(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132288
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】防音パネルの安全対策工法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20230914BHJP
E04G 5/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
E04G21/32 B
E04G5/00 301E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037516
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】野津 剛
(57)【要約】
【課題】暴強風を伴う荒天による防音パネルの倒壊や飛散に対する安全対策工を労力や時間を要することなく容易に実施できる防音パネルの安全対策工法を提供する。
【解決手段】防音対象物2の外周部に一部を取り外し可能とした防音パネル1を連続して多角形状に設置して形成される防音パネル壁4から防音パネル壁4の各隅部41を構成する隅部パネル11を除く防音パネル1を一部取り外して防音パネル壁4に開口7を形成し、開口7は、多角形状の防音パネル壁4の一方向または該一方向に直交する他方向に延びる各壁に少なくとも1箇所形成され、防音パネル壁4の各隅部41と、防音パネル壁4の各隅部41に近接する防音対象物2の端部21と、の間に、防音パネル壁4と防音対象物2との間に形成される空間を平面視で複数に分割する仕切りパネル8をそれぞれ設ける。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防音対象物の外周部に一部を取り外し可能とした防音パネルを連続して多角形状に設置して形成される防音パネル壁から前記防音パネル壁の各隅部を構成する隅部パネルを除く前記防音パネルを一部取り外して前記防音パネル壁に開口を形成し、
前記開口は、多角形状の前記防音パネル壁の一方向または該一方向に直交する他方向に延びる各壁に少なくとも1箇所形成され、
前記防音パネル壁の各隅部と、前記防音パネル壁の各隅部に近接する前記防音対象物の端部と、の間に、前記防音パネル壁と前記防音対象物との間に形成される空間を平面視で複数に分割する仕切りパネルをそれぞれ設ける、
防音パネルの安全対策工法。
【請求項2】
前記開口は、前記防音パネル壁の一方向または一方向に直交する他方向に延びる各壁に複数形成されている、
請求項1に記載の防音パネルの安全対策工法。
【請求項3】
前記防音対象物は、外周部に仮設足場を備え、
前記防音パネル壁は、前記仮設足場の外周部に設け、
前記仕切りパネルは、前記仮設足場内に設ける、
請求項1または2に記載の防音パネルの安全対策工法。
【請求項4】
前記防音パネル壁は、複数の前記防音パネルを前記防音対象物の外周部の地面に接するように設置して構成する、
請求項1または2に記載の防音パネルの安全対策工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音パネルの安全対策工法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木工事や工事対象物の周囲に設けられた仮設足場上の作業による騒音の対策方法として、工事現場や仮設足場の外周部に防音パネルを設置して包囲する方法がある。上記の防音パネルは、台風等の暴強風を伴う荒天時において、倒壊や周囲への飛散の虞があるため、これらを防止するための安全対策を荒天の発生前に行う必要がある。防音パネルの安全対策としては、例えば、暴強風を伴う荒天の発生前に防音パネルを全て取り外す方法や防音パネルを強力に固定する方法がある。また、防音パネルをメッシュシートで代替する方法もある。また、仮設足場においては、仮設足場の外周部に取り付けられる防音パネルが一端部を軸にして仮設足場の外側に略水平に傾倒するように開閉自在に取り付けられる方法(例えば、特許文献1参照)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、上記で挙げた防音パネルを全て取り外す方法や強力に固定する方法は、多くの時間と労力を必要とするという課題がある。