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特開2023-132289スイッチング電源装置、スイッチング制御方法及び車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132289
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置、スイッチング制御方法及び車両
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037518
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】柳楽 勇士
(72)【発明者】
【氏名】大元 靖理
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AS05
5H730BB27
5H730DD02
5H730DD03
5H730DD04
5H730EE03
5H730EE04
5H730EE08
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FF06
5H730FF09
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】スイッチング周波数が可変なスイッチング電源装置において、汎用的、低性能、及び低コストのマイコンを用いたスイッチング電源装置を実現する。
【解決手段】スイッチング電源装置は、制御信号の入力によりオンオフ制御されるスイッチング素子と、入力電圧の値、出力電圧の値、又は出力電流の値のいずれか1つ以上に基づいたモニタ信号値に応じて次の周期でとるべき目標となる目標周波数が複数の周波数候補の中から決定される目標周波数決定部(9)と、目標周波数に基づいて制御信号が生成される制御信号生成部(3)と、目標周波数についてスペクトラム拡散を行うか否かを制御信号生成部に指示するスペクトラム拡散指示部(12)とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を出力電圧に変換し、出力電流を負荷に供給するスイッチング電源装置であって、
制御信号の入力によりオンオフ制御されるスイッチング素子と、
前記入力電圧の値、前記出力電圧の値、又は前記出力電流の値のいずれか1つ以上に基づいたモニタ信号値に応じて次の周期でとるべき目標となる目標周波数が複数の周波数候補の中から決定される目標周波数決定部と、
前記目標周波数に基づいて前記制御信号が生成される制御信号生成部と、
前記目標周波数についてスペクトラム拡散を行うか否かを前記制御信号生成部に指示するスペクトラム拡散指示部と、
を備え、
前記スペクトラム拡散は、前記目標周波数を所定時間ごとに複数の周波数変化量ごと順次変化させて前記スイッチング素子のオンオフ制御を行うことである、スイッチング電源装置。
【請求項2】
複数の前記目標周波数の各々と、スペクトラム拡散を行うか否かとを対応付けたスペクトラム拡散テーブルを記憶する記憶部を備え、
前記スペクトラム拡散指示部は、前記スペクトラム拡散テーブルに基づいて複数の前記目標周波数の各々に対して前記スペクトラム拡散を行うか否かを前記制御信号生成部に指示する、請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記目標周波数は、AM放送の搬送波周波数と一致する9kHz又は10kHzの逓倍である、請求項1又は2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記目標周波数と、スイッチング周波数との絶対誤差の絶対値が、あらかじめ定められた閾値以上である場合は、前記目標周波数に対して前記スペクトラム拡散が行われ、
前記目標周波数と前記スイッチング周波数との絶対誤差の絶対値が、前記閾値未満である場合は、前記目標周波数に対して前記スペクトラム拡散が行われず、
前記スイッチング周波数は、
【数1】
で表され、
fswは前記スイッチング周波数、fclkはタイマークロック周波数、fは前記目標周波数、Round(fclk/f)は、fclkをfで除算した値を小数点以下四捨五入する関数である、請求項1から3のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記閾値は、可聴周波数領域の下限値である、請求項4に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記記憶部は、
0からN(Nは自然数)の値がそれぞれ付与された複数の要素番号の各々と前記目標周波数に加算される周波数変化量とを対応付けた周波数変化テーブルを更に記憶し、
前記スペクトラム拡散は、
前記スペクトラム拡散指示部が、前記周波数変化テーブルを参照することにより、前記要素番号の値と対応した前記周波数変化量を前記目標周波数に加算するよう前記制御信号生成部に指示し、
前記制御信号生成部が、前記所定時間、前記要素番号ごとに前記目標周波数に前記周波数変化量を加算したスペクトラム拡散周波数の前記制御信号を生成することである、請求項2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置と、
