(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132292
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置、スイッチング電源装置の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
H02M3/28 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037521
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】小原 悠司
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS01
5H730BB27
5H730DD02
5H730DD03
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE03
5H730EE04
5H730EE08
5H730EE13
5H730EE57
5H730EE59
5H730FD51
5H730FF09
5H730FF11
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】PWM信号を生成する制御部の処理負荷を小さくする。
【解決手段】スイッチング電源装置(1A)は、第1から第4PWM信号のデューティ比の調整に関する調整情報を記憶する記憶部(102)と、外部装置(2A)から記憶部への調整情報の入力を受け付ける接続部と、を備え、PWM信号生成部(110)は、記憶部に記憶された調整情報に基づいて、第1から第4PWM信号を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から入力される入力電圧を所定の電圧に変換し、変換された電圧を負荷へ供給するスイッチング電源装置であって、
前記電源から入力される入力電圧を変換するトランスと、
前記トランスの1次側へ第1方向に流れる第1電流のオンオフ動作を行う第1および第2スイッチング素子と、
前記トランスの1次側へ前記第1方向とは逆の第2方向に流れる第2電流のオンオフ動作を行う第3および第4スイッチング素子と、
前記トランスの1次側へ前記第1電流が流れた場合に、前記トランスの2次側に流れる電流を前記負荷へ導く第1整流素子と、
前記トランスの1次側へ前記第2電流が流れた場合に、前記トランスの2次側に流れる電流を前記負荷へ導く第2整流素子と、
前記第1スイッチング素子へ第1PWM信号を送信し、前記第2スイッチング素子へ第2PWM信号を送信し、前記第3スイッチング素子へ第3PWM信号を送信し、前記第4スイッチング素子へ第4PWM信号を送信することで、前記第1から第4スイッチング素子の各々の前記オンオフ動作を制御するPWM信号生成部と、
前記第1から第4PWM信号のデューティ比の調整に関する調整情報を記憶する記憶部と、
外部装置から前記記憶部への前記調整情報の入力を受け付ける接続部と、を備え、
前記PWM信号生成部は、前記記憶部に記憶された前記調整情報に基づいて、前記第1から第4PWM信号を生成することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記調整情報は、
前記第1電流の電流値が前記第2電流の電流値よりも大きい場合は、前記第1および第2PWM信号の少なくとも片方のデューティ比が前記第3および第4PWM信号のデューティ比よりも小さくなるように決定され、
前記第1電流の電流値が前記第2電流の電流値よりも小さい場合は、前記第3および第4PWM信号の少なくとも片方のデューティ比が前記第1および第2PWM信号のデューティ比よりも小さくなるように決定されることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記第1電流および前記第2電流の電流値を測定する電流測定部を更に備え、
前記接続部を介して、
前記電流測定部が測定した前記第1電流および前記第2電流の各電流値を、前記外部装置へ出力し、
前記第1電流および前記第2電流の当該電流値に基づいて決定された前記調整情報について前記外部装置からの入力を受け付け、前記記憶部に記憶させることを特徴とする請求項1または2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記調整情報は、前記第1から第4PWM信号の中からデューティ比の調整を行う対象と、調整量とを予め定めたパターンが複数用意され、
前記第1から第4スイッチング素子のオン抵抗値と、前記第1および第2整流素子の順方向電圧およびオン抵抗値との定格許容誤差内のばらつきが、前記第1電流の電流値と前記第2電流の電流値との差に一元化され、
前記第1電流の電流値と前記第2電流の電流値との差に対応した1つのパターンの前記調整情報が前記記憶部に記憶されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置を製造する、スイッチング電源装置の製造方法であって、
前記第1電流および前記第2電流の電流値を測定した結果を前記外部装置に入力する入力工程と、
