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特開2023-13235鉄筋コンクリートの補強筋量算出システム及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013235
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】鉄筋コンクリートの補強筋量算出システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/01 20060101AFI20230119BHJP
   E04B 1/20 20060101ALI20230119BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
E04C5/01 ESW
E04B1/20 A
E04G21/12 105A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117255
(22)【出願日】2021-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】谷 雅一
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164AA02
(57)【要約】
【課題】鉄筋コンクリートの施工部の空間条件、支障防止条件又は強度条件を満たしつつ、軸補強筋の径に応じた当該軸補強筋を並べるべき本数をコンピューターにより迅速に算出する。
【解決手段】コンピューター2(2及び3)は、軸補強筋121,221が配筋されるコンクリート部120,220の軸補強筋に垂直な断面における軸補強筋を並べる第一方向の寸法(図2,3ではB、図4図5ではa)と、同断面における前記第一方向に垂直な第二方向の寸法(図2,3ではa、図4図5ではH)と、軸補強筋の径Dと、同断面に求められる配筋密度条件(最小限界鉄筋比p,最長限界間隔x)とに応じて、軸補強筋を前記第一方向に並べるべき本数nを算出する(S7,S8)機能を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリートに配筋される軸補強筋の筋量をコンピューターにより算出する筋量算出システムであって、
コンピューターは、前記軸補強筋が配筋されるコンクリート部の前記軸補強筋に垂直な断面における前記軸補強筋を並べる第一方向の寸法と、同断面における前記第一方向に垂直な第二方向の寸法と、前記軸補強筋の径と、同断面に求められる配筋密度条件とに応じて、前記軸補強筋を前記第一方向に並べるべき本数を算出する機能を有する鉄筋コンクリートの補強筋量算出システム。
【請求項2】
前記コンピューターは、前記配筋密度条件の一つを、前記断面の面積に対する前記軸補強筋の総断面積で示される鉄筋比であって、最小限界鉄筋比とし、
前記最小限界鉄筋比を満たす最少の本数を算出する機能を有する請求項1に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システム。
【請求項3】
前記コンピューターは、前記配筋密度条件の一つを、前記軸補強筋の並べられる間隔であって、最長限界間隔とし、
前記最長限界間隔を満たす最少の本数を算出する機能を有する請求項1に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システム。
【請求項4】
前記コンピューターは、前記配筋密度条件の一つを、前記断面の面積に対する前記軸補強筋の総断面積で示される鉄筋比であって、最小限界鉄筋比とし、
前記配筋密度条件の他の一つを、前記軸補強筋の並べられる間隔であって、最長限界間隔とし、
前記最小限界鉄筋比を満たす最少の本数と、前記最長限界間隔を満たす最少の本数を算出する機能を有する請求項1に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システム。
【請求項5】
前記コンピューターは、前記最小限界鉄筋比を満たす最少の本数と、前記最長限界間隔を満たす最少の本数のうちいずれか多い方を、前記軸補強筋を前記第一方向に並べるべき本数として算出する機能を有する請求項4に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システム。
【請求項6】
前記コンピューターは、前記最長限界間隔を満たす最少の本数を算出するにあたり、前記軸補強筋の周囲に前記軸補強筋と垂直な方向に配筋されるあばら補強筋より内側を前記軸補強筋の配筋範囲とする機能を有する請求項3から請求項5のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システム。
【請求項7】
前記コンピューターは、前記軸補強筋を前記第一方向に並べるべき本数を算出する対象のコンクリート部を、構造体コンクリートの上端又は下端に施工される増打ちコンクリート部とし、前記第一方向を水平方向とする機能を有する請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システム。
【請求項8】
前記コンピューターは、
前記軸補強筋を前記第一方向に並べるべき本数を算出する対象のコンクリート部を、構造体コンクリートの上端又は下端に施工される増打ちコンクリート部とし、前記第一方向を水平方向とし、
前記最長限界間隔を満たす最少の本数を算出するにあたり、前記増打ちコンクリート部の水平方向の両端に前記軸補強筋を配筋する条件とし、当該両端の軸補強筋の中心を起点にする機能を有する請求項3から請求項6のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システム。
【請求項9】
前記コンピューターは、前記軸補強筋を前記第一方向に並べるべき本数を算出する対象のコンクリート部を、構造体コンクリートの側方に施工される増打ちコンクリート部とし、前記第一方向を水平方向とする機能を有する請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システム。
【請求項10】
前記コンピューターは、
前記軸補強筋を前記第一方向に並べるべき本数を算出する対象のコンクリート部を、構造体コンクリートの側方に施工される増打ちコンクリート部とし、前記第一方向を水平方向とし、
