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特開2023-132398消臭シート及びその製造方法並びに消臭方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132398
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】消臭シート及びその製造方法並びに消臭方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20230914BHJP
   D04H 1/58 20120101ALI20230914BHJP
   D04H 1/435 20120101ALI20230914BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A61L9/01 H
D04H1/58
D04H1/435
B32B5/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037676
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000201881
【氏名又は名称】倉敷繊維加工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(72)【発明者】
【氏名】玉上 和範
(72)【発明者】
【氏名】智羽 秀樹
【テーマコード(参考)】
4C180
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
4C180AA05
4C180AA10
4C180BB03
4C180BB04
4C180BB06
4C180BB07
4C180BB08
4C180BB11
4C180BB12
4C180BB14
4C180CC01
4C180CC15
4C180CC16
4C180CC17
4C180EB05X
4C180EB17X
4C180EB18X
4C180LL02
4F100AH05B
4F100BA03
4F100BA06
4F100CA12B
4F100CB03B
4F100DE00B
4F100DG15A
4F100DG15C
4F100GB71
4L047AA21
4L047AB02
4L047BA12
4L047CA05
4L047CA07
4L047CC16
(57)【要約】
【課題】
残土等の悪臭発生物質に薬剤を散布、噴霧又は混ぜ込むことなく、その悪臭発生物質から発生する悪臭を有効に抑えることができるだけでなく、施工作業に手間を要さない消臭シートを提供する。
【解決手段】
悪臭発生物質20に被覆させることで、悪臭発生物質20から発生する悪臭を抑える消臭シート10であって、消臭シート10の外面を形成する外側不織布11と、消臭シート10の内面を形成する内側不織布12と、外側不織布11と内側不織布12との間に挟み込まれた粉粒状の消臭剤13及びホットメルトパウダー14とで構成されたものを提供する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
悪臭発生物質に被覆させることで、悪臭発生物質から発生する悪臭を抑える消臭シートであって、
消臭シートの外面を形成する外側不織布と、
消臭シートの内面を形成する内側不織布と、
外側不織布と内側不織布との間に挟み込まれた粉粒状の消臭剤及びホットメルトパウダーと
で構成されたことを特徴とする消臭シート。
【請求項2】
消臭剤が少なくとも消臭成分として臭素化合物又は塩素化合物を含有するものとされ、
ホットメルトパウダーが融点100℃以下のものとされた
請求項1記載の消臭シート。
【請求項3】
外側不織布が、内側不織布よりも薄い請求項1又は2記載の消臭シート。
【請求項4】
消臭剤の粒径が50~2000μmとされ、
消臭剤の目付が50~500g/mとされ、
ホットメルトパウダーの目付が30~300g/mとされ、
外側不織布の目付が10~100g/mとされ、
内側不織布の目付が30~200g/mとされた
請求項1~3いずれか記載の消臭シート。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載の消臭シートを悪臭発生物質に被覆させる消臭方法。
【請求項6】
消臭シートに水を散布することで、消臭剤に含まれる水溶性の化学的消臭成分を水に溶け出させる請求項5記載の消臭方法。
【請求項7】
悪臭発生物質に被覆させることで、悪臭発生物質から発生する悪臭を抑える消臭シートの製造方法であって、
消臭シートの外面を形成する外側不織布と、消臭シートの内面を形成する内側不織布との間に、粉粒状の消臭剤と、ホットメルトパウダーとを挟み込んだ状態で熱処理をすることでホットメルトパウダーを溶融させ、外側不織布と内側不織布とをプレスして一体化させる
ことを特徴とする消臭シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残土等の悪臭発生物質から発生する悪臭を防ぐための消臭シートと、その消臭シートの製造方法と、その消臭シートを用いた消臭方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
