(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132471
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】静電容量測定検査治具
(51)【国際特許分類】
G01L 27/02 20060101AFI20230914BHJP
G01L 9/12 20060101ALI20230914BHJP
G01L 21/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
G01L27/02
G01L9/12
G01L21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037817
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】福辺 卓史
(72)【発明者】
【氏名】牛島 大
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼本 祐輔
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA11
2F055BB08
2F055CC02
2F055DD20
2F055EE25
2F055FF49
2F055GG49
2F055HH01
(57)【要約】
【課題】静電容量型圧力センサのリークチェックを静電容量型圧力センサ単体で行うことが可能な静電容量測定検査治具を提供する。
【解決手段】減圧管32の一端に静電容量型圧力センサ12の受圧部24を対向させて静電容量型圧力センサ12を保持するベース14と、ベース14と着脱可能に結合して静電容量型圧力センサ12を囲い込むと同時に当接して固定するカバー15とを備える。カバー15には静電容量型圧力センサ12から突出するリードピン27が通る開口部41が形成されている。外部からカバー15の開口部41に着脱可能に装着され、装着された状態において内部の中継コンタクト47がリードピン27に電気的に接続されるソケット42を備える。静電容量型圧力センサ12が検出した静電容量値を示す検出信号がソケット42から外部に取り出される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量型圧力センサの静電容量測定検査に用いられる静電容量測定検査治具であって、
真空ポンプに接続される減圧管と、
前記減圧管を内部へ導入する導入孔を有し、前記導入孔より内部に導入された前記減圧管の一端に検査対象の静電容量型圧力センサをその受圧部を対向させた状態で保持するベースと、
前記ベースと着脱可能に結合して検査対象の静電容量型圧力センサを囲い込むと同時に当接して固定する一方、前記検査対象の静電容量型圧力センサから突出するリードピンが外部と連通する開口部を有するカバーと、
外部から前記カバーの開口部に着脱可能に装着され、装着された状態において内部に保持された中継コンタクトと前記リードピンとの電気的接続を確保することにより、前記検査対象の静電容量型圧力センサが検出した静電容量値を示す検出信号を外部に取り出すソケットと
を備えることを特徴とする静電容量測定検査治具。
【請求項2】
請求項1に記載の静電容量測定検査治具において、
前記カバーに外部よりヒーターを内部に挿入し保持するヒーター挿入保持部が設けられ、
前記ヒーター挿入保持部にヒーターを装着されて、前記ベースと前記カバーで囲まれた内部空間が加熱されることを特徴とする静電容量測定検査治具。
【請求項3】
請求項1または2の何れかに記載の静電容量測定検査治具において、
前記ソケットの少なくとも前記カバーに対向接触する部分は絶縁材料で構成されていることを特徴とする静電容量測定検査治具。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一つに記載の静電容量測定検査治具において、
前記ベースは、
前記検査対象の静電容量型圧力センサを保持する第1のベース部材と、
前記第1のベース部材に取付けられた第2のベース部材とを備え、
前記第2のベース部材は、前記検査対象の静電容量型圧力センサを囲む枠状に形成されていることを特徴とする静電容量測定検査治具。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一つに記載の静電容量測定検査治具において、
前記カバーは、
前記検査対象の静電容量型圧力センサと重ねられる板状の第1のカバー部材と、
前記第1のカバー部材に取付けられた第2のカバー部材とを備え、
