(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132567
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】瓦棒葺き屋根及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
E04D 3/366 20060101AFI20230914BHJP
E04D 3/367 20060101ALI20230914BHJP
E04D 3/36 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
E04D3/366 103B
E04D3/367 Z
E04D3/36 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037962
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】599038123
【氏名又は名称】株式会社石田組
(74)【代理人】
【識別番号】100106448
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 伸介
(72)【発明者】
【氏名】石田 侑嗣
(72)【発明者】
【氏名】中村 佳正
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AA02
2E108AS02
2E108BB04
2E108BN01
2E108CC02
2E108CC03
2E108CC04
2E108CC05
2E108CC07
2E108DF05
2E108DF09
2E108DF11
2E108ER07
2E108ER17
2E108GG09
2E108GG15
(57)【要約】
【課題】防水仕様を簡易に達成する瓦棒葺き屋根、その施工方法及び防水施工方法を提供する。
【解決手段】本発明は、底板部の両側端を上方に折り曲げた立ち上げ部を有する溝板を複数敷設した屋根板部、及び前記溝板を所定の間隔をもって敷設した状態で隣り合う前記立ち上げ部同志を一体に覆う瓦棒キャップを備えた瓦棒部を含む瓦棒葺き屋根であって、前記瓦棒キャップは、下方が解放した端部が前記溝板の立ち上げ部の側方に嵌合する構造を有し、かつポリウレア樹脂製であることを特徴とする瓦棒葺き屋根である。本発明はまた、上記瓦棒葺き屋根の施工方法及び防水施工方法を提供する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板部の両側端を上方に折り曲げた立ち上げ部を有する溝板を複数敷設した屋根板部、及び
前記溝板を所定の間隔をもって敷設した状態で隣り合う前記立ち上げ部同志を一体に覆う瓦棒キャップを備えた瓦棒部
を含む瓦棒葺き屋根であって、
前記瓦棒キャップは、下方が解放した端部が前記溝板の立ち上げ部の側方に嵌合する構造を有し、かつポリウレア樹脂製であることを特徴とする、前記瓦棒葺き屋根。
【請求項2】
前記瓦棒キャップの下方に開放した端部がさらに水平部を備え、前記水平部が前記溝板の底板部に密着していることを特徴とする、請求項1に記載の瓦棒葺き屋根。
【請求項3】
底板部の両側端を上方に折り曲げた立ち上げ部を有する溝板を複数敷設した屋根板部、及び
前記溝板を所定の間隔をもって敷設した状態で隣り合う前記立ち上げ部同志を一体に覆う瓦棒キャップを備えた瓦棒部
を含む瓦棒葺き屋根であって、前記瓦棒キャップは、下方が解放した端部が前記溝板の立ち上げ部の側方に嵌合する構造を有し、かつポリウレア樹脂製である前記瓦棒葺き屋根の施工方法であって、以下の工程:
予め、前記瓦棒キャップをポリウレア樹脂で作製する工程、及び
瓦棒葺き屋根を施工する現場で、前記瓦棒キャップを前記溝板の立ち上げ部に嵌装する工程
