接着剤B(
図6参照)を塗布する機能を有する。塗布ユニット143は、
図4に示すように、矩形状を呈する板状体であり、ダイ部材D1~D4と同様にダイホルダ142上に配置することができる。
【0049】
また、塗布ユニット143の表面には、接着剤Bを吐出する複数の吐出口147が形成される。吐出口147は、たとえば、平面視で略円環状に配置され、鉄心片Wに対応する鉄心片領域Rに対して接着剤Bが塗布されるような配置となっている。かかる鉄心片領域Rにおける具体的な接着剤Bの配置については後述する。
【0050】
図3に示すように、塗布ユニット143の内部には、吐出口147に接続されて吐出口147まで接着剤Bを供給する供給路L1が設けられる。供給路L1における吐出口147側とは反対側の端部148は、外部に設けられるタンク149に対して配管L2を介して接続される。
【0051】
タンク149と端部148との間の配管L2には、ポンプPが設けられる。ポンプPは、たとえばコントローラCtrの指示に基づいて駆動することで、タンク149から塗布ユニット143へ向けて接着剤Bを供給する。塗布ユニット143に供給された接着剤Bは、供給路L1を経由して複数の吐出口147から電磁鋼板MSの下面MS1に向けて吐出される。
【0052】
ダイ部材D4は、ダイプレートD41と、ダイD42と、回転体D44と、駆動機構D45とを有する。ダイプレートD41は、中央部に形成される貫通孔内で回転体D44に支持されるダイD42を保持するように構成される。
【0053】
回転体D44は、ダイプレートD41とダイD42との間に設けられる。回転体D44は、ダイプレートD41に対して、鉛直方向に沿って延びる中心軸周りに回転可能となるように保持される。
【0054】
また、ダイD42は、回転体D44に支持される。それにより、ダイD42は、回転体D44に支持された状態でダイプレートD41に対して、鉛直方向に沿って延びる中心軸周りに回転可能となる。ダイプレートD41の材質はダイプレートD11の材質と同じであってもよく、ダイD42および回転体D44の材質はダイD12の材質と同じであってもよい。
【0055】
ダイD42には、上下方向に貫通するダイ孔D43が形成される。ダイ孔D43は、上型150のパンチP4とともに、電磁鋼板MSを打ち抜き加工するためのユニットを構成する。かかるユニットが電磁鋼板MSを打ち抜き加工することで、電磁鋼板MSから鉄心片Wが形成される。ダイ孔D43は、たとえば、全体として円形状である。
【0056】
ダイ孔D43は、ダイホルダ142の排出孔C4と連通している。ダイ孔D43内にパンチP4が挿抜されることで、ダイ孔D43の輪郭に沿った形状で電磁鋼板MSが打ち抜き加工される。電磁鋼板MSから打ち抜かれた鉄心片Wは、先行して打ち抜かれた鉄心片Wに対してダイ孔D43内において積層される。
【0057】
この際、電磁鋼板MSから打ち抜かれた鉄心片Wは、その下面MS1に塗布された接着剤Bによって、先行して打ち抜かれた鉄心片Wに対して接着される。所定枚数の鉄心片Wがダイ孔D43内において積層されると、得られた積層体10が排出孔C4を通じて搬送機構145に載置される。
【0058】
駆動機構D45は、回転体D44に接続される。駆動機構D45は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、回転体D44およびダイD42の中心軸周りに回転体D44を回転させる。
【0059】
これにより、コントローラCtrは、電磁鋼板MSから打ち抜かれた鉄心片Wを、先行して積層された鉄心片Wに対して転積させることができる。すなわち、回転体D44および駆動機構D45は、鉄心片Wの転積を行う転積手段として機能する。駆動機構D45は、たとえば、回転モータ、歯車、タイミングベルトなどの組み合わせによって構成される。
【0060】
複数のガイドポスト144は、
図3に示すように、ダイホルダ142から上方に向けて直線状に延びている。複数のガイドポスト144は、ガイドブッシュ151aとともに、上型150を上下方向に案内するように構成される。なお、複数のガイドポスト144は、上型150から下方に向けて延びるように上型150に取り付けられていてもよい。
