(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132378
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 15/10 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
F24C15/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037644
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】畑岡 完
(72)【発明者】
【氏名】石垣 陽一郎
(57)【要約】
【課題】天板部のコーナ部の浮き上りを抑制して加熱調理器の外観品質を確保することを可能とする加熱調理器を提供する。
【解決手段】加熱調理器1は、器具本体11の上面の開口部の上方を覆い、前後方向と左右方向とに延設された略矩形形状の天板部2を備える。前記天板部2は、前記前後方向と前記左右方向とに延設された略矩形形状の天板本体20と、前記天板本体20の裏面に接着部材63で接着され、前記前後方向と前記左右方向とに延設された略矩形形状の裏板5とを有する。前記裏板5は、前記接着部材63を介して前記天板本体20と接着される裏板上面部6と、前記裏板上面部6の周縁端部に周設された裏板枠体部7とを有する。前記裏板5の少なくとも1つのコーナ部51近傍における前記裏板上面部6には、当該裏板上面部6を上下に貫通する貫通孔3が施されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具本体の上面の開口部の上方を覆い、前後方向と左右方向とに延設された略矩形形状の天板部を備え、
前記天板部は、前記前後方向と前記左右方向とに延設された略矩形形状の天板本体と、前記天板本体の裏面に接着部材で接着され、前記前後方向と前記左右方向とに延設された略矩形形状の裏板とを有し、
前記裏板は、前記接着部材を介して前記天板本体と接着される裏板上面部と、前記裏板上面部の周縁端部に周設された裏板枠体部とを有し、
前記裏板の少なくとも1つのコーナ部近傍における前記裏板上面部には、当該裏板上面部を上下に貫通する貫通孔が施されている、加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
前記貫通孔は、前記裏板の前後方向の周縁部に並設された前後方向貫通部と、前記裏板の左右方向の周縁部に並設された左右方向貫通部とを有し、
前記前後方向貫通部と前記左右方向貫通部とは、前記コーナ部近傍で連穿されている、加熱調理器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の加熱調理器において、
前記裏板上面部は、前記天板本体の周縁部と前記接着部材を介して接着される周縁接着部を有し、
前記貫通孔は、前記周縁接着部よりも内方側に施されている、加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、器具本体の上面の開口部の上方を覆う天板部を備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱調理器において、器具本体の上面の開口部の上方を覆う矩形形状の天板部は、天板本体と裏板とを備え、裏板は、周縁枠体と、周縁枠体の内周端部に取り付けられる延板とを有しており、天板本体の裏面に裏板を接着剤で接着する構成とするものがある(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、天板部の構成の簡易化やコストダウン等を目的として、周縁枠体と延板とを一体化した裏板を構成した場合、一体化構造によって裏板の剛性が上がる。加熱調理器での加熱調理の際、天板部上に載置した調理容器を、天板部に設けられた加熱部で加熱すると、天板部が高温となり、裏板が熱膨張によって歪みを生じた場合、裏板の剛性が高いことから天板本体を上方へ押し上げるように反った形が保持されやすくなり、特に天板部のコーナ部が浮き上がってくるという現象が発生しやすくなる。天板部のコーナ部の浮き上りは、加熱調理器の外観を損ねてしまうという問題を生じさせる。
