(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132524
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】情報提供システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/22 20180101AFI20230914BHJP
【FI】
G06Q50/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037894
(22)【出願日】2022-03-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年10月1日に株式会社フジタのホームページ(https://t-fair2021.fujita.co.jp)で発表 令和3年10月7日にフジタ技術フェア2021にて展示
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】513234215
【氏名又は名称】株式会社MSD
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小山(安嶋) 明日香
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】谷口 明
(72)【発明者】
【氏名】橋本 真伊知
(72)【発明者】
【氏名】八木 克也
(72)【発明者】
【氏名】小澤 学
(72)【発明者】
【氏名】土井 淳
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA21
(57)【要約】
【課題】利用者に密集・密接状態、密閉状態を解消するように行動を促す情報提供システムを提供する。
【解決手段】情報提供システムは、利用者端末から発信される第1の識別情報を含む第1の信号と、環境センサの測定データを含む第2の信号とを受信するデータ通信端末と、データ通信端末と通信ネットワークで接続される情報処理装置とを有する。情報処理装置は、第1の識別情報、受信時刻及び信号強度と、データ通信端末を識別する第2の識別情報とが対応付けられた利用者情報を格納する第1の記憶部と、測定データ及び受信時刻と第2の識別情報とが対応付けられた環境情報を格納する第2の記憶部と、利用者情報から利用者端末の数を特定する第1の分析部と、環境情報から空気の状態を分析する第2の分析部と、密集状態及び密閉状態を判定する判定部と、密集状態及び密閉状態を解消するメッセージを出力する情報提供部を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の利用者端末から発信される第1の識別情報を含む第1の信号と、環境センサの測定データを含む第2の信号と、を受信する少なくとも1つのデータ通信端末と、
前記データ通信端末と通信ネットワークで接続される情報処理装置と、
を有し、
前記情報処理装置は、
前記データ通信端末が前記第1の信号を受信することで得られる、前記第1の識別情報、前記第1の信号の受信時刻、及び前記第1の信号の信号強度と、前記データ通信端末を識別する第2の識別情報と、が対応付けられた利用者情報を格納する第1の記憶部と、
前記データ通信端末が前記第2の信号を受信することで得られる、前記測定データ、及び前記第2の信号の受信時刻と、前記第2の識別情報と、が対応付けられた環境情報を格納する第2の記憶部と、
前記利用者情報から、特定のエリアに、現在存在する、前記1つ以上の利用者端末の数を特定する第1の分析部と、
前記環境情報から、前記特定のエリアの、現在の、空気の状態を分析する第2の分析部と、
前記第1の分析部及び前記第2の分析部の分析結果に基づいて、密集状態及び密閉状態を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて密集状態及び密閉状態を解消するためのメッセージを出力する情報提供部と、を含む
ことを特徴とする情報提供システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのデータ通信端末が複数のデータ通信端末から成り、
前記特定のエリアが、前記複数のデータ通信端末から選ばれた1つのデータ通信端末に対応して割り当てられている、請求項1に記載の情報提供システム。
【請求項3】
前記第1の記憶部が前記利用者情報を経時的に格納し、前記第2の記憶部が前記環境情報を経時的に格納する、請求項2に記載の情報提供システム。
【請求項4】
前記第1の分析部が、前記1つ以上の利用者端末から選ばれた1つの第1の利用者端末を選定し、前記第1の記憶部に格納された前記利用者情報に基づいて、前記第1の利用者端末を導出する、請求項3に記載の情報提供システム。
【請求項5】
前記第1の分析部が、前記1つ以上の利用者端末の中から前記第1の利用者端末以外の第2の利用者端末を選定し、前記第1の記憶部に格納された前記利用者情報に基づいて、前記第2の利用者端末が、前記第1の利用者端末と同じ時間帯に同じエリアに存在したか否かを分析する、請求項4に記載の情報提供システム。
【請求項6】
1つ以上の利用者端末から発信される第1の識別情報を含む第1の信号と、環境センサの測定データを含む第2の信号と、を受信する少なくとも1つのデータ通信端末と、前記データ通信端末と通信ネットワークで接続される情報処理装置と、を含む情報提供システムで実行される情報提供方法であって、
前記情報処理装置が、
前記データ通信端末が前記第1の信号を受信することで得られる、前記第1の識別情報、前記第1の信号の受信時刻、及び前記第1の信号の信号強度と、前記データ通信端末を識別する第2の識別情報と、が対応付けられた利用者情報を記憶させ、
前記データ通信端末が前記第2の信号を受信することで得られる、前記測定データ、及び前記第2の信号の受信時刻と、前記第2の識別情報と、が対応付けられた環境情報を記憶し、
前記利用者情報から、特定のエリアに、現在存在する、前記1つ以上の利用者端末の数を特定し、
前記環境情報から、前記特定のエリアの、現在の、空気の状態を分析し、
前記1つ以上の利用者端末の数を特定した結果、及び前記空気の状態を分析した結果に基づいて、密集状態及び密閉状態を判定し、
前記判定の結果に基づいて密集状態及び密閉状態を解消するためのメッセージを出力する、
ことを特徴とする情報提供方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのデータ通信端末が複数のデータ通信端末から成り、
前記特定のエリアを、前記複数のデータ通信端末から選ばれた1つのデータ通信端末に対応して割り当てる、請求項6に記載の情報提供方法。
【請求項8】
前記利用者情報を経時的に第1の記憶部に格納し、前記環境情報を経時的に第2の記憶部に格納する、請求項7に記載の情報提供方法。
【請求項9】
前記1つ以上の利用者端末から選ばれた1つの第1の利用者端末を選定し、前記第1の記憶部に格納された前記利用者情報に基づいて、前記第1の利用者端末の導出する、請求項8に記載の情報提供方法。
【請求項10】
前記1つ以上の利用者端末の中から前記第1の利用者端末以外の第2の利用者端末を選定し、前記第1の記憶部に格納された前記利用者情報に基づいて、前記第2の利用者端末が、前記第1の利用者端末と同じ時間帯に同じエリアに存在したか否かを分析する、請求項9に記載の情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、環境センサで取得されたデータを用いて利用者に情報を提供する情報提供システム、情報提供方法、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
感染症による感染拡大を防ぐために、感染者の近くに居た者を、感染者の行動履歴から特定することが必要とされている。このようなニーズを満たすために、それぞれの利用者が所持するスマートフォンなどの携帯端末から発信された信号を受信部が受信し、その受信位置と日時を記録しておくことで、ある利用者が、特定の場所に、特定の利用者が存在した日時よりも後に存在したことを推定し、当該ある利用者を接触感染可能性者として特定するシステムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で開示されたシステムでは、特定の利用者が感染症に感染していたと判明した後で、不特定の複数の利用者の中から感染の可能性がある利用者を探し出すことはできるが、現在の環境が、密閉、密集、及び密接のいずれか一つ又は複数の状態であるか否かを知ることができないため、感染を未然に防ぐことができないという問題がある。また、感染症の予防に限らず、人の移動及び集散を伴う生活環境、居住環境が適切に保たれているか否かをその場で知ることは、健康的な社会生活を送る上で重要であると考えられる。