AM放送を受信するAMラジオとを備える車両。
【請求項8】
制御信号の入力によりスイッチング素子をオンオフ制御して、入力電圧を出力電圧に変換し、出力電流を負荷に供給するスイッチング制御方法であって、
前記入力電圧の値、前記出力電圧の値、又は前記出力電流の値のいずれか1つ以上に基づいたモニタ信号値に応じて次の周期でとるべき目標となる目標周波数が複数の周波数候補の中から決定される目標周波数決定ステップと、
前記目標周波数に基づいて前記制御信号が生成される制御信号生成ステップと、
前記目標周波数についてスペクトラム拡散を行うか否かを前記制御信号生成ステップに指示するスペクトラム拡散指示ステップと、
を含み、
前記スペクトラム拡散は、前記目標周波数を所定時間ごとに複数の周波数変化量ごと順次変化させて前記スイッチング素子のオンオフ制御を行うことである、スイッチング制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スイッチング電源装置、スイッチング制御方法及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、AMラジオ受信機を有する車両に搭載されるパルススイッチング機器において、スイッチング周波数を9kHzまたは10kHzの逓倍に設定した車両用パルススイッチング機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案出願公開昭62-177144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
AM放送の搬送波周波数は9kHzまたは10kHzの逓倍である。このため、特許文献1の車両用パルススイッチング機器では、スイッチング周波数を9kHzまたは10kHzの逓倍に設定した。スイッチング周波数が9×n kHz(nは自然数)である場合、スイッチング周波数の雑音高調波の線スペクトラムは、9×n kHz間隔となる。AM放送の周波数帯域(526.5kHz~1606.5kHz)において、スイッチング周波数の雑音高調波の線スペクトラムをなす周波数はいずれも、AM放送の搬送波周波数と一致するので、AMラジオから聴感雑音は発生しない。
【0005】
しかしながら、パルススイッチング機器内のタイマークロック周波数が小さい低性能なマイコンを使用した場合、スイッチング周波数を9kHzまたは10kHzの逓倍に設定したとしても、目標とするスイッチング周波数と実際に出力されるスイッチング周波数が一致せず、両者の間に誤差が生じる。両者の間に誤差が生じると聴感雑音をもたらすという問題がある。
【0006】
本開示の一態様は、スイッチング周波数が可変なスイッチング電源装置において、汎用的、低性能、及び低コストのマイコンを用いたスイッチング電源装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の態様1に係るスイッチング電源装置は、入力電圧を出力電圧に変換し、出力電流を負荷に供給するスイッチング電源装置であって、制御信号の入力によりオンオフ制御されるスイッチング素子と、前記入力電圧の値、前記出力電圧の値、又は前記出力電流の値のいずれか1つ以上に基づいたモニタ信号値に応じて次の周期でとるべき目標となる目標周波数が複数の周波数候補の中から決定される目標周波数決定部と、前記目標周波数に基づいて前記制御信号が生成される制御信号生成部と、前記目標周波数についてスペクトラム拡散を行うか否かを前記制御信号生成部に指示するスペクトラム拡散指示部と、を備え、前記スペクトラム拡散は、前記目標周波数を所定時間ごとに複数の周波数変化量ごと順次変化させて前記スイッチング素子のオンオフ制御を行うことである。
【0008】
上記構成によれば、スイッチング電源装置は、モニタ信号値に応じて次の周期でとるべき目標となる目標周波数が複数の周波数候補の中から決定される。目標周波数がスペクトラム拡散を行う対象であれば、目標周波数に対してスペクトラム拡散を行う。これにより、スイッチング周波数が可変なスイッチング電源装置において、スイッチング電源装置に汎用的、低性能、及び低コストであるマイコンを用いることができる。
【0009】
本開示の態様2に係るスイッチング電源装置は、態様1において、複数の前記目標周波数の各々とスペクトラム拡散を行うか否かとを対応付けたスペクトラム拡散テーブルを記憶する記憶部を備え、前記スペクトラム拡散指示部は、前記スペクトラム拡散テーブルに基づいて複数の前記目標周波数の各々に対して前記スペクトラム拡散を行うか否かを前記制御信号生成部に指示する。
【0010】
上記構成によれば、スペクトラム拡散指示部は、記憶部に記憶されたスペクトラム拡散テーブルを参照して、複数の目標周波数の各々に対してスペクトラム拡散を行うか否かを決定する。これにより、スぺクトラム拡散テーブルを用いて、複数の目標周波数がスペクトラム拡散を行う対象か否かについてスイッチング電源装置は、あらかじめ定めることができる。
【0011】
本開示の態様3に係るスイッチング電源装置は、態様1又は2において、前記目標周波数は、AM放送の搬送波周波数と一致する9kHz又は10kHzの逓倍である。
【0012】
