(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132397
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】背負いベルトの取付構造
(51)【国際特許分類】
A45F 3/04 20060101AFI20230914BHJP
A45F 3/02 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A45F3/04 400J
A45F3/02 410
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037675
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】390022482
【氏名又は名称】株式会社エムアンドケイヨコヤ
(74)【代理人】
【識別番号】230100022
【弁護士】
【氏名又は名称】山田 勝重
(74)【代理人】
【識別番号】100084319
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 智重
(74)【代理人】
【識別番号】100120204
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 巌
(72)【発明者】
【氏名】横谷 晶明
【テーマコード(参考)】
3B045
【Fターム(参考)】
3B045AA24
3B045AA35
3B045CE08
3B045GA03
3B045GB03
3B045GC04
3B045GD08
(57)【要約】
【課題】背のう部本体を使用者が背中に背負ったり、使用者が背中から離脱させる場合における背負いベルトの脱着操作性をさらに向上することができ、装着した状態においても、背のう部本体の背当て部の全体が使用者の背中により接触しやすくし、密着度をより高めた良好な装着状態を確保できるように構成された背負いベルトの取付構造を提供する。
【解決手段】背のう部本体の底部に、一対の背負いベルトの下端部が底部において支持される支持位置を所定方向に沿って変更可能とする一対の第1調整部と、一対の第1調整部をそれぞれ揺動可能に支持する一対の第2調整部と、が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収納部を備えるとともに、前側に、使用者の背中に接して支持される背当て部を備えた背のう部本体と、
使用者の左右の肩部に前記背のう部本体を背負わせるべく掛け回され、前記背当て部の上部にその上端部が支持され、前記背のう部本体の底部にその下端部側が支持される左右一対の各背負いベルトと、
を備えてなる背のうにおける背負いベルトの取付構造であって、
前記背のう部本体の底部に、前記一対の背負いベルトの下端部が前記底部において支持される支持位置を所定方向に沿って変更可能とする一対の第1調整部と、前記一対の第1調整部をそれぞれ揺動可能に支持する一対の第2調整部と、が設けられていることを特徴とする背負いベルトの取付構造。
【請求項2】
前記第2調整部は、前記第1調整部の揺動後の位置を保持可能な保持構造を有する請求項1に記載の背負いベルトの取付構造。
【請求項3】
前記一対の第1調整部は、それぞれの本体部に、
前記一対の背負いベルトの下端部がそれぞれ接合される連結環と、
前記連結環を後側へ付勢する弾性力をそれぞれ有する弾性体と、
前記連結環の移動方向を規定する第1案内経路と、を備え、
前記第1調整部の前記支持位置は前記連結環の位置に対応し、
前記一対の第2調整部は、前記一対の第1調整部の前記本体部の後側の端部から延びる回動軸を回動可能に支持する一対の支持部と、前記第1調整部の前記本体部の前側の端部側から延びる軸部が挿入され、前記軸部を案内する一対の第2案内経路と、をそれぞれ備え、前記支持部に対して前記回動軸が回動することによって、前記一対の第2調整部は前記一対の第1調整部に対してそれぞれ揺動する請求項2に記載の背負いベルトの取付構造。
【請求項4】
前記保持構造は前記軸部と前記第2案内経路とで構成され、
前記一対の第1調整部はそれぞれ、前記軸部の外周面を前記第2案内経路の内側面に摺動させながら揺動し、前記保持構造は、揺動を停止したときの前記軸部の外周面と前記第2案内経路の内側面との接触抵抗によって、前記第2調整部に対する前記第1調整部の位置を保持する請求項3に記載の背負いベルトの取付構造。
【請求項5】
前記一対の第2調整部は、前記一対の第1調整部を互いに独立して揺動可能にそれぞれ支持する請求項4に記載の背負いベルトの取付構造。
