(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132613
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】電池モジュール装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6566 20140101AFI20230914BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230914BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230914BHJP
H01M 10/617 20140101ALI20230914BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20230914BHJP
【FI】
H01M10/6566
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/617
H01M10/647
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038034
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤本 貴洋
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031EE01
5H031HH06
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】本開示の少なくとも一つの実施形態は、複数のセルが並設される電池モジュールのモジュール内部のセル温度の差を小さくすることを目的とする。
【解決手段】複数のセル3が並設されて構成される電池モジュール装置1であって、複数のセルを収容するケース7に形成される開口部9と、開口部に、複数のセル3に対向して設けられる複数の開閉蓋11と、セルの温度により変位して開閉蓋の開閉動作を行う開閉制御部13と、を備え、開閉制御部は、予め設定されたモジュール内部の温度が高くなる高温側セル3Xに対する開閉蓋11c~11fを高温側セル以外に対する開閉蓋11a~11b、11g~11hより大きく開くように制御する。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルが並設されて構成される電池モジュール装置であって、
前記複数のセルを収容するケースに形成される開口部と、
前記開口部に、複数の前記セルに対向して設けられる複数の開閉蓋と、
前記セルの温度により変位して前記開閉蓋の開閉動作を行う開閉制御部と、を備え、
前記開閉制御部は、予め設定されたモジュール内部の温度が高くなる高温側セルに対する前記開閉蓋を高温側セル以外に対する前記開閉蓋より大きく開くように制御すること、を特徴とする電池モジュール装置。
【請求項2】
前記開閉制御部は、形状記憶合金部材によって構成され複数の前記開閉蓋に対応して設置され、前記高温側セルに対する前記開閉制御部の形状記憶合金部材は、他のセルに対する前記開閉制御部の形状記憶合金部材より大型であること、を特徴とする請求項1に記載の電池モジュール装置。
【請求項3】
前記形状記憶合金部材は、前記セルの温度が高くなると、前記開閉蓋の一端側を押し上げるように変形するとともに、前記高温側セルに対する前記形状記憶合金部材は、他のセルに対する形状記憶合金部材より前記開閉蓋の一端側の押し上げ量が大きくなるよう変形すること、を特徴とする請求項2に記載の電池モジュール装置。
【請求項4】
前記開閉蓋の裏面に、前記形状記憶合金部材の変形側の端部が摺動して着脱自在に嵌合する溝が形成されること、を特徴とする請求項3に記載の電池モジュール装置。
【請求項5】
前記開閉制御部は、前記セルの正極端子側に設置されること、を特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の電池モジュール装置。
【請求項6】
複数の前記セルは、正極端子と負極端子とが前記セルの一端側と他端側とに、前記セルの整列方向において交互に位置される直列配列され、前記開閉蓋は、1セルごとに対向して1つ設置されること、を特徴とする請求項5に記載の電池モジュール装置。
【請求項7】
前記高温側セルにおいては、1セルごとに1つの前記開閉蓋が設置され、前記高温側セル以外のセル領域においては、複数セルに対して1つの前記開閉蓋が設置されること、を特徴とする請求項6に記載の電池モジュール装置。
【請求項8】
