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特開2023-132313コードレス電話装置の基地局、およびコードレス電話装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132313
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】コードレス電話装置の基地局、およびコードレス電話装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/04 20090101AFI20230914BHJP
   H04W 28/08 20230101ALI20230914BHJP
   H04W 4/08 20090101ALI20230914BHJP
   H04W 48/16 20090101ALI20230914BHJP
【FI】
H04W24/04
H04W28/08
H04W4/08
H04W48/16 135
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037547
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000181
【氏名又は名称】岩崎通信機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】藤本 敦
(72)【発明者】
【氏名】小澤 建二
(72)【発明者】
【氏名】船橋 栄
(72)【発明者】
【氏名】中村 界地
(72)【発明者】
【氏名】岩本 悟
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA28
5K067BB08
5K067BB37
5K067CC13
5K067DD15
5K067DD27
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE71
5K067HH23
(57)【要約】
【課題】DECT無線通信方式を利用したコードレス電話装置の基地局、およびコードレス電話装置において、基地局に収容された子機の数が最大同時通信可能な子機数を上回った場合でも、すべての子機に対して大きな遅延なしに着信を通知できるようにすること。
【解決手段】コードレス電話装置の基地局は、DECT制御信号生成手段23とDECT送受信制御手段22を備える。DECT制御信号生成手段23は、電話制御装置から伝送される子機制御コマンドから、子機に対して伝送する必要がある情報を取り出して子機制御信号を生成し、さらに、子機制御コマンドの種別に応じて、子機制御信号をDECT方式で無線伝送するための最適伝送チャネルを選択する。DECT送受信制御手段22は、DECT方式の無線送受信およびDECT TDMA/TDDフレーム合成/分解を行い、DECT制御信号生成手段23から与えられる子機制御信号を、最適伝送チャネルを用いて送信する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
広域ネットワークに接続される電話制御装置に対して接続される1以上の基地局および該基地局に無線方式で接続される複数の子機のうちの、1つの基地局と1つの子機が選択的に用いられて構成されるコードレス電話装置の基地局であって、
前記電話制御装置から伝送される子機制御コマンドから、前記子機に対して伝送する必要がある情報を取り出して子機制御信号を生成し、さらに、前記子機制御コマンドの種別に応じて、前記子機制御信号をDECT方式で無線伝送するための最適伝送チャネルを選択するDECT制御信号生成手段と、
DECT方式の無線送受信およびDECT TDMA/TDDフレーム合成/分解を行い、前記DECT制御信号生成手段から与えられる前記子機制御信号を、前記DECT制御信号生成手段で選択された最適伝送チャネルを用いて送信するDECT送受信制御手段を備えることを特徴とするコードレス電話装置の基地局。
【請求項2】
前記DECT制御信号生成手段は、前記電話制御装置から伝送される前記子機制御コマンドが回線ランプ表示コマンドの場合には、当該子機制御コマンドから生成される子機制御信号をDECT方式で無線伝送するための最適伝送チャネルとして報知チャネルを選択し、
前記DECT送受信制御手段は、前記報知チャネルを用いて前記子機制御信号をリンク確立なしに送信することを特徴とする請求項1に記載のコードレス電話装置の基地局。
【請求項3】
通話子機数および接続子機数の情報、および通話子機数および接続子機数が各々上限値に達しているかの2ビットの情報を基地局状態情報として生成し、さらに、前記基地局状態情報をビーコンのMAC情報で報知することを指示する基地局状態報知信号を生成する基地局状態管理手段を備え、前記基地局状態報知信号を、前記DECT送受信制御手段を介して報知することを特徴とする請求項1に記載のコードレス電話装置の基地局。
【請求項4】
広域ネットワークに接続される、デジタルコードレス電話システムの電話制御装置に対して接続される1以上の基地局および該基地局に無線方式で接続される複数の子機のうちの、1つの基地局と1つの子機が選択的に用いられて構成されるコードレス電話装置であって、
前記基地局は、
前記電話制御装置から伝送される子機制御コマンドから、前記子機に対して伝送する必要がある情報を取り出して子機制御信号を生成し、さらに、前記子機制御コマンドの種別に応じて、前記子機制御信号をDECT方式で無線伝送するための最適伝送チャネルを選択するDECT制御信号生成手段と、
DECT方式の無線送受信およびDECT TDMA/TDDフレーム合成/分解を行い、前記DECT制御信号生成手段から与えられる前記子機制御信号を、前記DECT制御信号生成手段で選択された最適伝送チャネルを用いて送信するDECT送受信制御手段と、
子機毎ページンググループ番号記憶手段を備え、
前記子機に対する前記子機制御信号を、当該子機のページンググループ番号に対応したマルチフレームのBsチャネルのみで送信し、
前記子機は、
ページンググループ番号記憶部を備え、
640ms周期での間欠受信時には、前記ページンググループ番号記憶部に保持されたページンググループ番号に対応するマルチフレームのみで受信動作を行うことを特徴とするコードレス電話装置。
【請求項5】
前記DECT制御信号生成手段は、前記電話制御装置から伝送される前記子機制御コマンドが回線ランプ表示コマンドの場合には、当該子機制御コマンドから生成される子機制御信号をDECT方式で無線伝送するための最適伝送チャネルとして報知チャネルを選択し、
前記DECT送受信制御手段は、前記報知チャネルを用いて前記子機制御信号をリンク確立なしに送信することを特徴とする請求項4に記載のコードレス電話装置。
【請求項6】
前記子機のページンググループ番号は、当該基地局への位置登録シーケンスにおいて、当該基地局側で負荷分散を考慮して決定され、これが子機に通知されることを特徴とする請求項4または5に記載のコードレス電話装置。
【請求項7】
前記子機のページンググループ番号は、前記子機を当該デジタルコードレス電話システムに収容する際に割り当てられるシステム固有の子機識別情報に基づいて、基地局側および子機側で各々決定されることを特徴とする請求項4または5に記載のコードレス電話装置。
【請求項8】
前記基地局は、
当該基地局の通話子機数および接続子機数の情報、および通話子機数および接続子機数が各々上限値に達しているかの2ビットの情報を基地局状態情報として生成し、さらに、前記基地局状態情報をビーコンのMAC情報で報知することを指示する基地局状態報知信号を生成する基地局状態管理手段を備え、
前記子機は、
リンク確立の直前の基地局探索ではビーコンで報知される基地局状態情報において通話子機数が上限値に達していない基地局の中から接続先の基地局を選択し、これ以外の基地局探索では、ビーコンで報知される基地局状態情報において接続子機数が上限値に達していない基地局の中から接続先の基地局を選択するように動作する子機制御部を備えることを特徴とする請求項4ないし7のいずれか1つに記載のコードレス電話装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルコードレス電話に適用して好適なDECT無線通信方式を利用したコードレス電話装置の基地局、およびコードレス電話装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日本においては、ボタン電話システムの端末として、有線伝送路を介して主装置に直接接続されたボタン電話機のみならず、無線基地局を介して主装置に接続されたデジタルコードレス電話機(子機)も使用されている。このようなデジタルコードレス電話機は、場所にとらわれずに使用可能な電話機として重宝されており、ボタン電話機と同等の機能性をもつことが期待されている。
【0003】
日本のデジタルコードレス電話では、第二世代コードレス電話システム標準規格 (RCR STD-28)が使用されてきたが、2011年に新たに広帯域デジタルコードレス電話の標準規格 (ARIB STD-T101)が策定され、J-DECTに準拠したデジタルコードレス電話も実現できるようになっている。J-DECTは、日本にローカライズされたDECT規格であり、1.9GHz帯の自営バンド (1893.5MHz~1906.1MHz)中に6波 (F1~F6)が規定されている。
【0004】
ボタン電話システムでは、ユーザの設置環境の呼量 (単位時間当たりの通信回線の占有量)に応じ、必要な数の電話回線を主装置に接続し、これを各ボタン電話機で共用して使用できるようにしている。例えば、80人の従業員のいるオフィスにおいて、1時間当たり平均して10人が5分間の通話を行う場合の呼量は0.833アーランであり、このとき呼損率 (呼が発生したときに空きがなく通信できない確率)を0.1以下とする場合には、アーランB式より、3回線以上の電話回線を用意すればよい。
【0005】
このようなシステムにおいて、すべてまたは一部のボタン電話機をデジタルコードレス電話機に置き換える場合には、1つまたは複数の無線基地局の通話エリアがサービスエリア (オフィス)全体をカバーするように、無線基地局を配置すればよい。
【0006】
例えば、オフィスに4台の無線基地局を設置し、80台のデジタルコードレス電話機 (子機)を収容する場合には、平均すると各無線基地局に20台程度の子機を収容して、電話回線からの着信時には、各々の無線基地局経由ですべての子機に対して着信を通知し、最初に応答した子機が通話状態に入れることが望ましい。
【0007】
また、各子機に対する着信の通知は、電話回線における着信時からなるべく遅れることなく、極力、1~2秒以内に行うことが望ましい。
【0008】
また、ボタン電話機とは異なり、デジタルコードレス電話機 (子機)の場合には、設置場所が固定されず、移動するため、特定無線基地局の周辺に多数 (例えば40台)の子機が集中する場合もありうるが、このような場合においても、各子機に対する着信の通知は、極力、1~2秒以内に行うことが望ましい。
【0009】
特許文献1には、コードレス電話装置および無線通信方法に関し、制御データ伝送用のAフィールドと、音声データ伝送用のBフィールドと有する伝送単位でデータの伝送を行う方式を用いること、親機の無線送信回路の制御部が自機の動作状態が通話中であると判別したとき、制御部は、Aフィールドを用いて制御データを伝送し、Bフィールドを用いて音声データを伝送するようにTDMA変復調部を制御すること、制御部が自機の動作状態が非通話状態にあると判別したときには、制御部は、少なくともBフィールドを用いて制御データを伝送するようにTDMA変復調部を制御すること、これにより、TDMA/TDD方式の無線通信方式を利用した無線通信システムにおいて、制御データを遅延させることなく伝送できるようになること、が記載されている。
【0010】
