(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132499
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】接着剤組成物及び接着剤層付き積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 125/08 20060101AFI20230914BHJP
C09J 153/02 20060101ALI20230914BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20230914BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230914BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20230914BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230914BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230914BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230914BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20230914BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C09J125/08
C09J153/02
C09J163/00
C09J11/04
C09J7/35
B32B27/00 D
B32B27/00 M
B32B27/30 B
B32B27/18 Z
B32B7/025
B32B27/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037860
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】平川 真
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AA20A
4F100AA34A
4F100AK04A
4F100AK04J
4F100AK07A
4F100AK07J
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4F100AK41B
4F100AK42B
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4F100JL11
4J004AA06
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4J040HD35
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4J040MA02
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA19
4J040PA30
4J040PA33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ハンドリング性に優れ、得られる硬化膜が十分に高い誘電率を示し、この硬化膜は柔軟性も備え、被着体への接着力にも優れる接着剤組成物を提供すること。また、この接着剤組成物を用いた接着剤層付き積層体を提供すること。
【解決手段】カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)と、エポキシ樹脂(B)と、チタン酸化合物(C)とを含み、全固形分中、前記カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)の含有量が6質量%以上であり、硬化反応後の硬化物の誘電率が3.8以上である、接着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)と、エポキシ樹脂(B)と、チタン酸化合物(C)とを含み、
全固形分中、前記カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)の含有量が6質量%以上であり、
硬化反応後の硬化物の誘電率が3.8以上である、接着剤組成物。
【請求項2】
前記チタン酸化合物(C)の誘電率が100以上である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記チタン酸化合物(C)の含有量が、前記カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)の含有量100質量部に対し、70~1100質量部である、請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記チタン酸化合物(C)が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム及びチタン酸カルシウムの少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
シランカップリング剤を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)の酸価が、0.1~35mgKOH/gである、請求項1~5のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)が、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレンプロピレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体、及びスチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体の少なくとも1種の、不飽和カルボン酸化合物による変性物である、請求項1~6のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂(B)が、脂環骨格を有する多官能エポキシ樹脂である、請求項1~7のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂(B)の含有量が、前記カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)の含有量100質量部に対し、0.5~30質量部である、請求項1~8のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
基材フィルムと、請求項1~9のいずれか1項に記載の接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える接着剤層付き積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物及び接着剤層付き積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量型センサは、タッチセンサ、指紋認証、検品作業などに使用されている。例えば指紋認証では、基板上に半導体のセンサ素子を設け、指紋の微細な凹凸とセンサ素子との距離によって発生する静電容量の違いが検出される。このような静電容量型センサは、一般的にはセンサ素子が封止材により封止されて保護されているが、この封止材はセンサの感度低下の原因となる。センサの感度低下を防ぐために、封止材に高誘電無機充填材を配合し、封止材の誘電率を高めることが提案されている(例えば特許文献1)。
電子部品の封止材としては種々の組成のものが知られており、なかでも硬化性のエポキシ系接着剤が汎用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エポキシ系接着剤と高誘電無機充填材とを組み合わせると、得られる封止材(硬化膜)を、高誘電率かつ高弾性率を示すものとできる。しかし、本発明者らが検討したところ、これらの封止材は柔軟性に劣り、また、十分な接着力(剥離強度)が発現しない場合があり、さらに、硬化前の接着剤の状態で液粘度が上昇しやすく、ハンドリング性の問題も生じやすいことがわかってきた。
【0005】
本発明は、ハンドリング性に優れ、得られる硬化膜が十分に高い誘電率を示し、この硬化膜は柔軟性も備え、被着体への接着力にも優れる接着剤組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、この接着剤組成物を用いた接着剤層付き積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者の上記課題は下記手段により解決される。
