(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132239
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】剥離紙の剥離装置及び剥離方法
(51)【国際特許分類】
B65H 41/00 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
B65H41/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037448
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】日高 直哉
【テーマコード(参考)】
3F108
【Fターム(参考)】
3F108JA02
(57)【要約】
【課題】本発明は、吸着パッド又はハンドで把持した箇所からの剥離紙のずれを最小限に抑え、確実に剥離作業を行うことができる剥離紙の剥離装置及び剥離方法を提供する。
【解決手段】計測部1で計測した剥離量と予め定められた基準の剥離紙長さとを比較し、該比較結果から剥離速度の実測値を算出する剥離速度算出部2と、該剥離速度算出部2で算出した剥離速度の実測値及び剥離速度の理論しきい値を比較し、その比較結果に基づきハンドによる剥離作業を制御する制御実行部3とを有する。この制御実行部3は、剥離速度の実測値が剥離速度の理論しきい値未満のとき、剥離紙を把持した箇所からハンドがずれたと判断して、該ハンドの角度をずれ量に応じた角度に変更し、また、剥離速度の実測値が、計算による理論値と等しくなるように、該ハンドの移動速度を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体に貼りついている剥離紙をハンドの把持により剥離する剥離装置であって、
剥離中に剥離紙の剥離量を計測する計測部と、
該計測部で計測した剥離量と予め定められた基準の剥離紙長さとを比較し、該比較結果から剥離速度の実測値を算出する剥離速度算出部と、
該剥離速度算出部で算出した剥離速度の実測値及び剥離速度の理論しきい値を比較し、その比較結果に基づき前記ハンドによる剥離作業を制御する制御実行部と、を有しており、
前記制御実行部は、前記剥離速度の実測値が前記剥離速度の理論しきい値未満のとき、前記剥離紙を把持した箇所から前記ハンドがずれたと判断して、該ハンドの角度をずれ量に応じた角度に変更し、また、前記剥離速度の実測値が、計算による理論値と等しくなるように、該ハンドの移動速度を制御することを特徴とする剥離紙の剥離装置。
【請求項2】
前記制御実行部は、前記計測部で計測した剥離量が予め定められた剥離紙の長さに到達したときに演算処理を終了することを特徴とする請求項1に記載の剥離紙の剥離装置。
【請求項3】
前記制御実行部は、前記剥離速度算出部で算出した剥離速度の実測値に基づき剥離速度の理論しきい値を変更することを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の剥離紙の剥離装置。
【請求項4】
前記基準となる剥離紙長さ及び前記剥離速度の理論しきい値等のしきい値はデータ記憶部に記憶されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の剥離紙の剥離装置。
【請求項5】
被着体に貼りついている剥離紙をハンドの把持により剥離する剥離装置であって、
剥離中に剥離紙の剥離量を計測する計測部と、
該計測部で計測した剥離量と予め定められた基準の剥離紙長さとを比較し、該比較結果から剥離速度の実測値を算出する剥離速度算出部と、
前記剥離紙を把持した箇所からの前記ハンドのずれ量に基づき該ハンドによる剥離作業を制御する制御実行部と、を有しており、
前記制御実行部は、前記剥離速度算出部にて前記計測部で計測した剥離量が基準の剥離紙長さ未満であるとの比較結果である場合に、前記ハンドの角度をずれ量に応じた角度に変更し、また、前記剥離速度の実測値が、計算による理論値と等しくなるように、該ハンドの移動速度を制御することを特徴とする剥離紙の剥離装置。
【請求項6】
被着体に貼りついている剥離紙をハンドの把持により剥離する剥離方法であって、
剥離中に剥離紙の剥離量を計測する計測段階と、
該計測段階で計測した剥離量と予め定められた基準の剥離紙長さとを比較し、該比較結果から剥離速度の実測値を算出する剥離速度算出段階と、
