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特開2023-132312異常判定装置、異常判定システム、及び異常判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132312
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】異常判定装置、異常判定システム、及び異常判定方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20230914BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230914BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06T7/00 350B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037546
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】仲西 一弥
【テーマコード(参考)】
3C100
5L096
【Fターム(参考)】
3C100AA29
3C100AA38
3C100AA56
3C100BB01
3C100BB27
3C100BB33
3C100BB34
3C100CC02
3C100EE02
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA02
5L096DA02
5L096FA67
5L096FA69
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】安価で簡便に部材の異常を検出することができる。
【解決手段】本開示にかかる異常判定装置は、未固定の部材が内部に仮設置された搬送中の対象物について、表示装置に表示された対象物の種類を示す対象物情報を読み取る読み取り装置から、対象物情報を取得する対象物情報取得部と、対象物が所定位置に到達したことを検出する位置検出装置の検出結果に基づいて、所定位置において対象物の内部を撮像する撮像装置から画像を取得する画像取得部と、対象物情報に応じた対象物ごとに、機械学習によって構築された学習済みモデルに基づいて画像に含まれる部材の状態を評価して、対象物の内部に仮設置された部材の異常判定を行う判定部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未固定の部材が内部に仮設置された搬送中の対象物について、表示装置に表示された前記対象物の種類を示す対象物情報を読み取る読み取り装置から、前記対象物情報を取得する対象物情報取得部と、
前記対象物が所定位置に到達したことを検出する位置検出装置の検出結果に基づいて、前記所定位置において前記対象物の内部を撮像する撮像装置から画像を取得する画像取得部と、
前記対象物情報に応じた前記対象物ごとに、機械学習によって構築された学習済みモデルに基づいて前記画像に含まれる前記部材の状態を評価して、前記対象物の内部に仮設置された前記部材の異常判定を行う判定部と、を備える、
異常判定装置。
【請求項2】
前記位置検出装置は、
前記対象物を複数の位置において検出し、
前記撮像装置は、
前記複数の位置において前記対象物の内部を撮像する、
請求項1に記載の異常判定装置。
【請求項3】
搬送中の前記対象物の周囲の環境を示す環境情報を取得する環境情報取得部を更に備え、
前記判定部は、
前記異常判定を行う場合に前記環境情報を参照し、
前記環境情報は、前記対象物の周囲の温湿度情報、及び前記対象物が搬送される搬送路が有する迂回路および傾斜に関する情報の少なくともいずれかを含む、
請求項1または請求項2に記載の異常判定装置。
【請求項4】
未固定の部材が内部に仮設置された搬送中の対象物について、表示装置に表示された前記対象物の種類を示す対象物情報を読み取る読み取り装置と、
前記対象物が所定位置に到達したことを検出する位置検出装置と、
前記所定位置において前記対象物の内部を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置が撮像した画像に基づいて前記部材の異常判定を行う異常判定装置と、を備え、
前記異常判定装置は、
前記対象物情報に応じた前記対象物ごとに、機械学習によって構築された学習済みモデルに基づいて前記画像に含まれる前記部材の状態を評価して、前記対象物の内部に仮設置された前記部材の異常判定を行う、
異常判定システム。
【請求項5】
未固定の部材が内部に仮設置された搬送中の対象物について、表示装置に表示された前記対象物の種類を示す対象物情報を読み取り、
前記対象物が所定位置に到達したことを検出し、
前記所定位置において前記対象物の内部を撮像し、
前記対象物情報に応じた前記対象物ごとに、機械学習によって構築された学習済みモデルに基づいて、前記対象物の内部を撮像した画像に含まれる前記部材の状態を評価して、前記対象物の内部に仮設置された前記部材の異常判定を行う、
異常判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、異常判定装置、異常判定システム、及び異常判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の対象物は、メルシート等の部材が未固定のまま仮設置された状態で、製造ラインを搬送されていく場合がある。このとき、部材が位置ずれを起こしてしまうことがある。
【0003】
