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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132357
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】電力変換装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037620
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【氏名又は名称】柿本 恭成
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 公喜
(72)【発明者】
【氏名】木島 正幸
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730BB27
5H730BB61
5H730BB84
5H730DD04
5H730EE04
5H730EE08
5H730EE13
5H730EE58
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD31
5H730FG12
(57)【要約】
【課題】整流回路をそれぞれ有する複数の電力変換部(例えば、DC/DCコンバータ)の出力側が並列接続された電力変換装置において、各整流回路を、同期整流駆動とダイオード整流駆動とに切り替えた場合、その切り替わりの際に、出力電圧がふらつくことを防止する。
【解決手段】電力変換装置は、複数のDC/DCコンバータ30,50を備え、それらの出力側が並列接続されている。各DC/DCコンバータ30,50の各制御回路44,64は、計測された整流回路35,55の入力電流の平均電流値を指令値として、その各整流回路35,55に対する整流駆動モードを、同期整流駆動又はダイオード整流駆動に切り替えて、各DC/DCコンバータ30,50の出力電流を等しくするための出力バランス制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側スイッチ素子及び下側スイッチ素子を有し、交流電力を直流電力に整流する整流回路と、
前記上側スイッチ素子及び前記下側スイッチ素子をオン/オフ制御する制御回路と、
をそれぞれ備える複数の電力変換部の出力側が並列接続された電力変換装置であって、
前記各制御回路は、
計測された前記各整流回路の入力電流の平均電流値を指令値として、
前記各整流回路に対する整流駆動モードを、同期整流駆動又はダイオード整流駆動に切り替えて、前記各電力変換部の出力電流を等しくするための出力バランス制御を行う、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記同期整流駆動では、前記各整流回路の入力電流に同期して前記上側スイッチ素子と前記下側スイッチ素子とを所定のデッドタイムをおいて交互にオン/オフ駆動し、
前記ダイオード整流駆動では、前記上側スイッチ素子及び前記下側スイッチ素子をオフ状態にする、
ことを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
請求項2記載の電力変換装置において、
前記各整流回路の入力電流を計測する電流センサと、
計測された前記入力電流の平均電流値を求める平均値電流回路と、
を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
前記各電力変換部は、
前記各整流回路の入力側に変圧器の2次側がそれぞれ接続された絶縁型DC/DCコンバータである、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記各電力変換部は、
前記各整流回路の入力側に変圧器の2次側がそれぞれ接続され、且つ、前記各整流回路の出力側にDC/AC変換回路がそれぞれ接続された絶縁型DC/ACインバータである、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の電力変換装置。
【請求項6】
上側スイッチ素子及び下側スイッチ素子を有し、交流電力を直流電力に整流する整流回路と、
前記上側スイッチ素子及び前記下側スイッチ素子をオン/オフ制御する制御回路と、
をそれぞれ備える複数の電力変換部の出力側が並列接続された電力変換装置の制御方法であって、
前記各制御回路は、
計測された前記各整流回路の入力電流の平均電流値を指令値として、
前記各整流回路に対する整流駆動モードを、同期整流駆動又はダイオード整流駆動に切り替えて、前記各電力変換部の出力電流を等しくするための出力バランス制御を行う、
ことを特徴とする電力変換装置の制御方法。
【請求項7】
前記同期整流駆動では、前記各整流回路の入力電流に同期して前記上側スイッチ素子と前記下側スイッチ素子とを所定のデッドタイムをおいて交互にオン/オフ駆動し、
前記ダイオード整流駆動では、前記上側スイッチ素子及び前記下側スイッチ素子をオフ状態にする、
ことを特徴とする請求項6記載の電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC(直流)/DCコンバータ、DC/AC(交流)インバータ等の複数の電力変換部の出力側が、並列に接続された電力変換装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、並列に接続され複数の電力変換部(例えば、コンバータ又はインバータ等)の並列運転を行う電力変換装置は、例えば、特許文献1-3等に記載されている。
【0003】
図6は、特許文献1に記載された従来の電力変換装置の並列運転を示す概略の構成ブロック図である。
この電力変換装置は、DC入力電圧Vdiが供給される正負一対の入力端子1-1,1-2を有し、この入力端子1-1,1-2に、複数(例えば、2つ)の電力変換部(例えば、絶縁型DC/DCコンバータ)10,20が並列に接続されている。各DC/DCコンバータ10,20は、DC入力電圧Vdiを他のレベルのDC出力電圧Vdoに変換するための回路であり、これらの出力側が、DC出力電圧Vdoを送出するための正負一対の出力端子15-1,15-2に並列に接続されている。各DC/DCコンバータ10,20は、DC入力電圧VdiをスイッチングしてAC電圧に変換するスイッチング回路11,21と、変換されたAC電圧の電圧変換を行う変圧器(以下「トランス」)12,22と、このトランス12,22の2次側出力電圧をDC電圧に整流する整流回路13,23と、整流されたDC電圧を平滑する平滑回路14,24と、により構成されている。