該剥離速度算出段階で算出した剥離速度の実測値及び剥離速度の理論しきい値を比較し、その比較結果に基づき前記ハンドによる剥離作業を制御する制御実行段階と、を有しており、
前記制御実行段階は、前記剥離速度の実測値が前記剥離速度の理論しきい値未満のとき、前記剥離紙を把持した箇所から前記ハンドがずれたと判断して、該ハンドの角度をずれ量に応じた角度に変更し、また、前記剥離速度の実測値が、計算による理論値と等しくなるように、該ハンドの移動速度を制御することを特徴とする剥離紙の剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着パッド又はハンドで把持した箇所からの剥離紙のずれを最小限に抑え、確実に剥離作業を行うことができる剥離紙の剥離装置及び剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンドによる剥離紙の剥離装置として特許文献1に示される技術が示されている。
特許文献1に示される剥離装置では、板状体に貼り付けられたフィルムの端部を板状体から剥離する剥離ユニットと、該剥離ユニットによって剥離されたフィルムの端部を把持する把持ユニットと、を備えている。
把持ユニットは、剥離されたフィルムの端部を挟み込む平面状の把持壁部と円柱状の把持部とを、ハンドとして備えている。
【0003】
把持壁部は空気を吸引するための吸引用穴を有し、また、把持部は該把持部を貫通する貫通穴を有している。
これら把持壁部の吸引用穴及び把持部の貫通穴は、剥離されたフィルムの端部を挟み込むために、互いに連通する位置関係に設けられている。
そして、このような把持ユニットでは、エジェクタ等で把持壁部の吸引用穴を真空状態にすることで、把持壁部の吸引用穴及び把持部の貫通穴の間に剥離紙を吸着させるとともに、吸引用穴内の真空圧をモニタリングして剥離紙の把持状態を監視している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記剥離装置の把持ユニットでは、ハンドに対して剥離紙を把持している場合に、吸引用穴が剥離紙で塞がれているため真空圧に変化が生じない。
しかしながら、上記把持ユニットでは、剥離紙がずれて吸引用穴が塞がれずに隙間が生じると、当該真空圧が低下してハンドによる剥離紙の把持位置がずれたと判断する。
そして、上記把持ユニットでは、このようなハンドによる剥離紙のずれが進行した場合に、該ハンドによる剥離紙の把持が維持できず、剥離作業が途中で失敗して作業ロスが発生する恐れがあった。
【0006】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、吸着パッド又はハンドで把持した箇所からの剥離紙のずれを最小限に抑え、確実に剥離作業を行うことができる剥離紙の剥離装置及び剥離方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第1態様は、被着体に貼りついている剥離紙をハンドの把持により剥離する剥離装置であって、剥離中に剥離紙の剥離量を計測する計測部と、該計測部で計測した剥離量と予め定められた基準の剥離紙長さとを比較し、該比較結果から剥離速度の実測値を算出する剥離速度算出部と、該剥離速度算出部で算出した剥離速度の実測値及び剥離速度の理論しきい値を比較し、その比較結果に基づき前記ハンドによる剥離作業を制御する制御実行部と、を有しており、前記制御実行部は、前記剥離速度の実測値が前記剥離速度の理論しきい値未満のとき、前記剥離紙を把持した箇所から前記ハンドがずれたと判断して、該ハンドの角度をずれ量に応じた角度に変更し、また、前記剥離速度の実測値が、計算による理論値と等しくなるように、該ハンドの移動速度を制御することを特徴とする。
【0008】
本発明の第2態様は、被着体に貼りついている剥離紙をハンドの把持により剥離する剥離方法であって、剥離中に剥離紙の剥離量を計測する計測段階と、該計測段階で計測した剥離量と予め定められた基準の剥離紙長さとを比較し、該比較結果から剥離速度の実測値を算出する剥離速度算出段階と、該剥離速度算出段階で算出した剥離速度の実測値及び剥離速度の理論しきい値を比較し、その比較結果に基づき前記ハンドによる剥離作業を制御する制御実行段階とを有しており、前記制御実行段階は、前記剥離速度の実測値が前記剥離速度の理論しきい値未満のとき、前記剥離紙を把持した箇所から前記ハンドがずれたと判断して、該ハンドの角度をずれ量に応じた角度に変更し、また、前記剥離速度の実測値が、計算による理論値と等しくなるように、該ハンドの移動速度を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ハンドが把持した箇所からの剥離紙のずれを最小限に抑え、確実に剥離作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る剥離装置の最小構成を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る剥離装置の最小構成を示す概略構成図である。