特許文献2には、電話システム、電話制御装置およびコードレス電話装置の親機に関し、主装置は、親機から提供される子機管理テーブルの情報に基づいて形成される親機別子機管理テーブルを備えること、主装置の制御回路は、親機に接続されているすべての子機に対して送信すべき情報がある場合に、当該すべての子機に対して当該情報を送信するばら撒きモードのオン/オフを、親機に制御信号を供給することにより制御すること、制御回路は、親機別子機管理テーブルを参照し、接続されている子機が所定台数以下の親機は、ばら撒きモードをオンにし、接続されている子機が前記所定台数より多い親機は、ばら撒きモードをオフにするように制御すること、それにより、コードレス電話装置の親機に対して、一斉に通信が可能な台数よりも多い数の子機が接続された場合に生じる通信のタイムロスを軽減できるようにすること、が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2015-177239号公報
【特許文献2】特開2019-146054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
DECTを使用したデジタルコードレス電話システムの基地局には、一般に、1個のDECT送受信機が実装されており、原理的には、最大で12スロットを用いて12台の子機と通信が可能であるが、実際には、ハンドオーバ子機の収容および干渉回避のためのスロット切替えの余地を残すために、最大同時通信可能な子機数は10台以下となる。
【0013】
特許文献1に記載されているコードレス電話装置および無線通信方法では、子機に対する制御データを、通話状態ではAフィールド、非通話状態ではBフィールドを用いて伝送する。ここで、Aフィールドでの制御データ伝送は、Csチャネルでのデータ伝送を意味し、Bフィールドでの制御データ伝送は、Cfチャネルでのデータ伝送を意味し、どちらも基地局と子機がベアラ (双方向データリンク)を確立し、さらにデータリンク層のリンクを確立した状態で双方向にデータ伝送を行う。したがって、基地局に収容された子機の数が最大同時通信可能な子機数の10台以下の場合には、その技術を用いて制御データを伝送することで、当該制御データに応じた制御を適切なタイミングで実行することができる。しかし、基地局に収容された子機の数が最大同時通信可能な子機数の10台を上回った場合は、それらのすべての子機に制御データを伝送することができないという課題がある。特許文献1には、基地局に収容された子機の数が最大同時通信可能な子機数を上回った場合の制御については記載されていない。
【0014】
特許文献2に記載されている電話システム、電話制御装置およびコードレス電話装置の親機では、基地局に収容された子機の数が最大同時通信可能な子機数を上回った場合には、基地局と各子機間のベアラ (双方向データリンク)の繋ぎ直しを各々行う必要がある。これは、子機の認証手順、暗号化手順に1秒以上の時間がかかることを考えると、最後に制御される子機に対する制御データ伝送の遅延が大きくならないようにするために必要である。結局、特許文献2に記載されている電話システム、電話制御装置およびコードレス電話装置の親機では、すべての子機に対して着信を通知することができないだけでなく、基地局に接続している子機の数が時間的に変化した場合、同じ子機に対して、ある時には着信が通知され、また、別の時には着信が通知されないことになり、ユーザからは子機に不具合があるように見えてしまうという課題がある。
【0015】
本発明の目的は、上記課題を解決し、DECT無線通信方式を利用したコードレス電話装置の基地局、およびコードレス電話装置において、基地局に収容された子機の数が最大同時通信可能な子機数を上回った場合でも、すべての子機に対して大きな遅延なしに着信を通知できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明は、広域ネットワークに接続される電話制御装置に対して接続される1以上の基地局および該基地局に無線方式で接続される複数の子機のうちの、1つの基地局と1つの子機が選択的に用いられて構成されるコードレス電話装置の基地局であって、前記電話制御装置から伝送される子機制御コマンドから、前記子機に対して伝送する必要がある情報を取り出して子機制御信号を生成し、さらに、前記子機制御コマンドの種別に応じて、前記子機制御信号をDECT方式で無線伝送するための最適伝送チャネルを選択するDECT制御信号生成手段と、DECT方式の無線送受信およびDECT TDMA/TDDフレーム合成/分解を行い、前記DECT制御信号生成手段から与えられる前記子機制御信号を、前記DECT制御信号生成手段で選択された最適伝送チャネルを用いて送信するDECT送受信制御手段を備えることを特徴としている。
【0017】
また、本発明は、前記DECT制御信号生成手段は、前記電話制御装置から伝送される前記子機制御コマンドが回線ランプ表示コマンドの場合には、当該子機制御コマンドから生成される子機制御信号をDECT方式で無線伝送するための最適伝送チャネルとして報知チャネルを選択し、前記DECT送受信制御手段は、前記報知チャネルを用いて前記子機制御信号をリンク確立なしに送信することを特徴としている。
【0018】
また、本発明は、通話子機数および接続子機数の情報、および通話子機数および接続子機数が各々上限値に達しているかの2ビットの情報を基地局状態情報として生成し、さらに、前記基地局状態情報をビーコンのMAC情報で報知することを指示する基地局状態報知信号を生成する基地局状態管理手段を備え、前記基地局状態報知信号を、前記DECT送受信制御手段を介して報知することを特徴としている。
【0019】
また、本発明は、広域ネットワークに接続される、デジタルコードレス電話システムの電話制御装置に対して接続される1以上の基地局および該基地局に無線方式で接続される複数の子機のうちの、1つの基地局と1つの子機が選択的に用いられて構成されるコードレス電話装置であって、前記基地局は、前記電話制御装置から伝送される子機制御コマンドから、前記子機に対して伝送する必要がある情報を取り出して子機制御信号を生成し、さらに、前記子機制御コマンドの種別に応じて、前記子機制御信号をDECT方式で無線伝送するための最適伝送チャネルを選択するDECT制御信号生成手段と、DECT方式の無線送受信およびDECT TDMA/TDDフレーム合成/分解を行い、前記DECT制御信号生成手段から与えられる前記子機制御信号を、前記DECT制御信号生成手段で選択された最適伝送チャネルを用いて送信するDECT送受信制御手段と、子機毎ページンググループ番号記憶手段を備え、前記子機に対する前記子機制御信号を、当該子機のページンググループ番号に対応したマルチフレームのBsチャネルのみで送信し、前記子機は、ページンググループ番号記憶部を備え、640ms周期での間欠受信時には、前記ページンググループ番号記憶部に保持されたページンググループ番号に対応するマルチフレームのみで受信動作を行うことを特徴としている。
【0020】
また、本発明は、前記コードレス電話装置において、前記基地局が備える前記DECT制御信号生成手段は、前記電話制御装置から伝送される前記子機制御コマンドが回線ランプ表示コマンドの場合には、当該子機制御コマンドから生成される子機制御信号をDECT方式で無線伝送するための最適伝送チャネルとして報知チャネルを選択し、前記DECT送受信制御手段は、前記報知チャネルを用いて前記子機制御信号をリンク確立なしに送信することを特徴としている。
【0021】
ここで、前記子機のページンググループ番号を、当該基地局への位置登録シーケンスにおいて、当該基地局側で負荷分散を考慮して決定し、これを子機に通知するようにすることができる。
【0022】
あるいは、前記子機のページンググループ番号を、前記子機を当該デジタルコードレス電話システムに収容する際に割り当てられるシステム固有の子機識別情報に基づいて、基地局側および子機側で各々決定するようにすることもできる。
【0023】
さらに、本発明は、前記基地局は、当該基地局の通話子機数および接続子機数の情報、および通話子機数および接続子機数が各々上限値に達しているかの2ビットの情報を基地局状態情報として生成し、さらに、前記基地局状態情報をビーコンのMAC情報で報知することを指示する基地局状態報知信号を生成する基地局状態管理手段を備え、前記子機は、リンク確立の直前の基地局探索ではビーコンで報知される基地局状態情報において通話子機数が上限値に達していない基地局の中から接続先の基地局を選択し、これ以外の基地局探索では、ビーコンで報知される基地局状態情報において接続子機数が上限値に達していない基地局の中から接続先の基地局を選択するように動作する子機制御部を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、DECT無線通信方式を利用したコードレス電話装置の基地局、およびコードレス電話装置において、子機制御コマンドの種別に応じて、子機制御信号をDECT方式で無線伝送するための最適伝送チャネルを選択し、該子機制御信号を、最適伝送チャネルを用いて送信し、また、子機制御コマンドが回線ランプ表示コマンドの場合には、最適伝送チャネルとして報知チャネルを選択し、この報知チャネルを用いて子機制御信号をリンク確立なしに送信するので、基地局に収容された子機の数が最大同時通信可能な子機数を上回った場合でも、すべての子機に対して大きな遅延なしに着信などを通知することができる。
【0025】
また、基地局において、子機制御コマンドに基づいて、当該基地局における通話子機数および接続子機数を管理し、通話子機数および接続子機数が各々上限値に達しているか否かの基地局状態報知信号を生成して報知することにより、子機では、その基地局状態情報を確認し、接続先の基地局を選択するように動作することが可能になり、これによって、最適な負荷分散を実現し、当該基地局において、すべての子機に対する外線着信ランプ表示が完了するまでの着信遅延時間の増大を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】主装置の一例の基本構成を示すブロック図である。
図2】基地局伝送路上のTDD(ピンポン伝送)方式による信号伝送のフレームフォーマットの一例を示す図である。
図3】マルチフレーム構成の子機制御データの伝送の一例を示す図である。
図4】制御部における子機管理の一例を示す図である。
図5】本発明に係る基地局の実施形態の基本構成を示すブロック図である。
図6】本発明に係る子機の実施形態の基本構成を示すブロック図である。
図7】本発明に係る基地局の他の実施形態の基本構成を示すブロック図である。
図8】本発明に係る子機の他の実施形態の基本構成を示すブロック図である。
図9】子機の形態の一例を示す。
図10】子機状態および状態遷移の一例を示す図である。
図11】屋内電波伝搬における通信距離と平均受信レベルおよびフェージング落ち込みレベルとの関係を示す図である。
図12】通話可能エリアと位置登録可能エリアとの関係を示す図である。
図13】位置登録シーケンスの一例を示す図である。
図14】子機からの発呼シーケンスの一例を示す図である。
図15】回線ランプ表示シーケンスの一例を示す図である。
図16】Bsチャネルを使用して基地局から報知される回線ランプ表示メッセージの一例を示す図である。
図17】外線着信シーケンスの一例を示す図である。
図18】ハンドオーバの場合の制御シーケンスの一例を示す図である。
図19】子機からのキープアライブシーケンスの一例を示す図である。
図20】4つのページンググループのページングフレームの伝送動作の例を示す図である。
図21】4つのページンググループのページングフレームの伝送動作の他の例を示す図である。
図22】コードレス電話装置の置局設計の一形態を示す図である。
図23】J-DECTにおける無線リソースの配置を示す図である。
図24】DECTフレームのフレームフォーマットを示し、(a)は短いフレームを示し、(b)は長いフレームを示す。
図25】DECTマルチフレームのフレームフォーマットの一例を示す図である。
図26】基地局ID情報Ntのフレームフォーマットを示す図である。
図27】システム情報Qtのフレームフォーマットを示す図である。