【0005】
本発明の一実施形態はこのような問題に鑑みなされたものであり、利用者に密集・密接状態、密閉状態を解消するように行動を促す情報提供システム、情報提供方法、コンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る情報提供システム、情報提供方法、コンピュータプログラムは、監視対象空間に在室する利用者の位置及び人数を、利用者が所持する端末から発信された識別情報と、その受信位置から割り出して、密集・密接の状態であるか否かを分析し、また環境センサで取得された環境データに基づいて密閉状態であるか否かを分析し、これらの分析結果に基づいて、警報や警告(メッセージ)を出力することを要旨とする。
【0007】
本発明の一実施形態に係る情報提供システムは、1つ以上の利用者端末から発信される第1の識別情報を含む第1の信号と、環境センサの測定データを含む第2の信号とを受信する少なくとも1つのデータ通信端末と、データ通信端末と通信ネットワークで接続される情報処理装置とを有する。情報処理装置は、データ通信端末が第1の信号を受信することで得られる第1の識別情報、第1の信号の受信時刻及び第1の信号の信号強度と、データ通信端末を識別する第2の識別情報とが対応付けられた利用者情報を格納する第1の記憶部と、データ通信端末が第2の信号を受信することで得られる測定データ及び第2の信号の受信時刻と第2の識別情報とが対応付けられた環境情報を格納する第2の記憶部と、利用者情報から特定のエリアに現在存在する1つ以上の利用者端末の数を特定する第1の分析部と、環境情報から特定のエリアの現在の空気の状態を分析する第2の分析部と、第1の分析部及び第2の分析部の分析結果に基づいて密集状態及び密閉状態を判定する判定部と、判定部の判定結果に基づいて密集状態及び密閉状態を解消するためのメッセージを出力する情報提供部とを含む。
【0008】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのデータ通信端末と複数のデータ通信端末から成り、特定のエリアが複数のデータ通信端末から選ばれた1つのデータ通信端末に対応して割り当てられていてもよい。
【0009】
本発明の一実施形態において、第1の記憶部が利用者情報を経時的に格納し、第2の記憶部が環境情報を経時的に格納してもよい。
【0010】
本発明の一実施形態において、第1の分析部が1つ以上の利用者端末から選ばれた1つの第1の利用者端末を選定し、第1の記憶部に格納された利用者情報に基づいて第1の利用者端末を導出してもよい。
【0011】
本発明の一実施形態において、第1の分析部が1つ以上の利用者端末の中から第1の利用者端末以外の第2の利用者端末を選定し、第1の記憶部に格納された利用者情報に基づいて第2の利用者端末が第1の利用者端末と同じ時間帯に同じエリアに存在したか否かを分析してもよい。
【0012】
本発明の一実施形態に係る情報提供方法は、1つ以上の利用者端末から発信される第1の識別情報を含む第1の信号と環境センサの測定データを含む第2の信号とを受信する少なくとも1つのデータ通信端末と、データ通信端末と通信ネットワークで接続される情報処理装置とを含む情報提供システムで実行される情報提供方法であり、情報処理装置が、データ通信端末が第1の信号を受信することで得られる第1の識別情報、第1の信号の受信時刻及び第1の信号の信号強度とデータ通信端末を識別する第2の識別情報とが対応付けられた利用者情報を記憶させ、データ通信端末が第2の信号を受信することで得られる測定データ及び第2の信号の受信時刻と第2の識別情報とが対応付けられた環境情報を記憶し、利用者情報から特定のエリアに現在存在する1つ以上の利用者端末の数を特定し、環境情報から特定のエリアの現在の空気の状態を分析し、1つ以上の利用者端末の数を特定した結果及び空気の状態を分析した結果に基づいて密集状態及び密閉状態を判定し、判定の結果に基づいて密集状態及び密閉状態を解消するためのメッセージを出力することを含む。
【0013】
本発明の一実施形態において、少なくとも1つのデータ通信端末が複数のデータ通信端末から成り、特定のエリアを複数のデータ通信端末から選ばれた1つのデータ通信端末に対応して割り当てるようにしてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態において、利用者情報を経時的に第1の記憶部に格納し、環境情報を経時的に第2の記憶部に格納するようにしてもよい。
【0015】
本発明の一実施形態において、1つ以上の利用者端末から選ばれた1つの第1の利用者端末を選定し、第1の記憶部に格納された利用者情報に基づいて第1の利用者端末の導出するようにしてもよい。
【0016】
本発明の一実施形態において、1つ以上の利用者端末の中から第1の利用者端末以外の第2の利用者端末を選定し、第1の記憶部に格納された利用者情報に基づいて第2の利用者端末が第1の利用者端末と同じ時間帯に同じエリアに存在したか否かを分析するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一実施形態に係る情報提供システムは、監視対象空間の密集・密接状態を判断して警報及び警告を利用者に認知させることができる。また、同時に監視対象空間の密閉状態を判断して警報及び警告を利用者に認知させることができる。これにより、利用者の自発的な移動や換気を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る情報提供システムの概念を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る情報提供システムの機能的な構成を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る情報提供システムにおいて、情報処理装置の表示部に表示される画面表示の一例を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る情報提供システムによって、監視対象空間の中で区分けされたエリアに配置された端末装置に表示される画面表示、利用者端末に表示される画面表示の一例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る情報提供システムにおける、情報処理装置の分析部、判定部、情報提供部の機能を説明する図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る情報提供システムを構成する各機器のハードウェア的な構成を説明する図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る情報提供システムの動作の一例を説明するフローチャートである。
【
図8】本発明の一実施形態に係る情報提供システムにおいて、情報処理装置の記憶部に格納されるデータの一例を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る情報提供システムの動作の一例を説明するフローチャートである。
【
図10】本発明の一実施形態に係る情報提供システムによって提供されるデータの一例であり、監視対象空間を表す地図上に利用者の移動経路を時刻とともに表示する態様を示す図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る情報提供システムによって提供されるデータの一例であり、時間軸に基づいて、利用者が滞在した位置を表示する態様を示す図である。
【
図12】
図3に示す情報処理装置の表示部に表示される画面表示に対応する模式図であり、説明のため実際のフロアの各エリアにおける在室状況を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号(又は数字の後にA、B、又はa、bなどを付した符号)を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1の」、「第2の」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0020】