また、防音パネルを全て取り外す方法は、荒天後に再度取り付ける作業を要するため、より多くの時間と労力を必要とするという課題がある。メッシュシートで代替する方法は、防音パネルと比較して防音効果が低減するため、所定の防音性能を確保できないという課題がある。仮設足場における防音パネルを仮設足場の外側に傾倒させる方法は、防音パネルを傾倒させたままにすると、荒天時において強風等の外力が防音パネルに作用し防音パネルと仮設足場との接続部に大きな負荷が作用することによって接続が破断し防音パネルが落下、飛散する虞があるという課題がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、暴強風を伴う荒天による防音パネルの倒壊や飛散に対する安全対策工を労力や時間を要することなく容易に実施できる防音パネルの安全対策工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る防音パネルの安全対策工法は、防音対象物の外周部に一部を取り外し可能とした防音パネルを連続して多角形状に設置して形成される防音パネル壁から前記防音パネル壁の各隅部を構成する隅部パネルを除く前記防音パネルを一部取り外して前記防音パネル壁に開口を形成し、前記開口は、多角形状の前記防音パネル壁の一方向または該一方向に直交する他方向に延びる各壁に少なくとも1箇所形成され、前記防音パネル壁の各隅部と、前記防音パネル壁の各隅部に近接する前記防音対象物の端部と、の間に、前記防音パネル壁と前記防音対象物との間に形成される空間を平面視で複数に分割する仕切りパネルをそれぞれ設ける。
【0007】
上記の構成とすることで、多角形状の防音パネル壁は一方向に延びる各壁において少なくとも1箇所の開口が形成され、防音パネル壁と防音対象物との間の空間は仕切りパネルにより複数の空間に分割される。防音パネル壁と防音対象物との間の空間内における風の流れは、仕切りパネルで遮断されて各分割された空間内に限定されている。
上記により、台風等の暴強風を伴う荒天の際に、防音パネル壁の一つの壁に向かって吹く風が開口から仕切りパネルにより分割された空間内に流入することで、風に対向する一つの壁の内面側(空間側)に作用する風圧(正圧)が増大する。上記により一つの壁の内面側の正圧が増大することで、防音パネル壁の一つの壁の外面側(外方側)に向かって吹く風による風圧(正圧)と内面側の正圧との間の等圧効果によって、一つの壁に作用する風圧の合力(一つの壁を防音対象物側に押圧する方向に作用する正圧)を低減できる。
また、上記の防音パネルの一つの壁に直交する防音パネル壁の他方の壁の外面側(外方側)には、一つの壁に向かって吹く風が一つの壁から剥がれるように流れる剥離流が発生する。他方の壁は、上記の剥離流により大きな風圧(防音パネル壁の他方の壁が外方にはらむ方向に作用する負圧)が作用する。他方の壁の内側(空間側)には、他方の壁側に回り込んだ上記の剥離流が開口から分割された空間内に流入することにより風圧(他方の壁が防音対象物側に押圧される方向に作用する負圧)が作用する。上記により、防音パネル壁の他方の壁の外面側の負圧と内面側の負圧との間の等圧効果により、他方の面に作用する風圧の合力(他方の壁が外方にはらむ方向に作用する負圧)についても等圧効果により低減できる。
上記の等圧効果により防音パネル壁全体に作用する風圧を低減できる効果は、多角形状の防音パネル壁の各壁全てにおいて実現できる。このため、防音パネル壁の各壁全てにおいて作用する風圧を低減でき、防音パネル壁の風による倒壊を防ぐことできる。
また、上記の構成より防音パネル壁の各壁において一部の防音パネルを取り外し、空間の各隅部に仕切りパネルを設置する簡易な作業によって防音パネルの安全対策工を実施できる。そのため、荒天前に取り外し、荒天後に再度取り付ける防音パネルの枚数を低減できるため、防音パネルの安全対策工に要する作業時間および労働力を削減でき、かつ荒天後に短時間で作業現場を復旧して工事を再開できる。
また、防音パネルの安全対策工を短時間で実施できるため、急激に発達する低気圧のように発生の予測が困難な荒天に対しても、防音パネルの安全対策工を迅速に完了することができる。
