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  • 特開-ブレーキ効力判定装置 図1
  • 特開-ブレーキ効力判定装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132588
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】ブレーキ効力判定装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/04 20060101AFI20230914BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20230914BHJP
   B60T 8/88 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
B60W50/04
B60W60/00
B60T8/88
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038000
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】石坂 俊
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
【Fターム(参考)】
3D241BA63
3D241BB07
3D241BC01
3D241BC02
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD12
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA04Z
3D241DA52Z
3D241DA58Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DB20Z
3D241DB32Z
3D241DC45Z
3D241DC46Z
3D241DC51Z
3D246DA01
3D246EA01
3D246GA02
3D246GC16
3D246HA13A
3D246HA26A
3D246HA35A
3D246HA81A
3D246HA86A
3D246HA93A
3D246HC11
3D246JA02
3D246MA02
(57)【要約】
【課題】無人自動運転車両においても、ブレーキ効力を適切に判定すること。
【解決手段】制御装置10(ブレーキ効力判定装置)は、走行中の自動運転車両において、ブレーキ効力判定用の制動指示を制動装置に出力する第1制御と、第1制御後の自動運転車両の走行状態を検出し、該走行状態に基づきブレーキ効力が適切であるか否かを判定する第2制御と、を実行するように構成されている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の自動運転車両において、ブレーキ効力判定用の制動指示を制動装置に出力する第1制御と、
前記第1制御後の前記自動運転車両の走行状態を検出し、該走行状態に基づきブレーキ効力が適切であるか否かを判定する第2制御と、を実行するように構成されたブレーキ効力判定装置。
【請求項2】
前記第1制御後において、前記自動運転車両が一定速度を維持して力行するように駆動装置を制御する第3制御を更に実行するように構成されている、請求項1記載のブレーキ効力判定装置。
【請求項3】
前記第2制御では、前記第3制御中の前記自動運転車両の車速に係る情報、及び、前記駆動装置に含まれる原動機の出力トルクを検出し、前記車速に係る情報に基づき前記自動運転車両が前記一定速度を維持していることを確認した上で、前記出力トルクの増加量が所定の閾値以下である場合に、前記ブレーキ効力が適切でないと判定する、請求項2記載のブレーキ効力判定装置。
【請求項4】
前記第2制御では、前記自動運転車両の現在の走行環境を示す情報を取得し、該走行環境に基づき、前記閾値を設定する、請求項3記載のブレーキ効力判定装置。
【請求項5】
前記第1制御では、惰行走行中の前記自動運転車両において、前記制動指示を前記制動装置に出力する、請求項1記載のブレーキ効力判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、車両のブレーキ効力判定装置及びブレーキ効力判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキをかけた際の減速度に基づいてブレーキ効力の異常判定を行う技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-107603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、例えば無人自動運転車両では、走行中にドライバがブレーキの効き具合を確かめることができないため、ブレーキ効力を適切に判定することが難しい。
