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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132443
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20230914BHJP
   F24F 13/10 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
B60H1/34 611Z
F24F13/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037774
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】小野 裕
【テーマコード(参考)】
3L081
3L211
【Fターム(参考)】
3L081AA02
3L081AA03
3L081HA08
3L211BA01
3L211DA14
(57)【要約】
【課題】ルーバの重量による意図しない回動を抑制できる風向調整装置を提供する。
【解決手段】風向調整装置1は、ルーバ15と、ルーバ15を回動可能に保持する側枠部5と、を備える。ルーバ15の回動軸線Aは、ルーバ15の重心から離れて位置する。回動軸線Aに対して重心側に生じるルーバ15の重量に対し反力を付与する反力付与手段20をさらに備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーバと、このルーバを回動可能に保持する保持部と、を備える風向調整装置であって、
前記ルーバの回動軸線は、前記ルーバの重心から離れて位置し、
前記回動軸線に対して前記重心側に生じる前記ルーバの重量に対し反力を付与する反力付与手段をさらに備える
ことを特徴とする風向調整装置。
【請求項2】
反力付与手段は、ルーバが中立位置での重量と釣り合うように反力を付与する
ことを特徴とする請求項1記載の風向調整装置。
【請求項3】
ルーバは、回動軸と、この回動軸に対して重心側に離れて位置する接続部と、を有し、
反力付与手段は、前記回動軸に取り付けられるコイル状の本体部と、この本体部の一端部から延びて保持部に保持される一の腕部と、前記本体部の他端部から延びて前記接続部に取り付けられる他の腕部と、を有する捩じりばねである
ことを特徴とする請求項1または2記載の風向調整装置。
【請求項4】
ルーバは、回動軸を有し、
反力付与手段は、前記回動軸に一端部が取り付けられるとともに保持部に他端部が回り止めされた状態で取り付けられる弾性部材である
ことを特徴とする請求項1記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーバと、このルーバを回動可能に保持する保持部と、を備える風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置において、吹き出す風向を調整する風向調整装置がある。風向調整装置は、空調風吹出装置、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、例えばインストルメントパネルやセンタコンソール部などの車両の各部に設置されて、冷暖房による快適性能の向上に寄与している。
【0003】
風向調整装置に備えられるルーバは、筐体に回動可能に保持され、回動によって風向を調整可能となっている。従来、左右方向に延びるルーバの回動軸は、ルーバの重心、すなわちルーバの中央の位置を通るように配置されていたのに対し、近年、意匠の変化によって回動軸をルーバの重心に対して車室側に寄せた位置とする構成とするものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-109491号公報 (第6-11頁、図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回動軸とルーバの重心とのずれにより、ルーバがその重量によって上向きに振れるように回動することが懸念される。すなわち、ルーバには回動軸と重心とのずれによって重力により常に上向きの回転力が生じるので、上方へ回動させる際には操作荷重が軽く、下方へ回動させる際には操作荷重が重くなることで、乗員が操作したときに上方への回動と下方への回動とで操作荷重が異なることが懸念される。ルーバの構造及び重量によっては、ルーバの操作力の公差より大きい力を発生させることもあり、操作フィーリングの悪化、操作荷重の不安定化、温度変化による寸法及び物性の変化によりルーバが重量で回動するなどの不具合が生じないようにすることが求められる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、ルーバの重量による意図しない回動を抑制できる風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の風向調整装置は、ルーバと、このルーバを回動可能に保持する保持部と、を備える風向調整装置であって、前記ルーバの回動軸線は、前記ルーバの重心から離れて位置し、前記回動軸線に対して前記重心側に生じる前記ルーバの重量に対し反力を付与する反力付与手段をさらに備えるものである。