上記構成によれば、スイッチング素子のオンオフ制御により発生する電磁放射雑音の周波数は、目標周波数と同じ、9kHz又は10kHzの逓倍となる。これにより、AM放送の周波数帯域では、AM放送の搬送周波数と電磁放射雑音の周波数とが一致する。AMラジオが音声信号を復調するために搬送周波数成分を除去するとき、同じ周波数の電磁放射雑音も併せて除去される。このため、AMラジオは、音質を損なうことはなく、聴感雑音を低減することができる。
【0013】
本開示の態様4に係るスイッチング電源装置は、態様1から3のいずれかにおいて、前記目標周波数とスイッチング周波数との絶対誤差の絶対値が、あらかじめ定められた閾値以上である場合は、前記目標周波数に対して前記スペクトラム拡散が行われ、前記目標周波数と前記スイッチング周波数との絶対誤差の絶対値が、閾値未満である場合は、前記目標周波数に対して前記スペクトラム拡散が行われず、前記スイッチング周波数は、
【数1】
で表され、fswは前記スイッチング周波数、fclkはタイマークロック周波数、fは前記目標周波数、Round(fclk/f)は、fclkをfで除算した値を小数点以下四捨五入する関数である。
【0014】
上記構成によれば、目標周波数とスイッチング周波数との絶対誤差の絶対値が、閾値以上の場合に目標周波数に対してスペクトラム拡散を行う。これにより、目標周波数の各々のうちどの目標周波数をスペクトル拡散するか決定することができる。
【0015】
本開示の態様5に係るスイッチング電源装置は、態様4において、前記閾値は、可聴周波数領域の下限値である。
【0016】
上記構成によれば、閾値は、可聴周波数領域の下限値である。これにより、スイッチング素子のオンオフ制御で発生する電磁放射雑音の周波数が、AMラジオの搬送周波数とずれている場合にも、AMラジオから発生する聴感雑音を低減することができる。
【0017】
本開示の態様6に係るスイッチング電源装置は、態様2において、前記記憶部は、0からN(Nは自然数)の値がそれぞれ付与された複数の要素番号の各々と前記目標周波数に加算される周波数変化量とを対応付けた周波数変化テーブルを更に記憶し、前記スペクトラム拡散は、前記スペクトラム拡散指示部が、前記周波数変化テーブルを参照することにより、前記要素番号の値と対応した前記周波数変化量を前記目標周波数に加算するよう前記制御信号生成部に指示し、前記制御信号生成部が、前記所定時間、前記要素番号ごとに前記目標周波数に前記周波数変化量を加算したスペクトラム拡散周波数の前記制御信号を生成することである。
【0018】
上記構成によれば、目標周波数に対してスペクトラム拡散を行うことにより疑似的にスイッチング周波数の周波数分解能を向上させることができ、スイッチング周波数を、疑似的に目標周波数に近づける。これにより、スイッチング素子のオンオフ制御で発生する電磁放射雑音を低減することができる。
【0019】
本開示の態様7に係る車両は、態様1から6のいずれかにおけるスイッチング電源装置と、AM放送を受信するAMラジオとを備える。
【0020】
上記構成によれば、車両内においてスイッチング電源装置から電磁放射雑音が発生しても、近くに配置されるAMラジオから発生する聴感雑音を低減できる。
【0021】
本開示の態様8に係るスイッチング制御方法は、制御信号の入力によりスイッチング素子をオンオフ制御して、入力電圧を出力電圧に変換し、出力電流を負荷に供給するスイッチング制御方法であって、前記入力電圧の値、前記出力電圧の値、又は前記出力電流の値のいずれか1つ以上に基づいたモニタ信号値に応じて次の周期でとるべき目標となる目標周波数が複数の周波数候補の中から決定される目標周波数決定ステップと、前記目標周波数に基づいて前記制御信号が生成される制御信号生成ステップと、前記目標周波数についてスペクトラム拡散を行うか否かを前記制御信号生成ステップに指示するスペクトラム拡散指示ステップと、を含み、前記スペクトラム拡散は、前記目標周波数を所定時間ごとに複数の周波数変化量ごと順次変化させて前記スイッチング素子のオンオフ制御を行うことである。
【0022】
上記構成によれば、スイッチング制御方法は、モニタ信号値に応じて次の周期でとるべき目標となる目標周波数が複数の周波数候補の中から決定される。目標周波数がスペクトラム拡散を行う対象であれば、目標周波数に対してスペクトラム拡散を行う。これにより、スイッチング周波数が可変なスイッチング制御方法において、汎用的、低性能、及び低コストであるマイコンを用いてスイッチング制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本開示の一態様のスイッチング電源装置によれば、スイッチング周波数が可変なスイッチング電源装置において、汎用的、低性能、及び低コストのマイコンを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本開示の実施形態に係るスイッチング電源装置の電気回路図である。
図2】本開示の実施形態に係る制御部の機能構成図である。
図3】目標周波数とスイッチング周波数の絶対誤差の絶対値と目標周波数との関係を示す図である。
図4】目標周波数とスイッチング周波数の絶対誤差の絶対値と目標周波数との関係を示す図である。
図5】本開示の実施形態に係るスペクトラム拡散制御のフローチャートである。
図6】本開示の実施形態に係るスペクトラム拡散テーブルである。
図7】本開示の実施形態に係る周波数変化テーブルである。
