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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132514
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
A61M25/00 530
A61M25/00 610
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037879
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】森 謙二
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA06
4C267BB02
4C267BB13
4C267GG04
4C267HH14
(57)【要約】
【課題】ルーメンの円滑性を高められるカテーテルを提供する。
【解決手段】バルーンカテーテルは、体内に挿入され、基端側から先端側に向かう軸方向に延びるメインルーメン12を有するアウターシャフト10と、アウターシャフト10の内周面の一部においてメインルーメン12に対して露出され、当該アウターシャフト10の内周面を構成する第1部材(インナーシャフト41)より低摩擦性の第2部材と、を備える。バルーンカテーテルは、軸方向に延びるサブルーメン101L~112Lを有し、第2部材によって構成されるサブシャフト101~112を更に備え、サブシャフト101~112の外周面の一部が、アウターシャフト10の内周面の一部においてメインルーメン12に対して露出される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に挿入され、基端側から先端側に向かう軸方向に延びる第1ルーメンを有する第1シャフトと、
前記第1シャフトの主構成部材である第1部材と共に前記第1ルーメンを定める内周面を構成し、当該第1部材より低摩擦性の第2部材と、
を備えるカテーテル。
【請求項2】
前記第2部材は、前記軸方向に延びる、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記第2部材は、前記第1シャフトの基端から先端に亘って前記軸方向に延びる、請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記第2部材は、前記内周面の周方向に沿って複数設けられる、請求項1から3のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項5】
前記複数の前記第2部材の前記周方向の間隔は略一定である、請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記第2部材は、前記第1部材より前記第1ルーメン内に突出される、請求項1から5のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項7】
前記第2部材は、フッ素樹脂によって構成される、請求項1から6のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項8】
前記軸方向に延びる第2ルーメンを有し、前記第2部材によって構成される第2シャフトを更に備え、
前記第2シャフトの外周面の一部が、前記第1部材と共に前記第1ルーメンを定める内周面を構成する、
請求項1から7のいずれかに記載のカテーテル。
【請求項9】
前記第1シャフトの先端側に取り付けられ、前記第2シャフトの基端側から前記第2ルーメン内に供給される流体によって拡張可能なバルーンを更に備える、請求項8に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、体内に挿入されるカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、診断や処置のために体内に挿入される医療用の管である。カテーテルのうち、血管、気管、消化管、総胆管、膵管等の体内の管状器官やそれらの接続部(出入口)、診断や処置のために体内に形成される孔(例えば胃や十二指腸球部から総胆管に穿刺される孔)等に挿入されて、目的部位の拡張や処置を行うバルーンを備えるものはバルーンカテーテルと呼ばれ、その一例が特許文献1に開示されている。