前記外部装置が、前記第1電流の電流値と前記第2電流の電流値との差に基づいて、前記調整情報を決定する決定工程と、
前記決定工程にて決定された前記調整情報を、前記接続部を介して前記記憶部に記憶させる書込工程と、
を含むことを特徴とするスイッチング電源装置の製造方法。
【請求項6】
請求項3または4に記載のスイッチング電源装置を製造する、スイッチング電源装置の製造方法であって、
前記電流測定部による前記第1電流および前記第2電流の電流値の測定結果を、前記接続部を介して前記外部装置へ入力する入力工程と、
前記外部装置が、前記第1電流と前記第2電流の電流値の差に基づいて、前記調整情報を決定する決定工程と、
前記決定工程にて決定された前記調整情報を、前記接続部を介して前記記憶部に記憶させる書込工程と、
を含むことを特徴とするスイッチング電源装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載のスイッチング電源装置の製造に用いる製造装置であって、
前記第1電流および前記第2電流の電流値の入力を受け付ける入力受付部と、
前記スイッチング電源装置から入力された前記第1電流の電流値と前記第2電流の電流値との差に基づいて、前記調整情報を決定する決定部と、
前記決定部により決定された前記調整情報を前記スイッチング電源装置へ出力する出力部と、を備えることを特徴とする製造装置。
【請求項8】
請求項3または4に記載のスイッチング電源装置の製造に用いる製造装置であって、
前記スイッチング電源装置の前記接続部を介して、前記電流測定部による前記第1電流および前記第2電流の電流値の測定結果の入力を受け付ける入力受付部と、
前記スイッチング電源装置から入力された前記第1電流の電流値と前記第2電流の電流値との差に基づいて、前記調整情報を決定する決定部と、
前記決定部により決定された前記調整情報を前記スイッチング電源装置へ出力する出力部と、を備えることを特徴とする製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スイッチング電源装置、その製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フルブリッジ回路を備えるDC-DCコンバータにおいて、トランスの偏磁現象の対策手段が講じられている。特許文献1に記載のDC-DCコンバータでは、第1PWM信号で駆動される第1スイッチ手段と、第2PWM信号で駆動される第2スイッチ手段とを備え、トランスに流れる電流に基づいて、第1スイッチ手段がオンしている第1オン時間と、第2スイッチ手段がオンしている第2オン時間とを測定する。そして、第1オン時間と第2オン時間との差に基づいて、第1PWM信号または第2PWM信号のデューティ比を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような補正方法では、DC-DCコンバータの動作中にトランスに流れる電流の偏りを動的に検出し、デューティ比を補正するため、PWM信号を生成する制御部の処理負荷が大きい。
【0005】
本開示の一態様は、PWM信号を生成する制御部の処理負荷が小さいスイッチング電源装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係るスイッチング電源装置は、電源から入力される入力電圧を所定の電圧に変換し、変換された電圧を負荷へ供給するスイッチング電源装置であって、前記電源から入力される入力電圧を変換するトランスと、前記トランスの1次側へ第1方向に流れる第1電流のオンオフ動作を行う第1および第2スイッチング素子と、前記トランスの1次側へ前記第1方向とは逆の第2方向に流れる第2電流のオンオフ動作を行う第3および第4スイッチング素子と、前記トランスの1次側へ前記第1電流が流れた場合に、前記トランスの2次側に流れる電流を前記負荷へ導く第1整流素子と、前記トランスの1次側へ前記第2電流が流れた場合に、前記トランスの2次側に流れる電流を前記負荷へ導く第2整流素子と、前記第1スイッチング素子へ第1PWM信号を送信し、前記第2スイッチング素子へ第2PWM信号を送信し、前記第3スイッチング素子へ第3PWM信号を送信し、前記第4スイッチング素子へ第4PWM信号を送信することで、前記第1から第4スイッチング素子の各々の前記オンオフ動作を制御するPWM信号生成部と、前記第1から第4PWM信号のデューティ比の調整に関する調整情報を記憶する記憶部と、外部装置から前記記憶部への前記調整情報の入力を受け付ける接続部と、を備え、前記PWM信号生成部は、前記記憶部に記憶された前記調整情報に基づいて、前記第1から第4PWM信号を生成する。
【0007】
上記構成によれば、PWM信号生成部は、記憶部に記憶された調整情報に基づいて、第1から第4PWM信号を生成する。したがって、DC-DCコンバータの動作中にトランスに流れる電流の偏りを動的に検出することがないため、PWM信号を生成する制御部の処理負荷を小さくすることができる。
【0008】
また、本開示の一態様に係るスイッチング電源装置では、前記調整情報は、前記第1電流の電流値が前記第2電流の電流値よりも大きい場合は、前記第1および第2PWM信号の少なくとも片方のデューティ比が前記第3および第4PWM信号のデューティ比よりも小さくなるように決定され、前記第1電流の電流値が前記第2電流の電流値よりも小さい場合は、前記第3および第4PWM信号の少なくとも片方のデューティ比が前記第1および第2PWM信号のデューティ比よりも小さくなるように決定される。