を含む、前記瓦棒葺き屋根の施工方法。
【請求項4】
底板部の両側端を上方に折り曲げた立ち上げ部を有する溝板を複数敷設した屋根板部、及び
前記溝板を所定の間隔をもって敷設した状態で隣り合う前記立ち上げ部同志を一体に覆う瓦棒キャップを備えた瓦棒部
を含む瓦棒葺き屋根であって、前記瓦棒キャップは、下方が解放した端部が前記溝板の立ち上げ部の側方に嵌合する構造を有し、かつポリウレア樹脂製である前記瓦棒葺き屋根の防水施工方法であって、以下の工程:
予め、前記瓦棒キャップをポリウレア樹脂で作製する工程、
瓦棒葺き屋根の施工現場で、前記瓦棒キャップを前記溝板の立ち上げ部に嵌装する工程、及び
前記瓦棒葺き屋根を前記瓦棒キャップごと防水塗料で塗装する工程
を含む、前記瓦棒葺き屋根の防水施工方法。
【請求項5】
前記防水塗料がポリウレア樹脂又はウレタン樹脂である、請求項4に記載の瓦棒葺き屋根の防水施工方法。
【請求項6】
底板部の両側端を上方に折り曲げた立ち上げ部を有する溝板を複数敷設した屋根板部、及び前記溝板を所定の間隔をもって敷設した状態で隣り合う前記立ち上げ部同志を一体に覆う瓦棒キャップを備えた瓦棒部を含む瓦棒葺き屋根のための瓦棒キャップであって、下方が解放した端部が前記溝板の立ち上げ部の側方に嵌合する構造を有し、かつポリウレア樹脂製であることを特徴とする、前記瓦棒キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瓦棒葺き屋根及びその工法に関し、より詳細には防水仕様を容易に達成する瓦棒葺き屋根、その施工方法及び防水施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般住宅、工場建屋等において、トタン、ガルバリウム鋼板(登録商標)等の金属板を緩勾配の屋根の斜面に沿って葺き、葺き板の間隔を瓦棒と呼ばれる角棒状の芯材を入れる瓦棒葺き屋根工法が知られている。複数の瓦棒は、
図1に示すように、屋根の棟から軒先に向かって平行に設けられる。より具体的には、屋根の垂木の上に屋根全面に渡って野地板を張り、固定され屋根全面にアスファルトルーフィング等で防水シートを敷設する。この防水シート上に、溝板と呼ばれる金属板を通し吊子の隙間が入る分だけ空けて、順次葺いてゆく。
【0003】
溝板は、
図6に示すように、両側端を上方に折り曲げて立ち上げ部を有する。この溝板の間隙に通し吊子を挿入する。通し吊子は、下地材に釘留め付けされる。従来のハゼ締め式の瓦棒葺きでは、
図6に示すように、通し吊子の上に瓦棒キャップを被せ、瓦棒キャップの下向き折曲げ部を内側に向けて折曲げることによって溝板及び通し吊子の水平部及び瓦棒キャップの水平部を一体に圧着し、圧着部をその基端を中心に下方に折曲げるようにして巻き締めて接合する。また、嵌合式の瓦棒葺きでは、瓦棒キャップのハゼ部と溝板の立ち上げ部及び通し吊子のハゼ部とを係合させる。
【0004】
従来の瓦棒葺き屋根は、ハゼ式、嵌合式のいずれも長期間の使用によって金属接合部等に錆が生じ、また金属の熱変形によって接合部が緩み易い。瓦棒の巻き締め部は、締めが緩いと隙間に雨水が侵入し易い。雨水が溝板の内側まで入り込むと、下地材に敷いた防水シートだけでは防水性を保てない。その結果、天井に雨漏りや結露が生じ、雨水の湿気によるカビが発生する。
【0005】
瓦棒葺き屋根の瓦棒等の接合部の防水性を高めるために、例えば特許文献1は、矩形状の金属板の対向する2辺を同一方向に折り曲げて折曲部を構成し、該金属板の折曲外側面に、両面または片面に粘着手段を介在可能な防水シートを貼付してなる金属板部材と、断面略コの字状の金属板の内面側に、当該防水シートの両面に粘着層を有する防水シートを貼付してなるキャップとを備え、前記金属板部材を平行配置して該平行配置間に吊子を配置した場合に、前記金属板部材と隣接する金属板部材との双方の前記折曲部に対し、前記キャップの内面側を向けて被せ、該キャップの両端部側に対し前記防水シートを挟み込みつつはぜ曲げを行うことを特徴とする瓦棒屋根葺材を開示する。この発明では、施工現場で瓦棒に防水シートを付設する作業の負担が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
