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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132536
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】藻類培養装置および藻類培養方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230914BHJP
   C12M 1/18 20060101ALI20230914BHJP
   C12N 1/12 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C12M1/00 E
C12M1/18
C12N1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037911
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 裕一郎
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA08
4B029BB04
4B029BB05
4B029CC02
4B029CC08
4B029DG08
4B029HA02
4B065AA83X
4B065AA84X
4B065AA85X
4B065BC41
4B065CA41
4B065CA43
4B065CA49
(57)【要約】
【課題】小さな占有面積で藻類の大量培養を可能にするとともに、大量に培養した藻類を自動かつ高密度で収穫することを可能にする藻類培養装置および藻類培養方法を提供する。
【解決手段】二酸化炭素を含む気体中での光独立栄養条件で藻類を培養する藻類培養装置1であって、細胞または微生物個体を表面に付着させる2枚以上の板状発光体10と、板状発光体の表面に付着した細胞または微生物個体に対して、細胞の維持増殖に必要な元素を含む培養水を供給する培養水供給機構として、培養水供給装置12と、板状発光体10の表面で増殖した藻類を表面から剥離して装置下部に落下させるための剥離機構として、例えばスクレーパ14と、を備え、2枚以上の板状発光体10が気相空間を介して隣接して略平行に、かつ培養面が向い合わせとなるように配置されている、藻類培養装置1である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含む気体中での光独立栄養条件で藻類を培養する藻類培養装置であって、
細胞または微生物個体を表面に付着させる2枚以上の板状発光体と、
前記板状発光体の表面に付着した前記細胞または微生物個体に対して、細胞の維持増殖に必要な元素を含む培養水を供給する培養水供給機構と、
前記板状発光体の表面で増殖した藻類を表面から剥離して装置下部に落下させるための剥離機構と、
を備え、
前記2枚以上の板状発光体が気相空間を介して隣接して略平行に、かつ培養面が向い合わせとなるように配置されていることを特徴とする藻類培養装置。
【請求項2】
請求項1に記載の藻類培養装置であって、
前記板状発光体は、円形もしくは多角形の平板形状または円錐台形状を有し、前記板状発光体の板面に垂直な中心軸の周りに回転可能であり、
前記剥離機構は、前記板状発光体の間の前記気相空間に固定されたスクレーパ、または、前記板状発光体の間の前記気相空間に圧力流体を噴出可能な圧力流体噴出機構であることを特徴とする藻類培養装置。
【請求項3】
請求項1に記載の藻類培養装置であって、
前記板状発光体は、円形もしくは多角形の平板形状または円錐台形状を有し、
前記剥離機構は、前記板状発光体の間の前記気相空間を旋回移動可能なスクレーパ、または、前記板状発光体の間の前記気相空間に噴出方向を変えながら圧力流体を噴出可能な圧力流体噴出機構であることを特徴とする藻類培養装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の藻類培養装置であって、
前記培養水供給機構は、前記培養水を霧状または水滴状で、常時または間欠的に供給する機構であることを特徴とする藻類培養装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の藻類培養装置であって、
前記板状発光体は、LED光源で発光する導光板、またはLED光源からの光を透過する光透過板であることを特徴とする藻類培養装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の藻類培養装置であって、
前記板状発光体を格納するチャンバーと、
二酸化炭素含有ガスを前記チャンバー内に供給するガス供給機構と、
をさらに備えることを特徴とする藻類培養装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の藻類培養装置であって、
前記剥離機構によって装置下部に落下した藻類を収集する収集機構をさらに備えることを特徴とする藻類培養装置。
【請求項8】
二酸化炭素を含む気体中での光独立栄養条件で藻類を培養する藻類培養方法であって、
細胞または微生物個体を表面に付着させる2枚以上の板状発光体を、気相空間を介して隣接して略平行に、かつ培養面が向い合わせとなるように配置し、