【0004】
各スイッチング回路11,21は、DC/AC変換するための複数のスイッチング素子と、変換されたAC電圧に共振するLC直列共振回路と、を有している。各整流回路13,23は、複数のスイッチ素子がブリッジ接続された同期整流回路により構成されている。各スイッチ素子には、ボディダイオード又は外付けのダイオードが逆並列状態にそれぞれ接続されている。各スイッチ素子は、各トランス12,22の2次側出力電流に同期してオン/オフ動作し、そのトランス12,22の2次側出力電圧をDC電圧に整流する。
【0005】
これに対して、特許文献2に記載された従来の電力変換装置では、図6中の各スイッチング回路11,21が、ブリッジ接続された複数のスイッチング素子により構成され、DC入力電圧VdiをスイッチングしてAC電圧に変換し、各トランス12,22の1次側へ供給する構成になっている。図6中の2つの整流回路13,23のうち、上側の整流回路13は、複数のスイッチ素子を有し、その各スイッチ素子には、フリーホイールダイオードが逆並列状態にそれぞれ接続されている。上側の整流回路13では、複数のスイッチ素子がトランス12の2次側出力電流に同期してオン/オフ動作する同期整流動作と、複数のスイッチ素子がオフ状態になってフリーホイールダイオードによるダイオード整流動作と、が切り替え可能な構成になっている。下側の整流回路23は、複数の整流ダイオードを有し、常時、ダイオード整流動作を行う構成になっている。このような構成により、電力変換効率及び信頼性の向上を図っている。
【0006】
又、特許文献3には、図示しない並列接続された複数のインバータが共通の負荷を駆動する並列多重インバータシステムである電力変換装置が記載されている。この特許文献3では、各インバータの出力電流が揃うように制御して、あるインバータの出力電流が他のインバータの出力端子に流れ込む横流の発生を防止する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-164365号公報
【特許文献2】特開2015-149850号公報
【特許文献3】特開2017-139938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載された図6の電力変換装置において、各DC/DCコンバータ10,20の出力電流を等しくするための出力バランス制御を行って横流の発生を防止すると共に、回路構成の簡単化及び電力変換効率の向上等を図るために、下側の整流回路23を、上側の整流回路13と同様に、同期整流動作とダイオード整流動作とを切り替え可能な同期整流回路にて構成することが考えられる(この電力変換装置は、未公知であり、以下「提案装置」という。)。
【0009】
例えば、提案装置において、電力変換効率を向上するために、各DC/DCコンバータ10,20の出力電流が定格の20%を超えれば、同期整流駆動、定格の15%以下でダイオード整流駆動に切り替え、チャタリングを防止するためにヒステリシスを設けることが考えられる。2つのDC/DCコンバータ10,20の出力電流は、同一の出力電流値になるように、フィードバック制御によりバランス制御を行うことが望ましい。
【0010】
しかしながら、前記のような提案装置では、2つのDC/DCコンバータ10,20間の応答時間に差が生じて、過渡動作において電流の差異が発生し、各DC/DCコンバータ10,20の出力電流が異なる。この異なる電流によって、同期整流とダイオード整流の切り替わりタイミングがずれ、出力電圧がふらつく現象が発生するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電力変換装置は、上側スイッチ素子及び下側スイッチ素子を有し、交流電力を直流電力に整流する整流回路と、前記上側スイッチ素子及び前記下側スイッチ素子をオン/オフ制御する制御回路と、をそれぞれ備える複数の電力変換部の出力側が並列接続された電力変換装置であって、前記各制御回路は、計測された前記各整流回路の入力電流の平均電流値を指令値として、前記各整流回路に対する整流駆動モードを、同期整流駆動又はダイオード整流駆動に切り替えて、前記各電力変換部の出力電流を等しくするための出力バランス制御を行う、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の電力変換装置の制御方法は、上側スイッチ素子及び下側スイッチ素子を有し、交流電力を直流電力に整流する整流回路と、前記上側スイッチ素子及び前記下側スイッチ素子をオン/オフ制御する制御回路と、をそれぞれ備える複数の電力変換部の出力側が並列接続された電力変換装置の制御方法であって、前記各制御回路は、計測された前記各整流回路の入力電流の平均電流値を指令値として、前記各整流回路に対する整流駆動モードを、同期整流駆動又はダイオード整流駆動に切り替えて、前記各電力変換部の出力電流を等しくするための出力バランス制御を行う、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電力変換装置及びその制御方法によれば、各整流回路の入力電流の平均電流値が、各電力変換部で同じ値になるので、この値に従って、各整流回路に対する整流駆動モードを、同期整流駆動又はダイオード整流駆動に切り替えを行っている。そのため、同じタイミングで整流駆動モードが切り替わるので、各電力変換部のスイッチ素子による電圧ドロップが一致し、出力バランス制御のばたつきがなくなり、出力電圧精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1を示す電力変換装置の概略の構成図
図2図1中の平均値電流回路43,63を示す概略の構成図
図3図1の第1DC/DCコンバータ30側の制御方法を示すフローチャート
図4】本発明の実施例2を示す電力変換装置の概略の構成図
図5】本発明の実施例3を示す電力変換装置の概略の構成図
図6】従来の電力変換装置の並列運転を示す概略の構成ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例0016】
(実施例1の構成)
図1は、本発明の実施例1を示す電力変換装置の概略の構成図である。
この電力変換装置は、DC入力電圧Vdiを他のレベルのDC出力電圧Vdoに変換するための複数(例えば、2つ)の電力変換部(例えば、絶縁型の第1、第2DC/DCコンバータ)30,50を備え、その第1、第2DC/DCコンバータ30,50の出力側が並列に接続されている。
【0017】