【0009】
上記構成によれば、記憶部に記憶された調整情報は、第1電流が第2電流よりも大きい場合は、第1および第2PWM信号の少なくとも片方のデューティ比が第3および第4PWM信号のデューティ比よりも小さくなるようになっている。一方で、調整情報は、第1電流の電流値が第2電流の電流値よりも小さい場合は、第3および第4PWM信号の少なくとも片方のデューティ比が第1および第2PWM信号のデューティ比よりも小さくなるようになっている。そのため、PWM信号生成部がその調整情報に基づいて、第1から第4PWM信号を生成することにより、第1電流の電流値と第2電流の電流値との差を小さくすることができる。
【0010】
また、本開示の一態様に係るスイッチング電源装置では、前記第1電流および前記第2電流の電流値を測定する電流測定部を更に備え、前記接続部を介して、前記電流測定部が測定した前記第1電流および前記第2電流の各電流値を、前記外部装置へ出力し、前記第1電流および前記第2電流の当該電流値に基づいて決定された前記調整情報について前記外部装置からの入力を受け付け、前記記憶部に記憶させる。
【0011】
上記構成によれば、第1電流および第2電流の電流値を測定する電流測定部を更に備え、電流測定部が測定した第1電流および第2電流の各電流値を、外部装置へ出力する。そして、第1電流および第2電流の電流値に基づいて決定された調整情報について外部装置からの入力を受け付け、記憶部に記憶させる。スイッチング電源装置が電流測定部を備え、容易に電流値を測定することができるため、調整情報を記憶部へ記憶させることが容易になる。
【0012】
また、本開示の一態様に係るスイッチング電源装置では、前記調整情報は、前記第1から第4PWM信号の中からデューティ比の調整を行う対象と、調整量とを予め定めたパターンが複数用意され、前記第1から第4スイッチング素子のオン抵抗値と、前記第1および第2整流素子の順方向電圧およびオン抵抗値との定格許容誤差内のばらつきが、前記第1電流の電流値と前記第2電流の電流値との差に一元化され、前記第1電流の電流値と前記第2電流の電流値との差に対応した1つのパターンの前記調整情報が前記記憶部に記憶される。
【0013】
上記構成によれば、第1から第4スイッチング素子のオン抵抗値と、第1および第2整流素子の順方向電圧との定格許容誤差内のばらつきを、第1電流の電流値と第2電流の電流値との差に一元化し、その第1電流の電流値と第2電流の電流値との差に対応した1つのパターンの調整情報を記憶部に記憶させる。そのため、第1から第4スイッチング素子のオン抵抗値ならびに、第1および第2整流素子の順方向電圧およびオン抵抗値を測定することなくスイッチング電源装置を容易に調整することができる。
【0014】
本開示の一態様に係るスイッチング電源装置の製造方法は、前記第1電流および前記第2電流の電流値を測定した結果を外部装置に入力する入力工程と、前記外部装置が、前記第1電流の電流値と前記第2電流の電流値との差に基づいて、前記調整情報を決定する決定工程と、前記決定工程にて決定された前記調整情報を、前記接続部を介して前記記憶部に記憶させる書込工程と、を含む。
【0015】
上記構成によれば、第1電流の電流値と第2電流の電流値との差に基づいて、調整情報を決定し、その調整情報をスイッチング電源装置の記憶部に記憶させる。製造段階に調整情報を決定し、記憶部に記憶させることにしたため、DC-DCコンバータの動作中にトランスに流れる電流の偏りを動的に検出することがないため、PWM信号を生成する制御部の処理負荷を小さくすることができる。
【0016】
本開示の一態様に係るスイッチング電源装置の製造方法は、前記電流測定部による前記第1電流および前記第2電流の電流値の測定結果を、前記接続部を介して前記外部装置へ入力する入力工程と、前記外部装置が、前記第1電流と前記第2電流の電流値の差に基づいて、前記調整情報を決定する決定工程と、前記決定工程にて決定された前記調整情報を、前記接続部を介して前記記憶部に記憶させる書込工程と、を含む。
【0017】
上記構成によれば、電流測定部を用いて第1電流の電流値と第2電流の電流値とを測定し、その測定結果に基づいて調整情報を決定する。そのため、第1電流と第2電流とを容易に測定し、調整情報を決定することができる。
【0018】
本開示の一態様に係る製造装置は、前記第1電流および前記第2電流の電流値の入力を受け付ける入力受付部と、前記スイッチング電源装置から入力された前記第1電流の電流値と前記第2電流の電流値との差に基づいて、前記調整情報を決定する決定部と、前記決定部により決定された前記調整情報を前記スイッチング電源装置へ出力する出力部と、を備える。
【0019】
上記構成によれば、製造装置は、第1電流の電流値と第2電流の電流値との差に基づいて、調整情報を決定し、その調整情報をスイッチング電源装置へ出力する。製造段階に調整情報を決定し、記憶部に記憶させることにしたため、DC-DCコンバータの動作中にトランスに流れる電流の偏りを動的に検出することがないため、PWM信号を生成する制御部の処理負荷を小さくすることができる。