前記板状発光体の表面に付着した前記細胞または微生物個体に対して、細胞の維持増殖に必要な元素を含む培養水を供給する培養水供給機構によって、前記培養水を供給し、
前記板状発光体の表面で増殖した藻類を表面から剥離して装置下部に落下させるための剥離機構によって、前記増殖した藻類を剥離する、
ことを特徴とする藻類培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光独立栄養条件で増殖する藻類を培養し、収穫する藻類培養装置および藻類培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温暖化ガスである二酸化炭素の回収再利用技術の一つとして、光合成を行う水界の微生物、いわゆる微細藻類を培養し、その微細藻類に二酸化炭素を吸収させて有機物に変え、その有機物を原料としてデンプン等の多糖類、アスタキサンチンやルテイン等の色素、トリグリセリド等の脂質等の各種の有価物を抽出し、製造することが行われている。近年、温暖化ガス排出抑制の観点から、藻類の大量培養による二酸化炭素の吸収と培養した藻類を原料とした有価物の製造が一層促進されている。
【0003】
原料となる藻類の生産は、商用レベルの規模では、主に、広大な池、水路等のオープンポンド、または透光性素材のパイプ、水槽で培養するフォトバイオリアクターで行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
これらの設備は、藻類の増殖に必要な窒素、リン等の栄養素を含んだ培養水中に藻類を生息させ、二酸化炭素を大気から培養水に溶け込ませ、太陽光下で光合成を行わせて藻類を増殖させる液相培養と言われるものである。設備の製作が比較的容易であるため、クロレラやスピルリナの商業生産において広く利用されている。
【0005】
しかし、オープンポンドの場合、藻類が増殖すると培養に必要な太陽光が水面から数十mmまでしか届かず、かつ、年間の日照時間が長く、気温が高く、培養水の水温が藻類の増殖に適した温度に保持しやすい熱帯地域での培養でも1日1mあたり10~20gDW(乾燥重量)程度の生産性であり、トン/年~数百トン/年の規模の工業レベルで藻類由来の目的物質を生産しようとすると、藻類生産に広大な土地を必要とし、立地に大きな制約を受ける。その他、天候等の影響や培養目的外の微生物の混入による目的藻類の増殖阻害によって目的藻類の生産量が安定化しない等の問題もある。
【0006】
また、透光性素材のパイプ、水槽で培養するフォトバイオリアクターは、培養水あたりの受光面積は、水平面のみの受光であるオープンポンドよりも大きくとることができ、培養目的外の微生物の混入による目的藻類の増殖阻害を抑制して、より安定的な生産が可能である。
【0007】
しかし、パイプや水槽の表面に均等に太陽光を当て続けようとすると、隣り合うパイプや水槽の間隔を大きく開ける必要があり、その間隔を取るために必要な土地の面積まで含めた設備面積あたりの生産性は、オープンポンドの1~5倍程度に留まる。
【0008】
さらに、オープンポンドやフォトバイオリアクターの液相培養では、培養水中の藻類密度が、増殖が進んだ収穫時でもせいぜい5gDW/L程度と希薄である。培養した藻類を製品原料として利用する際、濃縮し、遠心脱水機等で培養水を分離するが、密度が希薄であるため、容量の大きな濃縮設備や脱水機等が必要となり、設備費を押し上げるという問題もある。
【0009】
上記のような、藻類の液相培養の課題を解決する新たな培養方法、培養装置として「担持体培養」がある。担持体培養とは、藻類が付着しやすい吸水性の素材で構成された担持体の表面に藻類のバイオフィルムを形成させ、そこに担持体への水の浸透または担持体上部からの給水によって、水および栄養素を供給することによって、気相中で藻類を培養する技術である。この技術は、垂直高さ方向に培養面を増やすことができるため、培養設備占有面積あたりの培養面積を大きくとることができる。その上、培養に必要な水分量が液相培養に比べて非常に少なくて済み、培養した藻類を水分の少ない状態で収穫することができる、ガス交換(二酸化炭素供給および酸素除去)効率が非常に高く、液相培養に比べて単位培養面積あたりの増殖速度が高い等の利点があり、少ない設備面積で藻類の大量生産を実現しうる可能性を有する。
【0010】
この担持体培養の方法として、次のような技術が開示されている。
【0011】
例えば、特許文献2には、垂直方向に延在する1あるいは複数の藻類担体と、藻類担体の上部から培養液を供給する培養液供給手段とを具備する藻類培養装置が開示されている。藻類担体は発泡ポリエステルやポリウレタンの板状の素材であり、複数の板状担体を垂直に配置したものが開示されている。
【0012】
しかし、この技術は光源として太陽光の供給であり、太陽光が十分照射されるように板状の担体を配置するため、担体の培養面の集積化による「培養面積/設備占有面積」の向上には限界がある。また、培養された藻類の収穫は板状の担持体を外して圧搾するとされ、小規模の装置であればその都度外して収穫することも可能であるが、自動化が難しく、大型の装置になると実現性に乏しいという問題がある。
【0013】