[1]
カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)と、エポキシ樹脂(B)と、チタン酸化合物(C)とを含み、
全固形分中、前記カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)の含有量が6質量%以上であり、
硬化反応後の硬化物の誘電率が3.8以上である、接着剤組成物。
[2]
前記チタン酸化合物(C)の誘電率が100以上である、[1]に記載の接着剤組成物。
[3]
前記チタン酸化合物(C)の含有量が、前記カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)の含有量100質量部に対し、70~1100質量部である、[1]又は[2]に記載の接着剤組成物。
[4]
前記チタン酸化合物(C)が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム及びチタン酸カルシウムの少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
[5]
シランカップリング剤を含有する、[1]~[4]のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
[6]
前記カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)の酸価が、0.1~35mgKOH/gである、[1]~[5]のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
[7]
前記カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)が、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレンプロピレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体、及びスチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体の少なくとも1種の、不飽和カルボン酸化合物による変性物である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
[8]
前記エポキシ樹脂(B)が、脂環骨格を有する多官能エポキシ樹脂である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
[9]
前記エポキシ樹脂(B)の含有量が、前記カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)の含有量100質量部に対し、0.5~30質量部である、[1]~[8]のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
[10]
基材フィルムと、[1]~[9]のいずれか1つに記載の接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える接着剤層付き積層体。
【0007】
本発明及び本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。例えば、「A~B」と記載されている場合、その数値範囲は、「A以上B以下」である。
【0008】
本発明及び本明細書において、「接着剤層」という場合、硬化前の状態、Bステージの状態(すなわち、一部が硬化し始めた半硬化状態にあり、加熱等により硬化が更に進行する状態)、又は、硬化反応を進行させて十分に架橋構造を形成させた後の状態の層を意味する。また、「硬化物」、「硬化膜」という場合、接着剤組成物を硬化反応させて十分に架橋構造を形成させた後の状態にある物又は膜を意味する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の接着剤組成物は、ハンドリング性に優れ、得られる硬化膜が十分に高い誘電率を示し、この硬化膜は柔軟性も備え、被着体への接着力にも優れる。また、本発明の接着剤層付き積層体は、接着剤層を硬化して得られる硬化膜が十分に高い誘電率を示し、この硬化膜は柔軟性も備え、被着体への接着力にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の接着剤組成物について、好ましい実施形態を以下に説明するが、本発明は本発明で規定すること以外は、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
[接着剤組成物]
本発明の接着剤組成物は、カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)と、エポキシ樹脂(B)と、チタン酸化合物(C)とを含み、全固形分中、前記カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)の含有量が6質量%以上であり、硬化反応後の硬化物の誘電率が3.8以上であることを特徴とする。本発明の接着剤組成物を構成する各成分について、順に説明する。
【0012】
<カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)>
本発明の接着剤組成物は、カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)として、カルボキシ基含有スチレン系エラストマーを1種又は2種以上を含有する。カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)は、上記接着剤組成物のベース樹脂の1つであり、接着性、及び硬化物の柔軟性に加えて、チタン酸化合物(C)との相互作用により、チタン酸化合物(C)の高誘電特性を、接着剤組成物の電気特性として効果的に引き出す成分である。カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)は常法により合成することができる。また、市販品を用いてもよい。カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)について、より詳細に説明する。
【0013】
本発明に用いられるカルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)に特に制限はなく、共役ジエン化合物とスチレン化合物とのブロックおよびランダム構造を主体とする共重合体、又はその水素添加物を、不飽和カルボン酸化合物で変性したものを広く用いることができる。共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン又は2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等が挙げられる。また、スチレン化合物としては、例えば、スチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン、ビニルトルエン又はp-第3ブチルスチレン等が挙げられる。
【0014】
カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)は、例えば、スチレン系エラストマーの重合時に、不飽和カルボン酸化合物を共重合させることにより得ることができる。あるいは、スチレン系エラストマーと不飽和カルボン酸化合物とを有機パーオキサイドの存在下に加熱、混練することにより、スチレン系エラストマーをグラフト変性して得ることもできる。
不飽和カルボン酸化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸又は無水フマル酸等が挙げられる。すなわち、本発明において「カルボキシ基含有」とは、カルボキシ基を含有する形態、カルボン酸無水物基を含有する形態、カルボキシ基とカルボン酸無水物基の両方を含有する形態のすべてを包含する意味である。
カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)に占める、不飽和カルボン酸化合物由来の構造部の割合は、0.1~10質量%であることが好ましい。
【0015】
カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)の酸価は、硬化反応性、接着性、耐熱性、電気特性の観点から、0.1~35mgKOH/gであることが好ましく、0.1~32mgKOH/gであることがより好ましく、0.1~25mgKOH/gであることがさらに好ましく、0.5~23mgKOH/gであることが特に好ましい。上記「酸価」とは、カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)1g中に存在する酸を中和するのに要するKOHのmg数を意味する。