特許文献1のバルーンカテーテルのアウターシャフトは、インナーシャフト等が挿通される中央ルーメンと、当該中央ルーメンの周辺に設けられてバルーンを拡張させる流体の給排等に用いられる複数の周辺ルーメンを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/130877号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のアウターシャフトにおいて、中央ルーメンは機械的特性に優れたPEEK樹脂(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)の管によって形成されるが、その比較的高い摩擦性のためにインナーシャフト等の挿入が困難になる恐れがある。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、ルーメンの円滑性を高められるカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のカテーテルは、体内に挿入され、基端側から先端側に向かう軸方向に延びる第1ルーメンを有する第1シャフトと、第1シャフトの主構成部材である第1部材と共に第1ルーメンを定める内周面を構成し、当該第1部材より低摩擦性の第2部材と、を備える。
【0007】
この態様によれば、低摩擦性の第2部材によって第1シャフトの内周面を構成することで第1ルーメンの円滑性を高められる。
【発明の効果】
【0008】
本開示のカテーテルによれば、ルーメンの円滑性を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】バルーンカテーテルの全体を示す。
図2】拡張時のバルーンを示す斜視図である。
図3】拡張時のバルーンの断面図である。
図4】バルーンの基端部の部分拡大図である。
図5】バルーンの先端部の部分拡大図である。
図6】アウターシャフトの断面図である。
図7図4からバルーン等を取り除いた図である。
図8】アウターシャフトの製造方法の例を模式的に示す。
図9】第2部材の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下では実施形態ともいう)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本発明の本質的なものであるとは限らない。
【0011】
本開示は任意のタイプのカテーテルに適用できるが、本実施形態では高周波電力(以下では略して高周波ともいう)が印加される帯状の電極をバルーンの表面に形成したバルーンカテーテルを例に説明する。このバルーンカテーテルは、不整脈等の処置方法であるカテーテルアブレーション(以下では略してアブレーションともいう)または高周波アブレーション(RFA: RadioFrequency Ablation)に利用される。不整脈の原因となっている血管等の脈管内の異常部位(脈管自体や病巣等の周辺組織)まで挿入されたバルーンは、内部に供給される生理食塩水等の拡張流体によって拡張し、表面の電極を異常部位に近接または接触させる。この状態で電極に印加される高周波によって異常部位が焼灼される。
【0012】
図1は、本実施形態に係るバルーンカテーテル100の全体を示す。バルーンカテーテル100は、体内に挿入される第1シャフトとしてのアウターシャフト10(以下では略してシャフト10ともいう)と、アウターシャフト10の基端側または体外側(図1における右側)に取り付けられるハンドル部20と、アウターシャフト10の先端側または体内側(図1における左側)に取り付けられ、アウターシャフト10の基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーン30を備える。可撓性を有する管状のアウターシャフト10は、ハンドル部20からバルーン30の基端部まで延びる管状の基端側シャフト10Aと、当該基端側シャフト10Aと連通してバルーン30内を軸方向(図1における左右方向)に貫通する管状の先端側シャフト10Bと、当該先端側シャフト10Bの先端部に取り付けられる先端チップ46によって構成される。
【0013】
バルーンカテーテル100は、病巣の焼灼のためのアブレーションに利用される。後述するように、バルーン30の表面には、基端側から先端側に向かう軸方向に沿って帯状の電極群が形成されている。血管等の脈管内の異常部位まで挿入されたバルーン30は、ハンドル部20およびアウターシャフト10を介して内部に供給される生理食塩水等の拡張流体によって拡張し、表面の電極群を異常部位に近接または接触させる。この状態で高周波が印加される電極群が異常部位を焼灼する。
【0014】