【0008】
また、本発明に係る防音パネルの安全対策工法において、前記開口は、前記防音パネル壁の一方向または一方向に直交する他方向に延びる各壁に複数形成されていてもよい。
【0009】
上記の構成とすることにより、防音パネル壁の壁面の面積が大きい大規模な防音パネル壁に対しても防音パネル壁に向かって吹く風の風圧に対する所望の等圧効果を実現できるため、防音パネル壁の風による倒壊を防ぐことできる。
【0010】
また、本発明に係る防音パネルの安全対策工法において、前記防音対象物は、外周部に仮設足場を備え、前記防音パネル壁は、前記仮設足場の外周部に設け、前記仕切りパネルは、前記仮設足場内に設けてもよい。
【0011】
上記の構成とすることにより、防音パネル壁に向かって吹く風の風圧に対する所望の等圧効果を実現することで防音パネル壁と防音対象物との間の空間内に設けられた仮設足場の風による倒壊を防ぐことができる。
また、仮設足場を荒天前に解体する必要なく防音パネルの安全対策工を実施できるため、防音パネルの安全対策工に要する作業時間および労働力を削減でき、かつ荒天後に短時間で作業現場を復旧して工事を再開できる。
【0012】
また、本発明に係る防音パネルの安全対策工法において、前記防音パネル壁は、複数の前記防音パネルを前記防音対象物の外周部の地面に接するように設置して構成してもよい。
【0013】
上記の構成とすることにより、防音パネルを地面に設置する場合においても防音パネル壁に向かって吹く風の風圧に対する所望の等圧効果を実現できるため、設置した防音パネルを荒天前に取り除く必要なく防音パネルの安全対策工を実施できる。そのため、防音パネルの安全対策工に要する作業時間および労働力を削減でき、かつ荒天後に短時間で作業現場を復旧して工事を再開できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、暴強風を伴う荒天による防音パネルの倒壊や飛散に対する安全対策工を労力や時間を要することなく容易に実施できる防音パネルの安全対策工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態による防音パネルの安全対策工法の実施前の防音パネルの設置状況を示す説明図であり、(a)は平面視における防音パネルの設置状況を示し、(b)は(a)の矢印Aを視点とする側面視の防音パネルの設置状況を示す。
【
図2】本発明の実施形態による防音パネルの安全対策工法の実施状況を示す説明図であり、(a)は平面視における防音パネルの安全対策工法の実施状況を示し、(b)は(a)の矢印Bを視点とする側面視の防音パネルの安全対策工法の実施状況を示す。
【
図3】本発明の実施形態による防音パネルの安全対策工法による風圧の低減効果を説明する説明図である。
【
図4】本発明の実施形態による防音パネルの安全対策工法の変形例を示す説明図であり、(a)は第1の変形例による防音パネルの安全対策工法の
図2(b)と同様の視点における実施状況を示し、(b)は第2の変形例による防音パネルの安全対策工法の
図2(b)と同様の視点における実施状況を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態による防音パネルの安全対策工法について、
図1から
図3に基づいて説明する。本実施形態では、工事対象物の外周部に備えられた仮設足場の外周部に設けられる防音パネルの安全対策工法について説明する。
【0017】
図1に示すように、防音パネル1は、建設現場などの防音対象物2の外周部に設けられる仮設足場3の外側の建枠31aに取り付けられ、防音対象物2の工事に係る作業空間である仮設足場3の外周部に設けられる。防音パネル1は、仮設足場3の高さ方向および幅方向に連続して平面視矩形状に複数設置され、仮設足場3の外周部を包囲する平面視矩形状の防音パネル壁4を形成する。仮設足場3が形成される防音パネル壁4と防音対象物2との間の空間を「作業空間5」と記載する。仮設足場3は、高さ方向に足場板によって仕切られた複数のフロアを有する。
【0018】