図28】Qtヘッダとシステム情報の対応関係の一例を示す図である。
図29】MAC制御情報Mtのフレームフォーマットを示す図である。
図30】Mtヘッダとメッセージ種別の対応関係の一例を示す図である。
図31】MtコマンドとMAC制御メッセージの対応関係の一例を示す図である。
図32】ページング情報Ptのフレームフォーマットを示す図である。
図33】PtヘッダとBsチャネル情報の対応関係の一例を示す図である。
図34】Ptショートページの情報種別とMAC情報の対応関係の一例を示す図である。
図35】通信状態のDECT子機の省電力無線動作の一例を示す図である。
図36】アイドルロック状態のDECT子機の省電力無線動作の一例を示す図である。
図37】複数のページングフレームを受信する場合のDECT子機の省電力無線動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明について説明する。
【0028】
本発明は、DECT無線通信方式を利用したデジタルコードレス電話の制御に関するものであるので、まず、本発明に関連する制御についてのDECT規格について簡単に説明する。
【0029】
図23は、J-DECTにおける無線リソースの配置を示している。
【0030】
DECT規格では、TDMA-TDD方式を採用しており、図23に示されるように、J-DECTにおける無線リソースの配置では、時間軸上で10ms周期のフレーム構成をとり、下り(基地局→子機)12スロットおよび上り (子機→基地局)12スロットを有する。また、周波数軸上では、6波 (F1~F6)が規定されている。第二世代コードレス電話 (PHS)自営システムと同一周波数帯を共有するが、PHSの制御チャネルは固定周波数であり、これに干渉を与えるとPHS子機が制御不能になる可能性があるため、J-DECTの基地局は、電源投入後、電波送信前にPHS制御チャネルの電波の有無を確認し、電波ありと判断した場合にはF3, F4チャネルを使用しないことがARIB STD-T101のPHS保護規定において定められている。
【0031】
PHS制御チャネルと周波数帯域が重なるF3, F4チャネル以外のチャネルは、PHSと空きチャネル検出で共有するが、PHSシステムの空きチャネル検出の時間間隔は300us程度のものが多く、ダミーベアラはこれをすり抜けてPHS側で見えない干渉が発生する可能性があるため、J-DECT基地局は、電源投入後、電波送信前にPHS制御チャネルの電波の有無を確認し、電波ありと判断した場合には極力F2, F6チャネルでダミーベアラを送信しないことがARIB STD-T101のPHS保護規定において定められている。これは、PHS製品の多くは市場障害を回避するためにF1, F5チャネルの帯域を使用しないように対策しているが、F2, F6チャネルの帯域は使用しており、この帯域でJ-DECT基地局がダミーベアラを送信すると市場障害が発生する恐れがあるためである。
【0032】
DECTにおいて、無線送信時には、子機および基地局において空きチャネル検出を行い、受信(干渉)レベルの小さいチャネル (周波数チャネルとスロットの組み合わせ)を選択して使用する。
【0033】
図24は、DECTフレームのフレームフォーマットを示している。
【0034】
図24(a)、(b)に示すように、DECTには、ダミーベアラと呼ばれる時間長83.3usの短いフレームとトラフィックベアラと呼ばれる時間長368.1usの長いフレームがある。前者は、アイドル (非通信)状態の基地局がビーコンを送信するフレームであり、後者は、基地局と子機間での1対1の通信時に使用するフレームである。
【0035】
アイドル状態の基地局が送信するビーコン (ダミーベアラ)は、下りのみの片方向報知チャネルであり、基地局ごとに1つまたは2つの下り無線リソース (チャネル)を使用して送信される。基地局ごとに2つのビーコンを送信するのは、子機がハンドオーバする際に、移動先基地局のビーコン送信スロットと該子機の通話スロットが一致した場合に該基地局にハンドオーバできなくなることを回避するためであり、2つのビーコンは互いに異なるスロットで送信される。一方、基地局と子機間の1対1の通信時に使用されるトラフィックベアラは、双方向チャネルであり、5ms間隔のペアスロット (例えば、スロット1とスロット13)が使用される。なお、通信状態の基地局は、ビーコン用のダミーベアラとトラフィックベアラの両方を送信することができるし、トラフィックベアラの中のA-Fieldを使用してビーコンの制御データを送信することもできる。
【0036】
DECTを使用するデジタルコードレス電話システムでは、基地局と子機間の1対1の通信数分のトラフィックベアラおよび最大で基地局数またはその2倍の数のダミーベアラが送信される。ダミーベアラおよびトラフィックベアラの送信権は、どちらも空きチャネル検出により同様に獲得される。周波数の有効利用の観点から、空きチャネル検出レベルは、周辺基地局およびその子機の使用チャネルを再利用して使用可能となるように設定されており、トラフィック輻輳時には、ダミーベアラが周辺基地局からのトラフィックベアラによる同一チャネル干渉を受けて受信できなくなる子機が発生する可能性があるため、トラフィックベアラの使用は必要最小限度とすることが望ましい。
【0037】
図25は、DECTマルチフレームのフレームフォーマットの一例を示している。
【0038】
DECTにおけるビーコンを用いたテールデータ (40ビット)の報知は、このマルチフレーム構成を用いて行われる。1マルチフレームは、時間長が160msであり、16フレーム (フレーム0~フレーム15)で構成される。
【0039】
ビーコンで報知されるテールデータ(40ビット)は、その種類により、基地局ID情報Nt、システム情報Qt、マック制御情報M、ページング情報Ptおよび上位層制御情報Ctに分類される。このようなビーコン種別の情報は、ダミーベアラA-Fieldのヘッダ情報に格納される。
【0040】
図26は、基地局ID情報を報知する基地局ID情報Ntのフレームフォーマットを示している。
【0041】
基地局ID情報Ntには、機器製造社ID (EIC)、システムID (FPN)、基地局ID (RPN)が含まれる。各ユーザには異なるシステムIDが割り振られ、ユーザのシステム内の基地局の識別は基地局IDで行われる。
【0042】
図27は、システム情報を報知するシステム情報Qtのフレームフォーマットを示し、図28は、Qtヘッダとシステム情報の対応関係の一例を示している。
【0043】
システム情報Qtには、使用可能なRFキャリア情報、当該QtフレームのRFキャリア/スロット情報、基地局の空きチャネル検出周波数情報であるプライマリスキャン周波数情報等の基本情報に加えて、拡張RFキャリア情報、マルチフレーム番号の情報や基地局送信電力情報、独自システム情報などが含まれる。
【0044】
図29は、MAC制御情報を報知するMAC制御情報Mtのフレームフォーマットを示し、図30は、Mtヘッダとメッセージ種別の対応関係の一例を示している。また、図31は、MtコマンドとMAC制御メッセージの対応関係の一例を示している。
【0045】
図32は、ページング情報を報知するページング情報Ptのフレームフォーマットを示し、図33は、PtヘッダとBsチャネル情報の対応関係の一例を示している。また、図34は、Ptショートページの情報種別とMAC情報の対応関係の一例を示している。
【0046】
ページング情報Ptでは、Bsチャネル (低速報知チャネル)のデータおよびMAC情報が報知される。Bsチャネルでは、特定の子機宛ての下りデータがあることを通知するためのページング情報および独自情報を報知できる。MAC情報には、ブラインドスロット (当該基地局の使用不可スロット)情報、基地局状態 (BUSYなど)情報、使用可能な周波数チャネル情報などがあり、当該フレームで報知するMAC情報の種別の情報は、ダミーベアラA-Fieldの情報種別に格納される。
【0047】
ページング情報Ptのフレームには、20ビット分のBsチャネルデータとMAC情報を報知するショートページ (図32(a))と36ビット分のBsチャネルデータのみを報知するフルページ (図32(b))がある。また、複数のフルページを連結して36×Nビット分のBsチャネルデータを報知するロングページも使用できる。ページング情報Ptのフレームタイプ情報はPtヘッダで伝送される。
【0048】
なお、DECT規格では、フレーム番号は28ビットで規定されており、1フレーム毎に1インクリメントされ、約1ヵ月で一巡するようになっている。また、その上位24ビットはマルチフレーム番号と呼ばれる。
【0049】
DECT方式を利用したデジタルコードレス電話システムにおいては、一般に、基地局間において、フレーム番号およびマルチフレーム番号の同期も取られている。
【0050】
ページング情報Ptは、フレーム0で伝送され、バッテリー動作する省電力タイプの子機は、フレーム0のみを160ms周期で間欠受信することができる。DECT規格では、さらに640ms周期での間欠受信を可能とするために、基地局が同一ビーコン情報を4マルチフレーム連続で送信することが定められている。すなわち、省電力子機は、フレーム0のみを640ms周期で間欠受信することができる。
【0051】
複数のページング情報Ptがある場合には、1マルチフレーム内で最大6個のページング情報Ptを送信することができる。同一マルチフレーム内において、後続するページング情報Ptの有無は、Ptヘッダの先頭ビットで通知されており、省電力子機は、すべてのページング情報Ptを受信した後にスリープ状態に移行する。
【0052】
図35は、通信状態のDECT子機の省電力無線動作の一例を示し、図36は、アイドルロック状態のDECT子機の省電力無線動作の一例を示し、図37は、複数のページングフレームを受信する場合のDECT子機の省電力無線動作の一例を示している。
【0053】
また、特にページング情報がない場合は、基地局は、ページング情報Ptの代わりに基地局ID情報Ntを送信することができる。基地局ID情報Ntは、子機が基地局探索する際に利用する。また、フレーム8ではシステム情報Qt、フレーム14では基地局ID情報Ntが必ず伝送される。
【0054】
また、基地局と子機での1対1通信時には、偶数番目のフレーム (フレーム1、フレーム3、・・・フレーム11)を上位層制御情報Ctとし、上位層制御情報Ct上において基地局と子機間のデータリンクを確立し、データリンク上での双方向低速制御チャネルCsを用いて双方向に低速の制御情報を伝送することができる。なお、上位層制御情報Ctは、双方向チャネルであり、上りトラフィックベアラについても、A-Fieldを使用して上位層制御情報Ctを伝送している。
【0055】
基地局と子機間の1対1通信時にはトラフィックベアラが使用されており、CsチャネルはトラフィックベアラのA-Fieldのテール (40ビット)を用いた低速チャネルであるが、トラフィックベアラのB-Field (320ビット)を用いた高速のCfチャネルを使用することもできる。例えば、通話時には、B-Fieldで音声データが伝送されるため、A-FieldのCsチャネルで制御データを伝送し、非通話時には、B-FieldのCfチャネルを用いて高速に制御データを伝送することができる。
【0056】
なお、偶数番目のフレーム (フレーム1、フレーム3など)は、MACアクセス制御のためのMAC制御情報Mtの双方向伝送にも使用される。基地局と子機間で1対1通信を行う際には、まず、MAC制御情報Mtを使用して、ベアラ (双方向データリンク)を確立する必要がある。MAC制御情報Mtは、暗号化手順やハンドオーバにおいても使用される。
【0057】
ダミーベアラにおいて、特にMAC制御情報がない場合には、偶数番目のフレーム (フレーム1、フレーム3など)で、基地局ID情報Ntを送信することができる。基地局ID情報Ntは、子機が基地局探索する際に利用する。
【0058】
本発明は、以上のDECT規格を考慮し、基地局に収容された子機の数が最大同時通信可能な子機数を上回った場合でも、すべての子機に大きな遅延なしに着呼および着信ランプ情報の伝送を可能にするものである。