【0005】
本発明の一態様は上記実情に鑑みてなされたものであり、無人自動運転車両においても、ブレーキ効力を適切に判定することができるブレーキ効力判定装置及びブレーキ効力判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るブレーキ効力判定装置は、走行中の自動運転車両において、ブレーキ効力判定用の制動指示を制動装置に出力する第1制御と、第1制御後の自動運転車両の走行状態を検出し、該走行状態に基づきブレーキ効力が適切であるか否かを判定する第2制御と、を実行するように構成されている。
【0007】
本発明の一態様に係るブレーキ効力判定装置では、走行中の自動運転車両の制動装置に対して制動指示が出力され、制動指示後において自動運転車両の走行状態が検出され、該走行状態に基づきブレーキ効力が適切であるか判定される。このようなブレーキ効力判定装置によれば、走行中の自動運転車両に対して実際に制動制御を行い、その際の走行状態からブレーキ効力の適否が判定されるので、ドライバがいない無人自動運転車両においても、ブレーキ効力を適切に判定することができる。これにより、無人自動運転車両の安全性の維持に寄与することができる。また、ブレーキ効力を走行中に確認することができるので、点検のための時間を設定する必要がなくなり、ダウンタイムの発生を回避し車両運用効率を向上させることができる。さらに、走行中の任意の時間にブレーキ効力が確認できるので、ブレーキの異常を早期に発見することができる。
【0008】
第1制御後において、自動運転車両が一定速度を維持して力行するように駆動装置を制御する第3制御を更に実行するように構成されていてもよい。このような構成によれば、車両がブレーキを引きずりながら走行することとなり、原動機の出力トルクの状態から、容易にブレーキ効力の適否を判定することができる。
【0009】
第2制御では、第3制御中の自動運転車両の車速に係る情報、及び、駆動装置に含まれる原動機の出力トルクを検出し、車速に係る情報に基づき自動運転車両が一定速度を維持していることを確認した上で、出力トルクの増加量が所定の閾値以下である場合に、ブレーキ効力が適切でないと判定してもよい。ブレーキをかけた状態で一定速度を維持しているのに出力トルクの増加量が小さい場合には、ブレーキ効力が適切でない(ブレーキが十分に効いていない)と推定される。このため、このような制御を行うことによって、容易且つ確実にブレーキ効力の適否を判定することができる。
【0010】
第2制御では、自動運転車両の現在の走行環境を示す情報を取得し、該走行環境に基づき、閾値を設定してもよい。例えば走行路面の勾配や路面状態、自車の積載量等によっては、出力トルクが変化すると考えられる。このため、このような走行環境を示す情報が取得されて走行環境に基づきブレーキ効力判定の閾値が設定されることにより、より高精度にブレーキ効力の適否を判定することができる。
【0011】
第1制御では、惰行走行中の自動運転車両において、制動指示を制動装置に出力してもよい。このような構成によれば、力行制御時だけでなく、惰行走行時においてもブレーキ効力の判定を行うことができる。これによって、より通常の走行に影響がない状況において、ブレーキ効力の適否を判定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、無人自動運転車両においても、ブレーキ効力を適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る自動運転システムの構成例を示すブロック図である。
図2】制御装置10により実行されるブレーキ効力判定手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、自動運転システム1の構成例を示すブロック図である。自動運転システム1は、車両に搭載されており、車両の自動運転を制御する。本実施形態では、車両が、ドライバ無しで走行する無人自動運転車両であるとして説明する。また、自動運転システム1では、後述する制御装置10(ブレーキ効力判定装置)によって、車両の走行中においてブレーキ効力の適否が判定される(詳細は後述)。自動運転システム1は、例えば、GPS(Global Positioning System)受信器20と、地図データベース30と、周辺状況センサ40と、車両状態センサ50と、通信装置60と、走行装置70と、制御装置10と、を備えている。
【0015】
GPS受信器20は、複数のGPS衛星から送信される信号を受信し、受信信号に基づいてリアルタイムな車両の位置(現在自車位置)及び方位を算出する。GPS受信器20は、算出した情報を制御装置10に送信する。
【0016】