防音パネル1は、例えば公知の矩形状に形成された金属製の枠体内にポリエステル製の布材を張る構成が挙げられる。防音パネル壁4は、仮設足場3内での作業に対する落下物防止対策工として、防音パネル壁4の外周部に朝顔32が設けられる。朝顔32は、防音パネル壁4の高さ方向中間部に設けられ、防音パネル壁4の外周部を包囲し、外方に向かって突出している。以下、防音パネル壁4の対向する一対の壁4a、4b(
図1(a)における平面視横方向に延びる壁)が延びる方向をX方向、X方向に直交し、一対の壁4a、4bに直交する壁4c、4d(
図1(a)における平面視縦方向に延びる壁)が延びる方向をY方向、X方向およびY方向に直交する方向をZ方向と記載する。
【0019】
防音対象物2は、例えば平面視矩形状の高層の工事対象構造物であり、建設途中の高層ビル等が挙げられる(以下、防音対象物2を「工事対象物2」と記載する。)。工事対象物2内および仮設足場3内では、工事用作業機械の使用等による作業音が発生する。
【0020】
防音パネル壁4は、仮設足場3の外周部に設けられ、工事対象物2内および仮設足場3内における作業により発生する作業音に対する防音機能を発揮する。また、防音パネル壁4は、防音機能に加えて工事対象物2内および仮設足場3内の作業スペースの保温機能や作業に対する防塵機能を備えている。
【0021】
仮設足場3は、工事対象物2と連結されている。仮設足場3と工事対象物2との連結方法は限定されず、例えば一端にクランプが設けられたアンカーを工事対象物2に打設し、一端のクランプを仮設足場3の工事対象物2側の建枠31bに取り付ける連結方法が挙げられる。
【0022】
防音パネル壁4を構成する複数の防音パネル1は、取り外し自在に設置される。隣接して設置される防音パネル1、1と仮設足場3の建枠31aとの連結方法は限定されない。隣接する防音パネル1、1と建枠31aとの連結方法は、例えば隣接する防音パネル1、1に引掛ける固定爪を有するクランプを隣接する防音パネル1、1に対向する建枠31aのZ方向に延びる枠部に取り付け、隣接する防音パネル1、1に固定爪を係止して連結する方法が挙げられる。
【0023】
防音パネル壁4は、防音パネル壁4の各隅部41を構成するX方向に延びる隅部パネル11とY方向に延びる隅部パネル11との間にコーナーパネル12を設け、隅部41を面取りした形状に形成する。隅部パネル11とコーナーパネル12と仮設足場3との連結方法は、上記の隣接する防音パネル1、1と仮設足場3との連結方法と同様に限定されない。以下、仮設足場3の外周部に防音パネル壁4が設けられた構成を防音構造6と記載する。
【0024】
本実施形態の防音パネルの安全対策工法は、工事対象物2の工事現場において暴強風を伴う荒天が発生することが予測された際に、防音構造6に適用されるものである。以下に、防音パネルの安全対策工法の工程について説明する。
【0025】
工事対象物2の工事現場において台風等の暴強風を伴う荒天が予測された際、防音構造6は、荒天の発生前に
図2に示すように、防音パネル壁4を構成する防音パネル1の一部を取り外して防音パネル壁4に開口7を形成する(以下、取り外した防音パネル1を「取り外しパネル13」と記載する。)。開口7は、平面視矩形状に形成された防音パネル壁4の各壁にそれぞれ1箇所ずつ形成され、防音パネル壁4全体において4箇所形成される。開口7は、防音パネル壁4の各壁に少なくとも1か所必要であり、防音パネル壁4全体で複数設けられる。
【0026】
取り外しパネル13は、隅部パネル11およびコーナーパネル12を除く複数の防音パネル1のうちのいずれかである。壁4a、4bに形成される開口7は、X方向中間部かつZ方向中間部に位置する1枚の取り外しパネル13を取り外して形成される。同様に壁4c、4dに形成される開口7は、Y方向中間部かつZ方向中間部に位置する1枚の取り外しパネル13を取り外して形成される。
【0027】
防音構造6は、荒天の発生前に防音パネル壁4の4箇所の隅部41と、各隅部41にX方向またはY方向に対する斜め方向に対向する工事対象物2の各端部21(以下、端部21を「隅部21」と記載する。)との間(以下、「設置位置8a」と記載する。)に仕切りパネル8をそれぞれ設置する。仕切りパネル8は、4箇所の設置位置8aにおいて、それぞれ仮設足場3のZ方向に複数設けられるフロア毎に設置され、各フロアにおける設置位置8aに設けられた複数の仕切りパネル8により作業空間5を仕切る。作業空間5は、4箇所の設置位置8aにおいて、それぞれ複数の仕切りパネル8により仮設足場3の各フロアが仕切られることで4つの分割空間51に分割される。仕切りパネル8は、防音パネル1のZ方向の高さと略一致し、防音パネル1よりも風圧に対して高い強度を有する材質により形成される。