土木工事現場(海洋等の水域を含む。)で発生する建設発生土(いわゆる残土)のなかには、悪臭を発生するものがある。例えば、海底の浚渫工事で発生する浚渫土は、陸揚げ後にそれに含まれる貝が腐敗して強烈な悪臭を放つ。また、船体等に付着した貝や、取水路等に付着した貝等も、除去されて廃棄されるところ、これらの廃棄貝も、陸揚げ後に腐敗して悪臭を放つ。特に、工場や発電所等の冷却水用取水路に付着する貝類等は、熱交換の効率低下を引き起こす原因となるため、定期的に除去され、大規模な取水路では、年間で除去される貝類等の量が膨大になることから、より強烈な悪臭が発生する。このような悪臭を放つ残土等は、そのままでは埋立土や造成土等として再利用できないため、海面処分場で処分されるか、分離処理(例えば特許文献1を参照。)や、脱水処理や、焼却処理等、所定の処理を行った上で再利用に供されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09-122629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、浚渫土等の残土は、上記の処理を待つ間、屋外のストックヤードで野晒しの状態で保管される。このため、ストックヤード周辺への悪臭被害が問題となることがある。この点、消臭作用のある薬剤を残土に噴霧することや、その薬剤を残土に混ぜ込むことで、悪臭を防ぐ試みも為されている。しかし、薬剤を散布する方法や、薬剤を混ぜ込む方法は、消臭効果が不十分な場合があることに加えて、薬剤の噴霧作業や混ぜ込み作業を行う際に、動力を要する設備機材が必要になるため、多大なコストと労力を要する。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、悪臭発生物質から発生する悪臭を有効に抑えることができるだけでなく、施工作業に手間を要さない消臭シートを提供するものである。また、この消臭シートの製造方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、
悪臭発生物質に被覆させることで、悪臭発生物質から発生する悪臭を抑える消臭シートであって、
消臭シートの外面を形成する外側不織布と、
消臭シートの内面を形成する内側不織布と、
外側不織布と内側不織布との間に挟み込まれた粉粒状の消臭剤及びホットメルトパウダーと
で構成されたことを特徴とする消臭シート
を提供することによって解決される。
【0007】
ここで、「消臭剤」とは、その消臭成分のうち、少なくとも一部が水溶性の成分を含むものをいう。すなわち、消臭剤に、不溶性の消臭成分が含まれている場合であっても、その他に水溶性の消臭成分が含まれているのであれば、その消臭剤は、「消臭剤」に該当するものとする。化学的に吸着を行う、又は、化学反応により消臭を行う消臭成分や、微生物に作用することで消臭を行う消臭成分(以下においては、これらの消臭成分を総称して「化学的消臭成分」と呼ぶことがある。)は、水溶性であることが多く、物理的に悪臭の吸着を行う消臭成分(以下においては、この消臭成分を総称して「物理的消臭成分」と呼ぶことがある。)は、不溶性であることが多い。
【0008】
本発明の消臭シートは、浚渫土(残土)等の悪臭発生物質に被覆させるだけで施工でき、施工に手間を要さないものとなっている。また、消臭シートで悪臭発生物質を被覆した状態で消臭を行うため、悪臭が外部に拡散しにくい。このため、周辺への悪臭被害を抑えることができる。加えて、近隣の人に対して、悪臭対策を行っていることを視覚的にアピールすることができる(近隣の人は、悪臭発生物質を被覆している消臭シートを見れば、悪臭対策が行われていることを容易に理解することができる。)。このため、近隣との不要なトラブルを未然に防ぐ効果も期待できる。
【0009】
さらに、本発明の消臭シートでは、外側不織布と内側不織布との間に、外側不織布と内側不織布とを一体化させるためのホットメルトパウダーを挟み込んでいる。このため、外側不織布や内側不織布に対して、消臭剤をしっかりと保持させることができる。また、消臭シートを容易に製造することもできる。すなわち、外側不織布と内側不織布との間に、粉粒状の消臭剤と、ホットメルトパウダーとを挟み込んだ状態で熱処理をすることでホットメルトパウダーを溶融させ、外側不織布と内側不織布とをプレスすれば、外側不織布と内側不織布とが一体化した消臭シートを得ることができる。
【0010】
さらにまた、本発明の消臭シートには、消臭成分(化学的消臭成分と物理的消臭成分)を略均一に保持させることができる。これにより、悪臭発生物質を均一にむらなく消臭することができる。加えて、本発明の消臭シートには、水溶性の消臭成分(上記の化学的消臭成分等)が保持されているため、消臭シートに水を散布することで、水溶性の消臭成分が溶け出し、さらなる消臭効果を得ることができる。本発明の消臭シートには、不溶性の消臭成分(上記の物理的消臭成分等)を保持させることもできる。不溶性の消臭成分(物理的消臭成分等)にも、悪臭発生物質の悪臭を軽減させる効果が見られるので、これを水溶性の消臭成分(化学的消臭成分等)と合わせて使用することで、悪臭発生物質の消臭に関して相乗効果が期待できる。
【0011】
本発明の消臭シートにおいて、消臭剤は、その消臭成分のうち少なくとも一部が水溶性のものであれば、特に限定されないが、臭素化合物又は塩素化合物を含有するものを用いることが好ましい。これにより、消臭剤の消臭作用を高めることができる。消臭成分として好適に利用可能な臭素化合物としては、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントインや、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントインや、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオールや、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール等が例示される。また、消臭成分として好適に利用可能な塩素化合物としては、1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントインや、1,3-ジクロロ-5-エチル-5-メチルヒダントイン等が例示される。この他、安息香酸や、安息香酸ナトリウムや、2,4-ヘキサジエン酸や、2,4-ヘキサジエン酸カリウム等も、消臭成分として好適に利用することができる。