第1DC/DCコンバータ30は、DC入力電圧Vdiが供給される正負一対の入力端子31-1,31-2を有し、その入力端子31-1,31-2に、スイッチング回路32が接続されている。スイッチング回路32は、DC入力電圧Vdiをスイッチングして例えば3相AC電圧に変換する回路であり、6つのMOS型電界効果トランジスタ(以下「MOSFET」という。)等のスイッチング素子32a,32b,32c,32d,32e,32fを有し、それらがブリッジ接続されている。各スイッチング素子32a~32fには、ダイオード32gが逆並列状態にそれぞれ接続されている。各ダイオード32gは、MOSFET等のボディダイオード、或いは、外付けダイオード等により構成されている。各上側スイッチング素子32a,32c,32eと各下側スイッチング素子32b,32d,32fとの接続点には、3相の共振回路(例えば、LC直列共振回路)33が接続されている。
【0018】
LC直列共振回路33は、変換された3相AC電圧に共振する回路であり、3つのコンデンサ33a,33b,33cと3つのリアクトル33d,33e,33fとを有し、それが直列に接続されている。LC直列共振回路33の出力側には、3相トランス34が接続されている。3相トランス34は、LC直列共振回路33のAC出力電圧を他のレベルのAC電圧に変換する回路であり、3つのトランス34a,34b,34cを有し、それらが直列に接続されている。3つのトランス34a~34cの出力側には、整流回路35が接続されている。
【0019】
整流回路35は、トランス34a~34cの3相AC出力電圧を整流する回路であり、例えば、6つのMOSFET等のスイッチ素子35a,35b,35c,35d,35e,35fを有し、それらがブリッジ接続されている。各スイッチ素子35a~35fには、ダイオード35gが逆並列状態にそれぞれ接続されている。各ダイオード35gは、MOSFET等のボディダイオード、或いは、外付けダイオード等により構成されている。整流回路35の出力側には、平滑回路36が接続されている。平滑回路36は、例えば、コンデンサ36a及びリアクトル36bにより構成され、その出力側に、出力コンデンサ37及び逆流防止用のスイッチ素子38が接続されている。スイッチ素子38は、MOSFET等で構成されている。これらの出力コンデンサ37及びスイッチ素子38の出力側には、DC出力電圧Vdoを送出するための正負一対の出力端子39-1,39-2が接続されている。
【0020】
トランス34の出力側には、このトランス34の2次側出力電流(つまり整流回路35の入力電流)を計測するための変流器(以下「CT」という。)等の電流センサ41が接続されている。平滑回路36の出力側には、その出力電圧を計測するための計器用変圧器(以下「VT」という。)等の電圧センサ42が接続されている。電流センサ41の出力側には、平均値電流回路43及び制御回路44が接続され、更に、その制御回路44に、電圧センサ42の出力側が接続されている。平均値電流回路43は、電流センサ41で計測された整流回路35の入力電流の平均電流値S43を求める回路であり、この出力側が、制御回路44に接続されている。
【0021】
制御回路44は、電流センサ41で計測された電流値と電圧センサ42で計測された電圧値とに基づいてスイッチング回路32をスイッチング制御するための制御信号S44aを出力すると共に、平均値電流回路43で求められた平均電流値S43に基づいて整流回路35を同期整流駆動又はダイオード整流駆動に切り替え制御するための制御信号S44bを出力する回路であり、例えば、デジタル制御プロセッサ(DSP)等で構成されている。制御回路44は、電流センサ41で計測された電流値を入力するIo計測端子、電圧センサ42で計測された電圧値を入力するVo計測端子、平均電流値S43を入力する入力端子、スイッチング回路制御用の制御信号S44aを出力する出力端子、整流回路制御用の制御信号S44bを出力する出力端子、及び整流駆動モード切替部44a等を有している。
【0022】
整流駆動モード切替部44aは、平均値電流回路43で求められた平均電流値S43に基づき、例えば、その平均電流値S43が定格電流値の20%を超えれば同期整流駆動用の論理“H”の制御信号S44bを出力し、その平均電流値S43が定格電流値の15%以下であればダイオード整流駆動用の論理“L”の制御信号S44bを出力する機能を有している。20%と15%との間に、ヒステリシスを設けているのは、チャタリング等を防止するためである。
【0023】
制御回路44の出力端子には、出力制御駆動回路45及び同期整流駆動回路46が接続されている。出力制御駆動回路45は、制御回路44から与えられる制御信号S44aを駆動してスイッチング回路32内のスイッチング素子32a~32fをオン/オフ動作させる回路であり、例えば、複数の駆動用トランジスタ等により構成されている。同期整流駆動回路46は、トランス34の2次側出力電流と、論理“H”又は“L”の制御信号S44bとに基づき、その制御信号S44bが論理“H”の時には、トランス34の2次側出力電流に同期して整流回路35内の複数のスイッチ素子35a~35fをオン/オフ動作させる駆動信号を出力し、その制御信号S44bが論理“L”の時には、複数のスイッチ素子35a~35fを全てオフ状態にするための駆動信号を出力する回路であり、例えば、複数の駆動用トランジスタ等により構成されている。
【0024】
第2DC/DCコンバータ50は、第1DC/DCコンバータ30と同一の構成であり、第1DC/DCコンバータ30側と同一のDC入力電圧Vdiが供給される正負一対の入力端子51-1,51-2を有している。入力端子51-1,51-2には、スイッチング回路52が接続されている。スイッチング回路52は、6つのスイッチング素子52a,52b,52c,52d,52e,52fを有し、それらがブリッジ接続されている。各スイッチング素子52a~52fには、ダイオード52gが逆並列状態にそれぞれ接続されている。各上側スイッチング素子52a,52c,52eと各下側スイッチング素子52b,52d,52fとの接続点には、3相のLC直列共振回路53が接続されている。
【0025】
LC直列共振回路53は、3つのコンデンサ53a,53b,53cと3つのリアクトル53d,53e,53fとを有し、それらが直列に接続されている。LC直列共振回路53の出力側には、3相トランス54が接続されている。3相トランス54は、3つのトランス54a,54b,54cを有し、そのトランス34a,34b,34cの出力側に、整流回路55が接続されている。
【0026】