前記最長限界間隔を満たす最少の本数を算出するにあたり、前記増打ちコンクリート部の前記側方の端に前記軸補強筋を配筋する条件とし、当該側方の端の軸補強筋の中心と前記増打ちコンクリート部に接する前記構造体コンクリートの側面上を起点にする機能を有する請求項3から請求項6のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システム。
【請求項11】
鉄筋コンクリートに配筋される軸補強筋の筋量を算出する筋量算出システムとしてコンピューターを機能させるための筋量算出プログラムであって、
コンピューターに、前記軸補強筋が配筋されるコンクリート部の前記軸補強筋に垂直な断面における前記軸補強筋を並べる第一方向の寸法と、同断面における前記第一方向に垂直な第二方向の寸法と、前記軸補強筋の径と、同断面に求められる配筋密度条件とに応じて、前記軸補強筋を前記第一方向に並べるべき本数を算出する機能を実現させるための鉄筋コンクリートの補強筋量算出プログラム。
【請求項12】
前記コンピューターに、前記配筋密度条件の一つを、前記断面の面積に対する前記軸補強筋の総断面積で示される鉄筋比であって、最小限界鉄筋比とし、
前記最小限界鉄筋比を満たす最少の本数を算出する機能を実現させるための請求項11に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出プログラム。
【請求項13】
前記コンピューターに、前記配筋密度条件の一つを、前記軸補強筋の並べられる間隔であって、最長限界間隔とし、
前記最長限界間隔を満たす最少の本数を算出する機能を実現させるための請求項11に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出プログラム。
【請求項14】
前記コンピューターに、前記配筋密度条件の一つを、前記断面の面積に対する前記軸補強筋の総断面積で示される鉄筋比であって、最小限界鉄筋比とし、
前記配筋密度条件の他の一つを、前記軸補強筋の並べられる間隔であって、最長限界間隔とし、
前記最小限界鉄筋比を満たす最少の本数と、前記最長限界間隔を満たす最少の本数を算出する機能を実現させるための請求項11に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出プログラム。
【請求項15】
前記コンピューターに、前記最小限界鉄筋比を満たす最少の本数と、前記最長限界間隔を満たす最少の本数のうちいずれか多い方を、前記軸補強筋を前記第一方向に並べるべき本数として算出する機能を実現させるための請求項14に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出プログラム。
【請求項16】
前記コンピューターに、前記最長限界間隔を満たす最少の本数を算出するにあたり、前記軸補強筋の周囲に前記軸補強筋と垂直な方向に配筋されるあばら補強筋より内側を前記軸補強筋の配筋範囲とする機能を実現させるための請求項13から請求項15のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出プログラム。
【請求項17】
前記コンピューターに、前記軸補強筋を前記第一方向に並べるべき本数を算出する対象のコンクリート部を、構造体コンクリートの上端又は下端に施工される増打ちコンクリート部とし、前記第一方向を水平方向とする機能を実現させるための請求項11から請求項16のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出プログラム。
【請求項18】
前記コンピューターに、
前記軸補強筋を前記第一方向に並べるべき本数を算出する対象のコンクリート部を、構造体コンクリートの上端又は下端に施工される増打ちコンクリート部とし、前記第一方向を水平方向とし、
前記最長限界間隔を満たす最少の本数を算出するにあたり、前記増打ちコンクリート部の水平方向の両端に前記軸補強筋を配筋する条件とし、当該両端の軸補強筋の中心を起点にする機能を実現させるための請求項13から請求項16のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出プログラム。
【請求項19】
前記コンピューターに、前記軸補強筋を前記第一方向に並べるべき本数を算出する対象のコンクリート部を、構造体コンクリートの側方に施工される増打ちコンクリート部とし、前記第一方向を水平方向とする機能を実現させるための請求項11から請求項16のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出プログラム。
【請求項20】
前記コンピューターに、
前記軸補強筋を前記第一方向に並べるべき本数を算出する対象のコンクリート部を、構造体コンクリートの側方に施工される増打ちコンクリート部とし、前記第一方向を水平方向とし、
前記最長限界間隔を満たす最少の本数を算出するにあたり、前記増打ちコンクリート部の前記側方の端に前記軸補強筋を配筋する条件とし、当該側方の端の軸補強筋の中心と前記増打ちコンクリート部に接する前記構造体コンクリートの側面上を起点にする機能を実現させるための請求項13から請求項16のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリートの補強筋量算出システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1にも記載されるように、鉄筋コンクリート部材内に各種補強筋が配筋される。
また、納まりや耐久性等の理由から、構造耐力上必要なコンクリート部材(以降、構造体コンクリートという)に対し、その上端や下端を増打ちすることが一般的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-203378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄筋コンクリートの補強筋の径及び本数に依存した鉄筋量は、構造物ごとにひび割れ等による支障の防止性能(以降、支障防止条件という)や強度条件、空間条件、施工性、経済性等を考慮して個別に計算されることが一般的である。特に、施工性や経済性に応じるためには、細かく構造物の部位ごとに計算する必要があり煩雑であった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、鉄筋コンクリートの施工部の空間条件、支障防止条件又は強度条件を満たしつつ、軸補強筋の径に応じた当該軸補強筋を並べるべき本数をコンピューターにより迅速に算出することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、例えば図1~7,表I,表II,式(1)~(4)又は式(5)~(8)等に示すように、鉄筋コンクリートに配筋される軸補強筋の筋量をコンピューターにより算出する筋量算出システムであって、