図8】本開示の実施形態に係るスペクトラム拡散を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔実施形態〕
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。
【0026】
<スイッチング電源装置1の電気的構成>
図1は、車両システムSの電気回路図である。
【0027】
車両システムSは、車両に搭載されるシステムである。車両システムSは、第1バッテリVhと、第2バッテリVpと、抵抗38と、スイッチング電源装置1と、AMラジオ13とを備える。
【0028】
第1バッテリVhは、高電圧の電力をスイッチング電源装置1に供給する。第1バッテリVhは、例えば、組電池等によって構成される。第1バッテリVhの正極‐負極間電圧は高電圧である。
【0029】
第2バッテリVpは、抵抗38に低電圧の電力を供給する。抵抗38は、スイッチング電源装置1に接続された負荷である。
【0030】
AMラジオ13は、AM放送を受信して、音声を発生する。
【0031】
スイッチング電源装置1は、入力電圧である、第1バッテリVhの高電圧を降圧し、出力電圧である、降圧された低電圧の電力を第2バッテリVpに供給する。
【0032】
スイッチング電源装置1は、第1FET10と、第2FET11と、第3FET20と、第4FET21と、トランス30と、第1ダイオード34と、第2ダイオード35と、コイル36と、コンデンサ37と、制御部2とを備える。
【0033】
トランス30は、1次側巻線31と、2次側巻線32と、2次側巻線33とを備える。
【0034】
第1FET10、第2FET11、第3FET20及び第4FET21は、それぞれ、制御部2から出力される第1制御信号S1、第2制御信号S2、第3制御信号S3、及び第4制御信号S4により、第1バッテリVhから供給された直流電流を、交流電流に変換して、トランス30の1次側巻線31に供給する。
【0035】
トランス30は、1次側と2次側との間の電磁誘導により交流電流から誘導起電力による電流を生成する。1次側には1次側巻線31が配置されている。2次側には2次側巻線32及び2次側巻線33が配置されている。
【0036】
第1ダイオード34及び第2ダイオード35は、誘導起電力による電流を整流した電流に変換する。
【0037】
コイル36及びコンデンサ37は、整流した電流を平滑して出力電流を生成する。出力電流は抵抗38に供給される。
【0038】
第1FET10のゲートは、制御部2と接続し第1制御信号S1が入力される。第1FET10のドレインは、第1バッテリVhの正極と接続される。第1FET10のソースは、第2FET11のドレイン及びトランス30の1次側巻線31の一端と接続される。第2FET11のゲートは、制御部2と接続し第2制御信号S2が入力される。第2FET11のソースは、第1バッテリVhの負極と接続される。第3FET20のゲートは、制御部2と接続し第3制御信号S3が入力される。第3FET20のドレインは、第1バッテリVhの正極に接続される。第3FET20のソースは、第4FET21のドレイン及びトランス30の1次側巻線31の他端と接続される。第4FET21のゲートは制御部2と接続し第4制御信号S4が入力される。第4FET21のソースは、第1バッテリVhの負極と接続される。
【0039】
2次側巻線32の一端は、第1ダイオード34のアノードと接続される。2次側巻線32の他端は、2次側巻線33の一端及び第2バッテリVpの負極に接続される。2次側巻線33の他端は、第2ダイオード35のアノードと接続される。第1ダイオード34のカソードは、コイル36を介して第2バッテリVpの正極と接続される。第2ダイオード35のカソードは、コイル36を介して第2バッテリVpの正極と接続される。抵抗38と、コンデンサ37と、第2バッテリVpは並列接続される。
【0040】
制御部2は、第1FET10のドレイン-ソース間の導通又は不導通を第1制御信号S1により制御し、第2FET11のドレイン-ソース間の導通又は不導通を第2制御信号S2により制御し、第3FET20のドレイン-ソース間の導通又は不導通を第3制御信号S3により制御し、第4FET21のドレイン-ソース間の導通又は不導通を第4制御信号S4により制御する。
【0041】
例えば、第1FET10、第2FET11、第3FET20、及び第4FET21は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であるが、スイッチング素子あれば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、又はバイポーラトランジスタであってもよい。
【0042】
以下の説明において、第1FET10、第2FET11、第3FET20、及び第4FET21ごとに区別する場合には、第1FET10、第2FET11、第3FET20、及び第4FET21のまま表記し、第1FET10、第2FET11、第3FET20、及び第4FET21のいずれか一つのみ取り上げて説明する場合、第1FET10、第2FET11、第3FET20、及び第4FET21を、スイッチング素子と称する。
【0043】