【請求項6】
前記一対の第2案内経路はそれぞれ、前記支持部に関して、基準位置から左右方向外側へ所定角度までの範囲の円弧に沿って形成されている請求項5に記載の背負いベルトの取付構造。
【請求項7】
前記基準位置は、左右方向において前記支持部に対応する位置に設けられ、前記所定角度は15度以上75度以下である請求項6に記載の背負いベルトの取付構造。
【請求項8】
前記弾性体は、収縮しようとする弾性力を有するコイルばねである請求項7に記載の背負いベルトの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランドセル、リュックサックなど、使用者の背中に背負われる背のうにおける背負いベルトの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ランドセル、リュックサックなどの背のうには、様々な形状や構造のものが存在するが、その多くは、使用者の背中に接して支持される背当て部を備えるとともに、使用者の背中に背負われて内部に収納部を備えてなる背のう部本体と、使用者の左右の肩部に該背のう部本体を背負わせるべく掛け回され、背のう部本体の背当て部上方にその上端部が支持され、背のう部本体の背当て部下方にその下端部側が支持される左右一対の各背負いベルトと、を備えている。
【0003】
特許文献1に記載のランドセルでは、背負いベルトは、上ベルトの下端と下ベルトの上端との止着結合位置を調整することで、背のう部本体に対する背負いベルトの全体長さを可変に調整することとしているが、いったん背のうを背負った後には、上ベルトと下ベルトの結合位置を変更して長さ調整を行うことは難しかった。このため、背のう部本体を背負う際に、使用者の肩部に対する背負いベルトの掛け回し操作を容易にするために背負いベルトを長めに設定すると、背負った後に長さを調整することができないことから、使用者の背中に対する密着性の確保が難しくなっていた。
【0004】
これに対して、特許文献2に記載のランドセルでは、本体背面の外側方向に傾斜させて設けた左右両端のスライド孔に、それぞれ背負いベルトの下端に取り付けたダルマ環を、常にランドセルの内側方向に弾力を加えられた状態で摺動自在に配した取付け金具を備えており、この構成によって、ランドセルの内側方向に弾力を加えられた状態でダルマ環がスライド孔を摺動することにより、ランドセルを背負った状態で、背負いベルト下端部の取り付け位置を微調整することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3133399号公報
【特許文献2】特開平4-15417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の発明者らは、使用者が背のうを背中に背負ったり、背中から離脱させる場合における背負いベルトの脱着操作性がより高くなり、装着した状態においては、背のう部本体の背当て部の全体が使用者の背中により密着しやすくする構成について研究を重ねた結果、特許文献2に記載のランドセルよりもさらに、脱着操作性と装着後の密着性を高めた背のうの背負いベルトの取付構造を開発するに至った。
【0007】
そこで本発明は、ランドセル、リュックサックなどの背のうにあって、背のう部本体を使用者が背中に背負ったり、使用者が背中から離脱させる場合における背負いベルトの脱着操作性をさらに向上することができ、装着した状態においても、背のう部本体の背当て部の全体が使用者の背中により接触しやすくし、密着度をより高めた良好な装着状態を確保できるように構成された背負いベルトの取付構造を提供することを目的としている
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の背負いベルトの取付構造は、内部に収納部を備えるとともに、前側に、使用者の背中に接して支持される背当て部を備えた背のう部本体と、使用者の左右の肩部に背のう部本体を背負わせるべく掛け回され、背当て部の上部にその上端部が支持され、背のう部本体の底部にその下端部側が支持される左右一対の各背負いベルトと、を備えてなる背のうにおける背負いベルトの取付構造であって、背のう部本体の底部に、一対の背負いベルトの下端部が底部において支持される支持位置を所定方向に沿って変更可能とする一対の第1調整部と、一対の第1調整部をそれぞれ揺動可能に支持する一対の第2調整部と、が設けられていることを特徴としている。
【0009】
本発明の背負いベルトの取付構造において、第2調整部は、第1調整部の揺動後の位置を保持可能な保持構造を有することが好ましい。
【0010】