複数の前記セルは、正極端子と負極端子とが前記セルの整列方向において前記セルの一端側と他端側との同一側に位置される並列配列されて1つのセル群を構成し、複数の前記セル群は、正極端子群と負極端子群とがセル群の配列方向において前記セル群の一端側と他端側とに交互に位置される直列配列され、前記開閉蓋は前記セル群ごとに1つ設置されること、を特徴とする請求項5に記載の電池モジュール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池モジュール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は使用(充放電)することで発熱する。単電池(セル)を複数組んだモジュール内においては、複数のセルのうち外側は放熱し易いが、内側は放熱し難く、温度が高くなり易い傾向がある。
【0003】
電池温度が高くなると、電池の劣化が進み、容量(EV(電気自動車)の走行距離)の低下や、抵抗が増加(加速性低下)する。また、温度が高い電池は、温度が低い電池よりも劣化による抵抗増加が進み、更に発熱し、劣化が進む。
【0004】
近年では、EV(電気自動車)、HV(ハイブリッド自動車)、外部充電または外部給電が可能なPHEV(プラグインハイブリッド自動車)等においては、セルの底面やセル間に冷却板を配置し、電池を冷却させる方式が多い。これらのモジュールは、セル間を隙間なく組電池化されている。そのため、モジュールの中央側のセルは外側のセルよりも放熱性が悪く、温度が高くなり、セル温度を均一に保つことは難しい。
【0005】
電池パックや電池モジュールの性能は、最も性能が低いセルによって決まるため、セル間の劣化を均一に保つことが重要であり、そのためには。セル間の温度差を極力小さくすることが必要である。
【0006】
一方、電池やセルの温度制御のために、形状記憶合金を用いて冷却蓋や冷却通路を開閉させる技術について種々提案されている。例えば、特許文献1には、密閉型鉛蓄電池の極板群を収容する電槽に設けられた排気筒とその排気筒の先端部に密着される弁体との間に、高温で弁体を排気筒から離す方向に変形する形状記憶部材が介在される技術が示されている。
【0007】
また、特許文献2には、燃料電池スタックを、上面と下面に複数の開口を有するカバーで覆い、カバーの開口に、熱により変位して開閉動作を行う形状記憶合金からなる熱制御部を有する技術が示されている。
【0008】
また、特許文献3には、蓄電モジュールが所定間隔を空けて積層される複数の蓄電セルによって構成され、この蓄電セル間には冷却通路が区画され、セル温度が上昇したときには冷却通路を開くように、形状記憶合金を用いて形成された開閉部材が設けられている技術が示されている。
【0009】
また、特許文献4には、電池パック内の複数の電池セルのうち熱が溜まりやすい中央部の電池セルに対して形状記憶合金を用いケース内に区画された冷却風通路から冷却風を重点的に導入する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開平5-11315号公報
【特許文献2】特開2006-252785号公報
【特許文献3】特開2008-300103号公報
【特許文献4】特開2018-147808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述の特許文献1~3には、電池やセルの温度制御のために、形状記憶合金を用いて冷却蓋や冷却通路を開閉させる技術について示されているが、形状記憶合金の形状回復温度に達すると冷却(放熱)が開始されることが開示されているにとどまる。
【0012】
さらに、特許文献4には、温度が高くなる中央部の電池セルを重点的に冷却するものであるが、ケース内に区画された冷却風通路からの冷却風によるため、ケース外への放熱がしにくくケース内に熱が溜まりやすい。また、ケース内への冷却風の供給装置が必要となる。このように、電池モジュール内の温度が高くなる電池セルへの効果的な冷却構造についてはさらなる改善が望まれる。
【0013】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、複数のセルが並設される電池モジュールのモジュール内部のセル温度の差を小さくする電池モジュール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一つの実施形態では、複数のセルが並設されて構成される電池モジュール装置であって、前記複数のセルを収容するケースに形成される開口部と、前記開口部に、複数の前記セルに対向して設けられる複数の開閉蓋と、前記セルの温度により変位して前記開閉蓋の開閉動作を行う開閉制御部と、を備え、前記開閉制御部は、予め設定されたモジュール内部の温度が高くなる高温側セルに対する前記開閉蓋を高温側セル以外に対する前記開閉蓋より大きく開くように制御すること、を特徴とする。
