(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132290
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20230914BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037519
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】坂口 聖和
(72)【発明者】
【氏名】中尾 圭佑
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA03
5E322AA06
5E322AB01
5E322AB06
5E322EA10
5E322FA04
5F136BA03
5F136CB07
5F136CB08
5F136CB21
5F136DA27
5F136FA01
5F136FA51
5F136GA01
5F136GA04
(57)【要約】
【課題】冷却装置における冷却水路の面積をより大きくする。
【解決手段】冷却装置1は、内部に形成される冷却水路16を有する装置本体10と、装置本体10における冷却水路16の周囲に配置される止水部と、冷却水路16および止水部を覆うように装置本体10の上に配置される蓋20と、冷却水路16内に配置され、かつ蓋20の下面に超音波溶接されている少なくとも1つの支柱12とを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に形成される冷却水路を有する装置本体と、
前記装置本体における前記冷却水路の周囲に配置される止水部と、
前記冷却水路および前記止水部を覆うように前記装置本体の上に配置される蓋と、
前記冷却水路内に配置され、かつ前記蓋の下面に超音波溶接されている少なくとも1つの支柱とを備えていることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記蓋の上面における前記少なくとも1つの支柱と対向する位置に、凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
互いに離間して配置される複数の前記支柱を備えている、請求項1または2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記冷却水路内において互いに離間して配置される複数のフィンを備えていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記蓋の4隅にそれぞれ配置され、かつ前記蓋を前記装置本体に固定する複数の固定部を備えている、請求項1~4のいずれか1項に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子等からなる電力変換回路に液冷式冷却装置が付随した構成を有するパワー半導体モジュールが知られている。特許文献1には、その一例として、金属ベースの片面に絶縁層が接合し該絶縁層上に導体パターンが接合してなる金属-絶縁層接合基板と、前記導体パターン上に半田ボンディングされた電力変換用の半導体素子とを備えたパワー半導体モジュールが開示される。このパワー半導体モジュールでは、前記金属ベースは、前記絶縁層が接合する板状のベース部と、該ベース部の前記絶縁層が接合する面と反対の面から突出する放熱突起と、該ベース部の前記絶縁層が接合する面と反対の面に立設され前記放熱突起を囲む周壁部とが一体成形により構成されてなる。パワー半導体モジュールさらに前記周壁部の開口端を覆う蓋体を備え、前記周壁部に囲まれ前記放熱突起が存する空間に冷却液が流通可能にされてなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、下蓋の周辺部において冷却水路を取り囲むように配置される8本のボルトによって締結して下蓋を接合基板の下端に固定する。これにより、下蓋の端部からボルトの締結位置までの間に十分な幅の領域を必要とするため、冷却水路の面積が小さくなるという問題がある。
【0005】
本開示の一態様は、冷却装置における冷却水路の面積をより大きくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る冷却装置は、内部に形成される冷却水路を有する装置本体と、前記装置本体における前記冷却水路の周囲に配置される止水部と、前記冷却水路および前記止水部を覆うように前記装置本体の上に配置される蓋と、前記冷却水路内に配置され、かつ前記蓋の下面に超音波溶接されている少なくとも1つの支柱とを備えていることを特徴とする。
【0007】
前記の構成によれば、蓋は、冷却水路内の支柱と超音波溶接されている。すなわち、蓋は支柱に固定されている。これにより、蓋を装置本体の側壁にネジ等で固定しなくても、蓋を装置本体に固定することができる。したがって、側壁における止水部の隣にネジ等を取り付けるための厚さを必要としないので、側壁をより薄くすることができる。その結果、側壁間の距離をより広げることができるため、冷却装置における冷却水路の面積をより大きくすることができる。さらには、支柱によって蓋が補強されるため、蓋の厚さをより小さくすることができる。その結果、冷却装置をより小型することができる。
【0008】
本開示の一態様に係る冷却装置では、前記蓋の上面における前記少なくとも1つの支柱と対向する位置に、凹部が形成されていることが好ましい。
【0009】