【0061】
搬送機構145は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、ダイD42から落下した積層体10を後続の装置(たとえば、磁石取付装置、樹脂注入装置、溶接装置、シャフト取付装置など)に送り出すように構成される。
【0062】
搬送機構145は、搬送機構145の一端は排出孔C4内に位置し、搬送機構145の他端はプレス加工装置130の外部に位置する。搬送機構145は、たとえば、ベルトコンベアである。
【0063】
図3に示すように、ダイプレートD11~D41および塗布ユニット143の表面は平坦である。また、ダイプレートD11~D41および塗布ユニット143には、その表面から上方へ突出するリフタ146が設けられる。
【0064】
リフタ146は、ダイプレートD11~D41および塗布ユニット143上を搬送される電磁鋼板MSを、ダイプレートD11~D41および塗布ユニット143の表面から離間した状態で支持するように設けられる。
【0065】
なお、リフタ146の配置は特に限定されない。
図4では、ダイ部材上を搬送される電磁鋼板MSを破線として示しているが、一例として、ダイプレートD31、D41上を搬送される電磁鋼板MSの両端の近傍にリフタ146を設けることができる。
【0066】
図4に示すように、リフタ146は、たとえば、電磁鋼板MSを順送りする方向Dに沿って複数並べられる。方向Dは、所定の方向の一例である。
【0067】
リフタ146は、上型150の上下動によって電磁鋼板MSに対する打ち抜き加工が行われる際には、リフタ146の上端がダイプレートD11~D41および塗布ユニット143の表面と同じ高さになることができる。リフタ146は、たとえば、上下方向に延びるピンをその下方に設けられた弾性部材によって支持することで、上下動が可能な構成とすることができる。
【0068】
このような構成とすることで、電磁鋼板MSが搬送される際には、上型150に付勢されないリフタ146が上方に延びるため、リフタ146は、ダイプレートD11~D41および塗布ユニット143の表面から電磁鋼板MSを離間した状態で支持できる。
【0069】
一方、電磁鋼板MSに対する打ち抜き加工が行われる際には、上型150に付勢されたリフタ146が下方に下がることで、電磁鋼板MSは、ダイプレートD11~D41および塗布ユニット143の表面に押し当てられる。なお、リフタ146は上記の構成に限定されるものではない。
【0070】
また、ダイプレートD11~D41および塗布ユニット143の表面には、
図4に示すように、複数のパイロット孔H1が形成される。かかる複数のパイロット孔H1は、ダイプレートD11~D41および塗布ユニット143の内部で鉛直方向に沿って延びるように形成される。
【0071】
かかるパイロット孔H1は、パンチP1~P4による電磁鋼板MSの打ち抜き加工に際して、上型150に設けられるパイロットピン(図示せず)により電磁鋼板MSを位置決めするための基準となる孔である。
【0072】
なお、
図3の例では、ダイ部材D1~D3と、塗布ユニット143と、ダイ部材D4とが一体で構成される例について示したが、本開示はかかる例に限られず、ダイ部材D1~D3と、塗布ユニット143と、ダイ部材D4とがそれぞれ別体で構成されてもよい。
【0073】
上型150は、パンチホルダ151と、ストリッパ152と、複数のパンチP1~P4とを有する。パンチホルダ151は、ダイホルダ142と対向するようにダイホルダ142の上方に配置される。パンチホルダ151は、その下面側において複数のパンチP1~P4を保持するように構成される。
【0074】
パンチホルダ151には、複数のガイドブッシュ151aが設けられる。複数のガイドブッシュ151aは、複数のガイドポスト144にそれぞれ対応するように位置する。ガイドブッシュ151aは、たとえば円筒状であり、ガイドポスト144がガイドブッシュ151aの内部空間を挿通可能である。なお、ガイドポスト144が上型150に取り付けられている場合、ガイドブッシュ151aは下型140に設けられてもよい。
【0075】