ハンドル部20の基端側には、電気コネクタ21と、流体供給ポート22と、流体排出ポート23と、デバイスポート24が設けられる。電気コネクタ21は、基端側から先端側に向かって、電気ケーブル26、ハンドル部20、シャフト10(基端側シャフト10Aおよび/または先端側シャフト10B)、バルーン30内を通る導線によって、バルーン30の表面の電極群と電気的に接続されている。このため、不図示の高周波電源に接続された電気コネクタ21は、バルーン30の表面の電極群に高周波を印加できる。また、電気コネクタ21をコンピュータ等によって構成される制御装置または測定装置に接続することで、バルーン30の表面の電極群が測定した処置部位の電位等のデータや、後述する温度センサ(熱電対)が測定した処置部位の温度のデータを取得してもよい。
【0015】
流体供給ポート22は、バルーン30を拡張させるための流体、具体的には滅菌蒸留水や生理食塩水に適宜造影剤を混合した拡張流体を供給する。流体供給ポート22は、基端側から先端側に向かって、流体供給チューブ27、ハンドル部20、シャフト10(後述するサブシャフト101~105)内を通る流路によって、バルーン30の内部と連通している。流体供給ポート22がバルーン30の内部に拡張流体を供給するとバルーン30は拡張する。流体排出ポート23は、バルーン30の内部から拡張流体を排出する。流体排出ポート23は、基端側から先端側に向かって、流体排出チューブ28、ハンドル部20、シャフト10(後述するサブシャフト107~111)内を通る流路によって、バルーン30の内部と連通している。流体排出ポート23がバルーン30の内部から拡張流体を排出するとバルーン30は収縮する。なお、流体供給ポート22によるバルーン30の内部への拡張流体の供給と、流体排出ポート23によるバルーン30の内部からの拡張流体の排出を同時に行うことで、バルーン30を拡張させながら内部の拡張流体を流動または循環させてもよい。
【0016】
デバイスポート24には、カメラや鉗子等の診断や処置のためのデバイスが先端に設けられた医療器具や、バルーン30を処置部位に導くためのガイドワイヤが挿入される。本実施形態では、ガイドワイヤがデバイスポート24に挿入される例について説明する。後述するように、シャフト10のうち基端側シャフト10Aはアウターシャフト(以下では便宜的に10Aの符号を付すことがある)とインナーシャフト41によって構成され、シャフト10のうち先端側シャフト10Bはインナーシャフト41(以下では便宜的に10Bの符号を付すことがある)によって構成される。デバイスポート24は、バルーンカテーテル100の基端および先端の間を軸方向に貫通するインナーシャフト41と連通している。デバイスポート24から導入されたガイドワイヤは、インナーシャフト41内を通って先端チップ46からバルーンカテーテル100外に出る。このため、予め処置部位まで挿入したガイドワイヤの基端部からバルーンカテーテル100の先端部を挿入することで、バルーン30がガイドワイヤによってガイドされながら処置部位まで到達できる。管状のインナーシャフト41の内部に軸方向に延びる略円柱状の空間は、主にガイドワイヤが挿通される場合はワイヤルーメン等と呼ばれるが、以下ではインナールーメンと総称する。また、後述するように、インナーシャフト41は、アウターシャフト10(特にアウターシャフト10A)の内部に軸方向に延びる略円柱状の空間である第1ルーメンとしてのアウタールーメン内に挿入されている。
【0017】
バルーン30は、流体供給ポート22から供給される拡張流体によって円筒状に拡張可能な中間部31と、中間部31より先端側で先端側シャフト10B(インナーシャフト41)に取り付けられる先端部33と、中間部31より基端側で基端側シャフト10A(アウターシャフト10)に取り付けられる基端部35を備える。中間部31は、シャフト10に取り付けられる先端部33および基端部35を軸方向に連結する部分であり、以下ではストレート部31ともいう。バルーン30の先端部33は、先端側において先端側シャフト10B(インナーシャフト41)または先端チップ46に取り付けられる先端側ネック部331と、ストレート部31の先端から先端側ネック部331に向かって先細り形状または截頭円錐形状に形成されている先端側テーパ部332(以下では先端側コーン部332ともいう)を備える。バルーン30の基端部35は、基端側において基端側シャフト10A(アウターシャフト10)の外周に取り付けられる基端側ネック部351と、ストレート部31の基端から基端側ネック部351に向かって先細り形状または截頭円錐形状に形成されている基端側テーパ部352(以下では基端側コーン部352ともいう)を備える。
【0018】
図2は、拡張時のバルーン30を示す斜視図である。バルーン30の先端部33およびストレート部31の表面には、先端側から基端側に向かう軸方向に沿って、複数の薄膜の帯状電極40が形成されている。帯状電極40はバルーン30の基端部35の表面に形成されてもよい。複数の帯状電極40は、それぞれの全長に亘って、バルーン30の周方向に隔てられている。なお、複数の帯状電極40は、先端側コーン部332の少なくとも先端側および/または先端側ネック部331において、周方向の隙間なく繋がっていてもよい。図示の例では、各帯状電極40の周方向の幅と間隔がそれぞれ略一定であるが、互いに異なっていてもよい。