本発明の背負いベルトの取付構造において、一対の第1調整部は、それぞれの本体部に、一対の背負いベルトの下端部がそれぞれ接合される連結環と、連結環を後側へ付勢する弾性力をそれぞれ有する弾性体と、連結環の移動方向を規定する第1案内経路と、を備え、第1調整部の支持位置は連結環の位置に対応し、一対の第2調整部は、一対の第1調整部の本体部の後側の端部から延びる回動軸を回動可能に支持する一対の支持部と、第1調整部の本体部の前側の端部側から延びる軸部が挿入され、軸部を案内する一対の第2案内経路と、をそれぞれ備え、支持部に対して回動軸が回動することによって、一対の第2調整部は一対の第1調整部に対してそれぞれ揺動することが好ましい。
【0011】
本発明の背負いベルトの取付構造において、保持構造は軸部と第2案内経路とで構成され、一対の第1調整部はそれぞれ、軸部の外周面を第2案内経路の内側面に摺動させながら揺動し、保持構造は、揺動を停止したときの軸部の外周面と第2案内経路の内側面との接触抵抗によって、第2調整部に対する第1調整部の位置を保持することが好ましい。
【0012】
本発明の背負いベルトの取付構造において、一対の第2調整部は、一対の第1調整部を互いに独立して揺動可能にそれぞれ支持することが好ましい。
【0013】
本発明の背負いベルトの取付構造において、一対の第2案内経路はそれぞれ、支持部に関して、基準位置から左右方向外側へ所定角度までの範囲の円弧に沿って形成されていることが好ましい。
【0014】
本発明の背負いベルトの取付構造において、基準位置は、左右方向において支持部に対応する位置に設けられ、所定角度は15度以上75度以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の背負いベルトの取付構造において、弾性体は、収縮しようとする弾性力を有するコイルばねであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、一対の背負いベルトの上ベルトと下ベルトの長さを調整した後において、前後方向、左右方向、及び、これらの方向の間の任意の方向に、それぞれの背負いベルトの連結環の位置を変更可能としているため、背負いベルトの脱着容易性のさらなる向上と使用者の背中への高い密着性の実現を図ることができる。さらに、左右の背負いベルトで互いに別個の方向へそれぞれ操作することができるため、使用環境、使用者の利き腕や好み等に応じて脱着容易性をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る背負いベルトの取り付け構造を備えたランドセルの全体斜視図である。
【
図3】(a)は
図1に示すランドセルにおける第1調整部の平面図、(b)は(a)に示す第1調整部の上カバーを取って内部構成を示す平面図である。
【
図4】
図1に示すランドセルにおける左側の連結環、第1調整部、及び、第2調整部の関係を示す斜視図である。
【
図5】(a)は左側の第1調整部及び第2調整部のそれぞれの構成を示す底面図、(b)は右側の第1調整部及び第2調整部のそれぞれの構成を示す底面図である。
【
図6】(a)は左側の第1調整部と左側の第2調整部とを互いに対向させた状態を示す平面図、(b)は左側の第2調整部に左側の第1調整部を係合させた状態を示す平面図、(c)は、(b)の状態から、連結環を前側の端部側へ移動させた状態を示す平面図、(d)は、(c)の状態から、第2調整部に対して第1調整部を揺動させた状態を示す断面図である。
【
図7】(a)は
図6(a)の7A-7A’線における断面図、(b)は
図6(b)の7B-7B’線における断面図、(c)は
図6(c)の7C-7C’線に沿った断面図、(d)は、
図6(d)の7D-7D’線に沿った断面図である。
【
図8】
図1に示すランドセルを背負った状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る背負いベルトの取付構造について図面を参照しつつ説明する。以下の説明においては、ランドセルに適用した例を挙げるが、本発明の背負いベルトの取付構造は、ランドセルに限定されず、例えばリュックサックその他の背負い鞄(背のう)も対象としている。
【0019】
図1は、本実施形態に係る背負いベルトの取り付け構造を備えたランドセル11の全体斜視図である。
図2は、
図1に示すランドセル11の底面図である。
図3(a)は、ランドセル11における第1調整部の平面図、(b)は(a)に示す第1調整部40Aの上カバーを取って内部構成を示す平面図である。
図4は、ランドセル11における左側の連結環31A、第1調整部40A、及び、第2調整部50Aの関係を示す斜視図、