前記開口部は、前記第1のカバー部材に形成された第1の貫通孔と、前記第2のカバー部材に形成された第2の貫通孔とによって形成されていることを特徴とする静電容量測定検査治具。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一つに記載の静電容量測定検査治具において、
さらに、前記検査対象の静電容量型圧力センサを囲む状態で緊縛するばね材料からなるバンドを備え、
前記バンドと前記検査対象の静電容量型圧力センサとの間に温度センサが配置されていることを特徴とする静電容量測定検査治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量型圧力センサのリークチェックを行うために使用する静電容量測定検査治具に関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量型圧力センサは、真空容器の内部にセンサ本体を収容して形成されている。真空容器は、複数の部品を溶接して外形が円柱を呈する形状に形成されており、信号を取り出すためのリードピンが貫通している。リードピンの貫通部はハーメチックシールによって封止されている。また、真空容器の内部には、容器内で生じたガスを吸収するゲッターが設けられている。
【0003】
真空容器の溶接部やハーメチックシール部などから大気が容器内に入ると、容器内の真空度が低下してセンサ本体の検出精度が低下する。このため、静電容量型圧力センサは、真空容器の内部を真空状態とした後にリークチェックを行う必要がある。リークチェックは、静電容量型圧力センサを所定の温度に加熱するとともに、被測定圧力が導入される部分も真空としてセンサ本体をニュートラルな状態とし、センサ本体の静電容量を測定することにより行う。静電容量の測定は、静電容量型圧力センサをArガスの雰囲気中に所定の時間放置して行う。すなわち、真空容器にリーク箇所が存在すると、Arがリーク箇所から真空容器内に入り、真空容器内の圧力が増加してセンサ本体の静電容量が変化する。この静電容量の変化の大きさに基づいてリークチェックの良否判定が行われる。
【0004】
従来の静電容量型圧力センサのリークチェックは、
図18に示すように静電容量型圧力センサ1がセンサハウジング2の内部に組み込まれた完成状態で行われている。
図18に示す静電容量型圧力センサ1は、隔膜真空計3において圧力を検出するためのもので、被測定圧力を導入するための導圧管4が一端部(
図18においては下端部)に設けられており、ヒーター5の内部に組み込まれている。この静電容量型圧力センサ1の内部にセンサ本体6と支持ダイアフラム7によって導入管側とは仕切られた基準真空室8が形成されている。リークチェック時の加熱は、静電容量型圧力センサ1を覆うヒーター5を用いて行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の静電容量型圧力センサ1では、リークチェックを行って不良品であると判定されると、センサハウジング2やヒーター5などの全ての部品が無駄になってしまうという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、静電容量型圧力センサのリークチェックを静電容量型圧力センサ単体で行うことが可能な静電容量測定検査治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明に係る静電容量測定検査治具は、静電容量型圧力センサの静電容量測定検査に用いられる静電容量測定検査治具であって、真空ポンプに接続される減圧管と、前記減圧管を内部へ導入する導入孔を有し、前記導入孔より内部に導入された前記減圧管の一端に検査対象の静電容量型圧力センサをその受圧部を対向させた状態で保持するベースと、前記ベースと着脱可能に結合して検査対象の静電容量型圧力センサを囲い込むと同時に当接して固定する一方、前記検査対象の静電容量型圧力センサから突出するリードピンが外部と連通する開口部を有するカバーと、外部から前記カバーの開口部に着脱可能に装着され、装着された状態において内部に保持された中継コンタクトと前記リードピンとの電気的接続を確保することにより、前記検査対象の静電容量型圧力センサが検出した静電容量値を示す検出信号を外部に取り出すソケットとを備えているものである。
【0008】
本発明は、前記静電容量測定検査治具において、前記カバーに外部よりヒーターを内部に挿入し保持するヒーター挿入保持部が設けられ、前記ヒーター挿入保持部にヒーターを装着されて、前記ベースと前記カバーで囲まれた内部空間が加熱されてもよい。
【0009】
本発明は、前記静電容量測定検査治具において、前記ソケットの少なくとも前記カバーに対向接触する部分は絶縁材料で構成されていてもよい。