【0005】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、天板部のコーナ部の浮き上りを抑制して加熱調理器の外観品質を確保することを可能とする、加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加熱調理器は、
器具本体の上面の開口部の上方を覆い、前後方向と左右方向とに延設された略矩形形状の天板部を備え、
前記天板部は、前記前後方向と前記左右方向とに延設された略矩形形状の天板本体と、前記天板本体の裏面に接着部材で接着され、前記前後方向と前記左右方向とに延設された略矩形形状の裏板とを有し、
前記裏板は、前記接着部材を介して前記天板本体と接着される裏板上面部と、前記裏板上面部の周縁端部に周設された裏板枠体部とを有し、
前記裏板の少なくとも1つのコーナ部近傍における前記裏板上面部には、当該裏板上面部を上下に貫通する貫通孔が施されている構成とする。
【0007】
前記構成によれば、裏板上面部の周縁端部に裏板枠体部を周設して、裏板上面部と裏板枠体部とを一体化することで裏板の剛性が上がる。剛性が上がった裏板において、裏板のコーナ部近傍に施した貫通孔によって、裏板のコーナ部における上下方向の強度を低下させることができる。このため、加熱調理中に裏板の熱膨張による歪みが生じたとしても、裏板のコーナ部が天板本体を押し上げるように反り上がって変形することが抑制される。従って、加熱調理中に天板部のコーナ部が浮き上がってくるという現象を抑制することができ、加熱調理器の外観品質を確保することができる。また、天板部の裏板を裏板上面部と裏板枠体部とを一体化した構成とすることにより、天板部の構成の簡易化及びコストダウンを図ることができる。
【0008】
前記加熱調理器において、
前記貫通孔は、前記裏板の前後方向の周縁部に並設された前後方向貫通部と、前記裏板の左右方向の周縁部に並設された左右方向貫通部とを有し、
前記前後方向貫通部と前記左右方向貫通部とは、前記コーナ部近傍で連穿されている構成とすることができる。
【0009】
前記構成によれば、貫通孔が裏板のコーナ部に沿って連続して形成されるため、裏板のコーナ部近傍の必要な部分のみの強度を低下させることができる。このため、加熱調理中に裏板が熱膨張で歪みを生じた場合でも、貫通孔によって、裏板のコーナ部における前後方向と左右方向との各周縁部側で上方に反り上がって変形することを確実に抑制することができる。従って、加熱調理中に天板部のコーナ部が浮き上がってくるという現象を確実に抑制することができ、より加熱調理器の外観品質を確保することができる。
【0010】
前記加熱調理器において、
前記裏板上面部は、前記天板本体の周縁部と前記接着部材を介して接着される周縁接着部を有し、
前記貫通孔は、前記周縁接着部よりも内方側に施されている構成とすることができる。
【0011】
前記裏板は、コーナ部において貫通孔の外方側の部分における上下方向の強度を低下させるので、貫通孔の外方側の裏板を天板本体と接着することにより、裏板のコーナ部が上方に反り上がって変形することをより確実に抑制することができる。従って、加熱調理中における天板部のコーナ部の浮き上がり現象を確実に抑制でき、より加熱調理器の外観品質を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る加熱調理器の全体構成を示す斜視図である。
【