以下の説明において、第1制御信号S1、第2制御信号S2、第3制御信号S3、及び第4制御信号S4ごとに区別する場合には、第1制御信号S1、第2制御信号S2、第3制御信号S3、及び第4制御信号S4のまま表記し、第1制御信号S1、第2制御信号S2、第3制御信号S3、及び第4制御信号S4のうちのいずれか一つを取り上げて説明する場合、第1制御信号S1、第2制御信号S2、第3制御信号S3、及び第4制御信号S4を制御信号と称する。
【0044】
例えば、スイッチング素子のドレイン-ソース間が導通のときをスイッチング素子がオンであり、スイッチング素子のドレイン-ソース間が不導通のときをスイッチング素子がオフである。
【0045】
スイッチング素子のオンオフ制御とは、制御信号によってスイッチング素子のオンとオフを繰り返す動作の制御をいう。
【0046】
制御信号は、そのレベルがHighレベルとLowレベルを交互に変化する信号である。例えば、制御信号は、PWM(Pulse Width Modulation)信号である。
【0047】
<制御部2の機能構成図>
図2は、制御部2の機能構成図である。制御部2は、AD変換部6と、制御信号生成部3と、記憶部4と、周波数指示部5とを備える。
【0048】
AD変換部6は、制御対象モニタ信号Smoが入力され、アナログ信号をデジタル信号に変換してモニタ信号値を生成する。AD変換部6は、モニタ信号値を後述するフィードバック制御部7と、後述する目標周波数決定部9に送信する。例えば、制御対象モニタ信号Smoは、第1バッテリVhの入力電圧値、抵抗38を流れる出力電流値、又はコンデンサ37に印加される出力電圧値である。
【0049】
モニタ信号値は、第1バッテリVhの入力電圧値、抵抗38を流れる出力電流値、又はコンデンサ37に印加される出力電圧値のデジタル信号のいずれか1つ以上を表す情報である。
【0050】
記憶部4は、スペクトラム拡散テーブルTaと、周波数変化テーブルTbを記憶する。
【0051】
スペクトラム拡散テーブルTaは、後述する複数の目標周波数の各々と、目標周波数に対して後述するスペクトラム拡散を行うか否かとを対応付けしたテーブルである。
【0052】
周波数変化テーブルTbは、後述する要素番号の各々と、後述する周波数変化量とを対応付けしたテーブルである。
【0053】
制御信号生成部3は、フィードバック制御部7と、PWMパルス生成部8とを備える。
【0054】
フィードバック制御部7は、AD変換部6から送信されたモニタ信号値に応じて目標周波数以外の制御信号に関する制御パラメータを決定する。例えば、制御パラメータは、制御信号のデューティ比である。
【0055】
PWMパルス生成部8は、目標周波数決定部9から送信された目標周波数を表す情報とフィードバック制御部7から送信された制御パラメータを表す情報を取得する。これらの情報及び後述するスペクトラム拡散指示部12から送信されるスペクトラム拡散を行うか否かの指示に基づいて第1制御信号S1、第2制御信号S2、第3制御信号S3、及び第4制御信号S4を生成する。
【0056】
周波数指示部5は、目標周波数決定部9とスペクトラム拡散指示部12とを備える。
【0057】
目標周波数決定部9は、AD変換部6から送信されたモニタ信号値に応じて次の周期でとるべき目標周波数を複数の周波数候補の中から決定する。目標周波数決定部9は、目標周波数を表す情報をスペクトラム拡散指示部12及びPWMパルス生成部8に送信する。
【0058】
スペクトラム拡散指示部12は、制御信号の目標周波数に対してスペクトラム拡散を行うか否かをPWMパルス生成部8に指示する。制御信号の目標周波数に対してスペクトラム拡散を行うか否かは、例えばスペクトラム拡散テーブルTaに基づいて実施してもよいし、演算式に基づいて実施してもよい。スペクトラム拡散指示部12は、周波数変化テーブルTbを参照して後述するスペクトラム拡散周波数を生成するようPWMパルス生成部8に指示する。
【0059】
制御信号生成部3及び周波数指示部5は、図示しないマイコンによって機能させることができる。マイコンは、例えば水晶発振器を有する。水晶発振器は、マイコンが動作するために必要となるマイコンのPWMパルス生成用タイマー(以下、PWMタイマーと称する。)のクロック信号を発振させる。PWMタイマーのクロック信号の周波数をタイマークロック周波数という。
【0060】
駆動周波数とは、PWMパルス生成部8が目標周波数に基づいて実際に生成する制御信号の周波数である。
【0061】
目標周波数とは、モニタ信号値の情報をもとに、次の周期にとるべき目標として設定する周波数をいう。また、目標周波数は、スイッチング素子を実際に駆動させる制御信号の駆動周波数の目標値である。
【0062】
スイッチング周波数とは、目標周波数に基づいて後述する式(2)から導出される周波数をいう。
【0063】
スペクトラム拡散とは、所定時間ごとに複数のスペクトラム拡散周波数の制御信号を順次変化させて、スイッチング素子のオンオフ制御を行うことである。
【0064】
スペクトラム拡散周波数とは、目標周波数に周波数変化量を加算した周波数である。
【0065】
要素番号は、0からN(Nは自然数)までの値がそれぞれ1つずつ付与されている。複数の要素番号が存在する。各要素番号と目標周波数の各周波数変化量とが対応付けられている。
【0066】
PWMパルス生成部8は、目標周波数と同じ値の駆動周波数の制御信号を生成することが理想的である。しかし実際には、目標周波数と駆動周波数には誤差が生じる。