瓦棒葺き屋根を確実に防水施工するためには、瓦棒葺き屋根の全体に防水塗装することが望ましい。従来の瓦棒葺き屋根は、特に瓦棒キャップの巻き締め部の構造が複雑なため、防水性能及び意匠性が吹付け職人の技術に左右され易い点で、防水施工が困難であって。
【0008】
そこで、本発明の目的は、防水処理を容易に達成する瓦棒葺き屋根、その施工方法及び防水施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を鋭意検討した結果、瓦棒キャップを特定の構造及び材質に限定することによって解決できることを見出した。すなわち、本発明は、底板部の両側端を上方に折り曲げた立ち上げ部を有する溝板を複数敷設した屋根板部、及び前記溝板を所定の間隔をもって敷設した状態で隣り合う前記立ち上げ部同志を一体に覆う瓦棒キャップを備えた瓦棒部を含む瓦棒葺き屋根であって、前記瓦棒キャップは、下方が解放した端部が前記溝板の立ち上げ部の側方に嵌合する構造を有し、かつポリウレア樹脂製であることを特徴とする、前記瓦棒葺き屋根を提供する。
【0010】
前記瓦棒キャップの下方に開放した端部がさらに水平部を備え、前記水平部が前記溝板の底板部に密着していることが好ましい。
【0011】
本発明はまた、底板部の両側端を上方に折り曲げた立ち上げ部を有する溝板を複数敷設した屋根板部、及び
前記溝板を所定の間隔をもって敷設した状態で隣り合う前記立ち上げ部同志を一体に覆う瓦棒キャップを備えた瓦棒部
を含む瓦棒葺き屋根であって、前記瓦棒キャップは、下方が解放した端部が前記溝板の立ち上げ部の側方に嵌合する構造を有し、かつポリウレア樹脂製である前記瓦棒葺き屋根の施工方法であって、以下の工程:
予め、前記瓦棒キャップをポリウレア樹脂で作製する工程、及び
瓦棒葺き屋根を施工する現場で、前記瓦棒キャップを前記溝板の立ち上げ部に嵌装する工程
を含む、前記瓦棒葺き屋根の施工方法を提供する。
【0012】
本発明はさらに、底板部の両側端を上方に折り曲げた立ち上げ部を有する溝板を複数敷設した屋根板部、及び
前記溝板を所定の間隔をもって敷設した状態で隣り合う前記立ち上げ部同志を一体に覆う瓦棒キャップを備えた瓦棒部
を含む瓦棒葺き屋根であって、前記瓦棒キャップは、下方が解放した端部が前記溝板の立ち上げ部の側方に嵌合する構造を有し、かつポリウレア樹脂製である前記瓦棒葺き屋根の防水施工方法であって、以下の工程:
予め、前記瓦棒キャップをポリウレア樹脂で作製する工程、
瓦棒葺き屋根の施工現場で、前記瓦棒キャップを前記溝板の立ち上げ部に嵌装する工程、及び
前記瓦棒葺き屋根を前記瓦棒キャップごと防水塗料で塗装する工程
を含む、前記瓦棒葺き屋根の防水施工方法を提供する。
【0013】
前記防水塗料はポリウレア樹脂又はウレタン樹脂であることが好ましい。
【0014】
本発明はまた、底板部の両側端を上方に折り曲げた立ち上げ部を有する溝板を複数敷設した屋根板部、及び前記溝板を所定の間隔をもって敷設した状態で隣り合う前記立ち上げ部同志を一体に覆う瓦棒キャップを備えた瓦棒部を含む瓦棒葺き屋根のための瓦棒キャップであって、下方が解放した端部が前記溝板の立ち上げ部の側方に嵌合する構造を有し、かつポリウレア樹脂製であることを特徴とする、前記瓦棒キャップを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の瓦棒葺き屋根及びそれに使用する瓦棒キャップは、下方が解放した端部が前記溝板の立ち上げ部に嵌合するという簡易な構造を有するので、その部分へのポリウレア樹脂を職人が吹き付け塗装する際に、職人の防水性や意匠性へのスキルや配慮に左右されることがなく、防水仕様を極めて容易に達成する。本発明の瓦棒キャップの構造は、従来の瓦棒キャップのような巻き締め部を備えないので、巻き締め部の隙間の毛細管現象による雨水の浸入も回避できる。たとえ隙間が生じても、瓦棒キャップのポリウレア樹脂製の撥水性が雨水の侵入を確実に防ぐ。