整流回路55は、6つのMOSFET等のスイッチ素子55a,55b,55c,55d,55e,55fを有し、それらがブリッジ接続されている。各スイッチ素子55a~55fには、ダイオード55gが逆並列状態にそれぞれ接続されている。整流回路55の出力側には、平滑回路56が接続されている。平滑回路56は、コンデンサ56a及びリアクトル56bにより構成され、その出力側が、出力コンデンサ37及び逆流防止用のスイッチ素子38に並列に接続されている。
【0027】
トランス54の出力側には、このトランス54の2次側出力電流(つまり整流回路55の入力電流)を計測するための電流センサ61が接続されている。平滑回路56の出力側には、その出力電圧を計測するための電圧センサ62が接続されている。電流センサ61の出力側には、平均値電流回路63及び制御回路64が接続され、更に、その制御回路64に、電圧センサ62の出力側が接続されている。平均値電流回路63は、電流センサ61で計測された整流回路55の入力電流の平均電流値S63を求める回路であり、この出力側が、制御回路64に接続されている。
【0028】
制御回路64は、電流センサ61で計測された電流値と電圧センサ62で計測された電圧値とに基づいてスイッチング回路52をスイッチング制御するための制御信号S64aを出力すると共に、平均値電流回路63で求められた平均電流値S63に基づいて整流回路55を同期整流駆動又はダイオード整流駆動に切り替え制御するための制御信号S64bを出力する回路である。制御回路64は、電流センサ61で計測された電流値を入力するIo計測端子、電圧センサ62で計測された電圧値を入力するVo計測端子、平均電流値S63を入力する入力端子、スイッチング回路制御用の制御信号S64aを出力する出力端子、整流回路制御用の制御信号S64bを出力する出力端子、及び整流駆動モード切替部64a等を有している。整流駆動モード切替部64aは、平均値電流回路63で求められた平均電流値S63に基づき、その平均電流値S63が定格電流値の20%を超えれば同期整流駆動用の論理“H”の制御信号S64bを出力し、その平均電流値S63が定格電流値の15%以下であればダイオード整流駆動用の論理“L”の制御信号S64bを出力する機能を有している。
【0029】
制御回路64の出力端子には、出力制御駆動回路65及び同期整流駆動回路66が接続されている。出力制御駆動回路65は、制御回路64から与えられる制御信号S64aを駆動してスイッチング回路52内のスイッチング素子52a~52fをオン/オフ動作させる回路である。同期整流駆動回路66は、トランス54の2次側出力電流と、論理“H”又は“L”の制御信号S64bに基づき、その制御信号S64bが論理“H”の時には、その2次側出力電流に同期して整流回路55内の複数のスイッチ素子55a~55fをオン/オフ動作させる駆動信号を出力し、その制御信号S64bが論理“L”の時には、複数のスイッチ素子55a~55fを全てオフ状態にするための駆動信号を出力する回路である。
【0030】
図2は、図1中の平均値電流回路43,63を示す概略の構成図である。
第1DC/DCコンバータ30内の平均値電流回路43は、電流センサ41で計測されたトランス34の2次側出力電流(即ち、整流回路35の入力電流)を整流するダイオード43aと、整流されたDC電流を電圧降下して整流回路35の入力電流の平均電流値S43を求める抵抗43bと、を有している。求められた平均電流値S43は、制御回路44へ入力されると共に、第2DC/DCコンバータ50内の平均値電流回路63へ与えられる。
【0031】
第2DC/DCコンバータ50内の平均値電流回路63は、第1DC/DCコンバータ30内の平均値電流回路43と同一の構成であり、電流センサ61で計測されたトランス54の2次側出力電流(即ち、整流回路55の入力電流)を整流するダイオード63aと、整流されたDC電流を電圧降下して整流回路55の入力電流の平均電流値S63を求める抵抗63bと、を有している。求められた平均電流値S63は、制御回路64へ入力されると共に、第1DC/DCコンバータ30内の平均値電流回路43へ与えられる。
【0032】
(実施例1の動作)
図1の電力変換装置において、同一のDC入力電圧Vdiが、第1DC/DCコンバータ30側の入力端子31-1,31-2に供給されると共に、第2DC/DCコンバータ50側の入力端子51-1,51-2に供給されると、その第1DC/DCコンバータ30及び第2DC/DCコンバータ50が動作を開始する。
【0033】
第1DC/DCコンバータ30側において、入力端子31-1,31-2に供給されたDC入力電圧Vdiは、出力制御駆動回路45により駆動されるスイッチング回路32内のスイッチング素子32a~32fによりスイッチングされ(例えば、スイッチング素子32a,32d,32eが順にオン、スイッチング素子32b,32c,32fが順にオフし)、AC電圧に変換される。変換されたAC電圧により、LC直列共振回路33が共振し、その共振電圧がトランス34により電圧変換される。電圧変換されたAC電圧は、同期整流駆動回路46で駆動される整流回路35により、同期整流又はダイオード整流される。同期整流では、整流回路35内のスイッチ素子35a~35fが、トランス34の2次側出力電流(即ち、整流回路35の入力電流)に同期してオン/オフ動作し、整流される。ダイオード整流では、整流回路35内のスイッチ素子35a~35fが全てオフし、各スイッチ素子35a~35fに逆並列状態で接続された6つのダイオード35gにより、整流される。整流された電圧は、平滑回路36で平滑される。
【0034】
平滑されたDC出力電圧Vdoは、電圧センサ42で計測され、その計測された電圧値が制御回路44のVo計測端子へ入力される。すると、制御回路44は、フィードバック制御により、DC出力電圧Vdoが目標電圧値と一致するような制御信号S44aを出力制御駆動回路45へ供給する。この出力制御駆動回路45により、スイッチング回路32内のスイッチング素子32a~32fがオン/オフ駆動される。これにより、DC出力電圧Vdoが、目標電圧値と一致するように動作する。このDC出力電圧Vdoは、出力コンデンサ37及び逆流防止用のスイッチ素子38を介して、出力端子39-1,39-2から送出される。
【0035】
第2DC/DCコンバータ50も、第1DC/DCコンバータ30と同様の動作を行う。即ち、入力端子51-1,51-2に供給されたDC入力電圧Vdiは、出力制御駆動回路65により駆動されるスイッチング回路52内のスイッチング素子52a~52fによりスイッチングされ、AC電圧に変換される。変換されたAC電圧により、LC直列共振回路53が共振し、その共振電圧がトランス54により電圧変換される。電圧変換されたAC電圧は、同期整流駆動回路66で駆動される整流回路55により、同期整流又はダイオード整流される。整流された電圧は、平滑回路56で平滑される。
【0036】