【0010】
本発明は、前記静電容量測定検査治具において、前記ベースは、前記検査対象の静電容量型圧力センサを保持する第1のベース部材と、前記第1のベース部材に取付けられた第2のベース部材とを備え、前記第2のベース部材は、前記検査対象の静電容量型圧力センサを囲む枠状に形成されていてもよい。
【0011】
本発明は、前記静電容量測定検査治具において、前記カバーは、前記検査対象の静電容量型圧力センサと重ねられる板状の第1のカバー部材と、前記第1のカバー部材に取付けられた第2のカバー部材とを備え、前記開口部は、前記第1のカバー部材に形成された第1の貫通孔と、前記第2のカバー部材に形成された第2の貫通孔とによって形成されていてもよい。
【0012】
本発明は、前記静電容量測定検査治具において、さらに、前記検査対象の静電容量型圧力センサを囲む状態で緊縛するばね材料からなるバンドを備え、前記バンドと前記検査対象の静電容量型圧力センサとの間に温度センサが配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、静電容量型圧力センサにベース、カバーおよびソケットを組み付け、減圧管内を真空状態とすることにより、静電容量型圧力センサの静電容量を測定することが可能になる。したがって、本発明によれば、静電容量型圧力センサのリークチェックを静電容量型圧力センサ単体で行うことが可能な静電容量測定検査治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態による静電容量測定検査治具の正面図である。
【
図2】
図2は、静電容量測定検査治具の平面図である。
【
図5】
図5は、圧力センサ部分を拡大して示す断面図である。
【
図6】
図6は、静電容量測定検査治具の分解斜視図である。
【
図7】
図7は、静電容量測定検査治具を組み立てる手順を説明するための断面図である。
【
図8】
図8は、第2の実施の形態による静電容量測定検査治具の正面図である。
【
図9】
図9は、静電容量測定検査治具の平面図である。
【
図13】
図13は、静電容量測定検査治具を
図9中のXIII-XIIIで破断した斜視断面図である。
【
図14】
図14は、圧力センサ部分を拡大して示す断面図である。
【
図15】
図15は、静電容量測定検査治具の分解斜視図である。
【
図17】
図17は、静電容量測定検査治具を組み立てる手順を説明するための断面図である。
【
図18】
図18は、静電容量型圧力センサを備えた従来の隔膜真空計の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る静電容量測定検査治具の一実施の形態を
図1~
図7(D)を参照して詳細に説明する。
図1に示す静電容量測定検査治具11は、内部に収容した静電容量型圧力センサ12(
図3参照)のリークチェックを行うための治具である。この実施の形態で使用する静電容量型圧力センサ12(以下、単に圧力センサ12という)は、
図18に示した隔膜真空計3に使用するもので、内部が真空状態とされて組立が完了しているものである。リークチェックは、圧力センサ12を実際に動作させて静電容量を測定して行う。リーク箇所があると、圧力センサ12内の真空度が低下して静電容量の値が変化する。この静電容量の変化に基づいて良否が判定される。
【0016】
この実施の形態による静電容量測定検査治具11は、
図1の中央部に描かれている引き止め用のファスナー止め金具13によって連結されたベース14とカバー15とを備えている。ファスナー止め金具13は、操作用レバー13aと係合片13bとを有し、係合片13bをカバー15のフック16に掛けて操作用レバー13aを
図1において下方に操作することによって、カバー15をベース14に引き寄せて固定する。この静電容量測定検査治具11は、詳細は後述するが、ベース14とカバー15の内部に検査対象の圧力センサ12を装填した状態でファスナー止め金具13を操作することによって、ベース14とカバー15の内部に圧力センサ12が固定される構成が採られている。
【0017】
(圧力センサの説明)
圧力センサ12は、
図5に示すように、円柱状のセンサケース21の中に支持ダイアフラム22およびセンサ本体23などを収容して形成されている。この圧力センサ12の軸線方向の一端部(
図5においては下端部)には、受圧部24が設けられている。
センサケース21は、複数の部品を溶接して組み立てられている。受圧部24は、円板状の支持ダイアフラム22と、支持ダイアフラム22の中央部に設けられたセンサ本体23とが壁の一部となるように形成されている。