【0016】
本発明の瓦棒葺き屋根の施工方法では、ポリウレア製の瓦棒キャップを施工現場外、例えば屋内で作製しておくので、悪天候によって現場施工できないといった問題を回避できる。また、施工中に平面状の板金を強制的に曲げるような作業の必要がなく、瓦棒作業の設置作業自体が非常に簡便になる。施工後の浮き等の外観を悪くすることもなくなる。こうして、本発明の施工方法は、従来は天候依存し易く、施工が難しい屋根防水工事の部掛かりを大いに改善する。
【0017】
本発明の瓦棒葺き屋根の防水施工方法によれば、瓦棒部を含む屋根全体の防水性が格段に向上する。すなわち、瓦棒キャップを含む屋根全体が塗装困難な複雑構造を取らないので、現場で吹き付ける作業が従来よりも簡便で、職人の塗装のバラツキもなくなる。また、本発明では、従来は必須であった事前の屋根下地作業を省力化し、工期を短縮可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に従う瓦棒葺き屋根の外観斜視図である。
【
図2】本発明に従う一実施形態の瓦棒部の断面拡大図である。
【
図3】本発明に従う別の一実施形態の瓦棒部の断面拡大図である。
【
図4】本発明に従うさらに別の一実施形態である瓦棒部の断面拡大図である。
【
図5】本発明の瓦棒葺き屋根の瓦棒部の部品及びその組み立て順を示す図である。
【
図6】従来の瓦棒葺き屋根の瓦棒部の部品及びその組み立て順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、添付の図面を用いて本発明の実施の形態を示すが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。瓦棒葺き工法には、一般に、瓦棒部分の連結及び補強をする心木と呼ばれる角材を挿入して釘で固定した後、瓦棒キャップで包み込む心木有り瓦棒葺き工法と、心木に代わって通し吊子を設置する心木無し瓦棒葺き工法とに大別される。本発明は、心木有り工法と心木無し工法のいずれにも適用可能であるが、心木無し瓦棒葺き工法に基づいて説明する。
【0020】
図1に示すように、本発明の瓦棒葺き屋根の全体は、従来と同様に、溝板50で形成した屋根板部10と各溝板の間に所定間隔で設置される瓦棒部20からなる。本発明の瓦棒葺き屋根に必要な部品とその組み立て順を
図5に示す。
【0021】
図5において、屋根板部10を構成するために敷設される溝板50は、金属製であり、例えばガルバリウム鋼板(登録商標)、溶融亜鉛メッキ鋼板、塗装溶融亜鉛メッキ鋼板、ステンレス鋼板、塩化ビニール樹脂金属積層板、アルミニウム、アルミニウム合金板、チタン亜鉛合金板、銅板等が挙げられ、素材がアルミニウムと亜鉛で構成され、その表面がメッキ処理されたガルバリウム鋼板(登録商標)が汎用される。
【0022】
溝板50は、長方形板の底板部51を有する。溝板50の対向する二片は、底板部51から上方に略直角に折曲げられ、溝板の立ち上げ部52を形成する。各立ち上げ部52の上端は、さらに他端側に向けて折曲げられ、溝板の水平部53を形成する。
【0023】
溝板50を所定の間隔54で配置した時に隣り合う溝板50の立ち上げ部52同志が、後述する瓦棒部20の側面を構成し、前記立ち上げ部52から折り曲げられた溝板の水平部53が後述する通し吊子60の水平部の支持部となる。