コンピューター2(2及び3)は、前記軸補強筋121,221が配筋されるコンクリート部120,220の前記軸補強筋に垂直な断面における前記軸補強筋を並べる第一方向の寸法(図2,3ではB、図4図5ではa)と、同断面における前記第一方向に垂直な第二方向の寸法(図2,3ではa、図4図5ではH)と、前記軸補強筋の径Dと、同断面に求められる配筋密度条件p,xとに応じて、前記軸補強筋を前記第一方向に並べるべき本数nを算出する(S7,S8)機能を有する。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、軸補強筋を前記第一方向に並べるべき本数を、軸補強筋を並べる第一方向の寸法と、同断面における前記第一方向に垂直な第二方向の寸法と、軸補強筋の径とに応じて算出するので、鉄筋コンクリートの施工部の空間条件に適合した本数を算出することができる。
また、軸補強筋を第一方向に並べるべき本数を、配筋密度条件に応じて算出するので、一定の支障防止条件に適合した本数を算出することができる。
したがって、鉄筋コンクリートの施工部の空間条件、支障防止条件又は強度条件を満たしつつ、軸補強筋の径に応じた当該軸補強筋を並べるべき本数をコンピューターにより迅速に算出することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、例えば図6、式(2)又は式(6)に示すように、請求項1に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システムにおいて、
前記コンピューター2(2及び3)は、配筋密度条件の一つを、前記断面の面積に対する前記軸補強筋の総断面積で示される鉄筋比であって、最小限界鉄筋比pとし、
前記最小限界鉄筋比を満たす最少の本数nを算出する(S4)機能を有する。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、コンピューター2(2及び3)は、配筋密度条件の一つを最小限界鉄筋比とする、すなわち、軸補強筋により最小限界鉄筋比を確保することを条件とし、軸補強筋を第一方向に並べるべき本数nを算出する。その際、最小限界鉄筋比を満たす最少の本数を基準として算出するので、一定の支障防止条件に適合しつつも施工性、経済性が損なわれない本数nを算出することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、例えば図6、式(3)又は式(7)に示すように、請求項1に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システムにおいて、
前記コンピューター2(2及び3)は、前記配筋密度条件の一つを、前記軸補強筋の並べられる間隔であって、最長限界間隔xとし、
前記最長限界間隔を満たす最少の本数nを算出する(S5)機能を有する。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、コンピューター2(2及び3)は、配筋密度条件の一つを最長限界間隔とする、すなわち、軸補強筋の間隔を長くても最長限界間隔までとし、軸補強筋を第一方向に並べるべき本数nを算出する。その際、最長限界間隔を満たす最少の本数を基準として算出するので、一定の支障防止条件に適合しつつも、施工性、経済性が損なわれない本数nを算出することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、例えば図6、式(2)(3)又は式(6)(7)に示すように、請求項1に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システムにおいて、
前記コンピューター2(2及び3)は、前記配筋密度条件の一つを、前記断面の面積に対する前記軸補強筋の総断面積で示される鉄筋比であって、最小限界鉄筋比pとし、
前記配筋密度条件の他の一つを、前記軸補強筋の並べられる間隔であって、最長限界間隔xとし、
前記最小限界鉄筋比を満たす最少の本数nと、前記最長限界間隔を満たす最少の本数nを算出する(S4,S5)機能を有する。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、コンピューター2(2及び3)は、最小限界鉄筋比及び最長限界間隔を配筋密度条件とし、軸補強筋を第一方向に並べるべき本数nを算出する。その際、最小限界鉄筋比を満たす最少の本数及び最長限界間隔を満たす最少の本数を基準として算出するので、より高次な支障防止条件に適合しつつも、施工性、経済性が損なわれない本数nを算出することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、例えば図6、式(4)又は式(8)等に示すように、請求項4に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システムにおいて、
前記コンピューター2(2及び3)は、前記最小限界鉄筋比pを満たす最少の本数nと、前記最長限界間隔xを満たす最少の本数nのうちいずれか多い方を、前記軸補強筋を前記第一方向に並べるべき本数nとして算出する(S6-S8)機能を有する。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、コンピューター2(2及び3)は、最小限界鉄筋比満たす最少の本数と、最長限界間隔を満たす最少の本数のうちいずれか多い方を、軸補強筋を第一方向に並べるべき本数として算出するので、配筋密度条件を最小限界鉄筋比及び最長限界間隔の2つに限定して計算負荷を抑えることができ、2つの支障防止条件に適合しつつも、施工性、経済性が損なわれない本数nを算出することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、例えば図3図5、式(3)又は式(7)に示すように、請求項3から請求項5のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システムにおいて、