本明細書において、監視対象空間とは、人が立ち入ることができ、一定時間滞在することのできる空間を指す。監視対象空間は、建物内部に設けられる部屋のように、壁、床、天井、窓、扉などで囲まれた空間であり、空調設備、換気設備がない場合には自然対流で空気が流動する空間である。例えば、換気監視対象空間には、事務室、会議室、講堂、教室、待合室、体育館、劇場、映画館、音楽ホール、多目的ホール、商業施設の売り場、娯楽施設の娯楽場、飲食施設の食堂など大小さまざまな部屋が含まれる。また、監視対象空間には、鉄道、バスなどの車両、航空機、船舶における客室が含まれる。医薬品研究施設、半導体工場、手術室などのクリーンルーム、さらに廊下や階段などの移動用の空間も監視対象空間に含まれる。
【0021】
本明細書において利用者とは、監視対象空間に在室する者を指す。監視対象空間が複数のエリアに区分されているとき、各エリアの中に存在する(在室する)人を指す。したがって、監視対象空間の中の対象エリアの人数に関する情報とは、監視対象空間が複数のエリアに区分されているとき、監視対象となるエリアに在室する人数のことを指す。在室者は、監視対象空間への出入りが自由であり、複数に分割されたエリア内を自由に移動可能であるものとする。
【0022】
本明細書において、利用者情報とは、利用者に関する情報であり、具体的には、監視対象空間における利用者の位置に関する情報である。利用者情報は、また、監視対象空間における利用者の行動履歴を含む位置に関する情報を含むものとする。
【0023】
本明細書において環境情報とは、監視対象空間の環境を表す情報であり、具体的には空気の質(空気質)に関する情報である。空気質とは、建物内の空気中のガス成分を示すものである。空気質は、二酸化炭素濃度、一酸化炭素濃度、温度、相対湿度、粉塵、ホルムアルデヒドの量などで表されるが、本発明の一実施形態においては、二酸化炭素濃度を主要な指標として用いられる。環境情報は、二酸化炭素濃度のデータが含まれることにより、監視対象空間の対象エリアが密閉状態であるか否かの判断に使用することができる。さらに、環境情報には、気温、湿度、照度、紫外線強度、騒音値、揮発性有機化合物(VOC)、空気中に浮遊する微粒子の数などが含まれてもよい。
【0024】
本明細書において、密集・密接状態とは、一箇所に多数の人が集まった状態であり、人と人との間隔が2m以下であり、さらに、人と人とが接し合う程度に混雑している状態を指すものとする。なお、密集・密接状態に関する定義は状況により変化するため設定はユーザによって設定できることが好ましい。
【0025】
本明細書において、密閉状態とは、必要換気量が満たされていない状態を指す。また、密閉状態とは、換気がされていないことにより空気質が悪化した状態を指す。例えば、密閉状態は、二酸化炭素濃度から判断することができる。一例として、二酸化炭素濃度が1000ppmを超えるときを密閉状態と判断してもよい。シックハウス症候群の原因などになるホルムアルデヒドの場合は0.08ppmを超えた場合は密閉状態といえる。なお、密閉状態に関する定義は状況により変化するためユーザによって設定できることが好ましい。
【0026】
1.情報提供システムの概要
図1は、本発明の一実施形態に係る情報提供システム100の概要を示す。情報提供システム100は、監視対象空間200における利用者端末の数とその位置、空気質をモニタリングして、密集・密接状態、密閉状態(空気質が悪化した状態)のときに、警報を発し、警告(メッセージ)を出力する機能を有する。情報提供システム100は、情報処理装置102及びデータ通信端末104を含む。データ通信端末104は監視対象空間200に配置され、通信ネットワーク152を介して情報処理装置102に接続される。
【0027】
図1は、監視対象空間200が複数に区画されている状態を示す。具体的に
図1は、監視対象空間200が、第1のエリア202A、第2のエリア202B、及び第3のエリア202Cの3つのエリアに区分されていることを示す。第1のエリア202A、第2のエリア202B、及び第3のエリア202Cは、境界が壁やパーティションなどの構造物によって物理的に区切られていてもよいし、そのような構造物が設けられておらず空間を仮想的に区分けされたものであってもよい。なお、
図1は、監視対象空間200が、3つのエリアに区分けされた例を示すが、区分けされるエリアの数に限定はない。監視対象空間200を区分する数は任意であり、対象とする空間(例えば居室)の広さに応じて適宜設定することができる。
【0028】
データ通信端末104は各エリアに対応して配置される。
図1は、第1のエリア202Aに第1のデータ通信端末104Aが、第2のエリア202Bに第2のデータ通信端末104Bが、第3のエリア202Cに第3のデータ通信端末104Cが配置された状態を示す。また、各エリアに対応して環境センサ106が配置される。
図1は、第1のエリア202Aに第1の環境センサ106Aが、第2のエリア202Bに第2の環境センサ106Bが、第3のエリア202Cに第3の環境センサ106Cが配置される態様を示す。第1のデータ通信端末104A、第2のデータ通信端末104B、及び第3のデータ通信端末104Cが離隔される距離に限定はないが、例えば、5m~10m以上の距離を有していることが好ましい。第1のデータ通信端末104A、第2のデータ通信端末104B、及び第3のデータ通信端末104Cが、このような距離をおいて配置されることで、利用者端末150を所持する利用者300の位置を特定し、密集・密閉状態の判定をすることができる。環境センサ106は、空気質を検出するセンサであり、例えば、二酸化炭素センサである。また、環境センサ106は、気温、湿度、照度、空気中に浮遊する微粒子の数を測定する機能を有していてもよい。環境センサ106は測定したデータを第2の信号としてデータ通信端末104に出力することができる。
【0029】
利用者端末150は、利用者300が所持し、利用者300と共に移動する。利用者端末150は固有の第1の識別情報を有している。利用者端末150は、第1の識別情報を含む第1の信号を発信し、データ通信端末104は第1の信号を受信する。例えば、利用者端末150にはビーコンが内蔵され、ビーコンにより第1の識別情報を含む第1の信号が発信されてもよい。また、データ通信端末104の側にビーコンが搭載されていて、利用者端末150がデータ通信端末104から発信されたビーコンの信号を受信すると、第1の識別情報を含む第1の信号をデータ通信端末104へ向けて発信するように構成されていてもよい。また、利用者端末150がデータ通信端末104から発信されたビーコンの信号を受信すると、第1の識別情報を含む第1の信号を情報処理装置102へ直接送信するようにされていてもよい。なお、利用者端末150は、情報提供システム100を構成する機器ではなく、情報提供システム100が有する機能を発揮する際に使用される機器である。
【0030】
本発明の一実施形態において、データ通信端末104と利用者端末150との間の通信は無線通信により行われるが、無線通信の規格に限定はなくさまざまな通信手段を適用することができる。例えば、データ通信端末104と利用者端末150とは、5GHz帯又は2.4GHz帯が使用されるWiFiの通信規格に準じて接続されてもよいし、ブルートゥース(登録商標)によって接続されてもよいし、赤外線通信によって接続されてもよい。
【0031】
利用者端末150としては、スマートフォン、タブレット端末などの携帯端末、無線ICチップが埋め込まれた身分証明証(IDカード)、リストバンド型の端末、クリップ型のセンサなどを例示することができる。しかし、利用者端末150はこれらの例示に限定されず、形状及び種類に限定はない。利用者端末150は、利用者300を識別できる信号を発信可能なものであれば限定はない。
【0032】
2.情報提供システムの機能的な構成
情報提供システム100を構成する各機器、及びこれに付随する機器の機能的な構成について説明する。
【0033】
2-1.データ通信端末