図4】裏板のコーナ部近傍を拡大して示す図であり、同図(a)はコーナ部近傍の裏板上面部の上面側を示す上面図、同図(b)はコーナ部近傍の天板部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1に示す実施形態の加熱調理器1は、本発明の加熱調理器の一例であり、システムキッチンのカウンタトップ10に設けられた開口に落とし込むように設置されるガス燃焼式のビルトインコンロである。本実施形態の加熱調理器1は、加熱部をガスバーナとするガスコンロであるが、本発明は、ガスコンロに限らず、電磁誘導コイルを加熱部とする誘導加熱調理器、電気ヒータを加熱部とする加熱調理器など、任意の加熱調理器に適用できる。加熱調理器1は、器具本体11と、器具本体11の上面の開口部の上方を覆う天板部2とを備えている。なお、本明細書では、器具本体11の前面を加熱調理器1の正面とし、加熱調理器1を正面側から見たときの器具本体11の奥行き方向を前後方向、前後方向と直交する幅方向を左右方向、前後方向と直交する高さ方向を上下方向という。
【0014】
天板部2は、前後方向と左右方向とに延設された略矩形形状を有する。なお、本明細書において、略矩形形状とは、矩形そのもの以外に、コーナ部や辺が丸みを帯びた形状を含むものとする。天板部2の形状では、四つのコーナ部(2辺が交わる角)及び辺が直線的な形状だけでなく、丸みを帯びた形状も含む。天板部2の上面には、加熱部となる3つ(複数)のコンロバーナ12L,12R,12Bが配設されている。各コンロバーナ12L,12R,12Bの配設位置には、鍋やフライパン等の調理容器(不図示)を支持する五徳13が載置されている。各コンロバーナ12L,12R,12Bの中央部には、付勢バネで上方に付勢され、五徳13に置かれた調理容器の底部に当接して調理容器の温度を検出する温度センサ14が立設されている。天板部2の後部には、器具本体11内に設置するグリル(不図示)からの燃焼排気を排出する排気口41(
図2、
図3参照)が開設されており、この排気口41の上方を覆う排気口カバー15が載置されている。
【0015】
器具本体11は、略矩形箱状を有し、器具本体11内には、グリル調理を行うグリルが設置されている。器具本体11の前面には、グリルのグリル扉16と、加熱調理器1の電源をオンオフする電源スイッチ17と、各コンロバーナ12L,12R,12Bの点火及び消火、火力調節等の操作を行うコンロ操作子18L,18R,18Bと、図示しないグリルバーナの点火及び消火、火力調節等の操作を行うグリル操作子19とが配設されている。
【0016】
図2に示すように、天板部2は、上面を構成する天板本体20と、天板本体20の後側に配置される後板4と、天板本体20及び後板4の裏面に配置される裏板5とを有する。
後板4は、左右方向に長く延設された略矩形形状を有し、裏板5の後部の排気用板部8の外形と同形状に形成されている。後板4は、排気口41が3つ設けられており、ステンレス板等の金属板のプレス加工等で形成することができる。この後板4は、裏板5の後部の排気用板部8上に取り付けられ、排気用板部8に開設する横長開口部81の上方を覆うように配設される。
【0017】
天板本体20は、天板部2の上面を構成する主要部品であり、前後方向と左右方向とに延設された略矩形形状を有する。この天板本体20は、ガラス板で形成されているが、ガラス板に限らず、セラミック板等で形成されてもよい。天板本体20の裏面には、裏板5が接着部材63によって接着される。天板本体20の外形は、裏板5の外形よりも少し小さく形成されている(
図4(b)参照)。これにより、天板部2の外周側から物が衝突してもガラス板の天板本体20の外周部に物が接触することを防止して天板本体20を保護することができる。
【0018】
天板本体20は、3つのコンロバーナ12L,12R,12Bに対応して3つのバーナ用開口部21L,21R,21Bが開設されている。天板本体20の上面には、各バーナ用開口部21L,21R,21Bに円環形状のバーナリング22が配設されている。バーナリング22は、これに配置される点火電極及び炎検知器(不図示)、五徳13等の位置決めやコンロバーナ12L,12R,12Bとバーナ用開口部21L,21R,21Bとのすき間を塞ぐ等のために設置される。天板本体20の下面には、
図3に示すように、天板本体20の3つのバーナ用開口部21L,21R,21Bに対応して3つの取付口(不図示)が開設された取付板24と、取付板24の下面において各取付口に配設されてバーナリング22を保持するリング下23とが配設されている。取付板24を天板本体20の下面に配置して、天板本体20の上面の各バーナリング22と、取付板24の下面の各リング下23とを連結して取り付けることで、3つのバーナリング22が3つのコンロバーナ12L,12R,12Bと正しい位置関係で保持される。バーナリング22、リング下23、取付板24は、ステンレス板等の金属板のプレス加工等で形成することができる。