平滑されたDC出力電圧Vdoは、電圧センサ62で計測され、その計測された電圧値が制御回路64のVo計測端子へ入力される。すると、制御回路64は、DC出力電圧Vdoが目標電圧値と一致するような制御信号S64aを出力制御駆動回路65へ供給する。この出力制御駆動回路65により、スイッチング回路52内のスイッチング素子52a~52fがオン/オフ駆動される。これにより、DC出力電圧Vdoが、目標電圧値と一致するように動作する。このDC出力電圧Vdoは、出力コンデンサ37及び逆流防止用のスイッチ素子38を介して出力端子39-1,39-2から送出され、図示しない負荷へ供給される。
【0037】
図3は、図1の第1DC/DCコンバータ30側の制御方法を示すフローチャートである。なお、第2DC/DCコンバータ50側も、図3と同様の制御を行う。
図3のフローチャートでは、ステップST1~ST5の処理が行われる。
【0038】
先ず、ステップST1において、図1のトランス34の2次側出力電流(即ち、整流回路35の入力電流)が、電流センサ41で計測され、平均値電流回路43、制御回路44、及び第2DC/DCコンバータ50内の平均値電流回路63へ供給される。同様に、第2DC/DCコンバータ50側においても、トランス54の2次側出力電流(即ち、整流回路55の入力電流)が、電流センサ61で計測され、平均値電流回路63、制御回路64、及び第1DC/DCコンバータ30内の平均値電流回路43へ供給される。
【0039】
ステップST2において、図2の平均値電流回路43は、ダイオード43a及び抵抗43bにより、平均電流値S43を求め、制御回路44内の整流駆動モード切替部44aへ与える。同様に、第2DC/DCコンバータ50側においても、図2の平均値電流回路63は、ダイオード63a及び抵抗63bにより、平均電流値S63を求め、制御回路64内の整流駆動モード切替部64aへ与える。
【0040】
ステップST3において、整流駆動モード切替部44aは、平均電流値S43が、定格電流値の例えば20%を超えるが否かを判定し、20%を超えれば(YES)、論理“H”の制御信号S44bを出力して同期整流駆動回路46へ供給してステップST4へ進み、ヒステリシスを設けた15%以下であれば(NO)、論理“L”の制御信号S44bを出力して同期整流駆動回路46へ供給してステップST5へ進む。同様に、第2DC/DCコンバータ50側においても、制御回路64内の整流駆動モード切替部64aは、平均電流値S63が、定格電流値の20%を超えるが否かを判定し、20%を超えれば(YES)、論理“H”の制御信号S64bを出力して同期整流駆動回路66へ供給してステップST4へ進み、15%以下であれば(NO)、論理“L”の制御信号S64bを出力して同期整流駆動回路66へ供給してステップST5へ進む。
【0041】
ステップST4において、同期整流駆動回路46は、供給された論理“H”の制御信号S44bに基づき、整流回路35内のスイッチ素子35a~35fをオン/オフ駆動して同期整流を行わせる。同様に、第2DC/DCコンバータ50側においても、同期整流駆動回路66は、供給された論理“H”の制御信号S64bに基づき、整流回路55内のスイッチ素子55a~55fをオン/オフ駆動して同期整流を行わせる。
【0042】
又、ステップST5において、同期整流駆動回路46は、供給された論理“L”の制御信号S44bに基づき、整流回路35内の全スイッチ素子35a~35fをオフにしてダイオード整流を行わせる。同様に、第2DC/DCコンバータ50側においても、同期整流駆動回路66は、供給された論理“L”の制御信号S64bに基づき、整流回路55内の全スイッチ素子55a~55fをオフにしてダイオード整流を行わせる。
【0043】
本実施例1では、計測された各整流回路35,55の入力電流の平均電流値S43,S63を指令値として、各制御回路44,64内の整流駆動モード切替部44a,64aで制御される各同期整流駆動回路46,66により、各整流回路35,55に対する整流駆動モードを、同期整流駆動又はダイオード整流駆動に切り替えて、第1、第2DC/DCコンバータ30,50の出力電流を等しくするための出力バランス制御を行っている。つまり、各平均電流値S43,S63を使って、各整流回路35,55の整流駆動モードを切り替えている。そのため、第1、第2DC/DCコンバータ30,50において、同じタイミングで整流駆動モードが切り替わるので、整流回路35,55内のスイッチ素子35a~35f,55a~55fによる電圧降下(ドロップ)が無く、第1、第2DC/DCコンバータ30,50の出力電圧がばたつくことが無い。
【0044】
(実施例1の効果)
本実施例1の電力変換装置及びその制御方法によれば、第1、第2DC/DCコンバータ30,50内の各整流回路35,55における入力電流の平均電流値S43、S63は、同じ値になるので、この値に従って、各整流回路35,55に対する整流駆動モードを、同期整流駆動又はダイオード整流駆動に切り替えを行っている。そのため、同じタイミングで整流駆動モードが切り替わるので、整流回路35,55内のスイッチ素子35a~35f,55a~55fによる電圧ドロップが一致し、出力バランス制御のばたつきがなくなり、出力電圧精度が向上する。
【実施例0045】
(実施例2の構成)
図4は、本発明の実施例2を示す電力変換装置の概略の構成図である。
この電力変換装置は、3相のAC入力電圧Vaiが供給されるR1入力端子67-1、S1入力端子67-2、及びT1入力端子67-3に接続された力率改善回路(以下「PFC」という。)68と、この出力側に並列に接続された複数(例えば、2つ)の平滑用のコンデンサ69-1,69-2と、この出力側にそれぞれ接続された電力変換部(例えば、絶縁型の第1、第2DC/DCコンバータ)70,80と、を備えている。
【0046】
PFC68は、R1入力端子67-1、S1入力端子67-2、及びT1入力端子67-3から入力される3相のAC入力電圧Vaiの力率を改善してDC電圧を出力する回路であり、例えば、複数のダイオード、MOSFET等のスイッチング素子、及びコンデンサ等により構成されている。PFC68の出力側には、コンデンサ69-1,69-2を介して、第1、第2DC/DCコンバータ70,80が並列に接続されている。第1、第2DC/DCコンバータ70,80は、コンデンサ69-1,69-2でそれぞれ平滑されたDC電圧を、他のレベルのDC出力電圧Vdoにそれぞれ変換する回路であり、その出力側が並列に接続されている。
【0047】