【0020】
また、本開示の一態様に係る製造装置は、前記スイッチング電源装置の前記接続部を介して、前記電流測定部による前記第1電流および前記第2電流の電流値の測定結果の入力を受け付ける入力受付部と、前記スイッチング電源装置から入力された前記第1電流の電流値と前記第2電流の電流値との差に基づいて、前記調整情報を決定する決定部と、前記決定部により決定された前記調整情報を前記スイッチング電源装置へ出力する出力部と、を備える。
【0021】
上記構成によれば、電流測定部を用いて第1電流の電流値と第2電流の電流値とを測定し、その測定結果に基づいて調整情報を決定する。そのため、第1電流と第2電流とを容易に測定し、調整情報を決定することができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の一態様によれば、PWM信号を生成する制御部の処理負荷を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示の実施形態1に係るスイッチング電源装置の回路図である。
【
図2】本開示の実施形態1に係るスイッチング電源装置に備わるDC-DCコンバータに流れる電流の方向を示す図である。
【
図3】DC-DCコンバータを構成するスイッチング素子に入力されるPWM信号と、デューティ比について説明するための図である。
【
図4】DC-DCコンバータにおける偏磁のパターンと、デューティ比の調整との関係について説明するための図である。
【
図5】PWM信号のデューティ比の調整方法の一例を示す図である。
【
図6】PWM信号のデューティ比の調整方法の一例を示す図である。
【
図7】本開示の実施形態1に係るスイッチング電源装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の実施形態2に係るスイッチング電源装置の回路図である。
【
図9】本開示の実施形態2に係るスイッチング電源装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図10】DC-DCコンバータにおける偏磁のパターンと、デューティ比の調整との関係について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔実施形態1〕
図1は、本開示の実施形態1に係るスイッチング電源装置の回路図である。
図1に示すスイッチング電源装置1Aは、DC-DCコンバータ100Aと、制御部101Aと、記憶部102と、接続部103とを備える。DC-DCコンバータ100Aは、フルブリッジ回路を構成する四つのスイッチング素子Q1-Q4と、トランスTRと、第1整流素子D1および第2整流素子D2とを備える。DC-DCコンバータ100Aでは、不図示の電源から入力される入力電圧をトランスTRにて所定の電圧に変換し、変換された電圧を不図示の負荷へ供給する。
【0025】
スイッチング素子Q1は、第1スイッチング素子の一例であり、FETからなる。スイッチング素子Q4は、第2スイッチング素子の一例であり、FETからなる。スイッチング素子Q2は、第3スイッチング素子の一例であり、FETからなる。スイッチング素子Q3は、第4スイッチング素子の一例であり、FETからなる。スイッチング素子Q1-Q4は、IGBTやバイポーラトランジスタで構成してもよい。
【0026】
第1整流素子D1および第2整流素子D2は、ダイオードからなる。第1整流素子D1および第2整流素子D2は、トランスTRの2次側に流れる電流をDC-DCコンバータ100Aの負荷側へ導く。第1整流素子D1および第2整流素子D2は、FETなどのスイッチング素子で構成して、同期整流してもよい。
【0027】
制御部101Aは、例えば、マイクロコンピュータからなり、記憶部102に記憶されたプログラムを実行することにより、PWM信号生成部110として機能する。PWM信号生成部110は、DC-DCコンバータ100Aの4つのスイッチング素子Q1-Q4のゲートに入力するPWM信号をそれぞれ生成する。スイッチング素子Q1-Q4は、PWM信号生成部110が生成するPWM信号に基づいてオンオフ動作を行う。
【0028】
スイッチング電源装置1Aの接続部103は、スイッチング電源装置1Aの製造段階に製造装置2Aと接続される。製造段階とは、スイッチング電源装置1Aの組み立て等を行う段階だけでなく、スイッチング電源装置1Aまたはその部品の動作検査を行う段階を含む。接続部103は、例えば、スイッチング電源装置1Aの筐体に設けられたコネクタまたはピッグテイル、もしくは製造装置2Aと無線通信を行うための通信モジュールである。製造装置2Aは、接続部103を介在させてスイッチング電源装置1Aの外部から接続する外部装置であり、スイッチング電源装置1Aの製造に用いられる。製造装置2Aは、スイッチング電源装置1Aの製造にのみ用いられる専用装置であってもよいし、製造用のアプリケーションがインストールされたコンピュータであってもよい。
【0029】
図2および
図3を用いて、スイッチング素子Q1-Q4によるスイッチング動作について説明する。
図2は、スイッチング動作によりトランスTRに流れる電流の方向を示す。