パンチホルダ151には、複数の貫通孔151bが形成される。貫通孔151bの内周面には、階段状の段差が形成される。そのため、貫通孔151bの上部の径は、貫通孔151bの下部の径よりも大きく設定される。
【0076】
ストリッパ152は、パンチP1~P4で電磁鋼板MSを打ち抜く際に、パンチP1~P4に食いついた電磁鋼板MSをパンチP1~P4から取り除くように構成される。同時に、ストリッパ152は、パンチP1~P4で電磁鋼板MSを打ち抜く際に、電磁鋼板MSをダイプレートD11~D41および塗布ユニット143に押し当てるように構成される。
【0077】
ストリッパ152が電磁鋼板MSを塗布ユニット143に押し当てることで、吐出口147から吐出された接着剤Bが電磁鋼板MSの下面MS1の所定位置に塗布される。ストリッパ152は、ダイ部材D1~D4および塗布ユニット143とパンチホルダ151との間に配置される。
【0078】
ストリッパ152は、接続部材152aを介してパンチホルダ151と接続される。接続部材152aは、長尺状の本体部と、かかる本体部の上端に設けられる頭部とを有する。接続部材152aの本体部は、貫通孔151bの下部に挿通され、貫通孔151b内を昇降可能である。
【0079】
接続部材152aの本体部の下端は、ストリッパ152に固定される。接続部材152aの本体部の周囲には、たとえば、パンチホルダ151とストリッパ152との間に位置するように、圧縮コイルばねなどの付勢部材152bが取り付けられる。
【0080】
接続部材152aの頭部は、貫通孔151bの上部に位置する。接続部材152aの頭部の外形は、上方から見た場合に、接続部材152aの本体部の外形よりも大きく設定される。
【0081】
そのため、接続部材152aの頭部は、本体部が昇降する際に、かかる本体部が貫通孔151bから抜けないためのストッパとして機能する。さらに、接続部材152aの頭部によって、ストリッパ152は、パンチホルダ151に吊り下げ保持される。
【0082】
ストリッパ152には、パンチP1~P4に対応する位置に複数の貫通孔がそれぞれ形成される。各貫通孔はそれぞれ、上下方向に延びる。各貫通孔は、上方から見たときに、対応するダイ孔D13~D43とそれぞれ連通する。各貫通孔内には、パンチP1~P4の下部がそれぞれ挿通される。パンチP1~P4の下部は、各貫通孔内においてそれぞれスライド可能である。
【0083】
パンチP1~P4は、プレス加工装置130の上流側から下流側に向けてこの順に並ぶように配置される。パンチP1~P4の下端部は、それぞれダイ孔D13~D43に対応する形状を有する。
【0084】
なお、
図3の例では、プレス加工装置130にダイ部材およびパンチが4つずつ設けられる例について示したが、本開示はかかる例に限られず、積層鉄心1および鉄心片Wの形状に応じてダイ部材およびパンチの数はさまざまに変更可能である。
【0085】
プレス機160は、上型150の上方に位置する。プレス機160のピストンは、パンチホルダ151に接続され、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。プレス機160が動作すると、そのピストンが伸縮して、上型150が全体的に上下動する。
【0086】
<製造工程>
つづいて、実施形態に係るプレス加工装置130での積層鉄心1の製造工程について、ここまで説明した
図3および
図4に加えて、
図5および
図6も参照しながら説明する。
図5は、実施形態に係るプレス加工装置130が実行する各製造工程の手順の一例を示すフローチャートである。
【0087】
図5に示すように、コントローラCtr(
図1参照)は、まず、送出装置120(
図2参照)などを制御して、電磁鋼板MS(
図2参照)をプレス加工装置130(
図2参照)内で方向Dに沿って所定のピッチだけ順送りする(ステップS1)。
【0088】
また、かかるステップS1の工程と並行して、プレス加工工程(ステップS2)、接着剤塗布工程(ステップS3)および鉄心片形成工程(ステップS4)がこの順に実施される。
【0089】
プレス加工工程(ステップS2)では、コントローラCtrが、プレス加工装置130を制御して、上型150(