非特許文献1には、下排水のBOD成分の微生物による分解処理に用いられるような回転円板装置を用い、その円板を担体として藻類(クロレラ)を培養する技術が開示されている。この技術は、一つの回転軸に接続され、垂直に配置されたポリカーボネート製担体円板を培養面とし、栄養素を含んだ水に円板下部を浸漬し、軸によって円板を回転させることによって培養面の藻類に水と栄養素を供給するものである。光合成に必要な光はLED光を円板に充てることによって供給し、大気中から二酸化炭素を藻類に直接取り込むものである。この技術は、垂直に配置された担体円板を培養面とするため、複数の円板を一つの軸に接続し、並列に配置すれば、設備占有面積に対して藻類の培養面積を大きくとることができる。また、担体の表面にスクレーパを当て、円板を回転させることによって培養した藻類を収穫することができ、自動化も容易である。
【0014】
しかし、培養面への光の供給が外部からのLED光の照射によるため、数m径の大きな円板の場合、隣り合う円板の間隔を狭まると影ができて培養面全体に十分かつ均一に光が当たらなくなるため、設備占有面積あたりの培養面積を十分に増やせないという課題がある。また、装置下部には円板に栄養素を含む水を供給するための水槽があるが、円板を回転させると培養した藻類が水中で剥離して、水分の多い状態で回収しなければならず、藻類と水分を分離するための大きな分離装置(遠心脱水機等)が必要になるという課題もある。
【0015】
並列に配置した複数の板状担体の間に、光合成に必要な光を十分供給する方法として、特許文献3に開示された方法がある。この技術は、複数の透光性を有する板状部材(または1以上の透光性を有する部材と1以上の透光性を有さない板状部材)を用いて形成される単層または複層の空間(間隔1~2mm)の内壁を担持体とし、その空間に培養液を満たして藻類を培養するものである。光源はLED等であり、積層された部材の片側または両側から照射する。この技術では、培養面を集積化し、「培養面積/設備占有面積」を高くとることができる。
【0016】
しかし、光源の照射方向に対して透光性板状担体とそれらによる空間の積層数が少なければ、空間内で藻類が繁殖しても光源から比較的遠い培養空間でも光量が確保されるが、大規模装置で積層数が大きい場合、藻類が繁殖し始めると光源から遠い空間には光が十分に届かず、藻類が十分に増殖できないという問題がある。また、空間間隔が狭いため、スクレーパ等での物理的な剥離、収穫ができず、藻類塊による閉塞も生じやすいため、培養液を加圧して空間から押し出す必要があり、高密度で培養された藻類を収穫時に培養液で薄めてしまうという問題もある。
【0017】
すなわち、担持体培養は、少ない設備面積で藻類の大量生産を実現しうる可能性を有する技術ではあるが、各培養面への均一かつ効率的な光量の供給を行える培養面の集積化、すなわち「培養面積/設備占有面積」を向上させるとともに、各培養面からの藻類バイオマスを高密度のまま自動収穫する点で、依然として課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2021-083425号公報
【特許文献2】特開2012-175964号公報
【特許文献3】特開2019-033678号公報
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Biofilm Growth of Chlorella Sorokiniana in a Rotating Biological Contactor Based Photobioreactor, W. Blanken, M. Janssen, M. Cuaresma, Z. Libor T. Bhaiji, R. H. Wijffels, Biotechnology and Bioengineering, 2014, vol.111, pp.2436-2445
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、小さな占有面積で藻類の大量培養を可能にするとともに、大量に培養した藻類を自動かつ高密度で収穫することを可能にする藻類培養装置および藻類培養方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、二酸化炭素を含む気体中での光独立栄養条件で藻類を培養する藻類培養装置であって、細胞または微生物個体を表面に付着させる2枚以上の板状発光体と、前記板状発光体の表面に付着した前記細胞または微生物個体に対して、細胞の維持増殖に必要な元素を含む培養水を供給する培養水供給機構と、前記板状発光体の表面で増殖した藻類を表面から剥離して装置下部に落下させるための剥離機構と、を備え、前記2枚以上の板状発光体が気相空間を介して隣接して略平行に、かつ培養面が向い合わせとなるように配置されている、藻類培養装置である。
【0022】
前記藻類培養装置において、前記板状発光体は、円形もしくは多角形の平板形状または円錐台形状を有し、前記板状発光体の板面に垂直な中心軸の周りに回転可能であり、前記剥離機構は、前記板状発光体の間の前記気相空間に固定されたスクレーパ、または、前記板状発光体の間の前記気相空間に圧力流体を噴出可能な圧力流体噴出機構であることが好ましい。
【0023】
前記藻類培養装置において、前記板状発光体は、円形もしくは多角形の平板形状または円錐台形状を有し、前記剥離機構は、前記板状発光体の間の前記気相空間を旋回移動可能なスクレーパ、または、前記板状発光体の間の前記気相空間に噴出方向を変えながら圧力流体を噴出可能な圧力流体噴出機構であることが好ましい。
【0024】