【0018】
支持ダイアフラム22とセンサ本体23は、圧力センサ12の内部を基準真空室25と被測定圧室26とに分けている。圧力センサ12の軸線方向の他端部(
図5においては上端部)には、センサ本体23に一端部が電気的に接続された複数のリードピン27が立設されている。これらのリードピン27がセンサケース21を貫通する部分は、ハーメチックシール28によって封止されている。センサケース21の内部には、センサケース21内で生じたガスを吸入するゲッター29が設けられている。
この圧力センサ12は、受圧部24に導入された被測定圧力をセンサ本体23の静電容量に基づいて検出する構成のものである。
【0019】
(ベースの説明)
ベース14は、
図3および
図4に示すように、中心部に貫通孔31を有する円柱状に形成されている。ベース14を形成する材料はステンレス鋼である。貫通孔31には、減圧管32が嵌合した状態で溶接されている。減圧管32は、貫通孔31によってベース14の内部に導入されている。この減圧管32は、リークチェック時に圧力センサ12の受圧部24内を真空状態とするためのもので、図示していない配管を介して真空ポンプ33(
図1参照)に接続されている。この実施の形態においては、貫通孔31が本発明でいう「導入孔」に相当する。
【0020】
ベース14は、軸線方向の一端側と他端側とで外径を変えて形成されている。ベース14の大径部14aに上述したファスナー止め金具13が取付用ボルト34によって取付けられている。
ベース14の小径部14bには、静電容量型圧力センサ12の受圧部24が嵌合するリング状の突条35(
図5および
図6参照)が形成されているとともに、Oリング36が挿入される環状の溝37が形成されている。Oリング36は、圧力センサ12の受圧部24とベース14との間をシールするものである。
【0021】
小径部14bの突条35が圧力センサ12の受圧部24に嵌入することにより、
図5に示すように、貫通孔31よりベース14の内部に導入された減圧管32の一端に圧力センサ12の受圧部24が対向する。すなわち、ベース14は、圧力センサ12の受圧部24を減圧管32に対向させた状態で圧力センサ12を保持する。
【0022】
(カバーの説明)
カバー15は、ベース14の小径部14bに着脱可能に嵌合して結合される有底筒状に形成されている。カバー15を形成する材料はステンレス鋼である。カバー15の底壁15a(
図3においては上側の壁)は、ベース14に保持された圧力センサ12の軸線方向の端面と重なるように平板状に形成されている。この底壁15aの中央部分には、圧力センサ12から突出する複数のリードピン27を通すための開口部41が形成されている。リードピン27は、カバー15の開口部41を通ってカバー15の外部と連通する。リードピン27には、圧力センサ12がベース14およびカバー15に固定された状態において、後述するソケット42が接続される。
【0023】
カバー15がベース14の小径部14bに嵌合して底壁15aが圧力センサ12に重ねられた状態においては、
図3に示すように、カバー15の側壁15bが圧力センサ12を囲い込むと同時に底壁15aが圧力センサ12に当接し、圧力センサ12がベース14とカバー15とに固定されるようになる。
側壁15bには、
図4に示すように、複数のヒーター挿入保持部43が設けられている。この実施の形態によるヒーター挿入保持部43は、円柱状のヒーター44が嵌合する貫通孔によって形成されている。
【0024】
ヒーター44は、通電されることにより発熱する構成のもので、ヒーター挿入保持部43にカバー15の外部より挿入されることによりカバー15の内部に保持される。
図4に示すヒーター44は、通電用の配線を省略して描いてある。ヒーター44の一端部には、カバー15の底壁15aに沿って延びる突片44aが設けられている。突片44aが底壁15aに重ねられることによって、ヒーター44がヒーター挿入保持部43内の所定の位置に位置決めされる。
ヒーター挿入保持部43にヒーター44が装着された状態でヒーター44が発熱することにより、ベース14とカバー15で囲まれた内部空間Sが加熱される。
カバー15の側壁15bの外側面には、ファスナー止め金具13が係合するフック16が設けられている。
【0025】
(ソケットの説明)
ソケット42は、圧力センサ12が検出した静電容量値を示す検出信号を外部に取り出すためのもので、カバー15の開口部41にカバー15の外から着脱可能に装着されている。この実施の形態によるソケット42は、
図5に示すように、金属製のボディ45と、ボディ45に螺着されたリードピン27毎のねじ部材46と、ねじ部材46の内部に設けられた中継コンタクト47などによって構成されている。ねじ部材46は、絶縁性を有するプラスチック材料によって中空のねじ状に形成されている。