【0008】
請求項2記載の風向調整装置は、請求項1記載の風向調整装置において、反力付与手段は、ルーバが中立位置での重量と釣り合うように反力を付与するものである。
【0009】
請求項3記載の風向調整装置は、請求項1または2記載の風向調整装置において、ルーバは、回動軸と、この回動軸に対して重心側に離れて位置する接続部と、を有し、反力付与手段は、前記回動軸に取り付けられるコイル状の本体部と、この本体部の一端部から延びて保持部に保持される一の腕部と、前記本体部の他端部から延びて前記接続部に取り付けられる他の腕部と、を有する捩じりばねであるものである。
【0010】
請求項4記載の風向調整装置は、請求項1記載の風向調整装置において、ルーバは、回動軸を有し、反力付与手段は、前記回動軸に一端部が取り付けられるとともに保持部に他端部が回り止めされた状態で取り付けられる弾性部材であるものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の風向調整装置によれば、反力付与手段により付与される反力によってルーバの重量による意図しない回動を抑制できる。
【0012】
請求項2記載の風向調整装置によれば、請求項1記載の風向調整装置の効果に加えて、ルーバを重力方向に回動させる際とその反対方向に回動させる際とで操作力の差を抑制でき、操作フィーリングの向上、及び、操作荷重の安定化が見込める。
【0013】
請求項3記載の風向調整装置によれば、請求項1または2記載の風向調整装置の効果に加えて、ルーバの重量に対し反力を付与する反力付与手段を簡素な構成で実現できる。
【0014】
請求項4記載の風向調整装置によれば、請求項1記載の風向調整装置の効果に加えて、ルーバの重心側が下がって上向きに回動しようとしたときに、反力付与手段が捩じれることによって反発力が生じ、その反発力によってルーバの重量に対しルーバの姿勢を維持する方向に反力を付与するので、反力付与手段により付与される反力によってルーバの重量による意図しない回動を簡素な構成で抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施の形態の風向調整装置を示す一部の分解斜視図である。
図2】同上風向調整装置の一部の斜視図である。
図3】同上風向調整装置の側面図である。
図4】同上風向調整装置の斜視図である。
図5】本発明の第2の実施の形態の風向調整装置を示す一部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図4において、1は風向調整装置である。風向調整装置1は、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、空調装置などからの風の吹き出し方向を調整するものである。以下、説明をより明確にするために、風向調整装置1は、風が吹き出す側である風下側を前側、正面側または手前側とし、その反対側、つまり風を受け入れる側である風上側を後側、背後側または奥側として、前側から見て左右方向である両側方向または幅方向、及び、上下方向を規定する。本実施の形態において、風向調整装置1は、自動車などの車両用の空調装置に適用される。風向調整装置1は、任意の位置に配置されていてよいが、図面においては、矢印FR側を前側、矢印RR側を後側、矢印L側を左側、矢印R側を右側、矢印U側を上側、矢印D側を下側とするように配置されているものとする。これらの方向は、あくまで一例として図示されるものであって、風向調整装置1の設置位置や設置向きによって適宜変更されるものとする。
【0018】
風向調整装置1は、空調装置などと連結される通気路を区画するダクトの下流端部に配置される。図示される例では、風向調整装置1は、後方から前方に向かって風を吹き出すように配置されている。風向調整装置1は、ケース体3を備える。本実施の形態において、ケース体3は、四角形枠状に形成された枠体である。図示される例では、ケース体3は、上下方向に沿う左右の側枠部5,5と、これら側枠部5,5の上部及び下部を互いに連結する端枠部6,6とにより枠状に構成されている。側枠部5,5と端枠部6,6とにより、ケース体3の中央部に吹出口7が囲まれている。
【0019】
各側枠部5は、スペーサとも呼ばれる。各側枠部5は、所定幅を有し、背後側に空間部を区画する。本実施の形態において、各側枠部5は、左右に互いに離れて位置する側面部10,10と、これら側面部10,10の前部間を連結する連結面部11と、を有する、断面コ字状に形成されている。側面部10は、左右に主面を有し上下方向に長手状に延びる面状となっている。