前記藻類培養装置において、前記培養水供給機構は、前記培養水を霧状または水滴状で、常時または間欠的に供給する機構であることが好ましい。
【0025】
前記藻類培養装置において、前記板状発光体は、LED光源で発光する導光板、またはLED光源からの光を透過する光透過板であることが好ましい。
【0026】
前記藻類培養装置において、前記板状発光体を格納するチャンバーと、二酸化炭素含有ガスを前記チャンバー内に供給するガス供給機構と、をさらに備えることが好ましい。
【0027】
前記藻類培養装置において、前記剥離機構によって装置下部に落下した藻類を収集する収集機構をさらに備えることが好ましい。
【0028】
本発明は、二酸化炭素を含む気体中での光独立栄養条件で藻類を培養する藻類培養方法であって、細胞または微生物個体を表面に付着させる2枚以上の板状発光体を、気相空間を介して隣接して略平行に、かつ培養面が向い合わせとなるように配置し、前記板状発光体の表面に付着した前記細胞または微生物個体に対して、細胞の維持増殖に必要な元素を含む培養水を供給する培養水供給機構によって、前記培養水を供給し、前記板状発光体の表面で増殖した藻類を表面から剥離して装置下部に落下させるための剥離機構によって、前記増殖した藻類を剥離する、藻類培養方法である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によって、小さな占有面積で藻類の大量培養を可能にするとともに、大量に培養した藻類を自動かつ高密度で収穫することを可能にする藻類培養装置および藻類培養方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態に係る藻類培養装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る藻類培養装置の他の例を示す概略構成図である。
図3】本発明の実施形態に係る藻類培養装置の他の例を示す概略構成図である。
図4】本発明の実施形態に係る藻類培養装置の他の例を示す概略構成図である。
図5】本発明の実施形態に係る藻類培養装置における円板形状の板状発光体の一例を示す概略図であり、(a)が平面図、(b)が断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る藻類培養装置における円錐台形状の板状発光体の一例を示す概略図であり、(a)が平面図、(b)が断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る藻類培養装置におけるスクレーパの配置の一例を示す概略図であり、(a)が平面図、(b)が断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0032】
本発明の実施形態に係る藻類培養装置の一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。
【0033】
図1に示す藻類培養装置1は、二酸化炭素を含む気体中での光独立栄養条件で藻類を培養する藻類培養装置である。藻類培養装置1は、細胞または微生物個体を表面に付着させる2枚以上の板状発光体10と、板状発光体10の表面に付着した細胞または微生物個体に対して、細胞の維持増殖に必要な元素を含む培養水52を供給する培養水供給機構として、培養水供給装置12と、板状発光体10の表面で増殖した藻類54を表面から剥離して装置下部に落下させるための剥離機構として、スクレーパ14と、を備える。
【0034】
藻類培養装置1は、板状発光体10を格納するチャンバー22と、二酸化炭素含有ガスをチャンバー内に供給するガス供給機構として、二酸化炭素含有ガス供給配管38,40と、剥離機構によって装置下部に落下した藻類を収集する収集機構として、収集装置24と、をさらに備えてもよい。藻類培養装置1は、板状発光体10にLED光等の光を供給する光供給機構として、LED光供給装置18と、収集した藻類を収集する収集槽26と、収集した藻類を貯留する貯留槽28と、大気等の二酸化炭素含有ガス中の二酸化炭素を濃縮する二酸化炭素濃縮機構として、二酸化炭素濃縮装置32と、LED光供給装置18等の電力を供給する電力供給機構として、太陽光パネル34等をさらに備えてもよい。
【0035】
図1の藻類培養装置1において、チャンバー22内に、2枚以上の板状発光体10が、回転駆動装置16に一端が接続された一本の軸20にすべての板状発光体10の中心部が接続され回転可能に配置されている。2枚以上の板状発光体10は、気相空間を介して隣接して略平行に、かつ培養面(藻類付着面)が向い合わせとなるように配置されている。軸20の他端側には、LED光供給装置18が設置されている。チャンバー22内の板状発光体10の上方には、培養水供給装置12が各板状発光体10の間から培養水52を供給することができるように配置されている。各板状発光体10の間の気相空間には、スクレーパ14が例えば二酸化炭素含有ガス供給配管40に固定されて配置されている。板状発光体10の下方には、収集装置24が配置されている。収集装置24は、例えば、駆動装置により装置下部で動くスクリーンコンベアであり、落下してきた藻類54を捕捉し、収集槽26まで藻類54を移送できるようになっている。収集槽26の出口と貯留槽28の入口とは、バルブ30を介して藻類排出配管46により接続されている。
【0036】