【0059】
以下、図面を参照して、本発明について説明する。
【0060】
本発明は、特に、広域ネットワークに接続される電話制御装置(主装置)に対して接続される1以上の基地局および該基地局に無線通信方式で接続される複数の子機のうちの、1つの基地局と1つの子機が選択的に用いられて構成されるコードレス電話装置、およびその基地局に関するものであるが、まず、広域ネットワークに接続される主装置について説明する。
【0061】
図1は、広域ネットワークに接続される主装置の一例の基本構成を示すブロック図である。
【0062】
主装置10は、局線インタフェース部 (局線I/F部)11、内線インタフェース部 (内線I/F部)12、クロック生成部13、回線交換部14および制御部15を備える。ここでは、説明を簡単にするために、必要な構成要素のみを示している。以下の図においても同様である。
【0063】
局線I/F部11には、L個 (Lは1以上の自然数)の電話回線 (局線)が接続されており、最大L回線までの局線発信、局線着信が同時に可能である。内線I/F部12には、M個 (Mは1以上の自然数)の基地局伝送路が接続されており、これらを介して最大M台 (Mは1以上の自然数)の基地局を収容可能となっている。
【0064】
主装置10内部の音声データは、例えば、PCMコーデック信号などの音声符号化信号である。PCMコーデック信号は、音声信号を8kHz (125us間隔)で14ビット量子化したものを非線形圧縮して8ビットとした64kbpsの音声データである。
【0065】
クロック生成部13は、電話回線および内線の音声信号を回線交換するために十分に高速な音声多重用クロックを生成して、局線I/F部11および内線I/F部12に各々供給し、これを用いて生成された多重音声信号は、回線交換部14に印加されて、外線および内線発着信の制御情報に基づいて回線交換が行われる。なお、クロック生成部13は、125us周期の音声コーデックフレームパルスも生成して、局線I/F部および内線I/F部に各々供給し、これを用いて音声信号の1サンプル単位での回線交換を行うことができる。さらに、クロック生成部13は、DECT基地局間同期のための基地局間同期タイミングパルスを生成し、この基地局間同期タイミング信号は、基地局伝送路を介して各基地局に供給され、基地局間同期が行われる。
【0066】
なお、DECT無線通信方式を利用したデジタルコードレス電話システムでは、基地局間でマルチフレーム同期のみならず空きチャネル検出を行う周波数チャネルの同期も必要となるため、160ms×(周波数チャネル数)周期のタイミング同期が必要であり、周波数チャネル数が6の場合には960ms周期のタイミング情報が供給される。
【0067】
基地局伝送路上では、当該基地局に接続して通話を行う子機との双方向音声データおよび当該基地局に接続したすべての子機に対する双方向の制御データおよびDECT基地局間同期のためのタイミング情報が伝送される。
【0068】
図2は、基地局伝送路上のTDD (ピンポン伝送)方式の信号伝送のフレームフォーマットの一例を示す。
【0069】
ここでは、下り伝送と上り伝送とが設けられ、上り伝送と下り伝送の間には、基地局伝送路上の伝送遅延時間を考慮したガード期間が設けられている。
【0070】
TDD方式の周期 (フレーム時間長)は、音声データの区切りに合わせて125usの整数倍に設定される。下り伝送データは、同期ビット、1または複数チャネル分の音声データ、下り共通制御データおよびDECT基地局間同期用ビット (図示省略)から構成される。上り伝送データについても同様である。
【0071】
子機の制御データは、通常、数バイト~数十バイト程度であり、数100ms程度の伝送遅延は許容されるので、複数のTDDフレームを連結してマルチフレーム構成とし、マルチフレーム単位で制御データを伝送してもよく、この場合にはマルチフレーム同期用ビットを使用することができる。マルチフレームの時間長は、例えば、数10ms程度に設定される。
【0072】
図3は、マルチフレーム構成の子機制御データの伝送の一例を示す。
【0073】
ここでは、1マルチフレームの制御データを50バイトとしてマルチフレームを構成している。
【0074】
フレーム同期は、125usの整数倍、マルチフレーム同期は、数10ms程度、DECT基地局間同期は、例えば960msの周期をもつ。フレーム同期ビットパターンを用いてDECT基地局間同期タイミング情報を伝送してもよい。
【0075】
制御データは、制御部15において生成される。双方向の制御データには、主装置10と基地局間の各制御シーケンスの制御コマンドが格納されている。なお、制御データに、制御対象の子機を識別するためのID情報を含ませることができ、発着信時に割り振られる呼番号などの情報を含ませることもできる。
【0076】
制御部15は、システム内のすべての子機の接続基地局情報、呼状態、鳴音指定の有無、局線キー割り当ておよび割り当てられた局線キーのランプ状態を管理し、逐次、更新する。子機の局線キーのランプ状態が変化した場合には、当該子機あての回線ランプ表示コマンドが発行される。
【0077】
図4は、制御部15における子機管理の一例を示す。
【0078】
ここでは、基地局1は、子機ID"100"~"105"の子機を収容し、それらの子機は、基地局1を通して通信が可能であり、基地局2は、子機ID"106"~"107"の子機を収容し、基地局2を通して通信が可能となっていることを表している。また、子機ID"100"の子機は、回線"5239"と"5396"とが割り当てられているが、現在、呼制御状態が"アイドル"であり、回線"5239"と"5369"に対する回線ランプ状態は、いずれも"消灯"になっていることを表している。また、子機ID"101"の子機は、回線"5211"と"5169"とが割り当てられているが、現在、呼制御状態が"通話中"であり、回線"5169"に対する回線ランプ状態は、"緑点灯" (通話中)になっていることを表している。これは、子機ID"101"の子機のユーザは、回線"5169"を通して通話していることを示している。
また、子機ID"102"~"107"の子機は、回線"5169"が割り当てられているが、その回線は、子機ID"101"の子機のユーザが既に通話中であるので、それらの子機の回線ランプ状態は、"赤点灯"であり、当該回線を他の子機が使用中であることを表している。子機ID"101"~"107"の子機は、回線"5211"も割り当てられている。その回線に対しては、現在、呼制御状態が"着信中"であり、その回線ランプ状態は、"赤点滅" (着信中)であり、回線"5211"を通して着信があることを表している。
【0079】
図5は、本発明に係る基地局の実施形態の基本構成を示すブロック図である。
【0080】
ここでは、基地局1 (20)の基本構成だけを図示しているが、他の基地局も同様の基本構成を備えている。なお、本発明に係るデジタル電話装置は、このような基地局の1つと後述する子機の1つが選択的に用いられて構成され、1つのコードレス電話機として機能するものである。
【0081】
基地局20は、基地局伝送路終端部21、DECT送受信制御部22、DECT制御信号生成部23および基地局状態管理部24を備える。
【0082】
基地局伝送路終端部21は、基地局伝送路上を伝送されるTDDフレームの分解および合成を行う。基地局伝送路上では、K個 (Kは1以上の自然数)の双方向音声データが伝送されるが、この双方向音声データは、例えば、コーデックインタフェースを介して、DECT送受信制御部22にシリアル伝送される。
【0083】
コーデックインタフェースのために、多重音声コーデック用クロックおよび音声コーデックフレームパルスも基地局伝送路終端部21において生成され、DECT送受信制御部22に印加される。
【0084】
また、DECT基地局間同期のための所定の、例えば960ms周期のタイミング情報 (基地局間同期タイミングパルス)も基地局伝送路終端部21から出力され、DECT送受信制御部22に印加される。
【0085】
また、基地局伝送路終端部21は、双方向の制御データについては、基地局伝送路のマルチフレーム単位で、子機制御コマンドとして合成または分解を行い、例えば、双方向シリアルインタフェースを介して、DECT制御信号生成部23に印加される。
【0086】
DECT制御信号生成部23は、基地局伝送路終端部21からシリアルインタフェースを介して受け取った子機制御コマンドについては、コマンド種別を解析し、そのコマンド種別に応じて最適なDECT伝送チャネルを決定し、これをDECT伝送チャネル選択信号としてDECT送受信制御部22に通知する。同時に、DECT制御信号生成部23は、当該子機制御コマンドの制御情報を、そのまま、もしくは当該DECT伝送チャネルに適合したフォーマットに変換し、子機制御信号として、DECT送受信制御部22に印加する。
【0087】
また、逆に、DECT送受信制御部22は、無線伝送路を介して子機から受け取った制御情報を子機制御信号としてDECT制御信号生成部23に印加する。DECT制御信号生成部23は、これを主装置10側で規定された子機制御コマンドにフォーマット変換した上で、基地局伝送路終端部21に印加する。当該子機制御コマンドは、基地局伝送路を介して、主装置10に通知される。
【0088】
なお、DECT伝送チャネルには、基地局と子機間での1対1リンクを確立した上で制御データを伝送するCsチャネル、Cfチャネルと、ビーコンを用いてリンク確立なしに制御データを報知するBsチャネルがある。Bsチャネルでは、特定の子機宛ての下りデータがあることを通知するためのページング情報および独自情報を報知できる。そこで、当該基地局に接続しているすべての子機に対して情報を通知する必要がある回線ランプ表示メッセージおよび着呼メッセージについては、ビーコンを用いてリンク確立なしで、かつ最大同時通信可能子機の数に制限されることなく制御データを報知することができるチャネルであるBsチャネルを選択し、それ以外の制御情報については、CsチャネルまたはCfチャネルを選択する。
【0089】
基地局状態管理部24は、基地局伝送路終端部21とDECT制御信号生成部23との間で送受される子機制御コマンドを取得し、さらにDECT送受信制御部22から、子機が在圏を示すために定期的に基地局に対して送信するキープアライブ信号を取得して、これらに基づいて基地局状態を管理し、基地局状態報知信号をDECT送受信制御部22に印加する。
【0090】
例えば、子機からの発信シーケンスにおける当該子機に対する応答コマンドを検出した場合に通話子機数を1だけ増加させ、切断コマンドを検出した場合に通話子機数を1だけ減少させてもよい。また、同様に、子機への着信シーケンスにおける当該子機からの応答コマンドを検出した場合に通話子機数を1だけ増加させ、切断コマンドを検出した場合に通話子機数を1だけ減少させてもよい。さらに、子機がハンドオーバした場合に移動元の基地局では主装置からの呼切断コマンドを検出した場合に通話子機数を1だけ減少させ、また、移動先の基地局では主装置からの応答コマンドを検出した場合に通話子機数を1だけ増加させてもよい。
【0091】
同様に、例えば、子機からの位置登録シーケンスにおける主装置からの位置登録受付コマンドを検出した場合に接続子機数を1だけ増加させてもよい。また、子機から一定周期T1、例えば30秒間隔で送信されるキープアライブ信号が一定期間T2、例えば3分間、取得できない状態が継続した場合に接続子機数を1だけ減少させてもよい。また、子機がハンドオーバした場合に移動元の基地局では主装置からの呼切断コマンドを検出した場合に接続子機数を1だけ減少させ、また、移動先の基地局では主装置からの応答コマンドを検出した場合に接続子機数を1だけ増加させてもよい。さらに、図示はしないが、通話していないアイドル状態の子機が基地局エリア間を移動してローミングする場合において、移動先の基地局への位置登録受付後に、主装置が移動元の基地局に当該子機の位置登録の削除を指示するようにし、当該指示を受けた基地局では接続子機数を1だけ減少させてもよい。