【0020】
側枠部5,5間に、ルーバ15が回動可能に取り付けられている。すなわち、側枠部5,5は、ルーバ15を回動可能に保持する保持部である。ルーバ15は、フィンなどとも呼ばれ、ケース体3に対して回動することで、その回動に応じて吹出口7から吹き出される空調風の風向を調整する。本実施の形態において、ルーバ15は、左右方向つまり水平方向に延びる横ルーバである。図示される例では、ルーバ15は、吹出口7の上下方向に複数位置し、吹出口7を横切って配置されている。ルーバ15は、通気路の最下流に位置する下流側ルーバである。ルーバ15は、単数でも複数でもよいが、本実施の形態では、図3に示すように複数設定されている。図示される例では、ルーバ15には、上部に位置するルーバ15aと、上下方向の中央部に位置するルーバ15bと、下部に位置するルーバ15cと、が設定されている。図示される例では、ルーバ15bが最も重く、ルーバ15a、ルーバ15cの順に重量が軽い。ルーバ15a,15b,15cは、リンク体16によって連結されることで、互いに連動して同方向に回動するように構成されている。また、本実施の形態において、上下に位置するルーバ15a,15cは、上下方向の中央部に位置するルーバ15bよりも後方すなわち風の上流側に位置する。
【0021】
本実施の形態において、ルーバ15の回動軸線Aは、ルーバ15の前端部寄りにある。ルーバ15の回動軸線Aは、重心Gに対して前方に離れて位置する。本実施の形態では、ルーバ15の長手方向の両端すなわち左右両側部に回動軸17が突設されている。なお、図1及び図2には、ルーバ15aを例に挙げて示すが、ルーバ15b,15cの少なくともいずれかについても同様の構成を備えていてもよい。
【0022】
回動軸17は、円柱状に形成されている。回動軸17は、ルーバ15の回動中心となる回動軸線Aを設定する。つまり、回動軸17の中心軸がルーバ15の回動軸線Aとなっている。各回動軸17は、各側枠部5に形成された回動受け部19に回動可能に支持される。回動受け部19は、回動軸17の外径寸法より僅かに大きい径寸法を有する丸穴状に形成されている。回動受け部19は、各側枠部5の吹出口7側の側面部10を貫いて形成されている。すなわち、回動受け部19に回動軸17が回動可能に挿入されている。
【0023】
また、ルーバ15の少なくともいずれか、本実施の形態ではルーバ15aには、反力付与手段20が取り付けられている。反力付与手段20は、少なくともいずれかのルーバ15において回動軸線Aに対して重心G(図3)側に生じる重量に対し反力を付与するものである。本実施の形態において、反力付与手段20は、ルーバ15が中立位置、例えばルーバ15bがダクトの中心軸である風軸W(図3)と平行(略平行も含む)な姿勢となった状態で、ルーバ15bにおいて回動軸線Aに対して重心G(図3)側に生じる重量と釣り合うようにルーバ15aに反力を付与するよう構成されている。
【0024】
本実施の形態において、反力付与手段20は、例えば捩じりばねである。反力付与手段20は、ルーバ15aの回動軸17に対し、コイル状の本体部22が取り付けられている。図示される例では、本体部22に回動軸17が挿入され、回動軸17の外周面に本体部22が保持されている。すなわち、本体部22は回動軸17と同心(同軸)に配置されている。反力付与手段20は、本体部22の一端部から一の腕部23が延びている。一の腕部23は、側枠部5に保持されている。本実施の形態において、一の腕部23は、側枠部5に形成された溝部24に保持されている。溝部24は、例えば上下方向に沿って形成されている。図示される例では、溝部24は、側枠部5の背後の空間部に位置するリブ部25に形成されている。したがって、一の腕部23は、上下方向に沿って位置する。また、一の腕部23は、回動軸線Aに対して前方に位置する。
【0025】
また、反力付与手段20は、本体部22の他端部から他の腕部26が延びている。他の腕部26は、ルーバ15a側に接続されている。本実施の形態において、他の腕部26は、ルーバ15aの接続部27に接続されている。接続部27は、ルーバ15aにおいて、回動軸17に対して重心G(図3)側に離れて位置する。接続部27は、重心G(図3)を基準として、回動軸17とは反対側に位置する。つまり、接続部27は、回動軸17よりも後方に位置する。本実施の形態において、接続部27は、回動軸17と平行(略平行も含む)な円柱状に形成されたピンである。接続部27は、ルーバ15aの長手方向の少なくとも一端部すなわち左側部または右側部に突設されている。接続部27の先端部には、保持溝27aが形成されており、他の腕部26の先端部が保持溝27aに巻き付けられて抜け止め保持されている。接続部27は、一方の側枠部5に形成された受け部28に支持される。受け部28は、接続部27の外径寸法より僅かに大きい幅寸法を有する長穴状に形成されている。受け部28は、側枠部5の吹出口7側の側面部10を貫いて形成された貫通穴である。つまり、受け部28は、一方の回動受け部19と同じ側面部10に形成されている。受け部28は、回動受け部19に対して後方に位置する。受け部28に対し、接続部27が移動可能に挿入されている。