【0067】
ここで、駆動周波数は、マイコンのタイマークロック周波数に依存する。マイコンが出力する駆動周波数は、式(2)に基づいて理論的に算出することができる。式(2)で理論的に算出したものをスイッチング周波数といい、実際に出力する駆動周波数と区別している。
【0068】
スイッチング周波数は、マイコンのタイマークロック周波数に依存する。タイマークロック周波数は、PWMタイマーのレジスタで設定可能なクロック周波数に対して、水晶発振器のばらつきのために誤差を伴って出力される周波数である。マイコンの水晶発振器の周波数精度がα%のとき、タイマークロック周波数とPWMタイマーのレジスタで設定可能なクロック周波数との関係は、下記式(1)となる。
【数2】
ここで、fpwmは、PWMタイマーのレジスタで設定可能なクロック周波数であり、fclkは、マイコンのタイマークロック周波数である。
【0069】
スイッチング周波数は、下記式(2)となる。
【数3】
ここで、fswは、スイッチング周波数、fは、目標周波数、Round(fclk/f)は、fclkをfで除算した値を小数点以下四捨五入する関数である。
【0070】
<目標周波数と聴感雑音の発生>
スイッチング素子のオンオフ制御により、スイッチング素子を含む回路に高周波電流が流れると、電磁放射雑音が発生する。この電磁放射雑音は、制御信号の周波数成分だけでなく、制御信号の周波数の3次高調波、5次高調波などの高調波の周波数成分の電磁放射雑音も含まれる。この高調波の電磁放射雑音が、AM放送の周波数帯域(526.5kHz~1606.5kHz)にあれば、近くに配置されるAMラジオ13から聴感雑音が発生する。
【0071】
そのため、本開示のスイッチング電源装置1の制御信号の目標周波数は、AM放送の搬送波周波数と一致する9kHz又は10kHzの逓倍に設定している。
【0072】
本実施形態では、例えば、制御信号の目標周波数は、9kHzの逓倍になるようあらかじめ設定している。
【0073】
これにより、スイッチング素子のオンオフ制御により発生する電磁放射雑音の周波数は、目標周波数と同じ、9kHz又は10kHzの逓倍となる。そのため、AM放送の周波数帯域では、AM放送の搬送周波数と電磁放射雑音の周波数とが一致する。AMラジオ13が音声信号を復調するために搬送周波数成分を除去するとき、同じ周波数の電磁放射雑音も併せて除去される。このため、AMラジオ13は、音質を損なうことはなく、聴感雑音を低減することができる。
【0074】
PWMパルス生成部8は、9kHzの逓倍の周波数となるように設計された目標周波数の制御信号を生成するように指示される。しかし、PWMパルス生成部8は、実際、目標周波数と厳密に一致しない値の駆動周波数の制御信号を生成する。駆動周波数は正確に9kHzの逓倍とはならない。
【0075】
目標周波数とスイッチング周波数との絶対誤差の絶対値(以下、単に絶対誤差と称す。)が、あらかじめ定められた閾値以上の場合、聴感雑音が生じる。下記式(3)は、聴感雑音が生じる条件式である。例えば、閾値は、可聴周波数領域の下限値である。より具体的には、閾値は、20Hzであってもよい。
【数4】
ここで、fは、目標周波数である。fswは、スイッチング周波数である。AHは、閾値である。
【0076】
図3は、タイマークロック周波数が80MHzであるときの目標周波数と絶対誤差との関係を示す。
【0077】
目標周波数が81kHzであるとき、絶対誤差は、約28Hzである。このとき式(3)を満たしているので聴感雑音が発生する。
【0078】
目標周波数が63kHzであるとき、絶対誤差は、約7.5Hzである。このとき式(3)を満たしていないので聴感雑音を発生しない。
【0079】
図4は、タイマークロック周波数が200MHzであるときの目標周波数と絶対誤差との関係を示す。
【0080】
タイマークロック周波数が200MHzであるときは、少なくとも図4に示す範囲のどの目標周波数に対しても絶対誤差が式(3)を満たしていないので聴感雑音が発生しない。
【0081】
このように、目標周波数に対する聴感雑音の発生は、マイコンのタイマークロック周波数に依存する。
【0082】
タイマークロック周波数が200MHzである場合、目標周波数が63kHzから108kHzまでは、聴感雑音が発生しない。そのため、タイマークロック周波数が200MHzのマイコンをスイッチング電源装置1に使用することも考えられる。しかし、マイコンのタイマークロック周波数が高くなるとマイコンは高コストとなる。
【0083】
本実施形態では、低性能のマイコンを用いて聴感雑音を低減できるスイッチング電源装置1を実現する。上述のタイマークロック周波数が80MHzである場合、式(3)を満たさない目標周波数が複数存在している。図3によれば、目標周波数が、81kHzと、108kHzである。スイッチング電源装置1は、このような目標周波数に対して、スペクトラム拡散を行うことでスイッチング周波数を疑似的に目標周波数に近づけて聴感雑音の低減を図る。
【0084】
以下、スペクトラム拡散の方法を説明する。本実施形態のスペクトラム拡散は、目標周波数に対してわずかに周波数変化量だけ変化させることにより、疑似的にスイッチング周波数の周波数分解能を向上させている。
【0085】
周波数分解能が向上すれば、スイッチング周波数は、疑似的に目標周波数に近づくことができ、AMラジオ13の聴感雑音を低減できる。