図5(a)は左側の第1調整部40A及び第2調整部50Aのそれぞれの構成を示す底面図、(b)は右側の第1調整部40B及び第2調整部50Bのそれぞれの構成を示す底面図である。
図2及び
図3(a)は背負いベルトに力を加えていない状態を示している。
以下の説明において、ランドセル11の背当て部13側(
図2の下側)を前方、蓋板16側(
図2の上側)を後方、
図2における左側を左方向、右側を右方向、とそれぞれ称する。
【0020】
図1に示すように、背のうとしてのランドセル11は背のう部本体15を有し、この背のう部本体15は、
図8において実線で示すように使用者12の背中12aに密着状態で接し、支持する平板状の背当て部13と、使用者12の背中12aに背負われて内部に収納部14とを備える。
【0021】
全体として箱状をなす背のう部本体15は、蓋板16を
図1の矢印A方向に開くことで内部の収納部14の上部を開口することが可能とされ、収納部14内に教科書や学用品などを収納可能にしている。ランドセル11は、左右一対の各背負いベルトを備え、これらの背負いベルトは、使用者12の左右の肩部に背のう部本体15を背負わせるべく掛け回され、背のう部本体15の背当て部13の上方にその上端部が支持され、背のう部本体15の背当て部13の下端部側で支持される。
【0022】
左の背負いベルトは、背のう部本体15の背当て部13の上側に備えられる連結体19Aにその上端部を結着してなる、上ベルト17Aと、背のう部本体15の背当て部13の下部に下端部が支持される下ベルト18Aと、を備える。
【0023】
左の背負いベルトと同様に、右の背負いベルトは、上ベルト17Bと下ベルト18Bとを備え、上ベルト17Bは連結体19Bに上端部を結着される。上ベルト17A、17Bと、下ベルト18A、18Bとは、掛け回す使用者12の肩部のサイズに対応し、その結合位置を可変にし、長さ調整可能に相互に連結可能とされる。
【0024】
一対をなす上ベルト17A、17Bは、上述のように背のう部本体15の背当て部13の上側にそれぞれ配設され、支持される連結体19A、19Bに、その上端部がそれぞれ連結されて結合してなる。左右に備えられる連結体19A、19Bは背当て部13の上側中心を基準としてそれぞれ前方へ向くことが可能とされている。
【0025】
左の背負いベルトにおいて、上ベルト17Aの下端と下ベルト18Aの上端との連結は、下ベルト18Aの上端に支持されるバックル状の環体20Aに、上ベルト17Aの下端側を挿通させ、上ベルト17Aの下端側における任意の長さ位置を環体20Aに止着し、結合することにより行うようにしている。
【0026】
右の背負いベルトも左の背負いベルトと同様の構成であって、上ベルト17Bの下端と下ベルト18Bの上端との連結は、下ベルト18Bの上端に支持されるバックル状の環体20Bに、上ベルト17Bの下端側を挿通させ、上ベルト17Bの下端側における任意の長さ位置を環体20Bに止着し、結合することにより行うようにしている。
【0027】
左の背負いベルトに対する環体20Aには止着針21Aが支持されており、また、上ベルト17Aの下端側には、その長さ方向において所定間隔をもって止着孔22Aが複数穿設されている。環体20Aの止着針21Aを、上ベルト17Aの任意の位置の止着孔22Aに止着することにより、環体20Aに挿通される上ベルト17Aの下端部の環体20Aに対する止着結合位置を可変にしている。このような結合により、上ベルト17Aと下ベルト18Aを長さ調整可能に相互に連結させることが可能となり、左側の背負いベルトの全体の長さを使用者12の肩部のサイズに合わせて調整することが可能となる。
【0028】
右の背負いベルトについても左の背負いベルトと同様であって、環体20Bには止着針21Bが支持され、上ベルト17Bの下端側には、その長さ方向において所定間隔をもって止着孔22Bが複数穿設されている。環体20Bの止着針21Bを、上ベルト17Bの任意の位置の止着孔22Bに止着することにより、環体20Bに挿通される上ベルト17Bの下端部の環体20Bに対する止着結合位置が可変となり、これによって、上ベルト17Bと下ベルト18Bを長さ調整可能に相互に連結させることが可能となり、右側の背負いベルトの全体の長さを使用者12の肩部のサイズに合わせて調整することが可能となる。
【0029】
図2に示すように、蓋板16の下端からは引張帯23が延びており、この引張帯23の先端には、尾錠24が回動可能に設けられている。この尾錠24は、収納部14の底部に設けた雄部(不図示)に対して、回転位置に対応して着脱自在となるように構成されている。この構成により、尾錠24の回転位置に応じて、蓋板16は、尾錠24によって固定されて閉じた状態と、尾錠24から離間可能となって開くことができる状態とが選択可能となる。