【0019】
バルーン30の折り畳み性を向上させるため、先端部33(および/または基端部35)における各帯状電極40の幅を、中間部31における当該各帯状電極40の幅より小さくしてもよい。例えば、帯状電極40の幅を、先端側コーン部332において、ストレート部31における最大幅から先端側ネック部331における最小幅まで単調に減少させてもよい。
【0020】
図2のシャフト10の中心軸を含む平面による断面を模式的に示す図3も参照しながら、バルーン30の先端部33の構成について説明する。バルーン30の内部を軸方向に貫通する先端側シャフト10B(インナーシャフト41)の内部には、デバイスポート24との間でガイドワイヤ等のデバイスが挿通可能なインナールーメン12(以下では中央ルーメン12またはメインルーメン12ともいう)が形成されている。先端側シャフト10Bの外径は例えば1.4mmであり、先端側シャフト10Bの内径(中央ルーメン12の外径)は例えば1.1mmである。先端側シャフト10Bの先端部には、その外周も含めて被覆して保護する略円筒状の先端チップ46(シャフト10の一部)が設けられる。先端チップ46の外径は例えば2.0mmであり、先端チップ46の内径は先端側シャフト10Bと同じく例えば1.1mmである。先端チップ46は硬質の樹脂等によって形成される。インナールーメン12を通るガイドワイヤ等のデバイスは、先端側シャフト10Bおよび先端チップ46の開口端から、バルーンカテーテル100外に出る。
【0021】
先端チップ46の外周における基端側には、バルーン30の先端側ネック部331が取り付けられる。また、先端チップ46の外周における先端側には、周電極としての環状のリング電極60が設けられる。リング電極60の外径は例えば2.22mmであり、リング電極60の内径は例えば2.08mmである。先端側ネック部331とリング電極60の間隙も埋めるように、銀(Ag)等の帯状電極40がリング電極60およびバルーン30の外周に印刷等によって厚さ20μm程度に形成される。なお、リング電極60は、先に形成される帯状電極40の外周に設けられてもよい(図2はこの例を示す)。帯状電極40の先端はリング電極60の先端と略一致しており、先端チップ46の先端より基端側に後退した位置にある。換言すれば、先端チップ46は、帯状電極40およびリング電極60よりも先端側に突出している。これによって、バルーン30を収納しながら処置部位まで導く不図示のシースの内壁や体内組織に先端チップ46の先端が接触した場合でも、帯状電極40およびリング電極60の破損を防止できる。
【0022】
帯状電極40の外周には、先端から先端側ネック部331および先端側コーン部332に亘って、10μmと20μmの間の厚さの絶縁コーティング65が施される。このように、帯状電極40は、安定した拡張形状(円筒形状)を取るストレート部31の外周または側面において高周波を処置部位に印加可能に構成される。また、リング電極60はバルーン30の先端部33において複数の帯状電極40を周方向に接続する。このため、複数の帯状電極40は、実質的に同じ電圧および電流の高周波を処置部位に印加できる。従って、体内に挿入されたバルーン30が周方向に回転した場合でも、高周波を確実に処置部位に印加できる。なお、図示は省略するが、電気コネクタ21から電気ケーブル26、ハンドル部20、シャフト10(後述するサブシャフト112)、バルーン30内を通る導線が、バルーンカテーテル100の先端部においてリング電極60および/または帯状電極40に接続されている。このため、不図示の高周波電源に接続された電気コネクタ21は、バルーン30の表面の帯状電極40に高周波を印加できる。
【0023】
図2の部分拡大図である図4も参照しながら、バルーン30の基端部35の構成について説明する。図4において、バルーン30の基端部35の基端側ネック部351は、基端側シャフト10Aの外周に取り付けられる。ここで、基端側シャフト10Aにおいて基端側ネック部351が取り付けられる部分の外周は、バルーン30の厚さ(例えば20μm)分が予め切削等によって除去されている。このため、基端側ネック部351が基端側シャフト10Aに取り付けられた状態において、基端側ネック部351の外周面と、それより基端側の基端側シャフト10Aの外周面の間の段差が最小化されている。このように段差なく軸方向に隣接している基端側ネック部351および基端側シャフト10Aは、管状の樹脂被膜15によって被覆されることで強固に固定される。
