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特開2023-132624情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法、および、コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132624
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法、および、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20230914BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20230914BHJP
   G16Y 10/05 20200101ALI20230914BHJP
【FI】
G06Q50/02
A01G7/00 603
G16Y10/05
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038049
(22)【出願日】2022-03-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度 戦略的プロジェクト研究推進事業委託事業「AIを活用した食品における効率的な生産流通に向けた研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北 栄輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 麻央
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】
【課題】環境指標値を測定するための専用の装置を設置することなく、精度良く環境指標値を推定する。
【解決手段】圃場における所定の環境指標値を推定するための情報処理装置は、モデル取得部と、対象画像取得部と、環境指標値推定部とを備える。モデル取得部は、環境指標値推定モデルを取得する。環境指標値推定モデルは、圃場を撮影した画像を説明変数とし、該画像の撮影時の圃場における環境指標値を目的変数とし、所定の学習手法を用いた機械学習を行うことにより生成されたモデルである。対象画像取得部は、対象圃場を撮影した対象画像を取得する。環境指標値推定部は、対象画像と環境指標値推定モデルとを用いて、対象画像の撮影時の対象圃場における環境指標値を推定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場における所定の環境指標値を推定するための情報処理装置であって、
環境指標値推定モデルを取得するモデル取得部であって、前記環境指標値推定モデルは、圃場を撮影した画像を説明変数とし、該画像の撮影時の圃場における前記環境指標値を目的変数とし、所定の学習手法を用いた機械学習を行うことにより生成されたモデルである、モデル取得部と、
対象圃場を撮影した対象画像を取得する対象画像取得部と、
前記対象画像と前記環境指標値推定モデルとを用いて、前記対象画像の撮影時の前記対象圃場における前記環境指標値を推定する環境指標値推定部と、
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、さらに、
圃場を撮影した複数の画像と、各画像の撮影時の圃場における前記環境指標値と、が対応付けられた訓練データを取得する訓練データ取得部を備え、
前記モデル取得部は、前記訓練データを用いた前記機械学習を行って前記環境指標値推定モデルを作成することにより、前記環境指標値推定モデルを取得する、情報処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の情報処理装置であって、
前記説明変数は、画像の撮影時を示す情報を含む、情報処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の情報処理装置であって、
前記説明変数は、画像の輝度特性を示す情報を含む、情報処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の情報処理装置であって、
前記環境指標値は、気温と、日射量と、湿度と、の少なくとも1つを含む、情報処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の情報処理装置であって、
前記圃場は、半開放型植物工場である、情報処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の情報処理装置と、
前記情報処理装置との間で通信ネットワークを介して通信可能な端末装置と、
を備える情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、さらに、前記環境指標値の推定結果を外部装置に向けて送信する情報送信部を備え、