【0026】
受け部28は、ルーバ15aの回動軸線Aを中心とする円弧に沿って形成されている。図示される例では、受け部28は、上下方向に延びる長穴状となっている。受け部28は、ルーバ15aの回動範囲に応じて長さ及び位置が設定される。すなわち、受け部28は、ルーバ15aが上下に最大に回動する位置間の範囲で接続部27が移動可能な長さに設定されている。本実施の形態において、受け部28の上部は、回動軸線A及び回動受け部19よりも上方に延び、受け部28の下部は、回動軸線A及び回動受け部19よりも下方に延びている。
【0027】
したがって、反力付与手段20は、側枠部5の背後の空間部内に収容されている。
【0028】
本実施の形態において、図3に示すように、少なくともいずれかのルーバ15、例えば上下方向の中央部に位置するルーバ15bには、ノブ31が取り付けられている。ノブ31は、ルーバ15bの下部に位置する。ノブ31は、ルーバ15を回動させるものである。ノブ31は、ルーバ15bから車室内側である前側に突出する摘み部33を有する。摘み部33は、乗員などの使用者によって摘まれて操作される部分である。本実施の形態において、摘み部33は、例えばルーバ15bの下部から突出している。また、摘み部33は、ノブ31をルーバ15bに沿って移動させるための被ガイド部33aを有する。被ガイド部33aは、ルーバ15bに形成されたガイド部34に係合され、被ガイド部33aとガイド部34との係合により、ノブ31がルーバ15bの長手方向である左右方向に沿ってスライド可能となっている。また、ノブ31は、ルーバ連結部35を有する。ルーバ連結部35は、ノブ31において、摘み部33とは反対側、すなわちノブ31の後部に突設されている。ルーバ連結部35は、ルーバ15とは異なる上流側ルーバ36と連結される。すなわち、ノブ31は、ルーバ15bに沿って移動することで上流側ルーバ36を回動させるものである。本実施の形態では、ノブ31及びルーバ15bにより、ルーバ15の重心Gが、回動軸17よりも後側でルーバ15bよりも下方、かつ、ノブ31の中央部付近に設定される。
【0029】
図3及び図4に示す上流側ルーバ36は、フィンなどとも呼ばれ、ルーバ15よりも風の上流側において、ケース体3またはダクトにルーバ15の回動方向と交差または直交する方向に回動可能に取り付けられている。上流側ルーバ36は、ケース体3に対して回動することで、その回動に応じて吹出口7から吹き出される空調風の風向を調整する。本実施の形態において、上流側ルーバ36は、上下方向に延びる縦ルーバである。上流側ルーバ36には、回動部40が形成されている。回動部40が、ケース体3またはダクトに形成された回動受け部により回動可能に保持される。回動部40と回動受け部とは、一方が回動軸、他方が穴部などの回動受け部である。本実施の形態においては、回動部40が回動軸、回動受け部が穴部となっている。図示される例では、回動部40は、上流側ルーバ36の上下に同一軸線上に突設されている。
【0030】
また、上流側ルーバ36のルーバ15側の縁部である前縁部には、切欠部42が形成されているとともに、この切欠部42に、ルーバ連結部35と連結される軸部43が上下方向に延びて形成されている。軸部43を左右方向に挟んでルーバ連結部35が位置することで、ノブ31の左右方向へのスライドによって上流側ルーバ36に左右方向に力が加えられ、上流側ルーバ36が連動して回動部40を中心として左右に回動するように構成されている。
【0031】
本実施の形態では、上流側ルーバ36は、吹出口7の左右全体に亘り複数配置されている。左右方向の中央部に位置する上流側ルーバ36を除く他の上流側ルーバ36は、切欠部42及び軸部43を有さず、左右方向の中央部に位置する上流側ルーバ36に対し、リンクなどの連結体によって連結されている。本実施の形態において、各上流側ルーバ36には、回動部40に対して離れた位置に、連動部45が形成されている。図示される例では、連動部45は、回動部40と平行な軸線を有する円柱状の凸部である。連動部45がリンクによって互いに回動可能に連結されることで、左右方向の中央部に位置する上流側ルーバ36の回動と同方向に、他の上流側ルーバ36が連動して回動するように構成されている。図示される例では、上流側ルーバ36は、左側または右側に最大に回動させた位置で、互いに重なり合って吹出口7を閉塞するように面を構成可能となっている。
【0032】
次に、第1の実施の形態の動作を説明する。
【0033】
風向調整装置1は、ダクトを通過した空調風を、上流側ルーバ36及びルーバ15によって配風して吹出口7から吹き出す。
【0034】