【0086】
本実施形態によれば、スイッチング電源装置1は、スイッチング素子のオンオフ制御を行う制御信号の各々の目標周波数のうち、式(3)を満たす目標周波数に対してスペクトラム拡散を行う。これにより、スイッチング周波数が可変なスイッチング電源装置1において、スイッチング電源装置1に汎用的、低性能、及び低コストであるマイコンを用いることができる。
【0087】
また、本実施形態によれば、目標周波数とスイッチング周波数との絶対誤差を求め、目標周波数の各々のうちどの目標周波数にスペクトル拡散を行うかを決定することができる。
【0088】
さらに、スイッチング素子のオンオフ制御で発生する電磁放射雑音の周波数が、AMラジオ13の搬送周波数とずれている場合にも、AMラジオ13から発生する聴感雑音を低減することができる。
【0089】
<スペクトラム拡散制御処理>
以下に、スペクトラム拡散制御処理について説明する。図5は、スペクトラム拡散制御処理のフローチャートである。
【0090】
スイッチング電源装置1が電源オンされると、スイッチング電源装置1はスペクトラム拡散制御を開始する。
【0091】
ステップS101:制御部2のスペクトラム拡散指示部12は、要素番号の値i、目標周波数fに基づいてスイッチング素子のオンオフ制御を開始する指示をPWMパルス生成部8に行う。PWMパルス生成部8は、制御信号を生成する。
【0092】
ステップS102:制御部2のスペクトラム拡散指示部12は、目標周波数fでスペクトラム拡散を行う対象であるかを記憶部4に記憶されているスぺクトラム拡散テーブルTaを参照する。
【0093】
ここで、図6は、スペクトラム拡散テーブルTaの一例を示す。スペクトラム拡散テーブルTaには、目標周波数各々に対応してスペクトラム拡散を行うか否かが記憶されている。
【0094】
スペクトラム拡散指示部12は、目標周波数が、例えば63kHzである場合には、スペクトラム拡散を行わない。スペクトラム拡散指示部12は、目標周波数が、例えば81kHzである場合には、スペクトラム拡散を行う。
【0095】
より詳細には、目標周波数fでスぺクトラム拡散を行うとスペクトラム拡散テーブルTaに記憶されている場合(ステップ102でYes)、ステップS103へ進む。それ以外の場合(ステップS102でNo)、ステップS114に進む。
【0096】
ステップS103:制御部2のスペクトラム拡散指示部12は、要素番号の値がiのときの周波数変化量Δfiを周波数変化テーブルTbから取得する。図7は、記憶部4に記憶されている周波数変化テーブルTbの一例を示す。周波数変化テーブルTbには、要素番号の各々の値0~Nに対応する周波数変化量Δf0~ΔfNが記憶されている。スペクトラム拡散指示部12は、要素番号の値が0のとき、周波数変化量Δf0を取得する。スペクトラム拡散指示部12は、要素番号の値が1のとき、周波数変化量Δf1を取得する。スペクトラム拡散指示部12は、要素番号の値がNのとき、周波数変化量ΔfNを取得する。次にステップS104に進む。
【0097】
ステップS104:制御部2のスペクトラム拡散指示部12は、目標周波数fに周波数変化量Δfiを加算して、加算した値をスペクトラム拡散周波数とする。スペクトラム拡散周波数の制御信号は、所定時間、PWMパルス生成部8により生成される。図8は、スペクトラム拡散の方法を示した図である。時間0からTまでの所定時間、要素番号の値が0であるときスペクトラム拡散周波数がf+Δf0である制御信号が生成される。その後、要素番号の値が1では、時間Tから2Tまでの所定時間、スペクトラム拡散周波数がf+Δf1である制御信号が生成される。その後、要素番号の値が2となると、時間2Tから3Tまでの所定時間は、スペクトラム拡散周波数がf+Δf2である制御信号が生成される。このように、所定時間が経過すると、要素番号の値がiのときスペクトラム拡散周波数がf+Δfiである制御信号が生成される。要素番号の値がNとなると、スペクトラム拡散周波数がf+ΔfNである制御信号が生成される。要素番号の値がNとなり、時間(N+1)Tを経過した後は、要素番号の値は再び0になる。そのとき、要素番号の値が0であるのでスペクトラム拡散周波数がf+Δf0である制御信号が生成される。このように、周期ATごとに順次制御信号のスペクトラム拡散周波数が変化するスイッチング素子のオンオフ制御が繰り返される。
【0098】
ここで、スペクトラム拡散を行うことにより、スイッチング周波数の周波数分解能が向上する原理を説明する。周波数変化テーブルTbにおいて、要素番号の値が1、周波数変化量Δf0が0、周波数変化量Δf1が1である場合を例に説明する。目標周波数fに0又は1を加算したスペクトラム拡散周波数の制御信号が、時間Tごとに交互にスイッチング素子をオンオフ制御する。周期ATに対するスぺクトラム拡散周波数の平均値は、((f+0)+(f+1))/2=f+0.5となる。このように、スペクトラム拡散を行うことで、マイコンが有する周波数分解能よりも小さい周波数を疑似的に扱うことができる。
【0099】
要素番号の値がN、周波数変化量Δf0~周波数変化量ΔfNの場合においても、スペクトラム拡散により、スイッチング周波数の分解能を疑似的に向上させることができる。
【0100】