図2に示すように、データ通信端末104は通信ネットワーク152に接続され、環境センサ106及び利用者端末150と、情報処理装置102との接続を中継する。別言すれば、データ通信端末104は通信ネットワーク152に接続されるルータとしての機能を有する。データ通信端末104は、第2の識別情報を記憶する識別情報記憶部1046、利用者端末150から発信される第1信号の強度を検出する信号強度検出部1044、第1信号を受信した時刻を設定する時刻設定部1048、送受信部1042を有する。
【0034】
データ通信端末104は、送受信部1042が、利用者端末150から発信された第1の信号を受信する。データ通信端末104は、第1の信号に含まれる第1の識別情報(利用者端末150に固有の情報)、第1の信号を受信した時刻、第1の信号の信号強度に関する情報を、識別情報記憶部1046から読み出された第2の識別情報(データ通信端末104に固有な情報)と共に情報処理装置102へ送信する機能を有する。
【0035】
仮に、第1のデータ通信端末104A、第2のデータ通信端末104B、第3のデータ通信端末104Cのそれぞれが、利用者300が所持する利用者端末150と通信可能な状態にあるとき、利用者端末150から発信される第1の信号はそれぞれのデータ通信端末で実質的に同時に受信される。第1のデータ通信端末104A、第2のデータ通信端末104B、及び第3のデータ通信端末104Cと、利用者端末150との距離が異なっているため、それぞれのデータ通信端末によって得られる第1の信号の信号強度は異なっている。利用者端末150に対しては、第1のデータ通信端末104Aが一番近く、第2のデータ通信端末104B及び第3のデータ通信端末104Cは離れている。したがって、第1のデータ通信端末104Aが受信する第1の信号の信号強度が一番強く、第2のデータ通信端末104B及び第3のデータ通信端末104Cが受信する第1の信号の信号強度はそれより弱くなる。
【0036】
また、データ通信端末104にビーコンの機能が搭載される場合には、データ通信端末104から発信されたビーコン信号に応答して、利用者端末150から第1の信号が発信されてもよい。
【0037】
図2に示すように、データ通信端末104は信号強度検出部1044を有し、この機能により第1の信号の信号強度を検出することができる。そして、データ通信端末104は、第1の信号と共に、時刻設定部1048により設定された第1の信号を受信した時刻、識別情報記憶部1046から読み出された第2の識別情報を、送受信部1042の機能によって情報処理装置102へ送信する。
【0038】
2-2.環境センサ
図2に示すように、環境センサ106はデータ通信端末104と接続される。環境センサ106は、監視対象空間200に設置され、空間の環境を測定するために用いられる。空間の環境とは空気質であり、二酸化炭素濃度をその指標としている。したがって、環境センサ106は、二酸化炭素を検出する機能を有している。環境センサ106は、さらに、温度、相対湿度、紫外線強度、騒音値、揮発性有機化合物(VOC)、空気中に浮遊する粉塵の数などを検出する機能を有していてもよい。環境センサ106は、検出部1062、制御部1064、出力部1066を有する。検出部1062は、監視対象空間の環境を測定するセンシング部である。環境センサ106が空気の質を測定するとき、検出部1062は、例えば、二酸化炭素を検出する機能を有する。制御部1064は検出部1062の動作を制御し、検出部1062から出力される信号を増幅し、測定データとしてデジタル化する機能を有する。出力部1066は、測定データをデータ通信端末104に出力する機能を有する。
【0039】
2-3.情報処理装置
図2に示すように、情報処理装置102は、分析部1021、記憶部1022、判定部1023、情報提供部1024、送受信部1025を有する。分析部1021は、さらに第1の分析部1021Aと第2の分析部1021Bに細分化されていてもよい。記憶部1022は、さらに第1の記憶部1022Aと第2の記憶部1022Bに細分化されていてもよい。送受信部1025は、通信ネットワーク152に接続され、データ通信端末104と双方向に通信する機能を有している。
【0040】
情報処理装置102は、データ通信端末104から送信された利用者端末150に関する情報及び環境センサ106によって取得された情報を、記憶部1022に記憶する機能を有する。例えば、情報処理装置102は、データ通信端末104を介して利用者端末150を識別する第1の識別情報(利用者端末150固有の識別情報)、データ通信端末104を識別する第2の識別情報(データ通信端末104固有の識別情報)、利用者端末150が発信した第1の信号の信号強度、第1の信号を受信した時刻に関する情報を、利用者情報として取得する。情報処理装置102は、利用者情報を第1の記憶部1022Aに格納する。また、情報処理装置102は、データ通信端末104を介して取得された、環境センサ106から出力される第2の信号に含まれる測定データ、第2の信号を受信した時刻に関する情報、第2の信号を受信したデータ通信端末104を識別する第2の識別情報を、環境情報として取得する。情報処理装置102は、この環境情報を第2の記憶部1022Bに格納する。
【0041】
情報処理装置102は、分析部1021によって監視対象空間200の分析を行う。第1の分析部1021Aが第1の記憶部1022Aから、利用者情報を読み出して、監視対象空間200の特定のエリアにどの程度利用者が集まっているのかを分析する。また、第2の分析部1021Bが、第2の記憶部1022Bから環境情報を読み出して、特定のエリアが密閉状態(空気質の状態)を分析する。なお、
図2は、第1の分析部1021Aと第2の分析部1021Bの2つを示すが、分析部1021の構成はこれに限定されない。第1の分析部1021Aの持つ機能と第2の分析部1021Bが持つ機能は統合されてもよいし、さらに細分化されていてもよい。
【0042】
判定部1023は、第1の分析部1021Aの分析結果に基づいて、監視対象空間200の中の特定のエリアが密集・密接状態であるか、密閉状態であるかの判定をする。情報提供部1024は、判定部1023の判定結果に基づいて、密集・密接状態や密閉状態が判定されたとき、それらの状態を解消するために、警告を発報する信号を出力し、またメッセージ(文字、画像、音声、及びそれらの組み合わせによる端末機器での画面表示、電子メールによる通知)を出力する。なお、
図2に示すように、情報提供部1024は、情報提供システム100の管理者の表示部1026の画面に監視対象空間200のレイアウトを表示すると共に、密集・密接状態や密閉状態のエリアを表示する機能を有していてもよい。
【0043】
図3は、表示部1026に表示される画面表示の一例を示す。
図3は、画面の右側に、監視対象空間200である建築物の一つのフロアのレイアウト図が示され、画面の左側に各エリアの在室人数、二酸化炭素濃度、室温などの情報が示される表示欄や警報が出されているエリアを時系列で示す表示欄が設けられた画面表示の一例を示す。画面右側のフロアのレイアウト図の中には、密集・密接状態を警告する第1の警告表示10261、密閉状態を警告する第2の警告表示10262が出ているか否かを示す表示されるようになっており、現在どのエリアで警報が出ているのかを視覚的に把握できるようになっている。また、画面左側の表示欄では、人数の多い少ない(混雑の程度)、二酸化炭素濃度の大小や、室温の高低をグラフ表示で示されている。これらの画面表示は、情報提供部1024の機能により実現される。
【0044】
図12は、実際のフロアの各エリアにおける在室状況を模式的に示す。
図12は、一つのフロアに、会議室A~D、事務室のエリアA~D、廊下、研修室A、Bが配置されていることを示す。各エリアには、データ通信端末104と環境センサ106が備えられており、通信ネットワーク152を介して情報提供システム100に接続されている。また、各エリアには、情報提供システム100から送信される警告を表示可能な端末154が備えられていてもよい。端末154は通信ネットワーク152に接続可能なものであり、例えば、タブレット端末、パーソナルコンピュータなどが適用される。
図12に示すように、データ通信端末104及び環境センサ106は、一つの居室に一組ずつ配置されていてもよいが、事務室のように広い居室の場合には、エリアを区分けして、各エリアにデータ通信端末104及び環境センサ106が設置されていてもよい。さらに、
図12に示すように、データ通信端末104及び環境センサ106は、居室のみならず廊下、階段などの通路に配置されて、そのエリアの密集・密接状態及び密閉状態を監視してもよい。