【0092】
これにより、基地局状態管理部24で、当該基地局20における通話子機数および接続子機数を管理し、これに基づいて通話子機数および接続子機数が各々上限値に達しているかの2ビットの情報を生成し、これからビーコンのMAC情報で報知することを指示する基地局状態報知信号を生成してDECT送受信制御部22に印加し、当該基地局20から送信されるビーコンのMAC情報において当該基地局状態を報知することができる。
【0093】
子機は、リンク確立の直前の基地局探索では、ビーコンで報知されるMAC情報の基地局状態情報を確認し、通話子機数が上限値に達していない基地局の中から、接続先の基地局を選択するようにし、これ以外の基地局探索では、ビーコンで報知されるMAC情報の基地局状態情報を確認し、接続子機数が上限値に達していない基地局の中から、接続先の基地局を選択するように動作することで、最適な負荷分散を実現することができる。これにより、特定の基地局に多数の子機が集中して接続した場合に、当該基地局において、すべての子機に対する外線着信ランプ表示が完了するまでの時間である着信遅延時間の増大を軽減することができる。
【0094】
図6は、本発明に係る子機1(30)の実施形態の基本構成を示すブロック図である。
【0095】
ここでは、1つだけの子機の基本構成だけを図示しているが、子機は、1システム当たりN台 (N:1以上の自然数)備えられ、他の子機も同様の基本構成を備えている。これにより、各子機は、いずれかの基地局を介して発着信可能となっている。
この実施形態の子機30は、DECT送受信制御部31、子機制御部32、音声コーデック33、局線キー34、リンガ35、LCD表示部36、マイク37、スピーカ38およびテンキー39を備える。
【0096】
DECT送受信制御部31は、DECT無線信号の送受信、GFSKまたは差動PSK変復調、TDMAフレーム合成、TDMAフレーム分解、基地局探索時の探索処理および無線状態管理などを行う。
【0097】
子機制御部32は、DECT送受信制御部31との間で子機制御コマンドを送受信し、子機30の各部の制御を行う。
【0098】
音声コーデック33は、DECT送受信制御部31との間で音声コーデック信号を送受信し、また、DECT送受信制御部31から音声コーデック用クロックおよび音声コーデックフレームを受信し、音声をエンコード/デコードする。音声コーデック33には、マイク37およびスピーカ38が接続されており、子機側で発話された音声信号は、マイク37で電気信号に変換され、音声コーデック33に具備されたAD変換器にて所定レート、例えば、8kHzでサンプリングされ、さらに音声コーデック33にて伝送帯域を圧縮される。例えば、14ビットでAD変換されたリニアPCM信号をu-law PCMもしくはA-law PCMで8ビットに圧縮し、さらにADPCMで4ビットに圧縮してもよい。
【0099】
DECT規格上では、狭帯域音声として32kbps ADPCM、広帯域音声として64kbps u-law PCMおよび64kbps G.722などの音声コーデックに対応している。狭帯域音声では上りおよび下りで各1スロットを使用するが、広帯域音声では上りおよび下りで各2スロットを使用する。子機30では、狭帯域音声を使用してもよいし、広帯域音声を使用してもよい。
【0100】
通話の相手側で発話された音声信号は、音声コーデック33に具備されたDA変換器にてアナログ信号に変換されてスピーカ38から出力される。音声コーデック33には、DECT送受信制御部31から音声コーデック用クロックおよび1サンプリング分のデータの起点を示す音声コーデックフレームパルスから印加されており、また、双方向の音声コーデック信号がDECT送受信制御部31との間で伝送される。
【0101】
子機制御部32には、局線キー34、リンガ35、LCD表示部36およびテンキー39などが接続されており、子機制御信号に応じて局線キーランプ表示を行ったり、リンガを鳴音させたり、LCD表示を行ったりする。また、局線キー34、あるいはテンキー39の押下の情報は、子機制御信号としてDECT送受信制御部31に印加され、制御シーケンスの中で処理される。制御シーケンスについては後で説明する。
【0102】
図7は、本発明に係る基地局1(20)の他の実施形態の基本構成を示すブロック図である。図7において、図5と同一部分には同じ符号を付している。
【0103】
この実施形態では、基地局20は、子機毎ページンググループ番号記憶部25を備える。子機毎ページンググループ番号記憶部25は、当該基地局20に接続したすべての子機に対するページンググループ番号を各々保持し、DECT制御信号生成部23に印加する。DECT制御信号生成部23は、これにより各子機の子機制御信号をページンググループに対応するマルチフレームタイミングでDECT送受信制御部22に印加する。また、基地局20は、基地局状態管理部24を備える。この基地局状態管理部24は、図5の基地局状態管理部24と同様に、子機制御コマンドから基地局状態信号を取得し、さらにDECT送受信制御部22から子機が在圏を示すために定期的に基地局に対して送信するキープアライブ信号を取得し、これらに基づいて基地局状態を管理して基地局状態報知信号を生成し、DECT送受信制御部22に印加する。
【0104】
また、DECT制御信号生成部23には、160ms周期のマルチフレームの開始タイミングを示すマルチフレームタイミングパルスおよびマルチフレーム番号の下位2ビットの情報が印加されている。
【0105】
マルチフレーム番号の下位2ビットは、640msの繰り返し周期をもち、DECT制御信号生成部23は、例えば、ページンググループ1の子機に対してBsチャネルを用いて伝送する子機制御信号を、マルチフレーム番号の下位2ビットが"00"となるマルチフレームにおいてDECT送受信制御部22に印加し、ページンググループ2の子機に対しBsチャネルで伝送する子機制御信号を、マルチフレーム番号の下位2ビットが"01"となるマルチフレームにおいてDECT送受信制御部22に印加するなどの制御を行う。これにより、各子機が属するページンググループが異なる子機には、異なるマルチフレームを用いて、640ms以内にすべての子機に対してBsチャネルで伝送する子機制御信号を報知することができる。
【0106】
各ページンググループにおいては、1マルチフレーム期間内に最大で6個までのBsチャネルを伝送することができる。すなわち、最大24台の子機に対しては、640ms以内に各々のBsチャネルを伝送することができる。
【0107】
図8は、本発明に係る子機1 (30)の他の実施形態の基本構成を示すブロック図である。図8において、図6と同一部分には同じ符号を付している。
【0108】
この実施形態の子機30は、図7の基地局20と対になって動作するものであり、当該子機30のページンググループ番号を保持するためのページンググループ番号記憶部40を備え、ここで保持されているページンググループ番号情報が子機制御部32に印加される。
【0109】
子機制御部32は、640ms周期での間欠受信時には、ビーコンで報知されるマルチフレーム番号を参照し、当該子機のページンググループ番号に対応したマルチフレームのみを640ms周期で受信するようにDECT送受信制御部31を制御する。
【0110】
図9は、子機の形態の一例を示す。
【0111】
ここでの子機は、8個の局線キーLK1~LK8を備えており、各局線キーは各々1つの電話回線に対応づけられている。
【0112】
ボタン電話機と同様に、各局線キーには当該局線の使用状態 (空き、使用中など)を表示するためのLEDも具備されており、空いている局線がユーザに一目で、その状態を分かるようになっている。例えば、空き局線の局線キーは消灯、現在使用中の局線の局線キーは点灯の場合には、ユーザは消灯している空き局線を選択して、外線発信することができる。
【0113】
また、外線着信時には、当該電話回線を局線キーに割り当てているすべての子機の当該局線キーを点滅させて着信を通知し、これに最初に応答した子機のみが通話することができる。また、ボタン電話機と同様に、通話後に保留および転送を行うこともできる。
【0114】
さらに、ボタン電話機と同様に、外線着信時には、当該局線キーを点滅させて着信を通知するだけでなく、あらかじめ鳴音端末として指定した子機を着信鳴音させることもできる。ただし、鳴音子機については、ユーザが応答した場合にすぐに通話が可能なようにリンク確立しておくことが望ましい。
【0115】
ただし、トラフィック輻輳時にダミーベアラがトラフィックベアラからの同一チャネル干渉により受信できなくなる子機が発生する可能性があるため、トラフィックベアラの使用は必要最小限度とすることが望ましく、この観点から、鳴音子機の数も必要最小限度とすることが望ましい。
【0116】
図10は、子機状態および状態遷移の一例を示す。
【0117】
各子機は、電源投入後の初期状態においては、一定時間間隔で基地局探索動作を行う。基地局探索においては、例えば、各基地局がダミーベアラを用いて報知する基地局ID情報Ntを受信し、最も受信レベルの高い基地局を選択して、これに接続するようにすることができる。
【0118】
各子機は、いずれかの基地局に位置登録すると、アイドルロック状態となる。アイドルロック状態とは、いずれかの基地局に接続しているが、ビーコンを受信するのみで、基地局との双方向の通信を行っていない状態である。
【0119】
以上のように、各子機は、電源投入後、いずれか1つの基地局に位置登録を行い、この基地局を介して発着信可能となる。これを子機が基地局に接続すると称する。すなわち、子機の各々は、自機が接続した基地局を介して発着信可能となる。
【0120】
子機が、基地局との間で通信を行う場合には、リンクを確立し、通信ロック状態に移行する。通信ロック状態では、トラフィックベアラを用いて基地局との間での双方向通信が行われる。
【0121】
通信ロック状態においても、通信品質劣化時もしくは所定時間間隔で通信中基地局探索を行うことができ、より良好に無線通信が可能な新しい基地局が発見された場合は、新しい基地局ともリンク確立して2重にリンク確立したハンドオーバ状態に移行し、さらに古いリンクを切断して、新しい基地局との通信ロック状態に移行できる。すなわち、アイドルロック状態の子機の移動に伴い、より良好に無線通信が可能な基地局に接続し直す場合があり、通話中においても、子機の移動に伴い、より良好に無線通信が可能な基地局に接続し直す場合がある、前者は、ローミングと呼ばれ、後者は、ハンドオーバと呼ばれている。
【0122】
子機は、位置登録に先立ち、周辺基地局探索を行い、基本的には、各基地局が160msの周期で送信しているビーコンの受信レベルが最も高い基地局に対して、位置登録を行う。コードレス電話では、1.9GHz帯の電波が使用されるが、マイクロ波帯の電波の屋内伝搬では、一般にマルチパスフェージングが発生し、その受信レベルは、10~20dB程度で時間変動することが知られている。
【0123】
図11は、屋内電波伝搬における通信距離と平均受信レベルおよびフェージング落ち込みレベルとの関係を示している。なお、図11では、平均受信レベルをRec. ITU-R P.1238-6屋内伝搬モデルを用いて計算している。上記モデルは、オフィスにおけるパーティションなどによる損失を考慮した伝搬モデルである。
【0124】
良好な通話品質を確保するためには、フェージングによる受信レベルの落ち込み時にも最小受信感度以上となり無線伝送エラーなしに通信できることが望ましい。一方、位置登録に関しては、フェージングによる受信レベル変動の中の受信レベルが高い状態で最小受信感度以上となれば、位置登録可能である。
【0125】
前者を通話可能エリア、後者を位置登録可能エリアとすると、位置登録可能エリアのエリア半径は、一般的に、通話可能エリアよりもはるかに大きくなる。一般的な屋内伝搬モデルでは、通信距離が2倍になると平均受信レベルは6dB低下する。この伝搬モデルでは、受信レベルの10~20dBの差は、通信距離に換算すると、おおよそ4倍以上となる。
【0126】