【0015】
このような構成(1)によれば、開閉蓋は、複数のセルに対向して設けられるので、開閉蓋の開作動によってセルからの放熱が効果的に得られる。また、開閉制御部によって、予め設定されたモジュール内部の温度が高くなる高温側セルに対する開閉蓋を高温側セル以外に対する開閉蓋より大きく開くように制御するので、高温側セルにおいては開閉蓋が開き始めると、開き開度が大きいため、放熱効果が他のセルにおける放熱効果より大きく得られる。従って、高温側セルに対する冷却が迅速に行われ、モジュール内部のセル温度の差を極力小さくすることができる。
【0016】
(2)幾つかの実施形態では、前記開閉制御部は、形状記憶合金部材によって構成され複数の前記開閉蓋に対応して設置され、前記高温側セルに対する前記開閉制御部の形状記憶合金部材は、他のセルに対する前記開閉制御部の形状記憶合金部材より大型であること、を特徴とする。
【0017】
このような構成(2)によれば、開閉制御部は、形状記憶合金部材によって構成され、高温側セルに対する形状記憶合金部材は、他のセルに対する開閉制御部の形状記憶合金部材より大型であるので、開閉蓋の開閉量を大きくできる。
【0018】
(3)幾つかの実施形態では、前記形状記憶合金部材は、前記セルの温度が高くなると、前記開閉蓋の一端側を押し上げるように変形するとともに、前記高温側セルに対する前記形状記憶合金部材は、他のセルに対する形状記憶合金部材より前記開閉蓋の一端側の押し上げ量が大きくなるよう変形すること、を特徴とする。
【0019】
このような構成(3)によれば、形状記憶合金部材は、セルの温度が高くなると、開閉蓋の一端側を押し上げるように変形するので、簡単な機構によって開閉蓋の開閉及び開閉量の調整が可能である。また、両端側を押し上げるより、一端側の押上の方が、押し上げた後の開閉蓋の走行振動等に対する安定性を有する。
【0020】
(4)幾つかの実施形態では、前記開閉蓋の裏面に、前記形状記憶合金部材の変形側の端部が摺動して着脱自在に嵌合する溝が形成されること、を特徴とする。
【0021】
このような構成(4)によれば、形状記憶合金部材が直線状に延びるように変形した際には、形状記憶合金部材の変形側の端部が開閉蓋の一端側の裏面を摺動し、該裏面に形成された溝内に着脱自在に嵌合するので、走行振動等によって開閉蓋が開状態のときに落下することが防止される。
【0022】
(5)幾つかの実施形態では、前記開閉制御部は、前記セルの正極端子側に設置されること、を特徴とする。
【0023】
このような構成(5)によれば、セル温度は、一般的に正極端子側の方が負極端子側より温度が高くなるため、開閉制御部をセルの正極端子側に設置することによって、セル温度が高くなった際に早く検知して放熱することができる。
【0024】
(6)幾つかの実施形態では、複数の前記セルは、正極端子と負極端子とが前記セルの一端側と他端側とに、前記セルの整列方向において交互に位置される直列配列され、前記開閉蓋は、1セルごとに対向して1つ設置されること、を特徴とする。
【0025】
このような構成(6)によれば、セルごとに開閉蓋が対応して設置されるので、セル温度に応じた放熱効果を精度よく得ることができる。
【0026】
また、複数のセルの配列が、正極端子と負極端子とがセルの一端側と他端側とに、複数のセルの整列方向において交互に位置される直列配列であるので、開閉制御部の位置も複数のセルの整列方向において交互に位置される。従って、それぞれの開閉蓋は、一端側と他端側とが交互に開くように開放して放熱されるため、放熱がケース内で偏らず万遍なく行われる。
【0027】
(7)幾つかの実施形態では、前記高温側セルにおいては、1セルごとに1つの前記開閉蓋が設置され、前記高温側セル以外のセル領域においては、複数セルに対して1つの前記開閉蓋が設置される、こと、を特徴とする。
【0028】
このような構成(7)によれば、高温側セルにおいては1セルごとに1つ設置されるので、高温側セルのセル領域における放熱効果を高めることができる。さらに、高温側セル以外のセル領域においては、複数セルに対して1つの前記開閉蓋が設置されるので、開閉蓋及び開閉制御部の設置個数が低減されて装置構成を簡素化できる。
【0029】
(8)幾つかの実施形態では、複数の前記セルは、正極端子と負極端子とが前記セルの整列方向において前記セルの一端側と他端側との同一側に位置される並列配列されて1つのセル群を構成し、複数の前記セル群は、正極端子群と負極端子群とがセル群の配列方向において前記セル群の一端側と他端側とに交互に位置される直列配列され、前記開閉蓋は前記セル群ごとに1つ設置されること、を特徴とする。