検出対象物の位置を特定する技術として、車両内にカメラを設置して、乗員の乗車位置を検知し、エアバッグの動作制御を行う技術がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/207625号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば上述の特許文献1の技術を用いて、製造ラインを搬送される対象物内の部材の位置ずれ等を検出しようとすると、複数のカメラ及びセンサ等を用いた複雑な検査が必要となる。複数のカメラ及びセンサ等を用いた検査は、対象物の製造コストを増大させてしまう。
【0006】
本開示は、安価で簡便に部材の異常を検出することができる異常判定装置、異常判定システム、及び異常判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる異常判定装置は、未固定の部材が内部に仮設置された搬送中の対象物について、表示装置に表示された前記対象物の種類を示す対象物情報を読み取る読み取り装置から、前記対象物情報を取得する対象物情報取得部と、前記対象物が所定位置に到達したことを検出する位置検出装置の検出結果に基づいて、前記所定位置において前記対象物の内部を撮像する撮像装置から画像を取得する画像取得部と、前記対象物情報に応じた前記対象物ごとに、機械学習によって構築された学習済みモデルに基づいて前記画像に含まれる前記部材の状態を評価して、前記対象物の内部に仮設置された前記部材の異常判定を行う判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる異常判定装置、異常判定システム、及び異常判定方法によれば、安価で簡便に部材の異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態にかかる異常判定システムの構成の一例を示す模式図である。
図2図2は、実施形態にかかる異常判定システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態にかかる異常判定装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態にかかる異常判定システムによる異常判定の様子を例示的に示す模式図である。
図5図5は、実施形態にかかる異常判定システムによる異常判定の様子を例示的に示す模式図である。
図6図6は、実施形態にかかる異常判定システムによる異常判定の様子を例示的に示す模式図である。
図7図7は、実施形態にかかる異常判定システムによる異常判定処理の手順の一例を示すフロー図である。
図8図8は、実施形態の変形例にかかる異常判定装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図9図9は、実施形態の変形例にかかる異常判定システムによる異常判定処理の手順の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本開示にかかる異常判定装置、異常判定システム、及び異常判定方法の実施形態について説明する。
【0011】
(異常判定システムの構成例)
図1は、実施形態にかかる異常判定システム1の構成の一例を示す模式図である。異常判定システム1は、製造ライン内を搬送中の車両VHに仮設置されたメルシートSH等の部材の異常判定を行う。
【0012】
製造ラインにおいて、車両VHは、例えばベルトコンベアCNV等の搬送路上を搬送されていく。また、製造ラインの天井部分には、製造ラインの各種状況を表示する表示装置60が吊下されている。
【0013】
図1に示すように、異常判定システム1は、異常判定装置10、読み取り装置30、撮像装置40、及び位置検出装置50(50a,50b,50c)を備える。
【0014】
異常判定装置10は、後述するように例えばCPU(Central Processing Unit)等を備えるコンピュータとして構成され、読み取り装置30からの情報、及び撮像装置40からの画像に基づいて車両VHに仮設置されたメルシートSH等の異常判定を行う。
【0015】
読み取り装置30は、カメラまたはレーザセンサ等によるスキャン機能を備えたリーダ等であって、判定対象の車両VHの車種を表示装置60から読み取る。または、読み取り装置30が、表示装置60と直接的あるいは間接的に接続された記録装置等であって、表示装置60から出力されるビデオ信号を、スクリーンショット機能等を用いて記録するように構成されていてもよい。
【0016】
表示装置60は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、または有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイ等であって、例えば製造ライン内の天井等から吊下されている。表示装置60には製造ラインに関する各種情報が表示される。
【0017】
表示装置60に表示される情報としては、例えば製造ラインをそのとき搬送中の車両VHの車種、製造ラインの運転状況、その車両VHの品質等がある。車両VHの車種は、例えば車両VHの種類を特定可能な番号、記号、型式等の形式で表示される。
【0018】
図1の例では、表示装置60には、車両VHの車種を表す車種番が表示されている。また、表示装置60には、製造ラインが正常運転中であり、車両VHの品質が正常であることが表示されている。
【0019】
読み取り装置30は、表示装置60に表示される車種番等の車両VHの種類を特定する情報を、対象物情報として読み取る。読み取り装置30は、例えば画像データ等の形式で、対象物情報としての車種情報を生成する。
【0020】
撮像装置40は、CCD(Charge Coupled Device)、またはCIS(CMOS Image Sensor)等の撮像素子を内蔵するデジタルカメラ等である。撮像装置40は、所定のフレームレートで撮影される複数のフレーム画像を含む動画または静止画の画像を生成可能であり、例えばベルトコンベアCNVに載置されて搬送中の車両VHの内部を撮像する。
【0021】
