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  • 特開-煽り開閉装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132604
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】煽り開閉装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 33/027 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
B62D33/027 Y
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038023
(22)【出願日】2022-03-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】501343411
【氏名又は名称】埼玉自動車工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522099515
【氏名又は名称】株式会社ヒカリエキスプレス
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】矢島 廣一
(72)【発明者】
【氏名】小川 健一
(57)【要約】
【課題】トラックの荷台に設けられた煽りを閉じる動作を行なうために必要な電動ポンプ等の装置が、故障等により作動しない場合でも、別の手段により煽りを閉じることができること。
【解決手段】トラックの荷台側部の煽りを、油圧シリンダにより開閉する煽り開閉装置において、
作動油が通る油圧回路により、油圧シリンダと電動ポンプが接続され、
油圧回路は切換弁を有して分岐路を有し、
分岐路の端部には接続口が設けられている煽り開閉装置。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックの荷台側部の煽りを、油圧シリンダにより開閉する煽り開閉装置において、
作動油が通る油圧回路により、油圧シリンダと電動ポンプが接続され、
油圧回路は切換弁を有して分岐路を有し、
分岐路の端部には接続口が設けられている煽り開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックの荷台に設けられた煽りの開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば図1に示すトラックのように、平ボディの荷台に屋根がなく荷台側部に開閉可能な煽り1が設けられたトラック、ウイングボディのように、荷台が箱型でありその屋根からウイングが開閉するものであって、さらに荷台側部に開閉可能な煽りも設けられたもの等、トラックには荷台の形式からみたいくつかの種類がある。
これらの煽りは、積載物から受ける荷重に耐えるために重厚に造られている。そのため煽りは重量が大きく、開閉毎に人力で煽りを開閉するのは負担が大きい。よって、通常の煽り開閉装置は、例えば図1の操作盤2の操作によって、電動ポンプにより制御油圧を供給して駆動する油圧シリンダを用いて、煽りを開閉させている。
煽りは上述したように重量が大きい上、荷物の積み込みや荷下ろしの度に開閉される。また、トラック本体の走行中にはトラック全体が不規則に揺れる。このように、比較的過酷な環境で酷使されるため、煽り開閉装置の油圧シリンダに作動油を供給する電動ポンプが度々故障していた。
このような中、従来の煽り開閉装置では、油圧シリンダに油を供給する装置は1系統の電動ポンプのみであったため、その1系統の電動ポンプやその電動ポンプを制御する装置等が故障すると煽りを開閉することができない。
【0003】
煽りを開く、つまり、トラックの荷台から積載物を下ろす場合や、積載物を積み込む場合には、煽りを開く方向に動かすために必要な力は小さく、かつ油圧シリンダが駆動しなくても、油圧を低下させることにより、煽りを開く方向に動かすことは可能であった。
しかしながら、煽りを閉じる、つまり、トラックが走行するために煽りを上げて、荷台上の積載物の落下を防止したり、走行時に不要に揺動しないようにするためには、開いている重い煽りを上に略180度回動させることが必要であった。煽りを上げて閉の状態にしないと、仮に荷台に積載物がなくても、トラック走行時に煽りが不用意に回動する等極めて危険な状態となり、トラックを運転することができない。
このような場合に油圧シリンダが駆動しないと、人力では対応できず、重機やフォークリフトによって、煽りを上げるしかなかった。しかし、速やかに重機等を借用できなかったり、そもそも周囲に重機等がなかったりするときがあり、このようなときには、現地で修理を依頼するしかなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-43761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、トラックの荷台に設けられた煽りを閉じる動作を行なうために必要な電動ポンプ等の装置が、故障等により作動しない場合でも、別の手段により煽りを閉じることができることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、トラックに設けた油圧回路を特定の構造にすることにより、電動ポンプ等の装置の故障時においても煽りを閉じることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