【0024】
第1シャフトとしてのアウターシャフト10Aは、インナーシャフト41が挿通する第1ルーメンとしてのアウタールーメンを有する。そして、前述のように、インナーシャフト41は、ガイドワイヤ等が挿通するインナールーメン12を有する。後述する図6に示されるように、アウターシャフト10A内のアウタールーメンと、インナーシャフト41内のインナールーメン12は、断面視において略同じ空間を表すため(厳密には、アウタールーメンはインナールーメン12より、インナーシャフト41の厚みおよびインナーシャフト41の外周面とアウターシャフト10Aの内周面の間の後述する隙間の分だけ大きい)、以下では便宜的にアウタールーメンにインナールーメン12と同じ符号を付してアウタールーメン12ともいう。また、アウタールーメン12およびインナールーメン12を総称して、中央ルーメン12またはメインルーメン12ともいう。
【0025】
図4の例では、軸方向に垂直な基端側シャフト10Aの断面の中央において、デバイスポート24から延びるインナーシャフト41(図1)の内部空間としてインナールーメン12またはメインルーメン12が形成されている。軸方向に垂直な基端側シャフト10Aの断面において、メインルーメン12またはインナーシャフト41の外周を円状に囲むように複数のサブルーメン101L~112L(以下では周辺ルーメン101L~112Lともいう)が設けられる。第2ルーメンとしての複数のサブルーメン101L~112Lは、軸方向に延びる第2シャフトとしての管状の複数のサブシャフト101~112(以下では周辺シャフト101~112ともいう)によって形成される略円柱状の空間である。なお、図4においては7個のサブルーメン106L~112Lおよび7個のサブシャフト106~112のみが示されている(5個のサブルーメン101L~105Lおよび5個のサブシャフト101~105は隠れて見えない)。
【0026】
図4に示される7個のサブルーメン106L~112Lのうち、5個のサブルーメン107L~111Lはバルーン30の基端部35、具体的には基端側ネック部351と基端側テーパ部352の境界の近傍においてバルーン30の内部に対して開口されている。また、5個のサブルーメン107L~111Lの基端は流体排出ポート23(図1)に繋がっている。このため、バルーン30の内部の拡張流体は、5個のサブルーメン107L~111Lを通じて流体排出ポート23から排出可能である。サブルーメン112Lには、基端が電気コネクタ21に接続された導線70が挿通されており、図3等で示したリング電極60および/または帯状電極40まで延びている。また、サブルーメン106Lには、基端が電気コネクタ21(図1)に接続された熱電対80が挿通されており、バルーン30の基端側ネック部351の基端(基端側シャフト10Aとの境界)より基端側の箇所からサブルーメン106L外に出て、薄肉のバルーン30(基端側ネック部351および基端側テーパ部352)中を伝って中間部31における温度測定箇所まで延びている。なお、サブルーメン106L、112Lおよび熱電対80、導線70は、バルーン30の内部の拡張流体が混入または付着しないように、封止または保護されているものとする。
【0027】
図5は、バルーン30の先端部33の部分拡大図である。図4(基端部35)において12個のサブルーメン101L~112Lのうち7個のサブルーメン106L~112Lが開口または終端しているため、先端部33には残りの5個のサブルーメン101L~105L(およびサブルーメン106L、112Lのそれぞれの半分)のみが延びている。なお、後述するように、全部で12個のサブルーメン101L~112Lは、軸方向に垂直な断面視で互いに重ならない位置に略等間隔で設けられている。
【0028】
先端側シャフト10Bが有する第1ルーメンとしてのアウタールーメン12には、インナーシャフト41が挿通されている。図5の例では、軸方向に垂直な先端側シャフト10Bの断面の中央において、デバイスポート24から延びるインナーシャフト41(図1)の内部空間としてインナールーメン12またはメインルーメン12が形成されている。軸方向に垂直な先端側シャフト10Bの断面において、メインルーメン12またはインナーシャフト41の外周を半円状に囲むように複数のサブルーメン101L~105Lが設けられる。第2ルーメンとしての複数のサブルーメン101L~105Lは、軸方向に延びる第2シャフトとしての管状の複数のサブシャフト101~105によって形成される略円柱状の空間である。
【0029】
