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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132440
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】セルロース材料
(51)【国際特許分類】
   C08B 15/08 20060101AFI20230914BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20230914BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230914BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C08B15/08
C08L1/02
C08L101/00
C08L21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037771
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐治 薫
(72)【発明者】
【氏名】小野 敦
【テーマコード(参考)】
4C090
4J002
【Fターム(参考)】
4C090AA01
4C090AA04
4C090AA08
4C090BA24
4C090BC01
4C090BD17
4C090BD19
4C090BD50
4C090CA01
4C090DA11
4C090DA31
4J002AA00X
4J002AB01W
4J002AC00X
4J002BB12X
4J002BB20X
4J002CC03X
4J002CC18X
4J002FA041
4J002FB001
4J002FD011
4J002GG01
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】本発明は、樹脂成分の添加剤として用いた場合も、リサイクル性が良好なセルロース材料を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、トリプル四重極-誘導結合プラズマ質量分析測定器により検出される鉄成分の量が10ppmを超えて50ppm以下である、セルロース材料を提供する。セルロース材料は、800℃で2時間加熱した後の灰分量が、加熱前のセルロース材料100重量%に対し0.13重量%以上であること、又は500℃における熱重量残存率が、10%以上であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリプル四重極-誘導結合プラズマ質量分析測定器により検出される鉄成分の量が10ppmを超えて50ppm以下である、セルロース材料。
【請求項2】
800℃で2時間加熱した後の灰分量が、加熱前のセルロース材料100重量%に対し0.13重量%以上である、請求項1に記載のセルロース材料。
【請求項3】
500℃における熱重量残存率が、10%以上である、請求項1又は2に記載のセルロース材料。
【請求項4】
平均繊維幅が10~24μmである、請求項1~3のいずれか1項に記載のセルロース材料。
【請求項5】
粉末状セルロースである、請求項1~4のいずれか1項に記載のセルロース材料。
【請求項6】
粉末状セルロースの平均粒子径が5~150μmである、請求項5に記載のセルロース材料。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のセルロース材料を含む工業用添加剤。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載のセルロース材料を含む樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載のセルロース材料を含むゴム組成物。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載のセルロース材料を含む成型体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース材料に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末状セルロース等のセルロース材料は、ゴム、プラスチック等の樹脂材料の強化剤として用いられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-012875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、環境保護のため、プラスチックのケミカルリサイクルの重要性が注目されているところ、上記従来技術のようなセルロース材料を含む樹脂材料を、クローズドループと呼ばれる手法でリサイクルする場合、その過程で、通常、樹脂成分とセルロース成分を分離する。しかし、セルロース材料は熱重量残存率が低く、樹脂材料からの分離が難しいという欠点があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、樹脂成分の添加剤として用いた場合も、リサイクル性が良好なセルロース材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の〔1〕~〔10〕を提供する。
〔1〕トリプル四重極-誘導結合プラズマ質量分析測定器により検出される鉄成分の量が10ppmを超えて50ppm以下である、セルロース材料。
〔2〕800℃で2時間加熱した後の灰分量が、加熱前のセルロース材料100重量%に対し0.13重量%以上である、〔1〕に記載のセルロース材料。
〔3〕500℃における熱重量残存率が、10%以上である、〔1〕又は〔2〕に記載のセルロース材料。