本実施の形態の風向調整装置1は、ルーバ15による上下方向の配風と、上流側ルーバ36による左右方向の配風と、の組み合わせにより、任意方向への空調風の吹き出しが可能となる。
【0035】
まず、左右方向の配風については、乗員などの使用者がルーバ15bのノブ31の摘み部33を摘み、ノブ31をルーバ15bに沿って左右方向にスライドさせると、ノブ31のルーバ連結部35が左右方向の中央部に位置する上流側ルーバ36の軸部43に当接することで、左右方向の中央部に位置する上流側ルーバ36が左右に回動され、この回動に連動してその他の上流側ルーバ36が同方向に回動されることにより、空調風は上流側ルーバ36の整流面に沿って左右方向に整流され、吹出口7から左右方向に傾斜状に吹き出す。
【0036】
また、上下方向の配風については、乗員などの使用者がルーバ15bのノブ31の摘み部33を摘み、ノブ31をルーバ15bとともに上下方向に移動させると、このルーバ15bが上下方向に回動され、この回動に連動してルーバ15a,15cが同方向に回動されることにより、空調風はルーバ15の整流面に沿って上下方向に整流され、吹出口7から上下方向に吹き出す。
【0037】
このとき、例えば温度変化による寸法及び物性の変化、あるいは経年変化など、何らかの原因でルーバ15、例えば最も重量が大きいルーバ15bの上下方向の向きを保持する力が低下すると、回動軸線Aと重心Gとが離れていることにより、ルーバ15bは、重心G側が下がって上向きに回動しようとする。
【0038】
本実施の形態では、回動軸線Aに対して重心G側に生じるルーバ15bの重量に対し反力付与手段20が反力を付与するので、上記のような原因でルーバ15bの向きを保持する力が仮に低下したとしても、反力付与手段20により付与される反力によってルーバ15bの重量によるルーバ15の意図しない回動を抑制でき、ルーバ15bと連動するルーバ15の姿勢を維持できる。
【0039】
具体的に、ルーバ15bが上向きに回動しようとすると、それに連動して上向きに回動しようとするルーバ15aの接続部27が下がることで、接続部27に接続されている捩じりばねである反力付与手段20の他の腕部26の位置が下がろうとすることにより、本体部22が圧縮される方向に捩じられて反発力が生じる。そこで、接続部27を介してルーバ15aに対し上向きに力が生じて、ルーバ15aと連動するルーバ15bが重量と釣り合った位置、つまりルーバ15bが風軸Wに沿う姿勢に戻ろうとすることによって、ルーバ15が最大に上向きとなる位置まで向きが変わることを抑制できる。
【0040】
また、使用者がノブ31によってルーバ15を上向きに回動させるように操作した際、反力付与手段20がない場合にはルーバ15(ルーバ15b)の重量により下向きに回動させる操作をするときに比べて軽くなるものの、本実施の形態では反力付与手段20を圧縮する力が必要になるため、軽くなる操作力が反力付与手段20を圧縮する力に補われて、予め設定された操作力値に近づいた操作力を得ることができる。
【0041】
他方、使用者がノブ31によってルーバ15を下向きに回動させるように操作した際、反力付与手段20がない場合にはルーバ15(ルーバ15b)の重量を持ち上げる分、上向きに回動させる操作をするときに比べて重くなるものの、本実施の形態では、反力付与手段20が、ルーバ15が中立位置すなわちルーバ15bが風軸Wに沿う姿勢でルーバ15(ルーバ15b)の重量と釣り合うように反力を付与しているため、ルーバ15が中立位置よりも下向きになる場合に、反力付与手段20が自然状態に戻る位置までは反力付与手段20により付与され得る反力が操作を補助する向きに働くため、重くなる操作力が反力付与手段20により付与される反力によって打ち消されて、予め設定された操作力値に近づいた操作力を得ることができる。
【0042】
したがって、ルーバ15を重力方向に回動させる際とその反対方向に回動させる際とで操作力の差を抑制でき、操作フィーリングの向上、及び、操作荷重の安定化が見込める。
【0043】
しかも、反力付与手段20として捩じりばねを用い、ルーバ15aの回動軸17にコイル状の本体部22を取り付け、本体部22の一端部から延びる一の腕部23を側枠部5に保持し、本体部22の他端部から延びる他の腕部26をルーバ15の接続部27に取り付けることで、ルーバ15(ルーバ15b)の重量に対し反力を付与する反力付与手段20を簡素な構成で実現できる。
【0044】
また、反力付与手段20は、ばね定数の設定によりルーバ15(ルーバ15b)の重量と反力付与手段20の反力とを任意の位置で釣り合わせることができ、操作力を任意に設定できるので、操作力の補助の自由度が高い。
【0045】
なお、上記の第1の実施の形態において、反力付与手段20は、捩じりばね以外に、設置位置に応じて、引張ばね、圧縮ばね、渦巻ばねでなどでも対応可能である。
【0046】