ベルトコンベアCNV上を搬送中の車両VHの内部には、例えばメルシートSH等の部材が配置されている。メルシート(Melting Sheet)SHは、例えばアスファルト等の基材から構成された熱融着型の車体用制振材である。メルシートSHは、車体の防振、防音、防熱、防水、防塵等のため、例えば車両VHのフロア及びデッキの床面上等に設置される。
【0022】
図1に示す製造段階では、複数のメルシートSHが、未固定のまま車両VHの内部に仮設置されている。この後の製造工程において、これらのメルシートSHは熱融着されて、車両VHのフロアパネル上、及びデッキの床面上等に固定される。
【0023】
ここで、メルシートSHは、例えば車種ごとに異なる型式、個数、向き、及び配置で仮設置される。このため、人為的ミス等により、メルシートSHが誤った状態で仮設置されてしまうことがある。
【0024】
また、ハンドリングの際などに、メルシートSHに破れが発生してしまうことがある。また、メルシートSHが仮設置されてから、熱融着等によって車両VH内部の所望の位置に固定されるまでの間に、車両VHがベルトコンベアCNV上を搬送されること等によって、メルシートSHが位置ずれを起こしてしまう場合がある。
【0025】
異常判定装置10は、仮設置された未固定のメルシートSHにおけるこれらの異常の有無を判定する。
【0026】
ベルトコンベアCNVには、例えば複数の位置検出装置50a,50b,50cが、上流側から下流側にこの順に設置されている。これらの位置検出装置50a,50b,50cは、例えばリミットスイッチ等であり、搬送中の車両VHが、ベルトコンベアCNVの所定位置に到達したことを検出する。
【0027】
上述の撮像装置40は、位置検出装置50a,50b,50cのそれぞれに対応する所定位置に車両VHが到達するごとに、それぞれの所定位置において車両VHの内部を撮像する。
【0028】
次に、図2を用いて、異常判定システム1のハードウェア構成について説明する。
【0029】
図2は、実施形態にかかる異常判定システム1のハードウェア構成の一例を示す図である。図2に示すように、異常判定システム1の異常判定装置10は、CPU14、RAM(Random Access Memory)13、ROM(Read Only Memory)12等を備えるコンピュータとして構成される。異常判定装置10には、読み取り装置30、撮像装置40、及び位置検出装置50(50a,50b,50c)が接続されるとともに、ネットワークNT等を介して表示装置60が接続されている。
【0030】
より具体的には、異常判定装置10は、CPU14、RAM13、ROM12、補助記憶装置11、インターフェース(I/F)15、入力装置17、出力装置18、及び通信インターフェース(I/F)19を備える。CPU14、RAM13、ROM12、補助記憶装置11、I/F15、入力装置17、出力装置18、及び通信I/F19は、内部バスによって互いに接続されている。
【0031】
CPU14は、異常判定装置10全体の動作を制御する演算装置である。RAM13は、CPU14のワークエリアとして使用される揮発性記憶装置である。ROM12は、CPU14による各種処理を実現するプログラム等を記憶する不揮発性記憶装置である。
【0032】
なお、CPU14、RAM13、及びROM12は、例えば1つの基板に実装されたSoC(System on a Chip)として構成されていてもよい。
【0033】
I/F15には、読み取り装置30、撮像装置40、及び位置検出装置50がバスを介して接続され、異常判定装置10と、読み取り装置30、撮像装置40、及び位置検出装置50との間で各種信号の授受が可能に構成されている。
【0034】
異常判定装置10から、読み取り装置30及び撮像装置40に送信される信号としては、例えば読み取り装置30及び撮像装置40の動作を制御する制御信号等がある。
【0035】
異常判定装置10が読み取り装置30から受信する信号としては、例えば読み取り装置30が表示装置60から読み取った車種等の対象物情報を含む信号がある。異常判定装置10が撮像装置40から受信する信号としては、例えば撮像装置40が異なる位置で車両VHを撮像した複数画像の情報を含む信号がある。
【0036】
異常判定装置10が位置検出装置50から受信する信号としては、例えば位置検出装置50が検出した車両VHの位置情報を含む信号がある。
【0037】
通信I/F19は、ネットワークNTを介して、異常判定装置10と表示装置60とを有線または無線により接続する。異常判定装置10と表示装置60とが接続されるネットワークNTは、例えば車両VHの製造ラインを有する工場内のローカルエリアネットワーク(LAN:Local Area Network)、またはインターネット等のワイドエリアネットワーク(WAN:Wide Area Network)等である。
【0038】
これにより、異常判定装置10が車両VHのメルシートSHに異常を認めた場合には、通信I/F19によって表示装置60に警告表示の指示等を送信可能である。
【0039】
補助記憶装置11は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、eMMC(embedded Multi Media Card)、またはmicroSDカード等であり、各種データを記憶する。
【0040】
入力装置17は、キーボード、マウス等を含み、メルシートSH等の部材の異常判定作業に携わる作業者等が、異常判定装置10に対する各種指示を入力することが可能に構成される。
【0041】
出力装置18は、LCDまたは有機ELディスプレイ等の表示装置、プリンタ等を含み、メルシートSH等の車両VHの内部の部材の異常判定結果等を出力することが可能に構成されている。出力装置18が、スピーカ、ライト等の他の構成を含んでいてもよい。
【0042】
なお、タッチ式パネル等のように、入力装置17と出力装置18とが一体的に構成されていてもよい。また、入力装置17及び出力装置18が、コンピュータ等である異常判定装置10の外部機器として接続されていてもよい。