前記端末装置は、前記通信ネットワークを介して受信した前記環境指標値の推定結果を表示する表示部を備える、情報処理システム。
【請求項8】
圃場における所定の環境指標値を推定するための情報処理方法であって、
環境指標値推定モデルを取得する工程であって、前記環境指標値推定モデルは、圃場を撮影した画像を説明変数とし、該画像の撮影時の圃場における前記環境指標値を目的変数とし、所定の学習手法を用いた機械学習を行うことにより生成されたモデルである、環境指標値推定モデルを取得する工程と、
対象圃場を撮影した対象画像を取得する工程と、
前記対象画像と前記環境指標値推定モデルとを用いて、前記対象画像の撮影時の前記対象圃場における前記環境指標値を推定する工程と、
を備える、情報処理方法。
【請求項9】
圃場における所定の環境指標値を推定するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
環境指標値推定モデルを取得する処理であって、前記環境指標値推定モデルは、圃場を撮影した画像を説明変数とし、該画像の撮影時の圃場における前記環境指標値を目的変数とし、所定の学習手法を用いた機械学習を行うことにより生成されたモデルである、環境指標値推定モデルを取得する処理と、
対象圃場を撮影した対象画像を取得する処理と、
前記対象画像と前記環境指標値推定モデルとを用いて、前記対象画像の撮影時の前記対象圃場における前記環境指標値を推定する処理と、
を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、圃場における所定の環境指標値を推定する情報処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圃場に撮影装置を設置し、圃場を撮影した画像を用いて植物(葉物野菜、果樹、花き類等)の栽培の効率化や最適化を実現するための技術が種々提案されている。例えば、篤農家が行った果樹栽培において、果樹を撮影した画像から果実のサイズおよび葉面積の積算値を求め、果実のサイズおよび葉面積の積算値に基づき果実の生育状態を近似した生育曲線を決定し、該生育曲線を用いて栽培の果実の生育状態を評価し、該評価結果に基づき果実の収穫日を予測する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-187259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
植物の栽培においては、圃場の環境指標値(気温、日射量、湿度等)を適切に調整することが重要である。圃場の環境指標値は、圃場に専用の装置(センサ等)を設置することより測定することができる。
【0005】
しかしながら、上述したように、圃場に撮影装置を設置している場合において、さらに、環境指標値を測定するための専用の装置を設置すると、装置の設置コストや設置スペースが増大する、という課題がある。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示される情報処理装置は、圃場における所定の環境指標値を推定するための情報処理装置であって、モデル取得部と、対象画像取得部と、環境指標値推定部とを備える。モデル取得部は、環境指標値推定モデルを取得する。前記環境指標値推定モデルは、圃場を撮影した画像を説明変数とし、該画像の撮影時の圃場における前記環境指標値を目的変数とし、所定の学習手法を用いた機械学習を行うことにより生成されたモデルである。対象画像取得部は、対象圃場を撮影した対象画像を取得する。環境指標値推定部は、前記対象画像と前記環境指標値推定モデルとを用いて、前記対象画像の撮影時の前記対象圃場における前記環境指標値を推定する。
【0009】
本情報処理装置によれば、対象圃場を撮影した対象画像と環境指標値推定モデルとを用いて、対象画像の撮影時の圃場の環境指標値を推定することができる。そのため、環境指標値を測定するための専用の装置を設置することなく、精度良く環境指標値を推定することができる。
【0010】
(2)上記情報処理装置において、さらに、圃場を撮影した複数の画像と、各画像の撮影時の圃場における前記環境指標値と、が対応付けられた訓練データを取得する訓練データ取得部を備え、前記モデル取得部は、前記訓練データを用いた前記機械学習を行って前記環境指標値推定モデルを作成することにより、前記環境指標値推定モデルを取得する構成としてもよい。本構成を採用すれば、他の装置を用いずとも、環境指標値推定モデルを取得することができ、該環境指標値推定モデルを用いて圃場の環境指標値を推定することができる。
【0011】
(3)上記情報処理装置において、前記説明変数は、画像の撮影時を示す情報を含む構成としてもよい。本構成を採用すれば、環境指標値推定モデルを用いてさらに精度良く圃場の環境指標値を推定することができる。
【0012】
(4)上記情報処理装置において、前記説明変数は、画像の輝度特性を示す情報を含む構成としてもよい。本構成を採用すれば、環境指標値推定モデルを用いてさらに精度良く圃場の環境指標値を推定することができる。
【0013】
