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特開2023-132413タイル壁用下地パネル及びそのタイル壁用下地パネルを使用したタイル張り工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132413
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】タイル壁用下地パネル及びそのタイル壁用下地パネルを使用したタイル張り工法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20230914BHJP
   E04F 13/14 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
E04F13/08 S
E04F13/08 101K
E04F13/14 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037719
(22)【出願日】2022-03-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年3月1日~同年3月4日に「東京国際展示場(東京ビッグサイト)東展示棟」で開催された「建築・建材展」に出品
(71)【出願人】
【識別番号】513235441
【氏名又は名称】藤垣窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098741
【弁理士】
【氏名又は名称】武蔵 武
(72)【発明者】
【氏名】藤垣 伊織
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA43
2E110AB04
2E110CA04
2E110CA14
2E110DA12
2E110DB18
2E110DC21
2E110DC23
2E110GB02Y
(57)【要約】
【課題】建物や構築物等の壁面にタイルを施工するためのタイル壁用下地パネルを提供する。
【解決手段】タイル壁用下地パネルB1は、タイル4より若干大きい高さの金属製の台板3と、台板3の上縁に前向きに形成された上片部50と、台板3の下縁の前側に形成された目地構成部51とを有する。目地構成部51は、台板3の下縁に前向きに形成された下曲片52と、下曲片52の前縁に形成された目地片53とを備え、目地片53は、下曲片52より上に高く短く突出する上向き係止部54と、下曲片52より下に長く垂下する下向き係止部55とからなり、台板3の上片部50の上面に別の目地構成部51を重ねたものと仮定したとき、その仮定した目地構成部51の下向き係止部55と、目地構成部51の上向き係止部54とに対してタイル4をケンドン式に嵌め込んで装着しうるようにした。
【選択図】 図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物、構築物等の壁面に目地とタイルを施工するためのタイル壁用下地パネルであって、
前記壁面の前面に取着可能で前記タイルの高さより若干大きい高さを有する金属製の台板と、
その台板の上縁に前向きに形成されたほぼ水平な上片部と、
前記台板の下縁の前側に形成された目地構成部と、を有し、
前記目地構成部は、
前記台板の下縁に前向きに形成されたほぼ水平な下曲片と、
その下曲片の前縁に形成された横長帯板状の目地片と、を備え、
当該目地片は、前記下曲片より上に高く短く突出する上向き係止部と、同じく下曲片より下に長く垂下する下向き係止部と、からなり、
前記台板上縁の前記上片部の上面に同形状の別の目地構成部を重ねたものと仮定したとき、その仮定した目地構成部の下向き係止部と、前記目地構成部の上向き係止部と、に対して前記タイルをケンドン式に嵌め込んで装着しうるようにしたことを特徴とするタイル壁用下地パネル。
【請求項2】
前記目地構成部の下曲片は、前記タイルの厚さより若干大きい出幅にして前記タイルより前面に前記目地片が位置するようになっており、
前記目地構成部の前記上向き係止部と前記下向き係止部より奥にタイルをケンドン式に嵌め入れるようにしたことを特徴とする請求項1記載のタイル壁用下地パネル。
【請求項3】
前記目地構成部の目地片は、上から下に向かってタイルの前面から漸次緩やかに離間する方向のテーパを有するものであることを特徴とする請求項2記載のタイル壁用下地パネル。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のタイル壁用下地パネルを前記壁面の施工予定領域に取着し、
そのタイル壁用下地パネルの台板の上片部の上面に、同形状の別のタイル壁用下地パネルの前記目地構成部の前記下曲片を重ねてそのタイル壁用下地パネルを前記壁面に取着し、
以下同様にして、所要枚数のタイル壁用下地パネルを壁面に取着し、