5個のサブルーメン101L~105Lはバルーン30の先端側、具体的には先端側テーパ部332と中間部31の境界の近傍においてバルーン30の内部に対して開口されている。また、5個のサブルーメン101L~105Lの基端は流体供給ポート22(図1)に繋がっている。このため、流体供給ポート22からの拡張流体を、5個のサブルーメン101L~105Lを通じてバルーン30の内部に供給可能である。5個のサブルーメン101L~105Lの開口端より先端側の先端側シャフト10Bは、インナーシャフト41のみによって構成される。図3に関して説明したように、インナーシャフト41または先端側シャフト10Bはバルーン30の内部を軸方向に貫通し、先端チップ46と共にバルーンカテーテル100の先端における開口端を構成する。このように、第1シャフトとしてのシャフト10の先端側に取り付けられたバルーン30は、第2シャフトとしてのサブシャフト101~105の基端側から第2ルーメンとしてのサブルーメン101L~105L内に供給される流体によって拡張可能である。
【0030】
続いて、図6を参照しながら、軸方向に垂直なアウターシャフト10の断面における中央のメインルーメン12と、その周辺の12個のサブルーメン101L~112Lの関係について説明する。図6は、いずれのサブルーメン101L~112Lも終端していないアウターシャフト10の基端側シャフト10Aの断面、例えば図4においてバルーン30の基端側ネック部351の基端(基端側シャフト10Aとの境界)より基端側の基端側シャフト10Aの断面を示す。なお、基端側シャフト10Aの外周を被覆する管状の樹脂被膜15については図示を省略する。
【0031】
12個のサブルーメン101L~112Lは、中央のメインルーメン12の外周を円状に囲むように設けられる。各サブルーメン101L~112Lは、軸方向(図6における紙面に垂直な方向)に延びる管状の各サブシャフト101~112の内部の略円柱状の空間である。図示の例では、全てのサブルーメン101L~112Lの径、断面積、形状が略等しいが、これらは互いに異なっていてもよい。また、各サブルーメン101L~112Lの径や断面積はメインルーメン12より小さいが、少なくとも一つのサブルーメン101L~112Lの径や断面積がメインルーメン12より大きくてもよい。12個のサブルーメン101L~112Lおよび12個のサブシャフト101~112は、メインルーメン12またはアウターシャフト10の中心軸を中心とする周方向に沿って略等間隔で設けられる。すなわち、図6の断面における12個のサブルーメン101L~112Lおよび12個のサブシャフト101~112の周方向の間隔は略一定である。なお、複数の間隔が略一定であるとは、任意の二つの間隔の差が全ての間隔の平均値の10%未満であることをいう。ここで、各サブルーメン101L~112Lを構成する各サブシャフト101~112は、図6の断面において互いに外接しない。後述するように、各サブシャフト101~112間の隙間を通じて内側に入り込んだ第1部材が、アウターシャフト10の内周面の一部を構成して図示のようなメインルーメン12が構成される。
【0032】
第2シャフトとしての各サブシャフト101~112は、第1シャフトとしてのアウターシャフト10の内周面を構成する第1部材より低摩擦性の第2部材によって構成される。この第2部材は、第1シャフトとしてのアウターシャフト10の主構成部材である第1部材と共に、第1ルーメンとしてのアウタールーメン12またはメインルーメン12を定める内周面を構成する。ここで、主構成部材とは、アウターシャフト10の体積の過半を構成する部材である。第1部材(アウターシャフト10の主構成部材)は、例えばナイロンやウレタンによって構成され、第2部材(各サブシャフト101~112)は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素樹脂によって構成される。第2部材の動摩擦係数は、0.02と0.50の間とするのが好ましく、0.03と0.09の間とするのが更に好ましい。
【0033】
各サブシャフト101~112の外周面の一部は、アウターシャフト10の内周面の一部においてアウタールーメン12またはメインルーメン12に対して露出されている。特に図示の例では、各サブシャフト101~112の外周面を構成するフッ素樹脂等の第2部材が、アウターシャフト10の内周面を構成する第1部材よりメインルーメン12内に突出している。これらの構成によって、インナーシャフト41は、低摩擦性の第2部材(各サブシャフト101~112)に接触しながら、円滑にアウタールーメン12またはメインルーメン12内に挿入される。また、アウターシャフト10の内周面の周方向に沿って複数設けられる低摩擦性の第2部材(各サブシャフト101~112)の間には、当該第2部材より高摩擦性の第1部材が設けられるため、インナーシャフト41に対するアウタールーメン12またはメインルーメン12の円滑性が過度に高くなることを防止できる。ここで、メインルーメン12の外周において低摩擦性の第2部材(各サブシャフト101~112)が占める割合は任意であるが、円滑性を高める上では30%以上とするのが好ましい。この時、メインルーメン12の外周において高摩擦性の第1部材(アウターシャフト10の主構成部材)が占める割合は70%未満である。また、メインルーメン12の円滑性を高める上では第2部材が占める割合を可能な限り高めるのが好ましいが、図8に関して後述する製造の安定性や効率等に鑑みて現実的には50%程度が上限となる。