【0045】
ここで、
図12は、会議室Aに7人の利用者が在室しており、ドアが閉められていることから、密集・密接状態、及び密閉状態にあることを模式的に示す。また、事務室のエリアCにおいて11人が集合しており、密集・密接状態にあることを模式的に示す。
【0046】
このような在室状況に対して、
図3では、表示部1026の画面表示として、画面左側の表示欄に、会議室Aの人数が多く、二酸化炭素濃度が高いことが棒グラフで表示されている。棒グラフは、棒の長さだけでなく、人数や二酸化炭素濃度が高くなるに従い色調が輝度を変えて表示されてもよい。画面右側のレイアウト図に示されるように、会議室Aでは密集・密接状態であることを示す第1の警告表示10261が点灯し、密閉状態であることを示す第2の警告表示10262が点灯していることを示す。また、事務室のエリアCでは、密集・密接状態であることを示す警告灯が点灯していることを示す。情報提供システム100の管理者は、この画面表示を見ることにより、密集・密接状態や密閉状態が発生しているエリアを確認することができ必要な措置をとることができる。
【0047】
図4(A)は、情報提供部1024から各エリアに配置された端末154の画面に表示される画像の一例を示す。この画像表示は、利用者端末150がスマートフォンなどの表示機能を有する携帯端末に対して行われてもよい。
図4(A)は、画面の中央に対象エリアが表示され、その隣に各エリアの在室人数、室温、湿度、二酸化炭素濃度、密集度などの文字情報が示される画面表示の例を示す。
図4(A)は、会議室Aに警告が出されている状態を示し、画面の中央に図形表示される会議室Aが強調されるように異なる発色(例えば、赤を基調とした色)で表示される状態を示す。また、画面の下側には第3の警告表示10263として警告の内容がメッセージとして表示されている状態を示す。第3の警告表示10263を端末装置の画面に表示する際には、警告音と共に表示するようにしてもよい。また、
図4(B)に示すように、警告表示10263の内容は、利用者端末150がスマートフォンなどの表示機能を有する携帯端末に対して電子メールで通知されてもよい。そして、このような警告表示は、警告の原因となる状態が解消されるまで消去されず、表示が継続されるように設定されていてもよい。このような画像表示は、情報処理装置102の情報提供部1024の機能により提供することができる。
【0048】
図4に示すように、各エリアに設置された端末機器に、密集・密接状態や密閉状態を警告し、その解消を促すメッセージを表示することにより、そのエリアに滞在する利用者に直接注意を促すことができ、密集・密接状態や密閉状態の解消を図ることができる。
【0049】
図5(A)は分析部1021の機能的な構成を示す。
図5(A)に示すように、分析部1021は、特定のエリアにおける現在の密集・密接状態分析機能10211、密閉状態分析機能10212、利用者の移動経路追跡機能10213を有する。例えば、情報処理装置102は、第1の分析部1021Aによって、第1の記憶部1022Aに格納された利用者情報から、特定のエリアに現在存在する利用者端末150の数を特定する。また、情報処理装置102は、第2の分析部1021Bによって、第2の記憶部1022Bに格納された環境情報から、特定エリアの現在の空気質を分析する。環境情報としては、例えば、二酸化炭素濃度が含まれる。
【0050】
利用者の移動経路追跡機能10213は、第1の分析部1021Aが、第1の記憶部1022Aから特定の利用者の移動経路を特定するために、第1の識別情報及びその第1の情報が取得された場所を特定する第2の識別情報を時系列で読み出して、予め用意された地図にマッピングするようにして実行することができる。このようなマッピング作業は、複数の利用者(第1の識別情報によって区別される利用者端末150)に対してそれぞれ行うことができる。
【0051】
図1の例示に従えば、情報処理装置102は、第1のデータ通信端末104A、第2のデータ通信端末104B、及び第3のデータ通信端末104Cと接続されており、それぞれから利用者情報及び環境情報を取得する。利用者端末150が、第1のデータ通信端末104A、第2のデータ通信端末104B、及び第3のデータ通信端末104Cと通信可能な状態にある場合、利用者300がどのエリアに存在するのかを知る必要がある。この場合、第1の分析部1021Aは、第1のデータ通信端末104A、第2のデータ通信端末104B、及び第3のデータ通信端末104Cから取得された第1の信号の強度情報を比較して、第1の信号の信号強度が最も強い値を示すデータ通信端末を選定することで、利用者300がどのエリアに存在するのかを分析する。
【0052】
なお、本実施形態では第1の信号強度から利用者300の位置を特定しているが、このような方式に代えて、GPS(Global Positioning System)を利用して利用者300を特定してもよい。例えば、利用者端末150にGPSの機能が備えられており、情報処理装置102がその位置を取得するようにされていてもよい。
【0053】
図5(B)に示すように、判定部1023は、密集・密接状態判定機能10231、密閉状態判定機能10232、濃厚接触者判定機能10233を有する。例えば、判定部1023は、第1の分析部1021Aが特定した利用者端末150の数があらかじめ定められた第1の基準値を超えたとき、特定のエリアが密集・密接状態にあると判定し、利用者端末150の数が第1の基準値を超えないときは密集・密接状態にないと判断する。また、判定部1023は、第2の分析部1021Bによって分析された空気質があらかじめ定められた第2の基準値以上である場合、密閉状態(空気質が悪い状態)であると判断し、空気質が第2の基準値を超えないときは空気質が清浄な状態(密閉状態ではない)と判断する。例えば、二酸化炭素濃度が第2の基準値よりも高いときは、空気質が悪い状態(密閉状態)であると判断する。そして、第2の基準値を超えた後、第2の分析部1021Bによって分析された空気質があらかじめ定められた第3の基準値以下になった場合、警告を解除する判断をする。第2の基準値及び第3の基準値は、対象エリアごとに面積、用途、収容人数などを加味して設定される。例えば、第2の基準値は、所定の法令が規定する要件を充足するように設定することができ、二酸化炭素濃度を例にとると、ビル管理法で規定される1000ppm以下を超えない範囲で設定することができる。
【0054】
濃厚接触者判定機能10233は、第1の分析部1021Aによって作成された利用者の移動経路のマッピングデータに基づいて、特定の利用者と、特定の利用者以外の他の利用者が同じ時間帯に密集・密接した状態で存在していたか否かによって判定する機能を有する。
【0055】
図5(C)に示すように、情報提供部1024は、警報出力機能10241、警告表示機能10242を有する。警報出力機能10241は、警報音を出す信号を出力する警報音出力機能102411、警告灯を動作させる信号を出力する警報灯駆動機能102412を含む。警告表示機能10242は、換気を推奨するメッセージを出力する換気推奨表示機能102421、密集・密接状態を解消する移動推奨表示機能102422、同様に密集・密接状態を解消する隔離確保推奨表示機能102433を含む。警告表示機能10242は、
図4を参照して説明したように、利用者端末150の表示画面、対象エリアに設置されている端末の表示画面に、換気推奨表示、移動推奨表示、隔離確保推奨表示をする機能を有する。
【0056】
2-4.利用者端末
図2に示すように、利用者端末150は、通信部1501、識別情報記憶部1502を含む。また、利用者端末150がスマートフォンのような携帯端末である場合、その種類によってデータ記憶部1503、表示部1504、音声出力部1505が含まれてもよい。識別情報記憶部1502に記憶される第1識別情報は、利用者端末150に固有に割り当てられたものである。データ記憶部1503は、携帯端末としての利用者端末150の機能を発揮するためのソフトウェアを格納する機能を有し、表示部1504は、情報処理装置102から送信された警報(文章、図形、アニメーション)を表示する機能を有し、音声出力部1505は、情報処理装置102から送信された警報音を出力する機能を有する。
【0057】