次に、下に位置するタイル壁用下地パネルの前記下曲片の上向き係止部と、上に位置するタイル壁用下地パネルの前記下曲片の下向き係止部に対して、前記タイルをケンドン式に嵌め込んで装着するようにしたことを特徴とするタイル張り工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物や構築物等の壁面にタイルを施工するためのタイル壁用下地パネル及びそのタイル壁用下地パネルを使用したタイル張り工法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物、構築物等の壁面に目地とタイルを施工するためのタイル壁用下地パネルが特許文献1に記載されている。この特許文献1のタイル壁用下地パネルは、金属製の台板に断面コ字状の目地を折曲形成すると共にタイルを目地同士の間に嵌めて接着剤で接着するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実願平2-43446号(実開平4-2828号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のタイル壁用下地パネルは、台板を成形す過程で目地の位置が決定され、成形後は目地の位置が変更できない構造になっている。
一方、タイルは、成形したタイル素地を高温で焼成して製造するため、収縮により寸法にばらつきが生じ得る。また、大判のタイルを二つに切断して使用する場合もあるが、使用する切断刃の厚みが規格化されていないため、その厚みの違いにより切断後のタイルの寸法にも大小の違いが生じ得る。
したがって前記台板の目地間にタイルを嵌め入れるとき、タイルの寸法が小さいと目地との間に見苦しい隙間ができ、逆にタイルの寸法が大きいときつすぎて目地間に嵌めにくい、等の問題があった。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたもので、その目的は、タイルと目地を簡単且つ綺麗に施工可能なタイル壁用下地パネル及びタイル張り工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため本発明は、請求項1に記載したように、
建物、構築物等の壁面に目地とタイルを施工するためのタイル壁用下地パネルであって、
前記壁面の前面に取着可能で前記タイルの高さより若干大きい高さを有する金属製の台板と、
その台板の上縁に前向きに形成されたほぼ水平な上片部と、
前記台板の下縁の前側に形成された目地構成部と、を有し、
前記目地構成部は、
前記台板の下縁に前向きに形成されたほぼ水平な下曲片と、
その下曲片の前縁に形成された横長帯板状の目地片と、を備え、
当該目地片は、前記下曲片より上に高く短く突出する上向き係止部と、同じく下曲片より下に長く垂下する下向き係止部と、からなり、
前記台板上縁の前記上片部の上面に同形状の別の目地構成部を重ねたものと仮定したとき、その仮定した目地構成部の下向き係止部と、前記目地構成部の上向き係止部と、に対して前記タイルをケンドン式に嵌め込んで装着しうるようにしたタイル壁用下地パネルを提供する。
【0007】
また、請求項2に記載したように、
前記目地構成部の下曲片は、前記タイルの厚さより若干大きい出幅にして前記タイルより前面に前記目地片が位置するようになっており、
前記目地構成部の前記上向き係止部と前記下向き係止部より奥にタイルをケンドン式に嵌め入れるようにした請求項1記載のタイル壁用下地パネルを提供する。
【0008】
また、請求項3に記載したように、
前記目地構成部の目地片は、上から下に向かってタイルの前面から漸次緩やかに離間する方向のテーパを有するものである請求項2記載のタイル壁用下地パネルを提供する。
【0009】
また、請求項4に記載したように、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のタイル壁用下地パネルを前記壁面の施工予定領域に取着し、
そのタイル壁用下地パネルの台板の上片部の上面に、同形状の別のタイル壁用下地パネルの前記目地構成部の前記下曲片を重ねてそのタイル壁用下地パネルを前記壁面に取着し、
以下同様にして、所要枚数のタイル壁用下地パネルを壁面に取着し、
次に、下に位置するタイル壁用下地パネルの前記下曲片の上向き係止部と、上に位置するタイル壁用下地パネルの前記下曲片の下向き係止部に対して、前記タイルをケンドン式に嵌め込んで装着するようにしたタイル張り工法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、先に取着したタイル壁用下地パネルの台板の上片部の上面に、上に配置するタイル壁用下地パネルの目地構成部の下曲片を重ね合わせるのみで上のタイル壁用下地パネルが位置決めできるため、タイル壁用下地パネルの壁面への取着がスケール等の工具を用いることなく簡単且つ正確に行え、しかも、各目地構成部の上下の間隔、つまり上向き係止部と下向き係止部の間隔が正確になるため、タイルをケンドン式で簡単且つ綺麗に嵌め込むことができる。
また、タイルのサイズに関する調整が必要な場合は、台板の上片部の曲げ位置を若干変更するのみで対応できるため、殆どコストも掛からない。
【0011】
また、請求項2のタイル壁用下地パネルによれば、目地構成部の上向き係止部と下向き係止部より奥にタイルを嵌め入れるようにしたため、タイルの上部を下向き係止部で、タイルの下部を上向き係止部で隠すことができる。したがって、タイルの大きさにばらつきがあっても外観に現れないため、タイルと目地を簡単且つ綺麗に施工することができる。
【0012】
また、請求項3のタイル壁用下地パネルによれば、目地構成部の目地片に設けたテーパにより、タイルのケンドン式による嵌込みが容易になり、しかも目地片の下縁とタイル表面との間に隙間ができて目地片からタイル表面に水が伝い難くなるため、タイル表面に水垢が付きにくい。
【0013】