通常、コードレス電話では、サービスエリア全体が、複数の通話エリアでカバーされるように基地局を配置(置局設計)する。このとき、各位置登録可能エリアは周辺の通話エリアを含んでおり、周辺基地局探索においては、位置登録可能となる基地局のすべてもしくは大部分が発見される場合が多い。
【0127】
図12は、通話可能エリアと位置登録可能エリアとの関係を示している。
【0128】
ここでは、中央の基地局とその周辺の6つの基地局の通信可能エリア (実線で示す)と中央の基地局の位置登録可能エリア (破線で示す)を示している。
【0129】
位置登録では、周辺基地局探索で発見された位置登録可能な基地局の中で、基本的には、ビーコンの受信レベルが最大の基地局を選択して、位置登録を行う。ビーコンの受信レベルが最大の基地局に位置登録できない場合は、周辺の位置登録可能な基地局に位置登録することになるが、位置登録可能な基地局と子機の間は、基本的には、無線通信可能であるので、発着呼制御は可能である。
【0130】
ビーコンの受信レベルが最大の基地局に位置登録できず、周辺の位置登録可能な基地局に位置登録した場合には、位置登録した基地局の通話エリア外となる場合もありえるが、このような子機が発着信して通話状態となり、通話状態が良好でない場合には、隣接基地局にハンドオーバして、通話エリアに入る。
【0131】
次に、本発明に係るコードレス電話装置における制御シーケンスについて説明する。なお、ここでの説明では、適宜、図1図5 (図7)、図6 (図8)を参照する。
【0132】
図13は、位置登録シーケンスの一例を示している。
【0133】
位置登録シーケンスでは、基地局20と子機30間で1対1リンクを確立した上で制御データ伝送を行うCsチャネルまたはCfチャネルが使用される。位置登録シーケンスは、電源投入直後の子機30あるいは、移動して隣接基地局ゾーンに移動した子機30が、無線リンクを確立して実施するものである。
【0134】
位置登録しようとする子機30は、最初に、ベアラを確立するためにDECT MAC層規格(ETSI EN 300-175-3)で規定されたアクセス要求を位置登録しようとする基地局20に送信する。位置登録しようとする基地局20は、例えば、直前の基地局探索でビーコン受信レベルが最大であった基地局20である。
【0135】
基地局20からのDECT MAC層規格で規定されたベアラ確認を受信した子機30は、DECT DATA LINK層規格 (ETSI EN 300-175-4)で規定された手順に従いデータリンク層でのリンクを確立した後、CsチャネルまたはCfチャネルを使用して、位置登録要求メッセージを基地局20に送信する。
【0136】
基地局20において、当該メッセージは、DECT送受信制御部22から子機制御信号として出力され、DECT制御信号生成部23に印加される。DECT制御信号生成部23では、受け取った位置登録要求メッセージを、主装置10の子機制御コマンドに変換した後、基地局伝送路終端部21を介して、主装置10に基地局伝送路上で送信する。
【0137】
子機30側で生成する位置登録要求メッセージは、主装置10の子機制御コマンドと同じものでもよいし、伝送データサイズを小さくするために不要なヘッダなどを除いたものであってもよい。
【0138】
主装置10は、子機30からの位置登録要求を受け取ると、子機30に対して認証要求コマンドを発行する。当該コマンドは、基地局伝送路を介して基地局20に伝送される。基地局伝送路終端部21からは認証要求コマンドが出力され、子機制御コマンドとしてDECT制御信号生成部23に印加される。
【0139】
DECT制御信号生成部23は、認証要求コマンドそのもの、もしくはヘッダなどを除いて伝送データサイズを小さくしたものを子機制御信号として出力し、DECT送受信制御部22に印加する。DECT制御信号生成部23からは、同時に、DECTチャネル選択信号として、CsチャネルまたはCfチャネルを選択することを指示する信号も出力されて、DECT送受信制御部22に印加される。
【0140】
DECT送受信制御部22は、DECTチャネル選択信号に基づき、CsチャネルまたはCfチャネルを使用して、認証要求メッセージを子機30に送信する。なお、DECTチャネル選択信号は、DECT伝送の使用チャネルを指定できるものであれば何でもよく、例えば、子機制御信号の中に、DECT伝送の使用チャネルを指定する情報を含めてもよい。
【0141】
主装置10は、子機30から正しい認証応答を受け取ると、位置登録受付コマンドを当該子機30に発行する。当該コマンドは、基地局伝送路を介して基地局20に伝送される。
【0142】
基地局伝送路終端部21からは位置登録受付コマンドが出力され、子機制御コマンドとしてDECT制御信号生成部23に印加される。
【0143】
DECT制御信号生成部23は、位置登録受付コマンドそのもの、もしくはヘッダなどを除いて伝送データサイズを小さくしたものを子機制御信号として出力し、DECT送受信制御部22に印加する。DECT制御信号生成部23からは、同時に、DECTチャネル選択信号として、CsチャネルまたはCfチャネルを選択することを指示する信号も出力されて、DECT送受信制御部22に印加される。
【0144】
DECT送受信制御部22は、これを受けて、DECTチャネル選択信号に基づき、CsチャネルまたはCfチャネルを使用して、位置登録受付メッセージを子機30に送信する。
【0145】
図14は、子機からの発呼シーケンスの一例を示している。
【0146】
発呼シーケンスは、子機30側から外線発信を行う際に使用されるものであり、基地局20と子機30間で1対1リンクを確立した上で制御データ伝送を行うCsチャネルまたはCfチャネルが使用される。
【0147】
なお、発呼処理が主装置10側に受け付けられた時点で、当該子機30の局線ランプ(外線発信で使用中のもの)を"消灯状態"から"自機使用中"に変化させるための回線ランプ表示コマンドが発行されるが、回線ランプ表示コマンドは、ビーコンを用いてリンク確立なしに制御データを報知するBsチャネルを用いて伝送してもよいし、他の制御データと同様に、CsチャネルまたはCfチャネルを使用して伝送してもよい。
【0148】
発信を行うために、子機30の空いている(消灯している)局線キーを押下すると、この情報は子機制御信号としてDECT送受信制御部31に通知され、ベアラを確立するためにDECT MAC層規格で規定されたアクセス要求が位置登録している基地局20に送信される。
【0149】
基地局20からのDECT MAC層規格で規定されたベアラ確認を受信した子機30は、DECT DATA LINK層規格で規定された手順に従いデータリンク層でのリンクを確立した後、CsチャネルまたはCfチャネルを使用して、呼設定メッセージを基地局20に送信する。
【0150】
基地局20において、当該メッセージは、DECT送受信制御部22から子機制御信号として出力され、DECT制御信号生成部23に印加される。DECT制御信号生成部23は、受け取った呼設定メッセージを、主装置10の子機制御コマンドに変換した後、基地局伝送路終端部21を介して、主装置10に基地局伝送路上で送信する。子機30側で生成する呼設定メッセージは、主装置10の子機制御コマンドと同じものでもよいし、伝送データサイズを小さくするために不要なヘッダなどを除いたものであってもよい。
【0151】
主装置10は、子機30からの呼設定コマンドを受け取ると、子機30に対して呼設定受付コマンドを発行する。当該コマンドは、基地局伝送路を介して基地局10に伝送される。
【0152】
基地局伝送路終端部21からは呼設定受付コマンドが出力され、子機制御コマンドとしてDECT制御信号生成部23に印加される。
【0153】
DECT制御信号生成部23は、呼設定受付コマンドそのもの、もしくはヘッダなどを除いて伝送データサイズを小さくしたものを子機制御信号として出力し、DECT送受信制御部22に印加する。DECT制御信号生成部23からは、同時に、DECTチャネル選択信号として、CsチャネルまたはCfチャネルを選択することを指示する信号も出力されて、DECT送受信制御部22に印加される。
【0154】
DECT送受信制御部22は、DECTチャネル選択信号に基づき、CsチャネルまたはCfチャネルを使用して、呼設定受付メッセージを子機30に送信する。
【0155】
主装置10はさらに、子機30が正規の自システムの子機であることを確認するために、子機30に対して認証要求コマンドを発行し、これを受けた子機30は、認証応答メッセージを返信する。これらのコマンドは、位置登録シーケンスと同じであるので、説明を省略する。
【0156】
主装置10は、発呼処理を受け付けた時点で当該子機30の局線ランプ (外線発信で使用中のもの)を"消灯状態"から"自機使用中"に変化させるための回線ランプ表示コマンドを発行する。当該コマンドは、基地局伝送路を介して基地局20に伝送される。
【0157】
基地局伝送路終端部21からは回線ランプ表示コマンドが出力され、子機制御コマンドとしてDECT制御信号生成部23に印加される。
【0158】
DECT制御信号生成部23は、回線ランプ表示コマンドそのもの、もしくはヘッダなどを除いて伝送データサイズを小さくしたものを子機制御信号として出力し、DECT送受信制御部22に印加する。DECT制御信号生成部23からは、同時に、DECTチャネル選択信号として、Bsチャネルを選択することを指示する信号も出力されて、DECT送受信制御部22に印加される。
【0159】
DECT送受信制御部22は、DECTチャネル選択信号に基づき、Bsチャネルを使用して回線ランプ表示メッセージを子機30に送信する。発呼シーケンスにおける回線ランプ表示メッセージについては、当該子機30のみが対象であるので、他の制御データと同様にCsチャネルまたはCfチャネルを使用してもよい。
【0160】
主装置10は、その後、子機30に対して呼出コマンドを発行し、相手を呼び出し中であることを通知する。呼出コマンドは、基地局20を介し、CsチャネルまたはCfチャネルを使用して子機30に通知される。これと同時に、当該子機30に対する音声パスが形成され、この音声パス上で呼び出し音 (Ring Back Tone)が伝送される。
【0161】
当該子機30に対する呼び出し音については、基地局伝送路の下り音声データチャネルの中の1つを使用して伝送される。基地局20において、当該呼び出し音は基地局伝送路終端部21から多重音声コーデック信号として出力され、DECT送受信制御部22に印加される。
【0162】
基地局伝送路終端部21からは、DECT送受信制御部22に対し、多重音声コーデック用クロックおよび音声コーデックフレームパルスも出力されており、DECT送受信制御部22は、当該子機30宛ての呼び出し音をDECTトラフィックベアラのB-Fieldに格納して伝送する。
【0163】
子機30側では、呼出メッセージを受信すると、音声パスを形成し、DECTトラフィックベアラのB-Fieldで受信した呼び出し音の音声コーデック信号を音声コーデックに供給し、スピーカから呼び出し音を出力する。
【0164】
ここで、通話の相手側がオフフックすると、この情報は電話網から電話回線経由で主装置10に通知され、主装置10は、応答コマンドを発行してこれを子機30に通知し、通話状態に移行する。
【0165】
図15は、回線ランプ表示シーケンスの一例を示している。
【0166】
このシーケンスは、例えば、1台のボタン電話機もしくは子機が外線発信した場合に、他の子機に対して、当該局線がビジー (話中)であることを通知するための制御シーケンスである。
【0167】
主装置10は、新しい呼が発生して局線がビジーになったことを検出すると、他のすべての子機に対して回線ランプ表示コマンドを各々発行し、その回線が使用中であることを通知する。当該コマンドは、基地局伝送路を介して基地局20に伝送される。基地局伝送路終端部21からは回線ランプ表示コマンドが出力され、子機制御コマンドとしてDECT制御信号生成部23に印加される。
【0168】