地図データベース30は、地図情報(道路における各レーンの境界位置を示す情報等)を予め記憶しているデータベースである。地図データベース30には、各道路における走行路面の勾配が記憶されていてもよい。地図データベース30は、例えば所定の記憶装置に格納されている。
【0017】
周辺状況センサ40は、車両の周囲の状況を検出する。周辺状況センサ40としては、例えば、ライダー、レーダー、カメラ等が用いられる。ライダーは、光を利用して車両の周囲の物標を検出する。レーダーは、電波を利用して車両の周囲の物標を検出する。カメラは、車両の周囲の状況を撮像する。周辺状況センサ40は、検出した情報を制御装置10に送信する。
【0018】
車両状態センサ50は、車両の走行状態を検出する。車両状態センサ50としては、例えば、車速センサ、車輪速センサ、加速度センサ、舵角センサ、ヨーレートセンサ、車両減速度を検出する慣性計測装置、ステアリングのトルクセンサ、原動機の出力トルクセンサなどが例示される。なお、車両状態センサ50は、ブレーキをかけはじめたときの車両に加わるショックを取得して車体減速度を検出するセンサであってもよい。車速センサは、車両の速度を検出する。舵角センサは、車両の操舵角を検出する。ヨーレートセンサは、車両のヨーレートを検出する。加速度センサは、車両に作用する加速度を検出する。車両状態センサ50は、検出した情報を制御装置10に送信する。
【0019】
通信装置60は、例えばV2X通信(車車間通信および路車間通信)を行う。具体的には、通信装置60は、他の車両との間でV2V通信(車車間通信)を行う。また、通信装置60は、周囲のインフラとの間でV2I通信(路車間通信)を行う。V2X通信を通して、通信装置60は、車両の周囲の環境に関する情報を取得することができる。通信装置60は、例えば、走行経路指示、道路の路面状態を示す情報、気象情報、又は自車両の積載量等の情報を、V2X通信により取得してもよい。通信装置60は、取得した情報を制御装置10に送信する。
【0020】
走行装置70は、操舵装置、駆動装置、制動装置、トランスミッション等を含んでいる。操舵装置は、車輪を転舵する。駆動装置は、駆動力を発生させる動力源である。駆動装置としては、エンジンや電動機が例示される。制動装置は、制動力を発生させる。
【0021】
制御装置10は、車両の自動運転を制御する自動運転制御を行う。制御装置10は、プロセッサ、記憶装置、及び入出力インタフェースを備えるマイクロコンピュータである。制御装置10は、ECU(Electronic Control Unit)とも呼ばれる。制御装置10は、入出力インタフェースを通して各種情報を受け取る。そして、制御装置10は、受け取った情報に基づいて自動運転制御を行う。
【0022】
制御装置10は、自動運転制御に係る機能ブロックとして、取得部101と、自動運転制御部102と、を備えている。これらの機能ブロックは、制御装置10のプロセッサが記憶装置に格納された制御プログラムを実行することにより実現される。制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されていてもよい。
【0023】
取得部101は、自動運転制御に必要な情報を取得する。取得部101による情報取得処理は、所定あるいは任意のサイクルで繰り返し実行される。取得部101は、GPS受信器20から車両の位置及び方位を取得する。取得部101は、地図データベース30から道路のレーンに関する情報等を取得する。取得部101は、周辺状況センサ40によって検出された車両の周囲の情報を取得する。取得部101は、車両状態センサ50によって検出された車両の状態を示す情報を取得する。取得部101は、通信装置60から走行経路指示や道路の路面状態等の情報を取得する。
【0024】
自動運転制御部102は、取得部101によって取得された情報に基づき、全体経路(車両が走行する全体の経路)を生成する。自動運転制御部102は、走行経路指示に加えて、車両の位置及び方位、道路のレーン等の情報、車両の周囲の情報、並びに、車両の状態を示す情報等を考慮して、全体経路を生成してもよい。自動運転制御部102は、生成した全体経路に基づき、実際に車両が走行する目標経路をリアルタイムに生成する。目標経路生成は、車両が走行している間、所定あるいは任意のサイクルで繰り返し実行される。自動運転制御部102は、生成した目標経路に基づき、車両の経路追従制御を行う。自動運転制御部102は、従来から周知の追従制御技術を用いて、目標経路に追従して車両が走行するように、走行装置70に含まれる各装置を制御する。
【0025】
制御装置10は、さらに、無人で走行する自動運転車両について、走行中にブレーキ効力の適否(ブレーキの効きが正常であるか否か)を判定する。制御装置10は、ブレーキ効力の適否判定に係る機能ブロックとして、制動制御部103と、力行制御部104と、判定部105と、を備えている。これらの機能ブロックは、制御装置10のプロセッサが記憶装置に格納された制御プログラムを実行することにより実現される。制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されていてもよい。