また、請求項4のタイル張り工法によれば、タイルを貼着する前の軽い台板を壁面に取着してからその台板にタイルを貼着するようにしたため作業性が良く、作業者への肉体的な負担も少なくすることができる。ちなみに、台板に先にタイルを貼着してそれを壁面に取着することも可能であるが、そうするとタイル壁用下地パネルが格段に重くなるため、施工場所が高所になるほど運搬が容易でなく且つ位置決めから取着までの作業が複数の作業員による大掛かりなものになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1を示すもので、中間を省略したタイルとタイル壁用下地パネルの正面図である。
図2】タイルと実施形態1のタイル壁用下地パネルの側面図である。
図3】タイルと実施形態1のタイル壁用下地パネルの中間を省略した分解斜視図である。
図4】タイルの一方の側面側を示す斜視図である。
図5】別の形態を示すタイルの一方の側面側を示す斜視図である。
図6】実施形態1を示すもので、(a)は第1のタイル壁用下地パネルの壁面への施工方法を説明する要部の断面図、(b)は第1のタイル壁用下地パネルにタイルを貼着した状態を示す要部の断面図である。
図7】接着剤の状態を示すタイルの裏面図である。
図8】実施形態1を示すもので、(a)は第2のタイル壁用下地パネルの壁面への施工方法を説明する要部の断面図、(b)は第2のタイル壁用下地パネルにタイルを貼着する状態を示す要部の断面図である。
図9】実施形態1の他の形態を示す第1のタイル壁用下地パネルと第2のタイル壁用下地パネルのジョイント部分を示す要部の拡大断面図である。
図10】実施形態1のさらに他の形態を示す第1のタイル壁用下地パネルと第2のタイル壁用下地パネルのジョイント部分を示す要部の拡大断面図である。
図11】実施形態1の他の形態を示すタイル壁用下地パネルとタイルの分解斜視図である。
図12】実施形態1の他の形態を示す第1のタイル壁用下地パネルと第2のタイル壁用下地パネルのジョイント部分を示す要部の拡大断面図である。
図13】実施形態2を示すもので、中間を省略したタイルとタイル壁用下地パネルの正面図である。
図14】タイルと実施形態2のタイル壁用下地パネルの側面図である。
図15】タイルと実施形態2のタイル壁用下地パネルの中間を省略した分解斜視図である。
図16】実施形態2のタイル壁用下地パネルを壁面に施工した状態を示す要部の断面図である。
図17】壁面に施工した実施形態2のタイル壁用下地パネルにタイルを貼着した状態を示す要部の断面図である。
図18】(a)、(b)は二つのタイル壁用下地パネルを継ぎ合わせる状態を示す要部の斜視図である。
図19】実施形態2のタイル壁用下地パネルに水抜き口を設けてタイルを貼着した状態を示す要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[A.実施形態1]
以下に実施形態1を図面を参照しつつ説明する。
[A1.タイル壁用下地パネル]
タイル壁用下地パネルA1は、建物、構築物等の壁面、具体的には家、ビルディング、塀、通路等の壁面に目地とタイルを施工するためのものであり、図1図3に示したように、壁面2の前面に取着可能な金属製の台板3と、その台板3の上縁に形成される差込み片6と、台板3の下縁に形成されるコ字状目地部7と、を備えてなる。
【0016】
[A2.タイル]
図示した実施形態のタイル4は陶器製又は磁器製であって、表面が装飾面で裏面が平ら又は適度な凹凸を有する接合面になっている。このタイル4は、約600mm×600mmで厚みが約10mmの大判を二つに切断して長方形に加工したものであり、切断に使用する切断刃の厚みで4mm程度削られるため、最終的に約600mm×298mm×10mmの寸法になっている。なお、タイル4のサイズや加工方法は限定されず、焼成した製品を切断せずそのまま使用するようにしてもよい。また、タイル4の材質も陶器や磁器に限定されず、ガラスなどで形成されていてもよい。
【0017】
[A3.台板]
前記台板3は、薄い金属製、具体的には厚さ約0.5mmのガルバリウム鋼板(登録商標)製であり、複数枚(例えば3~6枚程度)のタイル4をその枚数分の目地間隔(一つの目地幅約8mm)を開けて横一列に並べうる大きさになっている。なお、実施形態の台板3は、一側端縁(図1では右側端縁)に前記目地幅相当の重ね代5が余分に設けられており、数枚の台板3を壁面2の施工予定領域に横方向に並べたとき、その重ね代5に隣の台板3の他側端縁(図1では左側端縁)の縦目地部分が重なりうるようになっている。
【0018】
[A4.差込み片]
前記台板3には、その上縁に図2の側面図中拡大図Z4に示したようにタイル4の厚み(約10mm)より小さい出幅(約9mm)で前向きに折り曲げられた差込み片6がプレス成形されている。
なお、この差込み片6は、図1中拡大図Z1図3中拡大図Z9に示したように台板3の前記した重ね代5には設けられていない。そうすることにより、一つの台板3の重ね代5の前面又は裏面に隣の台板3の一側端縁を重ねたとき、隣り合う台板3の差込み片6同士を不都合無く連続させることができる。
【0019】
[A5.コ字状目地部]
さらに前記台板3には、その下縁に図2の側面図中拡大図Z6に示したように前向き凸状で後ろ向きに開口する形状に折り曲げられたコ字状目地部7がプレス成形されている。
なお、このコ字状目地部7も、図3中拡大図Z10に示したように台板3の前記した重ね代5には設けられていない。そうすることにより、一つの台板3の重ね代5に隣の台板3の一側端縁を重ねたとき、隣り合う台板3のコ字状目地部7同士を無理なく連続させることができる。
【0020】