図3は、スイッチング素子Q1-Q4のゲートに入力されるPWM信号の一例を示すタイミングチャートである。
【0030】
図3の最上段は、スイッチング素子Q1のゲートに入力される第1PWM信号の一例を示す。2段目は、スイッチング素子Q2のゲートに入力される第2PWM信号の一例を示す。3段目は、スイッチング素子Q3のゲートに入力される第3PWM信号の一例を示す。4段目は、スイッチング素子Q4のゲートに入力される第4PWM信号の一例を示す。5段目は、トランスTRに電流が流れているか否かを示す。
【0031】
第1PWM信号と第2PWM信号とは、相補的な関係にある。すなわち、スイッチング素子Q1がオンしているときはスイッチング素子Q2がオフとなり、スイッチング素子Q2がオンしているときはスイッチング素子Q1がオフとなる。また、第3PWM信号と第4PWM信号とは、相補的な関係にある。すなわち、スイッチング素子Q3がオンしているときはスイッチング素子Q4がオフとなり、スイッチング素子Q3がオンしているときはスイッチング素子Q4がオフとなる。
図3では、第4PWM信号は、第1PWM信号と1/4周期だけ位相が遅れている。第3PWM信号は、第2PWM信号と1/4周期だけ位相が遅れている。
【0032】
第1PWM信号および第4PWM信号がオンとなり、スイッチング素子Q1およびQ4がオンになると、
図2(A)に示すように、トランスTRの1次側に対して電流C11が流れる。このとき、トランスTRの2次側では、第1整流素子D1に電流C12が流れる。以下、電流C11およびC12が流れる方向を第1方向と称し、第1方向に流れる電流を第1電流と称する。
【0033】
第2PWM信号および第3PWM信号がオンとなり、スイッチング素子Q2およびQ3がオンになると、
図2(B)に示すように、トランスTRの1次側に対して第2方向の電流C21が流れる。このとき、トランスTRの2次側では、第2整流素子D2に電流C22が流れる。以下、電流C21およびC22が流れる方向を第2方向と称し、第2方向に流れる電流を第2電流と称する。
【0034】
スイッチング電源装置1Aは、理想的には、第1電流C11の電流値と第2電流C21の電流値とが等しくなるように設計されている。しかし、実際には、DC-DCコンバータ100Aの構成部品の電流の流れやすさを示す特性値のばらつきにより、第1電流C11の電流値と第2電流C21の電流値とに差が生まれ、トランスTRに偏磁現象が発生することがある。電流の流れやすさを示す特性値とは、例えば、スイッチング素子Q1-Q4のオン抵抗値、第1整流素子D1の順方向電圧およびオン抵抗値、第2整流素子D2の順方向電圧およびオン抵抗値である。これらの特性値は、各部品の製品仕様として定められた定格許容誤差の範囲内でばらつくことがある。
【0035】
しかし、DC-DCコンバータ100Aの全構成部品について、電流の流れやすさを示す特性値をそれぞれ測定することは困難である。そこで、スイッチング電源装置1Aでは、スイッチング素子Q1-Q4のオン抵抗値と、第1整流素子D1および第2整流素子D2の順方向電圧およびオン抵抗値との定格許容誤差内のばらつきを、第1電流C11の電流値と第2電流C21の電流値との差という情報に一元化する。すなわち、スイッチング素子Q1-Q4のオン抵抗値と、第1整流素子D1の順方向電圧およびオン抵抗値と、第2整流素子D2の順方向電圧およびオン抵抗値との定格許容誤差内のばらつき等、複数のパラメータを含む高次元の情報を、第1電流C11の電流値と第2電流C21の電流値との差という一次元の情報で処理できるようにする。スイッチング電源装置1Aの製造段階において、第1電流C11および第2電流C21の電流値を測定し、電流値の差を複数のパターンに分類する。そして、パターンごとに定められた方法により、第1電流C11の電流値と第2電流C21の電流値との差が小さくなるように調整を行う。
【0036】
電流値の差を小さくする調整は、第1-第4PWM信号のいずれかのデューティ比を小さくすることで行われる。具体的には、第1電流C11を小さくする場合は、第1PWM信号または第4PWM信号のデューティ比を小さくする。第2電流C21を小さくする場合は、第2PWM信号または第3PWM信号のデューティ比を小さくする。
【0037】
パターンごとに行う調整に関する調整情報は、スイッチング電源装置1Aの製造段階に記憶部102に保存される。調整情報には、第1電流C11側のPWM信号のデューティ比を調整するのか、第2電流C21側のPWM信号のデューティ比を調整するのかを示す調整対象に関する情報と、調整量を示す情報とが含まれる。PWM信号生成部110は、記憶部102に保存された調整情報を参照して、第1-第4PWM信号を生成する。
【0038】
図4は、調整情報の一例を示す。
図4に示す調整テーブル300では、第1電流C11の電流値と第2電流C21の電流値との差が7パターンに分類され、パターンごとの調整情報が例示されている。
【0039】
第1パターンは、第1電流C11の電流値と第2電流C21の電流値との差がゼロに近く、調整を行わないパターンである。例えば、第1電流C11の電流値と第2電流C21の電流値との差の絶対値が2A未満であれば第1パターンに分類される。
【0040】