〔4〕平均繊維幅が10~24μmである、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のセルロース材料。
〔5〕粉末状セルロースである、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載のセルロース材料。
〔6〕粉末状セルロースの平均粒子径が5~150μmである、〔5〕に記載のセルロース材料。
〔7〕〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載のセルロース材料を含む工業用添加剤。
〔8〕〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載のセルロース材料を含む樹脂組成物。
〔9〕〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載のセルロース材料を含むゴム組成物。
〔10〕〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載のセルロース材料を含む成型体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高い熱重量残存率を発揮でき、樹脂と混ぜた際のバイオマス素材のリサイクル性が良好なセルロース材料を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔1.セルロース材料〕
セルロース材料は、セルロースを主成分とする材料であり、鉄成分を含有する。
【0009】
〔1.1.鉄成分〕
セルロース材料は、鉄成分を含む。鉄成分は、セルロース材料のセルロース分子に結合してもよいし、結合はせずに別個に存在していてもよい(セルロース材料を含む組成物とも言える)。鉄成分は、通常、鉄原子、これを含む化合物及び誘導体として存在する。これらの例としては、鉄原子(Fe)、酸化物(Fe23、Fe34)、水酸化物(Fe(OH)2、Fe(OH)3)、オキシ水酸化物(FeO(OH))、塩化物(FeCl2、FeCl3)、硝酸塩(Fe(NO)3)、硫酸塩(FeSO4、Fe2(SO43)、ハロゲン(Br、I)化物、錯化合物が挙げられ、主成分は、通常、酸化物である。
【0010】
本明細書において、鉄成分含有量は、トリプル四重極-誘導結合プラズマ(ICP)質量分析測定器により検出される値である。具体的には、下記の条件により測定でき、実施例の値も下記方法で測定された値である。なお、鉄成分が鉄原子以外の場合、鉄成分の量は、鉄原子の量を表す。
機種:Agilent 8800 (アジレント・テクノロジー株式会社製)
コリジョン及びリアクションセル導入ガス:ヘリウム及び水素
測定m/z:鉄;56
内標準元素m/z:ロジウム;103
【0011】
セルロース材料の鉄成分の量は、通常、10ppmを超える量であり、好ましくは10.5ppm以上、より好ましくは11ppm以上である。これにより、熱重量残存率が高く、樹脂と混ぜた際のバイオマス素材のリサイクル性に優れるセルロース材料を得ることができる。上限は、通常、50ppm以下、好ましくは40ppm以下、より好ましくは30ppm以下、更に好ましくは29ppm以下、28ppm以下、27ppm以下、又は26ppm以下である。これにより、リサイクルした際の樹脂への異物の混入を抑えることができる。したがって、セルロース材料の鉄成分含有量は、通常、10ppmを超えて50ppm以下、より好ましくは10ppmを超えて40ppm以下、更に好ましくは10.5~30ppm、更により好ましくは11~29ppm、11~28ppm、11~27ppm、又は11~26ppmである。
【0012】
鉄成分の量は、原料に含まれる鉄成分の量、製造時に混入する鉄成分の量により調整できる。
【0013】
〔1.2.加熱後の灰分量〕
セルロース材料は、800℃で2時間加熱後に灰分を含むことが好ましい。灰分とは、通常、原料が灰化して残る有機物以外の成分である。上記加熱後の灰分量は、加熱前のセルロース材料100重量%に対し、好ましくは0.13重量%以上又は0.14重量%以上、より好ましくは0.15重量%以上である。これにより、熱重量残存率が高く、樹脂と混ぜた際のバイオマス素材のリサイクル性に優れるセルロース材料を得ることができる。上限は、好ましくは2.0重量%以下、より好ましくは1.6重量%以下である。これにより、リサイクルした際の樹脂への異物の混入を抑えることができる。したがって、灰分量は、好ましくは0.13~2.0重量%又は0.14~2.0重量%、より好ましくは0.15~1.6重量%である。
【0014】
800℃で2時間加熱後の灰分量は、例えば、試料(試料重量を予め測定)を炭化させた後800℃で2時間加熱して灰化し、灰化後の残分の重量を測定し、灰化残分の試料重量に対する比率(%)として算出する方法により測定できる。
【0015】
〔1.3.熱重量残存率〕
セルロース材料は、高い熱重量残存率を発揮できる。例えば、500℃で加熱後の熱重量残存率が、通常10%以上、好ましくは10.5%以上、より好ましくは11%以上である。上限は、好ましくは35重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。熱重量残存率は、熱分析装置を用いて、500℃で加熱後の重量の、加熱開始前の重量に対する比率(%)として確認できる。
【0016】
〔1.4.セルロース材料の形態〕
セルロース材料の形態としては、例えば、粉末状、繊維状(マイクロフィブリル、ナノファイバー)が挙げられ、粉末状セルロースが好ましい。
【0017】
〔1.5.粉末状セルロース〕
〔粒子径分布〕