コ字状目地部7は、図2の側面図中拡大図Z6図3の斜視図中拡大図Z10に示したように、差込み片6とほぼ同じ出幅(約9mm)で前向きに折曲形成された第一曲げ片7aと、その第一曲げ片7aの前縁に目地幅(約8mm)相当の幅で下向きに折曲形成された第二曲げ片7bと、その第二曲げ片7bの下縁に前記第一曲げ片7aとほぼ同幅で後ろ向きに折曲形成された第三曲げ片7cと、からなる。
【0021】
[A6.差込み片とコ字状目地部上面の間隔]
一つの台板3の前記差込み片6とコ字状目地部7の上面(第一曲げ片7a)との上下間隔は、図2に示したようにコ字状目地部7の第一曲げ片7aにタイル4の下端面を載せた状態で、そのタイル4の上端面と差込み片6との間に目地幅相当の幅(実施形態では約8mm)以下の隙間8が形成されるようになっている。
【0022】
[A7.その他]
その他、図において符号9はネジ10を通すために台板3に設けた貫通孔、符号11は前記ネジ10の頭部10hのタイル4側への突出を防止するために台板3の一部を凹状に窪ませて形成された帯状凹部である。
また、図において符号7hはコ字状目地部7の第一曲げ片7aの後コーナー部に設けた前後に貫通する通孔(後コーナー部に限らず、第一曲げ片7aの上面に設けてもよい。)である。かかる通孔7hにより、台板3の前側と裏側を連通させて通気又は通水を可能にすることができる。なお、この点については後述する。
【0023】
[A8.タイル張り工法]
以上の構成を有するタイル壁用下地パネルA1を所要枚数壁面2の施工予定領域に取着してその壁面2に目地とタイル4を施工するためのタイル張り工法について、図6図8により説明する。
【0024】
図2に示したように建物等の壁面2の施工予定領域には予め木製の角材が胴縁2aとして縦方向に且つ台板3の前記貫通孔9と同間隔で取り付けられており、その胴縁2aの最も下に図6(a)のように第1(第1段)のタイル壁用下地パネルA1の台板3をネジ10で取着する。もし、施工予定領域の横幅が一枚の台板3より長い場合は、台板3の一側端縁の重ね代5の上に、隣の台板3の反重ね代5側の一側端縁を重ねつつ、必要枚数を継ぎ足す。
前記のように台板3は、0.5mm程度の薄い金属板で形成されているため軽量であり、したがって台板3のみをネジ10で壁面2に取着する作業は作業員一人でも可能である。
【0025】
次に、タイル4の裏面側に適宜な接着剤Gを塗布し、図6(b)に示したように前記台板3のコ字状目地部7の第一曲げ片7aにタイル4の下端面を当接させて貼着する。
なお、接着剤Gは、タイル4と金属製の台板3との接着が可能であれば特段の限定を要しない。例えば、感圧タイプと塗布タイプの何れでも良く、また、両者を併用してもよい。実施形態の接着剤Gは、図7に示したように両者を併用したものであって、タイル4の裏面の左右両側に感圧タイプの両面接着テープG1を使用し、その両面接着テープG1同士の間に、適宜な間隔を空けて縦筋畝状(又はビード状)に並べた塗布タイプの液状接着剤G2を使用する。
この接着剤Gがスペーサーの役割を果たすことで、タイル4の裏面の接着剤Gの無い部分と台板3との間に上下方向に連続する僅かな隙間が形成される。そして、その隙間が前記したコ字状目地部7の通孔7hを介して台板3の裏側に連通するため、タイル4の裏面と台板3との間の隙間に接着剤Gの硬化に湿気が必要とされるケースでその湿気が自然に供給され得るか、或は硬化時に接着剤Gから揮発成分が放出されるケースではかかる揮発成分の排出が可能になる。また、何らかの事情でタイル4の裏面に水が回り込む事態が発生しても前記通孔7hから台板3の裏側に排水することも可能である。
【0026】
台板3は複数枚のタイル4が横一列に並ぶ大きさになっているため、所定の目地間隔を空けつつ上記の要領で所定枚数のタイル4を台板3の前面に接着剤Gで取着する。
実施形態のタイル4の一側縁には、図4に示したように適度な弾性を有する合成樹脂製の縦目地材12が予め貼着されており、所定枚数のタイル4を横一列に並べると、そのタイル4同士の間に縦目地材12により所定幅の縦目地が形成されるようになっている。
なお、縦目地材12は、図4の合成樹脂製の他、図5に示したように台板3と同じ金属板で平面視コ字状にプレス成形してもよい。この場合、縦目地材12の両縁に、タイル4と台板3の間(好ましくは台板3の前記した帯状凹部11)に挟み込むフランジ片12aを設ければ縦目地材12の固定を確実にすることができる。また、縦目地材12を台板3と同じ金属板で形成することで、台板3のコ字状目地部7との質感を統一することもできる。
【0027】
次に、第1(第1段)の台板3の差込み片6の前面に図8(a)に示したように第2(第2段)のタイル壁用下地パネルA1の台板3のコ字状目地部7を被せ、そのコ字状目地部7の第三曲げ片7cを第1のタイル壁用下地パネルA1のタイル4の上端面に載せ、当該位置でその台板3を壁面2に取着し、その台板3のコ字状目地部7の第一曲げ片7aにタイル4の下端面を載せた状態でそのタイル4を第2(第2段)の台板3に接着剤Gで貼着する。このとき、下のタイル4と上のタイル4を同じ位置に揃えていわゆる「通し目地」にしたり、下のタイル4の角に上のタイル4のほぼ中央を合わせていわゆる「馬踏み目地」にしたり、さらにはタイル4の横の寸法に長短の変化を付けるなど、壁面装飾のデザインは自由である。
【0028】
以下同様にして第3(第3段)以降のタイル壁用下地パネルA1を所定数、上に向かって順に壁面2の施工予定領域に取着し、そうして施工予定領域全体にタイル4と目地を施工する。なお、縦目地材12をあえて設けないようにしてタイル4の側面同士を突き合わせるようにしてもよい。