【0024】
隣り合う溝板の立ち上げ部52の間には、通し吊子60が配設される。通し吊子は、金属製であり、上方が解放した断面が略コの字状の形状を有する。
【0025】
通し吊子60の両側面の上方は、さらに外方に水平に折り曲げられ、水平部61を形成する。この通し吊子の水平部61と前記溝板の水平部53とが重ね合わせられる。この重ね合った水平部同志は、一体に下方に折り曲げられ、それぞれ、溝板の折り返し部55と通し吊子の折り返し部63を形成する。これにより溝板50と通し吊子60が一体になって瓦棒部が堅固になる。
【0026】
通し吊子の底板部62には、釘、ビス等の留付け釘64を下地材11(野地板や垂木)にねじ込むことで、溝板50が通し吊子60を介して下地材11へ強固に固定される。
【0027】
前記溝板50を所定の間隔54で敷設した状態で隣り合う一組の立ち上げ部52に通し吊子60が重畳されたものに対して、瓦棒キャップ70を嵌装する。
【0028】
本発明に使用する瓦棒キャップ70の材質は、従来の金属製と違ってポリウレア樹脂であることを要する。ポリウレア樹脂は、瓦棒キャップの形状を保つ機械強度を有し、日間や季節間の温度変化を吸収し、耐候性に優れ、腐食もしない。そして、ポリウレア樹脂系やポリウレタン系の防水塗料とのなじみが良く、ポリウレア樹脂系の接着剤の付きもよい。
【0029】
ポリウレア樹脂は、施工現場での成型が困難である。瓦棒キャップの現場施工に先がけて、別の場所(例えば屋内)で、芯材にポリウレア樹脂を塗布し乾燥させてから芯材を分離する方法、型内にポリウレア樹脂を注入して乾燥させる方法等によってポリウレア樹脂を瓦棒キャップの形状に成型しておく。
【0030】
瓦棒キャップ70の形状は、側面71の解放した下端部72が、溝板の立ち上げ部52と嵌合する構造を有する。すなわち、瓦棒キャップ70の横幅は、前記立ち上がり部同志で形成される間隙54の幅に略等しい。瓦棒キャップ70が溝板の立ち上げ部52を挟み込むことで、雨水の侵入経路を塞いで瓦棒部の雨水侵入を未然に防ぐ。さらに、ポリウレア樹脂の撥水性が、雨水の毛細管現象を有効に阻止する。
【0031】
瓦棒キャップの天面74は、例えば横断面視で平坦、円弧、凹、凸、三角形、五角形等の形状を有する。
【0032】
瓦棒キャップ70の側面71の長さは、瓦棒キャップの下端部72が、溝板の立ち上げ部の側方と嵌合する限り、特に制約がない。
図2に示す第一の形態では、瓦棒キャップの下端部72が、溝板の立ち上げ部52の中段に位置する。
【0033】
図3に示す第二の形態では、瓦棒キャップの下端部72を溝板の底板部51に至るまで延在させる。この形態は、瓦棒キャップ70と溝板の立ち上げ部52との嵌合面積が広くすることで、瓦棒キャップの脱離が難しくなり、雨水の侵入も困難でなる。さらに、瓦棒キャップ70のポリウレア樹脂製に基づく堅牢さが、溝板50及び通し吊子60の立ち上げ部を堅固に支持する。瓦棒キャップ70をソーラーパネル等の架台に使用可能である。
【0034】
瓦棒キャップの下端部72と溝板の立ち上げ部52との嵌合を補強するために、
図3に示すように、嵌合部に接着手段75を付加してもよい。接着手段には、ポリウレア樹脂系等の接着剤の塗布及び充填、錆び難い釘、ビスやネジによる留め付け、嵌合部下端へのテープ貼着等が挙げられる(
図3では接着剤)。接着剤は、通し吊子60と瓦棒キャプ70との間のコーキング材(充填材)としても機能して、瓦棒キャップ70の寸法精度の許容範囲の拡大に寄与する。
【0035】
図4に示す第三の形態では、瓦棒キャップの下端部72を溝板の底板部51に至るまで延在させ、さらにその両端を相互に離隔する方向へ延在する水平部73を設けている。この水平部73は、溝板の底板部51と密着するための鍔部を形成する。この形態では、密着部が瓦棒部20から離れるので雨水の侵入がより一層困難である。さらに、瓦棒近傍をポリウレア樹脂等の防水塗料で吹き付け塗装する作業性も格段に向上する。