粉末状セルロースの粒子径分布は、体積蓄積分布の積算値が10%、50%、90%となるときの粒子径分布(10%径、50%径、90%径、それぞれ、D.10、D.50、D.90)として表すことができる。本明細書において粒子径分布は、測定原理としてレーザー散乱法を用いて、湿式測定(超音波照射あり)、湿式測定(超音波照射なし)、又は乾式測定にて得られる値である。
【0018】
粒子径分布のスパンは、各方法により得られるD.10、D.50、D.90を下記式(1)に代入して算出する。
式(1):粒子径分布のスパン=((D.90)-(D.10))/(D.50)
【0019】
-湿式測定(超音波照射なし)の条件-
本明細書において湿式条件(超音波照射なし)とは、試料に加水後超音波照射を行わずにそのまま粒子径を測定する条件を言う。湿式条件(超音波照射なし)のD.10、D.50、D.90、スパンの好ましい範囲は以下のとおりである。一般に粒子径が大きいほど、繊維同士の絡まりが高まる傾向にある。さらに、以下の範囲であることにより、樹脂、ゴム等に添加した際にそれらの特性を損なわずに適切に強度を向上させることができる。
D.10は、通常、5μm以上、9.0μm以上又は10.0μm以上、好ましくは11.0μm以上、より好ましくは11.5μm以上である。上限は、通常、40μm以下又は25.0μm以下、好ましくは14.0μm以下、より好ましくは13.0μm以下である。したがって、通常、5~40μm、9.0~40.0μm、又は10.0~25.0μm、好ましくは11.0~14.0μm、より好ましくは11.5~13.0μmである。
D.50(平均粒子径)は、通常、5μm以上、10.0μm以上、20.0μm以上又は25.0μm以上、好ましくは30.0μm以上又は34.0μm以上、より好ましくは36.0μm以上、更に好ましくは38.0μm以上である(但し、D.10よりも大きい値である)。これにより、粉末状セルロースの凝集性の上昇及びこれに起因する粉体流動性の低下を抑制でき、作業性の悪化を抑制できる。上限は、通常、150.0μm以下、100.0μm以下、90.0μm以下、70μm以下又は50.0μm以下、好ましくは450.0μm以下、44.0μm以下又は43.0μm以下、より好ましくは42.0μm以下、更に好ましくは40.0μm以下である。これにより、熱重量残存率が高く、リサイクル性に優れる粉末状セルロースを得ることができる。したがって、D.50(平均粒子径)は、通常、5.0~150.0μm、5.0~100.0μm、10.0~90.0μm、20.0~70.0μm又は25.0~50.0μm、好ましくは30.0~45.0μm、30.0~44.0μm又は34.0~43.0μm、より好ましくは36.0~42.0μm、更に好ましくは38.0~40.0μmである。
D.90は、通常、70.0μm以上又は75.0μm以上、好ましくは80.0μm以上、85.0μm以上又は90.0μm以上、より好ましくは95.0μm以上、更に好ましくは100.0μm以上である(但し、D.50よりも大きい値である)。上限は、通常、250.0μm以下、230.0μm以下、又は220.0μm以下、好ましくは210.0μm以下又は200.0μm以下、より好ましくは195.0μm以下、更に好ましくは190.0μm以下である。したがって、通常、70.0~250.0μm、70.0~230.0μm、又は75.0~220.0μm、好ましくは80.0~210.0μm、85.0~200.0μm又は90.0~200.0μm、より好ましくは95.0~195.0μm、更に好ましくは100.0~190.0μmである。
粒子径分布のスパンは、通常、1.5以上、好ましくは1.7以上、より好ましくは1.9以上、更に好ましくは2.0以上である。上限は、通常、6.0以下、好ましくは5.5以下、より好ましくは5.0以下、より好ましくは4.5以下である。したがって、通常、1.5~6.0、好ましくは1.7~5.5、より好ましくは1.9~5.0、より好ましくは2.0~4.5である。
【0020】
-湿式測定(超音波照射あり)-
本明細書において湿式条件(超音波照射あり)とは、試料に加水後超音波照射を行ってから粒子径を測定する条件を言う。湿式(超音波あり)の場合のD.10、D.50、D.90、スパンの好ましい範囲は以下のとおりである。一般に粒子径が大きいほど、繊維同士の絡まりが高まる傾向にある。さらに、以下の範囲であることにより、樹脂、ゴム等に添加した際にそれらの特性を損なわずに適切に強度を向上させることができる。
D.10は、通常、1.0μm以上、3.0μm以上又は5.0μm以上、好ましくは9.0μm以上又は10.0μm以上、より好ましくは10.5μm以上、更に好ましくは11.0μm以上である。上限は、通常、20.0μm以下又は16.0μm以下、好ましくは13.0以下、より好ましくは12.5μm以下である。したがって、通常、1.0~20.0μm、3.0~16.0μm又は5.0~16.0μm、好ましくは9.0~13.0μm又は10.0~13.0μm、より好ましくは10.5~12.5μm、更に好ましくは11.0~12.5μmである。
D.50は、通常、5.0μm以上、10.0μm以上又は20.0μm以上、好ましくは25.0μm以上、30.0μm以上又は32.0μm以上、より好ましくは34.0μm以上又は36.0μm以上、更に好ましくは36.5μm以上である(但し、D.10よりも大きい値である)。上限は、通常、70.0μm以下、60.0μm以下又は50.0μm以下、好ましくは45.0μm以下又は40.0μm以下、より好ましくは39.5μm以下、更に好ましくは39.0μm以下である。したがって、通常、5.0~70.0μm、10.0~60.0μm又は20.0~50.0μm、好ましくは25.0~45.0μm、30.0~40.0μm又は32.0~40.0μm、より好ましくは34.0~39.5μm、更に好ましくは36.0~39.0μm又は36.5~39.0μmである。