【0029】
以上実施形態1について説明したが、タイル壁用下地パネルA1は上記に限定されるものではない。例えば、実施形態1では、下に位置する台板3の差込み片6の先端が、上に位置する台板3のコ字状目地部7の第二曲げ片7bの内面に直接当接するように形成したが、図9(a)に示したように、第二曲げ片7bの内面に帯板状の弾性材70b(例えばゴム板)を設けてその弾性材70bに差込み片6の先端が当接するようにしてもよい。或は図9(b)に示したように、差込み片6の端縁にゴム等のシール材60を設けてそのシール材60が第二曲げ片7bの金属製の内面又は弾性材70bに当接するようにしてもよい。これにより差込み片6と第二曲げ片7bの水密性が向上するため、台板3の裏面側で結露等が発生してその結露による水が第一曲げ片7aの裏側を伝っても、タイル4の表側への漏れ出しを抑制することができる。なお、好ましくは、差込み片6に台板3の裏側に向けて下り勾配となる緩傾斜を設けると良い。そうすることにより差込み片6に達した水が台板3の裏側に向けて誘導され易くなるため、タイル4の表側への漏れ出しがより強く抑制される。
【0030】
また、実施形態1では、下に位置する台板3の差込み片6の先端が、上に位置する台板3のコ字状目地部7の第二曲げ片7bの内面に当接するように形成したが、差込み片6の出幅を第一曲げ片7aより小さくして両者の間に多少の隙間が生じるようにしても良い。もちろんそれによって差込み片6によるコ字状目地部7の強度の向上効果や水密性の向上効果は低下するものの、タイル4の上端面と下端面の双方にコ字状目地部7を見栄え良くフィットさせうる効果は十分に享受できる。
【0031】
また、実施形態1ではコ字状目地部7の第三曲げ片7cの幅と第一曲げ片7aの出幅をほぼ同じにしたが、第三曲げ片7cの方を若干小さくしてもよい。特に、短くした第三曲げ片7cに対して、図12に示したようにタイル4の上端縁に係合段部4aを形成し、その係合段部4aに前記第三曲げ片7cの先端が係合し得るようにしておけば、タイル4の台板3への固定をより確実にすることができる。
【0032】
また、実施形態1では台板3にネジ10の突出を防止するための帯状凹部11を形成したが、かかる帯状凹部11は図11に示したように必須ではなく、例えば使用するネジ10を頭部10hの形状が平らで出っ張りにくい仕様にしたり、ネジ10の締付けにより頭部10hに対応する台板3を部分的に凹み変形させるようにしてもよい。
【0033】
また、実施形態1では台板3の一側端縁に重ね代5を設けたが、かかる重ね代5を設けることなく(図10参照)、台板3の一側端縁同士を単純に突き合わせるようにしてもよい。
また、実施形態1では台板3の横の長さをタイル4の枚数に関連付けるようにしたが、台板3同士の継ぎ目を跨ぐ態様でタイル4を貼着させてもよく、そうした場合には台板3の横の長さとタイル4の枚数を関連付ける必要も無い。
また、実施形態1では台板3を孔のない単純な金属板で形成したが、差込み片6及びコ字状目地部7の第二曲げ片7b以外の部分に透孔を打ち抜いていわゆるパンチングメタル構造にしてもよい。
【0034】
また、図2中拡大図Z6の想像線で示したように、タイル4の裏面の周縁にテーパ状の面取り部4cを設けるようにしてもよい。通常、金属板をプレス機で折り曲げた場合、角部が僅かでも弧状になることは避けられず、したがって台板3の第一曲げ片7aの後コーナー部も僅かながら弧状になっている。この台板3の第一曲げ片7aの後コーナー部の弧状部分にタイル4の裏面の角部が干渉すると、タイル4が台板3にフィットしにくくなるおそれがあるが、タイル4の裏面の周縁にテーパ状の面取り部4cを設けて台板3の角部との接触を回避させることにより、タイル4を台板3に確実にフィットさせることができる。
【0035】
[A9.技術的思想α]
上記の実施形態1は、次のような技術的思想α1~α6に対応する。
【0036】
[A9-1.技術的思想α1]
建物、構築物等の壁面に目地とタイルを施工するためのタイル壁用下地パネルであって、
前記壁面の前面に取着可能な金属製の台板と、
その台板の前面に貼着される正面視略四角形のタイルと、を備え、
前記台板は、
上縁に前記タイルの厚みより小さい出幅で前向きに折曲形成された差込み片と、
下縁に前向き凸状に折曲形成された後ろ向きに開口するコ字状目地部と、を有し、
前記コ字状目地部は、
前記タイルの厚みより小さく且つ前記差込み片の出幅以上の出幅で前向きに折曲形成された第一曲げ片と、
その第一曲げ片の前縁に前記目地幅相当の幅で下向きに折曲形成された第二曲げ片と、
その第二曲げ片の下縁に前記第一曲げ片の出幅以下の幅で後ろ向きに折曲形成された第三曲げ片と、からなり、
当該コ字状目地部の第一曲げ片に前記タイルの下端面を載せた状態で、そのタイルの上端面と前記差込み片との間に前記目地幅相当の幅以下の隙間が形成されるようにしたタイル壁用下地パネル。
かかる技術的思想α1によれば、先に取着したタイル壁用下地パネルの台板の差込み片の前面に、上に配置するタイル壁用下地パネルの台板のコ字状目地部を被せてその台板を上下に移動させることができるため、下のタイルの上端面に上の台板のコ字状目地部を当接させることができる。したがって焼成又はカットされたタイルの寸法に多少の大小があっても、そのタイルの上端面と下端面の双方にコ字状目地部を容易にしかも見栄え良くフィットさせることができる。