【0026】
制動制御部103は、走行中の自動運転車両(力行している車両)において、ブレーキ効力判定用の制動指示を走行装置70の制動装置に出力する第1制御を実行する。制動制御部103は、車両を力行させたまま、第1制御を実施する。制動制御部103は、制動装置に対して、減速度ではなくエア圧や油圧の数値を指定する効力指示を含む制動指示を出力してもよい。制動制御部103は、所定の時間間隔で定期的に第1制御を実行してもよいし、例えばV2X通信により通信装置60が外部から指示を受けた場合に第1制御を実行してもよい。
【0027】
力行制御部104は、上述した第1制御後において、自動運転車両が一定速度を維持して力行するように、走行装置70の駆動装置を制御する第3制御を実行する。これにより、車両はブレーキを引きずりながら走行することとなる。
【0028】
判定部105は、第1制御後の自動運転車両の走行状態を検出し、該走行状態に基づきブレーキ効力が適切であるか否かを判定する第2制御を実行する。より詳細には、判定部105は、第1制御後において、第3制御により自動運転車両が一定速度を維持して力行している状態において、第2制御を実行してもよい。
【0029】
判定部105は、自動運転車両の走行状態として、例えば、第3制御中に車両状態センサ50によって検出される各種の情報(車体速度(車速)、車輪速、車両減速度、原動機の出力トルク)を、取得部101を介して取得する。
【0030】
判定部105は、例えば、第3制御中の車速に係る情報(車体速度又は車輪速等)に基づき、自動運転車両が一定速度を維持していることを確認した上で、原動機の出力トルクの増加量が所定の閾値以下である場合に、ブレーキ効力が適切でないと判定してもよい。このような判定は、ブレーキをかけて一定速度を維持しているのに、大きくなるはずの出力トルクの増加量が小さい場合には、ブレーキ効力が適切でない(ブレーキが十分に効いていない)と推定できることによるものである。このように、ブレーキを引きずりながら走行することで生じる原動機出力の一時的な増加を観測することにより、ブレーキ効力の適否を判定することができる。
【0031】
ここで、例えば走行路面の勾配や路面状態等の種々の走行環境によっては、出力トルクが変化すると考えられる。そのため、このような走行環境が考慮されて、上述した適否判定の閾値が設定される(走行環境に応じて閾値が変更される)ことによって、ブレーキ効力の適否判定精度がより向上すると考えられる。
【0032】
このような観点から、判定部105は、第2制御において、自動運転車両の現在の走行環境を示す情報を取得し、該走行環境に基づき、適否判定の閾値を設定してもよい。判定部105は、自動運転車両の現在の走行環境を示す情報として、例えばGPS受信器20によって検出される現在自車位置、地図データベース30に記憶されている走行路面の勾配等の情報、通信装置60によって取得される道路の路面状態を示す情報、気象情報、及び自車の積載量等の情報を、取得部101を介して取得してもよい。
【0033】
また、判定部105は、例えば、車輪速、車体速度、車両減速度、及び原動機の出力トルク等の変動量が所定の基準値以下である場合に、ブレーキ効力が適切でない(ブレーキの効きが悪い)と判定してもよい。例えば、惰行走行中の自動運転車両において、制動指示を制動装置に出力した際の車輪速の変動量が所定の基準値以下であれば、ブレーキによる減速度が小さいためブレーキ効力が適切でない(ブレーキが十分に効いていない)と推定できる。
【0034】
次に、制御装置10により実行されるブレーキ効力判定の手順について、図2を参照して説明する。図2は、制御装置10により実行されるブレーキ効力判定手順を示すフローチャートである。
【0035】
図2に示されるように、制御装置10では、最初に、車両が走行中であるか否かが判定される(ステップS1)。車両が走行中でない場合には、処理が終了する。
【0036】
ステップS1において車両が走行中であると判定された場合、つづいて、制御装置10によって、ブレーキ効力判定用の制動指示が、走行装置70の制動装置に出力される(ステップS2)。
【0037】
つづいて、制御装置10によって、車両が一定速度を維持して力行するように、走行装置70の駆動装置が制御される(ステップS3)。これにより、車両はブレーキを引きずりながら走行することとなる。
【0038】