二酸化炭素濃縮装置32のガス入口には、原料ガス供給配管36が接続され、二酸化炭素濃縮装置32のガス出口には、二酸化炭素含有ガス供給配管38の一端が接続され、二酸化炭素含有ガス供給配管38の他端は、二酸化炭素含有ガス供給配管40の一端側に接続されている。チャンバー22の排ガス出口と二酸化炭素濃縮装置32の排ガス入口とは、排ガス供給配管42により接続されている。二酸化炭素濃縮装置32の排ガス出口には、排ガス排出配管44が接続されている。
【0037】
チャンバー22の外部の上部には、少なくとも1つの太陽光パネル34が設置されている。太陽光パネル34は、LED光供給装置18等に電力を供給できるように配線されている。
【0038】
本実施形態に係る藻類培養方法および藻類培養装置1の動作について説明する。
【0039】
各板状発光体10の一方の表面または両方の表面には、細胞または微生物個体が付着されている。太陽光パネル34から供給された電力によって、LED光供給装置18から発光されたLED光が、軸20を通して各板状発光体10から細胞または微生物個体に照射される(光照射工程)。一方、板状発光体10の表面に付着した細胞または微生物個体に対して、細胞の維持増殖に必要な元素を含む培養水52が、培養水供給装置12によって例えば霧状または水滴状で、常時または間欠的に供給される(培養水供給工程)。
【0040】
二酸化炭素を含む原料ガスが、原料ガス供給配管36を通して二酸化炭素濃縮装置32に供給される。二酸化炭素濃縮装置32において、二酸化炭素が濃縮されて得られた二酸化炭素含有ガス50が二酸化炭素含有ガス供給配管38、二酸化炭素含有ガス供給配管40、スクレーパ14に設けられた二酸化炭素含有ガス供給配管(図示せず)を通して、チャンバー22内に供給される(二酸化炭素含有ガス供給工程)。
【0041】
各板状発光体10の表面において、二酸化炭素を含む気体中での光独立栄養条件で、藻類が培養される(培養工程)。回転駆動装置16により板状発光体10が回転駆動され、板状発光体10の表面で増殖した藻類は、スクレーパ14によって剥離され、装置下部に落下されて収穫される(剥離工程)。剥離、落下された藻類54は、駆動装置により装置下部で動くスクリーンコンベア等の収集装置24によって捕捉され、収集槽26まで移送され、収集される(収集工程)。収集槽26で収集された藻類54は、バルブ30が開の状態で藻類排出配管46を通して収集槽26から貯留槽28へ移送され、貯留、回収される(回収工程)。
【0042】
本実施形態に係る藻類培養方法および藻類培養装置によれば、小さな占有面積で藻類の大量培養を可能にするとともに、大量に培養した藻類を自動かつ高密度で収穫することを可能にする。担持体を用いる藻類の培養において、板状の担持体自体をLED等の人工光で発光させる板状発光体10を用いることによって、板状発光体10を狭い間隔で配置してもすべての板状発光体10の各面において光量を確保することができる。培養に必要な栄養素を含む培養水は、例えば霧状または水滴状で板状発光体10の各培養面に供給し、狭い培養空間にほぼ均等に行きわたらせることができる。二酸化炭素(CO)も高濃度のガスとして供給することができる。増殖した藻類は、スクレーパ等の剥離機構によって板状発光体10の各培養面から引き剥がし、装置下部へと落下させて、高密度で収穫することができる。
【0043】
本実施形態に係る藻類培養方法および藻類培養装置によれば、バイオ燃料、健康食品、飼料等の原料となる藻類を、小さな占有面積で、藻類の大量培養を可能にするとともに、その大量に培養した藻類を自動で、高密度で収穫し収集することを可能にする。藻類生産量が日照量、気温、天候によらず安定し、かつ、設備占有面積も小さいため、立地の制約が少なく、生産設備を配置することができる。化石燃料由来の燃焼排ガス等の原料ガスを二酸化炭素源として直接利用することができ、ボイラーを有する工場等において二酸化炭素排出抑制に用いることができる。
【0044】
培養対象の光合成微生物または藻類(以下、藻類)は、その種類に限定はないが、その例として以下のいずれかの生物群に属する種の野生株または変異株が挙げられる。藻類は、例えば、藍藻網のスピルリナ、ノストック、アファノテセ、緑藻網のドナリエラ、ヘマトコッカス、セネデスムス、トレボウクシア藻網のクロレラ、ボツリオコッカス、シュードコリシスティス、プラシノ藻網のテトラセルミス、紅藻網のポルフィリディウム、シアニディオシゾン、シアニディウム、ガルディエリア、珪藻網のキートケロス、ハプト藻網のイソクリシス、パブロバ、真正眼点藻網のナンノクロロプシス、タラシオシラ、フェオダクティルム、フィツリフェラ、ユーグレナ藻網のユーグレナ等が挙げられる。
【0045】
板状発光体10の表面に付着した細胞または生物個体に対して、細胞の維持増殖に必要な元素を含む水(培養水)を供給する培養水供給機構である培養水供給装置12は、窒素、リン、硫黄、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、マンガン、亜鉛、モリブデン等を含み、培養する藻類の増殖に適したpHに調整された水(培養水)を板状発光体10の表面に付着した細胞または生物個体に供給できるものであればよく、特に制限はないが、板状発光体10の表面に略均一に分散する観点から、スプレーノズルで霧状またはシャワーノズルで水滴状にして、常時または間欠的に供給することが好ましい。板状発光体10の藻類培養面に残らず装置下部に落下した培養水は、例えば、装置下部の水槽(図示せず)に集められ、新しい培養水と混合され、その水槽からポンプ等によってスプレーノズルやシャワーノズル等に送られ、板状発光体10の表面に循環して供給されてもよい。