情報提供システム100は、情報処理装置102、データ通信端末104、環境センサ106が有する機能が有機的に結合し、利用者端末150の動作を伴ってその機能を発揮する。すなわち、情報提供システム100は、監視対象空間の密集・密接状態を判断して警報及び警告を利用者に認知させることができ、密閉状態を判断して警報及び警告を利用者に認知させることができる。
【0058】
3.情報提供システムのハードウェア的な構成
図6(A)~(D)は、情報提供システム100のハードウェア的な構成を示す。情報提供システム100は、情報処理装置102、データ通信端末104、環境センサ106の各機器がハードウェア資源によって構成され、これらの機器が通信ネットワーク152を介して接続されることにより、所定の機能を発揮するように構成されている。
【0059】
3-1.情報処理装置
図6(A)は、情報処理装置102のハードウェア的な構成を示す。情報処理装置102は、監視対象空間200の存在する人の人数に関する情報、環境に関する情報に基づいて、密集・密接状態、及び密閉状態を解消するための警報や警告を出力する機能を有するハードウェア資源である。情報処理装置102は、プロセッサ10201、メモリ10202、ストレージ10203、入出力I/F10204、通信I/F10205を含む。
【0060】
プロセッサ10201は、ストレージ10203に格納されているコンピュータプログラムを実行し、分析部1021、判定部1023、情報提供部1024としての機能を発現する。プロセッサ10201は、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ(Micro Processing Unit)とも呼ばれ、大規模集積回路(LSI)で実現される。
【0061】
メモリ10202は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)を含み、ストレージ10203からロードしたプログラムを一時的に記憶し、プロセッサ10201に対して作業領域を提供する。ストレージ10203は、オペレーティングシステム及びコンピュータプログラムを記憶する。ストレージ10203は、また、データを記憶する領域を有し、第1の記憶部1022A及び第2の記憶部1022Bを提供する。ストレージ1020203は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)で構成される。
【0062】
入出力I/F10204は、情報処理装置102に対する各種命令を入力する入力デバイス、及び情報処理装置102で処理された結果を出力する出力デバイスに対するインターフェースである。入力デバイスはキーボード、マウス、タッチパネルなどであり、出力デバイスは表示装置、プリンタなどである。通信I/F10205は、ネットワークアダプタなどのハードウェア、通信用ソフトウェア、及びこれらの組み合わせとして実装され、通信ネットワークを介して各種データの送受信を行う。
【0063】
なお、情報処理装置102はサーバ装置としての機能を有するものであり、サーバ装置は、物理サーバ、仮想サーバ、又はクラウドサーバなどで実現され、その形式に特段の限定はない。情報処理装置102は、監視対象空間200と同じ建物内に配置されていてもよいし、監視対象空間200から離れた建物に配置されていてもよい。
【0064】
3-2.データ通信端末
データ通信端末104は、環境センサ106及び利用者端末150と情報処理装置102とを接続するハードウェア資源である。
図6(B)に例示するように、データ通信端末104は、プロセッサ10401、メモリ10402、ストレージ10403、通信回路10404、を含んで構成される。プロセッサ10401は、ネットワークプロセッサであり、ネットワークトラフィックを処理するための専用プロセッサが用いられる。メモリ10402は、プロセッサ10401が動作するときに作業領域を提供する。ストレージ10403は不揮発性メモリであり、プロセッサ10401を動作させるためのコンピュータプログラムの他に、データ通信端末104に固有の第2の識別情報が記憶される。通信回路10404は、例えば、2.4GHz帯又は5GHz帯の通信回路であり、データ通信端末104をWi-Fiルータとして機能させるためのものである。また、通信回路10404にはブルートゥース(登録商標)の通信を行う機能が備えられていてもよい。通信回路10404はこのような機能を備えることにより、ビーコンを発信し、WiFiによる通信を行うことができる。通信回路10404は、また、赤外線通信に対応した近距離無線通信に対応したものが含まれてもよい。
【0065】
3-3.環境センサ
環境センサ106は、監視対象空間200の環境に関する情報を取得するハードウェア資源である。
図6(C)に例示するように、環境センサ106は、マイクロコンピュータ10601、センサ素子10602、出力回路10603を含んで構成される。マイクロコンピュータ10601は、センサ素子10602の動作を制御する。例えば、マイクロコンピュータ10601は、一定期間ごとにセンサ素子10602を駆動し、監視対象空間200の環境を測定するように動作する。センサ素子10602は、監視対象空間200の環境を測定するものであり、例えば、ガスセンサであり、さらに具体的には二酸化炭素センサである。二酸化炭素センサは、例えば、光学式のセンサが用いられ、二酸化炭素固有の赤外線吸収波長帯の光量変化を測定することで、二酸化炭素の濃度を測定する。センサ素子10602としては、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、紫外線(UV)センサ、騒音センサ、揮発性有機化合物(VOC)センサ、微粒子センサ(パーティクルカウンタ)などが適用されてもよい。出力回路10603は、センサ素子10602から出力された信号を増幅し、また必要に応じてアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する回路である。
【0066】
3-4.利用者端末
利用者端末150は、利用者300に属する端末機器であり、情報提供システム100を直接構成するものではないが、情報提供システム100が動作するときに連係して動作するハードウェア資源である。利用者端末150の種類及び機能に限定はないが、データ通信端末104と通信が可能であり、他の利用者端末と区別するためのその端末固有の第1の識別情報を有し、その第1の識別情報がデータ通信端末104と通信をするときに提供される機器であることが好ましい。
【0067】
図6(D)は、利用者端末150がスマートフォンなどの携帯端末である例を示し、プロセッサ15001、メモリ15002、ストレージ15003、入出力I/F15004、通信回路15005、ディスプレイ15006、バッテリ15007が含まれる態様を示す。プロセッサ15001は、ストレージ15003に格納されているコンピュータプログラムを実行し、メモリ15002は、ストレージ15003からロードしたプログラムを一時的に記憶し、プロセッサ15001に対して作業領域を提供するために用いられる。ストレージ15003は、オペレーティングシステム及びコンピュータプログラムを記憶する。ストレージ15003は、また、第1の識別情報を記憶する領域を有する。
【0068】
入出力I/F15004は、利用者端末150を操作するときに必要な入力デバイス及び出力デバイスに対するインターフェースである。入力デバイスはタッチパネル(ディスプレイ15006を兼ねる)などであり、出力デバイスはディスプレイ15006である。バッテリ15007は、利用者端末150の電源であり、駆動に必要な電力を供給する。
【0069】
利用者端末150は、スマートフォンに限定されず、タブレット端末などの携帯端末であってもよい。また、無線ICチップが埋め込まれた身分証明証(IDカード)、リストバンド型の端末、クリップ型のセンサなどを例示することができるが、利用者端末150の形状及び機能に限定はなく利用者300を識別できるものであれば限定はなない。
【0070】
4.情報提供システムの動作
情報提供システム100の動作の一例を説明する。情報提供システム100は、現時点における密集・密接状態を解消するための動作、密閉状態(空気質が悪い状態)を解消するための動作、移動経路の事後的な分析による濃厚接触者を特定する動作をすることができる。以下にそれぞれの動作の一例を説明する。
【0071】
4-1.密集・密接状態、密閉状態を解消するための動作