【
図3】第1実施形態の制御実行部で実行されるフローチャートである。
【
図4】第2実施形態の制御実行部で実行されるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る剥離装置100の最小構成について
図1を参照して説明する。
この剥離装置100は、被着体に貼りついている剥離紙をハンドの把持により剥離するものであって、制御系として計測部1、剥離速度算出部2、制御実行部3及びデータ記憶部4を具備する。
【0012】
計測部1は、剥離中に剥離紙の剥離量を計測する。
剥離速度算出部2は、計測部1で計測した剥離量と予め設定された基準の剥離紙長さとを比較し、該剥離量から剥離速度の実測値を算出する。
【0013】
制御実行部3は、剥離速度算出部2で算出した剥離速度の実測値と予め設定された剥離速度の理論しきい値とを比較し、その比較結果に基づきハンドによる剥離作業を制御する。具体的には、この制御実行部3は、剥離速度の実測値が剥離速度の理論しきい値未満のとき、剥離紙を把持した箇所からハンドがずれたと判断して、該ハンドの角度をずれ量に応じた角度に変更し、また、前記剥離速度の実測値が、計算による理論値と等しくなるように、該ハンドの移動速度を制御する。
なお、剥離速度算出部2で比較される基準の剥離紙長さ、及び制御実行部3で比較される剥離速度の理論しきい値は、データ記憶部4に予め記憶されている。
【0014】
そして、以上のように構成された本発明に係る剥離装置100では、制御実行部3にて、剥離速度の実測値が剥離速度の理論しきい値未満のとき、剥離紙を把持した箇所からハンドがずれたと判断して、該ハンドの角度をずれ量に応じた角度に変更し、また、該剥離速度の実測値が、計算による理論値と等しくなるように、該ハンドの移動速度を制御する。これにより、本発明の剥離装置100では、ハンドが把持した箇所からの剥離紙のずれを最小限に抑え、確実に剥離作業を行うことができる。
【0015】
(第1実施形態)
本発明の実施形態に係る剥離紙Aの剥離装置101について
図2及び
図3を参照して説明する。
この剥離装置101は、液晶ディスプレイなどの被着体Bに貼りついている剥離紙Aを把持ユニット10の吸着ハンドHの把持により剥離する。
【0016】
この把持ユニット10は、移動機構(図示略)により図中上下、左右に移動可能に設けられており、該剥離ユニットによる移動によって、吸着ハンドHで把持した剥離紙Aが被着体Bから剥離される。
また、被着体Bと剥離紙Aからなる剥離対象物30は、剥離装置101の台座101A上に設置される。
【0017】
吸着ハンドHは、剥離紙Aの端部を挟み込む平面状の把持壁部11と、円柱状の把持部12とを有する。
把持壁部11は空気を吸引するための吸引用穴11Aを有し、また、把持部12は該把持部12を貫通する貫通穴12Aを有している。
これら把持壁部11の吸引用穴11A及び把持部12の貫通穴12Aは、剥離された剥離紙Aの端部を挟み込むために、互いに連通する位置関係に設けられている。
【0018】
そして、このような把持ユニット10では、エジェクタ等で把持壁部11の吸引用穴11Aを真空状態にすることで、把持壁部11の吸引用穴11A及び把持部12の貫通穴12Aの間に剥離紙Aを吸着させるとともに、吸引用穴11A内の真空圧をモニタリングして剥離紙Aの把持状態を監視している。
【0019】
この剥離装置101には、制御系20として計測部21、剥離速度算出部22、制御実行部23及びデータ記憶部24を具備する。
計測部21は、剥離中に剥離紙Aの剥離量を計測する。
剥離速度算出部22は、計測部21で計測した剥離量Lと予め設定された基準の剥離紙長さLe とを比較し、該剥離量から剥離速度の実測値νrを算出する。
【0020】