【0012】
ただし、消臭剤の消臭成分として、上述した臭素化合物や塩素化合物等を用いると、外側不織布と内側不織布とを貼り合わせる際の熱処理において、その消臭成分が熱で分解するおそれや、反応性ガスや水蒸気が発生するおそれがある。このため、外側不織布と内側不織布との熱処理を高温で行うことは、好ましくない。したがって、ホットメルトパウダーとしては、融点が100℃以下のものを用いることが好ましい。これにより、外側不織布と内側不織布との熱処理を、100℃以下の低温で行うことが可能になり、上記のような不具合が生じないようにすることができる。
【0013】
本発明の消臭シートにおいては、外側不織布を、内側不織布よりも薄くすることが好ましい。上述したように、本発明の消臭シートは、水をかけて使用することもあるところ、外側不織布を薄くすることで、その水が消臭剤に届きやすくすることができる。ただし、内側不織布まで薄くすると、消臭シートにコシがなくなり、消臭シートが破れやすくなったり、消臭シートを施工しにくくなったりするおそれがある。このため、内側不織布の厚さは、ある程度確保することが好ましい。
【0014】
本発明の消臭シートにおいて、消臭剤の粒径は、特に限定されない。しかし、消臭剤の粒径が小さすぎると、消臭剤が、外側不織布や内側不織布の目を通過して消臭シートから脱落しやすくなるおそれがある。このため、消臭剤の粒径(消臭剤の粒径が一様でないときには、その平均値。以下同じ。)は、50μm以上とすることが好ましい。ただし、消臭剤の粒径が大きすぎると、消臭剤の比表面積が小さくなり、消臭剤の消臭作用が低下するおそれや、消臭剤が水に溶けにくくなるおそれがある。このため、消臭剤の粒径は、2000μm以下とすることが好ましい。
【0015】
消臭剤の目付(単位面積当たりの消臭シートに保持させる消臭剤の重量)は、消臭剤の種類等に応じて適宜決定される。しかし、消臭剤の目付が小さすぎると、所望の消臭効果が奏されにくくなるおそれがある。このため、消臭剤の目付は、50g/m以上とすることが好ましい。ただし、消臭剤の目付を大きくしすぎると、外側不織布と内側不織布とを一体化しにくくなるおそれや、消臭剤が消臭シートから脱落するおそれがある。このため、消臭剤の目付は、500g/m以下とすることが好ましい。
【0016】
ホットメルトパウダーの目付(単位面積当たりの消臭シートに保持させるホットメルトパウダーの重量)は、ホットメルトパウダーの種類等に応じて適宜決定される。しかし、ホットメルトパウダーの目付が小さすぎると、外側不織布と内側不織布とを一体化させにくくなる。このため、ホットメルトパウダーの目付は、30g/m以上とすることが好ましい。ただし、ホットメルトパウダーの目付を大きくしすぎると、ホットメルトパウダーが消臭剤の消臭作用を阻害するおそれがある。このため、ホットメルトパウダーの目付は、300g/m以下とすることが好ましい。
【0017】
外側不織布及び内側不織布の目付も特に限定されない。しかし、外側不織布及び内側不織布の目付が小さすぎると、外側不織布及び内側不織布の目が粗くなり、消臭剤を外側不織布及び内側不織布に保持させにくくなる。このため、外側不織布の目付は、10g/m以上とし、内側不織布の目付は、30g/m以上とすることが好ましい。ただし、外側不織布及び内側不織布の目付を大きくしすぎると、外側不織布及び内側不織布が重くなり、消臭シートが、持ち運びや施工をしにくいものとなる。このため、外側不織布の目付は、100g/m以下とし、内側不織布の目付は、200g/m以下とすることが好ましい。既に述べたように、外側不織布は、内側不織布よりも薄くすることが好ましいところ、外側不織布の目付を、内側不織布の目付よりも小さくする(内側不織布の目付を、外側不織布の目付よりも大きくする)ことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によって、悪臭発生物質から発生する悪臭を有効に抑えることができるだけでなく、施工作業に手間を要さない消臭シートを提供することが可能になる。また、この消臭シートの製造方法を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】消臭シートを施工した状態を示した断面図である。
図2】消臭シートの拡大断面図である。
図3】消臭シートの外面と内面を撮影した写真である。
図4】実験で使用した検体収容ボックスの内部を示した断面図である。
図5】検体収容ボックスを設置した状態を撮影した写真である。
図6】検体収容ボックスにサンプリングボックスを被せた状態を示した断面図である。
図7】(a)サンプリングボックスの内部の空気の採取に用いたにおい袋及びエアサンプラーと、(b)それらを用いてサンプリングボックスの内部の空気の採取している様子と、(c)臭気の測定に用いた北川式ガス検知器及び北川式ガス検知管とを撮影した写真である。
図8】実験で測定したアンモニア・アミン類の濃度の変化を示したグラフである。