次に、第2の実施の形態について、図5を参照して説明する。なお、上記の第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0047】
本実施の形態では、反力付与手段20が、ルーバ15の回動軸17に一端部が取り付けられるとともにケース体3の側枠部5に他端部が回り止めされた状態で取り付けられる弾性部材である。反力付与手段20は、ルーバ15の回動に伴い捩じれることで、この捩じれにより生じる反発力をルーバ15に付与する反力として利用する。なお、図中では一方の回動軸17についてのみ示すが、他方の回動軸17についても同様の構成を備えていてよい。
【0048】
回動軸17は、先端部に、回り止め部50が形成されている。回り止め部50は、ルーバ15の回動時に反力付与手段20が回動軸17に対して空回りしないように、回動軸17と反力付与手段20との一方を他方に対して周方向に回り止めするものである。回り止め部50の形状は、回動軸17と反力付与手段2との一方を他方に対して回り止めできる形状、すなわち、回動軸線Aからの距離が異なる領域を複数有する形状であれば、任意の形状としてよい。本実施の形態において、回り止め部50は、半円柱状に形成されている。すなわち、回り止め部50は、回動軸17の先端部のうち、回動軸線Aを含む平面の一方側のみを残した形状となっている。
【0049】
反力付与手段20は、例えばゴムなどにより形成されている。本実施の形態において、反力付与手段20は、回動軸17と等しい(略等しいも含む)径寸法を有する円柱状に形成されている。反力付与手段20の一端部には、回り止め部50に嵌合する第一嵌合部52が形成されている。第一嵌合部52は、円柱形状において、回り止め部50の補完形状となっている。
【0050】
また、反力付与手段20の他端部には、第二嵌合部53が形成されている。第二嵌合部53が、側枠部5に形成された受け部55に保持される。第二嵌合部53は、ルーバ15の回動時に反力付与手段20が側枠部5(受け部55)に対して空回りしないように、側枠部5(受け部55)に対し反力付与手段20を周方向に回り止めするものである。第二嵌合部53の形状は、反力付与手段20を側枠部5(受け部55)に対して回り止めできる形状、すなわち、回動軸線Aからの距離が異なる領域を複数有する形状であれば、任意の形状としてよい。本実施の形態において、第二嵌合部53は、半円柱状に形成されている。すなわち、第二嵌合部53は、反力付与手段20の他端部のうち、回動軸線Aを含む平面の一方側のみを残した形状となっている。
【0051】
また、受け部55、第二嵌合部53が嵌合可能な形状となっている。本実施の形態では、受け部55は、半円状に形成されている。受け部55は、側枠部5の側面部10を貫通する貫通穴として形成されている。
【0052】
そして、本実施の形態では、何らかの原因でルーバ15の上下方向の向きを保持する力が低下し、ルーバ15の重心G側が下がって上向きに回動しようとしたときに、反力付与手段20が捩じれることによって反発力が生じ、その反発力によってルーバ15の重量に対しルーバ15の姿勢を維持する方向に反力を付与するので、反力付与手段20により付与される反力によってルーバ15の重量による意図しない回動を簡素な構成で抑制でき、ルーバ15の姿勢を維持できるなど、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0053】
また、反力付与手段20は、弾性部材の弾性などの特性を選択することで、操作力を任意に設定でき、操作力の補助の自由度が高い。
【0054】
なお、上記の各実施の形態において、反力付与手段20は、ルーバ15を重量によって上向きに回動させようとするルーバ15に直接取り付けてもよい。特に、ルーバ15が単数である場合、反力付与手段20がそのルーバ15に直接取り付けられていてよい。また、リンク体16により互いに連動する複数のルーバ15を有する場合、反力付与手段20は、少なくともいずれかのルーバ15に取り付けることで、ルーバ15の重量に対する反力を複数のルーバ15全体として作用させればよい。
【0055】
反力付与手段20を直接回動軸17に取り付けない構成である場合には、回動軸17はルーバ15に形成されている代わりに、ケース体3の側枠部5に形成されている構成でもよい。すなわち、側枠部5に形成された回動軸にルーバ15が回動可能に接続される構成でもよい。
【0056】
また、風向調整装置1は、自動車用のものに限らず、その他の任意の用途に用いてよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、例えば自動車の空調用の風向調整装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 風向調整装置
5 保持部である側枠部
15 ルーバ
17 回動軸
20 反力付与手段
22 本体部
23 一の腕部
26 他の腕部
27 接続部
A 回動軸線
G 重心
図1
図2
図3
図4
図5