【0043】
一方で、読み取り装置30及び撮像装置40の少なくともいずれかが、異常判定装置10に内蔵されて、異常判定装置10と一体的に構成されていてもよい。
【0044】
次に、図3を用いて、異常判定装置10の機能構成について説明する。
【0045】
図3は、実施形態にかかる異常判定装置10の機能構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、異常判定装置10は、機能部として、車種情報取得部101、車種情報変換部102、画像取得部103、判定部104、位置情報取得部105、指令部106、入力部107、出力部108、通信部109、及び記憶部110を備える。
【0046】
これらの機能部は、例えばROM12等に格納されるプログラムがRAM13に展開されて、それをCPU14が実行することで、異常判定装置10に実現される。
【0047】
対象物情報取得部としての車種情報取得部101は、読み取り装置30が読み取った、製造ラインを搬送される車両VHの車種情報を、例えば画像データ形式で読み取り装置30から取得する。車種情報取得部101は、例えば上述のCPU14の制御下で動作するI/F15により実現される。
【0048】
対象物情報変換部としての車種情報変換部102は、例えば光学文字認識(OCR:Optical Character Recognition)機能によって、画像データ形式の車種情報を文字データへと変換する。OCRは、例えばスキャナ等で読み込まれた画像データを文字データに変換する機能である。
【0049】
車種情報変換部102は、例えば上述のCPU14によりプログラムが実行されることによって実現される。
【0050】
画像取得部103は、異なる位置にある車両VHを撮像装置40が撮像した複数の画像の情報を取得する。画像取得部103は、例えば上述のCPU14の制御下で動作するI/F15により実現される。
【0051】
判定部104は、車種情報取得部101及び車種情報変換部102によって得られた車種情報に基づいて、そのとき製造ラインを搬送中の車両VHを特定する。また、判定部104は、撮像装置40が撮像した画像を解析し、記憶部110に格納される画像情報111を参照して、撮像した画像に含まれる車両VHのメルシートSH等について、上記のとおり特定した車種に応じて異常判定を行う。
【0052】
また、判定部104は、メルシートSH等の部材に異常が認められた場合には、異常を知らせる警告表示指示を、通信部109を介して表示装置60に送信する。
【0053】
判定部104は、例えば上述のCPU14によりプログラムが実行されることによって実現される。
【0054】
位置情報取得部105は、位置検出装置50の検出結果である車両VHの位置情報を位置検出装置50から取得する。位置情報取得部105は、例えば上述のCPU14の制御下で動作するI/F15により実現される。
【0055】
指令部106は、読み取り装置30による車種情報の読み取りを制御する。また、指令部106は、位置検出装置50の検出結果に基づいて、車両VHが複数の所定位置に到達するごとに、撮像装置40によって車両VHの内部を撮像させる。
【0056】
指令部106は、例えば上述のCPU14によりプログラムが実行されること、及びCPU14の制御下で動作するI/F15により実現される。
【0057】
入力部107は、異常判定装置10に対する作業者の各種指示の入力を受け付ける。入力部107は、例えば上述のCPU14の制御下で動作する入力装置17により実現される。出力部108は、車両VHの内部のメルシートSH等の異常判定結果を出力する。出力部108は、例えば上述のCPU14の制御下で動作する出力装置18により実現される。
【0058】
通信部109は、メルシートSHに異常が認められた場合に、判定部104が生成する警告表示指示を、ネットワークNTを介して表示装置60に送信する。異常判定装置10から警告表示指示を受信した表示装置60は、メルシートSHに異常があったことを表示する。通信部109は、例えば上述のCPU14の制御下で動作する通信部109により実現される。
【0059】
記憶部110には、画像情報111が格納されている。画像情報111は、例えば機械学習によって構築された学習済みモデル等である。より詳細には、画像情報111は、車種ごとのメルシートSHの様々な画像データを学習データとして用いて構築され、例えば判定部104が参照して実行することが可能な形式で記憶部110に格納されている。
【0060】
これにより、判定部104は、画像情報111に基づいて、車両VHの内部に仮設置されたメルシートSHについて、車種ごとのメルシートSHの型式、個数、向き、及び配置の誤り、メルシートSHの設置忘れ、並びにメルシートSHの位置ずれ及び破れ等の異常の有無を判定することができる。
【0061】
記憶部110は、例えば上述のCPU14の制御下で動作する補助記憶装置11により実現される。
【0062】
(異常判定システムの機能例)
次に、図4図6を用いて、異常判定システム1の機能の詳細について説明する。図4図6は、実施形態にかかる異常判定システム1による異常判定の様子を例示的に示す模式図である。
【0063】
上述のように、異常判定システム1による異常判定は、例えば熱融着前、つまり、未固定のメルシートSHが仮設置された車両VHについて行われる。このとき、なるべくメルシートSHが固定される直前で異常判定が行われることが好ましい。上述のように、車両VHの搬送によっても、位置ずれ等の異常がメルシートSHに起こり得るからである。
【0064】
図4に示すように、表示装置60には、そのときベルトコンベアCNV上を搬送中の車両VHの車種に関する情報が表示されている。異常判定装置10の指令部106は、読み取り装置30に指令を送信し、表示装置60に表示される車両VHの車種情報を読み取らせる。
【0065】