【0037】
[A9-2.技術的思想α2]
前記台板の前記コ字状目地部と前記差込み片は、同形状の別のタイル壁用下地パネルの差込み片が前記コ字状目地部の枠内に後側から入っていると仮定したとき、その差込み片の先端が前記第二曲げ片の内面に当接し得るものである技術的思想α1記載のタイル壁用下地パネル。
この技術的思想α2のタイル壁用下地パネルによれば、下に位置するタイル壁用下地パネルの差込み片の先端が、上に位置するタイル壁用下地パネルのコ字状目地部の内面に当接するため、差込み片の内側からの突張りによりコ字状目地部の強度を向上させることができる。
【0038】
[A9-3.技術的思想α3]
前記台板の前記第二曲げ片は、内面に設けた弾性材を含むものであり、その弾性材に前記差込み片の先端が当接し得るものである技術的思想α2記載のタイル壁用下地パネル。
この技術的思想α3又は後述する技術的思想α4のタイル壁用下地パネルによれば、下のタイル壁用下地パネルの差込み片と、上のタイル壁用下地パネルのコ字状目地部の内面との間に、弾性材又はシール材を介在させるようにしたことにより水密性が向上するため、仮にタイル壁用下地パネルの裏側に結露等の水が発生したとしても、その水のタイル側への漏れ出しを抑制することができる。
【0039】
[A9-4.技術的思想α4]
前記台板の前記差込み片は、端縁に装着したシール材を含むものであり、そのシール材が前記第二曲げ片の内面又は前記弾性材に当接し得るものである技術的思想α2又はα3記載のタイル壁用下地パネル。
【0040】
[A9-5.技術的思想α5]
前記第一曲げ片の上面又は後コーナ部に前後に貫通する通孔を設けた技術的思想α1乃至α4の何れか1つに記載のタイル壁用下地パネル。
この技術的思想α5のように、第一曲げ片の上面又は第一曲げ片の後コーナ部に前後に貫通する通孔を設けることにより、台板の前側と裏側が通気又は通水可能な状態に連通するため、接着剤の硬化に必要な湿気が台板の裏側から自然に供給されるようになし或は硬化時に揮発する接着剤の溶剤を台板の裏側に排出することが可能になる。
【0041】
[A9-6.技術的思想α6]
前記技術的思想α1乃至α5の何れか1つに記載のタイル壁用下地パネルを少なくとも上下方向に所要枚数前記壁面に取着するタイル張り工法であって、
第1の前記タイル壁用下地パネルの台板を前記壁面の施工予定領域の最下部に取着し、
その台板の前記コ字状目地部の第一曲げ片にタイルの下端面を載せた状態でそのタイルを台板に貼着し、
次に、前記第1のタイル壁用下地パネルの台板の差込み片の前面に第2のタイル壁用下地パネルの台板のコ字状目地部を被せてそのコ字状目地部の第三曲げ片を先に取着したタイルの上端面に載せ、その状態で第2の台板を壁面に取着し、
その第2の台板のコ字状目地部の第一曲げ片にタイルの下端面を載せた状態でそのタイルを第2の台板に貼着し、
以下同様にして、第3以降の所要枚数のタイル壁用下地パネルを壁面に取着するようにしたタイル張り工法。
この技術的思想α6のタイル張り工法によれば、タイルを貼着する前の軽い台板を壁面に取着してからその台板にタイルを貼着するようにしたため、作業性が良く、また、作業者への肉体的な負担も軽くすることができる。ちなみに、台板に先にタイルを貼着してそれを壁面に取着することも可能であるが、そうするとタイル壁用下地パネルが格段に重くなるため、施工場所が高所になるほど運搬が容易でなく且つ位置決めから取着までの作業が、複数の作業員による大掛かりなものになる。
【0042】
[B.実施形態2]
次に実施形態2を図面を参照しつつ説明する。なお、この実施形態2が本願の請求項1乃至4に対応する。
【0043】
[B1.タイル壁用下地パネル]
実施形態2のタイル壁用下地パネルB1も実施形態1のタイル壁用下地パネルA1と同じく、建物、構築物等の壁面、具体的には家、ビルディング、塀、通路等の壁面に目地とタイルを施工するためのものであり、図13図15に示したように、壁面2の前面に取着可能な金属製の台板3と、その台板3の上縁に形成される上片部50と、台板3の下縁に形成される目地構成部51と、を備えてなる。
【0044】
[B2.タイル]
タイル4は実施形態1と同じである。すなわち、タイル4は陶器製又は磁器製であって、表面が装飾面で裏面が平ら又は適度な凹凸を有する接合面になっている。このタイル4は、約600mm×600mmで厚みが約10mmの大判を二つに切断して長方形に加工したものであり、切断に使用する切断刃の厚みで4mm程度削られるため、最終的に約600mm×298mm×10mmの寸法になっている。なお、タイル4のサイズや加工方法は限定されず、焼成した製品を切断せずそのまま使用するようにしてもよい。また、タイル4の材質も陶器や磁器に限定されず、ガラスなどで形成されていてもよい。
【0045】
[B3.台板]
台板3は、薄い金属製、具体的には厚さ約0.5mmのガルバリウム鋼板(登録商標)製であり、タイル4の高さより若干高く、複数枚(例えば3~6枚程度)のタイル4をその枚数分の目地間隔(一つの目地幅約8mm)を開けて横一列に並べうる長さになっている。なお、実施形態2の台板3も一側端縁(図13では右側端縁)に前記目地幅相当の重ね代5が余分に設けられており、数枚の台板3を壁面2の施工予定領域に横方向に並べたとき、その重ね代5に隣の台板3の他側端縁(図13では左側端縁)の縦目地部分が重なりうるようになっている。
【0046】
[B4.上片部]