本発明においてカルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)の酸価とは、JIS K 0070:1992に準じて測定した値を意味する。
【0016】
カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)の重量平均分子量は、10000~500000であることが好ましく、30000~300000であることがより好ましく、50000~200000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であると、接着剤組成物に優れた接着性及び電気特性を発現させることができる。なお、上述の「重量平均分子量」とは、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう)により測定した分子量をポリスチレン換算した値である。
【0017】
カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)のスチレン系エラストマーの具体例としては、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレンプロピレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体及びスチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体等が挙げられる。これらのスチレン系エラストマーの、不飽和カルボン酸化合物による変性物を、カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)として用いることができる。これらのカルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記共重合体の中でも、接着性及び電気特性の観点から、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体及びスチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体の少なくとも1種の、不飽和カルボン酸化合物による変性物が好ましい。
上記のスチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体におけるスチレン成分とエチレンブチレン成分の質量比(スチレン成分/エチレンブチレン成分)、及び、スチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体におけるスチレン成分とエチレンプロピレン成分の質量比(スチレン成分/エチレンプロピレン成分)は、接着性をより高める観点から、10/90~50/50であることが好ましく、20/80~40/60であることがより好ましい。
【0018】
カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)の含有量は、接着剤組成物の全固形分中(溶媒を除いた成分中)、6質量%以上であり、6~75質量%が好ましく、より好ましい含有量に向けて順に挙げると、7~70質量%であり、10~65質量%であり、12~60質量%であり、15~55質量%である。
【0019】
<エポキシ樹脂(B)>
本発明の接着剤組成物は、エポキシ樹脂(B)として、エポキシ樹脂の1種又は2種以上を含有する。エポキシ樹脂(B)は、カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)を硬化させる架橋剤の役割を担う。エポキシ樹脂(B)の種類に特に制限はなく、エポキシ系接着剤に用いられるエポキシ樹脂を広く適用することができる。
【0020】
エポキシ樹脂(B)の例としては、
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、又はそれらに水素添加したもの;
オルトフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p-ヒドロキシ安息香酸グリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、又はトリメリット酸トリグリシジルエステル等のグリシジルエステル系エポキシ樹脂;
エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラフェニルグリシジルエーテルエタン、トリフェニルグリシジルエーテルエタン、ソルビトールのポリグリシジルエーテル、又はポリグリセロールのポリグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;
トリグリシジルイソシアヌレート、又はテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン系エポキシ樹脂;
エポキシ化ポリブタジエン、又はエポキシ化大豆油等の線状脂肪族エポキシ樹脂;
エポキシ樹脂(B)の例として、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、又はビスフェノールA型ノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;
等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
また、エポキシ樹脂(B)の例として、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、又はビスフェノールS型エポキシ樹脂等を用いることもできる。
【0022】
エポキシ樹脂(B)として、一分子中に2個以上のエポキシ基を有するもの(本明細書において、「多官能エポキシ樹脂」ということがある。)を用いると、カルボキシル基含有スチレン系エラストマーとの反応で十分な架橋構造を形成し、高い耐熱性を発現させることができる。
【0023】
上記のエポキシ樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記エポキシ樹脂の中でも、接着剤層付き積層体の貯蔵安定性を向上させる観点から、グリシジルアミノ基を有しないエポキシ樹脂が好ましい。また、電気特性に優れた接着剤組成物が得られることから、脂環骨格を有するエポキシ樹脂が好ましく、なかでも、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂がより好ましい。また、電気特性及び耐熱性に優れた接着剤組成物が得られることから、脂環骨格を有する多官能エポキシ樹脂が好ましく、なかでも、ジシクロペンタジエン骨格を有する多官能エポキシ樹脂がより好ましい。
【0024】
本発明の接着剤組成物に含まれるエポキシ樹脂(B)の含有量は、架橋点密度や耐熱性の観点から、カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)100質量部に対し、0.5~30質量部が好ましく、1~25質量部であることがより好ましく、1.5~20質量部であることがさらに好ましく、2~15質量部であることが特に好ましい。
【0025】
<チタン酸化合物(C)>
本発明の接着剤組成物は、チタン酸化合物(C)として、チタン酸化合物の1種又は2種以上を含有する。チタン酸化合物(C)は、本発明の接着剤組成物中に粒子状で含まれる無機フィラーである。チタン酸化合物(C)として、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ネオジム、チタン酸ビスマス、チタン酸鉛、チタン酸ニッケル、チタン酸亜鉛、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛等が挙げられ、中でもチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、及びチタン酸カルシウムの少なくとも1種が好ましい。
【0026】
本発明の接着剤組成物中、チタン酸化合物(C)の含有量は、高誘電性と良好な接着性に加え、塗工性も考慮すると、カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)の含有量100質量部に対し、70~1100質量部であることが好ましく、より好ましい含有量に向けて順に挙げると、80~1000質量部であり、100~900質量部であり、120~800質量部であり、150~700質量部である。
【0027】