【0030】
図2に示すように、背のう部本体15の底面15aにおいて、尾錠24の左右両側には、一対の第1調整部40A、40Bと一対の第2調整部50A、50Bとが設けられている。一対の第1調整部40A、40Bは互いに同一の形状を有し、平面視楕円形状の外形を有する。一対の第2調整部50A、50Bは互いに対称となる形状を備え、ランドセル11の底面15aにおいて互いに左右対称となるように配置される。
【0031】
<第1調整部40A、40B>
図2に示すように、左側の第1調整部40Aは、左側の連結環31Aの移動方向を規定する第1案内経路としての案内孔42Aが設けられた本体部41Aを備える。案内孔42Aは、平面視楕円形状の本体部41Aの長軸方向(所定方向、
図3(a)の上下方向)に沿って延びている。
【0032】
右側の第1調整部40Bは、右側の連結環31Bの移動方向を規定する第1案内経路としての案内孔42Bが設けられた本体部41Bを備える。案内孔42Bは、平面視楕円形状の本体部41Bの長軸方向に沿って延びている。
【0033】
次に、左側の第1調整部40Aについて、対応する、連結環31A及びばね47Aとの関係について説明する。右側の第1調整部40Bについては、左側の第1調整部40Aと同様であるため、説明を省略する。
【0034】
図4に示すように左側の連結環31Aからは軸部32Aが延びており、この軸部32Aは、本体部41Aを厚み方向に貫くように、案内孔42Aに挿通され、その先端部(上端部)には案内孔42Aの幅よりも大きな平面形状を有する止め板46Aが固定される(
図3(a)、
図7(a)~(d)参照)。止め板46Aは本体部41Aの上側(連結環31A側から見て本体部41Aの裏側)に配置されているため、連結環31Aは、案内孔42Aから外れることなく、かつ、案内孔42Aが延びる方向である、方向D11又は方向D12に沿って移動可能とされる。
【0035】
図3(a)及び
図7(a)~(d)に示すように、止め板46Aの上側には軸部43Aが、軸部32Aと中心軸を共通とするように固定されている。この軸部43Aの先端には、弾性体としてのばね47Aの一端が固定されており、このばね47Aの他端は本体部41Aに固定されている。このばね47Aはコイルばねである。
【0036】
背負いベルトの下ベルト18Aからの力が加わっていない状態においては、ばね47Aが収縮しようとする弾性力により、止め板46Aは、案内孔42Aにおいて、最も後側(後側の端部45A側)に位置する。したがって、軸部43Aを介して止め板46Aと一体化されている連結環31Aに対しても、後側へ付勢するばね47Aの弾性力が働き、これによって本体部41Aの後側の端部45A側に位置する。
【0037】
これに対して、使用者12がランドセル11を背負うときや、外すときなどに背負いベルトを操作すると、その操作力に応じてばね47Aが伸張し、案内孔42Aにおいて、一体となった止め板46Aと連結環31Aが前側の端部44A側へ移動する。したがって、ばね47Aの弾性力によって、背負いベルトと背のう部本体15との間隔が変更可能となる。
【0038】
一対の本体部41A、41Bを構成する材料は、内蔵するばねの弾性力や一対の連結環31A、31Bの移動に対する耐久性・剛性、一対の第2調整部50A、50Bに対する揺動における耐久性、ランドセル11全体の重量や重量バランスなどを鑑みて選択することが好ましく、例えば、硬性の合成樹脂や、アルミニウムなどの軽量の金属で構成するとよい。
【0039】
<第2調整部50A、50B>
図4に示すように、左側の第2調整部50Aは、平面視略扇状の固定板51Aに、第2案内経路としての案内孔52Aと、支持部としての支持孔53Aと、がそれぞれ厚み方向に貫通するように設けられている。
図4又は
図5(a)に示すように、案内孔52Aは、支持孔53Aの中心を中心とした円弧に沿って形成され、左側の第1調整部40Aが、支持孔53Aに回動可能に支持されたときに、その揺動方向を規定することとなる。支持孔53Aには、第1調整部40Aの底部から延びる回動軸48Aが挿入され、回動軸48Aは支持孔53Aによって回動可能に支持される。上記回動軸48Aは、平面視楕円形状の第1調整部40Aの長軸方向の一方の端部45Aに、上側(第2調整部50Aに向かう側)に延びるように設けられている。
【0040】
第1調整部40Aの長軸方向の他方の端部44Aには、回動軸48Aと平行に延びるように軸部49Aが設けられている。この軸部49Aは、案内孔52Aに挿入され、回動軸48Aが支持孔53Aに挿入された状態で回動するときに、案内孔52A内を摺動しつつ移動する。これによって、第1調整部40Aは、第2調整部50Aに対して、回動軸48Aの回動にしたがって、方向D13又は方向D14に揺動する(