図7は、情報提供システム100の動作の一例を説明するフローチャートを示す。情報提供システム100は、第1の分析部1021Aが、第1の記憶部1022Aに格納された利用者端末150ごとの第1の識別情報を読み出して、あるエリア(以下の説明においては、一例として、
図1に示す第1のエリア202Aを対象とする。)に存在する現時点での利用者端末150の数をカウントする(S400)。利用者端末150は、利用者300に1台ずつ割り当てられたものであるため、利用者端末150ごとに割り当てられた第1の識別情報の数をカウントすることで、第1のエリア202Aに存在する利用者300の人数を知ることができる。
【0072】
次に、情報提供システム100は、第2の分析部1021Bが、第2の記憶部1022Bに格納された第1のエリア202Aの環境情報を読み出して、現時点での環境情報を取得する(S402)。環境情報は、例えば、二酸化炭素濃度である。
【0073】
判定部1023が、第1の分析部1021Aで取得された第1のエリア202Aの人数が第1の基準値以上であるか否かを判断する(S404)。判定部1023が、第1のエリア202Aの人数が第1の基準値未満であると判断した場合には、現在密集・密接状態に対する警報が出されているか否かの判断を行う(S406)。そして、警報が出されている場合には警報を解除し(S408)、警報が出されていない場合にはそのまま、ステップS400に戻り、再び第1のエリア202Aの人数をカウントする。一方、判定部1023が、第1のエリア202Aの人数が第1の基準値以上であると判断した場合には、現在密集・密接状態に対する警報が出されている否かの判断を行う(S410)。そして、警報が出されていた場合には警報を継続し(S412)、ステップS400に戻り、再び第1のエリア202Aの人数をカウントする。また、ステップS410で警報が出されていないと判断された場合には、第1のエリア202Aが、密集・密接状態にあるとの判定を行う(S414)。
【0074】
判定部1023により、第1のエリア202Aが密集・密接状態にあると判断されると、情報提供部1024が密集・密接状態にあることを知らせる警報を出力する(S416)。警報は、第1のエリア202Aに備えられたスピーカから発せられる警報音や警報灯によって行われてもよいし、表示パネルに警報を表示(音声が伴ってもよい)することによって行われてもよいし、利用者端末150に警報音を出力させるものであってもよい。
【0075】
また、情報提供部1024は、第1のエリア202Aの密集・密接状態を解消するために、警告として、移動を促すメッセージ及び隔離を確保するためのメッセージの一方又は両方を出力する(S418)。これらのメッセージは、第1のエリア202Aに備えられた、表示パネルに表示(音声が伴ってもよい)することによって行われてもよいし、利用者端末150にプッシュ通知によりメッセージを表示させるものであってもよい。そして、ステップS400に戻り、再び第1のエリア202Aの人数をカウントする。
【0076】
また、判定部1023は、第2の分析部1021Bで取得された第1のエリア202Aの環境データが基準値以上であるか否かを判断する(S405)。判定部1023が、第1のエリア202Aの環境データが第2の基準値未満であると判断した場合には、現在密閉状態に対する警報が出されているか否かの判断を行う(S407)。そして、警報が出されている場合には警報を解除し(S409)、警報が出されていない場合にはそのまま、ステップS400に戻る。一方、判定部1023が、第1のエリア202Aの環境データが第2の基準値以上であると判断した場合には、現在密閉状態に対する警報が出されている否かの判断を行う(S411)。そして、警報が出されていた場合には警報を継続し(S413)、ステップS400に戻る。また、ステップS411で警報が出されていないと判断された場合には、第1のエリア202Aの空気質が悪く密閉状態にあると判定する(S415)。
【0077】
判定部1023により、第1のエリア202Aが密閉状態にあると判断されると、情報提供部1024が密閉状態にあることを知らせる警報を出力する(S417)。警報は、第1のエリア202Aに備えられたスピーカから発せられる警報音や警報灯によって行われてもよいし、表示パネルに警報を表示(音声が伴ってもよい)することによって行われてもよいし、利用者端末150に警報音を出力させるものであってもよい。
【0078】
また、情報提供部1024は、第1のエリア202Aの密閉状態を解消するために、警告として、換気を促すメッセージを出力する(S419)。これらのメッセージは、第1のエリア202Aに備えられた、表示パネルに表示(音声が伴ってもよい)することによって行われてもよいし、利用者端末150にプッシュ通知によりメッセージを表示させるものであってもよい。そして、ステップS400に戻り、再び第1のエリア202Aの人数をカウントする。
【0079】
なお、ステップS404、S414、S416、S418で行われる密集・密接状態の判断、並びに警報及び警告の出力と、ステップS405、S415、S417、S419で行われる密閉状態の判断、並びに警報及び警告の出力は、同時並行的に行われることが好ましいが、密閉状態の判断、並びに警報及び警告の出力の後に密集・密接状態の判断、並びに警報及び警告の出力、もしくは逆の順番で行ってもよい。
【0080】
本実施形態に係る情報提供システムは、
図7に示す処理が行われることで、現時点における密集・密接状態、密閉状態を解消するように利用者に行動を促すことができる。
【0081】
4-2.移動経路の事後的な分析による濃厚接触者の特定
情報提供システム100は、第1の記憶部1022Aに格納されたデータに基づいて、特定の利用者の移動経路を事後的に特定することができる。
【0082】
図8は、第1の記憶部1022Aに格納される利用者情報の一例を示す。利用者情報には、第1の識別情報、第2の識別情報、第1の信号の強度情報、第1の信号を受信した時刻に関する情報が含まれる。これらの情報は第1の記憶部1022Aに時系列に格納される。
【0083】
図8は、例えば、2022年1月20日午前8時00分に、第2の識別情報#2001Aで特定されるエリア(例えば、
図3の「会議室A」)に設置されたデータ通信端末104が、第1の識別情報#100001が割り当てられた利用者端末を所持する第1の利用者、第1の識別情報#100002が割り当てられた利用者端末を所持する第2の利用者、以下同様に第3の利用者、第4の利用者、第5の利用者、第6の利用者、第7の利用者、第8の利用者、第9の利用者、第10の利用者と通信を行って取得されたデータが格納された状態を示す。また、同じ時刻において、第2の識別情報#2001Bで特定されるエリア(例えば、
図3の「会議室B」)に設置されたデータ通信端末104が、同様に第1の乃至第10の利用者と通信を行って取得されたデータが格納された状態を示す。
【0084】
図8に示すデータは、
図3に示す状況に対応しており、会議室Aのデータ通信端末及び会議室Bのデータ通信端末が10人の利用者が所持する利用者端末と通信を行った結果を示す。第1の記憶部1022Aに格納される利用者情報には、第1の信号の信号強度が含まれている。信号強度は、例えば、5段階に分類されており、信号強度5が一番高い状態を示す。第1の分析部1021Aは、この信号強度に基づいて、それぞれの利用者端末がどのエリアに存在しているのかを分析することができる。
【0085】
例えば、
図8の表には、第2の識別情報#2001Aで特定されるエリア(会議室A)に設置されたデータ通信端末が、利用者端末から発信される第1の信号を受信したときの信号強度が5段階で示されており、第1の識別情報#100001~#100007で特定される利用者端末が発信された第1の信号の信号強度が5であり、第1の識別情報#100008~#1000010で特定される利用者端末から発信された第1の信号の信号強度が2であることを示す。一方、第2の識別情報#2001Bで特定されるエリア(会議室B)に設置されたデータ通信端末では、第1の識別情報#100001~#100007で特定される利用者端末が発信された第1の信号の信号強度が2であり、第1の識別情報#100008~#1000010で特定される利用者端末から発信された第1の信号の信号強度が5であることを示す。第1の分析部1021Aは、これらのデータを比較して第1の信号の信号強度の強弱により利用者が滞在するエリアを特定する。すなわち、第1の識別情報#100001~#100007で特定される利用者端末を所持する第1から第7の利用者が会議室Aに在室し、第1の識別情報#100008~#1000010で特定される利用者端末を所持する第8から第10の利用者が会議室Bに在室していると判断することができる。