【0028】
仕切りパネル8は、隅部41側において隅部41に位置する建枠31aに連結される。隅部41における仕切りパネル8と建枠31aとの連結方法は限定されず、例えば隅部パネル11およびコーナーパネル12と同様に建枠31aに取り付けたクランプに係止して連結している。
【0029】
仕切りパネル8は、隅部21側において工事対象物2に連結される。隅部21における仕切りパネル8と工事対象物2との連結方法は限定されず、例えば溶接接合してもよいし、仮設足場3と同様にクランプを有するアンカーを打設する方法により連結してもよい。
【0030】
暴強風を伴う荒天の発生後に、荒天前に設置された仕切りパネル8を全て取り外し、荒天前に取り外された取り外しパネル13を再設置し、作業を再開する。
【0031】
次に、本実施形態による防音パネルの安全対策工法の作用、効果について図面に基づいて説明する。
【0032】
図1および
図2に示すように、防音構造6は、台風等の暴強風を伴う荒天の発生前に工事対象物2の外周部に位置する仮設足場3の外周部に平面視矩形状に設置された防音パネル壁4の各壁から取り外しパネル13を取り外して開口7を4箇所形成する。また、防音構造6は、防音パネル壁4の4箇所の設置位置8aにおいて、それぞれ複数の仕切りパネル8を仮設足場3のフロア毎に設置し、作業空間5を4箇所の設置位置8aにおいてそれぞれ仮設足場3の各フロアを仕切り、4つの分割空間51に分割する。
【0033】
上記の構成とすることで、防音構造6は、平面視矩形状の防音パネル壁4は4つの各壁においてそれぞれ1箇所の開口7が形成され、作業空間5が4枚の仕切りパネル8により防音パネル壁4の各壁の工事対象物2側の壁面に面する4つの分割空間51に分割される。4つの分割空間51が形成されることで作業空間5内における風の流れは各仕切りパネル8により遮断され、各分割空間51内に限定されている。
【0034】
上記により、
図3に示すように、防音構造6は、台風等の暴強風を伴う荒天の際に、例えば防音パネル壁4の壁4cに向かって風9が吹いた場合、壁4cに形成された開口7から壁4cに面する分割空間51内に風9aが流入する(以下、壁4cに面する分割空間51を「分割空間51a」と記載する。)。防音構造6は、分割空間51a内に流入した風9aにより、分割空間51a内において壁4cに作用する風圧91が増大する。風圧91は、壁4cが外方にはらむ方向に作用する正圧(内圧)である。風圧91は、分割空間51a内において一様に作用する。
【0035】
壁4cの外面42側には風圧92が作用する。風圧92は、壁4cが工事対象物2側に押圧される方向に作用する正圧(外圧)である。風圧92は、壁4cと壁4aとの境界付近で最も小さくなり、境界から離間すると大きくなる。
【0036】
上記により、風圧91が分割空間51a内に作用することで、風圧91と風圧92との合力(差分)であり、壁4cを工事対象物2側に押圧する方向で壁4c全体に作用する正圧である風圧93を等圧効果により低減できる。風圧91と風圧92との間の等圧効果は、風圧91の増大により風圧93を低減できれば発揮される。
【0037】
また、壁4cに直交する壁4aの外面43側には、風9の一部であり壁4cから剥がれるように流れる剥離流9bが発生する。壁4aは、外面43側において剥離流9bにより風圧94が作用する。風圧94は、壁4aが外方にはらむ方向に作用する負圧(外圧)である。風圧94は、壁4aと壁4cとの境界部付近で最も大きくなる。
【0038】
壁4aに面する分割空間51には、剥離流9bの一部である風9cが壁4aの開口7から流入する(以下、壁4aに面する分割空間51を「分割空間51b」と記載する。)。分割空間51b内では、風9cにより、風圧95が作用する。風圧95は、壁4aが工事対象物2側に押圧される方向に作用する負圧(内圧)である。風圧95は、分割空間51b内において一様に作用する。
【0039】