前記コンピューター2(2及び3)は、前記最長限界間隔xを満たす最少の本数を算出するにあたり、前記軸補強筋121,221の周囲に前記軸補強筋と垂直な方向に配筋されるあばら補強筋122,222より内側を前記軸補強筋の配筋範囲とする(S5)機能を有する。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、最長限界間隔を満たす最少の本数を算出するにあたっての軸補強筋の配筋範囲を適切な範囲に限定するので、計算上の配筋範囲が現実より大きくなって配筋本数が不必要に増加することを回避することができ、したがって、施工性、経済性が損なわれない本数nを算出することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、例えば図2図3に示すように、請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システムにおいて、
前記コンピューター2(2及び3)は、前記軸補強筋121,221を前記第一方向に並べるべき本数nを算出する対象のコンクリート部120を、構造体コンクリート(110)の上端又は下端に施工される増打ちコンクリート部とし、前記第一方向を水平方向とする機能を有する。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、梁などの構造体コンクリートの上端又は下端にコンクリートを増打ちする際に、水平方向に並べるべき軸補強筋の適切な本数を迅速に知ることができ、当該増打ち施工の経済性、施工性が向上する。
【0020】
請求項8に記載の発明は、例えば図2図3に示すように、請求項3から請求項6のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システムにおいて、
前記コンピューター2(2及び3)は、
前記軸補強筋121を前記第一方向に並べるべき本数を算出する対象のコンクリート部120を、構造体コンクリート(110)の上端又は下端に施工される増打ちコンクリート部とし、前記第一方向を水平方向とし、
前記最長限界間隔xを満たす最少の本数nを算出するにあたり、前記増打ちコンクリート部の水平方向の両端に前記軸補強筋を配筋する条件とし、当該両端の軸補強筋の中心を起点にする(式(3)、S5)機能を有する。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、両側に生じる外側端部に軸補強筋を配筋することを可能としつつも、最長限界間隔xを満たすことができる適切な配筋本数を算出することができる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、例えば図4図5に示すように、請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システムにおいて、
前記コンピューター2(2及び3)は、前記軸補強筋221を前記第一方向に並べるべき本数nを算出する対象のコンクリート部220を、構造体コンクリート(210)の側方に施工される増打ちコンクリート部とし、前記第一方向を水平方向とする機能を有する。
【0023】
請求項9に記載の発明によれば、梁などの構造体コンクリートの側方にコンクリートを増打ちする際に、水平方向に並べるべき軸補強筋の適切な本数を迅速に知ることができ、当該増打ち施工の経済性、施工性が向上する。
【0024】
請求項10に記載の発明は、例えば図4図5に示すように、請求項3から請求項6のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システムにおいて、
前記コンピューター2(2及び3)は、
前記軸補強筋221を前記第一方向に並べるべき本数nを算出する対象のコンクリート部220を、構造体コンクリート210の側方に施工される増打ちコンクリート部とし、前記第一方向を水平方向とし、
前記最長限界間隔xを満たす最少の本数を算出するにあたり、前記増打ちコンクリート部の前記側方の端に前記軸補強筋を配筋する条件とし、当該側方の端の軸補強筋の中心と前記増打ちコンクリート部に接する前記構造体コンクリートの側面211上を起点にする(式(7)、S5)機能を有する。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、片側に生じる外側端部に軸補強筋を配筋することを可能としつつも、最長限界間隔xを満たすことができる適切な配筋本数を算出することができる。
【0026】
請求項11に記載の発明は、例えば図1~7,表I,表II,式(1)~(4)又は式(5)~(8)等に示すように、鉄筋コンクリートに配筋される軸補強筋の筋量を算出する筋量算出システムとしてコンピューターを機能させるための筋量算出プログラムであって、
コンピューター2(2及び3)に、前記軸補強筋121,221が配筋されるコンクリート部120,220の前記軸補強筋に垂直な断面における前記軸補強筋を並べる第一方向の寸法(図2,3ではB、図4図5ではa)と、同断面における前記第一方向に垂直な第二方向の寸法(図2,3ではa、図4図5ではH)と、前記軸補強筋の径Dと、同断面に求められる配筋密度条件p,xとに応じて、前記軸補強筋を前記第一方向に並べるべき本数nを算出する(S7,S8)機能を実現させる。
【0027】
請求項11に記載の発明によれば、軸補強筋を前記第一方向に並べるべき本数を、軸補強筋を並べる第一方向の寸法と、同断面における前記第一方向に垂直な第二方向の寸法と、軸補強筋の径とに応じて算出するので、鉄筋コンクリートの施工部の空間条件に適合した本数を算出することができる。
また、軸補強筋を第一方向に並べるべき本数を、配筋密度条件に応じて算出するので、一定の支障防止条件に適合した本数を算出することができる。
したがって、鉄筋コンクリートの施工部の空間条件、支障防止条件又は強度条件を満たしつつ、軸補強筋の径に応じた当該軸補強筋を並べるべき本数をコンピューターにより迅速に算出することができる。
【0028】
請求項12に記載の発明は、例えば図6、式(2)又は式(6)に示すように、請求項11に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出プログラムにおいて、
前記コンピューター2(2及び3)に、配筋密度条件の一つを、前記断面の面積に対する前記軸補強筋の総断面積で示される鉄筋比であって、最小限界鉄筋比pとし、
前記最小限界鉄筋比を満たす最少の本数nを算出する(S4)機能を実現させる。
【0029】