【0086】
4-3.濃厚接触者の判定
上記で説明したように、第1の分析部1021Aの機能によれば、第1の識別情報に基づいて特定の利用者端末150を選定(すなわち、第1の利用者を選定)し、その利用者端末150の移動経路を知ることができる。また、その結果を基にして、特定の利用者端末150が存在するエリアに、同じ時間帯に存在した他の利用者端末(すなわち、第1の利用者以外の他の利用者)を検索することができる。それにより、特定の利用者に対し、この利用者と濃厚接触した他の利用者を判定することができる。
【0087】
図9は、濃厚接触者を判定するフローチャートを示す。まず、第1の分析部1021Aは、第1の記憶部1022Aに格納されている複数の第1の識別情報の中から特定の第1の識別情報を選択する(S450)。この処理は、特定の利用者端末を選定する作業である。次に、参照したい期間を設定する(S452)。参照期間は、第1の記憶部1022Aに格納された時刻情報に対応付けられて、データを読み出す範囲が特定される。
【0088】
そして、第1の分析部1021Aが、参照期間内における特定の第1の識別情報を含む利用者情報を第1の記憶部1022Aから読み出し、上記で説明したように、第1の識別情報に基づいて、特定の利用者端末(すなわち、特定の利用者)の時間ごとの位置を特定する(S454)。続いて、第1の分析部1021Aは、特定の利用者端末(特定の利用者)の行動履歴を作成する(S456)。例えば、
図10に示すように、監視対象空間200を表す地図上に第1の利用者の移動経路を時刻とともに表示する。以上のようにして、特定の利用者の行動履歴を作成することができる。また、
図11に示すように、時間軸に基づいて、特定の利用者が特定の場所に滞在した位置を表示することができる。
【0089】
次に、第1の分析部1021Aは、第1の記憶部1022Aに格納された利用者情報を用いて、特定の利用者と同じエリアに同じ時間帯に存在した他の利用者を検索する(S458)。特定の利用者の行動範囲が特定されているので、この処理では、特定のエリアに対する検索、又は特定の利用者が滞在した全てのエリアに対する検索をすることができる。
【0090】
そして、特定の利用者が滞在したエリアに、同じ時間帯に滞在した他の利用者が抽出されたとき、当該他の利用者を特定の利用者との濃厚接触者と判定することができる。
図11に示すように、特定の利用者に対する濃厚接触者を、視覚化して表示することができる。
図11に示す例では、利用者Aに対して、利用者Bが、9時00分から10時00分の時間帯において、同じ会議室Aに在室しており、濃厚接触者と判断される。また、利用者Cは、10時00分から11時30分の時間帯において、利用者Aと共に研修室Aに在室しており、濃厚接触者と判断される。
【0091】
このように、本実施形態によれば、利用者情報(利用者端末の位置を特定する情報とその時刻情報)を用いることで、事後的に特定の利用者の行動経路を特定することができ、同じ時間帯に同じ場所にいた他の利用者を特定することができる。
【0092】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る情報提供システム100は、利用者端末150を識別する第1の識別情報と、利用者端末150と通信を行ったデータ通信端末104の第2の識別情報を取得することにより、その時点における監視対象空間の密集・密接状態を判断して警報及び警告を利用者に認知させることができ、また、同時に監視対象空間の密閉状態を判断して警報及び警告を利用者に認知させることができる。これにより、利用者の自発的な移動や換気を促すことができ、濃厚接触者は発生する頻度を低減することができる。
【0093】
本明細書に開示される例示的な実施形態は、情報提供システム、情報提供方法だけでなく、以下の付記として示されるコンピュータプログラムによっても実現される。
【0094】
[付記1]
1つ以上の利用者端末から発信される第1の識別情報を含む第1の信号と、環境センサの測定データを含む第2の信号と、を受信する少なくとも1つのデータ通信端末と、前記データ通信端末と通信ネットワークで接続される情報処理装置と、を含む情報提供システムにおいて実行されるコンピュータプログラムであって、
前記情報処理装置に、
前記データ通信端末が前記第1の信号を受信することで得られる、前記第1の識別情報、前記第1の信号の受信時刻、及び前記第1の信号の信号強度と、前記データ通信端末を識別する第2の識別情報と、が対応付けられた利用者情報を記憶させる第1の記憶機能と、
前記データ通信端末が前記第2の信号を受信することで得られる、前記測定データ、及び前記第2の信号の受信時刻と、前記第2の識別情報と、が対応付けられた環境情報を記憶させる第2の記憶機能と、
前記利用者情報から、特定のエリアに、現在存在する、前記1つ以上の利用者端末の数を特定する分析機能と、
前記環境情報から、前記特定のエリアの、現在の、空気の状態を分析し、
前記第1の分析部及び前記第2の分析部の分析結果に基づいて、密集状態及び密閉状態を判定する判定機能と、
前記判定部の判定結果に基づいて密集状態及び密閉状態を解消するためのメッセージを出力する機能と、を実現させる
ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【0095】
[付記2]
前記第1の記憶部に前記利用者情報を経時的に格納するように制御し、前記第2の記憶部が前記環境情報を経時的に格納するように制御する、付記1に記載のコンピュータプログラム。
【0096】
[付記3]
前記第1の分析部が、前記1つ以上の利用者端末から選ばれた1つの第1の利用者端末を選定し、前記第1の記憶部に格納された前記利用者情報に基づいて、前記第1の利用者端末の導出するように機能させる、付記2に記載のコンピュータプログラム。
【0097】
[付記4]
前記第1の分析部が、前記1つ以上の利用者端末の中から前記第1の利用者端末以外の第2の利用者端末を選定し、前記第1の記憶部に格納された前記利用者情報に基づいて、前記第2の利用者端末が、前記第1の利用者端末と同じ時間帯に同じエリアに存在したか否かを分析するように機能させる、付記3に記載のコンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0098】
100:情報提供システム、102:情報処理装置、10201:プロセッサ、10202:メモリ、10203:ストレージ、10204:入出力I/F、10205:通信I/F、1021:分析部、1021A:第1の分析部、1021B:第2の分析部、10211:密集・密接状態分析機能、10212:密閉状態分析機能、10213:移動経路追跡機能、1022A:第1の記憶部、1022B:第2の記憶部、1023:判定部、10231:密集・密接状態判定機能、10232:密閉状態判定機能、10233:濃厚接触者判定機能、1024:情報提供部、10241:警報出力機能、102411:警報音出力機能、102412:警報灯駆動機能、10242:警告表示機能、102421:換気推奨表示機能、102422:移動推奨表示機能、102423:隔離確保推奨表示機能、1025:送受信部、1026:表示部、10261:第1の警告表示、10262:第2の警告表示、10263:第3の警告表示、104:データ通信端末、10401:プロセッサ、10402:メモリ、10403:ストレージ、10404:通信回路、1042:送受信部、1044:信号強度検出部、1046:識別情報記憶部、1048:時刻設定部、106:環境センサ、10601:マイクロコンピュータ、10602:センサ素子、10603:出力回路、1062:検出部、1064:制御部、1066:出力部、150:利用者端末、15001:プロセッサ、15002:メモリ、15003:ストレージ、15004:入出力I/F、15005:通信回路、15006:ディスプレイ、15007:バッテリ、1501:通信部、1502:識別情報記憶部、1503:データ記憶部、1504:表示部、1505:音声出力部、152:通信ネットワーク、154:端末、200:対象空間、300:利用者