チタン酸化合物(C)の誘電率(ε)は、たとえばチタン酸化合物(C)を加熱、焼成することにより得られる焼結体の誘電特性から類推できる。焼結体の誘電特性は以下の手順によって測定する。チタン酸化合物(C)をポリビニルアルコール及び水と混合してペースト状組成物を作製した後、ペレット成型器の中に充填して乾燥させ、ペレット状固形物を得る。そのペレット状固形物を、例えば900~1200℃程度まで加熱、焼成することにより、バインダー樹脂を分解、除去し、チタン酸化合物(C)を焼結させることで焼結体ペレットを得ることができる。この焼結体ペレットに上下電極を形成し、JIS K 6911:2006に準じて静電容量を測定する。静電容量と焼結体ペレットの寸法より誘電率(ε)を計算する。
【0028】
チタン酸化合物(C)の誘電率(ε)(測定周波数:1MHz)は、100以上であることが好ましく、120以上であることがより好ましく、150以上であることがさらに好ましい。チタン酸化合物(C)の誘電率(ε)の上限値は特に制限されず、通常は15000以下である。
【0029】
本発明に係る接着剤組成物は、カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)と、エポキシ樹脂(B)と、チタン酸化合物(C)とを組み合わせて含有し、かつカルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)の含有量を特定量以上に制御することによって、接着剤組成物の液粘度の上昇が抑制されてハンドリング性に優れ、この組成物を用いて形成した接着剤層は、硬化反応により被着体に対して強固な接着力を示し、かつ、より高い誘電率も達成することができる。さらに、硬化膜の柔軟性も担保でき、フレキシブルデバイスへの適用も可能である。
【0030】
本発明の接着剤組成物は、ベース樹脂としてカルボキシ基含有スチレン系エラストマーを含有することにより、接着性及び硬化物の柔軟性に加えて、チタン酸化合物(C)との相互作用により、チタン酸化合物(C)の高誘電特性を、接着剤組成物の電気特性として効果的に引き出すことができる。この理由は定かではないが、カルボキシ基含有スチレン系エラストマーに特有の構造(カルボキシ基)の極性等に起因して、カルボキシ基含有スチレン系エラストマー中ではチタン酸化合物が、誘電率の高い小粒径の状態で、均一分散できることが一因と考えられる。
【0031】
<硬化促進剤>
本発明の接着剤組成物は、硬化促進剤を含有することが好ましい。硬化促進剤は、カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)とエポキシ樹脂(B)との反応を促進させる目的で使用するものである。上記硬化促進剤としては、例えば、第三級アミン系硬化促進剤、第三級アミン塩系硬化促進剤、又はイミダゾール系硬化促進剤等が挙げられる。
第三級アミン系硬化促進剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、又は1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン等が挙げられる。
第三級アミン塩系硬化促進剤としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセンの、ギ酸塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、o-フタル酸塩、フェノール塩又はフェノールノボラック樹脂塩、
また、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネンの、ギ酸塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、o-フタル酸塩、フェノール塩又はフェノールノボラック樹脂塩等が挙げられる。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-メチル-4-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、又は2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。上述の硬化促進剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
上記硬化促進剤の含有量は、硬化促進剤の種類に応じて適宜に設定すればよい。上記硬化促進剤の含有量は、カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)100質量部に対して、0.01~1.0質量部が好ましく、0.03~0.5質量部がより好ましく、0.05~0.4質量部がさらに好ましい。上記硬化促進剤の含有量が上記範囲内であると、優れた接着性及び耐熱性を有する。
【0033】
<カップリング剤>
本発明の接着剤組成物は、カップリング剤を含有することが好ましい。上記カップリング剤としては、
ビニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトシキシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネ-トプロピルトリエトキシシラン、又はイミダゾールシラン等のシラン系カップリング剤;
チタネ-ト系カップリング剤、アルミネ-ト系カップリング剤、又はジルコニウム系カップリング剤;
等が挙げられる。
上述のカップリング剤は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記カップリング剤の含有量は、カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)の含有量100質量部に対して、0.2~3.0質量部であることが好ましく、0.5~2.0質量部であることがより好ましい。
【0035】
<接着剤組成物の特性>
本発明に係る接着剤組成物は、硬化反応後の硬化物の誘電率が3.8以上であり、好ましくは4.0以上であり、より好ましくは6.0以上であり、さらに好ましくは8.0以上であり、特に好ましくは10.0以上である。当該誘電率の上限値は、特に限定されないが、通常は100.0以下であり、80.0以下であってもよく、60.0以下であってもよく、40.0以下であってもよい。
本発明において、接着剤組成物の硬化物の誘電率とは、誘電率3.8~80の範囲においては、誘電体共振器法(SPDR法)で、温度23℃、周波数10GHzの条件で測定した値を意味する。ただし、誘電率80を超過する場合の測定周波数、誘電率、誘電正接によってはこの測定法の限りではない。
【0036】
本発明に係る接着剤組成物の硬化物の剥離強度は、9.0N/cm以上であることが好ましく、10.0N/cm以上であることがより好ましい。剥離強度は、後述の[実施例]の項に記載の方法により決定することができる。
【0037】
本発明に係る接着剤組成物の液粘度は、300~60000mPa・sであることが好ましく、500~50000mPa・sであることがより好ましく、1000~45000mPa・sであることがさらに好ましく、1500~40000mPa・sであることが特に好ましい。液粘度は、後述の[実施例]の項に記載の方法により決定することができる。
【0038】
本発明に係る接着剤組成物の硬化物の弾性率は、0.02~2.00GPaであることが好ましく、0.04~1.80GPaであることがより好ましく、0.06~1.50GPaであることがさらに好ましく、0.08~1.20GPaであることが特に好ましい。弾性率(引張試験)は、後述の[実施例]の項に記載の方法により決定することができる。
【0039】
<その他の成分>
上記接着剤組成物には、上述した各成分に加えて、カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)以外の他の熱可塑性樹脂、粘着付与剤、難燃剤、硬化剤、熱老化防止剤、レベリング剤、消泡剤、チタン酸化合物(C)とは異なる充填材、顔料、及び溶媒等を、接着剤組成物の機能に影響を与えない程度に含有することができる。
【0040】
上記他の熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン系樹脂(ポリエチレン化合物)、ポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレン化合物)、又はポリビニル系樹脂(ポリビニル化合物)等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