異常判定装置10の車種情報取得部101は、読み取り装置30が読み取った車種情報を取得する。車種情報変換部102は、読み取り装置30が読み取った車種情報を、OCR機能等を用いて文字データに変換する。
【0066】
また、車両VHがベルトコンベアCNV上を搬送されてくると、まず、複数の位置検出装置50a,50b,50cのうち、最も上流側の位置検出装置50aが車両VHを検出する。指令部106は、位置検出装置50aによって車両VHが所定位置に到達したことが検出されると、撮像装置40に指令を送信し、位置検出装置50aが検出した所定位置における車両VHの内部を撮像させる。
【0067】
位置検出装置50aが検出した所定位置で撮像装置40が撮像した画像には、例えば前部座席下方のフロアパネル上に仮設置されたメルシートSHa,SHb,SHcが含まれる。換言すれば、フロアパネルの前部座席下方の床面付近が撮像装置40の画角に含まれる位置に車両VHが到達すると、それを位置検出装置50aが検出するように、位置検出装置50aの設置位置が調整されている。
【0068】
異常判定装置10の判定部104は、得られた車種情報に基づいて、そのとき製造ラインを搬送中の車両VHを特定する。
【0069】
また、判定部104は、記憶部110に格納された画像情報111に基づいて、撮像装置40が撮像した画像に含まれるメルシートSHa,SHb,SHcの状態を、その車両VHの車種に応じて評価して、これらのメルシートSHa,SHb,SHcの異常判定を行う。
【0070】
図4の例では、車両VH内部のメルシートSHa,SHb,SHcには、型式、個数、向き、及び配置の誤り、メルシートSHa,SHb,SHcの設置忘れ、位置ずれ、並びに破れ等の異常はいずれも発生していないものとする。判定部104は、これらのメルシートSHa,SHb,SHcは正常であると判定する。この場合、表示装置60には、メルシートSHa,SHb,SHcの品質が正常であることの品質表示が維持される。
【0071】
図5に示すように、車両VHがベルトコンベアCNV上を移動していくと、複数の位置検出装置50a,50b,50cのうち、中央部の位置検出装置50bが車両VHを検出する。位置検出装置50bによって車両VHが所定位置に到達したことが検出されると、指令部106は、撮像装置40に指令を送信し、位置検出装置50bが検出した所定位置における車両VHの内部を撮像させる。
【0072】
位置検出装置50bが検出した所定位置で撮像装置40が撮像した画像には、例えば後部座席下方のフロアパネル上に仮設置されたメルシートSHd,SHe,SHfが含まれる。換言すれば、フロアパネルの後部座席下方の床面付近が撮像装置40の画角に含まれる位置に車両VHが到達すると、それを位置検出装置50bが検出するように、位置検出装置50bの設置位置が調整されている。
【0073】
判定部104は、記憶部110に格納された画像情報111に基づいて、撮像装置40が撮像した画像に含まれるメルシートSHd,SHe,SHfの状態を、その車両VHの車種に応じて評価して、これらのメルシートSHd,SHe,SHfの異常判定を行う。
【0074】
図5の例では、車両VH内部のメルシートSHd,SHe,SHfのうち、メルシートSHdには、型式、個数、向き、及び配置の誤り、位置ずれ、メルシートSHdの設置忘れ、並びに破れ等の異常はいずれも発生していないものとする。一方で、メルシートSHeには複数個所に破れTRが生じており、メルシートSHfには位置ずれが生じているものとする。
【0075】
判定部104は、これらのメルシートSHd,SHe,SHfのうち、メルシートSHdは正常であると判定する。また、判定部104は、メルシートSHe,SHfには異常が発生していると判定する。
【0076】
このように、判定対象のメルシートSHd,SHe,SHfのうち、少なくともいずれかに異常があった場合、判定部104は、いずれかのSHd,SHe,SHfに異常があったことを示す警告表示指示を生成する。通信部109は、判定部104が生成した警告表示指示を表示装置60に送信する。
【0077】
表示装置60は、異常判定装置10から受信した警告表示指示にしたがって、品質を表す表示を、いずれかのSHd,SHe,SHfの品質が異常であることを示す表示に切り替える。
【0078】
図6に示すように、車両VHがベルトコンベアCNV上を更に移動していくと、複数の位置検出装置50a,50b,50cのうち、最も下流側の位置検出装置50cが車両VHを検出する。指令部106は、位置検出装置50cによって車両VHが所定位置に到達したことが検出されると、撮像装置40に指令を送信し、位置検出装置50cが検出した所定位置における車両VHの内部を撮像させる。
【0079】
位置検出装置50cが検出した所定位置で撮像装置40が撮像した画像には、例えばデッキの床面上に仮設置されたメルシートSHg,SHh,SHiが含まれる。換言すれば、デッキの床面付近が撮像装置40の画角に含まれる位置に車両VHが到達すると、それを位置検出装置50cが検出するように、位置検出装置50cの設置位置が調整されている。
【0080】
判定部104は、記憶部110に格納された画像情報111に基づいて、撮像装置40が撮像した画像に含まれるメルシートSHg,SHh,SHiの状態を、その車両VHの車種に応じて評価して、これらのメルシートSHg,SHh,SHiの異常判定を行う。
【0081】
図6の例では、車両VH内部のメルシートSHg,SHh,SHiには、型式、個数、向き、及び配置の誤り、メルシートSHg,SHh,SHiの設置忘れ、位置ずれ、並びに破れ等の異常はいずれも発生していないものとする。判定部104は、これらのメルシートSHg,SHh,SHiは正常であると判定する。この場合、表示装置60の品質表示には、メルシートSHg,SHh,SHiの品質が正常であることが表示される。
【0082】