(5)上記情報処理装置において、前記環境指標値は、気温と、日射量と、湿度と、の少なくとも1つを含む構成としてもよい。本構成を採用すれば、気温と、日射量と、湿度と、の少なくとも1つについて、環境指標値を測定するための専用の装置を設置することなく、精度良く環境指標値を推定することができる。
【0014】
(6)上記情報処理装置において、前記圃場は、半開放型植物工場である構成としてもよい。本構成を採用すれば、環境指標値を測定するための専用の装置を設置することなく、精度良く半開放型植物工場内の環境指標値を推定することができる。
【0015】
(7)本明細書に開示される上記情報処理システムは、上記情報処理装置と、前記情報処理装置との間で通信ネットワークを介して通信可能な端末装置と、を備える。前記情報処理装置は、さらに、前記環境指標値の推定結果を外部装置に向けて送信する情報送信部を備え、前記端末装置は、前記通信ネットワークを介して受信した前記環境指標値の推定結果を表示する表示部を備える。本情報処理システムによれば、情報処理装置の情報送信部が、環境指標値の推定結果を端末装置に向けて送信し、端末装置の表示部が環境指標値の推定結果を表示するため、端末装置の使用者は、圃場以外の地点に居ても圃場の環境指標値を把握することができ、圃場の管理の効率化や最適化をさらに効果的に実現することができる。
【0016】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法、それらの方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態における圃場管理システム10の概略構成を示す説明図
図2】圃場管理サーバ100の構成を概略的に示すブロック図
図3】本実施形態における気温推定モデル作成処理の内容を示すフローチャート
図4】訓練データTDの一例を概念的に示す説明図
図5】気温推定モデルMOの一例を概念的に示す説明図
図6】本実施形態における植物栽培支援処理の内容を示すフローチャート
図7】本実施形態における植物栽培支援処理中に端末装置200の表示部210に表示される画面の一例を示す説明図
図8】気温推定モデルMOの評価結果を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.実施形態:
A-1.圃場管理システム10の構成:
図1は、本実施形態における圃場管理システム10の概略構成を示す説明図である。圃場管理システム10は、圃場の管理を行うためのシステムであり、より具体的には、圃場の環境指標値(気温、日射量、湿度等)を推定するためのシステムである。推定された環境指標値は、例えば、農作業者や農作業管理者による圃場の環境の把握のために用いられる。なお、推定された環境指標値が、栽培植物の生長予測(例えば、草丈予測や乾燥重量予測)のための予測式のパラメータ決定に用いられてもよい。
【0019】
本実施形態では、圃場管理システム10は、環境指標値の1つとしての気温を推定する。また、本実施形態において、圃場は、半開放型(太陽光利用型)の植物工場PFである。ここで、半開放型の植物工場PFとは、例えばビニールハウスのように、太陽光を遮断しない材料によって囲われた圃場である。ただし、圃場管理システム10は、他の種類の圃場(例えば、閉鎖型や開放型といった他のタイプの植物工場、露地栽培用の圃場等)にも適用可能である。なお、図1には、1つの植物工場PFのみが示されているが、圃場管理システム10は、複数の植物工場PFのそれぞれの管理に適用可能である。以下では、圃場管理システム10による、特定の1つの植物工場PFの管理について説明する。また、圃場における栽培対象の植物は、葉物野菜(例えば、ほうれん草)や果樹(例えば、トマト)、花き類等、任意の種類の植物であってよい。圃場管理システム10は、特許請求の範囲における情報処理システムの一例であり、植物工場PFは、特許請求の範囲における圃場の一例である。
【0020】
圃場管理システム10は、圃場管理サーバ100と、端末装置200と、植物工場PFに設置された撮影装置300とを備える。圃場管理システム10を構成する各装置は、通信ネットワークNETを介して互いに通信可能に接続されている。
【0021】
撮影装置300は、植物工場PF内に設置され、植物工場PF内を撮影することによって画像I(例えば、RGB画像データ)を生成する装置である。本実施形態では、撮影装置300は、植物工場PF内における予め設定された範囲、例えば植物工場PF内の略全景をカバーする範囲を被写体として、定期的に(例えば、1時間毎に、あるいは、毎日定刻に)または連続的に撮影を行うwebカメラである。また、撮影装置300は、図示しない通信インターフェースを有しており、撮影の都度、撮影により生成された画像Iを、通信ネットワークNETを介して圃場管理サーバ100に送信する。なお、圃場管理システム10の管理対象の植物工場PFが複数ある場合には、各植物工場PFに撮影装置300が設置される。
【0022】