前記の構成によれば、蓋を装置本体に取り付ける際に、凹部を目印にして、超音波溶接するべき箇所を容易に把握することができる。これにより、蓋を確実に支柱に超音波溶接することができる。さらに、蓋における支柱との超音波溶接箇所の厚さは、他の箇所の厚さよりも小さい。これにより、超音波を照射するプローブと、超音波溶接される箇所との距離をより短くすることができるので、より強度の高い超音波を超音波溶接箇所に照射することができる。その結果、蓋を支柱により強固に超音波溶接することができる。
【0010】
本開示の一態様に係る冷却装置は、互いに離間して配置される複数の支柱を備えていることが好ましい。
【0011】
前記の構成によれば、蓋が複数の支柱と超音波溶接されるため、蓋をより強固に装置本体に固定することができる。
【0012】
本開示の一態様に係る冷却装置は、前記冷却水路内において互いに離間して配置される複数のフィンを備えていることが好ましい。
【0013】
前記の構成によれば、冷却装置の冷却性能をより高めることができる。
【0014】
前記蓋の4隅にそれぞれ配置され、かつ前記蓋を前記装置本体に固定する複数の固定部を備えていることが好ましい。
【0015】
前記の構成によれば、蓋は、支柱に超音波溶接されるともに、固定部によって装置本体に固定される。これにより、蓋をより強固に装置本体に固定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一態様によれば、冷却装置における冷却水路の面積をより大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る冷却装置の外観を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る蓋を外した状態の冷却装置の外観を示す図である。
【
図3】
図2に示すA-A’箇所の断面を示す断面図である。
【
図4】従来の冷却装置と、本実施形態に係る冷却装置とを比較した図である。
【
図5】
図4の1010示すに示すA-A’箇所の断面と、
図4の1020に示すA-A’箇所の断面とを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(冷却装置1の構造)
図1は、本発明の一実施形態に係る冷却装置1の外観を示す図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る蓋20を外した状態の冷却装置1の外観を示す図である。本実施形態に係る冷却装置1は、自動車内のインバータ等の部品を冷却するために用いられる。
図1および2に示すように、冷却装置1は、装置本体10、複数のフィン11、複数の支柱12、ゴムシール13(止水部)、蓋20、および複数のネジ30(固定部)を備えている。
【0019】
装置本体10は、熱伝導率の高い材料(合金等)によって構成されている。装置本体10は全体として方形の形状を有する。冷却装置1の内部に、冷却水路16が形成されている。装置本体10において冷却水路16を取り囲む4つの側壁のいずれかに、入水孔14および出水孔15がそれぞれ形成されている。入水孔14および出水孔15は、互いに対向する2つの側壁のそれぞれに個別に形成されている。
【0020】
冷却装置1において、冷却水は、入水孔14を通じて冷却水路16内に導入され、冷却水路16内を循環し、最終的に出水孔15を通じて冷却水路16の外部に排出される。冷却水によって装置本体10が冷却され、さらに、装置本体10に接触している冷却対象の放熱部品が冷却される。冷却装置1は、冷却水路16内外に冷却水を循環させることによって、安定した冷却機能を維持する。
【0021】
ゴムシール13および蓋20は、冷却水路16内の冷却水が冷却装置1の外部に漏れないように、装置本体10を封止する。ゴムシール13は、装置本体10における冷却水路16の周囲に配置されている。より詳細には、装置本体10の各側壁の上面に、冷却水路16を取り囲む溝が形成されており、ゴムシール13は、その溝内に埋め込まれている。蓋20は、ゴムシール13および冷却水路16を覆うように、装置本体10の上に配置されている。複数のネジ30は、蓋20の4隅にそれぞれ配置されており、かつ蓋20を装置本体10に固定する。すなわち、蓋20は、装置本体10の4隅において、4つのネジ30を用いてネジ止めされている。
【0022】
複数のフィン11は、熱伝導率の高い材料(合金等)によって構成されている。複数のフィン11は、冷却水路16の内部において、互いに離間しかつ互いに平行に配置されている。本実施形態では、冷却装置1は、11個のフィン11を備えている。各フィン11は、細長い長方形の形状を有している。各フィン11における一方の長辺側の端部は、装置本体10における冷却水路16内の底面に接続されている。各フィン11における他方の長辺側の端部は、蓋20から離間している。各フィン11は、冷却水路16内において、入水孔14を有する側壁側から、出水孔15を形成される側壁側に向かって延伸している。
【0023】
複数の支柱12は、冷却水路16の内部において、互いに離間して配置されている。本実施形態では、冷却装置1は、9個の支柱12を備えている。各支柱12は、いずれかのフィン11と一体化されている。具体的には、3個の支柱12が、1個のフィン11と一体化されている。これに限らず、各フィン11および各支柱12は、互いに別体となっていてもよい。各支柱12は、細長い円柱形状を有している。各支柱12の底面は、装置本体10における冷却水路16内の底面に接続されている。各支柱12の上面は、蓋20の下面に超音波溶接されている。