上記粘着付与剤としては、例えば、クマロン-インデン樹脂、テルペン樹脂、テルペン-フェノール樹脂、ロジン樹脂、p-t-ブチルフェノール-アセチレン樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、キシレン-ホルムアルデヒド樹脂、石油系炭化水素樹脂、水素添加炭化水素樹脂、又はテレピン系樹脂(テレピン化合物)等を挙げることができる。これらの粘着付与剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
上記難燃剤は、有機系難燃剤及び無機系難燃剤のいずれでもよい。有機系難燃剤としては、例えば、
リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニジン、ポリリン酸グアニジン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アミドアンモニウム、ポリリン酸アミドアンモニウム、リン酸カルバメート、ポリリン酸カルバメート、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、又はテトラキスジフェニルホスフィン酸チタン等のリン系難燃剤;
メラミン、メラム、メラミンシアヌレート等のトリアジン系化合物;
シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、トリアゾール系化合物、テトラゾール化合物、ジアゾ化合物、又は尿素等の窒素系難燃剤;
シリコーン化合物、又はシラン化合物等のケイ素系難燃剤;
等が挙げられる。
また、無機系難燃剤としては、例えば、
水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化バリウム、又は水酸化カルシウム等の金属水酸化物;
酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、又は酸化ニッケル等の金属酸化物;
炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、ホウ酸亜鉛、又は水和ガラス;
等が挙げられる。
上述した難燃剤は、2種以上を併用することができる。
【0043】
上記硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、又は酸無水物系硬化剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記アミン系硬化剤としては、例えば、ポリアミン、メラミン樹脂、ジシアンジアミド、又は4,4’-ジフェニルジアミノスルホン等が挙げられる。メラミン樹脂としては、例えば、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、又はベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。
また、酸無水物としては、芳香族系酸無水物、又は脂肪族系酸無水物が挙げられる。
上述した硬化剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
上記熱老化防止剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノ-ル、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネ-ト、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネ-ト〕メタン、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノール、又はトリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-5-メチル-4─ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノ-ル系酸化防止剤、
また、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネ-ト、又はジミリスチル-3,3’-ジチオプロピオネ-ト等のイオウ系酸化防止剤、
さらに、トリスノニルフェニルホスファイト、又はトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。
上述の熱老化防止剤は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
上記充填材としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、カ-ボンブラック、シリカ、タルク、銅、又は銀等からなる粉体が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
上記接着剤組成物は、カルボキシ基含有スチレン系エラストマー(A)、エポキシ樹脂(B)、チタン酸化合物(C)及びその他の成分を混合することにより製造することができる。混合方法は特に限定されず、接着剤組成物が均一になればよい。接着剤組成物は、溶液又は分散液の状態で好ましく用いられることから、通常は、溶媒も使用される。
溶媒としては、例えば、
メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、イソブチルアルコール、n-ブチルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、又はジアセトンアルコール等のアルコール類;
また、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、又はイソホロン等のケトン類;
さらに、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、又はメシチレン等の芳香族炭化水素類、
加えて、酢酸メチル、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテ-ト、又は3-メトキシブチルアセテート等のエステル類;
また、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、又はメチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;
等が挙げられる。
上述した溶媒は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
接着剤組成物が溶媒を含む溶液又は分散液(樹脂ワニス)であると、基材フィルムへの塗工及び接着剤層の形成を円滑に行うことができ、所望の厚さの接着剤層を容易に得ることができる。
【0047】
接着剤組成物が溶媒を含む場合、接着剤層の形成を含む作業性等の観点から、固形分濃度は、好ましくは20~80質量%であり、より好ましくは30~70質量%の範囲である。
【0048】
[接着剤層付き積層体]
本発明に係る接着剤層付き積層体は、上記接着剤組成物からなる接着剤層と、当該接着剤層の少なくとも一方の面に接する基材フィルムとを備える。
【0049】
本発明に係る接着剤層付き積層体の一態様として、カバーレイフィルムが挙げられる。カバーレイフィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の表面に接着剤層が形成されているものである。
【0050】
接着剤層付き積層体がカバーレイフィルムの場合の基材フィルムとしては、ポリイミドフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、アラミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、及び液晶ポリマーフィルム等が挙げられる。これらの中でも、接着性及び電気特性の観点から、ポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、及び液晶ポリマーフィルムが好ましい。
【0051】
このような基材フィルムは市販されており、ポリイミドフィルムについては、東レ・デュポン(株)製「カプトン(登録商標)」、東洋紡績(株)製「ゼノマックス(登録商標)」、宇部興産(株)製「ユーピレックス(登録商標)-S」、又は(株)カネカ製「アピカル(登録商標)」等を使用することができる。
また、ポリエチレンナフタレートフィルムについては、帝人デュポンフィルム(株)製「テオネックス(登録商標)」等を用いることができる。
さらに、液晶ポリマーフィルムについては、(株)クラレ製「ベクスター(登録商標)」、又は(株)プライマテック製「バイアック(登録商標)」等を用いることができる。基材フィルムは、該当する樹脂を所望の厚さにフィルム化して用いることもできる。
【0052】
カバーレイフィルムを製造する方法としては、例えば、上記接着剤組成物及び溶媒を含有する樹脂ワニスを、ポリイミドフィルム等の基材フィルムの表面に塗布して樹脂ワニス層を形成した後、この樹脂ワニス層から上記溶媒を除去することによって、接着剤層が形成されたカバーレイフィルムを製造することができる。