このように、異常判定システム1は、複数の位置検出装置50a,50b,50cにより、適宜、車両VHの位置を特定する。また、特定された複数位置にて撮像装置40が車両VHの内部を撮像する。また、それらの画像に基づいて、判定部104が、その車両VHの全体に亘って仮設置されるメルシートSHa~SHiの異常判定を行う。
【0083】
なお、位置検出装置50の個数および配置等は上記の例に限られず任意である。位置検出装置50の個数および配置等は、車両VHの全長および形状等、並びに車両VH内のメルシートSHの個数および配置等に応じて、適宜調整することができる。位置検出装置50の個数および配置等を調整することで、上述のように、フロアパネルの前部座席付近および後部座席付近、並びにデッキ付近以外にも、車両VHの様々な位置を含む画像を撮像することができる。
【0084】
その後、異常判定装置10の出力部108は、その車両VHに対する異常判定結果を出力する。異常判定結果は、例えば出力部108を構成するモニタ等に表示されてもよく、出力部108を構成するプリンタ等によってプリントアウトされてもよい。
【0085】
ただし、出力部108による異常判定結果の出力手段、及び出力形態は上記の例に限られない。出力部108は、例えばスピーカ等により警告音または音声等で異常判定結果を出力してもよく、あるいは、ライトを点灯または点滅させるなどして異常判定結果を出力してもよい。
【0086】
(異常判定システムの処理例)
次に、図7を用いて、実施形態の異常判定システム1による異常判定の処理例について説明する。図7は、実施形態にかかる異常判定システム1による異常判定処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0087】
図7に示すように、製造ラインにおいて、ベルトコンベアCNV上を車両VHが搬送されてくると、読み取り装置30は、表示装置60に表示された車種情報を読み取る(ステップS110)。
【0088】
異常判定装置10の車種情報取得部101は、読み取り装置30が読み取った車種情報を取得する(ステップS120)。車種情報変換部102は、読み取り装置30が読み取った車種情報を文字データに変換する(ステップS130)。
【0089】
複数の位置検出装置50a,50b,50cは、ベルトコンベアCNV上の所定位置に到達した車両VHに対して反応を示す(ステップS140)。異常判定装置10は、いずれかの位置検出装置50a,50b,50cが車両VHを検出して反応を示すまで待機する(ステップS140:No)。
【0090】
いずれかの位置検出装置50a,50b,50cが車両VHを検出すると(ステップS140:Yes)、異常判定装置10の指令部106が、撮像装置40に車両VHの内部を撮像させる(ステップS150)。
【0091】
異常判定装置10の判定部104は、上述のステップS130の処理で得られた車両情報に基づいて、製造ラインをそのとき搬送中の車両VHの車種を特定する(ステップS160)。
【0092】
ただし、判定部104による車種の特定は、ステップS130の処理で車両情報が得られた後であって、以下に述べるステップS170,S180の処理で行われる判定部204による異常判定前であれば、上記以外のタイミングで行われてもよい。
【0093】
判定部104は、記憶部110に格納された画像情報111に基づいて、撮像装置40が撮像した画像に含まれるメルシートSHの状態を、ステップS160の処理で特定した車種に応じて評価する(ステップS170)。また、判定部104は、評価内容に応じてメルシートSHの異常の有無を判定する(ステップS180)。
【0094】
メルシートSHに異常が発生していた場合には(ステップS180:Yes)、判定部104は警告表示指示を生成し、通信部109が警告表示指示を表示装置60へと送信する(ステップS190)。メルシートSHに異常が発生していなかった場合には(ステップS180:No)、ステップS190の処理はスキップされる。
【0095】
異常判定装置10の指令部106は、ステップS140の処理で反応を示したのが、最後の位置検出装置50、つまり、最下流の位置検出装置50であったか否かを判定する(ステップS200)。
【0096】
ステップS140の処理で反応を示したのが最後の位置検出装置50でなかった場合には(ステップS200:No)、ステップS140からの処理が繰り返される。ステップS140の処理で反応を示したのが最後の位置検出装置50であった場合には(ステップS200:Yes)処理が終了される。
【0097】
異常判定装置10の出力部108は、車両VHに仮設置されている全てのメルシートSHの異常判定結果をまとめて出力する(ステップS210)。
【0098】
ただし、出力部108は、上記のステップS180の処理が行われるごとに異常判定結果を出力してもよい。つまり、出力部108は、例えば車両VHの前部座席下方のフロア上、後部座席下方のフロア上、及びデッキの床面上に仮設置されるそれぞれのメルシートSHについて異常判定結果が得られるごとに、これらの結果を適宜出力してもよい。
【0099】
以上により、実施形態の異常判定システム1による異常判定処理が終了する。
【0100】
(概括)
例えば車両等の製造ラインにおいては、メルシートのような部材が未固定のまま仮設置された状態で車両が搬送される場合がある。このとき、車両の搬送によって部材が位置ずれを起こしてしまう場合がある。また、これらの部材は車種ごとに、型式、設置数、設置位置、配置等が異なる場合があり、作業者のミス等により誤った状態で仮設置されてしまうことがある。このため、最終的に固定される前の部材に対して異常判定を行うことが好ましい。
【0101】
しかしながら、製造ラインを搬送中の車両の内部に仮設置された部材の異常判定を行うには、例えば複数のセンサ及び撮像装置等を取り付けるなどの措置が必要となる。これにより、製造コストが増大してしまうほか、複雑な解析が必要となってしまうことが懸念される。また、複数のセンサ及び撮像装置等を用いた場合であっても、搬送中の車両内の部材について、型式、個数、向き、及び配置の誤り、位置ずれ、メルシートの設置忘れ、並びに破れ等の異常を一括して判定することは困難である。