前記台板3には、その上縁に図14の断面図中拡大図Z19に示したようにタイル4の厚み(約10mm)と同程度の出幅(約10mm)で前向きに折り曲げられた上片部50がプレス成形されている。
この上片部50は、図13拡大図Z17図15拡大図Z21に示したように台板3の前記した重ね代5には設けられていない。そうすることにより、一つの台板3の重ね代5の前面又は裏面に隣の台板3の一側端縁を重ねたとき、隣り合う台板3の差込み片6同士を不都合無く連続させることができる。
【0047】
[B5.目地構成部]
さらに前記台板3には、その下縁に図14の拡大図Z20に示したように横向きL字形に近い横向き略T字状の目地構成部51がプレス成形されている。
この目地構成部51は、図14の側面図中拡大図Z20に示したように、タイル4の厚さ(約10mm)より若干大きい出幅(約12mm)で前向きに折曲形成された下曲片52と、その下曲片52の前縁に縦向きに形成された横長帯板状(上下幅約7mm)の目地片53と、からなり、さらにその目地片53は、下曲片52より上に高く短く(1mm前後)爪状に突出する上向き係止部54と、同じく下曲片52より下に長く(6mm前後)垂下する下向き係止部55とからなる。そして、目地片53には、上から下に向かってタイル4の前面から漸次緩やかに離間する方向のテーパが設けられている。
【0048】
なお、目地構成部51は、台板3の下方を折曲して下曲片52とし、その下曲片52の先端を上向きに折曲すると共に逆さU字状に折り返して上向き係止部54とし、さらに逆さU字状に折り返した先をU字状に折り返して下向き係止部55としたものであり(ここでの記載順序は形態を特定するためのものであり、プレス順序を特定するものではない。)、このように一枚の金属板を折曲して形成することで鋭い金属板のエッジによる怪我の危険がないようになっている。
また、この目地構成部51も、図13拡大図Z16図15拡大図Z22に示したように台板3の前記した重ね代5には設けられていない。そうすることにより、一つの台板3の重ね代5に隣の台板3の一側端縁を重ねたとき、隣り合う台板3の目地構成部51同士を無理なく連続させることができる。
【0049】
ところで実施形態2の目地構成部51は、目地片53の両端に右ジョイント部51Rと左ジョイント部51Lが形成されており、その右ジョイント部51Rと左ジョイント部51Lが相互連結可能な構造になっている。具体的には、図15に示したように、左ジョイント部51Lは先に向かって細くなるへら状の連結手段で形成され、右ジョイント部51Rは目地片53の下縁をU字状に折り返した受手段で形成され、二つのタイル壁用下地パネルB1を隣り合わせに並べたとき、図18(a)、(b)のように一方の目地構成部51の左ジョイント部51L(へら状の連結手段)が他方の目地構成部51の右ジョイント部51R(U字状の受手段)に嵌って両目地片53同士が隙間無く一体に連結される。
【0050】
[B6.台板、上片部、目地構成部の関係]
タイル壁用下地パネルB1の台板3と上片部50と目地構成部51の関係は、台板3上縁の上片部50の上面に、図14拡大図Z19の想像線に示したように、同形状の別の目地構成部51を重ねたものと仮定したとき、同図拡大図Z20の目地構成部51の上向き係止部54と、前記で仮定した同図拡大図Z19想像線の目地構成部51の下向き係止部55と、に対してタイル4をケンドン式に嵌め込んで装着しうるようになっている。なお、ここでケンドン式とは、主として建具の戸や蓋の取り付け手段に見られるもので、下向きに開口する上の深溝に戸や蓋の上縁を差し入れて持ち上げ、それに対向する下の浅溝に戸や蓋の下縁を差し入れて落とし込む周知のものである。
【0051】
[B7.その他]
その他、図示を省略したが、実施形態1のネジ10を通すための貫通孔9や、帯状凹部11等は、必要に応じて実施形態2のタイル壁用下地パネルB1にも適用される。
【0052】
[B8.タイル張り工法]
以上の構成を有するタイル壁用下地パネルB1を壁面2の施工予定領域に取着してその壁面2に目地とタイル4を施工するためのタイル張り工法について、図16図17により説明する。
【0053】
図17に示したように建物等の壁面2の施工予定領域には予め木製の角材が胴縁2aとして縦方向に取り付けられており、その胴縁2aの最も下に第1(第1段)のタイル壁用下地パネルB1の台板3をネジ(図示せず)で取着する。もし、施工予定領域の横幅が一枚の台板3より長い場合は、台板3の一側端縁の重ね代5の上に、隣の台板3の反重ね代5側の一側端縁を重ねつつ、必要枚数を継ぎ足す。
前記のように目地構成部51の目地片53には相互連結可能な右ジョイント部51Rと左ジョイント部51Lが設けられているため、タイル壁用下地パネルB1の横に別のタイル壁用下地パネルB1を取り付けるとき、図18(a)、(b)に示したように一方のタイル壁用下地パネルB1の左ジョイント部51Lを、もう一方のタイル壁用下地パネルB1の右ジョイント部51Rに差し込んで連結する。そうすることにより目地片53同士の継ぎ目が凸凹しないため、仕上がりが格段に良い。
なお、前記のように台板3は、0.5mm程度の薄い金属板で形成されているため軽量であり、したがって台板3のみをネジ10で壁面2に取着する作業は作業員一人でも可能である。
【0054】