図9】未使用の消臭シートと、実験で使用した消臭シートとを撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の消臭シートについて、図面を用いてより具体的に説明する。以下で述べる構成は、飽くまで好適な実施形態であり、本発明の消臭シートの技術的範囲は、以下で述べる構成に限定されない。本発明の消臭シートには、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。

【0021】
1.消臭シートの施工方法
図1は、本発明の消臭シート10を施工した状態を示した断面図である。本発明の消臭シート10は、図1に示すように、悪臭発生物質20の上側に被覆させるだけで施工することができる。このため、薬剤(消臭剤)を悪臭発生物質20に混ぜ込むための攪拌装置等、大掛かりな装置や設備を用いることなく、悪臭対策を容易に行うことができる。悪臭発生物質20に被せた消臭シート10が風で飛ばないように、消臭シート10に重石30を載せてもよい。また、消臭シート10を袋状にし、その消臭シート10で悪臭発生物質20を包み込む態様で施工することも可能である。
【0022】
悪臭発生物質20の山が大きく、その山を1枚の消臭シート10で覆うことができない場合には、複数枚の消臭シート10を使用するとよい。この場合には、複数枚の消臭シート10を、縫合や接着等によって互いに連結することもできる。また、消臭シート10を1重に重ねただけでは不安があるときには、消臭シート10を2重や3重に重ねて使用してもよい。この場合には、互いに重ねられる複数枚の消臭シート10を、縫合や接着等によって一体化させることもできる。
【0023】
本発明の消臭シート10で悪臭対策を行う悪臭発生物質20としては、浚渫土等の建設発生土(残土)のほか、下水処理施設、し尿処理施設、農業用排水処理施設、ごみ処理施設又は工場用排水処理施設等で発生する汚泥、脱水ケーキ、スクリーン渣又は沈砂等や、畜産施設で発生する糞尿等が例示される。肥料工場で保管される製品(肥料)や、その原料も、悪臭発生物質20として挙げることができる。また、取水口や水路に付着した貝殻や藻類を除去することによって発生した廃棄物も、悪臭発生物質20として挙げることができる。さらに、災害発生現場で発生した廃棄物も、悪臭発生物質20として挙げることができる。
【0024】
これらの悪臭発生物質20は、野積みの状態で保管されるか、非密閉の倉庫で保管されることが多く、周辺に悪臭被害をもたらすことがある。この点、悪臭発生物質20に消臭シート10を被せることで、悪臭発生物質20から発生する悪臭を遮蔽して周囲に拡散しないようにすることができる。加えて、悪臭発生物質20を被覆している消臭シート10を見れば、悪臭対策を行っていることが一目瞭然で周囲に伝わる。このため、近隣の人に安心感を与え、近隣との不要なトラブルの発生を未然に防ぐ効果も期待できる。

【0025】
2.消臭シートの構成
以上のように、本発明の消臭シート10は、悪臭発生物質20に被覆させて使用するものとなっている。消臭シート10の寸法は、特に限定されないが、ロールに巻装することができ、そのロールから人手で繰り出すことができる程度とすることが好ましい。これにより、消臭シート10の運搬や保管が容易となるだけでなく、消臭シート10の施工も容易となる。
【0026】
この点、消臭シート10を長めにしておくと、必要な長さだけをカットして消臭シート10を使用することができる。しかし、消臭シート10を長くしすぎると、消臭シート10のロールが重くなるおそれがある。このため、消臭シート10の長さ(ロールに巻き取る方向の長さ。以下同じ。)は、30m以下とすることが好ましく、20m以下とすることがより好ましい。ただし、消臭シート10を短くしすぎると、悪臭発生物質20の山が大きいときに、消臭シート10のロールを多数本使用する必要が生じ、その分、施工が面倒になる。このため、消臭シート10の長さは、3m以上とすることが好ましく、5m以上とすることがより好ましい。
【0027】
消臭シート10の幅(ロールに巻き取る方向に垂直な方向の幅。以下同じ。)も、特に限定されない。しかし、消臭シート10の幅が狭すぎると、悪臭発生物質20の山が大きいときに、消臭シート10の施工が面倒になる。このため、消臭シート10の幅は、0.5m以上とすることが好ましく、1m以上とすることがより好ましい。ただし、消臭シート10の幅が広すぎると、消臭シート10のロールが重くなり、消臭シート10を施工しにくくなるおそれがある。このため、消臭シート10の幅は、3m以下とすることが好ましい。
【0028】
図2は、消臭シート10の拡大断面図である。消臭シート10は、図2に示すように、消臭シート10の外面を形成する外側不織布11と、消臭シート10の内面を形成する内側不織布12とを重ねた複層構造を有している。外側不織布11と内側不織布12との間には、粉粒状の消臭剤13とホットメルトパウダー14とが挟み込まれている。このように、外側不織布11と内側不織布12との間に、消臭剤13とホットメルトパウダー14とを挟み込んだ状態で、熱処理を行うことでホットメルトパウダー14が溶融し、プレス加工することで、外側不織布11と内側不織布12とが一体化され、消臭剤13が消臭シート10の内部にしっかりと保持された状態となる。参考までに、図3に、消臭シート10の外面と内面を撮影した写真を示す。
【0029】