【0046】
藻類を表面に付着させる2枚以上の板状発光体10は、板状で発光するものであり、培養面が、それらが付着しやすく透光性のある素材、形状であるものであればよく、特に制限はない。板状発光体10は、例えば、LED光源で発光する導光板、またはLED光源からの光を透過する光透過板である。板状発光体10は、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ガラス、ポリスチレン、ウレタン等の透明な板の内部にLEDの光源を多数挿入したもの等が挙げられる。板状発光体10の培養面には、深さ2~5mm程度の突起を有する透明ウレタンシート等の樹脂シートを接着させたものであってもよい。例えば、図5に示すように、透明で板状のアクリル樹脂、ポリカーボネート、ガラス、ポリスチレン、ウレタン等により扇形状等に加工した導光板62の周縁部の少なくとも一部にLED光源が帯状に連なった光源64を付着させ、培養面66には深さ2~5mm程度の突起を有する透明ウレタンシート等の凹凸状透光性シート68を接着させたものが好ましい。これにより、板状発光体10の板厚を薄くすることができ、より多数の板状発光体10を並列させることができ、培養面積を大きくとることができる。
【0047】
光源は、400~700nmの範囲の一部または全部を含む波長を発するものである。特に、光合成効率の高い420~470nmの青色波長、および600~680nmの赤色波長のいずれか、または両方を含む範囲の波長を有するものが好ましい。420~470nmの範囲を含む波長を発する青色LED、および600~680nmの範囲を含む波長を発する赤色LEDのいずれか、または両方を板状発光体10の外周面に付着させてもよいし、板状発光体10の内部に封じてもよい。
【0048】
例えば、図5に示すように、板状発光体10のいずれか一方の培養面の一部(面積は培養面全体の例えば5~15%)は、突起がなく平坦な疎水性表面にすることによって、藻類が繁殖しないようにし、培養面の他の部分で藻類が増殖し、板状発光体10からの光をさえぎっても、光源64からの光70を外に出し、隣り合う板状発光体10の培養面上の藻類54に照射できるようにしてもよい。
【0049】
板状発光体10の培養面の一部には、藻類付着性の高いポリエチレン製等の繊維のより糸等の網で、網の太さ(糸経)は例えば2~5mm程度、網の目の間隔が例えば20~100mm程度の網(以下、繊維網)をかけてもよい。この繊維網は、あらかじめ水中培養された藻類を含む培養水中に浸漬し、藻類を網に付着させたものを、本装置で培養を開始する前に、板状発光体10の表面に固定すればよい。この繊維網を藻類増殖の起点にして板状発光体10の培養面全体に増殖させることによって、立ち上げ期間を短縮することができる。
【0050】
板状発光体10は、2枚以上が気相空間を介して隣接して平行に、かつ培養面が向かい合わせになるように配置される。向かい合う培養面の間隔は、装置水平面積に対して多くの培養面積をとることができるので狭いほどよいが、板状発光体10の間の気相部分に二酸化炭素を含むガスをできるだけ阻害なく拡散する等の観点から、20mm以上であることが好ましい。向かい合う培養面の間隔の上限は、例えば、200mm以下である。
【0051】
板状発光体10は、板状発光体10の板面に垂直な中心軸の周りに回転可能であり、剥離機構は、例えば、板状発光体10の間の気相空間に固定されたスクレーパ14、または、板状発光体10の間の気相空間に圧力流体を噴出可能な圧力流体噴出機構である。
【0052】
板状発光体10は、例えば、円形または4角形以上の多角形の平板形状、または円錐台形状であり、回転駆動装置16に接続した一本の軸20にすべての板の中心部が接続され回転可能に配置されればよい。回転する軸20の向きに特に制限はないが、略水平または略鉛直が好ましい。図1に示すように軸20が略水平の場合、板状発光体10は円形または4角形以上の多角形の平板が好ましく、その平板がその中心で軸20と略直角に接続し、略鉛直に配置されればよい。図2に示すように軸20が略鉛直の場合、板状発光体10は例えば円形または4角形以上の多角形の平板であり、その平板がその中心で軸20と略直角に接続し、略水平に配置されればよい。
【0053】
軸20が略鉛直の場合、板状発光体10は、例えば図6に示すように、平面のない円錐台形状でもよい。この場合、回転する軸が円錐台形の中心軸を貫くよう配置され、円錐台の上端または下端の円周部が支持部材によって、回転する軸と略直角に接続されればよい。
【0054】
スクレーパ14は、培養面で増殖した藻類を剥ぎ取る強度のあるものであればよく、特に制限はないが、例えば、支持棒にゴム板またはブラシ等が付帯し、ゴム板またはブラシ等が板状発光体10の藻類付着面に接するものである。板状発光体10が略鉛直に配された場合は、回転半径方向にスクレーパ14が配置されることが好ましく、板状発光体10が略水平に配置された場合は、回転半径方向に対して例えば30~60度の傾きをもってスクレーパ14が取り付けられることが好ましい。
【0055】