図4参照)。したがって、第1調整部40Aの揺動の角度範囲は案内孔52Aが設けられた範囲で規定される。さらに、軸部49Aが案内孔52A内で摺動する、すなわち、保持構造としての軸部49Aと案内孔52Aとの間で、軸部49Aの外周面と案内孔52Aの内側面とが互いに摺接した状態で、軸部49Aが移動するため、軸部49Aの移動を停止すると、案内孔52Aとの摺接による接触抵抗でその位置が保持される。
【0041】
左側の第2調整部50Aと同様に、
図5(b)に示すように、右側の第2調整部50Bは、平面視略扇状の固定板51Bに、第2案内経路としての案内孔52Bと、支持部としての支持孔53Bと、がそれぞれ厚み方向に貫通するように設けられている。案内孔52Bは、支持孔53Bの中心を中心とした円弧に沿って形成され、右側の第1調整部40Bが、支持孔53Bに回動可能に支持されたときに、その揺動方向を規定する。左側の第2調整部50Aの場合と同様に、支持孔53Bには、第1調整部40Bの底部から延びる回動軸(不図示)が挿入され、その回動軸は支持孔53Bによって回動可能に支持される。上記回動軸は、右側の第2調整部50Aの回動軸48Aと同様に、平面視楕円形状の第1調整部40Bの長軸方向の一方の端部45Bに、上側(第2調整部50Bに向かう側)に延びるように設けられている。右側の第2調整部50Bの各部は、左側の第2調整部50Aの各部とそれぞれ対をなすように設けられている。
【0042】
第1調整部40Bの長軸方向の他方の端部44Bには、右側の第2調整部50Aの軸部49Aと同様に、軸部49Bが延びるように設けられている。この軸部49Bは、案内孔52Bに挿入され、一方の端部45Bに設けた回動軸(不図示)が支持孔53Bに挿入された状態で回動するときに、案内孔52B内を摺動しつつ移動する。これによって、第1調整部40Bは、第2調整部50Bに対して、上記回動軸の回動にしたがって揺動する。これにより、第1調整部40Bの揺動の角度範囲は案内孔52Bが設けられた範囲で規定される。さらに、軸部49Bが案内孔52B内で停止すると、案内孔52Bとの摺接によってその位置が保持され、軸部49Aと案内孔52Aとが保持構造として機能する。
【0043】
図5(a)に示すように、左側の案内孔52Aは、支持孔53Aの中心に関し、第2調整部50Aにおいて角度θ(所定角度)をなすように形成されている。この角度θは、ランドセル11の底部としての底面15aにおいて、最も内側(右側)の基準位置P11から始まり、最も左側の最大角度位置P12までの角度である。基準位置P11は、支持孔53Aの中心に対し、左右方向において対応する位置となる。
【0044】
一方、
図5(b)に示すように、右側の案内孔52Bは、支持孔53Bの中心に関し、第2調整部50Bにおいて、左側の案内孔52Aと同じ角度θ(所定角度)をなすように形成されている。この角度θは、ランドセル11の底面15aにおいて、最も内側(左側)の基準位置P21から始まり、最も左側の最大角度位置P22までの角度である。基準位置P21は、左右方向において支持孔53Bの中心に対応する位置である。
【0045】
第2調整部50A、50Bは、底面15aにおいて左右対称に配置されているため、案内孔52A、52Bも左右対称に設けられており、第1調整部40A、40Bはそれぞれ角度θの範囲内で揺動可能となる。
【0046】
上記基準位置P11、P21はそれぞれ、左右方向において、支持孔53A、53Bに対応する位置としたが、その位置には限定されず、P11、P21が互いに近づくような位置、又は、互いに遠くなる位置に配置してもよい。ただし、ランドセル11の背負いベルトの操作性の点からは、上記基準位置P11、P21と同じ位置、又は、それよりも外側にそれぞれ配置することが好ましい。
【0047】
また、最大角度位置P12、P22はそれぞれ、
図5(a)、(b)に示す位置には限定されない。ただし、ランドセル11の背負いベルトの操作性の点を考慮すると、左右方向において支持孔53A、53Bに対応する位置よりも外側であって、左右方向に沿う位置に至らない範囲の位置であることが好ましい。
【0048】
使用者12がランドセル11を脱着するときの動作の自由度と、角度θが大きすぎることによる不便性とのバランスを考慮すると、基準位置P11、P21と最大角度位置P12、P22は、左右方向において支持孔53A、53Bに対応する位置から、左右方向に沿う位置までの範囲で、角度θは15度以上75度以下の範囲であることが好ましく、さらには、20度以上50度以下の範囲であると、脱着容易性と操作性のバランスの面等でより好ましい。