【0026】
中継コンタクト47は、導体によって棒状に形成されており、ねじ部材46の中空部に圧入されている。中継コンタクト47の圧力センサ12側の端部は、圧力センサ12のリードピン27が圧入されて電気的に接続されるように構成されている。
このソケット42をカバー15の開口部41に装着し、ソケット42の内部に保持された中継コンタクト47とリードピン27との電気的接続を確保することにより、圧力センサ12から検出信号を外部に取り出すことが可能になる。
【0027】
(リークチェックの説明)
圧力センサ12の静電容量測定検査(以下、単にリークチェックという)は、圧力センサ12内のゲッター29と反応することがないArを使用して行う。詳述すると、圧力センサ12をArガスの雰囲気中に所定時間放置する以前と以後とでそれぞれ静電容量値を測定し、値の変化を検出する。
静電容量値を測定するにあたっては、
図7(A)~(D)に示すように静電容量測定検査治具11に圧力センサ12を組み付ける。圧力センサ12を組付けるにあたっては、先ず、
図7(A)に示すように、ベース14を小径部14bが上に位置する姿勢で支持台48に保持させ、このベース14の小径部14bに圧力センサ12を載置する。なお、ベース14を支持台48に装着したときには、減圧管32に図示していない配管を介して真空ポンプ33を接続する。
【0028】
次に、
図7(B)に示すように、ベース14にカバー15を被せ、ファスナー止め金具13をロック状態としてベース14にカバー15を引き寄せて固定する。このようにファスナー止め金具13をロック状態とすると、
図3に示すように、カバー15の底壁15aとベース14との間に圧力センサ12が挟まれて保持される。そして、
図7(C)に示すように、カバー15の開口部41にソケット42を装着し、ソケット42の中継コンタクト47を圧力センサ12のリードピン27に接続する。
【0029】
ソケット42を圧力センサ12に接続した後、ソケット42に図示していない計測器を接続する。しかる後、
図7(D)に示すように、カバー15にヒーター44を装着する。ヒーター44がカバー15に組み付けられた後、真空ポンプ33を動作させるとともに、ヒーター44に通電して静電容量測定検査治具11の内部空間Sを所定の温度に加熱する。減圧管32内および圧力センサ12の受圧部24内の圧力が所定の真空度となるまで減圧されるとともにカバー15や圧力センサ12が所定の温度に加熱された状態で圧力センサ12の静電容量値を測定する。
圧力センサ12をArガスの雰囲気中で所定時間放置する際には、圧力センサ12が組み込まれた静電容量測定検査治具11を図示していないチャンバーの中に設置する。チャンバー内にはArガスを充填する。このようにArガスの雰囲気中に圧力センサ12が設置されることにより、圧力センサ12にリーク箇所が存在する場合はArがリーク箇所を通って圧力センサ12内に侵入し、基準真空室25の真空度が低下する。
【0030】
この実施の形態による静電容量測定検査治具11においては、圧力センサ12にベース14、カバー15およびソケット42を組み付け、減圧管32内を真空状態とすることにより、圧力センサ12の静電容量を測定することが可能になる。したがって、この実施の形態によれば、圧力センサ12のリークチェックを行うにあたって隔膜真空計の他の部品を使用することなく圧力センサ単体で行うことができるから、圧力センサ12が不良品であった場合であっても無駄を最小限にとどめることができる。
【0031】
この実施の形態による静電容量測定検査治具11のカバー15には、外部よりヒーター44を内部に挿入し保持するヒーター挿入保持部43が設けられている。そして、ヒーター挿入保持部43にヒーター44を装着されて、ベース14とカバー15で囲まれた内部空間が加熱される構成が採られている。このため、カバー15のヒーター挿入保持部43をヒーター44に適合する形状に形成することができるから、例えば既製品のヒーターを使用して静電容量測定検査治具11の製造コストを低減することが可能になる。
【0032】
(第2の実施の形態)
本発明に係る静電容量測定検査治具は、
図8~
図17に示すように構成することができる。
図8~
図17において、
図1~
図7によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図8に示す静電容量測定検査治具51は、第1の実施の形態を採るときの静電容量測定検査治具11と較べてベース14と、カバー15と、ソケット42とがそれぞれ二つの部材によって形成されている。