【0030】
このような構成(8)によれば、並列配列の複数のセルからなるセル群が複数直列配列されており、開閉蓋は複数のセル群ごとに1つ設置されるので、直列配列される複数のセル群ごとに開閉蓋の一端側と他端側とが交互に開くので、放熱がケース内で偏らず万遍なく行われるとともに、開閉蓋及び開閉制御部の設置個数の低減が可能になる。
【発明の効果】
【0031】
本開示の少なくとも一つの実施形態によれば、複数のセルが並設される電池モジュールのモジュール内部のセル温度の差を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1A】本開示の一実施形態に係る電池モジュール装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図1B】
図1に示した電池モジュール装置において、電池セルの温度が上昇した状態態を概略的に示す斜視図である。
【
図2A】
図1に示した電池モジュール装置において、構成を概略的に示す長側面断面図である。
【
図2B】
図2Aに示した電池モジュール装置において、電池セルの温度が上昇した状態態を概略的に示す長側面断面図である。
【
図3A】
図1に示した電池モジュール装置において、構成を概略的に示す短側面断面図である。
【
図3B】
図3Aに示した電池モジュール装置において、電池セルの温度が上昇した状態態を概略的に示す短側面断面図である。
【
図6】開閉蓋の裏側に形成された溝の形状を示す裏面側斜視図である。
【
図7】
図1に示した電池モジュール装置において、電池セルの配列と形状記憶合金部材の配置と開閉蓋の設置状態を概略的に示す上面平面図である。
【
図8】
図7に対応する他の実施形態を示し、電池セルの配列と形状記憶合金部材の配置と開閉蓋の設置状態を概略的に示す上面平面図である。
【
図9】
図7に対応する別の他の実施形態を示し、電池セルの配列と形状記憶合金部材の配置と開閉蓋の設置状態を概略的に示す上面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本開示の実施形態に係る電池モジュール装置について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示に限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0034】
(一実施形態)
図1A~
図7を参照して本開示の一実施形態に係る電池モジュール装置1について説明する。電池モジュール装置1は、バッテリの電力だけでモータ駆動するEV(電気自動車)や、エンジンとモータとの2つの動力を搭載しこれらを効率的に使い分けるHV(ハイブリッド自動車)や、外部からの給電及び外部への給電が可能でエンジンとモータとの2つの動力を搭載しこれらを効率的に使い分けるPHEV(プラグインハイブリッド自動車)等の電動車両に搭載される。
【0035】
図1Aは、電池モジュール装置1の全体構成を概略的に示す斜視図である。
図1Aに示すように、複数(例えば8個)の電池セル(セル)3(3a~3h)が整列して並設されて電池モジュール(モジュール)5を構成している。
【0036】
単電池である電池セル3は、同一形状および同一大きさ有し、さらに、電池セル3は、上面平面視が長方形の細長い直方体形状を有している。そして、平面視の長方形状の長辺部分が隣り合うように整列され、整列された状態でこれら複数の電池セル3(3a~3h)はケース7内に収容されている。
【0037】
ケース7は、整列状態の複数の電池セル3を収容可能なように直方体の箱形状に形成され、箱形状の上面は開口して一つの開口部9が形成されている。開口部9には、複数の電池セル3の上面と対向するように複数の開閉蓋11(11a~11h)が設置され、開閉蓋11が開くことで開閉蓋11に対向する電池セル3の上面からケース7の外部へ温度上昇したケース7の内部空気を放出して電池セル3が放熱(冷却)される。
【0038】
複数の開閉蓋11(11a~11h)の大きさは、同一の大きさであり、複数の電池セル3(3a~3h)の上面に対向するように設置され、長方形状の長辺部分が接するように近づいて設置される。従って、複数の開閉蓋11a~11hが全て閉じると、ケース7の開口部9を覆うカバー12となる。すなわち、開閉蓋11a~11hは、ケース7のカバー12が複数に分割されて構成されている。
【0039】
なお、この開閉蓋11については、一つの開口部9に対するカバー12が複数に分割されて構成される場合だけでなく、カバー12に、複数の開口部が形成され、その複数の開口部にそれぞれ開閉蓋が設けられるように構成してもよい。