図3参照)を下降させて上型150と下型140(
図3参照)とで電磁鋼板MSを挟持し、電磁鋼板MSにプレス加工を施す。これにより、鉄心片W(
図1参照)においてティース部3(
図1参照)などが形成される。
【0090】
接着剤塗布工程(ステップS3)では、コントローラCtrが、塗布ユニット143(
図4参照)を制御して、電磁鋼板MSの下面MS1(
図6参照)に接着剤Bを塗布する。なお、積層体10(
図3参照)における最も下の鉄心片Wには、接着剤Bは塗布されない。
【0091】
鉄心片形成工程(ステップS4)では、コントローラCtrが、プレス加工装置130を制御して、上型150を下降させて上型150と下型140とで電磁鋼板MSを挟持し、電磁鋼板MSを打ち抜いて鉄心片Wを形成する。
【0092】
次に、コントローラCtrは、プレス加工装置130を制御して、複数の鉄心片Wを積層させて、積層鉄心1となる積層体10を形成する(ステップS5)。
【0093】
次に、コントローラCtrは、所定の枚数の鉄心片Wが積層されて、積層体10の形成工程が終了したか否かを判定する(ステップS6)。そして、積層体10の形成工程が終了している場合(ステップS6,Yes)、一連の処理を終了する。一方で、積層体10の形成工程が終了していない場合(ステップS6,No)、ステップS1およびS2の工程に戻る。
【0094】
次に、本開示の技術が適用される接着剤塗布工程の詳細について、
図6を参照しながら説明する。
図6は、実施形態に係るプレス加工装置130によって打ち抜き加工が施される電磁鋼板MSの一例を示す下面図である。
【0095】
なお、
図6では、理解を容易にするため、打ち抜き加工の最後の部分に対応する電磁鋼板MSについて示すとともに、下型140(
図4参照)に設けられるリフタ146などの位置についても示している。
【0096】
また、
図6において黒塗りで示す部位は、塗布ユニット143およびダイ部材D1に到達するまでに打ち抜き加工が施されている部位である。すなわち、実施形態に係る電磁鋼板MSは、
図6に示すように、接着剤Bの塗布が行われる塗布ユニット143、および打ち抜き加工が行われるダイ部材D4に到達する際に、貫通孔1a(
図1参照)やスロット4(
図1参照)に対応する各部が打ち抜かれている。
【0097】
また、電磁鋼板MSには、上流側のダイ部材D1~D3(
図3参照)において、両方の縁部にパイロット孔H2が打ち抜き加工で形成される。かかるパイロット孔H2は、プレス加工装置130(
図1参照)に設けられる各ダイ部材において、パンチP1~P4(
図3参照)による電磁鋼板MSの打ち抜き加工に際して電磁鋼板MSをパイロットピン(図示せず)により位置決めするために形成される。
【0098】
そして、プレス加工装置130は、塗布ユニット143において、電磁鋼板MSの下面MS1に接着剤Bを塗布する。さらに、方向Dに沿って塗布ユニット143からダイ部材D4に順送りされた電磁鋼板MSに対して、プレス加工装置130は、鉄心片W(
図1参照)の全体に対応する部位を打ち抜く。
【0099】
なお、
図6において、斜線状のハッチングが施されている部位は、ダイ部材D4において打ち抜き加工が施される部位である。これにより、プレス加工装置130において、1枚の鉄心片Wが形成される。
【0100】
ここで、実施形態では、鉄心片Wに対応する鉄心片領域Rに塗布される接着剤Bが、ヨーク部2において周方向に均等に配置される。たとえば、
図6の例では、ヨーク部2に塗布される12個の接着剤Bが、周方向に30(°)間隔で均等に配置される。
【0101】
さらに、実施形態では、
図6に示すように、接着剤Bの塗布工程において、鉄心片Wに対応する鉄心片領域Rの一部に、領域Nが形成される。この領域Nとは、鉄心片Wに対応する鉄心片領域Rと、リフタ146aが電磁鋼板MSの下面MS1と当接する当接領域Sとが重複する領域である。
【0102】
なお、リフタ146aとは、複数のリフタ146のうち、塗布ユニット143に設けられる吐出口群と、ダイ部材D4のダイ孔D43(
図4参照)との間に位置するリフタのことである。リフタ146aは、たとえば、プレス加工装置130に複数(図では4つ)設けられ、かかる複数のリフタ146aは方向Dに沿って2列に並んで配置される。