【0019】
裏板5は、天板本体20の裏面に接着部材63で接着される一体物の部品であり、前後方向と左右方向とに延設された略矩形形状を有する。裏板5は、天板本体20と接着部材63を介して接着される裏板上面部6と、裏板上面部6の後辺に連設された排気用板部8と、裏板上面部6及び排気用板部8の一体部の周縁端部に周設された裏板枠体部7とを有する。裏板5は、裏板上面部6、排気用板部8及び裏板枠体部7を一体化した構成とするものであり、ステンレス板等の金属板をプレス加工、絞り加工等を施して形成することができる。
【0020】
排気用板部8は、グリルの庫内と連通する横長開口部81を有し、この排気用板部8の上面には排気口41を設けた後板4が取り付けられる。なお、裏板5は、排気用板部8を有しないもの、排気用板部8を別に形成したもの等でもよい。
【0021】
裏板枠体部7は、裏板上面部6及び排気用板部8の一体部の外周辺をなす周縁端部から垂下した側壁部71と、側壁部71の下端から内側に延設した内フランジ部72とを有する(
図4(b)参照)。このように、裏板5は、裏板枠体部7を裏板上面部6及び排気用板部8と一体化した構成とすることにより、裏板5の剛性が増し、且つ、天板部2の構成の簡易化、天板部2のコストダウン等を図ることができる。
【0022】
裏板上面部6は、前後方向と左右方向とに延設された略矩形形状を有し、中央には矩形開口部61が大きく開設された帯板環状に形成されている。裏板上面部6の矩形開口部61内には、裏板上面部6の上面に天板本体20が接着されたとき、天板本体20の下面に取り付けられた取付板24が配置される。なお、裏板上面部6は、矩形開口部61を設けることなく取付板24を一体化した構成とし、天板本体20の裏面全体を覆う構成としてもよい。
【0023】
裏板上面部6は、裏板5の前辺側における左右の各コーナ部51L,51R近傍には、裏板上面部6を上下に貫通するL形の貫通孔3が開設されている。実施形態では、天板部2の前側の左右にコンロバーナ12L,12Rが配設されており、各コンロバーナ12L,12Rの近くのコーナ部(
図1中、点線の円で囲んだコーナ部)に対応して、貫通孔3を設けている。また、裏板上面部6には、前辺の周縁部に並設して裏板上面部6を上下に貫通し左右方向に延びる第1の長孔65が2列で左右方向に3つ並べて設けられ、左右辺の各辺の周縁部に並設して裏板上面部6を上下に貫通し前後方向に延びる第2の長孔66が前後方向に3つ並べて設けられている。裏板5の貫通孔3や第1及び第2の長孔65,66は、天板部2をカウンタトップ10に設置した状態では、器具本体11の上面の開口部よりも外側に配置される。これにより、例えば、天板本体20が透明なガラス板であっても、日光等の外部光が天板本体20を透かして貫通孔3や第1及び第2の長孔65,66を通して器具本体11内に侵入して、外部から器具本体11内が光って見えるようなこともない。
【0024】
裏板上面部6に設けた貫通孔3は、
図4(a)に示すように、裏板5の前後方向に延びる周縁部に並設された前後方向貫通部31と、裏板5の左右方向に延びる周縁部に並設された左右方向貫通部32とを有し、前後方向貫通部31と左右方向貫通部32とが裏板5のコーナ部51近傍で連穿されている。すなわち、
図2に示す裏板5に施した2つの貫通孔3において、前側左のコーナ部51L近傍の貫通孔3は、裏板5の左辺に並設された前後方向貫通部31と、裏板5の前辺に並設された左右方向貫通部32と有し、前側左のコーナ部51L近傍で前後方向貫通部31と左右方向貫通部32とが連穿されたL形をなしている。前側右のコーナ部51R近傍の貫通孔3は、裏板5の右辺に並設された前後方向貫通部31と、裏板5の前辺に並設された左右方向貫通部32と有し、前側右のコーナ部51R近傍で前後方向貫通部31と左右方向貫通部32とが連穿されたL形をなしている。このように、貫通孔3は、裏板5のコーナ部51近傍においてコーナ部51に並設して連続的に形成されている。