第2パターンから第4パターンまでは、第1電流C11が第2電流C21よりも大きいパターンであり、電流値の差の大きさに基づいて分類される。例えば、電流値の差が2A以上4A未満であれば第2パターンに分類される。電流値の差が4A以上6A未満であれば第3パターンに分類される。電流値の差が6A以上であれば第4パターンに分類される。第2パターンから第4パターンでは、第1電流C11およびC12を減らすために、第1PWM信号または第4PWM信号のデューティ比を小さくする。
【0041】
図5は、第2パターンから第4パターンにおいて実行される、第1PWM信号または第4PWM信号のデューティ比の調整例を示す。
図5(A)に示す調整では、第1PWM信号の立ち上がりのタイミングが所定時間A1だけ遅くし、第1PWM信号のデューティ比を小さくしている。
図5(B)に示す調整では、第4PWM信号の立ち下がりのタイミングが所定時間A2だけ早くし、第4PWM信号のデューティ比を小さくしている。所定時間A1およびA2は、記憶部102に保存された調整情報に基づいて決定される。
【0042】
PWM信号生成部110は、記憶部102に記憶された調整情報を参照し、その調整情報に基づいて、
図5(A)または(B)に示すような調整を行う。
図5(A)および(B)のいずれの調整を行った場合も、スイッチング素子Q1およびQ4が同時にオンになる期間が短くなり、第1電流C11およびC12が小さくなる。
【0043】
なお、PWM信号生成部110は、
図5(A)に示す第1PWM信号のデューティ比の調整と、
図5(B)に示す第4PWM信号のデューティ比の調整とを同時に実施することにしてもよい。
【0044】
一方、第5パターンから第7パターンまでは、第2電流C21が第1電流C11よりも大きいパターンであり、電流値の差の大きさに基づいて分類される。例えば、電流値の差が2A以上4A未満であれば第5パターンに分類される。電流値の差が4A以上6A未満であれば第6パターンに分類される。電流値の差が6A以上であれば第7パターンに分類される。第5パターンから第7パターンでは、第2電流C21およびC22を減らすために、第2PWM信号または第3PWM信号のデューティ比を小さくする。
【0045】
図6は、第5パターンから第7パターンにおいて実行される、第2PWM信号または第3PWM信号のデューティ比の調整例を示す。
図6(A)に示す調整では、第2PWM信号の立ち上がりのタイミングが所定時間A3だけ遅くし、第2PWM信号のデューティ比が小さくなっている。
図6(B)に示す調整では、第3PWM信号の立ち下がりのタイミングが所定時間A4だけ早くし、第3PWM信号のデューティ比を小さくしている。所定時間A3およびA4は、記憶部102に保存された調整情報に基づいて決定される。
【0046】
PWM信号生成部110は、記憶部102に記憶された調整情報を参照し、その調整情報に基づいて、
図6(A)または(B)に示すような調整を行う。
図6(A)および(B)のいずれの調整を行った場合も、スイッチング素子Q2およびQ3が同時にオンになる期間が短くなり、第2電流C21およびC22が小さくなる。
【0047】
なお、PWM信号生成部110は、
図6(A)に示す第2PWM信号のデューティ比の調整と、
図6(B)に示す第3PWM信号のデューティ比の調整とを同時に実施することにしてもよい。
【0048】
図1および
図7を参照して、スイッチング電源装置1Aの製造方法について説明する。
図7は、スイッチング電源装置1Aの製造方法の一例を示すフローチャートである。スイッチング電源装置1Aの製造方法では、製造装置2Aを使用する。
図1に示すとおり、製造装置2Aは、入力受付部201と、決定部202と、出力部203とを備える。
【0049】
図7に示すスイッチング電源装置1Aの製造方法では、初めに、第1電流C11および第2電流C21の電流値を測定し、その測定値を製造装置2Aへ入力する(S100)。電流値は、スイッチング電源装置1の製造現場にいる作業員によって、シャント抵抗を用いた方法等、周知な方法を用いて測定される。製造装置2Aは、入力受付部201として機能して、電流値の測定結果の入力を受け付ける。入力受付部201は、例えば、作業員がキーボード等を用いて入力した情報を受け付けるものである。
【0050】
次に、製造装置2Aは、決定部202として機能し、ステップS100で入力された第1電流C11および第2電流C21の電流値に基づいて、調整情報を決定する(S101)。例えば、製造装置2Aは、第1電流C11の電流値と第2電流C21の電流値との差を算出し、その差が
図4に示した7パターンのどのパターンに当てはまるか判断する。そして、製造装置2Aは、パターンごとに決められた調整情報を決定する。
【0051】
次に、製造装置2Aは、出力部203として機能し、接続部103を介在させて、ステップS101で決定した調整情報をスイッチング電源装置1Aへ出力し、スイッチング電源装置1の記憶部102に調整情報を保存させる。
【0052】
(実施形態1の作用効果)
以上説明したスイッチング電源装置1Aは、接続部103を介在させて、第1-第4PWM信号のデューティ比の調整に関する調整情報の入力を外部の製造装置2Aから受け付け、記憶部102に記憶させる。そして、PWM信号生成部110は、記憶部102に記憶された調整情報に基づいて、第1-第4PWM信号を生成する。そのため、DC-DCコンバータの動作中にトランスに流れる電流の偏りを動的に検出することがないため、制御部101Aに与えるPWM信号生成部110の処理負荷が小さくすることができる。