軸20を通した回転駆動装置16による板状発光体10の回転は、常時回転し続けてもよいが、培養面上に厚みを持って藻類群が増殖したときに、スクレーパ14で剥ぎ取った藻類54を板状発光体10の中心部または外縁に押し出して落下させられるだけの回転数だけ回転してもよい。
【0056】
板状発光体10は、チャンバー(覆蓋)22に格納され密閉されることが好ましい。また、大気、または大気より高い濃度で二酸化炭素を含有するガスをチャンバー22内に供給する機構(ガス供給機構)を付帯することが好ましい。
【0057】
板状発光体10をチャンバー22内に格納することによって、外気や降雨等による培養目的以外の藻類の混入とそれによる培養目的藻類の増殖阻害(コンタミネーション)を抑制することができ、外気温度の急激な変化や降雨等の外界の環境変化による増殖への悪影響を抑制することができる。
【0058】
藻類の増殖とともにチャンバー22内の気相中の二酸化炭素濃度が減少するため、ガス供給機構によって、チャンバー22内に二酸化炭素含有ガスを送り、板状発光体10の培養面間の気相中の二酸化炭素の濃度を高く保つことが好ましい。特に、増殖速度を高めるため、チャンバー22内には二酸化炭素濃度測定手段として二酸化炭素濃度計を設け、チャンバー22内の二酸化炭素濃度を例えば0.04~1%に保持することが好ましい。二酸化炭素含有ガスは、ブロワ、コンプレッサー等によってチャンバー22内に供給すればよいが、チャンバー22内の二酸化炭素濃度が前記の範囲に含まれる範囲内になるようにブロワ、コンプレッサー等の送風量を制御すればよい。
【0059】
二酸化炭素を含むガスは、例えば、空気であるが、化石燃料による燃焼排ガスであって、あらかじめ粉塵等を除去し、培養温度付近に冷却されたガスでもよい。
【0060】
チャンバー22には、排ガス排出配管が接続されてもよい。チャンバー22内のガスは排ガス排出配管を通して大気に放出してもよいが、二酸化炭素放出抑制の観点から、二酸化炭素の吸着材を充填した二酸化炭素吸収塔、または、図1に示すように、二酸化炭素ガスを他のガスと分離する膜を充填した膜モジュールを備える二酸化炭素濃縮装置32に通し、二酸化炭素以外の酸素、窒素等のガス成分は排ガス排出配管44を通して大気に放出、分離回収した二酸化炭素は二酸化炭素含有ガス供給配管38を通してチャンバー22内に返送することが好ましい。
【0061】
チャンバー22内の温度は、培養する藻類に応じて至適温度に調節すればよいが、例えば15~40℃の範囲に調節することが好ましい。温度調節は、チャンバー22内に供給する二酸化炭素含有ガスまたは培養水の温度、またはその両方を、熱交換器等を用いて行ってもよい。
【0062】
スクレーパ14により、板状発光体10の培養面から装置下部に落下した藻類を収集する収集機構として収集装置24を備えることが好ましい。
【0063】
収集装置24としては、図1に示すような駆動装置により装置下部で動くスクリーンコンベアの他に、回転駆動装置によって装置下部で旋回する第2のスクレーパであってもよい。
【0064】
駆動装置により装置下部で動くスクリーンコンベアは、例えば、板状発光体10の支持柱または回転する軸20が略水平に、板状発光体10が略鉛直に設置された場合に設置され、落下してきた藻類54の塊を捕捉し、収集槽26まで藻類54を移送する。藻類54を捕捉するスクリーンは、藻類54の塊は捕捉することができ、水は透過する目開きである布等であることが好ましい。
【0065】
回転駆動装置により装置下部で旋回する第2のスクレーパは、例えば、板状発光体10の支持柱または回転する軸20が略鉛直方向、板状発光体10が略水平に設置された場合に設置され、装置下部を旋回し、落下してきた藻類54の塊を装置下部中心へと収集する。装置下部中心の下にピットが設けられ、ピット内に藻類54が溜まったらポンプ等によって外部へと排出され、脱水設備等に移送される。第2のスクレーパは、例えば、支持梁にゴム板等が取り付けられたものであり、略鉛直の軸を中心に装置底面上を旋回し、旋回半径方向から例えば30~60度の傾きをもって取り付けられればよい。
【0066】
板状発光体10のLED光供給装置18、回転駆動装置16(例えば、モータ)、培養水供給のためのポンプ、二酸化炭素含有ガス供給のためのコンプレッサー等に動力を供給する電力供給機構には、公知の電源を用いることができる。太陽光パネル34等の太陽光発電で得られた電気、または、その電気を蓄電した蓄電池からの電気等、再生可能エネルギーを電源として用いることが好ましい。
【0067】
剥離機構として、板状発光体10の間の気相空間に固定されたスクレーパ14の代わりに、またはスクレーパ14とともに、板状発光体10の間の気相空間に圧力流体を噴出可能な圧力流体噴出機構を有していてもよい。このような構成の装置の一例を図3図4に示す。
【0068】
図3の藻類培養装置3において、チャンバー22内に、2枚以上の板状発光体10が、回転駆動装置16に一端が接続された一本の軸20にすべての板状発光体10の中心部が接続され回転可能に配置されている。2枚以上の板状発光体10は、気相空間を介して隣接して略平行に、かつ培養面が向い合わせとなるように配置されている。軸20の他端側には、LED光供給装置18が設置されている。チャンバー22内の板状発光体10の上方には、培養水供給装置12が各板状発光体10の間から培養水52を供給することができるように配置されている。各板状発光体10の間の気相空間に圧力流体58が噴出できるように、圧力流体噴出機構として圧力流体噴出装置56が配置されている。板状発光体10の下方には、収集装置24が配置されている。収集装置24は、例えば、駆動装置により装置下部で動くスクリーンコンベアであり、落下してきた藻類54を捕捉し、収集槽26まで藻類54を移送できるようになっている。収集槽26の出口と貯留槽28の入口とは、バルブ30を介して藻類排出配管46により接続されている。