つづいて、制御装置10によって、走行環境を示す情報が取得され(ステップS4)、走行環境に基づき、ブレーキ効力判定に係る閾値が設定される(ステップS5)。具体的には、制御装置10は、例えば、現在自車位置、走行路面の勾配等の情報、道路の路面状態を示す情報、気象情報、及び自車の積載量等の情報を、走行環境を示す情報として取得し、走行環境に基づき上記閾値を設定する。なお、ステップS4及びステップS5の処理は、ステップS2よりも前に実施されてもよい。
【0039】
つづいて、制御装置10によって、車両の走行状態が検出される(ステップS6)。具体的には、制御装置10は、例えば、車体速度(車速)、車輪速、車両減速度、及び原動機の出力トルク等の情報を、走行状態として検出する。
【0040】
つづいて、制御装置10によって、自動運転車両が一定速度を維持していることが確認された上で、原動機の出力トルクの増加量が所定の閾値以下であるか否かが判定される(ステップS7)。
【0041】
ステップS7において出力トルクの増加量が閾値以下でないと判定された場合には、ブレーキ効力が適切でありブレーキが正常状態であると判定される(ステップS8)。一方で、出力トルクの増加量が閾値以下であると判定された場合には、ブレーキ効力が適切でなくブレーキが異常状態であると判定される(ステップS9)。このようなブレーキ効力の適否判定結果が導出され、出力されることにより、ドライバがいない無人自動運転車両においても、ブレーキ効力を適切に判定することができる。
【0042】
次に、本実施形態に係る制御装置10の作用効果について説明する。
【0043】
本実施形態に係る制御装置10(ブレーキ効力判定装置)は、走行中の自動運転車両において、ブレーキ効力判定用の制動指示を制動装置に出力する第1制御と、第1制御後の自動運転車両の走行状態を検出し、該走行状態に基づきブレーキ効力が適切であるか否かを判定する第2制御と、を実行するように構成されている。
【0044】
本実施形態に係る制御装置10では、走行中の自動運転車両の制動装置に対して制動指示が出力され、制動指示後において自動運転車両の走行状態が検出され、該走行状態に基づきブレーキ効力が適切であるか判定される。このような制御装置10によれば、走行中の自動運転車両に対して実際に制動制御を行い、その際の走行状態からブレーキ効力の適否が判定されるので、ドライバがいない無人自動運転車両においても、ブレーキ効力を適切に判定することができる。これにより、無人自動運転車両の安全性の維持に寄与することができる。また、ブレーキ効力を走行中に確認することができるので、点検のための時間を設定する必要がなくなり、ダウンタイムの発生を回避し車両運用効率を向上させることができる。さらに、走行中の任意の時間にブレーキ効力が確認できるので、ブレーキの異常を早期に発見することができる。
【0045】
制御装置10では、上記第1制御後において、自動運転車両が一定速度を維持して力行するように駆動装置を制御する第3制御を更に実行するように構成されていてもよい。このような構成によれば、車両がブレーキを引きずりながら走行することとなり、原動機の出力トルクの状態から、容易にブレーキ効力の適否を判定することができる。
【0046】
制御装置10では、第2制御において、第3制御中の自動運転車両の車速に係る情報、及び、駆動装置に含まれる原動機の出力トルクを検出し、車速に係る情報に基づき自動運転車両が一定速度を維持していることを確認した上で、出力トルクの増加量が所定の閾値以下である場合に、ブレーキ効力が適切でないと判定してもよい。ブレーキをかけた状態で一定速度を維持しているのに出力トルクの増加量が小さい場合には、ブレーキ効力が適切でない(ブレーキが十分に効いていない)と推定される。このため、このような制御を行うことによって、容易且つ確実にブレーキ効力の適否を判定することができる。
【0047】
制御装置では、第2制御において、自動運転車両の現在の走行環境を示す情報を取得し、該走行環境に基づき、閾値を設定してもよい。例えば走行路面の勾配や路面状態、自車の積載量等によっては、出力トルクが変化すると考えられる。このため、このような走行環境を示す情報が取得されて走行環境に基づきブレーキ効力判定の閾値が設定されることにより、より高精度にブレーキ効力の適否を判定することができる。
【0048】
以上、本実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、力行制御時において制動指示を出力しブレーキ効力の適否を判定するとして説明したがこれに限定されず、例えば、上記第1制御では、惰行走行中の自動運転車両において、制動指示を制動装置に出力してもよい。このような構成によれば、力行制御時だけでなく、惰行走行時においてもブレーキ効力の判定を行うことができる。これによって、より通常の走行に影響がない状況において、ブレーキ効力の適否を判定することができる。
【符号の説明】
【0049】
10…制御装置(ブレーキ効力判定装置)、50…車両状態センサ、103…制動制御部、104…力行制御部、105…判定部。
図1
図2