端末装置200は、農作業者や農作業管理者により使用される装置であり、例えば、スマートフォンやタブレット型端末である。端末装置200は、例えば液晶ディスプレイ等により構成された表示部210を備える。また、端末装置200には、圃場管理のためのアプリケーションプログラムがインストールされている。詳しくは後述するが、端末装置200の使用者は、該アプリケーションプログラムを用いることにより、表示部210に植物工場PF内の気温の推定値を表示させることができる。
【0023】
圃場管理サーバ100は、植物工場PFを管理するためのサーバ装置である。図2は、圃場管理サーバ100の構成を概略的に示すブロック図である。圃場管理サーバ100は、制御部110と、記憶部120と、表示部130と、操作入力部140と、インターフェース部150とを備える。これらの各部は、バス190を介して互いに通信可能に接続されている。圃場管理サーバ100は、特許請求の範囲における情報処理装置の一例である。
【0024】
圃場管理サーバ100の表示部130は、例えば液晶ディスプレイ等により構成され、各種の画像や情報を表示する。また、操作入力部140は、例えばキーボードやマウス、ボタン、マイク等により構成され、管理者の操作や指示を受け付ける。なお、表示部130がタッチパネルを備えることにより、操作入力部140として機能するとしてもよい。また、インターフェース部150は、例えばLANインターフェースやUSBインターフェース等により構成され、有線または無線により他の装置との通信を行う。
【0025】
圃場管理サーバ100の記憶部120は、例えばROMやRAM、ハードディスクドライブ(HDD)等により構成され、各種のプログラムやデータを記憶したり、各種のプログラムを実行する際の作業領域やデータの一時的な記憶領域として利用されたりする。例えば、記憶部120には、後述する気温推定モデル作成処理等を実行するためのコンピュータプログラムである圃場管理プログラムCPが格納されている。圃場管理プログラムCPは、例えば、CD-ROMやDVD-ROM、USBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体(不図示)に格納された状態で提供され、あるいは、インターフェース部150を介して外部装置(ネットワーク上のサーバや他の端末装置)から取得可能な状態で提供され、圃場管理サーバ100上で動作可能な状態で記憶部120に格納される。
【0026】
また、圃場管理サーバ100の記憶部120には、後述する気温推定モデル作成処理等の実行中に、訓練データTDと、気温推定モデルMOと、対象画像I(o)と、推定気温データSDとが格納される。これらの情報の内容については、後述する気温推定モデル作成処理等の説明に合わせて説明する。
【0027】
圃場管理サーバ100の制御部110は、例えばCPU等により構成され、記憶部120から読み出したコンピュータプログラムを実行することにより、圃場管理サーバ100の動作を制御する。例えば、制御部110は、記憶部120から圃場管理プログラムCPを読み出して実行することにより、後述の気温推定モデル作成処理等を実行する圃場管理部111として機能する。圃場管理部111は、訓練データ取得部112と、モデル取得部114と、対象画像取得部115と、気温推定部116と、情報送信部118とを含む。これら各部の機能については、後述の気温推定モデル作成処理等の説明に合わせて説明する。
【0028】
A-2.気温推定モデル作成処理:
次に、本実施形態の圃場管理サーバ100により実行される気温推定モデル作成処理について説明する。図3は、本実施形態における気温推定モデル作成処理の内容を示すフローチャートである。気温推定モデル作成処理は、植物工場PFを撮影することにより生成された画像Iに基づき植物工場PF内の気温を推定するための気温推定モデルMOを作成する処理である。気温推定モデル作成処理は、管理者が、圃場管理サーバ100の操作入力部140を操作して開始指示を入力したことに応じて開始される。
【0029】
はじめに、圃場管理サーバ100の訓練データ取得部112(図2)が、訓練データTDを取得する(S110)。図4は、訓練データTDの一例を概念的に示す説明図である。図4に示すように、訓練データTDは、植物工場PF内を撮影することにより生成された複数の訓練用画像I(t)と、各訓練用画像I(t)の撮影時の植物工場PF内の気温を示す気温データと、が対応付けられたデータである。なお、訓練用画像I(t)は、例えば、植物工場PFに設置された撮影装置300により撮影された画像である。ただし、訓練用画像I(t)としては、植物工場PFに設置された撮影装置300により撮影された画像に限らず、任意の撮影装置により撮影された画像を用いることができ、例えば、農作業者が自らの端末装置200(例えば、スマートフォン)を用いて撮影した画像を用いることができる。訓練データ取得部112は、機械学習の際のメモリフローを防止するために、取得された訓練用画像I(t)のサイズ(画質)を落とす処理を行ってもよい。例えば、取得された訓練用画像I(t)のサイズが640×480である場合、訓練データ取得部112は、画像のサイズを320×240に落としてもよい。また、訓練データ取得部112は、取得された訓練用画像I(t)のうち、夜間に撮影された画像(何も写っていない画像)を除外するようにしてもよい。夜間に撮影された画像の抽出は、例えば、画像を解析して所定の条件(例えば、1画像内の「RGB値の1つが50以下である」確率が70%以上であるという条件)を満たすものを抽出する方法や、画像データに含まれる撮影時刻を参照する方法により実現することができる。訓練データ取得部112は、訓練用画像I(t)をインターフェース部150を介して取得し、記憶部120に格納する。