【0103】
図6に示すように、リフタ146が方向Dに沿って並んでいる場合、塗布ユニット143に設けられる吐出口群よりも下流側のリフタ146aは、接着剤Bが塗布された後の電磁鋼板MSを支持することになる。
【0104】
このような条件では、リフタ146aが、電磁鋼板MSの下面MS1のうち、一点鎖線で示す当接領域Sと当接しうる。当接領域Sは、順送りの方向Dに沿って延びるとともに、リフタ146aと重なる。
【0105】
この実施形態では、ヨーク部2の全体において、複数の接着剤Bが鉄心片Wの中心軸Ax(
図1参照)からの径方向距離が異なりかつ周方向に均等に配置されることで、領域Nに接着剤Bを塗布しないようにすることができる。これにより、リフタ146への接着剤Bの付着を抑制することができる。
【0106】
また、実施形態では、電磁鋼板MSを幅広とすることなどを防ぎながら、リフタ146に対する接着剤Bの付着を防止することができるため、材料費の増加も抑制することができる。
【0107】
また、実施形態では、複数の接着剤Bが、鉄心片Wのヨーク部2において周方向に均等に配置されるとよい。これにより、上記のような領域Nを有する鉄心片Wを積層して形成した積層鉄心1であっても、一方向のみ剛性が低下することを抑制することができる。さらに、実施形態では、接着剤Bの有無に応じた厚さの偏りなどの発生も抑制することができる。
【0108】
なお、
図6の例では、ヨーク部2に塗布される12個の接着剤Bが周方向に30(°)間隔で均等に配置される例について示したが、本開示はかかる例に限られず、ヨーク部2に塗布される接着剤Bの数は適宜設定することが可能である。
【0109】
また、実施形態では、ヨーク部2において周方向に並んで配置される複数の接着剤Bが千鳥状に配置されてもよい。これにより、ヨーク部2の全体に複数の接着剤Bをバランスよく配置できることから、一方向のみ剛性が低下することをさらに抑制することができる。
【0110】
なお、実施形態では、鉄心片Wのティース部3にも接着剤Bが配置されてもよい。たとえば、
図6の例では、周方向に並んで位置するすべてのティース部3に接着剤Bが1つずつ配置される。また、かかるティース部3の全体に位置する複数の接着剤Bは、鉄心片Wの中心軸Axからの径方向距離が同じであり、かつ周方向に均等に配置される。
【0111】
また、実施形態では、複数の鉄心片Wが転積されながら積層されてもよいし、複数の鉄心片Wが転積されずに積層されてもよい。たとえば、複数の鉄心片Wが転積されながら積層される場合、実施形態では、積層方向に沿って隣接する接着剤B同士が、平面視で互いに異なる位置に(すなわち、重ならないように)配置されてもよい。
【0112】
これにより、複数の接着剤Bが鉄心片Wのヨーク部2において周方向にさらに均等に配置されることから、積層鉄心1において一方向のみ剛性が低下することをさらに抑制することができる。
【0113】
なお、複数の鉄心片Wを転積しながら積層する場合、一枚毎に角度をずらしながら転積してもよいし、複数枚毎に角度をずらしながら転積してもよい。またそれらの結果、積層方向に沿って隣接する接着剤B同士が、平面視で互いに重なって配置されてもよい。
【0114】
積層方向に沿って隣接する接着剤B同士が平面視で互いに重なって配置される場合でも、複数の接着剤Bが鉄心片Wのヨーク部2において周方向に均等に配置されることから、積層鉄心1において一方向のみ剛性が低下することを抑制することができる。
【0115】
<各種変形例>
つづいて、上述の実施形態の各種変形例について、
図7~
図9を参照しながら説明する。
図7は、実施形態の変形例1に係るプレス加工装置130によって打ち抜き加工が施される電磁鋼板MSの一例を示す下面図である。
【0116】
図7に示すように、変形例1では、ヨーク部2に配置される複数の接着剤Bが、鉄心片Wの中心軸Ax(
図1参照)からの径方向距離が同じであり、かつ周方向に均等に配置される。
【0117】
一方で、変形例1では、ティース部3の全体に位置する複数の接着剤Bが、鉄心片Wの中心軸Axからの径方向距離が異なり、かつ周方向に均等に配置される。たとえば、