【0040】
また、複数の開閉蓋11a~11hのそれぞれには、電池セル3の温度により変位して、それぞれの電池セル3a~3hの上面に対向する開閉蓋11a~11hの開閉動作を行う開閉制御部13a~13hが設置されている。
【0041】
この開閉制御部13は、電池モジュール5を構成する電池セル3のうち、モジュール内部において温度が高くなりやすい高温側セル3Xを予め設定しておき、その高温側セル3Xに対する開閉蓋11を高温側セル3X以外の中温側セル3Yに対する開閉蓋11より大きい開度で開閉作動するように制御する。
【0042】
図1、2に示すように、複数の電池セル3a~3hが隣り合って整列されていると、中央側にある電池セル3c~3fは、その他の電池セル3a~3b、3g~3hに比べて、放熱性が悪く、温度が高くなりやすい。
【0043】
そこで、予め、中央側の電池セル3c~3fを高温側セル3Xと設定し、その他の電池セル3a~3b、3g~3hを中温側セル3Yと設定しておく。そして、開閉蓋11a~11hのそれぞれに対応して設置された開閉制御部13a~13hは、高温側セル3Xに対応する開閉蓋11c~11fを、中温側セル3Yに対応する開閉蓋11a~11b、11g~11hより大きい開度で開閉作動するように制御する。
【0044】
以上のような一実施形態の構成によれば、複数の開閉蓋11(11a~11h)は、複数の電池セル3(3a~3h)の上面に対向するように設置されるので、開閉蓋11の開作動によって電池セル3からの放熱が効果的に得られる。
【0045】
また、開閉制御部13によって、予め設定された電池モジュール5の内部の温度が高くなる高温側セル3Xに対する開閉蓋11c~11fを中温側セル3Yに対する開閉蓋11a~11b、11g~11hより大きく開くように制御するので、高温側セル3Xにおいては開閉蓋11c~11fが開き始めると、開き開度が大きいため、放熱効果が他のセルにおける放熱効果より大きく得られる。従って、高温側セル3Xに対する冷却が中温側セル3Yより迅速に行われ、電池モジュール5内部のセル温度の差を極力小さくすることができる。
【0046】
幾つかの実施形態では、
図1~7に示すように、開閉制御部13は、形状記憶合金部材15によって構成され複数の開閉蓋11a~11hにそれぞれ設置されている。高温側セル3Xに対する開閉制御部13c~13fである形状記憶合金部材15c~15fは、中温側セル3Yに対する開閉制御部13a~13b、13g~13hである形状記憶合金部材15a~15b、15g~15hより大型に形成されている。
【0047】
すなわち、形状記憶合金部材15は、電池セル3の温度が高くなると、開閉蓋11の平面視での長方形状の一端側を押し上げるように変形するとともに、高温側セル3Xに対する形状記憶合金部材15c~15fは、中温側セル3Yに対する形状記憶合金部材15a~15b、15g~15hより開閉蓋11の一端側の押し上げ量が大きくなるよう変形する。
【0048】
形状記憶合金部材15は、電池セル3の劣化防止のため、電池セル3が約30℃付近から開き始めて放熱できるように、形状回復温度の開始が30~40℃付近のニッケルチタン(Ni-Ti)合金や、ニッケルチタン銅(Ni-Ti-Cu)合金が使用されることが望ましい。
【0049】
形状記憶合金部材15は、長方形の平板形状を有しており、断面形状は縦部151と横部152とからなる「L」字形状を有している。
図3A~
図4Bに示すように電池セル3の温度が上昇すると、「L」の字から「く」の字若しくは直線状の「I」の字に変形して、開閉蓋11の一端側を押し上げる。
【0050】
例えば、
図3Aに示すように、電池セル3の温度が形状回復温度に達していない場合には、形状記憶合金部材15は、「L」の字を上下逆にした状態で、縦部151が、電池セル3の側面及び/又は上面に接着剤で固定され、横部152の上面には開閉蓋11の一端側が乗った状態である。この横部152の上面は、開閉蓋11には固定されていない。このような状態で形状記憶合金部材15は、それぞれの電池セル3に装着されている。
【0051】
高温側セル3Xの形状記憶合金部材15c~15fは、上述した「L」字形状の横部152の長さが、中温側セル3Yの形状記憶合金部材15a~15b、15g~15hより長い形状に形成されている。
【0052】