【0030】
また、訓練データ取得部112は、記憶部120に格納された複数の訓練用画像I(t)のそれぞれについて、画像撮影時の植物工場PF内の気温を示す気温データを取得する。気温データは、植物工場PFの現地において農作業者が測定し、日時と共に記録した実測値を示す資料を参照して取得される。あるいは、植物工場PFに設置された気温センサ(不図示)により測定された気温データが、インターフェース部150を介して取得されてもよい。訓練データ取得部112は、取得された気温データを訓練用画像I(t)に関連付けることにより、ラベル付きデータとしての訓練データTDを作成する。例えば、図4の上段に示す例では、2020年4月1日に撮影された訓練用画像I(t)に、気温データとして25.0℃という値が関連付けられている。
【0031】
なお、1つの植物工場PFに複数の撮影装置300が設置されている場合に、訓練データ取得部112は、複数の撮影装置300から取得された画像Iに基づき訓練データTDを取得するとしてもよい。また、訓練データ取得部112は、複数の植物工場PFのそれぞれに設置された撮影装置300から取得された画像Iに基づき訓練データTDを取得するとしてもよい。また、訓練データ取得部112は、撮影装置300から取得された画像Iに対して、回転、シフト、明るさ調整等によるデータオーギュメンテーション(データ拡張)を行うことによって、訓練用画像I(t)を生成するとしてもよい。
【0032】
次に、圃場管理サーバ100のモデル取得部114(図2)が、訓練データTDを用いた所定の機械学習を行うことにより、気温推定モデルMOを作成する(図3のS120)。図5は、気温推定モデルMOの一例を概念的に示す説明図である。図5に示すように、気温推定モデルMOは、対象の植物工場PF内を撮影した対象画像I(o)に基づき、該対象画像I(o)の撮影時の植物工場PF内の気温を推定するためのモデルである。
【0033】
モデル取得部114は、訓練データTDに含まれる訓練用画像I(t)を入力変数とし、各訓練用画像I(t)に関連付けられた気温を目的変数とし、所定の評価指標(例えば、平均二乗誤差(MSE)、平均二乗平方根誤差(RMSE)、平均絶対誤差(MAE)、決定係数(R2)等)を参照しつつ公知の機械学習を実行することにより、気温推定モデルMOを作成する。作成された気温推定モデルMOは、圃場管理サーバ100の記憶部120に格納される。なお、気温推定モデルMOの作成には、例えば、重回帰分析、Random Forest、XGBoost、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)等の種々の公知の機械学習のアルゴリムを利用可能である。気温推定モデルMOは、特許請求の範囲における環境指標値推定モデルの一例である。以上の工程により、気温推定モデルMOを作成する気温推定モデル作成処理が完了する。
【0034】
A-3.植物栽培支援処理:
次に、本実施形態の圃場管理サーバ100により実行される植物栽培支援処理について説明する。図6は、本実施形態における植物栽培支援処理の内容を示すフローチャートである。また、図7は、本実施形態における植物栽培支援処理中に端末装置200の表示部210に表示される画面の一例を示す説明図である。
【0035】
植物栽培支援処理は、農作業者による植物の栽培を支援するための処理である。より具体的には、植物栽培支援処理は、植物工場PF内を撮影することにより生成された画像Iである対象画像I(o)と、上述した気温推定モデルMOとを用いて、対象画像I(o)の撮影時の植物工場PF内の気温を推定する処理である。さらに、植物栽培支援処理は、推定された気温を示す情報を農作業者の端末装置200に表示させる処理である。植物栽培支援処理は、農作業者が端末装置200を操作したり圃場管理サーバ100の管理者が操作入力部140を操作したりして開始指示を入力したことに応じて開始される。
【0036】
植物栽培支援処理では、はじめに、圃場管理サーバ100の対象画像取得部115(図2)が、対象画像I(o)を取得する(S210)。上述したように、植物工場PFに設置された撮影装置300は、定期的に撮影を行っており、撮影の都度、撮影により生成された画像Iを通信ネットワークNETを介して圃場管理サーバ100に送信している。圃場管理サーバ100の対象画像取得部115は、撮影装置300から送信された画像Iを、インターフェース部150を介して取得し、対象画像I(o)として記憶部120に格納する。
【0037】