D.90は、通常、50.0μm以上、70.0μm以上又は90.0μm以上、好ましくは98μ.0m以上、より好ましくは100.0μm以上、更に好ましくは101.5μm以上である(但し、D.50よりも大きい値である)。上限は、通常、210.0μm以下又は200.0μm以下、好ましくは200.0μm以下、より好ましくは195.0μm以下、更に好ましくは190.0μm以下である。したがって、D.90は、通常、50.0~210.0μm、60.0~200.0μm又は70.0~200.0μm、好ましくは80.0~195.0μm、より好ましくは90.0~190.0μm、更に好ましくは100.0~190.0μmである。
粒子径分布のスパンは、通常、1.5以上、好ましくは1.7以上、より好ましくは1.9以上、更に好ましくは2.0以上である。上限は、通常、5.0以下、好ましくは4.5以下である。したがって、通常、1.5~5.0、好ましくは1.7~4.5、より好ましくは1.9~4.5である。
【0021】
-乾式測定-
本明細書において乾式測定とは、試料に加水せずそのまま粒子径を測定する条件を言う。乾式測定の場合のD.10、D.50、D.90、スパンの好ましい範囲は以下のとおりである。一般に粒子径が大きいほど、繊維同士の絡まりが高まる傾向にある。さらに、以下の範囲であることにより、樹脂、ゴム等に添加した際にそれらの特性を損なわずに適切に強度を向上させることができる。
D.10は、通常、1.0μm以上、3.0μm以上又は5.0μm以上、好ましくは7.0μm以上又は8.0μm以上、より好ましくは9.0μm以上、更に好ましくは9.5μm以上である。上限は、通常、40.0μm以下又は20.0μm以下、好ましくは15.0μm以下、より好ましくは14.0μm以下、更に好ましくは13.0μm以下である。したがって、通常、1.0~40.0μm、3.0~20.0μm又は5.0~20.0μm、好ましくは7.0~15.0μm又は8.0~15.0μm、より好ましくは9.0~14.0μm、更に好ましくは9.5~13.0μmである。
D.50は、通常、5.0μm以上、10.0μm以上又は15.0μm以上、好ましくは20.0μm以上、25.0μm以上又は30.0μm以上、より好ましくは33.0μm以上又は34.0μm以上、更に好ましくは35.0μm以上である(但し、D.10よりも大きい値である)。上限は、通常、100.0μm以下又は60.0μm以下、好ましくは52.5μm以下又は52.0μm以下、より好ましくは51.5μm以下である。したがって、D.50は、通常、5.0~100.0μm、10.0~60.0μm又は15.0~60.0μm、好ましくは20.0~52.5μm、25.0~52.5μm又は30.0~52.5μ、より好ましくは33.0~52.0μm又は34.0~52.0μm、更に好ましくは35.0~51.5μmである。
D.90は、通常、80.0μm以上又は90.0μm以上、好ましくは93.0μm以上、より好ましくは94.0μm以上である(但し、D.50よりも大きい値である)。上限は、通常、310.0μm以下又は280.0μm以下、好ましくは260.0μm以下又は255.0μm以下、より好ましくは251.0μm以下である。したがって、D.90は、通常、80.0~310.0μm又は90.0~280.0μm、好ましくは93.0~260.0μm又は93.0~255.0μm、より好ましくは94.0~251.0μmである。
粒子径分布のスパンは、通常、1.5以上、好ましくは1.7以上、より好ましくは1.8以上、更に好ましくは2.0以上である。上限は、通常、9.0以下、好ましくは7.0以下、より好ましくは6.0以下、更に好ましくは5.0以下である。したがって、粒子径分布のスパンは、通常、1.5~9.0、好ましくは1.7~7.0、より好ましくは1.8~6.0、更に好ましくは2.0~5.0である。
【0022】
〔平均繊維幅(μm)、平均繊維長(mm)、平均繊維長/平均繊維幅〕
平均繊維幅(短径)とは、粉末状セルロースの繊維幅の長径と直交する最小値の平均値をいう。また、平均繊維長(長径)とは、粉末状セルロースの繊維幅の最大長の平均値をいう。
【0023】
平均繊維幅は、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、更に好ましくは20μm以上である。上限は、好ましくは35μm以下、より好ましくは30μm以下、更に好ましくは24μm以下である。したがって、平均繊維幅は、好ましくは10~35μm、より好ましくは15~30μm、更に好ましくは20~24μmである。
【0024】
平均繊維長は、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.06mm以上である。上限は、好ましくは0.3mm以下、より好ましくは0.25mm以下である。したがって、平均繊維長は好ましくは0.05~0.3mm、より好ましくは0.06~0.25mmである。
【0025】
粉末状セルロースの平均繊維長/平均繊維幅(L/D)は、好ましくは2.5~12.0であり、より好ましくは3.0~11.5である。一般にL/Dが大きいほど、繊維同士の絡まりが高まる傾向にある。さらに、上記範囲であることにより、樹脂、ゴム等に添加した際にそれらの特性を損なわずに適切に強度を向上させることができる。
【0026】
平均繊維長、平均繊維幅は、ABB社製Fiber Tester Plusで測定でき、L/Dは、これらの測定値から算出した値である。
【0027】
〔1.6.繊維状セルロース〕
繊維状セルロースは、微細化処理を経て調製される、ナノオーダー、又はマイクロオーダーの繊維径を有するセルロース繊維を意味する。本明細書においてそれぞれ、セルロースナノファイバー(CNF)、セルロースマイクロフィブリル(MFC)と称する。
【0028】