トラックの荷台側部の煽りを、油圧シリンダにより開閉する煽り開閉装置において、
作動油が通る油圧回路により、油圧シリンダと電動ポンプが接続され、
油圧回路は切換弁を有して分岐路を有し、
分岐路の端部には接続口が設けられている煽り開閉装置。
【発明の効果】
【0007】
電動ポンプ等の装置が故障しても、代替する手段を油圧回路に接続することにより、トラックの荷台の開いた状態の煽りを閉じることができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】トラックの外観を示す図
図2】煽り1が閉じた状態の断面図
図3】煽り1が開いた状態の断面図
図4】煽り1を開閉するための油圧回路を示す図
図5】トラックに手動油圧ポンプMを接続した状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の煽り開閉装置を備えることができるトラックは、例えば図1に示すような開閉する煽り1を備えたものである。通常は荷台側部の煽りを下げて(開けて)、フォークリフト等により荷台に各種の荷物を積載し、その後煽りを上げて、図1に示す状態にする。トラックを運転して目的地に到着後に、荷台側部の煽りを下げて、場合によりフォークリフト等により荷台から各種の荷物を下ろす。
言うまでもなく、走行時や単に停車時等の積み下ろし時以外においては煽りを上げ(上方に上げて)荷台に荷物があるときには、荷台から落下防止等をする。
このようなトラックは、煽りを油圧シリンダで開閉することが必要な程度の大きさであり、油圧シリンダは油圧回路を介して電動機に接続され、この電動機を作動させることにより作動油を油圧シリンダに供給をして、煽りを開閉する装置を有する。
【0010】
このような一連のトラックの使用に際、特に荷物の積み下ろし後に煽りを上げる際に、電動機が正常に運転できないと、十分に重い煽りを人力で上げることができず、正常な運用ができない。周囲に重機やフォークリフト等の機械がある場合、下がっている煽りをこの機械で上げることにより一応解決できるものの、すぐに対応できなかったり、これらの機械がない場合には、その場からトラックを移動できない。
【0011】
このとき、本発明の煽り開閉装置を備えることにより、電動機と油圧シリンダとを接続する油圧回路に、切換弁を介して設けた分岐路の端部に設けた接続口から、作動油を供給して油圧シリンダを駆動させることができる。
その分岐路の端部から作動油を供給するために、別に用意した手動や電動などの油圧ポンプを、該分岐路の端部にホースで接続し、その油圧ポンプを駆動させる。そのようにして油圧シリンダに作動油を供給することにより、煽りを上げて荷台に固定し、トラックを走行可能な状態にすることができる。
本発明中のような切換弁、分岐路及び接続口は、1台のトラックに設けた油圧回路駆動用の電動機1台につき、1組設けることが必要である。そして通常のトラックであれば、1組設けることで良い。
なお、上記の手動や電動などの油圧ポンプは、トラックに設けた工具入れ等の任意の場所に保管しておき、必要なときに取り出して使用する。
【0012】
本発明の実施の形態を、図を参照しながら説明する。なお、下記の図面はトラックの煽りを開閉するための装置の一例であり、煽りを開閉するための機構は多種あり、本発明はこれに限定されず採用できる。
図2は、本発明に係る煽り開閉装置が設置される煽り1が閉じた状態の断面図である。この状態においてトラックは走行できるように、トラックの荷台の煽り1が閉じた状態を示している。煽り開閉のための機構は煽り1の位置に対応して荷台の下方に設けられる。
煽り1は、煽り1の下部に固着された蝶番4によって、荷台フレーム5と連結され、荷台フレーム5に対して回転自在に取り付けられる。蝶番4の上方には、途中がフレーム6に回動可能に接続されたアーム7が移動自在に連結され、このアーム7を介して油圧シリンダ3のピストン8に連結されている。このような機構により煽り1はピストン8の伸縮によって開閉する。
【0013】
図3は、煽り1が開いた状態の断面図である。この状態においてトラックの荷台に荷物を積載したり、積載した荷物を下ろしたりする。そしてこの状態のままトラックが走行しない。この状態においては、蝶番4を支点として煽り1が下方に回動されている。油圧シリンダ3のピストン8が縮んだ状態であり、これに伴いアーム7が引っ張られ、それによりフレーム6が回動し、アーム7が荷台フレーム5の下方に引き寄せられる。この結果として煽り1が開いた状態になる。
【0014】
図4は煽り1を開閉するための油圧回路の例である。
電動ポンプPと油圧シリンダ3との間は、管Aと管Bで接続される。管Aと管Bのそれぞれは途中において弁が設けられ、分岐管C及びDが接続される。分岐管C及びDの端部は、通常は栓がされて、それらの端部は例えばトラックの側部の荷台の下に位置し、栓を開けたり、閉めたりしやすい位置に設けられる。なお、全ての配管の内部は作動油で満たされる。
そのため、図4では分岐管C及びDが手動油圧ポンプMに接続されているが、トラックの通常運用時には、分岐管C及びDの途中には、手動油圧ポンプMから伸びる管と接続するための接続口が設けられて、図示はしないがトラックに固定された端部を構成する。そして手動油圧ポンプMは接続されていない。
【0015】