制御実行部23は、剥離速度算出部22で算出した剥離速度の実測値νr と予め設定された剥離速度の理論しきい値νt とを比較し、その比較結果に基づき吸着ハンドHによる剥離作業を制御する。
また、この制御実行部23は、剥離速度の実測値νr が剥離速度の理論しきい値νt 未満のとき、剥離紙を把持した箇所から吸着ハンドHがずれたと判断して、該吸着ハンドHの角度をずれ量に応じた角度に変更し、また、剥離速度の実測値νr が、計算による剥離速度の理論しきい値νと等しくなるように、該吸着ハンドHの移動速度を制御する(詳細は後述する)。
なお、ハンドHの移動速度νp、剥離速度算出部22で比較される基準となる剥離紙長さLe、吸着ハンドHが剥離紙Aを把持する剥離角度φ等の基準データは、データ記憶部24に予め記憶されている。
【0021】
次に、制御実行部23で実行される処理について、
図3のフローチャートを参照してステップS毎に説明する。
被着体Bと剥離紙Aからなる剥離対象物30を、剥離装置101の台座101A上の所定位置に固定する。その後、把持ユニット10の吸着ハンドHに、当該剥離対象物30の剥離紙Aの端部を把持させて剥離動作を開始する。
【0022】
〔ステップS1〕
まず、データ記憶部24から制御実行部23へ動作条件であるハンド速度ν
p、ハンド角度φ、及び剥離終了となる剥離紙Aの長さL
e を出力させ、その値を基にして制御実行部23で剥離速度の理論しきい値ν
t を計算する。
剥離速度の理論しきい値ν
t は以下の式で表される。
【数1】
【0023】
〔ステップS2〕
次に、データ記憶部24から制御実行部23へ吸着ハンドHの移動速度νp 及び剥離角度φを出力させ、把持ユニット10に剥離動作を実行させる。
その後、予め設定した一定時間tの剥離動作をおこなった後、剥離紙Aの位置を示す値Lを計測部21で計測し、そのLの値を制御実行部23へ出力する。
【0024】
〔ステップS3〕~〔ステップS4〕
次に、ステップS3にて剥離紙Aの位置Lを剥離紙Aの長さL
eと比較し、「L≧L
e」となるNOの場合に、剥離作業終了と判断し剥離動作を終了する。
また、ステップS3にて「L<L
e」となるYESの場合に剥離動作を継続し、ステップS4にて剥離速度の実測値ν
r計算する。
なお、剥離速度の実測値ν
r は、予め設定した一定時間tで剥離を行う前の剥離紙Aの位置L’を用いて、以下の計算式で表される。
【数2】
【0025】
〔ステップS5〕
ステップS4で計算した剥離速度の実測値νr が、データ記憶部24に予め設定した理論しきい値νt を下回っていた場合(すなわち「νr<νt」の場合)、ずれが発生したと判断して、次のステップS6にてずれ量Δを算出する。ここで理論しきい値νt は、任意に設定できる値であり、例えばνtの70%に設定するといったことが可能である。
【0026】
〔ステップS6〕
ずれ量Δは以下の式で表される。ここでt
1,t
2 はそれぞれ(予め設定した)一定時間)tで剥離する前の時間、(予め設定した)一定時間tで剥離した後の時間を示す。
【数3】
【0027】
〔ステップS7〕
次に新たなハンド角度φ’を算出する。算出式は以下の式で表される。
【数4】
【0028】
〔ステップS8〕
次に、ステップS6,S7で算出したずれ量Δ及びハンド角度φ’を用いて、ずれ量が発生した後の剥離量の理論値を算出する。算出式は以下の式で表される。ここでt
3は次に(予め設定した)一定時間tで剥離したときに吸着ハンドHが到達する場所までにかかる時間を示す。
【数5】
【0029】
〔ステップS9〕
さらに、剥離速度の理論しきい値ν
t が剥離速度の実測値ν
r となるように、ハンド速度を更新して、データ記憶部24へ出力保存する。なお、更新後のハンド速度(ν
p’)は剥離速度の実測値ν
r とハンド角度φ’を基にして、以下の計算式で表される。
【数6】
【0030】
〔ステップS10〕~〔ステップS11〕
ハンド角度を「φ=φ’」、ハンド速度を「νp=νp’」、剥離紙Aの位置に関して「L’=L」となるように、ハンド速度の変更に伴い各値を更新して、データ記憶部24へ出力保存する。
ステップS10及びS11で保存した値(φ、νp、L’)及びステップS9で更新したハンドHの剥離速度の理論しきい値(νt)を制御実行部23へ出力する。その後、これら値を基にして、ステップS2~S11の処理を実行するとともに、これら処理をステップS3にて「L≧Le」となるまで実施する。
【0031】