CNFの平均繊維径(長さ加重平均繊維径)は、500nm以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。下限は特に限定されないが、通常は1nm以上、好ましくは2nm以上である。したがって、CNFの平均繊維径(長さ加重平均繊維径)は、通常1~500nm又は2~500nm、好ましくは2~300nm又は2~100nm、より好ましくは2~50nm又は3~30nmである。平均繊維長(長さ加重平均繊維長)は、通常、50~2000nm、好ましくは100~1000nmである。CNFのアスペクト比は、通常10以上、好ましくは50以上である。上限は特に限定されないが、通常は1000以下である。
【0029】
MFCの平均繊維径は、通常500nm以上、1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。これにより、未解繊のセルロース繊維に比べて高い保水性を呈することができ、微細に解繊されたCNFと比較して少量でも高い強度付与効果や歩留まり向上効果が得られる。平均繊維径の上限は60μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、20μm以下がさらにより好ましいが、特に制限はない。平均繊維長は、通常、10μm以上、20μm以上、又は40μm以上であり、好ましくは200μm以上、300μm以上又は400μm以上。より好ましくは、500μm以上又は550μm以上、更に好ましくは600μm以上、700μm以上、800μm以上である。上限は、特に限定されないが、通常、3,000μm以下、好ましくは2,500μm以下、より好ましくは2,000μm以下、更に好ましくは1,500μm以下、1,400μm以下又は1,300μmである。MFCのアスペクト比は、3以上が好ましく、5以上がより好ましく、7以上がさらに好ましく、10以上、20以上又は30以上でもよい。アスペクト比の上限は特に限定されないが、1000以下が好ましく、100以下がより好ましく、80以下がさらに好ましい。
【0030】
繊維状セルロースの平均繊維径及び平均繊維長は、バルメット株式会社製フラクショネーターにより求めることができる。フラクショネーターを用いた場合、それぞれ、length-weighted fiber width及びlength-weighted average fiber lengthとして求めることができる。微細セルロース繊維の平均アスペクト比は、式:平均アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径により算出できる。
【0031】
繊維状セルロースは、変性又は未変性のいずれでもよい。変性繊維状セルロースとは、グルコース単位に含まれる3つのヒドロキシル基の少なくともいずれかが化学変性(以下、単に「変性」と記載する)している微細セルロース繊維(例えば、セルロースナノファイバー、セルロースマイクロフィブリル)を意味する。化学変性処理により、セルロース繊維の微細化が十分に進み、解繊により均一な平均繊維長及び平均繊維径のセルロースナノファイバーが得られる。そのため、ゴム成分と複合化した際に、十分な補強効果を発揮し得る。このような観点から、変性処理したセルロース繊維が好ましい。
【0032】
変性としては、例えば、酸化、エーテル化、リン酸エステル化等のエステル化、シランカップリング、フッ素化、カチオン化等が挙げられる。中でも、酸化(カルボキシル化)、エーテル化、カチオン化、エステル化が好ましく、酸化(カルボキシル化)がより好ましい。
【0033】
〔2.セルロース材料の製造方法〕
セルロース材料は、セルロース原料からセルロース材料を得る方法であれば特に限定されない。粉末状セルロースの場合、例えば、少なくとも粉砕処理を含む方法が挙げられ、機械的な粉砕処理を含む方法が好ましい。繊維状セルロースの場合、例えば、解繊処理を含む方法が挙げられる。
【0034】
〔2.1.セルロース原料〕
セルロース原料は、通常は天然由来のセルロースであり、パルプが好ましく、木材由来のパルプがより好ましい。木材由来のパルプとしては、例えば、広葉樹由来のパルプ、針葉樹由来のパルプが挙げられる。木材由来のパルプの調製方法としては、例えば、漂白処理を含む方法が挙げられる。漂白処理方法としては、例えば、任意に通常の方法で脱リグニンしたパルプに対し、塩素処理(C)、二酸化塩素漂白(D)、アルカリ抽出(E)、次亜塩素酸塩漂白(H)、過酸化水素漂白(P)、アルカリ性過酸化水素処理段(Ep)、アルカリ性過酸化水素・酸素処理段(Eop)、オゾン処理(Z)、キレート処理(Q)、及びこれらの2以上の処理の組み合わせを施す方法が挙げられる。2以上の処理の組み合わせ(シーケンス)としては、例えば、D-E/P-D、C/D-E-H-D、Z-E-D-PZ/D-Ep-D、Z/D-Ep-D-P、D-Ep-D、D-Ep-D-P、D-Ep-P-D、Z-Eop-D-D、Z/D-Eop-D、Z/D-Eop-D-E-D(シーケンス中の「/」は、「/」の前後の処理を洗浄なしで連続して行なうことを意味する)が挙げられる。漂白処理は、上記の例に限定されることなく、一般的に使用される方法でもよい。漂白処理を経たパルプは、通常は流動状態(流動パルプ)である。パルプの白色度は、ISO 2470に基づいて、80%以上が好ましい。
【0035】
パルプの調製方法の一例としては、パルプ化法(蒸解法)が挙げられる。パルプ化法(蒸解法)による処理により着色物質であるリグニンが溶解して取り除かれ、白色度の高いパルプを得ることができる。パルプ化法(蒸解法)としては、例えば、サルファイト蒸解法、クラフト蒸解法、ソーダ・キノン蒸解法、オルガノソルブ蒸解法が挙げられ、環境面から、クラフトパルプが好ましい。また、砕木パルプ(GP)、リファイナーグラウンドウッドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等、の機械パルプも使用できる。
【0036】