【0069】
二酸化炭素濃縮装置32のガス入口には、原料ガス供給配管36が接続され、二酸化炭素濃縮装置32のガス出口には、二酸化炭素含有ガス供給配管38の一端が接続され、二酸化炭素含有ガス供給配管38の他端は、軸20のガス入口に接続されている。チャンバー22の排ガス出口と二酸化炭素濃縮装置32の排ガス入口とは、排ガス供給配管42により接続されている。二酸化炭素濃縮装置32の排ガス出口には、排ガス排出配管44が接続されている。
【0070】
チャンバー22の外部の上部には、少なくとも1つの太陽光パネル34が設置されている。太陽光パネル34は、LED光供給装置18等に電力を供給できるように配線されている。
【0071】
藻類培養装置3では、図1の藻類培養装置1と同様にして、各板状発光体10の表面において、二酸化炭素を含む気体中での光独立栄養条件で、藻類が培養される(培養工程)。回転駆動装置16により板状発光体10が回転駆動され、板状発光体10の表面で増殖した藻類は、圧力流体噴出装置56から噴出された圧力流体58によって剥離され、装置下部に落下されて収穫される(剥離工程)。剥離、落下された藻類54は、図1の藻類培養装置1と同様にして収穫、収集、回収される。
【0072】
剥離機構が圧力流体噴出機構の場合、圧力流体噴出機構は、例えば、圧力流体が空気または二酸化炭素を空気以上に含む気体であり、気体をコンプレッサー等で加圧し、配管等により加圧したまま噴出ノズルまで誘導し、板状発光体10の中心部または外周に固定された噴出ノズルから、板状発光体10の培養面に略平行に噴出するものであることが好ましい。
【0073】
板状発光体10は、円形または4角形以上の多角形の平板形状、または円錐形状であって支柱または支持壁に固定され、剥離機構は、例えば、板状発光体10の間の気相空間を旋回移動可能なスクレーパ14、または、板状発光体10の間の気相空間に噴出方向を変えながら圧力流体を噴出可能な圧力気体噴出機構を有するものであってもよい。
【0074】
2枚以上の板状発光体10が、その培養面が略鉛直になるように略水平に固定されて配置される場合、板状発光体10は、円形または4角形以上の多角形の平板が好ましい。また、2枚以上の板状発光体10が、その培養面が略鉛直になるように略水平に固定されて配置される場合、板状発光体10は、例えば、円形または4角形以上の多角形の平板である。この場合、板状発光体10は、平面のない円錐台形状でもよく、円錐台は上に凸でも、下に凸に設置されてもよい。スクレーパを有する場合、例えば、図7に示すように、スクレーパ14が回転アーム72を有する回転軸74に取り付けられており、スクレーパ14の回転軸74が円錐台形の中心軸を貫くよう配され、各板状発光体10は、その外縁部において支持柱や支持壁と接続し固定されればよい。板状発光体10は、円錐台の上端または下端の円周部が支持部材によって、回転軸と直角に接続されてもよい。圧力気体噴出機構を有する場合、円錐台形状の各板状発光体10は、例えば、板状発光体10の中心を通る支持柱に、上に凸に固定されればよい。
【0075】
スクレーパ14は、支持棒の一端が回転駆動装置に連結した軸に垂直に接続しており、支持棒にゴム板またはブラシ等が付帯し、ゴム板またはブラシ等が板状発光体10の藻類付着面に接し、かつ回転半径方向に対して例えば30~60度の傾きをもって取り付けられたものであることが好ましい。
【0076】
圧力気体噴出機構は、例えば、各板状発光体10の中心部付近または外縁付近に設置され、コンプレッサー等により加圧された空気または二酸化炭素ガスを大気以上に含むガスを、気体の圧力により周期的に噴出ノズル等による噴射方向を変えながら圧力気体を放出するものである。板状発光体10上の培養面に圧力気体が略平行に流れ、板状発光体10上で培養された藻類を剥ぎ取り、板状発光体10の外縁に押し出し、装置下部に落下させることができる。噴出ノズルは、例えば、各板状発光体10の中心を貫く支持柱付近に、板状発光体10の外周に向かって圧力気体を噴出するよう設置されればよい。
【符号の説明】
【0077】
1,2,3,4 藻類培養装置、10 板状発光体、12 培養水供給装置、14 スクレーパ、16 回転駆動装置、18 LED光供給装置、20 軸、22 チャンバー、24 収集装置、26 収集槽、28 貯留槽、30 バルブ、32 二酸化炭素濃縮装置、34 太陽光パネル、36 原料ガス供給配管、38,40 二酸化炭素含有ガス供給配管、42 排ガス供給配管、44 排ガス排出配管、46 藻類排出配管、50 二酸化炭素含有ガス、52 培養水、54 藻類、56 圧力流体噴出装置、58 圧力流体、60 第2スクレーパ、62 導光板、64 光源、66 培養面、68 凹凸状透光性シート、70 光、72 回転アーム、74 回転軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7