【0102】
実施形態の異常判定システム1によれば、未固定のメルシートSHが内部に仮設置された搬送中の車両VHについて、表示装置60に表示された車両VHの車種情報を読み取る読み取り装置30と、車両VHが所定位置に到達したことを検出する位置検出装置50と、所定位置において車両VHの内部を撮像する撮像装置40と、撮像装置40が撮像した画像に基づいてメルシートSHの異常判定を行う異常判定装置10と、を備える。
【0103】
このように、例えばOCR機能等で文字データとして得られた車種情報と、車両VHの位置検出を行いつつ撮像された画像とに基づいて異常判定を行うことで、メルシートSH等の部材の異常を安価で簡便に検出することができる。
【0104】
実施形態の異常判定装置10によれば、車種情報に応じた車種ごとに、機械学習によって構築された学習済みモデル等の画像情報111に基づいて、撮像装置40が撮像した画像に含まれるメルシートSHの状態を評価して、車両VHの内部に仮設置されたメルシートSHの異常判定を行う。
【0105】
このように、例えば機械学習によって構築された学習済みモデル等を用いることで、ヒトによる検査に近い形で、種々の車種ごとに異常判定を行うことができる。よって、車種ごとに仕様が異なるメルシートSH等の部材の異常判定をすることができる。また、搬送中の車両VH内のメルシートSHについて、車種ごとのメルシートSHの型式、個数、向き、及び配置の誤り、メルシートSHの設置忘れ、並びにメルシートSHの位置ずれ及び破れ等の異常を一括して判定することができる。
【0106】
また上記構成により、例えば複数の撮像装置およびセンサ等を用いることなく異常判定を行うことができる。よって、製造コストを削減できるほか、複雑な解析を行わなくとも異常判定を行うことが可能となる。
【0107】
実施形態の異常判定装置10によれば、位置検出装置50は、車両VHを複数の位置において検出し、撮像装置40は、これらの複数の位置において車両VHの内部を撮像する。
【0108】
このように、複数の位置検出装置50を用いて複数位置で車両VHを検出することで、例えば安価な撮像装置40を1つのみ用いて、車両VHの全体に亘って複数のメルシートSHについて異常判定を行うことができる。
【0109】
(変形例)
次に、図8及び図9を用いて、実施形態の変形例の異常判定システムについて説明する。変形例の異常判定システムは、異常判定を行う際に、製造ラインを搬送中の車両SH周辺の環境も参照する点が上述の実施形態とは異なる。
【0110】
以下の説明において、上述の実施形態の異常判定システム1と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略することがある。
【0111】
図8は、実施形態の変形例にかかる異常判定装置20の機能構成の一例を示すブロック図である。図8に示すように、変形例の異常判定装置20は環境情報取得部207を備える。また、変形例の異常判定装置20は、上述の実施形態の判定部104及び記憶部110に替えて、判定部204及び記憶部210を備える。
【0112】
環境情報取得部207は、製造ラインを搬送中の車両VH周辺の環境情報を取得する。車両VH周辺の環境情報には、製造ライン内の温湿度、並びに製造ライン内に存在する障害物および傾斜等の情報が含まれる。
【0113】
環境情報取得部207は、例えば工場内LAN等の上述の図2に示すネットワークNTを介して、工場内の図示しないセンサ等から製造ライン内の温湿度の情報を取得する。
【0114】
製造ライン内の障害物は、加工機械等の工場内設備および備品等であって、これによりベルトコンベアCNV等の車両VHの搬送経路が迂回させられる場合がある。このような迂回路は例えば急カーブをなしていることがあり、このような障害物の情報は、例えばカーブをなす迂回路の曲率等のデータと紐づけられて、記憶部210の設備情報212に予め格納されている。
【0115】
製造ライン内の傾斜は、ベルトコンベアCNV等の車両VHの搬送経路における傾斜である。このような傾斜の情報は、例えばその傾斜が有する傾斜度等のデータと紐づけられて、記憶部210の設備情報212に予め格納されている。
【0116】
環境情報取得部207は、記憶部210の設備情報212を読み出すことで、製造ライン内の障害物および傾斜等の情報を取得する。
【0117】
記憶部210には、上述の実施形態の画像情報111に加えて、設備情報212及び相関情報213が格納されている。
【0118】
設備情報212には、上述の通り、製造ライン内の障害物に関する情報が迂回路の曲率データ等に紐づけられて記憶されている。また、上述の通り、設備情報212には、製造ライン内の傾斜に関する情報が傾斜度等のデータと紐づけられて記憶されている。なお、製造ライン内の障害物および傾斜の状況は工場ごとに異なる。よって、設備情報212には、製造ライン内の障害物および傾斜の情報が工場ごとに記憶されていてよい。
【0119】
相関情報213には、製造ライン内の温湿度、並びに障害物および傾斜の様々な状況に対応する位置すれ量の情報が記憶されている。
【0120】
製造ライン内の温湿度は、車両VHの内部に仮設置されるメルシートSHの位置ずれ等に影響を及ぼすことがある。例えばアスファルト等を基材とするメルシートSHは、温度が低いほうが硬質化しやすく、また、湿度が低いほうが乾燥しやすい。このため、メルシートSHの位置ずれ量は、温度がより低い場合に、また、湿度がより低い場合に、増大する傾向にある。相関情報213は、例えば温度が低いほど、また、湿度が低いほど、メルシートSHの位置ずれ量が大きくなる等の相関データ等を保持している。
【0121】