セルロース原料の水分量は、通常、セルロース原料100%に対して好ましくは5~30%であり、好ましくは6~20%である。セルロース原料の水分量が前述の範囲よりも多いときは、後述する脱水・乾燥処理によって水分量を調節すればよい。
【0037】
〔2.2.粉末状セルロースの製造方法〕
〔機械的粉砕処理〕
粉砕処理は、セルロース原料を機械的に粉砕する処理である。粉砕処理に先立ち、脱水・乾燥処理、酸加水分解処理等の前処理を行ってもよく、脱水・乾燥処理が好ましい。粉砕処理と同時、又は粉砕後に、分級処理を行ってもよい。
【0038】
粉砕機としては、例えば、カッティング式ミル、衝撃式ミル、気流式ミル、ハンマー式ミル、ロールミル、ローラーミル、媒体ミル、媒体撹拌ミル、振動ミル、凍結粉砕機が挙げられ、1種単独でも、2種以上併用でもよい。
【0039】
カッティング式ミルとしては、例えば、カッティングミル(株式会社ホーライ製)、メッシュミル(株式会社ホーライ製)、アトムズ(株式会社山本百馬製作所製)、ナイフミル(パルマン社製)、カッターミル(東京アトマイザー製造株式会社製)、セントリカッター(日本コークス工業株式会社製)ロータリーカッターミル(株式会社奈良機械製作所製)、ターボカッター(フロイント・ターボ株式会社製)、パルプ粗砕機(株式会社瑞光製)が挙げられる。
【0040】
ハンマー式ミルとしては、例えば、ハンマミル(ホソカワミクロン株式会社製)、ジョークラッシャ(株式会社マキノ製)、ハンマークラッシャー(槇野産業株式会社製)が挙げられる。
【0041】
衝撃式ミルとしては、例えば、パルベライザ(ホソカワミクロン株式会社製)、ファインインパクトミル(ホソカワミクロン株式会社製)、スーパーミクロンミル(登録商標、ホソカワミクロン株式会社製)、イノマイザ(登録商標、ホソカワミクロン株式会社製)、ファインミル(日本ニューマチック工業株式会社製)、CUM型遠心ミル(三井鉱山株式会社製)、イクシードミル(槇野産業株式会社製)、ウルトラプレックス(槇野産業株式会社製)、コントラプレックス(槇野産業株式会社製)、コロプレックス(槇野産業株式会社製)、アトマイザー(株式会社セイシン企業製)、トルネードミル(日機装株式会社製)、ネアミル(株式会社ダルトン製)、自由粉砕機(株式会社奈良機械製作所製)、ニューコスモマイザー(株式会社奈良機械製作所製)、ターボミル(フロイント・ターボ株式会社製)、スーパーパウダーミル(株式会社西村機械製作所製)、ブレードミル(日清エンジニアリング株式会社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング株式会社製)、ウイレー粉砕機(株式会社三喜製作所製)、パルプ粉砕機(株式会社瑞光製)、ヤコブソン微粉砕機(神鋼パンテック株式会社製)、ユニバーサルミル(株式会社徳寿工作所製)、連続式バイブロミル(ユーラステクノ株式会社製)が挙げられる。
【0042】
気流式ミルとしては、例えば、CGS型ジェットミル(三井鉱山株式会社製)、ミクロンジェット(登録商標、ホソカワミクロン株式会社製)、カウンタジェットミル(登録商標、ホソカワミクロン株式会社製)、クロスジェットミル(株式会社栗本鐵工所製)、超音速ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製)、カレントジェット(日清エンジニアリング株式会社製)、ジェットミル(三庄インダストリー株式会社製)、セレンミラー(増幸産業株式会社製)、ニューミクロシクトマット(株式会社増野製作所製)、クリプトロン(株式会社アーステクニカ製)が挙げられる。
【0043】
ローラーミルとしては、例えば、竪型ローラーミル(セイシン株式会社製)、竪型ローラーミル(シニオン株式会社製)、ローラーミル(コトブキ技研工業株式会社製)、VXミル(株式会社栗本鐵工所製)、KVM型竪形ローラミル(株式会社アーステクニカ製)、ISミル(株式会社IHIプラントエンジニアリング製)が挙げられる。
振動ミルとしては、例えば、バッチ式振動ミル(中央化工機株式会社製)が挙げられる。
これらのうち、カッティング式ミル、ローラーミルが好ましい。
【0044】
粉砕処理の条件は、所望の粉末状セルロースが得られるように適宜設定できる。例えば、粉砕条件(例えば、処理時間、投入量)と粉末状セルロースの所望の物性とから作成した検量線を参照して、処理条件を調整できる。
【0045】
〔中和・洗浄・脱水・乾燥処理〕
セルロース原料から粉末状セルロースを製造する場合、粉砕処理の前に適宜前処理を経る。前処理としては例えば、中和、洗浄、脱液、乾燥処理が挙げられ、脱水、乾燥処理をこの順に行うことが好ましい。セルロース原料は、乾燥(脱水)処理により、固形分濃度を調整でき、粉末状セルロースの物性値の制御が容易にできる。固形分濃度は、通常、15%以上、好ましくは20%以上に調整される。乾燥は、気流式乾燥機を用いることが好ましい。これにより、セルロース原料の処理物がケーキ状固体、スラリー、溶液等の態様にかかわらず、これらを気流中に分散しながら高速の熱風を当てることができ、かつ、ドライヤー内部の減圧効果を利用でき、瞬時に乾燥できる。また、熱風に触れる時間が極めて短いため、製品温度を低く保つことができ、熱に敏感な製品や融点の低い製品の乾燥に最適である。気流式乾燥機による乾燥の条件は特に限定されず、適宜設定できるが、一例を挙げると以下のとおりである。出口乾燥温度は、通常、80~180℃、好ましくは90~160℃である。給気量は、通常、150~350m3/h、好ましくは160~320m3/hである。
一方、噴霧乾燥機を用いる場合、噴霧し熱風で瞬時に乾燥させ顆粒物を生成する。そのため、水分量が少ない固形状・半固形状の対象物ものの乾燥には適さないことが多く、また気流式乾燥機による乾燥よりも粒子が瞬間的に高熱に暴露されやすく、製品への影響が懸念される。
【0046】
〔酸加水分解処理〕