【0034】
特許文献1に示されるような従来のカテーテルでは、メインルーメンを構成するメインシャフトの周辺に複数のサブルーメンを構成する複数のサブシャフトが配置されていたが、図6ではアウタールーメン12またはメインルーメン12を構成するために独立したメインシャフトを設ける必要がないため、アウタールーメン12またはメインルーメン12を従来に比べて大きくできる。あるいは、従来と同等の大きさのアウタールーメン12またはメインルーメン12に対して複数のサブシャフトを近づけることができるため、アウターシャフト10の径を従来に比べて小さくできる。
【0035】
図4からバルーン30、インナーシャフト41、導線70、熱電対80等を取り除いた図7に模式的に示されるように、アウタールーメン12またはメインルーメン12内に露出される低摩擦性の第2部材(本図では7個のサブシャフト101~106、112)が軸方向に延びているため、インナーシャフト41のアウタールーメン12またはメインルーメン12内への軸方向に沿った挿入を円滑にガイドする。
【0036】
図8は、図6の構成の製造方法の例を模式的に示す。管状または柱状の第1ルーメン形成部材42は、アウタールーメン12の外周面またはアウターシャフト10の内周面に対応する外周面を有する。この第1ルーメン形成部材42の外周上に12個のサブシャフト101~112を略等間隔で配置する。ここで、各サブシャフト101~112を適切に配置できるように、第1ルーメン形成部材42の外周に各サブシャフト101~112の側面が嵌まる凹部を設けてもよい。なお、第1ルーメン形成部材42の材料は任意であるが、例えばフッ素樹脂である。
【0037】
第1ルーメン形成部材42および12個のサブシャフト101~112は、熱収縮チューブ43によって外側から被覆される。この状態で、熱収縮チューブ43の内周と第1ルーメン形成部材42および12個のサブシャフト101~112の外周の間に、アウターシャフト10の主構成部材となるナイロンやウレタン等の熱可塑性樹脂の粒子を投入して加熱する。加熱されて溶融した熱可塑性樹脂は、各サブシャフト101~112の間の隙間を通じて内側に入り込み、当該各サブシャフト101~112の外周面と共にアウターシャフト10の内周面を形成する。また、加熱されて収縮する熱収縮チューブ43が、アウターシャフト10の外周面を形成する。冷却後に第1ルーメン形成部材42および熱収縮チューブ43を取り除くことで、図6の構成が実現される。
【0038】
以上、本開示を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0039】
前述の実施形態では、第1シャフト(アウターシャフト10)の内周面の一部において第1ルーメン(アウタールーメン12またはメインルーメン12)に対して露出される低摩擦性の第2部材が、第2シャフトとしてのサブシャフト101~112の外周面によって構成されたが、低摩擦性の第2部材の構成はこれに限られない。例えば、図9に模式的に示されるように、高摩擦性のアウターシャフト10の内周面上に、低摩擦性の一または複数の第2部材113~116を周方向に沿って配置してもよい。この例においても、第2部材113~116は、アウターシャフト10の主構成部材である第1部材と共にアウタールーメン12を定める内周面を構成する。なお、図9においては、図6におけるインナーシャフト41の図示を省略した。また、第2部材113~116は、シャフト10の基端から先端に亘って軸方向に延びてもよい。あるいは、第2部材113~116は軸方向に延びる代わりに、軸方向に点在してもよいし、軸方向の周りに螺旋状に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 アウターシャフト、10A 基端側シャフト、10B 先端側シャフト、12 メインルーメン、24 デバイスポート、30 バルーン、41 インナーシャフト、100 バルーンカテーテル、101~112 サブシャフト、101L~112L サブルーメン、113~116 第2部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9