【0024】
図3は、
図1のA-A’箇所の断面を示す断面図である。
図3に示すように、蓋20の上面における各支柱12と対向する位置に、凹部21が形成されている。本実施形態では、蓋20の上面に合計で9箇所の凹部21が形成されている。蓋20における凹部21の位置は、段差となっている。したがって、蓋20における凹部21の位置の厚さは、蓋20における凹部21以外の位置の厚さよりも小さい。
【0025】
(冷却装置1の利点)
図4は、従来の冷却装置101と、本実施形態に係る冷却装置1とを比較した図である。
図4の1010に、蓋120を外した状態の従来の冷却装置101の上面を示し、
図4の1020に、蓋20を外した状態の冷却装置1の上面を示す。
【0026】
図4の1010に示す従来の冷却装置101は、冷却装置1と異なり、蓋120に超音波溶接される複数の支柱112を備えていない。したがって、蓋120を装置本体110に充分強固に固定するために、冷却水路116を取り囲む4辺の各側壁上おいて、ネジ130で蓋120を装置本体110に固定している。そのため、各側壁において、ネジ130を取り付けるための厚さと、ゴムシール113を配置するための厚さとの双方を必要とする。これにより、側壁が必要以上に厚くなるため、冷却水路116の面積が小さくなるという問題がある。
【0027】
一方、
図4の1020に示す本実施形態に係る冷却装置1では、蓋20は、冷却水路16内の各支柱12と超音波溶接されている。すなわち、蓋20は支柱12に固定されている。これにより、蓋20を装置本体10の側壁における4隅以外の箇所にネジ30で固定しなくても、蓋20を装置本体10に充分強固に固定することができる。したがって、側壁におけるゴムシールの隣にネジ30を取り付けるための厚さを必要としないので、側壁をより薄くすることができる。その結果、側壁間の距離をより広げることができるため、冷却水路16の面積をより大きくすることができる。
【0028】
図5は、
図4の1010に示すA-A’箇所の断面と、
図4の1020に示すA-A’箇所の断面とを示す断面図である。
図5の1110に、従来の冷却装置101の断面を示し、
図5の1120に、本実施形態に係る冷却装置1の断面を示す。
【0029】
従来の冷却装置101では、冷却水路116を大型にする場合、耐水圧の観点から高剛性の封止構造が必要となる。したがって、
図5の1110に示すように、蓋120の厚さをより大きくする必要があるため、冷却装置101が必要に以上に大型化される。一方、冷却装置1では、支柱12によって蓋20が補強されるため、
図5の1120に示すように、蓋20の厚さをより小さくすることができる。その結果、冷却装置1をより小型することができる。さらには、冷却装置1では、従来の冷却装置101に比べて冷却水の水圧による蓋20の変位量を小さくする(実験値としての20分の1以下)ことができる。
【0030】
冷却装置1を作製する作業者は、蓋20を装置本体10に取り付ける際に、凹部21を目印にして、超音波溶接するべき箇所を容易に把握することができる。これにより、蓋20を確実に支柱12に超音波溶接することができる。さらに、蓋20における支柱12との超音波溶接箇所の厚さは、他の箇所の厚さよりも小さい。これにより、超音波を照射するプローブと、超音波溶接される箇所との距離をより短くすることができるので、より強度の高い超音波を超音波溶接箇所に照射することができる。その結果、蓋20における各支柱12との超音波溶接箇所の溶接強度をより高くすることができる。
【0031】
冷却装置1では、さらに、蓋20が複数の支柱12と超音波溶接されるため、蓋20をより強固に装置本体10に固定することができる。なお、冷却水路16内に配置される支柱12は、必ずしも複数に限らず、少なくとも1つであればよい。
【0032】
冷却装置1では、さらに冷却水路16内に複数の複数のフィン11が配置されているため、冷却装置1の内部で冷却水が接触する箇所の面積がより大きくなる。これにより、冷却装置1の冷却性能をより高めることができる。
【0033】
冷却装置1では、さらに、蓋20は、支柱12に超音波溶接されるともに、固定部によって装置本体10に固定される。これにより、蓋20をより強固に装置本体10に固定することができる。
【0034】
(その他)
ネジ30は、装置本体10の4隅などの必要最小限の位置に配置すればよい。あるいはネジ30はなくても良い。すなわち、蓋20は、支柱12と超音波溶接されることのみによって、装置本体10に固定されていてもよい。
【0035】
冷却装置1は、蓋20を装置本体10に固定できることが可能な、ネジ30以外の任意の固定部を備えていてもよい。ただし、固定部は、ネジ30と同様に、側壁の厚さをより大きくせずに済む位置(装置本体10の4隅など)にのみ配置される必要がある。
【0036】
支柱12の幅は、カルマン渦等の抑制のために10mm以下であることが好ましい。これにより、冷却水路16における渦発生を効果的に抑えることができる。
【0037】
冷却装置1は、冷却水路16内の冷却水の漏洩を防ぐための、ゴムシール13以外の任意の止水部を備えていてもよい。例えば、止水部は、接着剤であってもよい。
【0038】
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることによって、新しい技術的特徴を形成することもできる。
【符号の説明】
【0039】
1 冷却装置
10 装置本体
12 支柱
13 ゴムシール
14 入水孔
15 出水孔
16 冷却水路
21 凹部
30 ネジ