酸加水分解処理に用いる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸が挙げられる。酸濃度は、特に限定されないが、重合度及び白色度の維持の観点から、従来の粉末状セルロース製造の酸加水分解処理の際の酸濃度より低いことが好ましく、0.4~2.0Nがより好ましく、0.5~1.5Nがより好ましい。酸濃度が0.4N未満であると、酸によるセルロースの解重合が抑制されセルロースの重合度の低下を軽減できるが、微細化が困難となる場合がある。一方、2.0Nを超えると、セルロースの解重合が進み微細化が容易となるため、粉体流動性は向上するが、重合度の低下に伴い錠剤硬度が低下する(成形した際に、崩壊しやすくなる)場合がある。酸加水分解処理の反応条件は特に限定されないが、反応温度は通常、80~100℃、反応時間は通常、30分~3時間である。
【0047】
酸加水分解処理に先立ち、セルロース原料について前処理を行ってもよい。例えば、セルロース原料のスラリー化(分散液の調製)、セルロース原料濃度の調整が挙げられる。セルロース原料の濃度は、通常、分散液に対し3~10重量%(固形分換算)である。セルロース原料が漂白処理を経た流動パルプの場合、通常、加水分解前にパルプ濃度を高める処理を行うことが多い。セルロース原料濃度の調整(濃縮)には、スクリュープレス、ベルトフィルター等の脱水機を用いてもよい。酸加水分解処理は、セルロース原料のスラリーに対して行われてもよいが、シート状のセルロース原料に対し行われてもよい。セルロース原料がパルプのドライシートの場合、通常、パルプをほぐしてから酸加水分解処理を行う。パルプをほぐす際には、ロールクラッシャー等の解砕機を用いてもよい。
【0048】
酸加水分解後の粉砕処理の際、必要に応じて、少なくとも1つの他の成分(例えば、有機成分、無機成分)を酸加水分解処理物とともに粉砕処理に供してもよい。これにより、粉末状セルロースに機能性を付与、又は機能性を向上させることができる。他の成分の配合量は、適量を適宜選定すればよい。また、粉砕工程に先立ち、酸加水分解処理物にさらに上述の中和・洗浄・脱水・乾燥処理を行ってもよい。
【0049】
セルロース材料は、必要に応じて、化学的処理が施されていてもよい。化学的処理は、セルロース原料の重合度を大幅に損なうおそれのない処理が好ましい。化学的処理の時期は、セルロース原料に対して粉砕処理の際に行ってもよいし、粉砕処理の前処理の前に行ってもよい。
【0050】
〔2.3.繊維状セルロースの製造方法〕
繊維状セルロースは、解繊処理を含む方法にて製造できる。解繊(フィブリル化)は、通常は機械的処理により得られ、機械的処理は離解または叩解処理であることが好ましい。機械的処理(好ましくは叩解または離解処理)は、通常は湿式で(すなわち、水分散体の形態で)行う。機械的処理に用いる装置としては、例えば、精製装置(リファイナー;例、ディスク型、コニカル型、シリンダー型)、高速解繊機、せん断型撹拌機、コロイドミル、高圧噴射分散機、ビーター、PFIミル、ニーダー、ディスパーザー、高速離解機(トップファイナー)、高圧または超高圧ホモジナイザー、グラインダー(石臼型粉砕機)、ボールミル、振動ミル、ビーズミル、1軸、2軸又は多軸の混錬機・押出機高速回転下でのホモミキサー、精製装置(refiner)、デフィブレーター(defibrator)、摩擦グラインダー、高せん断デフィブレーター(high-share defibrator)、ディスパージャー(disperger)、ホモゲナイザー(例、微細流動化機(microfluidizer))等の機械的な解繊力を付与できる装置が挙げられ、湿式にて解繊力を付与できる装置が好ましく、高速離解機、精製装置がより好ましいが、特に限定されない。解繊処理は、通常、セルロース原料を水に分散した状態で行う。
【0051】
繊維状セルロースが変性繊維状セルロースの場合、解繊の前又は後(通常は前)に化学変性処理を行う。変性処理としては、例えば、酸化、エーテル化、リン酸エステル化等のエステル化、シランカップリング、フッ素化、カチオン化が挙げられる。中でも、酸化(カルボキシル化)、エーテル化(例えば、カルボキシアルキル化)、カチオン化、エステル化が好ましく、酸化(カルボキシル化)、カルボキシアルキル化がより好ましい。
【0052】
〔3.セルロース材料の用途〕
セルロース材料の用途としては、例えば、工業用添加剤(例えば、ポリプロピレン、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の樹脂用、各種ゴム用)、錠剤等製剤(食品、医薬、医薬部外品、化粧品)用の賦形剤等として利用できる。また、樹脂組成物(例えば、ポリオレフィン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、ゴム)、ゴム組成物(例えば、自動車、パソコン、建築材、容器)、食品添加剤(例えば、シュレッドチーズ、フライ製品、パン粉、ハムやソーセージのケーシングやそれらのピックル液)、衛生用品/化粧品(例えば、洗顔剤、歯磨剤、ファンデーション用)、ろ過助剤(例えば、レアメタル、食品用)、塗料/接着剤添加剤(例えば、ウレタン塗料用)、飼料(例えば、ペットフード、釣り餌)等の成分、原料として利用できる。
【実施例0053】
以下、本発明を実施例により説明する。以下の実施例は、本発明を限定するものではない。本願の実施例における試験方法を、次に示す。なお、物性値等の測定方法は、別途記載がない限り、上記に記載した測定方法である。
【0054】
<鉄成分含有量の測定(ppm)>
粉末状セルロース0.5gをマイクロ波分解容器に秤取し、純水2ml及び硝酸5mlを添加して試料を調製した。試料をマイクロ波分解した後、ポリプロピレン製定容容器に移した。試料に内標準溶液2mlを添加した後、定容(50ml)し、トリプル四重極ICP質量分析装置を用いて、鉄成分含有量を測定した。
【0055】
ICP質量分析装置の測定条件は下記の通りである。