請求項12に記載の発明によれば、コンピューター2(2及び3)は、配筋密度条件の一つを最小限界鉄筋比とする、すなわち、軸補強筋により最小限界鉄筋比を確保することを条件とし、軸補強筋を第一方向に並べるべき本数nを算出する。その際、最小限界鉄筋比を満たす最少の本数を基準として算出するので、一定の支障防止条件に適合しつつも施工性、経済性が損なわれない本数nを算出することができる。
【0030】
請求項13に記載の発明は、例えば図6、式(3)又は式(7)に示すように、請求項11に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出プログラムにおいて、
前記コンピューター2(2及び3)に、前記配筋密度条件の一つを、前記軸補強筋の並べられる間隔であって、最長限界間隔xとし、
前記最長限界間隔を満たす最少の本数nを算出する(S5)機能を実現させる。
【0031】
請求項13に記載の発明によれば、コンピューター2(2及び3)は、配筋密度条件の一つを最長限界間隔とする、すなわち、軸補強筋の間隔を長くても最長限界間隔までとし、軸補強筋を第一方向に並べるべき本数nを算出する。その際、最長限界間隔を満たす最少の本数を基準として算出するので、一定の支障防止条件に適合しつつも、施工性、経済性が損なわれない本数nを算出することができる。
【0032】
請求項14に記載の発明は、例えば図6、式(2)(3)又は式(6)(7)に示すように、請求項11に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出プログラムにおいて、
前記コンピューター2(2及び3)に、前記配筋密度条件の一つを、前記断面の面積に対する前記軸補強筋の総断面積で示される鉄筋比であって、最小限界鉄筋比pとし、
前記配筋密度条件の他の一つを、前記軸補強筋の並べられる間隔であって、最長限界間隔xとし、
前記最小限界鉄筋比を満たす最少の本数nと、前記最長限界間隔を満たす最少の本数nを算出する(S4,S5)機能を実現させる。
【0033】
請求項14に記載の発明によれば、コンピューター2(2及び3)は、最小限界鉄筋比及び最長限界間隔を配筋密度条件とし、軸補強筋を第一方向に並べるべき本数nを算出する。その際、最小限界鉄筋比を満たす最少の本数及び最長限界間隔を満たす最少の本数を基準として算出するので、より高次な支障防止条件に適合しつつも、施工性、経済性が損なわれない本数nを算出することができる。
【0034】
請求項15に記載の発明は、例えば図6、式(4)又は式(8)等に示すように、請求項14に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出プログラムにおいて、
前記コンピューター2(2及び3)に、前記最小限界鉄筋比pを満たす最少の本数nと、前記最長限界間隔xを満たす最少の本数nのうちいずれか多い方を、前記軸補強筋を前記第一方向に並べるべき本数nとして算出する(S6-S8)機能を実現させる。
【0035】
請求項15に記載の発明によれば、コンピューター2(2及び3)は、最小限界鉄筋比満たす最少の本数と、最長限界間隔を満たす最少の本数のうちいずれか多い方を、軸補強筋を第一方向に並べるべき本数として算出するので、配筋密度条件を最小限界鉄筋比及び最長限界間隔の2つに限定して計算負荷を抑えることができ、2つの支障防止条件に適合しつつも、施工性、経済性が損なわれない本数nを算出することができる。
【0036】
請求項16に記載の発明は、例えば図3図5、式(3)又は式(7)に示すように、請求項13から請求項15のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出プログラムにおいて、
前記コンピューター2(2及び3)に、前記最長限界間隔xを満たす最少の本数を算出するにあたり、前記軸補強筋121,221の周囲に前記軸補強筋と垂直な方向に配筋されるあばら補強筋122,222より内側を前記軸補強筋の配筋範囲とする(S5)機能を実現させる。
【0037】
請求項16に記載の発明によれば、最長限界間隔を満たす最少の本数を算出するにあたっての軸補強筋の配筋範囲を適切な範囲に限定するので、計算上の配筋範囲が現実より大きくなって配筋本数が不必要に増加することを回避することができ、したがって、施工性、経済性が損なわれない本数nを算出することができる。
【0038】
請求項17に記載の発明は、例えば図2図3に示すように、請求項11から請求項16のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出プログラムにおいて、
前記コンピューター2(2及び3)に、前記軸補強筋121,221を前記第一方向に並べるべき本数nを算出する対象のコンクリート部120を、構造体コンクリート(110)の上端又は下端に施工される増打ちコンクリート部とし、前記第一方向を水平方向とする機能を実現させる。
【0039】
請求項17に記載の発明によれば、梁などの構造体コンクリートの上端又は下端にコンクリートを増打ちする際に、水平方向に並べるべき軸補強筋の適切な本数を迅速に知ることができ、当該増打ち施工の経済性、施工性が向上する。
【0040】
請求項18に記載の発明は、例えば図2図3に示すように、請求項13から請求項16のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出プログラムにおいて、
前記コンピューター2(2及び3)に、
前記軸補強筋121を前記第一方向に並べるべき本数を算出する対象のコンクリート部120を、構造体コンクリート(110)の上端又は下端に施工される増打ちコンクリート部とし、前記第一方向を水平方向とし、
前記最長限界間隔xを満たす最少の本数nを算出するにあたり、前記増打ちコンクリート部の水平方向の両端に前記軸補強筋を配筋する条件とし、当該両端の軸補強筋の中心を起点にする(式(3)、S5)機能を実現させる。
【0041】
請求項18に記載の発明によれば、両側に生じる外側端部に軸補強筋を配筋することを可能としつつも、最長限界間隔xを満たすことができる適切な配筋本数を算出することができる。
【0042】
請求項19に記載の発明は、例えば図4図5に示すように、請求項11から請求項16のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出プログラムにおいて、
前記コンピューター2(2及び3)に、前記軸補強筋221を前記第一方向に並べるべき本数nを算出する対象のコンクリート部220を、構造体コンクリート(210)の側方に施工される増打ちコンクリート部とし、前記第一方向を水平方向とする機能を実現させる。