上記溶媒を除去するときの乾燥温度は、40~250℃であることが好ましく、70~170℃であることがより好ましい。乾燥は、接着剤組成物が塗布された積層体を、熱風乾燥、遠赤外線加熱、及び高周波誘導加熱等がなされる炉の中を通過させることにより行われる。
なお、必要に応じて、接着剤層の表面には、保管等のため、離型性フィルムを積層してもよい。上記離型性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコーン離型処理紙、ポリオレフィン樹脂コート紙、ポリメチルペンテン(TPX)フィルム、フッ素系樹脂フィルム等の通常のものが用いられる。
【0053】
接着剤層付き積層体の別の態様としては、ボンディングシートが挙げられる。ボンディングシートも、基材フィルムの表面に上記接着剤層が形成されたものであるが、基材フィルムは離型性フィルムが用いられる。また、ボンディングシートは、2枚の離型性フィルムの間に接着剤層を備える態様であってもよい。ボンディングシートを使用するときに、離型性フィルムをはく離して使用する。離型性フィルムは、上記と同様なものを用いることができる。
【0054】
このような離型性フィルムも市販されており、東レフィルム加工(株)製「ルミラー(登録商標)」、東洋紡績(株)製「東洋紡エステル(登録商標)フィルム」、AGC(株)製「アフレックス(登録商標)」、又は三井化学東セロ(株)製「オピュラン(登録商標)」等を用いることができる。
【0055】
ボンディングシートを製造する方法としては、例えば、離型性フィルムの表面に上記接着剤組成物及び溶媒を含有する樹脂ワニスを塗布し、上記カバーレイフィルムの場合と同様にして乾燥する方法がある。
【0056】
基材フィルムの厚さは、接着剤層付き積層体を薄膜化するため、5~100μmであることが好ましく、5~50μmであることがより好ましく、5~30μmであることがさらに好ましい。
【0057】
接着剤層の厚さは、5~100μmであることが好ましく、10~70μmであることがより好ましく、10~50μmであることがさらに好ましい。
上記基材フィルム及び接着剤層の厚さは用途により選択されるが、電気特性を向上させるために基材フィルムはより薄くなる傾向にある。一般的に基材フィルムの厚さが薄く、接着剤層の厚さが厚くなると、接着剤層付き積層体に反りが生じやすくなり、作業性が低下するが、本発明の接着剤層付き積層体は、基材フィルムの厚さが薄く、接着剤層の厚さが厚い場合でも、積層体の反りがほとんど生じない。本発明の接着剤層付き積層体において、接着剤層の厚さ(D1)と、基材フィルムの厚さ(D2)との比の値(D1/D2)は、1~10であることが好ましく、1~5以下であることがより好ましい。さらに、接着剤層の厚さが、基材フィルムの厚さより厚いことが好ましい。
【0058】
接着剤層付き積層体の別の態様としては、銅張積層板が挙げられる。銅張積層板は、上記接着剤層を用いて、基材フィルムとしてのポリイミドフィルムと、銅箔とが貼り合わされた積層体である。即ち、銅張積層板は、基材フィルム、接着剤層及び銅箔の順に構成された積層体である。銅張積層板において、接着剤層及び銅箔は、基材フィルムの両面に形成されていてもよい。即ち、銅張積層板は、基材フィルムの一面側及び他面側に、接着剤層及び銅箔を、順次、備える積層体であってもよい。本発明の接着剤組成物は、銅を含む物品との接着性に優れるので、銅張積層板は、一体化物として安定性に優れる。なお、本発明の銅張積層板に含まれる接着剤層は、硬化物からなるものであってよいし、未硬化物からなるものであってもよい。
銅張積層板における接着剤層の厚さは、好ましくは5~45μmであり、より好ましくは10~35μmである。
【0059】
銅張積層板を製造する方法としては、例えば、上記カバーレイフィルムの接着剤層と銅箔とを面接触させ、80~150℃で熱ラミネートを行い、更にアフターキュアにより接着剤層を硬化する方法を適用することができる。アフターキュアの条件は、例えば、100~200℃、30分~4時間とすることができる。なお、上記銅箔は、特に限定されず、電解銅箔、圧延銅箔等を用いることができる。
【0060】
[接着剤層付き物品]
本発明に係る接着剤層付き物品は、上記接着剤組成物からなる接着剤層を備える物品である。本発明において好ましい態様は、接着剤層を備える電磁波シールド材である。これにより、電磁波のノイズによる電子機器の誤動作や、通信電波の傍受による機密情報の漏洩等を防止することができる。本発明の電磁波シールド材を製造する方法としては、例えば、接着剤層を備える高誘電性ボンディングシートと、シールド材とを接合する方法を適用することができる。
電磁波シールド材における接着剤層の厚さは、5~100μmであることが好ましく、10~70μmであることがより好ましい。
【0061】
接着剤層付き物品の別の態様としては、上記接着剤組成物からなる接着剤層を備えるアンテナ基板、コンデンサ、静電容量型センサ、圧電フィルムスピーカー等が挙げられる。
【実施例0062】
本発明を、実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、下記において、「部」及び「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0063】
[接着剤組成物の調製]
<実施例1>
カルボキシ基含有スチレン系エラストマーa(商品名:タフテックM1913(マレイン酸変性スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体)、旭化成ケミカルズ(株)製、酸価:10mgKOH/g)を100質量部、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂(商品名:HP-7200、DIC(株)製)を4.5質量部、イミダゾール系硬化促進剤(商品名:キュアゾールC11Z、四国化成工業(株)製)を0.14質量部、エポキシシラン系カップリング剤(商品名:SH-6040、デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル社製)を1.01質量部、チタン酸バリウム(商品名:BT-05、堺化学工業(株)製、誘電率:4590)を78.2質量部として、メチルエチルケトン/トルエン=4.6/33.4(質量比)の混合溶媒354質量部に投入して混合し、接着剤組成物を調製した。
【0064】
<実施例2>
チタン酸バリウムの投入量を176質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0065】
<実施例3>
チタン酸バリウムの投入量を302質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0066】
<実施例4>
チタン酸バリウムの投入量を471質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0067】
<実施例5>
チタン酸バリウムの投入量を704質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0068】
<実施例6>
チタン酸バリウムの投入量を1057質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0069】
<実施例7>
カルボキシ基含有スチレン系エラストマーaをカルボキシ基含有スチレン系エラストマーb(商品名:タフテックM1911(マレイン酸変性スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体)、旭化成ケミカルズ(株)製、酸価:2.0mgKOH/g)に変更し、チタン酸バリウムの投入量を471質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0070】
<実施例8>
チタン酸バリウム78.2質量部をチタン酸ストロンチウム(商品名:ST-A、富士チタン工業(株)製、誘電率:300)377質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0071】
<実施例9>
チタン酸バリウム78.2質量部をチタン酸カルシウム(商品名:CT-3、共立マテリアル(株)製、誘電率:180)322質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0072】
<実施例10>
ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂の投入量を1質量部に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0073】