・機種:Agilent 8800 (アジレント・テクノロジー株式会社製)
・コリジョン及びリアクションセル導入ガス:ヘリウム及び水素
・測定m/z:鉄;56
・内標準元素m/z:ロジウム;103
【0056】
<灰分量(%)>
灰分量の測定は、以下の手順で行った。
1)試料5~8gを重量既知の磁製ルツボに入れ、試料重量を精秤した。なお、ルツボは試料を入れる前に予め空焼きし(800℃、1時間程度)デシケーター中で30分間放冷後の重量を精秤しておいた。ソーダ灰が溶融しルツボ内に溜まった場合は塩酸で洗浄した。
2)精秤後、試料を収容したルツボを電熱ヒーターで加熱し、炭化させた。炭化は、白煙が生じなくなるまで行った。その後、800℃に調節した電気炉に入れ、2時間灰化した。
3)灰化後、ルツボを取り出しデシケーターに入れた。
4)30分間放冷後、灰化残分を精密天秤で精秤した。灰分は次式によって算出し、小数点以下3位まで計算し、小数点以下2位まで報告した。
【数1】
精密天秤はATX224(島津製作所)を、電気炉はFUW232PA(ADVANTEC)を、それぞれ用いた。
【0057】
<粒子径分布、平均粒子径、粒子径分布のスパン>
レーザー回析式粒度分布測定装置(マスターサイザー3000、スペクトリス社マルバーンパナリティカル事業部)を用いた。測定原理としてレーザー散乱法を用いて、乾式測定、湿式測定(超音波照射あり)、及び湿式測定(超音波照射なし)により粒子径分布を測定した。粒度分布を体積蓄積分布として表した場合に、体積蓄積分布の積算値が10%、50%、90%である値を、それぞれ粒子径分布D.10、D.50、D.90とした。湿式(超音波照射なし)のD.50を平均粒子径とした。また、前記の式(1)により、粒子径分布のスパンを算出した。
【0058】
乾式測定は、供給口内に、散乱強度が1%未満となるように試料を添加して以下の条件で行った。
・分散ユニット:Aero5
・空気圧:2bar
・フィードレート:25
【0059】
湿式測定は、3500rpmで攪拌されている水中の測定部に、散乱強度が10%程度になるように試料を添加して行った。超音波を照射する場合、下記条件に基づいて水中の試料に超音波を当ててから湿式測定を行った。
・モード:連続
・強度:100%
・時間:600秒
【0060】
粒子径分布の解析は、いずれの測定条件の場合も以下の条件で行った。
・解析:汎用
・解析感度:強調
・光散乱モデル:Mie理論
【0061】
<平均繊維長(mm)、平均繊維幅(μm)、L/D>
L&W Fiber Tester Plus(ABB社製)を用いて以下の手順で測定を行った。純水200mlを入れたシリンダーに試料を0.1g入れ、1分程撹拌したのち、専用の300mlビーカーに移し、サンプルサイクラーにセットして測定を開始し、平均繊維長および平均繊維幅を測定した。得られた平均繊維長および平均繊維幅より、L/Dを算出した。
【0062】
<熱重量残存率(500℃)%>
熱重量残存率は、熱分析装置を用いて測定した。すなわち、粉末状セルロースを600℃まで昇温し(無酸素、窒素雰囲気下)、500℃における重量を読み取り、昇温開始前の重量に対する比率(%)を熱重量残存率として算出した。
【0063】
<粉末状セルロースの調製>
(実施例1)
晒し木材パルプシート(LBKPドライシート、日本製紙(株)製、水分20%)を原料として、カッティングミル(PIH3-20210YRFS、ホーライ社製、直径3mmパンチングプレート使用)で裁断し、得られた粉砕物を竪型ローラーミル(STR-20、株式会社セイシン企業製、供給速度600g/分、粉砕ローター40Hz、分級ローター50Hz、ブロワー50Hz)で粉砕し、得られた粉砕物を実施例1の粉末状セルロースとして用いた。各種物性値を表1に記す。
【0064】
(実施例2)
2段目の粉砕機にカッティングミル(HA8-2542、株式会社ホーライ社製、主メッシュ♯250、補助メッシュ♯20)を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、得られた粉砕物を実施例2の粉末状セルロースとして用いた。各種物性値を表1に記す。
【0065】
(実施例3)
木材パルプ(サーモメカニカルパルプ、日本製紙(株)製、水分60%)を脱水し、ほぐして乾燥させた原料(水分10%)をカッティングミル(HA8-2542、株式会社ホーライ社製、主メッシュ♯250、補助メッシュ♯50)で粉砕し、得られた粉砕物を実施例3の粉末状セルロースとして用いた。各種物性値を表1に記す。
【0066】
(比較例1)
市販の粉末状セルロースST-02(旭化成社製)を比較例1の粉末状セルロースとして用いた。各種物性値を表1に記す。
【0067】
(比較例2)
晒し木材パルプシート(NDPTドライシート、日本製紙(株)製、水分7%)を原料として、鬼歯クラッシャー(RC-600、槇野産業株式会社製)にて、原料仕込み量100kg、供給速度5.0kg/min、回転数10rpmの条件で粉砕した。得られた粉砕物を、バッチ式振動ミル(MB3型、中央化工機株式会社製)にて、原料仕込み量45g(0.25L)、振動数1000cpm、振幅8mm、ボール径30mm、ボール充填率80%の条件で30分間粉砕し、得られた粉砕物を比較例2の粉末状セルロースとして用いた。各種物性値を表1に記す。
【0068】
(比較例3)
晒し木材パルプシート(LDPTドライシート、日本製紙(株)製、水分7%)を用いたこと以外は、比較例2と同様の操作を行い、得られた粉砕物を比較例3の粉末状セルロースとして用いた。各種物性値を表1に記す。
【0069】
【表1】
【0070】
鉄成分を含有しない、又は微量に含有する比較例1~3と比較して、鉄成分含有量が大きい実施例1~3は熱重量残存率が高かった。また、実施例1~3の熱重量残存率は灰分量に比例していた。これらの結果は、本発明の粉末セルロースは熱処理後の収率が高く、リサイクル性に優れていることを示している。