【0053】
調整情報は、第1電流C11の電流値が第2電流C21の電流値よりも大きい場合は、
図5(A)または(B)に示すように、第1PWM信号および第4PWM信号の少なくとも片方のデューティ比が第2PWM信号および第3PWM信号のデューティ比よりも小さくなるようになっている。また、調整情報は、第1電流C11の電流値が第2電流C21の電流値よりも小さい場合は、
図6(A)または(B)に示すように、第2PWM信号および第3PWM信号の少なくとも片方のデューティ比が第1PWM信号および第4PWM信号のデューティ比よりも小さくなるようになっている。そのため、PWM信号生成部110がその調整情報に基づいて、第1-第4PWM信号を生成することにより、第1電流C11と第2電流C21の電流値の差を小さくすることができる。
【0054】
調整情報は、
図4に例示するように、第1-第4PWM信号の中からデューティ比の調整を行う対象と、調整量とを予め定めたパターンが複数用意されている。そして、スイッチング素子Q1-Q4のオン抵抗値と、第1整流素子D1および第2整流素子D2の順方向電圧およびオン抵抗値との定格許容誤差内のばらつきを、第1電流C11の電流値と第2電流C21の電流値との差に一元化され、その電流値の差に対応した1つのパターンの調整情報が記憶部102に記憶される。そのため、スイッチング素子Q1-Q4のオン抵抗値ならびに、第1整流素子D1および第2整流素子D2の順方向電圧をスイッチング電源装置1Aの製造段階で測定することなくスイッチング電源装置1Aを容易に調整することができる。
【0055】
スイッチング電源装置1Aの製造方法は、
図7に示したように、製造装置2Aが第1電流の電流値と第2電流の電流値との差に基づいて、調整情報を決定する工程と(S101)、その調整情報をスイッチング電源装置1Aの記憶部に記憶させる工程(S102)とを有する。製造段階に調整情報を決定し、記憶部に記憶させることにしたため、DC-DCコンバータの動作中にトランスに流れる電流の偏りを動的に検出することがなく、制御部101Aに与えるPWM信号生成部110の処理負荷が小さくすることができる。
〔実施形態2〕
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0056】
図8は、本開示の実施形態2に係るスイッチング電源装置の回路図である。
図8に示すスイッチング電源装置1Bは、DC-DCコンバータ100Bと、制御部101Bと、記憶部102と、接続部103とを備える。DC-DCコンバータ100Bは、その内部に、電流検出部104を備える点がDC-DCコンバータ100Aと異なる。電流検出部104は、トランスTRに流れる電流を検出し、検出した電流値に関する情報を制御部101Bへ出力する。
【0057】
制御部101Bは、制御部101Aと同様にマイクロコンピュータからなる。制御部101Bは、記憶部102に記憶されたプログラムを実行することにより、電流測定部111としても機能する点が制御部101Aと異なる。電流測定部111は、電流検出部104の検出結果に基づいて、トランスTRの1次側に流れる電流、すなわち第1電流C11と第2電流C21とを測定する。
【0058】
図9を参照して、スイッチング電源装置1Bの製造方法について説明する。
図9は、スイッチング電源装置1Bの製造方法の一例を示すフローチャートである。スイッチング電源装置1Bの製造方法では、製造装置2Bを使用する。製造装置2Bは、スイッチング電源装置1Bの製造にのみ用いられる専用装置であってもよいし、製造用のアプリケーションがインストールされたコンピュータであってもよい。
【0059】
図9に示すスイッチング電源装置1Bの製造方法は、製造装置2Bへ第1電流C11および第2電流C21の電流値を入力する方法がスイッチング電源装置1Aの製造方法と異なる。スイッチング電源装置1Bの製造方法では、制御部101Bが電流測定部111として機能し、電流検出部104からトランスTRの一次側に流れる電流に関する情報を取得し、その情報に基づいて第1電流C11と第2電流C21の電流値を測定する(S200)。そして、制御部101Bは、接続部103を介在させて、ステップS200で測定した第1電流C11および第2電流C21の電流値を製造装置2Bへ入力する(S201)。以降の工程は、
図7を用いて説明したスイッチング電源装置1Aの製造方法と同様である。
【0060】
(実施形態2の作用効果)
以上説明したスイッチング電源装置1Bは、第1電流C11および第2電流C21の電流値を測定する電流測定部111を更に備える。そして、スイッチング電源装置の製造段階に、電流測定部が測定した第1電流C11および第2電流C21の各電流値を、製造装置2Bへ出力する。そして、第1電流C11および第2電流C21の電流値に基づいて製造装置2Bが決定した調整情報を記憶部102に記憶させる。スイッチング電源装置1Bが電流測定部111を備え、容易に電流値を測定することができるため、調整情報を記憶部へ記憶させることが容易になる。
【0061】
スイッチング電源装置1Bの製造方法は、