図7の例では、ティース部3の全体において、周方向に並んで配置される複数の接着剤Bが千鳥状に配置される。
【0118】
これにより、方向Dに沿って延びるようにティース部3およびヨーク部2に形成された領域Nに接着剤Bを塗布しないようにすることができる。したがって、変形例1によれば、上述の実施形態と比べてリフタ146が内側に配置される場合でも、かかるリフタ146への接着剤Bの付着を抑制することができる。
【0119】
図8は、実施形態の変形例2に係るプレス加工装置130によって打ち抜き加工が施される電磁鋼板MSの一例を示す下面図である。
図8に示すように、変形例2では、ヨーク部2の全体およびティース部3の全体にそれぞれ位置する複数の接着剤Bが、鉄心片Wの中心軸Axからの径方向距離が異なり、かつ周方向に均等に配置される。
【0120】
たとえば、変形例2では、ヨーク部2の全体およびティース部3の全体にそれぞれ位置する複数の接着剤Bが、周方向に千鳥状に配置される。
【0121】
これにより、方向Dに沿って延びるようにヨーク部2およびティース部3に形成された領域Nに接着剤Bを塗布しないようにすることができる。したがって、変形例2によれば、リフタ146が電磁鋼板MSの外側および内側に配置される場合でも、かかるリフタ146への接着剤Bの付着を抑制することができる。
【0122】
図9は、実施形態の変形例3に係るプレス加工装置130によって打ち抜き加工が施される電磁鋼板MSの一例を示す下面図である。
【0123】
図9に示すように、変形例3では、ヨーク部2における複数の接着剤Bの配置が上述の実施形態と異なる。具体的には、変形例3では、ヨーク部2に位置する複数の接着剤Bのうち、当接領域Sに近接しうる接着剤Bは千鳥状に配置される一方、その他の接着剤Bは鉄心片Wの中心軸Ax(
図1参照)からの径方向距離が同じになるように配置される。
【0124】
これによっても、当接領域Sに近接しうる接着剤Bを千鳥状に配置することで、方向Dに沿って延びるようにヨーク部2に形成された領域Nに接着剤Bを塗布しないようにすることができる。したがって、変形例3によれば、リフタ146への接着剤Bの付着を抑制することができる。
【0125】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。たとえば、上記の実施形態では、複数のリフタ146aが鉄心片Wの領域Nを通過するように配置される例について示したが、本開示はかかる例に限られず、1つのリフタ146aが鉄心片Wの領域Nを通過するように配置されてもよい。
【0126】
また、上記の実施形態では、電磁鋼板MSを打ち抜き加工するプレス加工装置130について示したが、本開示はかかる例に限られない。たとえば、電磁鋼板MSを半抜き加工してもよいし、電磁鋼板MSとは異なる金属板を打ち抜き加工または半抜き加工してもよい。
【0127】
以上のように、実施形態に係る積層鉄心1は、積層された複数の鉄心片Wと、互いに隣接する鉄心片W同士を接着する接着剤Bと、を備える。鉄心片Wは、環状のヨーク部2と、ヨーク部2から径方向に沿って突出する複数のティース部3とを有する。接着剤Bは、ヨーク部2の全体またはティース部3の全体のうち少なくとも一方において、鉄心片Wの中心軸Axからの径方向距離が異なり且つ周方向に均等に配置される。これにより、リフタ146への接着剤Bの付着を抑制することができる。
【0128】
また、実施形態に係る積層鉄心1において、鉄心片Wは、所定の方向Dに沿って配置される領域Nを有し、領域Nには、接着剤Bが塗布されない。これにより、リフタ146への接着剤Bの付着を抑制することができる。
【0129】
また、実施形態に係る積層鉄心1において、接着剤Bは、周方向に千鳥状に配置される。これにより、一方向のみ剛性が低下することをさらに抑制することができる。
【0130】
また、実施形態に係る積層鉄心1において、積層方向に沿って隣接する接着剤B同士は、平面視で互いに重なって配置される。これにより、積層鉄心1において一方向のみ剛性が低下することを抑制することができる。
【0131】