外側不織布11と内側不織布12とをプレス加工する方法は、特に限定されないが、本例においては、外側不織布11と内側不織布12とを重ねた状態で、一対のローラの隙間に通すことによって、外側不織布11と内側不織布12とをプレスしている。消臭剤13及びホットメルトパウダー14は、外側不織布11及び内側不織布12がローラに導入されるよりも前に、外側不織布11か内側不織布12のいずれかの接合面に略均一に配される。
【0030】
このように、消臭シート10には、消臭成分(消臭剤13)が略均一に保持されているため、図1に示すように、消臭シート10で悪臭発生物質20を被覆させることによって、悪臭発生物質20を均一にむらなく消臭することができる。また、消臭シート10自身に消臭成分(消臭剤13)が保持されているため、その消臭作用が持続しやすい。
【0031】
さらに、消臭成分として、消臭剤13(消臭成分の少なくとも一部に水溶性のものを含む消臭剤)を用いたため、それに水をかけることで、外側不織布11と内側不織布12との間の領域及び悪臭発生物質20の表面に消臭剤13をより均一に行き渡らせることができる。したがって、優れた消臭作用を長期間にわたって得ることもできる。悪臭発生物質20が屋外で野晒しの状態で置かれているときには、人為的に散水しなくても、雨が降ると同様の効果を得ることができる。

【0032】
2.1 消臭剤
消臭剤13は、悪臭発生物質20が発生する悪臭を抑えるためのものである。消臭剤13は、その消臭成分のうち少なくとも一部が水溶性のものであれば、特に限定されない。本例においては、不溶性を有する物理的消臭成分に、水溶性を有する化学的消臭成分を混ぜたものを、消臭剤13として用いている。消臭剤13の化学的消臭成分及び物理的消臭成分は、消臭シート10に略均一に分散させている。水溶性の化学的消臭成分と、不溶性の物理的消臭成分とのうち、いずれか一方だけでも、悪臭発生物質20の悪臭を軽減させる効果が見られるところ、これらを併用することで、悪臭発生物質20の消臭に関して相乗効果が期待できる。
【0033】
物理的消臭成分としては、シリカゲルや、活性炭や、活性アルミナや、ゼオライトや、多孔質シリカ等を粉粒状としたものが例示される。一方、化学的消臭成分としては、有機系、無機系又は天然系等の各種消臭成分を使用することができるが、臭素化合物又は塩素化合物を使用することが好ましい。これにより、上述した悪臭発生物質20から発せられる悪臭を効果的に除去することが可能になる。
【0034】
消臭剤13の消臭成分として好適に利用可能な臭素化合物としては、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントインや、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントインや、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオールや、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール等が例示される。また、消臭剤13の消臭成分として好適に利用可能な塩素化合物としては、1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントインや、1,3-ジクロロ-5-エチル-5-メチルヒダントイン等が例示される。この他、安息香酸や、安息香酸ナトリウムや、2,4-ヘキサジエン酸や、2,4-ヘキサジエン酸カリウム等も、消臭成分として好適に利用することができる。
【0035】
消臭剤13の粒径(粒径が一様でないときには、その平均値。以下同じ。)は、既に述べたように、50~2000μmの範囲とすることが好ましい。消臭剤13が消臭シート10からより脱落しにくくするためには、消臭剤13の粒径を、100μm以上とすることが好ましく、300μm以上とすることがより好ましく、500μm以上とすることがさらに好ましい。
【0036】
一方、消臭剤13の消臭作用や水溶性を高めることを考慮すると、消臭剤13の粒径を、1500μm以下とすることが好ましく、1200μm以下とすることがより好ましく、1000μm以下とすることがさらに好ましい。本例の消臭シート10においては、粒径が100μm以下の消臭剤13が5%、粒径が100~500μmの消臭剤13が40%、粒径が500~2000μmの消臭剤13が55%となっており、消臭剤13の平均粒径は、700μm前後(600~800μm)となっている。
【0037】
消臭剤13の使用量は、消臭剤13の種類等によっても異なる。しかし、消臭剤13の量が少なすぎると、消臭シート10による消臭作用が低下する。このため、単位面積当たりの消臭シート10に保持させる消臭剤13の重量(目付)は、50g/m以上とすることが好ましい。消臭剤13の目付は、100g/m以上とすることがより好ましく、150g/m以上とすることがさらに好ましい。
【0038】
ただし、消臭剤13の量が多すぎると、消臭剤13が重くなるだけでなく、外側不織布11や内側不織布12も重いもの(多量の消臭剤13を保持できる厚手のもの)を使用する必要が生じる。加えて、ホットメルトパウダー14も多量に使用する必要が生じる。このため、消臭シート10が、重く撓みにくくなり、消臭シート10の施工性が低下するおそれがある。したがって、消臭剤13の目付は、500g/m以下とすることが好ましい。消臭剤13の目付は、400g/m以下とすることがより好ましく、300g/m以下とすることがさらに好ましい。本例の消臭シート10においては、消臭剤13の目付を200~250g/mとしている。

【0039】
2.2 ホットメルトパウダー