第1DC/DCコンバータ70は、コンデンサ69-1で平滑されたDC電圧を入力するスイッチング回路71を有している。スイッチング回路71は、入力されたDC電圧をスイッチングして例えば単相AC電圧に変換する回路であり、4つのMOSFET等のスイッチング素子71a,71b,71c,71dと、この各スイッチング素子71a~71dに対して逆並列状態にそれぞれ接続されたダイオード71eと、その各スイッチング素子71a~71dに対して並列にそれぞれ接続された2つの直列コンデンサ71f,71gとを有している。各ダイオード71eは、ボディダイオードや外付けダイオード等により構成されている。
【0048】
スイッチング素子71a、このスイッチング素子71aに対して逆並列状態に接続されたダイオード71e、及び、そのスイッチング素子71aに対して並列に接続された2つの直列コンデンサ71f,71gからなる上側第1回路ブロックと、スイッチング素子71b、このスイッチング素子71bに対して逆並列状態に接続されたダイオード71e、及び、そのスイッチング素子71bに対して並列に接続された2つの直列コンデンサ71f,71gからなる上側第2回路ブロックとは、並列に接続されている。更に、スイッチング素子71c、このスイッチング素子71cに対して逆並列状態に接続されたダイオード71e、及び、そのスイッチング素子71cに対して並列に接続された2つの直列コンデンサ71f,71gからなる下側第1回路ブロックと、スイッチング素子71d、このスイッチング素子71dに対して逆並列状態に接続されたダイオード71e、及び、そのスイッチング素子71dに対して並列に接続された2つの直列コンデンサ71f,71gからなる下側第2回路ブロックとは、並列に接続されている。そして、上側第1回路ブロック及び上側第2回路ブロックと、下側第1回路ブロック及び下側第2回路ブロックとは、直列に接続されたハーフブリッジ構成になっている。
【0049】
スイッチング回路71の出力側には、単相のLC共振回路72が接続されている。LC共振回路72は、変換された単相AC電圧に共振する回路であり、直列に接続された2つのコンデンサ72a,72bと、この各コンデンサ72a,72bに対して逆並列状態にそれぞれ接続されたダイオード72cと、リアクトル72dと、により構成されている。LC共振回路72の出力側には、トランス73が接続されている。トランス73は、LC共振回路72のAC出力電圧を他のレベルのAC電圧に変換する回路であり、3つのトランス本体73a,73b,73cを有し、それらの1次側(入力側)が直列に接続されている。トランス73の2次側(出力側)には、整流回路74が接続されている。
【0050】
整流回路74は、トランス本体73a,73b,73cのAC出力電圧を整流する回路であり、例えば、6つのMOSFET等のスイッチ素子74a,74b,74c,74d,74e,74fを有している。トランス本体74aの出力側には、全波整流用の2つのスイッチ素子74a,74bが接続されている。同様に、トランス本体73bの出力側に、全波整流用の2つのスイッチ素子74c,74dが接続され、更に、トランス本体73cの出力側に、全波整流用の2つのスイッチ素子74e,74fが接続されている。各スイッチ素子74a~74fには、ボディダイオードや外付けダイオード等のダイオード74gが逆並列状態にそれぞれ接続されている。整流回路74の出力側には、平滑回路75が接続されている。平滑回路75は、2つのコンデンサ75a,75e、2つのリアクトル75b,75c、及び抵抗75dにより構成され、その出力側に、DC出力電圧Vdoを送出する正負一対の出力端子76-1,76-2が接続されている。
【0051】
第2DC/DCコンバータ80は、第1DC/DCコンバータ70と同一の構成であり、コンデンサ69-2で平滑されたDC電圧を入力するスイッチング回路81、LC共振回路82、トランス83、及び整流回路84を有し、その整流回路84の出力側が、平滑回路75の入力側に並列に接続されている。
【0052】
スイッチング回路81は、4つのスイッチング素子81a,81b,81c,81dと、この各スイッチング素子81a~81dに対して逆並列状態にそれぞれ接続されたダイオード81eと、その各スイッチング素子81a~81dに対して並列にそれぞれ接続された2つの直列コンデンサ81f,81gとを有している。スイッチング素子81a、このスイッチング素子81aに対して逆並列状態に接続されたダイオード81e、及び、そのスイッチング素子81aに対して並列に接続された2つの直列コンデンサ81f,81gからなる上側第1回路ブロックと、スイッチング素子81b、このスイッチング素子81bに対して逆並列状態に接続されたダイオード81e、及び、そのスイッチング素子81bに対して並列に接続された2つの直列コンデンサ81f,81gからなる上側第2回路ブロックとは、並列に接続されている。
【0053】
更に、スイッチング素子81c、このスイッチング素子81cに対して逆並列状態に接続されたダイオード81e、及び、そのスイッチング素子81cに対して並列に接続された2つの直列コンデンサ81f,81gからなる下側第1回路ブロックと、スイッチング素子81d、このスイッチング素子81dに対して逆並列状態に接続されたダイオード81e、及び、そのスイッチング素子81dに対して並列に接続された2つの直列コンデンサ81f,81gからなる下側第2回路ブロックとは、並列に接続されている。そして、上側第1回路ブロック及び上側第2回路ブロックと、下側第1回路ブロック及び下側第2回路ブロックとは、直列に接続されたハーフブリッジ構成になっている。
【0054】
スイッチング回路81の出力側に接続されたLC共振回路82は、直列に接続された2つのコンデンサ82a,82bと、この各コンデンサ82a,82bに対して逆並列状態にそれぞれ接続されたダイオード82cと、リアクトル82dと、により構成されている。LC共振回路82の出力側に接続されたトランス83は、3つのトランス本体83a,83b,83cを有し、それらの入力側が直列に接続されている。トランス83の出力側に接続された整流回路84は、6つのスイッチ素子84a,84b,84c,84d,84e,84fにより構成されている。
【0055】
図4の電力変換装置には、図示しないが、実施例1の図1と略同様に、トランス73,83の2次側出力電流(つまり整流回路74,84の入力電流)を計測する電流センサ、整流回路74,84の出力電圧を計測する電圧センサ、その電流センサの出力側に接続された平均値電流回路、及び、その電圧センサ・電流センサに接続された制御回路等が設けられている。
制御回路は、例えば、PFC68の動作を制御すると共に、実施例1と同様に、スイッチング回路71,81のスイッチング動作を制御し、更に、平均値電流回路で求められた平均電流値に基づいて整流回路74,84を同期整流駆動又はダイオード整流駆動に切り替え制御する機能を有している。