【0049】
一対の固定板51A、51Bを構成する材料は、第1調整部40A、40Bの揺動に対する耐久性・剛性、ランドセル11全体の重量や重量バランスなどを鑑みて選択することが好ましく、第1調整部40A、40Bの本体部41A、41Bと同様に、例えば、硬性の合成樹脂や、アルミニウムなどの軽量の金属で構成するとよい。
【0050】
次に、左側の第1調整部40Aと左側の第2調整部50Aとの係合、左側の第1調整部40Aに対する左側の連結環31Aの移動、及び、左側の第2調整部50Aに対する左側の第1調整部40Aの揺動に関して、
図6(a)、(b)、(c)及び
図7(a)、(b)、(c)を用いて説明する。
【0051】
右側の第1調整部40Bと右側の第2調整部50Bとの係合、右側の第1調整部40Bに対する右側の連結環31B(軸部32B)の移動、及び、右側の第2調整部50Bに対する右側の第1調整部40Bの揺動は、左側の第1調整部40A、第2調整部50A、及び、連結環31Aの場合と同様であるため、説明を省略する。
なお、左側の第1調整部40A、第2調整部50A、及び、連結環31Aと、右側の第1調整部40B、第2調整部50B、及び、連結環31Bとは別個独立して動作可能である。
【0052】
図6(a)は、左側の第1調整部40Aと左側の第2調整部50Aとを互いに対向させた状態を示す平面図、
図7(a)は、
図6(a)の7A-7A’線における断面図である。
図6(b)は、第2調整部50Aに第1調整部40Aを係合させた状態を示す平面図、
図7(b)は
図6(b)の7B-7B’線における断面図である。
図6(c)は、
図6(b)の状態から、連結環31Aを前側の端部44A側へ移動させた状態を示す平面図、
図7(c)は
図6(c)の7C-7C’線に沿った断面図である。ここで、
図6(a)、(b)、(c)において、第1調整部40Aは第2調整部50Aに対して揺動させておらず、第2調整部50Aにおける、7A-7A’線、7B-7B’線、及び、7C-7C’線の位置は互いに同一であって、それぞれの線は案内孔52Aの幅方向の中心を通り。延伸方向に沿っている。
【0053】
図6(d)は、
図6(c)の状態から、第2調整部50Aに対して第1調整部40Aを揺動させた状態を示す断面図、
図7(d)は、
図6(d)の7D-7D’線に沿った断面図である。ここで、7D-7D’線は、案内孔52Aの幅方向の中心を通り。延伸方向に沿っている。なお、
図7(a)、(b)、(c)、(d)においては、ばね47Aの図示を省略している。
【0054】
図6(a)と
図7(a)に示すように、第1調整部40Aは、回動軸48Aと支持孔53Aが互いに対応し、かつ、軸部49Aが案内孔52Aに挿入可能となるように、第2調整部50Aに対して対向配置される。この状態から、
図6(b)と
図7(b)に示すように、支持孔53A内に回動軸48Aが、案内孔52A内に軸部49Aがそれぞれ配置されるように、第1調整部40Aは第2調整部50A側へ移動され、第1調整部40Aの本体部41Aの底面と第2調整部50Aの固定板51Aの上面とが互いに接触又は近接するように配置される。
【0055】
これにより、第1調整部40Aは、回動軸48Aが支持孔53Aによって回動可能に支持され、支持孔53Aの回りを揺動可能となる。第1調整部40Aが揺動すると、軸部49Aは案内孔52A内で摺動しつつ移動し、第1調整部40Aの揺動範囲は案内孔52Aが設けられた範囲で規定される。
【0056】
図6(c)と
図7(c)に示すように、
図6(b)と
図7(b)に示す状態から連結環31Aを方向D11に沿って前側へ移動させることができる。これにより、連結環31Aに接続された背負いベルトは、前側へ移動し、ランドセル11の背当て部13と使用者12の背中12aとの間に余裕が生じる。
【0057】
図6(d)と
図7(d)に示すように、
図6(c)と
図7(c)に示す状態から連結環31Aを方向D13に沿って外側へ移動させる、すなわち、第1調整部40Aを外側へ揺動させることができる。これにより、連結環31Aに接続された背負いベルトの下ベルト18Aが外側へ移動するため、使用者12の脇周辺と背負いベルトとの間隔が広がり、背負いベルトの掛け外しが容易となる。
【0058】
図8は、
図1に示すランドセル11を背負った状態を示す側面図である。