ホットメルトパウダー14は、外側不織布11と内側不織布12とを一体化するためのものである。ホットメルトパウダー14の種類は、特に限定されず、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)系のものや、ポリオレフィン系のものや、ポリアミド系のものや、合成ゴム系のものや、アクリル樹脂系のものや、ポリウレタン系のもの等が例示される。しかし、消臭剤13の消臭成分のうち、上述した臭素化合物(1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン等)や塩素化合物(1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン等)や、安息香酸等は、高温で加熱するとその消臭成分が熱で分解するおそれや、反応性ガスや水蒸気が発生するおそれがある。
【0040】
このため、消臭剤13を高温で加熱しなくても済むように、ホットメルトパウダー14として、融点が100℃以下のものを用いることが好ましい。ただし、ホットメルトパウダー14の融点が低すぎると、外側不織布11と内側不織布12との接着強度を高めにくくなる。このため、ホットメルトパウダー14は、融点が80℃以上のものを用いることが好ましい。本例では、融点が80~100℃の範囲にあるEVA系のホットメルトパウダー14を用いている。
【0041】
ホットメルトパウダー14の使用量は、ホットメルトパウダー14の種類等によっても異なる。しかしホットメルトパウダー14の量が少なすぎると、外側不織布11と内側不織布12との接着強度を高めにくくなる。このため、単位面積当たりの消臭シート10に保持させるホットメルトパウダー14の重量(目付)は、30g/m以上とすることが好ましい。ホットメルトパウダー14の目付は、50g/m以上とすることがより好ましく、70g/m以上とすることがさらに好ましい。
【0042】
ただし、ホットメルトパウダー14の量が多すぎると、ホットメルトパウダー14が重くなるだけでなく、外側不織布11や内側不織布12も重いもの(多量のホットメルトパウダー14を保持できる厚手のもの)を使用する必要が生じる。このため、消臭シート10が、重く撓みにくくなり、消臭シート10の施工性が低下するおそれがある。加えて、消臭剤13の消臭作用をホットメルトパウダー14が阻害するおそれもある。したがって、ホットメルトパウダー14の目付は、300g/m以下とすることが好ましい。消臭剤13の目付は、250g/m以下とすることがより好ましく、200g/m以下とすることがさらに好ましい。本例の消臭シート10においては、ホットメルトパウダー14の目付を100~150g/mとしている。

【0043】
2.3 外側不織布
外側不織布11は、消臭剤13を消臭シート10の外面側から押さえつけるためのものである。この外側不織布11は、多数本の短繊維を絡ませることによって形成される。外側不織布11の形成方法(ウェブの形成方法)としては、乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブローン法、エアレイド法、ニードルパンチ法、ケミカルボンド法等、各種の方法を挙げることができる。本例では、ケミカルボンド法を採用している。
【0044】
外側不織布11を形成する短繊維としては、ポリエステルやポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂繊維が代表的であるが、これら以外にも、レーヨン等の再生繊維や、綿やパルプ等の天然繊維等を用いることもできる。本例においては、外側不織布11を、ポリエステル製の短繊維により形成している。
【0045】
外側不織布11を形成する短繊維の太さは、特に限定されない。しかし、上述したように、外側不織布11には、消臭剤13やホットメルトパウダー14が保持されるところ、これらの消臭剤13やホットメルトパウダー14が外側不織布11から脱落しにくくすることを考慮すると、その短繊維を細くして、外側不織布11を緻密な構造とした方が有利である。
【0046】
このため、外側不織布11を形成する短繊維の太さは、100dtex以下とすることが好ましい。不織布形成用短繊維の太さは、50dtex以下とすることがより好ましく、10dtex以下とすることがさらに好ましい。本例においては、外側不織布11を形成する短繊維の太さを、かなり細めの3dtex以下としている。外側不織布11を形成する短繊維の太さに、特に下限はないが、通常、0.1dtex以上とされる。
【0047】
外側不織布11の厚さも、特に限定されない。しかし、既に述べたように、消臭シート10は、その外面(外側不織布11側の面)に水をかけて使用する場合がある。このため、外側不織布11を薄くした方が、消臭シート10にかけた水が消臭剤13に届きやすくなる。
【0048】
したがって、外側不織布11の厚さは、600μm以下とすることが好ましく、450μm以下とすることがより好ましい。ただし、外側不織布11を薄くしすぎると、外側不織布11が破れやすくなる。このため、外側不織布11の厚さは、通常、200μm以上とされる。本例において、外側不織布11の厚さは、300μmとなっている。
【0049】
外側不織布11の目付も特に限定されない。しかし、外側不織布11の目付を小さくしすぎると、外側不織布11の目が粗くなり、消臭剤13が外側不織布11を通り抜けて脱落するおそれがある。このため、外側不織布11の目付は、10g/m以上とすることが好ましい。外側不織布11の目付は、20g/m以上とすることがより好ましく、30g/m以上とすることがさらに好ましい。外側不織布11の目付に、特に上限はないが、通常、100g/m以下とされる。本例において、外側不織布11の目付は、40g/mとなっている。