DECT制御信号生成部23は、回線ランプ表示コマンドそのもの、もしくはヘッダなどを除いて伝送データサイズを小さくしたものを子機制御信号として出力し、DECT送受信制御部22に印加する。DECT制御信号生成部23からは、同時に、DECTチャネル選択信号として、Bsチャネルを選択することを指示する信号も出力されて、DECT送受信制御部22に印加される。
【0169】
DECT送受信制御部22は、DECTチャネル選択信号に基づき、Bsチャネルを使用して回線ランプ表示メッセージを子機30に送信する。
【0170】
このようなBsチャネルを使用して基地局から報知される回線ランプ表示メッセージの一実施例を図16に示す。当該メッセージは、メッセージ種別情報、基地局内子機識別子情報および回線キー状態情報を含んでもよい。ここで、メッセージ種別としては、例えば、"8個の局線キーを備える子機に対する回線ランプ表示情報"を含んでもよい。また、基地局内子機識別子情報は、例えば、子機が位置登録シーケンスの最後に受け取る位置登録受付メッセージおいて、基地局において決定されたページングループ情報と基地局内子機識別子情報を受け取るようにしてもよい。ここで、基地局内子機識別子情報はページングループ情報と同一であってもよい。なお、当該基地局内子機識別子情報は、当該基地局において子機毎に異なる情報とすることが望ましい。
【0171】
具体的には、例えば、基地局における接続子機数の上限値が32台の場合に、基地局内子機識別子情報を0から31までの自然数としてもよい。また、1つのBsチャネルを使用して、2台以上の子機に対する回線ランプ表示メッセージを報知するようにしてもよい。この場合には、当該2台以上の子機は、同一ページングループに属するようにして、基地局内子機識別子情報で互いを識別するようにしてもよい。回線キー状態情報としては、複数個、例えば8個の回線キーの状態情報を含むものであってもよい。回線キー状態としては、"空き状態"、"自機通信中"、"他者通信中"、"他者保留中"、"外線着信"および"内線着信"等の状態を識別するための3ビットの情報であってもよい、回線キー状態情報としては、すべての回線キー、例えば8個の回線キーの状態情報を報知してもよいし、状態が変化した回線キーの状態情報のみを報知してもよい。また、すべての回線キーの状態情報を基地局において保持するようにして、回線キーの状態に変化がない場合でも、基地局は定期的に回線キーの状態情報を報知してもよい。
【0172】
子機30側では、DECT送受信制御部31から子機制御信号として回線ランプ表示メッセージが出力され、子機制御部32に印加される。回線ランプ表示メッセージには、制御対象の局線キーを指定する情報と当該局線キーの状態すなわち他機使用中であることを示す情報を含ませることができる。子機制御部32は、これを受けて、当該局線キーを話中表示、例えば点灯状態となるように制御する。
【0173】
図15の例では、5台の子機に対して、回線ランプ表示コマンドを各々発行しているが、子機30の台数がさらに多い場合においても、すべての子機30に対して、各々回線ランプ表示コマンドを各々発行する。また、図15では、簡単のため、すべての子機30が同一基地局に接続している場合について示しているが、異なる基地局30に接続した子機がある場合には、各々制御対象となる子機30が接続している基地局20に向けて回線ランプ表示コマンドが送信され、各基地局20を介して各子機30に伝送される。
【0174】
図17は、外線着信シーケンスの一例を示している。
【0175】
ここでは、基地局1に接続している鳴音指定された子機1および鳴音指定されていない子機2~子機5に対して外線着信があった場合の制御シーケンスを示している。子機1に対しては、当該局線キーを着信ランプ表示 (点滅)させるだけでなく、呼び出し音を鳴音させて着信を通知している。また、ここでは、子機1が着信に応答して、通話状態に入る場合の動作を示している。なお、図17では、鳴音指定された子機の上側に"*"をつけて表記している。
【0176】
主装置10は、鳴音指定された子機1に対し、当該子機1に対する呼設定コマンドを発行して着信を通知する。また、さらに、当該子機1のみならず、鳴音指定されていない子機2~5に対する回線ランプ表示コマンドも発行して、ランプ表示による着信通知を行う。これらのコマンドは、基地局伝送路を介して当該子機1~5が接続している基地局20に伝送される。当該基地局20の基地局伝送路終端部21からは呼設定コマンドおよび各子機1~5に対する回線ランプ表示コマンドが出力され、子機制御コマンドとしてDECT制御信号生成部23に印加される。
【0177】
DECT制御信号生成部23は、呼設定コマンドに含まれる着信子機IDの情報に基づいて、着呼メッセージを生成して、子機制御信号として、DECT送受信制御部22に印加する。DECT制御信号生成部23からは、同時にDECTチャネル選択信号として、Bsチャネルを選択することを指示する信号も出力されて、DECT送受信制御部22に印加される。DECT送受信制御部22は、DECTチャネル選択信号に基づき、Bsチャネルを使用して着呼メッセージを子機1に送信する。
【0178】
DECT制御信号生成部23は、さらに、各子機1~5に対する回線ランプ表示コマンドそのもの、もしくはヘッダなどを除いて伝送データサイズを小さくしたものを各々子機制御信号として出力し、DECT送受信制御部22に印加する。DECT制御信号生成部23からは、同時に、子機制御信号ごとにDECTチャネル選択信号として、Bsチャネルを選択することを指示する信号も出力されて、DECT送受信制御部22に印加される。
【0179】
DECT送受信制御部22は、DECTチャネル選択信号に基づき、Bsチャネルを使用して各子機1~5に対する回線ランプ表示メッセージを当該子機1~5に送信する。
【0180】
次に、子機1が着呼メッセージを受信すると、基地局10と子機1間で1対1リンクが確立されて、CsチャネルまたはCfチャネルを使用した制御データ伝送が行われる。具体的には、子機1は、最初に、ベアラを確立するためにDECT MAC層規格で規定されたアクセス要求を接続中の基地局10に送信する。そして、基地局10からのDECT MAC層規格で規定されたベアラ確認を受信した子機1は、DECT DATA LINK層規格で規定された手順に従い、データリンク層でのリンクを確立する。
【0181】
また、DECT制御信号生成部23は、呼設定コマンドそのものまたは呼設定コマンドから着信子機ID情報を除いたもの、もしくは、さらにヘッダなどを除いて伝送データサイズを小さくしたものを子機制御信号として出力し、DECT送受信制御部22に印加する。DECT制御信号生成部23からは、同時に、DECTチャネル選択信号として、CsチャネルまたはCfチャネルを選択することを指示する信号も出力されて、DECT送受信制御部22に印加され、データリンク層でのリンク確立後に、呼設定メッセージがCsチャネルまたはCfチャネルを使用して送信される。
【0182】
子機1は、呼設定メッセージを受けとると、呼設定受付メッセージを生成し、CsチャネルまたはCfチャネルを使用して、主装置10に送信する。認証要求および認証応答は、DECT NETWORK層規格 (ETSI EN 300-175-5)に準拠したものでもよいし、認証鍵を用いた任意の認証手順に基づくものでもよい。
【0183】
主装置10はさらに、子機1が正規の自システムの子機であることを確認するために、子機1に対して認証要求コマンドを発行し、これを受けた子機は、認証応答メッセージを返信する。これらのコマンドは、位置登録シーケンスと同じであるので、説明を省略する。
【0184】
主装置10は、子機1からの認証応答コマンドを受け取ると、当該局線は使用中であると判断して、この局線状態を各子機1~5に通知するための回線ランプ表示コマンドを各々発行する。子機1に対しては、自機で使用中であることを示す表示、例えば、緑点滅を指示する回線ランプ表示コマンドが発行され、子機2~5に対しては、他機で使用中であることを示す表示、例えば、赤点灯を指示する回線ランプ表示コマンドが発行される。
【0185】
これらのコマンドは、基地局伝送路を介して子機1~5が接続している基地局20に伝送される。当該基地局20の基地局伝送路終端部21からは各子機1~5に対する回線ランプ表示コマンドが出力され、子機制御コマンドとしてDECT制御信号生成部23に印加される。
【0186】
DECT制御信号生成部23は、各回線ランプ表示コマンドに含まれる回線ランプ表示情報に基づいて、回線ランプ表示メッセージを生成して、子機制御信号として、DECT送受信制御部22に印加する。DECT制御信号生成部23からは、同時にDECTチャネル選択信号として、Bsチャネルを選択することを指示する信号も出力されて、DECT送受信制御部22に印加される。
【0187】
DECT送受信制御部22は、DECTチャネル選択信号に基づき、Bsチャネルを使用して各子機1~5への回線ランプ表示メッセージを送信する。
【0188】
子機1は、認証応答メッセージを送信後、リンガ を用いて着信鳴音し、さらに、主装置10に対して、着信鳴音を開始したことを通知するための呼出メッセージをCsチャネルまたはCfチャネルを使用して基地局20に送信する。呼出メッセージは、DECT制御信号生成部23において呼出コマンドに変換され、主装置10に通知される。
【0189】
子機1では、呼出メッセージを送信後に局線キー押下などによりこれに応答すると、応答メッセージが生成され、CsチャネルまたはCfチャネルを使用して基地局20に送信される。応答メッセージは、DECT制御信号生成部23において応答コマンドに変換され、主装置10に通知される。
【0190】
主装置10は、子機1からの応答コマンドを受け取ると、応答確認コマンドを発行して、通話状態に入る。子機1は、基地局10からの応答確認メッセージを受信すると、通話状態に入る。
【0191】
以上、説明したように、本発明では、外線着信時の当該局線を割り付けられたすべての子機に対する着呼情報および着信局線ランプ情報をリンク確立なしに伝送するので、最大同時通話数による制限なしに、すべての子機に着信を通知することができる。
【0192】
図18は、ハンドオーバの場合のシーケンスの一例を示している。
子機1が、基地局1と双方向通信が行っている状態において通信品質劣化が生じ、通信中基地局探索の結果からより良好に無線通信が可能な新しい基地局2が発見された場合は、新たに隣接基地局2とリンク確立してハンドオーバ状態に移行し、さらに古いリンクを切断して、隣接基地局2との通信ロック状態に移行する。すなわち、子機1の移動に伴い、より良好に無線通信が可能な隣接基地局2に接続し直す場合は、通話中においても、子機1の移動に伴い、より良好に無線通信が可能な隣接基地局2に接続し直して、その通話エリアに入る。
【0193】
図19は、子機からのキープアライブシーケンスの一例を示している。
子機では、すべての通話エリアからはずれて圏外に移動する場合や電源をオフに設定される場合があるため、当該子機が圏内にあり発着信可能であることを通知するためのキープアライブ信号をほぼ一定周期(T1)、例えば30秒周期で接続中の基地局に送信している。当該基地局は、子機からのキープアライブ信号を監視しており、所定時間、例えば、3分間、キープアライブ信号が受信できない場合には、当該子機は当該基地局の通信エリア外にあると判断して、当該子機の位置登録を抹消し、当該基地局の接続子機数を1減算し、さらに主装置に当該子機が圏外となったことを通知している。
【0194】
以下では、さらに、着信情報を1~2秒以内にすべての子機に通知するための技術について説明する。
【0195】
図5および図7の基地局20は、基地局状態管理部24を備え、当該基地局20に接続している子機の台数および当該基地局に接続している子機の中で呼接続を行っている子機の台数を管理している。
【0196】
図32に示されるように、ショートページのページングフレームPtでは、12ビットのMAC情報を報知することができ、伝送するMAC情報種別を"4b'1010"とした場合には、基地局状態情報を報知することができる。なお、ショートページのページングフレームPtを用いたMAC情報の報知では、4ビットの基地局状態情報を報知することができる。具体的には、基地局状態情報を"XXX1" (Xは0または1)とすることで通信子機数が上限値に達していることを報知し、例えば基地局状態情報を"XX1X" (Xは0または1)とすることで接続子機数が上限値に達していることを報知することができる。