また、実施形態に係る積層鉄心1において、積層方向に沿って隣接する接着剤B同士は、平面視で互いに異なる位置に配置される。これにより、積層鉄心1において一方向のみ剛性が低下することをさらに抑制することができる。
【0132】
また、実施形態に係る積層鉄心1の製造方法は、順送りする工程(ステップS1)と、塗布する工程(ステップS3)と、形成する工程(ステップS4)と、積層する工程(ステップS5)と、を含む。順送りする工程(ステップS1)は、金属板(電磁鋼板MS)の下面MS1を複数のリフタ146によって支持しながら金属板(電磁鋼板MS)を所定の方向Dに順送りする。塗布する工程(ステップS3)は、金属板(電磁鋼板MS)の下面MS1のうち、環状のヨーク部2と、ヨーク部2から径方向に沿って突出する複数のティース部3とを有する鉄心片Wとなる鉄心片領域Rに対して接着剤Bを塗布する。形成する工程(ステップS4)は、接着剤Bが塗布された鉄心片領域Rを打ち抜き加工して、鉄心片Wを形成する。積層する工程(ステップS5)は、互いに隣接する鉄心片W同士を接着剤Bで接着しながら、複数の鉄心片Wを積層する。また、塗布する工程(ステップS3)は、接着剤Bがヨーク部2の全体またはティース部3の全体のうち少なくとも一方において、鉄心片Wの中心軸Axからの径方向距離が異なり且つ周方向に均等に配置され、且つ鉄心片Wには領域Nが所定の方向Dに沿って配置される。また、順送りする工程(ステップS1)は、少なくとも1つのリフタ146aが領域Nを通過するように金属板(電磁鋼板MS)の下面MS1を複数のリフタ146によって支持する。これにより、リフタ146への接着剤Bの付着を抑制することができる。
【0133】
また、実施形態に係る積層鉄心1の製造方法において、塗布する工程(ステップS3)において、接着剤Bは、周方向に千鳥状に配置される。これにより、一方向のみ剛性が低下することをさらに抑制することができる。
【0134】
また、実施形態に係る積層鉄心1の製造方法において、積層する工程(ステップS5)において、積層方向に沿って隣接する接着剤B同士は、平面視で互いに重なって配置される。これにより、積層鉄心1において一方向のみ剛性が低下することを抑制することができる。
【0135】
また、実施形態に係る積層鉄心1の製造方法において、積層する工程(ステップS5)において、積層方向に沿って隣接する接着剤B同士は、平面視で互いに異なる位置に配置される。これにより、積層鉄心1において一方向のみ剛性が低下することをさらに抑制することができる。
【0136】
また、実施形態に係る順送り金型装置(プレス加工装置130)は、上型150および下型140と、複数のリフタ146と、塗布ユニット143と、を備える。上型150および下型140は、所定の方向Dに順送りされる帯状の金属板(電磁鋼板MS)をプレス加工して、環状のヨーク部2と、ヨーク部2から径方向に沿って突出する複数のティース部3とを有する鉄心片Wを形成する。複数のリフタ146は、下型140に設けられ、金属板(電磁鋼板MS)が順送りされる際に金属板(電磁鋼板MS)の下面MS1を支持する。塗布ユニット143は、下型140に設けられ、金属板(電磁鋼板MS)の下面MS1に接着剤Bを塗布する。また、塗布ユニット143は、接着剤Bがヨーク部2の全体またはティース部3の全体のうち少なくとも一方において、鉄心片Wの中心軸Axからの径方向距離が異なり且つ周方向に均等に配置され、且つ鉄心片Wには接着剤Bが塗布されない領域Nが所定の方向Dに沿って配置されるように金属板(電磁鋼板MS)の下面MS1に接着剤Bを塗布する。また、少なくとも1つのリフタ146aは、領域Nを通過するように金属板(電磁鋼板MS)の下面MS1を支持する。これにより、リフタ146への接着剤Bの付着を抑制することができる。
【0137】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0138】
1 積層鉄心
2 ヨーク部
3 ティース部
100 製造装置
130 プレス加工装置(順送り金型装置の一例)
140 下型
146、146a リフタ
150 上型
Ax 中心軸
B 接着剤
D 方向
MS 電磁鋼板(金属板の一例)
N 領域
R 鉄心片領域
S 当接領域
W 鉄心片