【0050】
2.4 内側不織布
内側不織布12は、消臭剤13を消臭シート10の内面側から押さえつけるとともに、消臭シート10にコシを付与するためのものである。この内側不織布12も、外側不織布11と同様、多数本の短繊維を絡ませることによって形成される。内側不織布12の形成方法や、内側不織布12を形成する短繊維の種類や太さ等は、上述した外側不織布11と同様である。
【0051】
ただし、内側不織布12は、外側不織布11よりも厚くすることが好ましい。既に述べたように、内側不織布12は、消臭シート10にコシを付与する機能を有しているからである。
【0052】
内側不織布12の厚さは、600μm以上とすることが好ましく、700μm以上とすることがより好ましい。ただし、内側不織布12を厚くしすぎると、消臭シート10が重くなってしまう。このため、内側不織布12の厚さは、通常、1200μm以下とされる。本例において、内側不織布12の厚さは、850μmとなっている。
【0053】
また、内側不織布12は、外側不織布11よりも目を細かくする(目付を大きくする)ことが好ましい。これにより、内側不織布12にコシを付与し、消臭シート10が破れにくくすることができる。加えて、消臭シート10を施工したとき(消臭シート10を悪臭発生物質20に被覆させたとき)には、通常、内側不織布12が下側を向く(消臭剤13の下側に内側不織布12が位置する)ところ、内側不織布12の目をより細かくすることで、内側不織布12でしっかりと消臭剤13を支持することも可能になる。
【0054】
このため、内側不織布12の目付は、30g/m以上とすることが好ましい。内側不織布12の目付は、50g/m以上とすることがより好ましく、70g/m以上とすることがさらに好ましい。ただし、内側不織布12の目付を大きくしすぎると、消臭シート10が重くなるおそれがある。このため、内側不織布12の目付は、通常、200g/m以下とされる。内側不織布12の目付は、150g/m以下とすることが好ましく、120g/m以下とすることがより好ましい。本例において、内側不織布12の目付は、90g/mとなっている。

【0055】
3.実験
本発明の消臭シート10の消臭効果及び耐久性を確認するため、実験を行った。

【0056】
3.1 実験方法
実験は、以下の手順1.1~1.8により行った。この実験は、実験開始日を1日目として29日目まで、計28日間(4週間)行った。
[手順1.1] まず、悪臭発生物質20を用意する。悪臭発生物質20としては、鶏糞肥料18Lに硫酸アンモニウム120g及び尿素120gを加えて攪拌したもの計8つ用意する。これらの悪臭発生物質20は、図4に示すように、それぞれを別のビニル袋40に入れた状態で別のボックス(検体収容ボックスB)内に収容する。図4は、実験で使用した検体収容ボックスBの内部を示した断面図である。
[手順1.2] 続いて、図5に示すように、野晒しの場所に、シートS(ブルーシート)を敷き、そのシートSの上側に、手順1で用意した計8個の検体収容ボックスB(検体収容ボックスB~B)を一定間隔で設置する。図5は、検体収容ボックスBを設置した状態を撮影した写真である。
[手順1.3] 手順1.2で設置した計8個の検体収容ボックスB~Bのうち、検体収容ボックスB,Bは、そのままの状態とする。以下においては、この検体収容ボックスB,Bを「比較例1」と表記する。
[手順1.4] また、手順1.2で設置した計8個の検体収容ボックスB~Bのうち、検体収容ボックスB,Bは、その内部に収容されている悪臭発生物質20に消臭剤を混合した状態とする。以下においては、この検体収容ボックスB,Bを「比較例2」と表記する。
[手順1.5] さらに、手順1.2で設置した計8個の検体収容ボックスB~Bのうち、検体収容ボックスB,Bは、消臭シート10を被せるとともに、その消臭シート10が雨で濡れないように雨除け41で覆った状態とする。以下においては、この検体収容ボックスB,Bを「実施例1」と表記する。
[手順1.6] さらにまた、手順1.2で設置した計8個の検体収容ボックスB~Bのうち、検体収容ボックスB,Bは、消臭シート10を被せるものの、その消臭シート10が外面に露出した状態とする。検体収容ボックスB,Bを覆う消臭シート10には、水を定期的に掛け、その消臭シート10が常に湿った状態を保つようにする。以下においては、この検体収容ボックスB,Bを「実施例2」と表記する。
[手順1.7] 手順1.3~1.6で用意された比較例1,2及び実施例1,2の検体収容ボックスB~B近傍の空気を1~9日間隔で計7回サンプリング(第1日目、第2日目、第4日目、第8日目、第15日目、第24日目及び第29日目の計7回サンプリング)し、そのサンプリングされた空気の臭気(空気に含まれる硫化水素、メルカプタン類、有機酸類及びアンモニア・アミン類の濃度)を測定する。
[手順1.8] 上記1.7の測定と同じタイミングで、実施例1,2の検体収容ボックスB~Bを覆う消臭シート10の状態を目視により確認する。
【0057】
上記の手順1.7における、臭気(硫化水素、メルカプタン類、有機酸類及びアンモニア・アミン類の濃度)の測定は、以下の手順2.1~2.3により行った。
[手順2.1]
まず、図6に示すように、検体収容ボックスBの上側に、サンプリングボックス42(衣装用の樹脂ケースにサンプリング口42aを取り付けたもの)を被せる。図6は、検体収容ボックスBにサンプリングボックス42を被せた状態を示した断面図である。
[手順2.2]