<実施例11>
ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂の投入量を25質量部に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0074】
<比較例1>
エポキシ樹脂(商品名:エピコート828、三菱ケミカル(株)製)を100質量部、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名:SR-2EGS、阪本薬品工業(株)製)を25質量部、変性脂肪族ポリアミン(商品名:フジキュアFXJ-8074-D、(株)T&K TOKA製)を48.5質量部、アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名:A-1100、日硝産業(株)製)を1.5質量部、チタン酸バリウム(商品名:BT-05、堺化学工業(株)製)を97.2質量部として混合し、接着剤組成物を調製した。
【0075】
<比較例2>
エポキシ樹脂(商品名:エピコート807、三菱ケミカル(株)製)を100質量部、m-フェニレンジアミン(商品名:エピキュアZ、三菱ケミカル(株)製)を19質量部、エポキシシラン系カップリング剤(商品名:KBM-402、信越化学工業(株)製)を1.84質量部、チタネート系カップリング剤(商品名:KR-46B、味の素ファインテクノ(株)製)を0.79質量部、チタン酸バリウム(商品名:BT-05、堺化学工業(株)製)を426質量部として混合し、接着剤組成物を調製した。
【0076】
<比較例3>
酸変性ポリオレフィン樹脂(商品名:アウローレン500S、日本製紙(株)製)を100質量部、ジオクチルスズジラウレート(キシダ化学(株)製)を0.1質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(商品名:デュラネートTKA-100、旭化成(株)製)を10質量部、チタン酸バリウム(商品名:BT-05、堺化学工業(株)製)を78.2質量部として、メチルエチルケトン/トルエン=3.7/1(質量比)の混合溶媒567質量部に投入して混合し、接着剤組成物を調製した。
【0077】
<比較例4>
アクリルポリマー(商品名:UH-2041、東亞合成(株)製)を100質量部、ジオクチルスズジラウレート(キシダ化学(株)製)を0.1質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(商品名:デュラネートAE-700-100、旭化成(株)製)を102質量部、チタン酸バリウム(商品名:BT-05、堺化学工業(株)製)を66.7質量部として混合し、接着剤組成物を調製した。
【0078】
<比較例5>
チタン酸バリウム78.2質量部に代えてシリカ(商品名:エクセリカSE-1、(株)トクヤマ製)を141質量部投入したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0079】
<比較例6>
チタン酸バリウム78.2質量部に代えて窒化ホウ素(商品名:PCTP-2、サンゴバン(株)製)を181質量部投入したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0080】
<比較例7>
チタン酸バリウムの投入量を33.4質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0081】
<比較例8>
チタン酸バリウムの投入量を1644質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0082】
<比較例9>
チタン酸バリウムを投入しないこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0083】
[評価方法]
<カルボキシ基含有スチレン系エラストマーの酸価の測定方法>
カルボキシ基含有スチレン系エラストマー1gをトルエン30mlに溶解し、京都電子工業(株)製自動滴定装置「AT-510」にビュレットとして同社製「APB-510-20B」を接続したものを使用した。滴定試薬としては0.01mol/Lのベンジルアルコール性KOH溶液を用いて電位差滴定を行い、カルボキシ基含有スチレン系エラストマー1gあたりのKOHのmg数を算出した。
【0084】
<カルボキシ基含有スチレン系エラストマーの分子量の測定方法>
装置:アライアンス2695(Waters社製)
カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ-H 2本、TSKgel SuperHZ2500 2本、(東ソー(株)製)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン 0.35ml/分
検出器:RI(示差屈折率検出器)
GPCにより測定した分子量をポリスチレンの分子量を基準にして換算した。
【0085】
<誘電率の測定方法>
(実施例1~11、比較例5~9で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ38μmの離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、その一方の表面に、接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成した。次に、この被膜をオーブン内に静置して、180℃で30分間加熱処理をした。この加熱処理により、被膜の硬化反応(架橋反応)は十分に進行する。その後、上記離型フィルムを剥がして、試験片(50×50mm)を作製した。
誘電率(ε)は、ネットワークアナライザー85071E-300(アジレント・テクノロジー(株)製)を使用し、スプリットポスト誘電体共振器法(SPDR法)で、温度23℃、周波数10GHzの条件で測定した。
【0086】
(比較例1、2で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ38μmの離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、その一方の表面に、接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成した。次に、この被膜をオーブン内に静置して、130℃で5分間加熱処理をした。この加熱処理により、被膜の硬化反応(架橋反応)は十分に進行する。その後、上記離型フィルムを剥がして、試験片(50×50mm)を作製した。
誘電率(ε)は、前記と同様の装置を使用し、前記と同様の条件で測定した。
【0087】
(比較例3で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ38μmの離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、その一方の表面に、接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成した。次に、この被膜をオーブン内に静置して、40℃で1日養生した。この養生により、被膜の硬化反応(架橋反応)は十分に進行する。その後、上記離型フィルムを剥がして、試験片(50×50mm)を作製した。
誘電率(ε)は、前記と同様の装置を使用し、前記と同様の条件で測定した。
【0088】
(比較例4で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ38μmの離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、その一方の表面に、接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成した。次に、この被膜をオーブン内に静置して、80℃で1時間加熱処理をした。この加熱処理により、被膜の硬化反応(架橋反応)は十分に進行する。その後、上記離型フィルムを剥がして、試験片(50×50mm)を作製した。
誘電率(ε)は、前記と同様の装置を使用し、前記と同様の条件で測定した。
【0089】
(チタン酸化合物(C))
チタン酸化合物をポリビニルアルコール及び水と混合してペースト状組成物を作製した後、ペレット成型器の中に充填して乾燥させ、ペレット状固形物を得た。そのペレット状固形物を、900~1200℃程度まで加熱、焼成することにより、バインダー樹脂を分解、除去し、チタン酸化合物(C)を焼結させることで焼結体ペレットを得た。この焼結体ペレットに上下電極を形成し、JIS K 6911:2006に準じて静電容量を測定した。静電容量と焼結体ペレットの寸法より誘電率を計算した。
【0090】
<剥離強度の測定方法>