【0033】
(ベースの説明)
ベース14は、
図10および
図11に示すように、検査対象の静電容量型圧力センサ12(以下、単に圧力センサ12という)を保持する第1のベース部材52と、第1のベース部材52に取付用ボルト53(
図12参照)によって取付けられた第2のベース部材54とによって形成されている。
第1のベース部材52には、
図10に示すように、減圧管32とファスナー止め金具13とが設けられている。また、第1のベース部材52には、
図15に示すように、圧力センサ12を取付けるための突条35と、Oリング36を装着するための環状の溝37と、ヒーター44を挿入するための貫通孔55と、第2のベース部材54を取付けるためのねじ孔56とが形成されている。
【0034】
この実施の形態による圧力センサ12の外周部には、
図16に示すようにバンド57が取付けられている。このバンド57は、ばね材料によって形成されており、圧力センサ12の外周部を緊縛している。また、バンド57は、圧力センサ12の径方向の外側に向けて膨出する膨出部57aを有している。この膨出部57aには、
図13および
図16に示すように温度センサ58が挿入されている。温度センサ58は、リークチェック時に圧力センサ12の温度を検出するためのもので、バンド57と圧力センサ12とに挟まれてこれらの部材の間に配置されている。
【0035】
第2のベース部材54は、
図10に示すように、圧力センサ12を囲む枠状に形成されており、
図12に示すように、取付用ボルト53によって第1のベース部材52に取付けられている。この第2のベース部材54には、ヒーター44を挿入するための貫通孔61と、取付用ボルト53が挿通される貫通孔62とが形成されている。
【0036】
(カバーの説明)
カバー15は、
図15に示すように、板状の第1のカバー部材63と、第1のカバー部材63に取付用ボルト64によって取付けられた第2のカバー部材65とによって形成されている。
第1のカバー部材63には、切欠き66と、切欠き66に連なる円形の開口部67と、取付用ボルト64がねじ込まれる複数のねじ孔68と、ヒーター44を挿入するための貫通孔69とが形成されている。円形の開口部67は、
図14に示すように、ソケット42の複数のねじ部材46を挿入するための孔である。この実施の形態においては、第1のカバー部材63の円形の開口部67が本発明でいう「第1の貫通孔」に相当する。
【0037】
第2のカバー部材65は、
図15に示すように、平面視において略十字状に形成されている。第2のカバー部材65の一側部65aと他側部65bとを構成する十字の2辺には、取付用ボルト64が挿通される貫通孔70がそれぞれ形成されているととともに、ファスナー止め金具13が係合するフック16が設けられている。第2のカバー部材65の中央部には、切欠き71と、切欠き71に連なる円形の開口部72とが形成されている。第1のカバー部材63の切欠き66と第2のカバー部材65の切欠き71は、温度センサ58(
図13参照)のリード線73を通すために形成されている。
第2のカバー部材65の円形の開口部72は、ソケット42の後述する本体74(
図10および
図11参照)を挿入するための孔である。この実施の形態においは、第2のカバー部材65の円形の開口部72が本発明でいう「第2の貫通孔」に相当する。この実施の形態においては、円形の開口部67と円形の開口部72とが本発明でいう「開口部」に相当する。
【0038】
第2のカバー部材65が平面視において略十字状に形成されていることにより、ヒーター44を第2のカバー部材65の貫通孔69に挿入するときに一側部65aと他側部65bとに隣接する凹部65c,65d(
図11参照)に通すことができる。この実施の形態においては、
図11に示すように、第1のベース部材52の貫通孔55と、第2のベース部材54の貫通孔61と、第1のカバー部材63の貫通孔69とによって、ヒーター挿入保持部43が構成されている。
【0039】
第2のカバー部材65の切欠き71とは反対側の側部には、
図13に示すように永久磁石75が取付用ボルト76によって取付られている。永久磁石75の一端面(
図13においては上面)は、第2のカバー部材65における第1のカバー部材63とは反対側の端面と同一平面上に位置している。
【0040】
(ソケットの説明)
ソケット42は、
図10に示すように、ねじ部材46が螺着された本体74と、本体74に取付用ボルト77によって取付けられたリング78とによって形成されている。本体は金属材料によって形成され、リング78は絶縁材料によって形成されている。
本体74は、第2のカバー部材65の円形の開口部72に挿入される円柱部74aと、円柱部74aの一端(