ステップS105:制御部2のスペクトラム拡散指示部12は、スペクトラム拡散周波数が、上限値fmaxより大きいかを判定する。制御部2のスペクトラム拡散指示部12は、スペクトラム拡散周波数が、上限値fmaxより大きいと判定した場合(ステップS105でYes)、ステップS106に進む。それ以外の場合(ステップS105でNo)、ステップS107に進む。
【0101】
ステップS106:制御部2のスペクトラム拡散指示部12は、スペクトラム拡散周波数を上限値fmaxに置換する。次にステップS107に進む。
【0102】
ステップS107:制御部2のスペクトラム拡散指示部12は、スペクトラム拡散周波数が下限値fminより小さいかを判定する。制御部2のスペクトラム拡散指示部12は、スペクトラム拡散周波数が下限値fminより小さいと判定した場合(ステップS107でYes)、ステップS108に進む。それ以外の場合(ステップS107でNo)、ステップS109に進む。
【0103】
ステップS108:制御部2のスペクトラム拡散指示部12は、スペクトラム拡散周波数を下限値fminに置換する。次にステップS109に進む。
【0104】
ステップS109:制御部2のスペクトラム拡散指示部12は、制御信号の周波数をスペクトラム拡散周波数に更新し、更新したスペクトラム拡散周波数でスイッチング素子のオンオフ制御を行うようPWMパルス生成部8に指示する。次にステップS110に進む。
【0105】
ステップS110:制御部2のスペクトラム拡散指示部12は、要素番号の値に1加算して新要素番号の値とする。次にステップS111に進む。
【0106】
ステップS111:制御部2のスペクトラム拡散指示部12は、新要素番号の値がNより大きいかを判定する。制御部2のスペクトラム拡散指示部12が、新要素番号の値がNより大きいと判定した場合(ステップS111でYes)、ステップS112に進む。それ以外の場合(ステップS111でNo)、ステップS113に進む。
【0107】
ステップS112:制御部2のスペクトラム拡散指示部12は、新要素番号の値を0に置換する。次にステップS113に進む。
【0108】
ステップS113:制御部2のスペクトラム拡散指示部12は、要素番号の値を新要素番号の値に更新する。次にステップS114に進む。
【0109】
ステップS114:制御部2のスペクトラム拡散指示部12は、スイッチング素子のオンオフ制御を続行するかを判断する。スイッチング素子のオンオフ制御を続行する場合(ステップS114でYes)、ステップS115に進む。それ以外の場合(ステップS114でNo)、ステップS116に進む。
【0110】
ステップS115:制御部2のスペクトラム拡散指示部12は、所定時間経過するまでスイッチング素子のオンオフ制御を行うためPWMパルス生成部8に制御信号を生成するよう指示を行う。次にステップS102に戻る。
【0111】
ステップS116:制御部2のスペクトラム拡散指示部12は、スイッチング素子のオンオフ制御を停止するためPWMパルス生成部8に制御信号を生成しないよう指示を行う。これで処理を終了する。
【0112】
本実施形態によれば、スイッチング制御方法は、モニタ信号値に応じて次の周期でとるべき目標となる目標周波数が複数の周波数候補の中から決定され、目標周波数がスペクトラム拡散を行う対象であれば、目標周波数に対してスペクトラム拡散を行う。これにより、汎用的、低性能、及び低コストであるマイコンを用いてスイッチング制御を行うことができる。
【0113】
本実施形態では、AMラジオ13を備える車両にスイッチング電源装置1を搭載した例を説明したが、本開示はこの例に限るものではない。例えば、室内に配置されたスイッチング電源装置1の近くにAMラジオ13が配置される場合にも本開示は適用される。
【0114】
これにより、スイッチング電源装置1から電磁放射雑音が発生しても、近くに配置されるAMラジオ13からは聴感雑音が発生しない。
【0115】
〔ソフトウェアによる実現例〕
スイッチング電源装置1(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0116】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0117】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0118】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本開示の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0119】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0120】
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0121】
1 スイッチング電源装置
2 制御部
3 制御信号生成部
4 記憶部
5 周波数指示部
6 AD変換部
7 フィードバック制御部
8 PWMパルス生成部
9 目標周波数決定部
10 第1FET
11 第2FET
12 スペクトラム拡散指示部
20 第3FET
21 第4FET
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8