このような、実施形態の構成によれば、高温側セル3Xに対する形状記憶合金部材15c~15fは、中温側セル3Yの形状記憶合金部材15a~15b、15g~15hより大型であるので、すなわち、「L」字形状の横部152の長さが、中温側セル3Yの形状記憶合金部材15a~15b、15g~15hのものより長い形状に形成されているので、高温側セル3Xに対する形状記憶合金部材15c~15fは、電池セル3の温度が形状回復温度以上に上昇して、「L」の字から「く」の字、さらに直線形状に変形する際に、「L」字の横部152の上面に乗った開閉蓋11の一端側が、形状記憶合金部材15の変形側端部によって、中温側セル3Yの形状記憶合金部材15a~15b、15g~15hより大きな開度に押し上げられる。
【0053】
従って、形状記憶合金部材15は、電池セル3の温度が上昇すると、開閉蓋11の一端側を押し上げるように変形するので、簡単な機構によって開閉蓋11の開閉が可能である。また、簡単な構成によって、すなわち、「L」字形状の横部152の長さを調整することで、開閉蓋11の開度調整を簡単に行うことができる。また、開閉蓋11の両端側を押し上げるより、一端側を押上げる方が押し上げた後の開閉蓋11の走行振動等に対する安定性を有する。
【0054】
幾つかの実施形態では、
図4A、
図4B、
図6に示すように、開閉蓋11の裏面に、形状記憶合金部材15の変形側の端部が摺動し着脱自在に嵌合する溝17が形成されており、形状記憶合金部材15が直線形状に変形する際には、形状記憶合金部材15の変形側の端部が開閉蓋11の一端側の裏面に当接して摺動し、溝17内に嵌合し、また、L字形状に戻るように変形する際には溝17内から離脱できるようになっている。
【0055】
図6に示すように、開閉蓋11の裏面に形成された溝17は、溝幅が形状記憶合金部材15の幅と略同じであり、溝幅を短辺とする長方形状に形成されている。さらに、
図4A、4Bに示すように、形状記憶合金部材15の変形側の端部が開閉蓋11の裏面を摺動し、溝17に嵌合及び溝17から離脱しやすいように、溝17内は傾斜面19に形成されている。なお、
図4Aは、
図3AのA部の拡大図であり、形状記憶合金部材15が形状回復温度に達しない状態を示し、
図4Bは、
図3BのC部の拡大図であり、形状記憶合金部材15が形状回復温度以上に上昇した状態を示している。
【0056】
また、開閉蓋11の他端側は、
図5A、5Bに示すように、ケース7から水平方向に突設された支持棚21に支持される。支持棚21とケース7との接続部の角には、凹部23が形成され、開閉蓋11の一端側が形状記憶合金部材15によって押し上げられた際に、他端側が凹部23に入り込むようになっている。なお、
図5Aは、
図3AのB部の拡大図であり、形状記憶合金部材15が形状回復温度に達しない状態を示し、
図5Bは、
図3BのD部の拡大図であり、形状記憶合金部材15が形状回復温度以上に上昇した状態を示している。
【0057】
このような実施形態の構成によれば、形状記憶合金部材15が変形した際に、形状記憶合金部材15の変形側の端部は開閉蓋11の一端側の裏面を摺動し、該裏面に形成された溝17内に着脱自在に嵌合するので、走行振動等によって開閉蓋11が開状態のときに形状記憶合金部材15の変形側の端部から落下することが防止される。
【0058】
また、開閉蓋11の他端側においては、支持棚21とケース7との接続部の角に形成された凹部23内に、開閉蓋11の他端部が入り込み、開閉蓋11がケース7から落下することが防止される。なお、開閉蓋11の他端側のケース7への支持は、
図5A、5Bに示すように、支持棚21上に乗せる構造ではなく、回転ヒンジ構造によってケース7に支持するようにしてもよい。
【0059】
幾つかの実施形態では、
図1A、1B、7に示すように開閉制御部13である形状記憶合金部材15は、電池セル3の正極端子25側に設置されている。すなわち、形状記憶合金部材15によって開閉蓋11が押し上げられるのが、電池セル3の正極端子25側である。
【0060】
また、複数の電池セル3a~3hの配列は、正極端子25と負極端子27との位置が電池セル3の一端側と他端側とに電池セル3の整列方向において交互に位置される直列配列である。この直列配列の場合には、形状記憶合金部材15は、電池セル3a~3hごとに1つ、且つ、各電池セル3a~3hの一端側と他端側とに電池セル3の整列方向において交互に配置される。
【0061】
このような実施形態の構成によれば、電池セル3の温度は、一般的に正極端子25側の方が負極端子27側より温度は高くなるため、形状記憶合金部材15を電池セル3の正極端子25側に設置することによって、電池セル3の温度が高くなった際に早く温度変化を検知して、開閉蓋11を開き放熱できる。
【0062】
また、それぞれの開閉蓋11a~11hは、形状記憶合金部材15によって押し上げられて開く端部側が電池セル3の配列方向において交互に位置されるので、ケース7内の放熱がケース7内で偏らず万遍なく行われる。
【0063】