【0043】
請求項19に記載の発明によれば、梁などの構造体コンクリートの側方にコンクリートを増打ちする際に、水平方向に並べるべき軸補強筋の適切な本数を迅速に知ることができ、当該増打ち施工の経済性、施工性が向上する。
【0044】
請求項20に記載の発明は、例えば図4図5に示すように、請求項13から請求項16のうちいずれか一項に記載の鉄筋コンクリートの補強筋量算出プログラムにおいて、
前記コンピューター2(2及び3)に、
前記軸補強筋221を前記第一方向に並べるべき本数nを算出する対象のコンクリート部220を、構造体コンクリート210の側方に施工される増打ちコンクリート部とし、前記第一方向を水平方向とし、
前記最長限界間隔xを満たす最少の本数を算出するにあたり、前記増打ちコンクリート部の前記側方の端に前記軸補強筋を配筋する条件とし、当該側方の端の軸補強筋の中心と前記増打ちコンクリート部に接する前記構造体コンクリートの側面211上を起点にする(式(7)、S5)機能を実現させる。
【0045】
請求項20に記載の発明によれば、片側に生じる外側端部に軸補強筋を配筋することを可能としつつも、最長限界間隔xを満たすことができる適切な配筋本数を算出することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、鉄筋コンクリートの施工部の空間条件、支障防止条件又は強度条件を満たしつつ、軸補強筋の径に応じた当該軸補強筋を並べるべき本数をコンピューターにより迅速に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の一実施形態に係る鉄筋コンクリートの補強筋量算出システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明を適用する対象の一例に係る梁及びその上端に施工される増打ちコンクリート部の断面図である。
図3図2の増打ちコンクリート部の拡大断面図である。
図4】本発明を適用する対象の一例に係る梁及びその側方に施工される増打ちコンクリート部の断面図である。
図5図4の増打ちコンクリート部の拡大断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る鉄筋コンクリートの補強筋量算出システムが実行する処理内容を示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態に係る鉄筋コンクリートの補強筋量算出システムが表示出力する計算結果の例を示す表示画面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0049】
〔システムの概要〕
本実施形態の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システム1は、パーソナル・コンピューター(以下「PC」という。)2単独により又はネットワークサーバ3との連携により構成される。
PC2は、CPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23、記憶部24、入力部25、表示部26、通信部27等を備える。
PC2としては、ノート型、タブレット型、スマートフォンその他のいずれの形態のものでもよく、ハードウエア形態は問わない。
【0050】
CPU21は、ROM22から鉄筋コンクリートの補強筋量算出プログラムを読み出してRAM23に展開し、入力部25からの入力に応じて、鉄筋コンクリートの補強筋量算出プログラムに従った演算処理を実行する。
記憶部24は、例えば、不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブ等により構成される。記憶部24には各種データが記憶される。
入力部25は、キーボード、マウス又はタッチセンサー等の各種操作入力装置に相当する。
表示部26は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、ELディスプレイ等の映像表示装置が相当する。
通信部27は、例えばLAN(Local Area Network)カード等の通信制御カードで構成され、LAN、WAN(Wide Area Network)、インターネット等の通信ネットワーク4に接続された外部の装置(例えばネットワークサーバ3、その他のコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。
鉄筋コンクリートの補強筋量算出システムを稼働させるために必要なデータベースは、PC2単独のシステムの場合は記憶部24に構築され、ネットワークサーバ3との連携によるシステムの場合はネットワークサーバ3に構築される。後者の場合でも、データによっては記憶部24に記憶される。また、記憶部24はネットワークサーバ3からダウンロードしたデータの記憶に使用される。
また、ネットワークサーバ3との連携によるシステムの場合は、演算処理をCPU21に代え、ネットワークサーバ3が行うように適宜に実施し得る。
【0051】
〔補強筋量の計算1:梁の上端又は下端に増打ちする場合〕
ここで、構造体コンクリートとしての梁の上端又は下端に増打ちコンクリート部を施工する場合を例として補強筋量の計算方法につき説明する。
本実施形態の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システム1(CPU21)は、以下に説明する計算方法に従う。
図2及び図3に構造体コンクリートとしての梁110の上端に増打ちコンクリート部120を施工する場合を図示する。なお、梁110の下端に増打ちコンクリート部を施工する場合も計算方法は同じである。
増打ちコンクリート部120は、軸補強筋121,121・・・が配筋される計算対象のコンクリート部である。図2及び図3に示す断面は、軸補強筋121に垂直な断面に相当する。梁幅Bの梁110の上端に、同幅Bで厚さaの増打ちコンクリート部120を施工する。水平方向である幅Bの方向が軸補強筋121を並べる第一方向である。したがって、幅Bは増打ちコンクリート部120の第一方向の寸法である。同断面における第一方向に垂直な第二方向は、厚さaの方向である。したがって、厚さaは増打ちコンクリート部120の第二方向の寸法である。軸補強筋121の周囲に軸補強筋121と垂直な方向にあばら補強筋122が配筋される。CPU21は、以下に説明するように、幅Bと、厚さaと、軸補強筋121の径Dと、配筋密度条件とに応じて、軸補強筋121を第一方向に並べるべき本数nを算出する。