そして、以上のように構成された本実施形態に係る剥離装置101では、制御実行部23にて、剥離速度算出部22で算出した剥離速度の実測値νr と、予め設定された剥離速度の理論しきい値νt とを比較し、その比較結果に基づき吸着ハンドHによる剥離作業を制御する。
具体的には、制御実行部23は、剥離速度の実測値νr が剥離速度の理論しきい値νt 未満のとき、剥離紙を把持した箇所から吸着ハンドHがずれたと判断して、該吸着ハンドHの角度をずれ量Δに応じた角度φに変更し、また、該剥離速度の実測値νr が、計算による剥離速度の理論しきい値νt と等しくなるように、該吸着ハンドHの移動速度を制御する。
これにより、本実施形態に示される剥離装置101では、吸着ハンドHが把持した箇所からの剥離紙のずれを最小限に抑え、確実に剥離作業を行うことができる。
【0032】
(第2実施形態)
第1実施形態では、
図3に示す処理フローのステップS5において、ステップS4で計算した剥離速度の実測値ν
r が、データ記憶部24に予め設定した理論しきい値ν
t を下回っていた場合(すなわち「ν
r<ν
t」の場合)に、ずれが発生したと判断して、次のステップS6にてずれ量Δを算出するようにした。
しかしながら、第2実施形態では、
図4の処理フローに示すように、ステップS4、ステップS5及びステップS11を廃止するとともに、ステップS1’及びステップS5’にて以下の処理を行わせることで代用する。
【0033】
〔ステップS1’〕
被着体Bと剥離紙Aからなる剥離対象物30を、剥離装置101の台座101A上の所定位置に固定した後、把持ユニット10の吸着ハンドHに、当該剥離対象物30の剥離紙Aを把持させて剥離動作を開始する。
その後、データ記憶部24から制御実行部23へ動作条件であるハンド速度ν
p 、ハンド角度φ、及び剥離終了となる剥離紙Aの長さL
e を出力させ、その値を基にして制御実行部23で剥離量の理論値L
t を計算する。
剥離量の理論値L
t は以下の式で表される。
【数7】
【0034】
〔ステップS2〕
次に、データ記憶部24から制御実行部23へ吸着ハンドHの移動速度νp 及び剥離角度φ を出力させ、把持ユニット10に剥離動作を実行させる。
その後、予め設定した一定時間tの剥離動作をおこなった後、剥離紙Aの位置を示す値Lを計測部21で計測し、そのLの値を制御実行部23へ出力する。
【0035】
〔ステップS3〕
次に、ステップS3にて剥離紙Aの位置Lを該剥離紙Aの長さLeと比較し、「L≧Le」となるNOの場合に、剥離作業終了と判断し剥離動作を終了する。
また、ステップS3にて「L<Le」となるYESの場合に剥離動作を継続し、ステップS5’に進む。
【0036】
〔ステップS5’〕
その後、このステップS5’では、剥離量の実測値Lがしきい値L
0 を下回っているか否か、すなわち「L<L
0」であるか否かを判断し、YESの場合にずれが発生したと判断したとして、次のステップS6にてずれ量Δを算出する。
ここでしきい値L
0 は、任意に設定できる値である。例えばステップS1’で計算した剥離量の理論値L
t の70%にするといった設定が可能である。
また、本ステップS5’にて、剥離量の実測値Lが、しきい値L
0 を下回っていないNOの場合に、先のステップS2に戻る。
なお、以下のステップS6~ステップS10については
図3の処理フローと同じなので、重複した説明を省略する。
【0037】
そして、以上のような
図4に示される第2実施形態の処理フローでは、
図3のステップS4,S5に示すような剥離速度の実測値ν
r によらず、ステップS5’にて剥離量の実測値Lに基づく判断を行うことで、より迅速な処理を実施することが可能となる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、吸着パッド又はハンドで把持した箇所からの剥離紙のずれを最小限に抑え、確実に剥離作業を行うことができる剥離紙の剥離装置及び剥離方法に関する。
【符号の説明】
【0040】
1 計測部
2 剥離速度算出部
3 制御実行部
4 データ記憶部
10 把持ユニット
11 把持壁部
11A 吸引用穴
12 把持部
12A 貫通穴
20 制御系
21 計測部
22 剥離速度算出部
23 制御実行部
24 データ記憶部
30 剥離対象物
100 剥離装置
101 剥離装置
A 剥離紙
B 被着体
H 吸着ハンド
L 剥離紙の位置
Le 剥離紙の長さ
Lt 剥離量の理論値
νr 剥離速度の実測値
νt 剥離速度の理論しきい値
νp ハンド移動速度
φ ハンド角度