【0036】
瓦棒キャップの水平部73と溝板の底板部51とを密着する手段もまた、特に制限されない。密着方法には、ポリウレア樹脂系等の接着剤の塗布、錆び難い釘、ビスやネジによる留め付け、水平部73へのテープ貼着等が挙げられる。好ましくは接着剤であり、特に好ましくはポリウレア樹脂系、エポキシ樹脂系等である。
【0037】
本発明は、また、上記瓦棒葺き屋根の施工方法を提供する。屋根の垂木の上に屋根全面に渡って野地板を張り、固定され屋根全面にアスファルトルーフィング等で防水シートを敷設するまで従来の瓦棒屋根の施工方法と同じであり、従来工法との相違点を以下に説明する。上記したように、現場での施工に先がけて、瓦棒キャップ70の形状に応じてポリウレア樹脂を成型しておく。成型作業を屋内で行えることは、天候に左右され易い現場施工の負担を減らす点で有利である。さらに、従来の金属製瓦棒キャップは、現場で調達するので、施工後の浮き等の仕上がりが変動し易い。一方、本発明では、注入成型機等を用いれば、一定の形状及び品質を有する瓦棒キャップを提供可能である。
【0038】
瓦棒葺き屋根を施工する現場で、
図5に示すように、隣り合う溝板の間隙54に通し吊子60を挿入し、通し吊子を下地材11に釘留め付け等で固定する。溝板の水平部53と通し吊子の水平部61とを一体に圧着し、圧着部をその基端を中心に下方に、スプリングバックしないように直角に折り曲げて、溝板の折り返し部56及びその外側に密着した通し吊子の折り返し部63を形成する。
【0039】
前記瓦棒キャップ70を、溝板の立ち上げ部52に嵌装する。嵌装作業は非常に簡易であり、仕上がりの品質も一定する。
【0040】
瓦棒キャップの下端部72と溝板の立ち上げ部52との嵌合を補強するために、
図3のように、嵌合部位に接着手段75を付加している。瓦棒キャップ70の両側端に鰐部として水平部73を設けた場合は、水平部73と底板部51とを接着剤等で密着させる。
【0041】
本発明はまた、上記瓦棒葺き屋根の防水施工方法を提供する。瓦棒葺き屋根の施工後の防水作業工程を以下に説明する。上記瓦棒葺き屋根の施工方法で得られた瓦棒葺き屋根1の瓦棒キャップ70を含む全体に防水塗料を塗装する。瓦棒キャップを含む屋根全体が塗装困難な複雑構造を取らないので、現場で吹き付ける作業が、従来よりも簡便となり、職人の塗装のバラツキもなくなる。
【0042】
防水塗料は、水性塗料又は有機溶剤塗料であり得、その例には、ポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。ポリウレア樹脂塗料は、イソシアネートとポリアミンの二液型水性塗料である。ポリウレタン樹脂塗料は、ポリオールとポリイソシアネートの一液又は二液型水性塗料である。防水塗料は、好ましくはポリウレア樹脂塗料又はウレタン樹脂塗料であり、さらに好ましくはポリウレア樹脂である。塗装方法は、塗布場所や塗料に応じて、スプレー、ローラー、刷毛塗り等のいずれでもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 瓦棒葺き屋根
10 屋根板部
11 下地材
12 防水シート
20 瓦棒部
30 棟
40 軒先
50 溝板
51 溝板の底板部
52 溝板の立ち上げ部
53 溝板の水平部
54 隣り合う溝板の立ち上げ部同志の間隙
55 溝板の折り返し部
60 通し吊子
61 通し吊子の水平部
62 通し吊子の底板部
63 通し吊しの折り返し部
64 留め付け釘
70 瓦棒キャップ
71 瓦棒キャップの側面
72 瓦棒キャップの下端部
73 瓦棒キャップの水平部
74 瓦棒キャップの天面
75 瓦棒キャップの接着部