【0056】
(実施例2の動作)
図4の電力変換装置において、3相AC入力電圧Vaiが、R1,S1,T1入力端子67-1,67-2,67-3に供給されると、その3相AC入力電圧Vaiが、PFC68によりDC電圧に変換されて力率が改善される。変換されたDC電圧は、コンデンサ69-1,69-2で平滑され、第1DC/DCコンバータ70及び第2DC/DCコンバータ80へ供給される。
【0057】
第1DC/DCコンバータ70側に供給されたDC電圧は、スイッチング回路71内のスイッチング素子71a~71dによりスイッチングされ、AC電圧に変換される。変換されたAC電圧により、LC共振回路72が共振し、その共振電圧がトランス73により電圧変換される。電圧変換されたAC電圧は、整流回路74により、同期整流又はダイオード整流される。整流されたDC電圧は、制御回路のフィードバック制御により、目標電圧値と一致するように制御される。
【0058】
同様に、第2DC/DCコンバータ80側に供給されたDC電圧は、スイッチング回路81内のスイッチング素子81a~81dによりスイッチングされ、AC電圧に変換される。変換されたAC電圧により、LC共振回路82が共振し、その共振電圧がトランス83により電圧変換される。電圧変換されたAC電圧は、整流回路84により、同期整流又はダイオード整流される。整流されたDC電圧は、制御回路のフィードバック制御により、目標電圧値と一致するように制御される。
整流回路74,84から出力されたDC電圧は、平滑回路75で平滑され、この平滑されたDC出力電圧Vdoが、出力端子76-1,76-2から送出され、図示しない負荷へ供給される。
【0059】
本実施例2の整流回路74,84は、実施例1の図3と同様に、制御される。即ち、計測された各整流回路74,84の入力電流の平均電流値を指令値として、各制御回路の制御により、各整流回路74,84に対する整流駆動モードを、同期整流駆動又はダイオード整流駆動に切り替えて、第1、第2DC/DCコンバータ70,80の出力電流を等しくするための出力バランス制御を行っている。そのため、第1、第2DC/DCコンバータ70,80において、同じタイミングで整流駆動モードが切り替わるので、整流回路74,84内のスイッチ素子74a~74f,84a~84fによる電圧ドロップが無く、第1、第2DC/DCコンバータ70,80の出力電圧がばたつくことが無い。
【0060】
(実施例2の効果)
本実施例2の電力変換装置及びその制御方法によれば、実施例1と同様に、第1、第2DC/DCコンバータ70,80内の各整流回路74,84における入力電流の平均電流値は、同じ値になるので、この値に従って、各整流回路74,84に対する整流駆動モードを、同期整流駆動又はダイオード整流駆動に切り替えを行っている。そのため、同じタイミングで整流駆動モードが切り替わるので、整流回路74,84内のスイッチ素子74a~74f,84a~84fによる電圧ドロップが一致し、出力バランス制御のばたつきがなくなり、出力電圧精度が向上する。
【実施例0061】
(実施例3の構成)
図5は、本発明の実施例3を示す電力変換装置の概略の構成図である。
この電力変換装置は、同一回路構成の複数(例えば、2つ)の電力変換部(例えば、第1、第2DC/ACインバータ)90,130を備え、これらの出力部である系統側の並列運転を行うようになっている。
【0062】
第1DC/ACインバータ90は、DC電源91のDC電圧を他のレベルのDC電圧に変換する絶縁型のDC/DCコンバータ回路100を有している。DC/DCコンバータ回路100は、4つのMOSFET等のスイッチング素子がブリッジ接続されたスイッチング回路101と、LC直列共振回路102と、トランス103と、4つのMOSFET等のスイッチ素子がブリッジ接続された整流回路104と、により構成されている。スイッチング回路101を構成する4つのスイッチング素子には、ボディダイオードや外付けダイオード等のダイオードが、逆並列状態にそれぞれ接続されている。同様に、整流回路104を構成する4つのスイッチ素子には、ボディダイオードや外付けダイオード等のダイオードが、逆並列状態にそれぞれ接続されている。DC/DCコンバータ回路100の入力側には、電流計測を行うためのCT等の電流センサ105と、電圧計測を行うためのVT等の電圧センサ106が接続されている。
【0063】
DC/DCコンバータ回路100の出力側には、平滑用コンデンサ107、VT等の電圧センサ108、及びDC/AC変換用の3相(U,V,W)スイッチング回路109が接続されている。スイッチング回路109は、4つのNPN型トランジスタ等のスイッチング素子を有し、それらがブリッジ接続されている。各スイッチング素子には、ダイオードが逆並列状態にそれぞれ接続されている。スイッチング回路109の出力側には、3つのリアクトルLf及び3つのコンデンサCfからなる高周波減衰用のローパスフィルタ(以下「LPF」という。)110が接続されている。LPF110には、U相電流iinv_uを計測するCT等の電流センサ111、W相電流iinv_wを計測するCT等の電流センサ112、UV間電圧Vuvを計測するVT等の電圧センサ113、及びWV間電圧Vwvを計測するVT等の電圧センサ114が接続されている。電圧センサ113,114の出力側には、U相出力電流Iout_uを計測するCT等の電流センサ115、W相出力電流iout_wを計測するCT等の電流センサ116、及び3相リレー117が接続されている。更に、3相リレー117の出力側には、UV間出力電圧を計測するVT等の電圧センサ118、及びWV間出力電圧を計測するVT等の電圧センサ119が接続されている。
【0064】
例えば、電流センサ105,111,112,115,116の電流計測値、及び電圧センサ106,108,113,114,118,119の電圧計測値は、制御回路120に入力される。例えば、制御回路120により、スイッチング回路101,109のスイッチング駆動が制御され、更に、整流回路104の同期整流駆動又はダイオード整流駆動の切り替えが制御される構成になっている。
電圧センサ118,119の出力側には、系統側の3相(U,V,W)の負荷(例えば、3φ3W200V)121が接続されている。
【0065】