【0025】
裏板上面部6には、天板本体20の裏面の周縁部と接着部材63を介して接着される周縁接着部62を有する。周縁接着部62は、裏板上面部6の四辺に沿って環状に形成されている。この周縁接着部62は、
図4(b)に示すように、裏板上面部6の上面から下方に絞りを施した凹溝部64が形成され、この凹溝部64内にシリコンゴム等の接着部材63が塗布されており、この接着部材63によって裏板上面部6の上面に対向配置させた天板本体20の裏面の周縁部が接着される。なお、周縁接着部62は、凹溝部64に接着部材63を塗布した構成以外に、裏板上面部6の上面において接着部材63となる両面テープを裏板上面部6の四辺に沿って貼着した構成としてもよい。
【0026】
裏板5のコーナ部51近傍に設けた貫通孔3は、周縁接着部62よりも裏板上面部6の中心方向となる内方側に施されている(
図4(a)及び
図2参照)。また、裏板5の前辺及び左右辺の各辺の近傍に設けた第1、第2の長孔65,66も、周縁接着部62よりも内方側に施されている(
図2参照)。貫通孔3の内周端部33は、下方に少し曲げられており、裏板上面部6の上面よりも上方に突出しないように形成されている(
図4(b)参照)。これにより、天板部2のコーナ部において天板本体20が裏板上面部6と確実に密着され、コーナ部51近傍における周縁接着部62の接着部材63とも確実に接着される。図示しないが、第1、第2の長孔65,66も、同様に、内周端部が下方に少し曲げられて裏板上面部6の上面よりも上方に突出しないように形成されており、天板本体20と裏板上面部6とは、前辺、左右辺における周縁接着部62の接着部材63と確実に接着される。
【0027】
ところで、天板部2の裏板5において、裏板枠体部7と裏板上面部6とを一体化した部材で構成した場合、裏板枠体部7と裏板上面部6とを別部材で構成するものよりも、裏板5の剛性が上がったものとなる。加熱調理器1において五徳13に載置した調理容器をコンロバーナ12を燃焼させて加熱する加熱調理の際、調理容器やコンロバーナ12からの熱によって天板部2が高温となり、裏板5が熱膨張して歪みが生じると、裏板5の剛性が高いことから熱変形した形が保持されやすくなり、特に、裏板5のコーナ部51が上方に反って熱変形すると、天板本体20を上方へ押し上げ、天板部2のコーナ部がカウンタトップ10から浮き上ってくるという現象が発生しやすくなる。例えば、
図1に示す加熱調理器1のように、天板部2の前側にコンロバーナ12L,12Rが左右に配設されている場合、天板部2の前側左右のコーナ部(
図1中、点線の円で囲んだコーナ部)では、左右のコンロバーナ12L,12Rが近くに配設されるため、調理容器やコンロバーナ12L,12Rの熱による影響を受けやすい。天板部2の前側のコーナ部に浮き上がりが生じると、僅か数ミリ程度の浮き上りであっても加熱調理器1の前に立つ使用者に目立ちやすく、加熱調理器1の外観を損ねてしまう。
【0028】
本実施形態では、前側左右のコンロバーナ12L,12Rの近くの天板部2のコーナ部に対応して、裏板5の前側左右のコーナ部51L,51R近傍には、裏板上面部6を上下に貫通する貫通孔3が施されているため、この貫通孔3によって、裏板5の前側左右のコーナ部51L,51Rにおいて上下方向の強度を低下させることができる。このため、加熱調理中にコンロバーナ12L,12Rの加熱によって裏板5が熱膨張して歪みが生じたとしても、裏板5のコーナ部51L,51Rは、天板本体20を押し上げるように上方へ変形する強度が無く、反り上がって変形することが抑制される。
【0029】