続いて、図7(a)に示すにおい袋43及びエアサンプラー44をサンプリング口42aに接続し、図7(b)に示すように、サンプリングボックス42内の空気(臭気)を採取する。図7(a)は、サンプリングボックス42の内部の空気の採取に用いたにおい袋43及びエアサンプラー44を撮影した写真であり、図7(b)は、それらを用いてサンプリングボックス42の内部の空気の採取している様子を撮影した写真である。
[手順2.3]
続いて、採取された空気の臭気(空気に含まれる硫化水素、メルカプタン類、有機酸類及びアンモニア・アミン類の濃度)の測定を行う。臭気の測定は、図7(c)に示す北川式ガス検知器45を用いて行う。図7(c)は、臭気の測定に用いた北川式ガス検知器45及び北川式ガス検知管46を撮影した写真である。北川式ガス検知器45に取り付ける北川式ガス検知管46は、硫化水素測定用のものと、メルカプタン類測定用のものと、有機酸類測定用のものと、アンモニア・アミン類測定用のものとを用意し、それぞれを用いて測定を行う。

【0058】
3.2 実験結果
以上の実験を行ったところ、以下の結果が得られた。

【0059】
3.2.1 臭気測定
硫化水素と、メルカプタン類と、有機酸類の濃度については、上記の計7回のサンプリングのいずれにおいても、上記の北川式ガス検知器45の測定下限を下回り、測定することができなかった。これに対し、アンモニア・アミン類の濃度については、上記の計7回のサンプリングのいずれにおいても、上記の北川式ガス検知器45の測定下限を上回り、測定することができた。図8に、実験で測定したアンモニア・アミン類の濃度の変化のグラフを示す。図8において、比較例1の濃度は、検体収容ボックスB,Bの平均値を、比較例2の濃度は、検体収容ボックスB,Bの平均値を、実施例1の濃度は、検体収容ボックスB,Bの平均値を、実施例2の濃度は、検体収容ボックスB,Bの平均値を示す。
【0060】
図8に示すように、比較例1では、実験を開始した第1日目におけるアンモニア・アミン類の濃度が、40ppmと低めであった。ところが、第2日目には、680ppmと大幅に増加し、その後、第5日目で650ppmと横ばい傾向を示すものの、第8日目で1240ppmとピークを迎える。その後は、第15日目で490ppm、第24日目で175ppm、第29日目で110ppmと徐々に低下していく。
【0061】
また、比較例2でも、実験を開始した第1日目におけるアンモニア・アミン類の濃度が、31ppmと低めであったものの、第2日目には480ppmと大幅に増加し、その後、第4日目に835ppmとなり、第8日目には980ppmでピークを迎える。その後は、第15日目で320ppm、第24日目で305ppm、第29日目で190ppmと徐々に低下していく。比較例2における各測定日におけるアンモニア・アミン類の濃度は、第1日目、第2日目、第8日目、第15日目及び第24日目で比較例1よりも低くなっているものの、第4日目及び第29日目では比較例1よりも高くなっている。このことから、悪臭発生物質20に消臭剤を混合した比較例2は、消臭剤を混合していない比較例1と比較して、一定の消臭効果が認められるものの、その消臭効果は限定的であることが分かった。
【0062】
これに対し、実施例1では、実験を開始した第1日目におけるアンモニア・アミン類の濃度が、1.75ppmとかなり低くなっている。その後、第2日目で190ppm、第4日目で230ppmと、低水準で推移している。しかし、第8日目には、1075ppm、第15日目で282.5ppm、第24日目で405ppm、第29日目で125ppmと、比較例1,2とほぼ同水準で推移する。このことから、実施例1(悪臭発生物質20に消臭シート10を被せる方法)では、その施工から数日間は、優れた消臭効果が得られることが分かった。
【0063】
また、実施例2では、実験を開始した第1日目におけるアンモニア・アミン類の濃度が、0.95ppmとかなり低くなっている。加えて、第2日目では28ppm、第4日目では55ppm、第8日目では75ppm、第15日目では87.5ppm、第24日目で80ppm、第29日目で33ppmと低水準で推移している。このことから、実施例2(悪臭発生物質20に消臭シート10を被せ、その消臭シート10に水を含ませる方法)では、極めて優れた消臭効果が長期間にわたって得られることが分かった。

【0064】
3.2.2 消臭シート10の状態確認
実施例1で使用した消臭シート10では、実験開始から日にちが経過するにつれて、黄ばんだ変色部分が斑状に現れたものの、実験が終了する第29日においても、ほつれや破れ等の劣化は確認されなかった。斑状の変色部分は、消臭シート10に含まれる消臭剤13(図2)が変色したものと思われる。また、実施例2で使用した消臭シート10では、それに染み込んだ水分により、その全体が薄茶色に変色したものの、実験が終了する第29日においても、ほつれや破れ等の劣化は確認されなかった。このことから、本発明の消臭シート10は、実用に耐えうる耐久性を有するものであることが分かった。参考までに、図9に、未使用の消臭シート10と、第29日目の消臭シート10(実施例1及び実施例2で使用したもの)とを撮影した写真を示す。
【符号の説明】
【0065】
10 消臭シート
11 外側不織布
12 内側不織布
13 消臭剤
14 ホットメルトパウダー
20 悪臭発生物質
30 重石
40 ビニル袋
41 雨除け
42 サンプリングボックス
42a サンプリング口
43 におい袋
44 エアサンプラー
45 北川式ガス検知器
46 北川式ガス検知管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9