上記により、風圧95が分割空間51内に作用することで、風圧94と風圧95との合力(差分)であり、壁4aが外方にはらむ方向で壁4a全体に作用する風圧96についても等圧効果により低減できる。風圧94と風圧95との間の等圧効果は、上記の風圧91と風圧92との間の等圧効果と同様に、風圧95の作用により風圧96を低減できれば発揮される。
【0040】
上記の壁4cと壁4aとにおける等圧効果により防音パネル壁4に作用する風圧を低減できる効果は、防音パネル壁4の4面の壁全てにおいて実現できる。その結果、防音パネル壁4の4面の壁全てにおいて外方から吹く風により各壁に作用する風圧を低減でき、防音パネル壁4の風による倒壊を防ぐことできる。
【0041】
また、上記の構成より防音パネル壁4の各壁において取り外しパネル13を取り外し、作業空間5の各隅部にそれぞれ複数の仕切りパネル8を設置する簡易な作業によって防音パネルの安全対策工を実施できる。そのため、荒天前に取り外し、荒天後に再度取り付ける取り外しパネル13の枚数を低減できるため、防音パネルの安全対策工に要する作業時間および労働力を削減でき、かつ荒天後に短時間で作業現場を復旧して工事を再開できる。また、防音パネルの安全対策工を短時間で実施できるため、急激に発達する低気圧のように発生の予測が困難な荒天に対しても、防音パネルの安全対策工を迅速に完了することができる。
【0042】
また、上記の各壁における風に対する等圧効果により防音パネル壁4に作用する風圧を低減できる効果によって、作業空間5内に設置される仮設足場3の風による倒壊も防ぐことができる。また、仮設足場3を荒天前に解体する必要なく防音パネルの安全対策工を実施できるため、防音パネルの安全対策工に要する作業時間および労働力をより削減でき、荒天後に短時間で作業現場を復旧して工事を再開できる。
【0043】
以上、本発明による防音パネルの安全対策工法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0044】
例えば上記の実施形態では、開口7は、防音パネル壁4の各壁にそれぞれ1箇所形成され、防音パネル壁4全体で4箇所形成されているが、所望の防音パネルの安全対策効果が得られれば形成位置および開口規模、設置数等の諸条件は上記に限定されない。例えば、
図4(a)に示すように、防音パネル壁4の各壁(
図4(a)では、例として壁4cを示す。)においてそれぞれZ方向に複数の開口7を設ける構成としてもよいし、
図4(b)に示すように、防音パネル壁4の各壁(
図4(b)では、例として壁4cを示す。)においてZ方向に連続して設置されている全ての防音パネル1を取り外して開口7が設けられてもよい。
【0045】
開口7の形成位置および開口規模、設置数等の諸条件は、各分割空間51内に吹き込む風9aの風力の大きさや防音パネル壁4の規模等を考慮して所望の防音パネルの安全対策効果が得られるように決定される。例えば、防音パネル壁4の各壁に複数の開口7を設ける場合は、複数の開口7から風9aの吹き抜け等が生じないように各開口7の開口面積を小さくする等の対策を実施する。
【0046】
例えば上記の実施形態では、防音構造6は、防音パネル壁4が仮設足場3の外周部に取り付けられる構成であるが、防音構造6は、防音パネル壁4が各防音パネル1を工事対象物2の外周部の地面に設置された構成であってもよい。上記の防音構造6に防音パネルの安全対策工法を適用することで、作業現場と道路との境界等の仮設足場以外の場所に設けられる防音パネル1においても同様に暴強風を伴う荒天による防音パネルの倒壊や飛散等を防ぐことができる。また、防音パネルの安全対策工に要する作業時間および労働力を削減して荒天後に短時間で作業現場を復旧して工事を再開できる。
【0047】
例えば上記の実施形態では、防音パネルの安全対策工法は平面視矩形状に形成された工事対象物2に対して適用されているが、所望の防音パネルの安全対策効果が得られれば上記に限定されず、例えば平面視円形状の工事対象物2に対して適用されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 防音パネル
2 防音対象物(工事対象物)
3 仮設足場
4 防音パネル壁
4a、4b、4c、4d 壁
5 空間(作業空間)
7 開口
8 仕切りパネル
21 端部(隅部)
41 隅部
51、51a、51b 分割空間