図9に示したように、電流測定部111を用いて第1電流C11および第2電流C21の電流値を測定する工程(S200)と、その測定値を製造装置2Bへ入力する工程(S201)とを有する。電流測定部111を用いて第1電流C11および第2電流C21を測定することにしたため、スイッチング電源装置1Bの製造が容易となる。
【0062】
(変形例)
上記の実施形態1および2では、第1電流C11の電流値と第2電流C21の電流値との差を
図4に示す7パターンのいずれかに分類し、分類されたパターンごとに予め決定された調整情報に基づいて第1-第4PWM信号のいずれかのデューティ比を調整した。しかし、第1電流C11の電流値と第2電流C21の電流値と差の分類方法は、
図4に例示した7パターンのいずれかに分類する方法だけに限定されない。例えば、第1電流C11の電流値と第2電流C21の電流値との差がゼロに近い場合、第1電流C11の電流値の方が大きい場合、第2電流C21の電流値の方が大きい場合の3パターンに分類することにしてもよい。また、7パターン以上に細かく分類することにしてもよい。
【0063】
また、第1電流C11の電流値と第2電流C21の電流値との差以外の情報に基づいて、調整情報を決定することにしてもよい。例えば、
図10に例示する調整テーブル301のように、DC-DCコンバータ100Aにおける偏磁のパターンを分類し、調整情報を決定することにしてもよい。
【0064】
図10に示す調整テーブル301では、スイッチング素子Q1-Q4のオン抵抗値、第1整流素子D1の順方向電圧、第2整流素子D2の順方向電圧の六つのパラメータを用いて、DC-DCコンバータ100Aにおける偏磁のパターンを分類している。DC-DCコンバータ100Aのスイッチング素子Q1が電流を流しやすい特性を持つ場合、すなわち、スイッチング素子Q1のオン抵抗値が定格許容誤差の最小値に近い場合は、Q1の列にプラス記号が付されているパターンのいずれかに分類される。逆にスイッチング素子Q1が電流を流しにくい特性を持つ場合、すなわち、スイッチング素子Q1のオン抵抗値が定格許容誤差の最大値に近い場合は、Q1の列にマイナス記号が付されているパターンのいずれかに分類される。同様に、スイッチング素子Q2-Q4の各々が電流を流しやすい特性を持つ場合は、Q2-Q4の各列にプラス記号が付されているパターンのいずれかに分類される。スイッチング素子Q2-Q4の各々が電流を流しにくい特性を持つ場合は、Q2-Q4の各列にマイナス記号が付されているパターンのいずれかに分類される。
【0065】
第1整流素子D1が電流を流しやすい特性を持つ場合、すなわち、第1整流素子D1の順方向電圧が製品仕様内の最小値に近い場合は、D1の列にプラス記号が付されているパターンのいずれかに分類される。逆に第1整流素子D1が電流を流しにくい特性を持つ場合、すなわち、第1整流素子D1の順方向電圧が製品仕様内の最大値に近い場合は、D1の列にマイナス記号が付されているパターンのいずれかに分類される。第2整流素子D2が電流を流しやすい特性を持つ場合は、D2の列にプラス記号が付されているパターンのいずれかに分類される。逆に第2整流素子D2が電流を流しにくい特性を持つ場合は、D2の列にマイナス記号が付されているパターンのいずれかに分類される。
【0066】
スイッチング素子Q1-Q4のオン抵抗値、第1整流素子D1の順方向電圧、第2整流素子D2の順方向電圧の六つのパラメータを用いて、DC-DCコンバータ100Aの状態に近い行を調整テーブル301の中から検索し、調整情報を決定する。例えば、DC-DCコンバータ100Aのスイッチング素子Q1-Q4、第1整流素子D1、第2整流素子D2の全てが電流を流しやすい特性を持つ場合、パターン1の調整情報に決定する。DC-DCコンバータ100Aのスイッチング素子Q1-Q4、第1整流素子D1、第2整流素子D2の全てが電流を流しやすい特性を持つ場合は、第1電流C11および第2電流C21の両方が設計段階に想定した値より大きくなるため、第1電流C11の電流値と第2電流C21の電流値に差がない可能性が高い。そのため、
図10のパターン1の調整量の列および調整対象の列には、第1-第4PWM信号のいずれのデューティ比も調整する必要がないという調整情報が示されている。なお、
図10の調整テーブル301には、スイッチング素子Q1-Q4のオン抵抗値、第1整流素子D1の順方向電圧および第2整流素子D2の順方向電圧のいずれか少なくとも一つでも定格値のパターンが省略されている。これは、スイッチング素子Q1-Q4のオン抵抗値、第1整流素子D1の順方向電圧および第2整流素子D2の順方向電圧のいずれか少なくとも一つでも定格値の場合は、第1-第4PWM信号のいずれのデューティ比も調整する必要がないと判断するためである。
【0067】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1A、1B スイッチング電源装置
2A、2B 製造装置
100A、100B DC-DCコンバータ
102 記憶部
103 接続部
104 電流検出部
110 PWM信号生成部
111 電流測定部
201 入力受付部
202 決定部
203 出力部
300、301 調整テーブル
C11、C12 第1電流
C21、C22 第2電流