各パラメーターの定義は、以下の通りである。
a:上端又は下端の増打コンクリート部120の厚さ
B:梁幅(=第一方向の寸法)
b:増打コンクリート部120の梁側面のかぶり厚さ
A:軸補強筋121の断面積(1本あたり)(呼び径dで決まる)
D:軸補強筋121の最外径(呼び径dで決まる)
Da:あばら補強筋122の最外径(呼び径daで決まる)
n:軸補強筋121の第一方向の本数
p:増打ちコンクリート部120の断面積に対する軸補強筋121の総断面積で示される鉄筋比であって、最小限界鉄筋比(配筋密度条件)
x:軸補強筋の第一方向に並べられる間隔であって、最長限界間隔(配筋密度条件)
【0052】
本実施形態では、配筋密度条件として、最小限界鉄筋比p及び最長限界間隔xを適用する。すなわち、最小限界鉄筋比p以上の面積的配筋密度とし、最長限界間隔x以下の配筋間隔密度とすることを配筋密度条件とする。これにより、要求される支障防止条件を満たすようにする。
【0053】
最小限界鉄筋比pは、次式(1)で計算される。
【0054】
【数1】
【0055】
最小限界鉄筋比pを満たす最少の本数nは、式(1)をnについて変形し、これに等しい自然数又は割り切れない場合は端数を繰り上げた自然数となり、式で表すと次式(2)の通りである。
【0056】
【数2】
【0057】
また、最長限界間隔xを満たす最少の本数nは、次式(3)の通りとなる。
【0058】
【数3】
【0059】
式(3)の第一項のカッコ内において、幅Bから2b及び2Daを減算するのは、あばら補強筋122より内側を軸補強筋121の配筋範囲とするからである。さらにDを減算するのは、両端に軸補強筋121,121を配筋する条件とし、当該両端の軸補強筋121,121の中心を起点にするからである。すなわち、当該起点間に最長限界間隔xがいくつ入るか計算する。このとき、Dに代えて、あばら補強筋122の折曲げ内法直径を減算することとしてもよい。この場合でも、両端の軸補強筋121,121の中心を起点にした計算とすることができる。ただし、最長限界間隔xの計算としては、本実施形態のように軸補強筋121の最外径Dを減算したほうが安全側となる。
また、式(3)の第二項で1を加算しているのは、図3に示すように増打ちコンクリート部120の水平方向の両端に軸補強筋121,121を配筋する条件とするからであり、また、実際に配筋した際に最長限界間隔xより長い間隔の部分が生じないようにするためである。
【0060】
コンピューター(CPU21)は以上の計算を行い、最小限界鉄筋比pを満たす最少の本数nと、最長限界間隔xを満たす最少の本数nのうちいずれか多い方を、軸補強筋121を第一方向に並べるべき本数nとして算出する。式で表すと次式(4)の通りである。
【0061】
【数4】
【0062】
表Iは、以上の計算方法に従った計算例をまとめたものである。
梁幅Bは、250~500〔mm〕の6種類につき計算した。
増打コンクリート部の厚さaは、100~500〔mm〕の9種類につき計算した。
軸補強筋121の最外径Dは、18,21,25〔mm〕の3種類につき計算した。
梁側面のかぶり厚さbを40〔mm〕とし、あばら補強筋122の最外径Daを14〔mm〕((呼び径da=D13)とし、最小限界鉄筋比pを0.4%とし、最長限界間隔xを200〔mm〕とした。
表I中の欄125に、軸補強筋121を第一方向に並べるべき本数nが示される。例えば、B=250、D=18、a=350に対してはn=2となっており、2本並べればよい。これに対してaのみを400に変更するとn=3、Bのみを450に変更するとn=4と、並べるべき本数が変化し、配筋密度条件を満たすようにする。
【0063】
【表1】
【0064】
〔補強筋量の計算2:梁の側方に増打ちする場合〕
次に、構造体コンクリートとしての梁の側方に増打ちコンクリート部を施工する場合を例として補強筋量の計算方法につき説明する。
本実施形態の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システム1(CPU21)は、以下に説明する計算方法に従う。
図4及び図5に構造体コンクリートとしての梁210の側方に増打ちコンクリート部220を施工する場合を図示する。
増打ちコンクリート部220は、軸補強筋221,221・・・が配筋される計算対象のコンクリート部である。図4及び図5に示す断面は、軸補強筋221に垂直な断面に相当する。梁せいHの梁210の側方に、同梁せいHで厚さaの増打ちコンクリート部220を施工する。水平方向である厚さaの方向が軸補強筋221を並べる第一方向である。したがって、厚さaは増打ちコンクリート部220の第一方向の寸法である。同断面における第一方向に垂直な第二方向は、梁せいHの方向である。したがって、梁せいHは増打ちコンクリート部220の第二方向の寸法である。軸補強筋221の周囲に軸補強筋221と垂直な方向にあばら補強筋222が配筋される。軸補強筋221は増打ちコンクリート部220の上端及び下端のそれぞれにおいて水平方向に並べられる。その中間には巾止メ筋223が配筋される。CPU21は、以下に説明するように、梁せいHと、厚さaと、軸補強筋221の径Dと、配筋密度条件とに応じて、軸補強筋221を第一方向に並べるべき本数nを算出する。
各パラメーターの定義は、以下の通りである。
a:側方の増打コンクリート部220の厚さ(=第一方向の寸法)
B:梁せい
b:増打コンクリート部220の梁側面のかぶり厚さ
A:軸補強筋221の断面積(1本あたり)(呼び径dで決まる)
D:軸補強筋221の最外径(呼び径dで決まる)
Da:あばら補強筋222の最外径(呼び径daで決まる)
n:軸補強筋221の第一方向の本数 ※本例では軸補強筋221は上端のものと下端のものとを別々に扱う。
p:増打ちコンクリート部220の断面積に対する軸補強筋221の総断面積で示される鉄筋比であって、最小限界鉄筋比(配筋密度条件) ※本例では軸補強筋221は上端のものと下端のものとを別々に扱う。
x:軸補強筋の第一方向に並べられる間隔であって、最長限界間隔(配筋密度条件)
【0065】
本実施形態では、配筋密度条件として、最小限界鉄筋比p及び最長限界間隔xを適用する。すなわち、最小限界鉄筋比p以上の面積的配筋密度とし、最長限界間隔x以下の配筋間隔密度とすることを配筋密度条件とする。これにより、要求される支障防止条件を満たすようにする。
【0066】
最小限界鉄筋比pは、次式(5)で計算される。
【0067】
【数5】
【0068】