さらに、開閉蓋11は、1電池セル3ごとに対応して1つ設置されるので、それぞれの電池セル3a~3hの温度に応じて放熱ができ、ケース7内の冷却を精度よく行うことができる。
【0064】
(他の実施形態)
次に、
図8を参照して、他の実施形態を説明する。他の実施形態は、一実施形態に対して、複数の電池セル3a~3hの配列は同じ直列配列であるが、開閉蓋31の設置構成が異なる。他の実施形態において、一実施形態の構成要件と同じものは同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0065】
図8は、他の実施形態における電池セル3a~3hの配列と形状記憶合金部材15の配置と開閉蓋31の設置状態を示す上面平面図である。
図8に示すように、複数の電池セル3a~3hの配列は、
図7に示す一実施形態と同様に、正極端子25と負極端子27とが
図8の横方向すなわち電池セル3の配列方向において交互に並ぶ直列配列状態である。
【0066】
複数の電池セル3a~3hのうち温度が上がりやすい高温側セル3d、3eに対しては、それぞれに1つの開閉蓋31b、31cを設置し、その他の電池セル3a~3c、3f~3hに対しては、3つの電池セル3a~3cに対して1つの開閉蓋31a、及び、3つの電池セル3f~3hに対して1つの開閉蓋31dが設置されている。
【0067】
このような他の実施形態の構成によれば、高温側セル3d、3eと設定されたセル領域においては1電池セルごとに1つの開閉蓋31b、31cが設置されるので、高温側セル3d、3eのセル領域における放熱効果を高めることができる。さらに、高温側セル3d、3e以外のセルに対しては、高温側セル3d、3eほど温度上昇しないため、3つの電池セル3a~3c、3f~3hにそれぞれ1つの開閉蓋31a、31dが設置されるので、開閉蓋31の設置個数が低減されて装置構成を簡素化できる。
【0068】
(別の他の実施形態)
次に、
図9を参照して、別の他の実施形態を説明する。別の他の実施形態は、一実施形態に対して、電池セル3a~3hの配列が異なるとともに、開閉蓋41の設置が異なる。別の他の実施形態において、一実施形態の構成要件と同じものは同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0069】
図9は、別の他の実施形態における電池セル3a~3hの配列と形状記憶合金部材15の配置と開閉蓋41の設置状態を示す上面平面図であり、
図9に示すように、複数の電池セル3a~3hの配列は、正極端子25と負極端子27とが
図9の横方向に複数並ぶ並列配列を有し、並列配列される電池セル群3Zごとに開閉蓋41a~41dがそれぞれ1つ設置される。
【0070】
すなわち、電池セル3a~3hの配列は、例えば、2つの電池セル3aと3b、3cと3d、3eと3f、3gと3hは、正極端子と負極端子とが電池セル3の整列方向において電池セル3の一端側と他端側との同一側に位置される並列配列され、並列配列される2つの電池セルごとに1つの電池セル群3Zを構成する。さらに、複数の電池セル群3Zは、電池セル群3Zの正極端子群と負極端子群とが電池セル群3Zの配列方向において電池セル群3Zの一端側と他端側とに交互に位置される直列配列される。そして、開閉蓋41a~41dは電池セル群3Zごとに1つ設置される。
【0071】
このような別の他の実施形態の構成によれば、開閉蓋41a~41dは、並列配列される複数の電池セルからなる4つの電池セル群3Zに対してそれぞれ1つ設置されるので、開閉蓋41の設置個数が低減されて装置構成が簡素化されるとともに、開閉蓋41a~41dは、電池セル群3Zの配列方向において電池セル群3Zの一端側と他端側とで交互に押し開かれるので、ケース7内を偏りなく放熱できる。なお並列配列される電池セル数はケース7の大きさや電池モジュール5を構成する電池セル3の数によって適宜設定される。
【符号の説明】
【0072】
1 電池モジュール装置
3(3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h) 電池セル(セル)
5 電池モジュール(モジュール)
7 ケース
9 開口部
11(11a、111b、11c、11d、11e、11f、11g、11h)、31(31a、31b、31c、31d)、41(41a、41b、41c、41d) 開閉蓋
12 カバー
13(13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13h) 開閉制御部
15(15a、15b、15c、15d、15e、15f、15g、15h) 形状記憶合金部材
151 縦部
152 横部
17 溝
19 傾斜面
21 支持棚
23 凹部
3X 高温側セル
3Y 中温側セル
3Z 電池セル群