例えば、使用者12が、その背中12aに背当て部13を当てた状態で、一対の背負いベルトを前方向に引くと、ばね47Aの弾性力に逆らって一対の連結環31A、31Bが前側(背当て部13側)へ移動する。また、使用者12が背負いベルトを斜め前方へ引いたときは、第1調整部40A、40Bが引っ張り方向に対応した方向に沿うように揺動するとともに、使用者12の引っ張り力の大きさに応じて一対の連結環31A、31Bが前側へ移動する。すなわち、背負いベルトの下ベルト18A、18Bがランドセル11の底面15aにおいて支持される支持位置が、前後方向に変更される。ここで、使用者12による、左右の背負いベルトの引き方が異なる場合は、それぞれの背負いベルトにかかる力と方向に応じて第1調整部40A、40Bが、それぞれの引っ張り力に応じて揺動し、連結環31A、31Bがそれぞれ移動する。
【0059】
また、使用者12による背負いベルトの引っ張り方向が、左右方向外側である場合、又は、斜め前方であって第1調整部40A、40Bの揺動範囲を超える方向である場合、第1調整部40A、40Bは、最大角度位置P12、P22に至るまで揺動し、一対の連結環31A、31Bは、使用者12の引っ張り力の大きさに応じて前側の端部44A側へ移動する。すなわち、背負いベルトの下ベルト18A、18Bがランドセル11の底面15aにおいて支持される支持位置が、前後方向及び左右方向のいずれにも変更可能となる。
【0060】
このように、使用者12による左右の背負いベルトのそれぞれの操作により、第1調整部40A、40Bの揺動と連結環31A、31Bの移動とが互いに関連して生じるため、使用者12は、左右の背負いベルトの前後方向の位置と、背のう部本体15と背負いベルトとの間隔とを、状況に応じて、例えば、一方の手に別の荷物を保持している状況、周辺環境により左右の背負いベルトを均等に操作できない状況等に応じて、左右の背負いベルトを互いに別々に自在に操作することができる。よって、使用者12は、背負いベルトと背のう部本体15との間に、所望の方向に所望の間隔を形成できるため、使用者12の望む姿勢で、ランドセル11を容易に背負い、又は、外すことができる(
図7において破線で示す状態)。
【0061】
一方、背負いベルトを引く力を解除すると、第1調整部40A、40Bそれぞれの軸部49A、49Bの外周面と、対応する案内孔52A、52Bの内側面との摺接によって、第2調整部50A、50Bそれぞれに対する第1調整部40A、40Bの揺動が停止され、軸部49A、49Bの位置が維持される。さらに、左側の第1調整部40Aにおいては、ばね47Aの弾性力によって連結環31Aが後側の端部45A側へ復帰し、図示しないが、右側の第1調整部40Bについても同様に連結環31Bが後側の端部45A側の位置へ復帰する。これらの動作により、一対の背負いベルトを使用者12の胸12bに密着させることができ、使用者12の背中12aと背当て部13の密着度を高めることが可能となる(
図7において実線で示す状態)。
【0062】
ここで、保持構造としての軸部49A、49Bと案内孔52A、52Bとにおいて、互いに摺接する面の構成を変更することにより、保持強度としての摺接強度を調整することができる。例えば、小学校低学年向けには保持強度を低く設定し、高学年向けに保持強度を高くした、第1調整部40A、40Bと第2調整部50A、50Bとに交換可能としてもよい。
【0063】
また、上述の構成においては、第1調整部40A、40Bに、コイルばねであるばね47A(右側のばねは不図示)を用いていたが、一対の連結環31A、31Bを後側へ付勢することができれば、コイルばね以外の弾性体、例えばゴム材や、プラスチック材や、コイルばね以外の形態のばねを用いることもできる。
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
11 ランドセル(背のう)
12 使用者
12a 背中
12b 胸
13 背当て部
14 収納部
15 背のう部本体
15a 底面
16 蓋板
17A 左の背負いベルトの上ベルト
17B 右の背負いベルトの上ベルト
18A 左の背負いベルトの下ベルト
18B 右の背負いベルトの下ベルト
19A、19B 連結体
20A、20B 環体
21A、21B 止着針
22A、22B 止着孔
23 引張帯
24 尾錠
31A、31B 連結環
32A、32B 軸部
40A 左側の第1調整部
40B 右側の第1調整部
41A、41B 本体部
42A、42B 案内孔(第1案内経路)
43A 軸部
44A、44B 前側の端部
45A、45B 後側の端部
46A 止め板
47A ばね(弾性体)
48A 回動軸
49A、49B 軸部(保持構造)
50A 左側の第2調整部
50B 右側の第2調整部
51A、51B 固定板
52A、52B 案内孔(第2案内経路、保持構造)
53A、53B 支持孔(支持部)
P11、P21 基準位置
P12、P22 最大角度位置