最小限界鉄筋比pを満たす最少の本数nは、式(5)をnについて変形し、これに等しい自然数又は割り切れない場合は端数を繰り上げた自然数となり、式で表すと次式(6)の通りである。
【0069】
【数6】
【0070】
また、最長限界間隔xを満たす最少の本数nは、次式(7)の通りとなる。
【0071】
【数7】
【0072】
式(7)の第一項のカッコ内において、厚さaからb及びDaを減算するのは、あばら補強筋222より内側を軸補強筋221の配筋範囲とするからである。さらにD/2を減算するのは、増打ちする方向の側方の端に軸補強筋221を配筋する条件とし、当該側方の端の軸補強筋221の中心と増打ちコンクリート部220に接する梁210の側面211上を起点にするからである。すなわち、当該起点間に最長限界間隔xがいくつ入るか計算する。実際に配筋する際も、梁210の側面211上を一方の起点として、最長限界間隔xより長い間隔の部分が生じないようにする。すなわち、梁210内に既に鉄筋があるので、側面211とこれに一番近い軸補強筋までを間隔として扱う。このとき、D/2に代えて、あばら補強筋222の折曲げ内法半径を減算することとしてもよい。この場合でも、側方の端の軸補強筋221の中心と増打ちコンクリート部220に接する梁210の側面211上を起点にした計算とすることもできる。しかし、最長限界間隔xの計算としては、本実施形態のように軸補強筋221の最外径の半分であるD/2を減算したほうが安全側となる。
【0073】
コンピューター(CPU21)は以上の計算を行い、最小限界鉄筋比pを満たす最少の本数nと、最長限界間隔xを満たす最少の本数nのうちいずれか多い方を、軸補強筋221を第一方向に並べるべき本数nとして算出する。式で表すと次式(8)の通りである。
【0074】
【数8】
【0075】
表IIは、以上の計算方法に従った計算例をまとめたものである。
梁せいHは、450~700〔mm〕の6種類につき計算した。
増打コンクリート部の厚さaは、100~500〔mm〕の9種類につき計算した。
軸補強筋221の最外径Dは、18,21,25〔mm〕の3種類につき計算した。
梁側面のかぶり厚さbを40〔mm〕とし、あばら補強筋222の最外径Daを14〔mm〕((呼び径da=D13)とし、最小限界鉄筋比pを0.4%とし、最長限界間隔xを200〔mm〕とした。
表II中の欄225に、軸補強筋221を第一方向に並べるべき本数nが示される。例えば、H=450、D=18、a=300に対してはn=3となっており、3本並べればよい。これに対してaのみを350に変更するとn=4、Hのみを700に変更するとn=5と、並べるべき本数が変化し、配筋密度条件を満たすようにする。
【0076】
【表2】
【0077】
〔処理動作例と結果表示例〕
次に、本実施形態の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システム1の処理動作例と計算出力結果の表示例を開示する。図6のフローチャートを参照する。
ユーザーから入力部25を介してPC2に梁幅B又は梁せいHが入力される(ステップS1)。ユーザーから入力部25を介してPC2に厚さaが入力される(ステップS2)。ステップ1とステップS2は順不同である。
【0078】
次に、各種パラメーター設定を行う(ステップS3)。ここでのパラメーターには、軸補強筋の径D、梁側面のかぶり厚さb、あばら補強筋の径Da、最小限界鉄筋比p、最長限界間隔xが該当する。規定値のままとする場合には次ステップにすすむ。ユーザーが変更を望む場合には、CPU21は、設定変更メニューを提示し、数値入力させるか又は候補を選択させる。
次にCPU21は最小限界鉄筋比pを満たす最少の本数nを計算し(ステップS4)、最長限界間隔xを満たす最少の本数nを計算する(ステップS5)。
次ステップS6にて、CPU21はnよりnが大きい場合nを表示出力し(ステップS7)、その他の場合にはnを表示出力する(ステップS8)。例えば、図7に示すように計算出力結果が表示部26に表示される。計算出力結果には、各種パラメーターの設定値を併記することが好ましい。
【0079】
なお、入力欄や計算出力結果の表示形式は、表I、表IIに示したような表形式でもよいし、その他どのような形式であってもよい。図7には、一つの計算条件に対応した1つの計算結果nが表示される例を示したが、同時に複数の計算条件を処理し、各計算条件に対応した計算結果nを表示出力できるようにしてもよい。
【0080】
〔まとめ、その他〕
以上説明した本実施形態の鉄筋コンクリートの補強筋量算出システムによれば、鉄筋コンクリートの施工部の空間条件、支障防止条件を満たしつつ、軸補強筋の径に応じた当該軸補強筋を並べるべき本数をコンピューターにより迅速に算出することができ、鉄筋コンクリートの設計、施工を効率化することができる。
【0081】
以上の実施形態では、配筋密度条件に、最小限界鉄筋比及び最長限界間隔の双方が含まれたが、いずれか一方が含まれ他方が含まれないようにしてもよい。最小限界鉄筋比及び最長限界間隔以外の第三の配筋密度条件がさらに含まれていてもよい。上記実施形態では支障防止条件を満たすための配筋密度条件につき説明したが、構造耐力上の強度条件を満たすための配筋密度条件を適用してもよい。
以上の実施形態では、梁の上端、下端又は側方に増打ちされるコンクリート部を対象としたが、基礎の上面、柱の側面のほか、構造物のいずれの部位を構成するコンクリート部をも対象としてもよい。
【0082】
以上の実施形態にあっては、PC2が単独で機能することにより完結するように説明したが、PC2とネットワークサーバ3とが連携することで一部の処理をネットワークサーバ3が行うようにしてもよい。例えば、PC2は入力と結果表示を主に受け持つようにしてもよい。
また、本数nの算出は、入力データ(S1,S2)及び設定パラメータ(S3)に基づき計算することで行ってよいし、入力データ(S1,S2)及び設定パラメータ(S3)に基づきデータベース内のすでに計算されている結果を検索して読み出すことで行ってもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 鉄筋コンクリートの補強筋量算出システム
2 パーソナル・コンピューター
3 ネットワークサーバ
4 通信ネットワーク
21 CPU
110 梁
120 増打ちコンクリート部
121 軸補強筋
122 あばら補強筋
210 梁
220 増打ちコンクリート部
221 軸補強筋
222 あばら補強筋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7