次に、第1(第1段)のタイル壁用下地パネルB1の上片部50の上面に第2(第2段)のタイル壁用下地パネルB1の目地構成部51の下曲片52を重ねてそのタイル壁用下地パネルB1を壁面2に取着し、以下同様にして、所要枚数のタイル壁用下地材1Bを壁面2の施工予定領域全てに取着する。このときタイル壁用下地パネルB1は、下段のものの上片部50に上段のものの下曲片52を重合させて適宜積み上げるのみで目地構成部51の上下の間隔が一義的且つ正確に定まるため作業性が良い。
【0055】
こうして必要な全てのタイル壁用下地パネルB1を壁面2に取着すると、下に位置するタイル壁用下地パネルB1の目地片53の上向き係止部54と、上に位置するタイル壁用下地パネルB1の目地片53の下向き係止部55と、によって上記したケンドン式の深溝と浅溝に相当するペアが形成されるため、タイル4をケンドン式に嵌め込んで装着することが可能になる。なお、図16拡大図Z24に示したように最上段に位置するタイル壁用下地パネルB1には上片部50の上に目地構成部51が存在しないため、最上段に位置するタイル壁用下地パネルB1にのみ、想像線で示したように上片部50の先端に前記した右ジョイント部51Rと左ジョイント部51Lを有する下向き係止部55が形成されている。
【0056】
しかして、タイル4の裏面又は台板3の前面に接着剤G(液状接着剤G2)を塗布した後、そのタイル4を、下に位置するタイル壁用下地パネルB1の上向き係止部54と、上に位置するタイル壁用下地パネルB1の下向き係止部55に対して、図14想像線のようにタイル4を斜めに傾けながら下向き係止部55の奥に差し入れ、その後、タイル4の裏面を台板3に沿わせながら上向き係止部54の奥に下ろして装着する。なお、タイル4の上部を下向き係止部55の奥に差し入れるとき、目地片53に設けたテーパによりタイル4の案内が容易になるため、誤って下向き係止部55を変形させてしまうリスクが低下する。
【0057】
この状態でタイル4は、接着剤Gによりタイル壁用下地パネルB1にしっかり取着され、また、万一、接着剤Gによる取着が当初より不十分であったか或は経年劣化等により不十分になったとしても、ケンドン式の取り付け手段により剥離のおそれが殆どない。さらに接着剤Gによる取着が不十分で、ケンドン式の支持のみでタイル4が取着されている状態は点検で容易に確認できるため、そのようなタイル4はケンドン式の逆操作で外し、そうして裏面に接着剤Gを塗布し直して嵌め戻せば良い。
【0058】
なお、実施形態2のタイル4にも図4に示した適度な弾性を有する合成樹脂製の縦目地材12や図5に示した金属製の縦目地材12を設けるようになし、下のタイル4と上のタイル4を同じ位置に揃えていわゆる「通し目地」にしたり、下のタイル4の角に上のタイル4のほぼ中央を合わせていわゆる「馬踏み目地」にしたり、さらにはタイル4の横の寸法に長短の変化を付ける、等のデザインが自由に選択できる。
【0059】
以上本発明を実施形態2について説明したが、もちろん本発明は上記実施形態2に限定されるものではない。例えば、実施形態2では壁面2の施工予定領域の全てにタイル壁用下地パネルB1を取着してからタイル4を取着するようにしたが、施工予定領域の一部にタイル壁用下地パネルB1を取着してタイル4を取着し、段階的にタイル壁用下地パネルB1とタイル4を施工するようにしてもよい。
また、実施形態2ではタイル4を目地片53より奥に嵌め入れるようにしたが、タイル4の上端面のほぼ中央に深い溝を形成すると共に下端面のほぼ中央に浅い溝を形成し、その各溝に下向き係止部55と上向き係止部54をケンドン式に嵌め入れるようにしてもよい。
また、実施形態2では目地構成部51の下曲片52の上面に上向き係止部54による実質的な浅溝があり、その浅溝に雨水等が溜まりうる。そして、溜まった雨水による湿気は壁面の汚れや劣化の原因になりうるため、図19に示したように、目地構成部51の下曲片52の任意の位置に丸形や角形の通孔7hを開設し、一方、台板3上部の上片部50の一部であって前記通孔7hの真上に位置する部分を上向きに切り起こし、その切り欠部を水抜き口50hにすると良い。そうすることにより下段のタイル壁用下地パネルB1の上片部50の上に別のタイル壁用下地パネルB1の目地構成部51を重ねたとき、上の通孔7hと下の水抜き口50hが合致して連通するため、下曲片52の上面に雨水等が下に抜ける。なお、水抜き口50hの後ろには切り起こした上片部500が遮水板として機能するため、雨水等が通孔7hと水抜き口50hを通るとき台板3の裏側への浸水を阻止することができる。なお、下曲片52の通孔7hは、図18(a)に示したように目地構成部51の下曲片52の端に水抜き欠部51zを形成して隣の目地構成部51の下曲片52との協働で形成されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
A1、B1 …タイル壁用下地パネル
2 …壁面
2a …胴縁
3 …台板
4 …タイル
4a …係合段部
4b …面取り部
5 …重ね代
6 …差込み片
60 …シール材
7 …コ字状目地部
7a …第一曲げ片
7b …第二曲げ片
70b …弾性材
7c …第三曲げ片
7h …通孔
8 …隙間
9 …貫通孔
10 …ネジ
10h …頭部
11 …帯状凹部
12 …縦目地材
12a …フランジ片
50 …上片部
51 …目地構成部
51R …右ジョイント部
51L …左ジョイント部
50h …水抜き口
51z …水抜き欠部
52 …下曲片
53 …目地片
54 …上向き係止部
55 …下向き係止部
G …接着剤
G1 …両面接着テープ
G2 …液状接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19