【0197】
基地局状態管理部24は、当該基地局20に接続している子機台数の情報もしくは当該基地局に接続している子機台数が所定の上限値に達しているかの情報および当該基地局20に接続している子機の中で呼接続を行っている子機台数の情報もしくは呼接続を行っている子機台数が所定の上限値に達しているかの情報を基地局状態報知信号としてDECT送受信制御部22に印加する。基地局状態報知信号による報知は、基地局状態変化時に実施してもよいし、所定時間間隔、例えば、5秒周期で実施してもよい。
【0198】
DECT送受信制御部22は、基地局状態管理部24から基地局状態報知信号を受け取ると、ショートページフレームのMAC情報報知を利用して、当該基地局20における接続子機数もしくは接続子機数が上限値に達しているかの情報および当該基地局20に接続している呼接続子機の台数もしくは呼接続子機数が上限値に達しているかの情報を報知する。
【0199】
いずれかの基地局20に位置登録した子機30は、アイドルロック状態になり、ページングフレームPtを160ms周期または640ms周期で間欠受信する。このとき、子機30は、各マルチフレーム先頭のフレーム0にて送信されるページングフレームPtを受信しており、1つのマルチフレーム内で複数のページングフレームPtが伝送される場合には、ページングヘッダの先頭ビットにて後続ページングフレームPtの有無が通知され、後続ページングフレームPtなしと通知された場合には、子機30は、当該ページングフレームPtの受信後、約160ms間もしくは約640ms間、スリープ状態に移行する。
【0200】
後続ページングフレームPtありと通知された場合には、子機30は、当該ページングフレームPtの受信後、さらに、後続ページングフレームPtを受信するように動作し、後続ページングフレームPtなしと通知されるまでは、ページングフレームPtの受信を継続する。
【0201】
DECT送受信制御部22は、基地局状態通知信号を受け取ると、これを基地局状態情報で報知するためのショートページフレームを他のページングフレームPtに追加して報知し、これを受信した子機30は、これを考慮して制御シーケンスを行う。例えば、呼接続している子機30の台数が上限値に達している基地局20に発呼しようとする子機30または着信を受けた子機30は、最初に、ローミング処理を行い、その後、新しい基地局20との間で、発信または着信の動作を行う。
【0202】
また、電源投入後の子機30の位置登録もしくはローミング時の基地局探索において、接続子機数が上限値に達している基地局20を除外した上で、ビーコン受信レベルの大きい基地局20を選択するようにしてもよい。なお、呼接続子機の台数の上限値については、基地局伝送路における音声チャネル数としてもよい。また、接続子機数については、着信情報を1~2秒以下で伝送可能な台数に制限することが望ましい。
【0203】
DECT規格においては、間欠受信周期は最大640msであること、および1マルチフレームにおいてフレーム0を間欠受信することが規定されている。また、既に説明したように、1マルチフレームにおいて、最大で6個のPtフレーム、すなわち、ランプ情報または着信情報を伝送することができる。
【0204】
DECT方式の基地局20では、通信で使用していない未使用チャネルを用いて、常時、空きチャネル検出を行っており、この結果により、ビーコンの送信周波数または送信スロットを時間的に変化させる場合がある。
【0205】
各基地局20におけるビーコンの送信周波数または送信スロットの変更は、ショートページフレームのMAC情報報知を利用して、当該基地局に接続しているすべての子機30に通知される。なお、640ms周期で間欠受信している子機30は、4マルチフレーム毎に1回、フレーム0のページングフレームPtを受信するが、DECT方式の基地局20は、一般に、間欠受信している子機30が受信するマルチフレームを把握しておらず、連続する4つのマルチフレームで同一のページングフレームPtを4回送信することで、すべての子機30が当該ページングフレームPtの情報を受信可能となるようにしている。
【0206】
一方、1台の基地局になるべく多くの子機を収容し、これらのすべての子機に対して着信情報をなるべく早く通知する観点からは、640ms周期の中で伝送される4個のマルチフレームにおいては各々異なる子機に対する着信情報を通知することが望ましい。
【0207】
このため、基地局20においては、各子機30が当該基地局20に位置登録する際に、640ms周期で伝送される4個のマルチフレームの中で当該子機30が間欠受信するべきマルチフレームを子機30に通知するようにしている。また、当該基地局20に接続した各子機30は、640ms周期で伝送される4個のマルチフレームの中で位置登録時に指定されたマルチフレームを間欠受信するように動作する。
【0208】
図20は、4つのページンググループとした場合のページングフレームの伝送動作の例を示している。
【0209】
ここでは、640ms周期の中で伝送される4個のマルチフレームの中で、最初のマルチフレームを受信するページングループ1、2番目のマルチフレームを受信するページングループ2、3番目のマルチフレームを受信するページングループ3、最後のマルチフレームを受信するページングループ4の4つのページングループを設け、基地局は、各子機に対していずれか1つのページンググループを割り当てている。
【0210】
そして、ページングループ1に属する子機に対するランプ情報および着信情報は、640ms周期で伝送される4個のマルチフレームの中の最初のマルチフレームで送信し、ページングループ1に属する子機は、このタイミングでこれを間欠受信する。ページングループ2、3、4に属する子機に対しては、各々2番目、3番目、4番目のマルチフレームで送信し、各ページングループに属する子機は、各々このタイミングで間欠受信する。
【0211】
なお、ページンググループの割り当て方法については、基地局および子機でページンググループ割り当て結果を共有できるものであればよく、例えば、基地局において決定し、位置登録シーケンスにおける位置登録受付メッセージの中で子機に通知してもよく、あるいは子機のコードレス電話装置への登録時に割り当てられるシステム固有の識別情報、例えば、子機IDに基づいて、一意的に決定するものであってもよい。具体的には、例えば、子機IDに対する4を法とする剰余に基づいて、ページンググループを決定してもよい。なお、MAC情報などの当該基地局に接続しているすべての子機に通知する必要がある情報については、640ms周期で伝送される4個のマルチフレームのすべてにおいて各々計4回送信してもよい。
【0212】
図21は、4つのページンググループとした場合のページングフレームの伝送動作の他の例を示している。
【0213】
ここでは、4つのページンググループに属する子機が各々2台、計8台の子機が接続している場合におけるページングフレームPtの伝送動作を示している。
例えば、ページンググループ1に割り当てられたマルチフレームにおいては、子機1および子機2に対するランプ情報または着信情報が2つのページングフレームPtで伝送され、子機1および子機2は、まず、フレーム0で伝送されるページングフレームPtを間欠受信する。
【0214】
このとき、Ptヘッダの先頭ビットは1であり、同一マルチフレーム内にさらに別のページングフレームPtがあることを通知されて、さらにフレーム2も間欠受信する。こちらのPtヘッダの先頭ビットは0であり、子機1および子機2は、約640ms後の次の間欠受信タイミングまで、スリープ動作する。
【0215】
図22は、コードレス電話装置の置局設計の一形態を示している。
【0216】
この例では、オフィスには3つの局線が割り当てられている。オフィスの従業員はどれか一つの局線を使用して外線発信することができる。3つの局線がすべて使用中の場合には、どれか1つの局線の使用が終了するまで、外線を使用できない。
【0217】
また、この例では、オフィスには4つの基地局が設置されており、該4つの基地局の通話エリアにてオフィス全体がカバーされている。各子機は、いずれか1つの基地局に接続しており、この例においては、各基地局に各々20台の子機が接続している。なお、特定の基地局に子機が集中して接続することもありうるが、640ms以内に局線キー状態情報、着信情報を通知できるように、例えば、接続子機数の上限値を32台とし、接続子機数がこれに達した基地局ではこれをビーコンで報知することにより、32台を上回る数の子機が特定の基地局に集中して接続しないようにしている。
【0218】
この局線の使用状況は、子機の局線キーのランプ表示により確認することができる。局線キーのランプが消灯している場合には、その局線は空いており、使用することができる。局線キーのランプが、例えば点灯中であれば、その局線は使用中 (通話中)であり、使用することができない。一方、オフィスに外線着信があった場合は、すべての従業員の子機に1秒以内に着信が通知され、その局線キーが点滅する。また、鳴音指定された子機は、局線キーのランプ表示だけでなく、着信鳴音する。
【0219】
主装置は、外線着信時には、その局線を局線キーに割り付けたすべての子機に対して、着信を示す回線ランプ表示コマンドを発行する。また、局線で鳴音指定されたすべての子機に対し、呼設定コマンドを発行する。これにより、着信時には、当該局線に割り当てられているすべての子機の局線キーが点滅して着信を通知し、鳴音指定された子機のみが鳴音することになり、ボタン電話機と同じ機能が実現される。
【0220】
上述したように、子機は、あらかじめいずれかの基地局経由で位置登録し、主装置の制御部は、各子機が位置登録している基地局の情報を管理し、各子機宛ての着信を示す回線ランプ表示コマンド、呼設定コマンドを、当該子機が位置登録している基地局に、基地局伝送路上で送信する。
【0221】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば、外線着信時には、着信対象のすべての子機に着信を通知する必要があり、この着信の通知に時間がかかると、発信者が応答なしと判断して、呼を切断する恐れがあるので、すべての子機に着信を通知するまでの時間は、なるべく短く、望ましくは1~2秒以内にする必要がある。
【0222】
複数の子機が特定の基地局に集中して位置登録されると、その基地局経由で多数の子機に着信が通知されるが、子機は、通常バッテリー動作しており、電力消費を抑えるために比較的長い周期、例えば、640ms周期で間欠受信を行っており、多数の子機への着信通知や回線ランプ情報の配信に時間がかかる。
【0223】
このため、1基地局あたりの位置登録子機数に上限を定めて、これを超えた場合には、位置登録を拒否したり位置登録できないことをビーコンで報知したりして、それ以上の子機は、他の周辺基地局に位置登録するようにすることができる。具体的には、各基地局の基地局内子機状態管理部において、位置登録子機数を管理し、これが上限値に達した場合には、それ以降の位置登録要求を基地局側で拒否するようにすることができる。
【符号の説明】
【0224】
10・・・主装置
11・・・局線I/F部
12・・・内線I/F部
13・・・クロック生成部
14・・・回線交換部
15・・・制御部
20・・・基地局
21・・・基地局伝送路終端部
22・・・DECT送受信制御部
23・・・DECT制御信号生成部
24・・・基地局状態管理部
25・・・子機毎ページンググループ番号記憶部
30・・・子機
31・・・DECT送受信制御部
32・・・子機制御部
33・・・音声コーデック
34・・・局線キー
35・・・リンガ
36・・・LCD表示部
37・・・マイク
38・・・スピーカ
39・・・テンキー
40・・・ページンググループ番号記憶部
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