トラックに設置されている電動ポンプを使用する通常の方法では、荷台前部や運転席等に設置された操作盤2等を操作することにより、電動ポンプPに作動信号を送り、この信号に基づいて電動ポンプPを作動させ、煽り1の開閉を行う。煽り1を開く操作での作動油の動きについて詳述する。通常の状態では管A及びBに設けられた弁は電動ポンプPと油圧シリンダ3のみを接続するようになっている。このとき、分岐管C及びDと、管AやBとの間では作動油は流動せず、分岐管CとDは何ら機能しない。
【0016】
電動ポンプから送出された作動油は、管Aを通って油圧シリンダに供給される。油圧シリンダから排出された作動油は、管Bを通って電動ポンプに送られる。このように作動油を戻すことにより、ピストン8が縮むことになり、この結果として図3に示すように煽りが開いた状態になる。このような電動ポンプPの運転は、例えば図1に示すような、荷台前部に設置した操作盤2を操作することにより行われる。
【0017】
煽りを閉める操作では、作動油の動きは上述した動きとは逆方向になる。電動ポンプから送出された作動油は、管Bを順に通って油圧シリンダに供給され、油圧シリンダから排出された作動油は管Aを順に通って電動ポンプに戻される。これにより、ピストン8が伸びた状態となり、煽り1が上方に回動されて、図4における位置において、図示はしないが固定具により煽り1を固定することができる。
このように、油圧シリンダ3のピストン8の伸び縮させるための油圧回路として、電動ポンプPから管A又は管Bを通って作動油が油圧シリンダ3に供給される。
【0018】
しかしながら、何らかの故障等により電動ポンプPが作動しない場合には、上記の分岐管C及びDを使用する。栓をしていた分岐管C及びDの端部を開けて、例えば手動油圧ポンプMを接続する。そして、管A及びBに設けた弁を操作して、分岐管C及びDが直接油圧シリンダ3に接続されるようにし、電動ポンプPは油圧シリンダと接続されないようにする。
接続した手動油圧ポンプMを人力で操作をして油圧シリンダに作動油を供給することにより、煽りの開閉を行う。手動油圧ポンプMを使用して煽りを開く操作をするときの作動油の動きを詳述する。手動油圧ポンプから送出された作動油は、分岐管D、管Bを順に通って、油圧シリンダに送られる。油圧シリンダから排出された作動油は、管A、分岐管Cを順に通って手動油圧ポンプMに戻される。このような作動油の動きにより煽り1が上方に回動して閉められる。
このとき、電動ポンプPと管Aの弁までの間の管A内、及び電動ポンプPと管Bの弁までの間の管B内にある作動油は動かない。
【0019】
なお、煽り1を開ける際に、電動ポンプPが動かない場合には、油圧回路内の作動油を抜くことにより、煽りを開けることができる。しかしながら、開けた状態の煽りを上方に回動させて閉じるには、上記のように手動油圧ポンプM等の代替できる手段を油圧回路に接続させることが必要である。
上記の例は手動油圧ポンプMを使用したが、可搬式の電動ポンプ等の他の装置によって煽り1を閉じても良い。
【0020】
図5はトラックの煽り開閉装置の油圧回路に分岐管C及びDの接続口を介して手動油圧ポンプMを接続し、下がっていた煽りを上げた後を示す外観である。図示はしないが、分岐管C及びDの途中に設けた栓をすることができる端部である接続口は、トラックの荷台の下に設けることができる。
【0021】
図1に示すトラックは煽りを開閉するためのアーム7が荷台の片側につき3つ設けられている。この場合には、1つの電動ポンプが、最大で両側の計6つのアームを動かすようにされている。そして、図4における分岐管C及びDに接続した手動油圧ポンプにより片側の3つのアームを動かすようにしても良い。また両側の6つのアームを動かすようにしても良い。
本発明の煽り開閉装置によれば、仮にトラックに設置された電動ポンプが故障したときでも、手動油圧ポンプを操作することにより煽りを開閉できるので、トラックが立ち往生することがなくなる。
上述した例では、荷台の右側面の煽りについて説明したが、左側面や荷台後方の煽りについても同様な構成とすることができる。
【符号の説明】
【0022】
1・・・煽り
2・・・操作盤
3・・・油圧シリンダ
4・・・蝶番
5・・・荷台フレーム
6・・・フレーム
7・・・アーム
8・・・ピストン
A・・・管
B・・・管
C・・・分岐管
D・・・分岐管
M・・・手動油圧ポンプ
P・・・電動ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-03-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックの荷台側部の煽りを、油圧シリンダにより開閉する煽り開閉装置において、
作動油が通る油圧回路により、油圧シリンダと電動ポンプが接続され、
油圧回路は切換弁を有して分岐路を有し、
分岐路の端部には接続口が設けられており、
該接続口は、該電動ポンプが作動しない場合において、可搬式手動油圧ポンプ又は可搬式電動油圧ポンプを接続するために開閉可能な接続口であり、通常運用時には可搬式手動油圧ポンプ又は可搬式電動油圧ポンプが接続されていない、
煽り開閉装置。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックの荷台側部の煽りを、油圧シリンダにより開閉する煽り開閉装置において、
作動油が通る油圧回路により、油圧シリンダと電動ポンプが接続され、
油圧回路は切換弁を有して分岐路を有し、
分岐路の端部には接続口が設けられており、
該接続口は、該電動ポンプが作動しない場合において、可搬式手動油圧ポンプを接続するために開閉可能な接続口であり、通常運用時には可搬式手動油圧ポンプが接続されていない、
煽り開閉装置。