(実施例1~11、比較例5~9で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ35μmの圧延銅箔を用意し、その表面に接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成し、接着剤層付き銅箔を得た。その後、厚さ57μmのポリイミド層付き銅張積層板を、ポリイミド層側が接着剤層付き銅箔の接着剤層の表面に面接触するように重ね合わせ、温度120℃、圧力0.5MPaの条件でラミネートした。
次いで、この積層体(ポリイミド付き銅張積層板/接着剤層/銅箔)を、温度180℃及び圧力3MPaの条件で30分間加熱圧着し、剥離強度評価用基板を得た。この評価用基板を切断して、所定の大きさの接着試験片を作製した。接着性を評価するために、JIS C 6481:2015に準拠し、温度23℃及び引張速度50mm/分の条件で、接着試験片から圧延銅箔を剥がすときの90°剥離強度(N/cm)を測定した。測定時の接着試験片の幅は10mmとした。
【0091】
(比較例1、2で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ35μmの圧延銅箔を用意し、その表面に接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成し、接着剤層付き銅箔を得た。その後、厚さ57μmのポリイミド層付き銅張積層板を、ポリイミド層側が接着剤層付き銅箔の接着剤層の表面に面接触するように重ね合わせ、温度120℃、圧力0.5MPaの条件でラミネートした。
次いで、この積層体(ポリイミド付き銅張積層板/接着剤層/銅箔)を、温度130℃及び圧力3MPaの条件で3分間加熱圧着し、剥離強度評価用基板を得た。この評価用基板を切断して、所定の大きさの接着試験片を作製した。接着性を評価するために、JIS C 6481:2015に準拠し、温度23℃及び引張速度50mm/分の条件で、接着試験片から圧延銅箔を剥がすときの90°剥離強度(N/cm)を測定した。測定時の接着試験片の幅は10mmとした。
【0092】
(比較例3で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ35μmの圧延銅箔を用意し、その表面に接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成し、接着剤層付き銅箔を得た。その後、厚さ57μmのポリイミド層付き銅張積層板を、ポリイミド層側が接着剤層付き銅箔の接着剤層の表面に面接触するように重ね合わせ、温度80℃、圧力0.4MPa、及び速度0.5m/分の条件でラミネ-トを行った。次に、この被膜をオーブン内に静置して、40℃で1日養生し、剥離強度評価用基板を得た。この評価用基板を切断して、所定の大きさの接着試験片を作製した。接着性を評価するために、JIS C 6481:2015に準拠し、温度23℃及び引張速度50mm/分の条件で、接着試験片から圧延銅箔を剥がすときの90°剥離強度(N/cm)を測定した。測定時の接着試験片の幅は10mmとした。
【0093】
(比較例4で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ35μmの圧延銅箔を用意し、その表面に接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成し、接着剤層付き銅箔を得た。その後、厚さ57μmのポリイミド層付き銅張積層板を、ポリイミド層側が接着剤層付き銅箔の接着剤層の表面に面接触するように重ね合わせ、温度80℃、圧力0.4MPa、及び速度0.5m/分の条件でラミネ-トを行った。次に、この被膜をオーブン内に静置して、80℃で1時間加熱処理をし、剥離強度評価用基板を得た。この評価基板を切断して、所定の大きさの接着試験片を作製した。接着性を評価するために、JIS C 6481:2015に準拠し、温度23℃及び引張速度50mm/分の条件で、接着試験片から圧延銅箔を剥がすときの90°剥離強度(N/cm)を測定した。測定時の接着試験片の幅は10mmとした。
【0094】
<塗工性(液粘度)の測定方法>
接着剤組成物の液粘度をE型粘度計(コーンプレート型粘度計)であるTVE-20H型粘度計(塩水/平板方式、東機産業(株)製)を用いて、下記の条件下で測定した。液粘度が60000mPa・s以下であれば、塗工性が良好である判断した。
-測定条件-
コーン形状:角度3°×R9.7’、半径20mm
温度:25℃±0.5℃
【0095】
<柔軟性の測定方法>
(引張試験)
上述の電気特性(誘電率)の測定と同様にして試験片を作製し、(株)島津製作所製「オートグラフAG-Xplus」を用いて、治具間距離40mm、標線間距離20mm、引張速度5mm/分、23℃で引張試験を行った。歪みはカメラを用いてリアルタイムに計測した。原点から降伏点までの歪みを10分割し、各区間の接線の傾きを最小二乗法で計算し、引張弾性率を算出した。
(折り曲げ試験)
上記引張試験と同様に作製された試験片に対し、JIS K5600-5-1:2018に準拠した耐屈曲性試験(円筒形マンドレル法)に基づいて、試験片を直径2mmの鉄棒に巻きつけ、割れが生じるか否かを目視で観察した。割れが確認されなかったものを「○」、割れが確認されたものを「×」として評価した。
【0096】
<耐湿熱試験>
上記「剥離強度」の測定において作製した接着試験片と同様にして作製した接着試験片を、85℃、85%の恒温恒湿槽に投入し、2000時間保管(湿熱処理)した後、上記「剥離強度」の測定方法と同様にして、湿熱処理後の剥離強度を測定した。耐湿処理前の接着試験片の剥離強度(N1)と湿熱処理後の剥離強度(N2)から剥離強度の保持率((N2/N1)×100)を算出し、下記基準に当てはめ評価した。
○:剥離強度の保持率が80%以上
△:剥離強度の保持率が60%以上80%未満
×:剥離強度の保持率が60%未満
【0097】
実施例1~11及び比較例1~9に係る接着剤組成物の組成を表1、2に示し、実施例1~11及び比較例1~9に係る接着剤組成物ないしその硬化物の試験結果を表3に示す。
【0098】
【0099】
(表1の注)
・表中の数値:質量部
【0100】
【0101】
(表2の注)
表中の数値:質量部
「ジオクチルスズジラウレート」は、表2中からは割愛した。
【0102】
【0103】
(表3の注)
比較例1の「-」は、接着剤組成物が塗工されてから15分後に固化し、塗工性(液粘度)を測定することができなかったことを意味する。
【0104】
フィラーとしてチタン酸化合物を含まず、シリカ粒子を配合した比較例5では、硬化物の誘電率を所望のレベルへと高めることはできなかった。フィラーとして窒化ホウ素を配合した比較例6や、フィラーを配合していない比較例9についても同様である。
また、フィラーとしてチタン酸化合物を配合しても、その量が少なければ、やはり硬化物の誘電率を所望のレベルへと高めることはできない(比較例7)。逆にチタン酸化合物の配合量が多すぎると、液粘度が上昇し、ハンドリング性に劣る結果となり、硬化物の剥離強度にも劣る結果となってしまう(比較例8)。
また、フィラーとしてチタン酸化合物を所望量配合したとしても、ベース樹脂(マトリクス樹脂)がカルボキシ基含有スチレン系エラストマーを含まず、ベース樹脂をエポキシ樹脂のみとして、硬化剤を用いて反応させる系とした場合には、硬化反応が素早く進みすぎてハンドリング性に著しく劣る結果となり、また、得られる硬化物は硬く柔軟性に劣るものであった。(比較例1、2)。
また、ベース樹脂としてエポキシ樹脂を用いずに、ベース樹脂を、反応性基を有するポリオレフィン樹脂で構成し、これらをポリイソシアネートと反応させて硬化反応を生じさせると、チタン酸化合物を配合しても誘電率及び剥離強度を所望のレベルへと高めることができず、また、チタン酸バリウムを同量配合している実施例1に比べて剥離強度にも劣る結果となった(比較例3)。
同様に、ベース樹脂としてエポキシ樹脂を用いずに、ベース樹脂を、アクリルポリマーで構成し、これらをポリイソシアネートと反応させて硬化反応を生じさせると、チタン酸化合物を配合しても誘電率を所望のレベルへと高めることができず、また、剥離強度に劣り、湿熱処理後の剥離強度にも劣る結果となった(比較例4)。
これらに対し、本発明で規定する接着剤組成物はいずれも、ハンドリング性に優れ、得られる硬化物がチタン酸化合物の高誘電特性を十分に引き出し高い誘電率を示し、この硬化物は柔軟性も備え、被着体への接着力にも優れ、この接着力は湿熱処理によっても低下しにくいものであった(実施例1~11)。また、上記の結果から、本発明の接着剤組成物は、チタン酸バリウムの配合量を1000質量部程度の多量として誘電率を大きく高めても、接着剤として十分に機能する剥離強度を発現し、塗工性ないし柔軟性も良好であることがわかる(実施例6)。