製造ライン内の障害物によって、ベルトコンベアCNV等が迂回路を有していると、例えばカーブをなす迂回路を車両VHが通過する際、未固定のメルシートSHが位置ずれを起こしやすくなる。相関情報213は、例えば迂回路の曲率が増すほどメルシートSHの位置ずれ量が大きくなる等の相関データ等を保持している。
【0122】
また、製造ライン内のベルトコンベアCNV等が傾斜を有していると、その傾斜を車両VHが通過する際、固定のメルシートSHが位置ずれを起こしやすくなる。相関情報213は、例えば搬送経路の傾斜度が増すほどメルシートSHの位置ずれ量が大きくなる等の相関データ等を保持している。
【0123】
判定部204は、上述の実施形態の判定部104と同様、撮像装置40が撮像した画像を解析し、記憶部210に格納される画像情報111を参照して、撮像した画像に含まれる車両VHのメルシートSH等の異常判定を行う。
【0124】
このとき、変形例の判定部204は、製造ライン内の温湿度、並びに製造ライン内に存在する障害物および傾斜等の環境情報も参照する。
【0125】
つまり、判定部204は、記憶部210の相関情報213に記憶された温湿度、迂回路の曲率、及び傾斜度と、メルシートSHの位置ずれ量との相関データを参照しつつ、環境情報取得部207が取得した温湿度、製造ライン内の障害物および傾斜等の情報に応じた位置ずれ量を推測し、それらの推測値も踏まえて異常判定を行う。
【0126】
図9は、実施形態の変形例にかかる異常判定システムによる異常判定処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0127】
図9に示すように、変形例の異常判定システムによる異常判定処理も、上述の実施形態の異常判定処理と概ね同様に行われる。
【0128】
より具体的には、図9に示すステップS110~S160までの処理は、上述の図7に示すステップS110~S160までの処理と同様である。
【0129】
すなわち、読み取り装置30が表示装置60から車種情報を読み取り(ステップS110)、それを車種情報取得部101が取得し(ステップS120)、車種情報変換部102が文字データに変換する(ステップS130)。また、いずれかの位置検出装置50が車両VHを検出して反応すると(ステップS140)、撮像装置40が車両VH内を撮像する(ステップS150)。判定部204は、車種情報に基づいて車種を特定する(ステップS160)。
【0130】
ここで、環境情報取得部207は、例えばネットワークNTを介して工場内センサ等から温湿度情報を取得し、また、記憶部210の設備情報212から製造ライン内の障害物および傾斜等の情報を取得する(ステップS161)。
【0131】
ただし、環境情報取得部207は、判定部204による異常判定前であれば、上記以外のタイミングで環境情報を取得してもよい。例えば、環境情報取得部207は、変形例の異常判定システムにおける処理が開始されたタイミングで環境情報を取得してもよい。または、環境情報取得部207は、撮像装置40による車両VH内の撮像と同期して環境情報を取得してもよい。または、環境情報取得部207は、定期的に温湿度情報を取得していてもよい。
【0132】
判定部204は、記憶部210に格納された画像情報111に基づいて、撮像装置40が撮像した画像に含まれるメルシートSHの状態を評価する(ステップS171)。また、判定部204は、評価内容に応じて、メルシートSHの異常の有無を判定する(ステップS181)。
【0133】
これらのステップS171,S181の処理において、判定部204は、記憶部210の相関情報213を参照しつつ、環境情報取得部207が取得した環境情報も判定基準として用いる。
【0134】
これ以降のステップS190~S210の処理もまた、上述の図7に示すステップS190~S210の処理と同様である。
【0135】
すなわち、メルシートSHに対する異常判定の結果に応じて(ステップS181)、警告表示指示の生成、及び表示装置60への送信(ステップS190)の処理が行われ、あるいはスキップされて、最後の位置検出装置50が反応を示すまで(ステップS200)上記の処理が繰り返される。出力部108は異常判定結果を出力する(ステップS210)。
【0136】
以上により、変形例の異常判定システムによる異常判定処理が終了する。
【0137】
変形例の異常判定装置20によれば、搬送中の車両VHの周囲の環境を示す環境情報を取得する環境情報取得部207を備え、判定部204は、異常判定を行う場合に環境情報を参照する。これにより、より高精度に異常判定を行うことが可能となる。
【0138】
なお、上述の実施形態および変形例では、車両VHのメルシートSHに対して異常判定を行うこととした。しかし、上述の実施形態および変形例の異常判定は他のケースにも適用可能である。つまり、車両VHにおける未固定の各種のシート状部材等に、上述の実施形態および変形例の異常判定が適用されうる。あるいは、バイク、列車、小型船舶、小型飛行機等の自動車以外の対象物における未固定の各種のシート状部材等に、上述の実施形態および変形例の異常判定を適用してもよい。
【0139】
なお、未固定のシート状部材は、上述のメルシートSHのように最終的に固定される部材であってもよく、あるいは断熱材シート等のように最終的に固定されることのない部材であってもよい。
【符号の説明】
【0140】
1 異常判定システム
10,20 異常判定装置
30 読み取り装置
40 撮像装置
50 位置検出装置
60 表示装置
101 車種情報取得部
102 車種情報変換部
103 画像取得部
104,204 判定部
105 位置情報取得部
106 指令部
107 入力部
108 出力部
109 通信部
110,210 記憶部
111 画像情報
207 環境情報取得部
212 設備情報
213 相関情報
CNV ベルトコンベア
SH メルシート
VH 車両

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9