図10においては上端であって第1のカバー部材63とは反対側の一端)から径方向の外側に突出するフランジ74bとによって形成されている。リング78をフランジ74bに取付ける取付用ボルト77は、フランジ74bに形成された貫通孔79に通されている。このフランジ74bと第2のカバー部材65との間にリング78が挟まれている。この実施の形態においては、リング78が本発明でいう「カバーに対向接触する部分」に相当する。
【0041】
リング78の中空部は、本体74の円柱部74aが嵌合する形状に形成されている。リング78の外周部には、取付用ボルト77がねじ込まれるねじ孔80が形成されているとともに、磁性材からなる板81(
図13参照)が取付用ボルト82によって取付けられている。取付用ボルト82は、
図13に示すように、本体74のフランジ74bに形成された貫通孔83とリング78の貫通孔84とに通されて板81のねじ孔85にねじ込まれている。
この板81は、リング78における、本体74のフランジ74bとは反対側の端面の一部を構成するようにリング78に取付けられており、ソケット42を圧力センサ12に接続したときに第2のカバー部材65の永久磁石75に磁気によって吸着される。
【0042】
この実施の形態による静電容量測定検査治具51を組立てるためには、先ず、
図17(A)に示すように、第1のベース部材52に第2のベース部材54を取付けてベース14を組み立てる。そして、
図17(B)に示すように、第2のベース部材54に圧力センサ12を搭載する。次に、
図17(C)に示すように、第2のベース部材54にカバー15を重ね、ファスナー止め金具13によってカバー15をベース14に引き寄せて固定する。
その後、
図17(D)に示すように、カバー15にソケット42を重ね、ソケット42の中継コンタクト47を圧力センサ12のリードピン27に電気的に接続する。このようにソケット42を圧力センサ12に取付けた後、ヒーター44に通電して圧力センサ12を所定の温度に加熱するとともに減圧管32内および圧力センサ12の受圧部24内を所定の真空度とした状態で圧力センサ12の静電容量が測定される。
【0043】
(実施の形態による効果の説明)
この実施の形態によるソケット42のカバー15に対向接触する部分(リング78)は絶縁材料で構成されている。このため、圧力センサ12のセンサケース21に電流が流れることを防ぐことができるから、静電容量を測定する際の精度が高くなる。なお、ソケット42の本体74を絶縁材料によって形成することもできる。
【0044】
この実施の形態によるベース14は、圧力センサ12を保持する第1のベース部材52と、第1のベース部材52に取付けられた枠状の第2のベース部材54とを備えている。このため、ベース14に圧力センサ12を載せた状態で圧力センサ12が第2のベース部材54よって囲まれるから、カバー15をベース14に取付けるまでの間に圧力センサ12がベース14から脱落することを防ぐことができる。
また、第1のベース部材52と第2のベース部材54は、それぞれ単純な形状に形成できるから、第1の実施の形態で示した段付き円柱状のベース14と較べると、ベース14を簡単に製造することができる。
【0045】
この実施の形態によるカバー15は、圧力センサ12と重ねられる板状の第1のカバー部材63と、第1のカバー部材63に取付けられた第2のカバー部材65とを備えている。このため、圧力センサ12に接触する部分とベース14に接触する部分とを有する複雑な形状のカバー15を単純な形状の第1のカバー部材63と第2のカバー部材65とを組み合わせて形成することができる。
このため、カバー15が有底筒状に形成されている第1の実施の形態を採る場合と較べて、カバー15を簡単に製造することができる。
【0046】
この実施の形態による静電容量測定検査治具51は、圧力センサ12を緊縛するバンド57を備え、このバンド57と圧力センサ12によって温度センサ58を挟んで保持する構成が採られている。このため、リークチェック後に温度センサ58を簡単に取り外すことができる。
【符号の説明】
【0047】
11,51…静電容量測定検査治具、12…静電容量型圧力センサ、14…ベース、15…カバー、24…受圧部、27…リードピン、31…貫通孔(導入孔)、32…減圧管、33…真空ポンプ、41…開口部、42…ソケット、44…ヒーター、43…ヒーター挿入保持部、47…中継コンタクト、52…第1のベース部材、54…第2のベース部材、57…バンド、58…温度センサ、63…第1のカバー部材、65…第2のカバー部材、67…円形の開口部(第1の貫通孔)、72…円形の開口部(第2の貫通孔)、78…リング、S…内部空間。