同様に、第2DC/ACインバータ130は、DC電源131のDC電圧を他のレベルのDC電圧に変換する絶縁型のDC/DCコンバータ回路140を有している。DC/DCコンバータ回路140は、4つのスイッチング素子がブリッジ接続されたスイッチング回路141と、LC直列共振回路142と、トランス143と、4つのスイッチ素子がブリッジ接続された整流回路144と、により構成されている。スイッチング回路101を構成する4つのスイッチング素子には、ボディダイオードや外付けダイオード等のダイオードが逆並列状態にそれぞれ接続されている。同様に、整流回路144を構成する4つのスイッチ素子には、ボディダイオードや外付けダイオード等のダイオードが逆並列状態にそれぞれ接続されている。DC/DCコンバータ回路140の入力側には、電流計測を行うための電流センサ145と、電圧計測を行うための電圧センサ146が接続されている。
【0066】
DC/DCコンバータ回路140の出力側には、平滑用コンデンサ147、電圧センサ148、及び3相(U,V,W)スイッチング回路149が接続されている。スイッチング回路149は、4つのNPN型トランジスタ等のスイッチング素子を有し、それらがブリッジ接続されている。各スイッチング素子には、ダイオードが逆並列状態にそれぞれ接続されている。スイッチング回路149の出力側には、3つのリアクトルLf及び3つのコンデンサCfからなるLPF150が接続されている。LPF150には、U相電流iinv_uを計測する電流センサ151、W相電流iinv_wを計測する電流センサ152、UV間電圧Vuvを計測する電圧センサ153、及びWV間電圧Vwvを計測する電圧センサ154が接続されている。電圧センサ153,154の出力側には、U相出力電流Iout_uを計測する電流センサ155、W相出力電流iout_wを計測する電流センサ156、及び3相リレー157が接続されている。更に、3相リレー157の出力側には、UV間出力電圧を計測する電圧センサ158、及びWV間出力電圧を計測する電圧センサ159が接続されている。
【0067】
例えば、電流センサ145,151,152,155,156の電流計測値、及び電圧センサ146,148,153,154,158,159の電圧計測値は、制御回路160に入力される。例えば、制御回路160により、スイッチング回路141,149のスイッチング駆動が制御され、更に、整流回路144の同期整流駆動又はダイオード整流駆動の切り替えが制御される構成になっている。
【0068】
(実施例3の動作)
図5の電力変換装置の第1DC/ACインバータ90において、DC電源91のDC電圧が、DC/DCコンバータ回路100に供給されると、そのDC電圧が、スイッチング回路101内の4つのスイッチング素子によりスイッチングされ、AC電圧に変換される。変換されたAC電圧により、LC直列共振回路102が共振し、その共振電圧がトランス103により電圧変換される。電圧変換されたAC電圧は、整流回路104により、同期整流又はダイオード整流され、コンデンサ107で平滑される。平滑されたDC電圧は、スイッチング回路109の6つのスイッチング素子でスイッチングされて3相AC電圧に変換される。変換された3相AC電圧は、LPF110で高周波成分が減衰され、3相リレー117から出力される。3相リレー117の出力電圧は、制御回路120のフィードバック制御により、目標電圧値と一致するように制御され、系統側の3相負荷121へ供給される。
【0069】
同様に、第2DC/ACインバータ130において、DC電源131のDC電圧が、DC/DCコンバータ回路140に供給されると、そのDC電圧が、スイッチング回路141によりスイッチングされ、AC電圧に変換される。変換されたAC電圧により、LC直列共振回路142が共振し、その共振電圧がトランス143により電圧変換される。電圧変換されたAC電圧は、整流回路144により、同期整流又はダイオード整流され、コンデンサ147で平滑される。平滑されたDC電圧は、スイッチング回路149によりスイッチングされて3相AC電圧に変換される。変換された3相AC電圧は、LPF150で高周波成分が減衰され、3相リレー157から出力される。3相リレー157の出力電圧は、制御回路160のフィードバック制御により、目標電圧値と一致するように制御され、系統側の3相負荷121へ供給される。
【0070】
本実施例3の整流回路104,144は、実施例1の図3と同様に、制御される。即ち、計測された各整流回路104,144の入力電流の平均電流値を指令値として、各制御回路120,160の制御により、各整流回路104,144に対する整流駆動モードを、同期整流駆動又はダイオード整流駆動に切り替えて、第1、第2DC/ACインバータ90,130の出力電流を等しくするための出力バランス制御を行っている。そのため、第1、第2DC/ACインバータ90,130において、同じタイミングで整流駆動モードが切り替わるので、整流回路104,144内のスイッチ素子による電圧ドロップが無く、第1、第2DC/ACインバータ90,130の出力電圧がばたつくことが無い。
【0071】
(実施例3の効果)
本実施例3の電力変換装置及びその制御方法によれば、実施例1と同様に、第1、第2DC/ACインバータ90,130内の各整流回路104,144における入力電流の平均電流値は、同じ値になるので、この値に従って、各整流回路104,144に対する整流駆動モードを、同期整流駆動又はダイオード整流駆動に切り替えを行っている。そのため、同じタイミングで整流駆動モードが切り替わるので、整流回路104,144内の4つのスイッチ素子による電圧ドロップが一致し、出力バランス制御のばたつきがなくなり、出力電圧精度が向上する。
【0072】
(実施例1~3の変形例)
本発明は、上記実施例1~3に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(1),(2)のようなものがある。
【0073】
(1) 図1のDC/DCコンバータ30,50、図4のDC/DCコンバータ70,80、或いは図5のDC/ACインバータ90,130は、3つ以上でも良い。
(2) 本発明の電力変換装置における電力変換部は、図示のDC/DCコンバータ30,50,70,80、DC/ACインバータ90,130に限定されず、同期整流又はダイオード整流の切り替え可能な整流回路35,55,74,84,104,144を有する他の回路構成の電力変換装置にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0074】
30,50,70,80 DC/DCコンバータ
35,55,74,84,104,144 整流回路
41,61 電流センサ
43,63 平均値電流回路
44,64,120,160 制御回路
44a,64a 整流駆動モード切替部
45,65 出力制御駆動回路
46,66 同期整流駆動回路
90,130 DC/ACインバータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6