貫通孔3は、前後方向貫通部31と左右方向貫通部32とがコーナ部51近傍で連穿されたL形を有しており、このL形の貫通孔3が裏板5のコーナ部51に沿って連続して形成されているため、裏板5のコーナ部51近傍の必要な部分のみの強度を低下させることができる。このため、加熱調理中に裏板5が熱膨張で歪みを生じた場合でも、貫通孔3における前後方向貫通部31と左右方向貫通部32とによって、裏板5のコーナ部51における各周縁部側で上方に反り上がって変形することを確実に抑制することができる。すなわち、裏板5の前側左のコーナ部51Lでは、左辺及び前辺の各周縁部側での熱変形が抑制され、この前側左のコーナ部51L全体の上方への反りが抑制される。裏板5の前側右のコーナ部51Rでは、右辺及び前辺の各周縁部側での熱変形が抑制され、この前側右のコーナ部51R全体の上方への反りが抑制される。また、貫通孔3は、周縁接着部62よりも内方側に施されており、貫通孔3の外方側で裏板5が天板本体20と接着されているため、裏板5のコーナ部51が上方に反り上がって変形することを、より確実に抑制することができる。
【0030】
なお、貫通孔3の前後方向貫通部31と左右方向貫通部32とは、裏板5のコーナ部51L,51Rにおける前後方向と左右方向とからの熱膨張の応力集中を緩和して、裏板5のコーナ部51L,51Rの熱変形を抑えることが期待される。裏板上面部6に設けた第1、第2の長孔65,66は、その孔の長さ方向に列設するので、裏板5の周縁部の前後方向と左右方向とからコーナ部51L,51Rへの熱膨張の応力集中を緩和することが期待される。
【0031】
以上より、本実施形態の加熱調理器1によれば、加熱調理中に、裏板5のコーナ部51L,51Rが反り上がって変形することが抑制されるため、天板部2のコーナ部が浮き上がってくるという現象を確実に抑制することができ、加熱調理器1の外観品質を良好に確保することができる。また、裏板5を裏板上面部6及び排気用板部8と裏板枠体部7とを一体化した構成とすることにより、天板部2の構成の簡易化、天板部2のコストダウンを図ることができる。
【0032】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で様々な変更を行うことができる。
例えば、貫通孔3の形状は、実施形態のようなL形に限らず、裏板5のコーナ部51における上下方向の強度を低下させ、加熱調理中に裏板5が熱膨張して歪みが生じても天板部2のコーナ部の浮き上がり現象を抑制できる形状であれば、任意の形状とすることができる。例として、
図5に示すように、円形孔3a(
図5(a))、裏板5のコーナ部51と三角形を形成するような斜めの長孔3b(
図5(b))、途中で繋がっていない複数の斜めの長孔3c(
図5(c))、斜めに配置した複数の円形孔3d(
図5(d))、三角形孔3e(
図5(e))、へ字状の孔3f(
図5(f))など、様々な形状とすることができる。また、貫通孔3の形状として、例えば、裏板5のコーナ部51を形成する2辺の各周縁部に接近する形状部分を有するようにすることができる。
【0033】
貫通孔3は、裏板5の少なくとも1つのコーナ部51近傍に設けるようにしてもよく、また、裏板5の3つのコーナ部51近傍、裏板5の4つ全てのコーナ部51近傍に設けてもよい。
【0034】
貫通孔3を裏板5の3つ以下のコーナ部51近傍に設ける場合、裏板5の4つのコーナ部51のうちの任意のコーナ部51を選ぶことができる。例えば、コンロバーナ12と最も近い裏板5のコーナ部51近傍には、貫通孔3を設けるようにしてもよい。また、前側左右の2つのコンロバーナ12L,12Rの一方が強火力バーナの場合、この強火力バーナに近い裏板5のコーナ部51近傍には貫通孔3を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 加熱調理器
2 天板部
3 貫通孔
4 後板
5 裏板
6 裏板上面部
7 裏板枠体部
8 排気用板部
10 カウンタトップ
11 器具本体
12 コンロバーナ
13 五徳
14 温度センサ
15 排気口カバー
16 グリル扉
17 電源スイッチ
18 コンロ操作子
19 グリル操作子
20 天板本体
21 バーナ用開口部
22 バーナリング
23 リング下
24 取付板
31 前後方向貫通部
32 左右方向貫通部
33 内周端部
41 排気口
51 コーナ部
61 矩形開口部
62 周縁接着部
63 接着部材
64 凹溝部
65 第1の長孔
66 第2の長孔
71 側壁部
72 内フランジ部
81 横長開口部