次に、圃場管理サーバ100の気温推定部116(図2)が、S210において取得された対象画像I(o)と、上述した気温推定モデルMOとを用いて、対象画像I(o)の撮影時の植物工場PF内の気温を推定する(S220)。気温推定部116は、図5に示すように、気温推定モデルMOに対象画像I(o)を入力し、気温推定モデルMOから出力される気温の推定値を取得することにより、気温を推定する。気温推定部116は、推定された気温を示す情報である推定気温データSDを生成し、記憶部120に格納する。気温推定部116は、特許請求の範囲における環境指標値推定部の一例である。
【0038】
次に、圃場管理サーバ100の情報送信部118(図2)が、S220において推定された気温を示す推定気温データSDを、インターフェース部150および通信ネットワークNETを介して、農作業者の端末装置200に向けて送信する(S230)。その結果、図7に示すように、端末装置200の表示部210に、ある日時における植物工場PF内の画像と、推定された気温とが表示される。これにより、農作業者は、植物工場PFに出向かなくても、植物工場PF内の気温を把握することができる。
【0039】
S230の処理の後には、圃場管理サーバ100の圃場管理部111(図2)は、栽培が終了したか(植物が収穫されたか)否かを判定する(S240)。S240の判定において、栽培はまだ終了していないと判定された場合には(S240:NO)、S210以降の処理が繰り返し実行される。上述した処理が繰り返し実行され、S240の判定において、栽培は終了したと判定された場合には(S240:YES)、物栽培支援処理は終了される。
【0040】
A-4.実施例:
上述した実施形態に従い気温推定モデルMOを作成し、その評価を行った。図8は、気温推定モデルMOの評価結果を示す説明図である。評価にあたっては、2019年10月22日から2021年7月22日までの期間において、ある植物工場PFを対象として、植物工場PF内の画像と、該画像の撮影時における植物工場PF内の気温の測定値とを収集した。収集された全8315件のデータのうち、7208件分のデータを訓練データとして用いて機械学習を行い、気温推定モデルMOを作成した。また、1107件分のデータをテストデータとし、気温推定モデルMOを用いて撮影時における植物工場PF内の気温を推定した。
【0041】
図8には、横軸に気温の実測値を取り、縦軸に気温の推定値を取ったときの散布図が示されている。図8に示すように、作成した気温推定モデルMOは、一見して、一定程度以上の推定精度を得られていると言える。また、評価指標としての平均二乗誤差(MSE)は、5.341とかなり小さい値であった。このように、本実施例の気温推定モデルMOは、植物工場PF内の気温の予測に関し、概ね良好な精度を示した。なお、本実施例の気温推定モデルMOの作成の際には、パラメータ最適化アルゴリズムを用いてパラメータを最適化したことにより、平均二乗誤差が12.307から上述した5.341へと減少し、気温推定モデルMOの推定精度が大幅に向上した。
【0042】
A-5.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の圃場管理サーバ100は、圃場である植物工場PFにおける環境指標値の1つである気温を推定するための情報処理装置であり、モデル取得部114と、対象画像取得部115と、気温推定部116とを備える。モデル取得部114は、気温推定モデルMOを取得する。気温推定モデルMOは、植物工場PFを撮影した画像Iを説明変数とし、該画像Iの撮影時の植物工場PF内の気温を目的変数とし、所定の学習手法を用いた機械学習を行うことにより生成されたモデルである。対象画像取得部115は、対象の植物工場PFを撮影した対象画像I(o)を取得する。気温推定部116は、対象画像I(o)と気温推定モデルMOとを用いて、対象画像I(o)の撮影時の植物工場PF内の気温を推定する。
【0043】
このように、本実施形態の圃場管理サーバ100によれば、植物工場PFを撮影した対象画像I(o)と気温推定モデルMOとを用いて、対象画像I(o)の撮影時の植物工場PF内の気温を推定することができる。そのため、気温を測定するための専用の装置を設置することなく、精度良く気温を推定することができる。
【0044】
また、本実施形態の圃場管理サーバ100は、さらに、訓練データ取得部112を備える。訓練データ取得部112は、植物工場PFを撮影した複数の画像Iと、各画像Iの撮影時の植物工場PF内の気温と、が対応付けられた訓練データTDを取得する。モデル取得部114は、訓練データTDを用いた機械学習を行って気温推定モデルMOを作成することにより、気温推定モデルMOを取得する。そのため、本実施形態の圃場管理サーバ100によれば、他の装置を用いずとも、気温推定モデルMOを取得することができ、該気温推定モデルMOを用いて植物工場PF内の気温を推定することができる。
【0045】
また、本実施形態の圃場管理システム10は、圃場管理サーバ100と、圃場管理サーバ100との間で通信ネットワークNETを介して通信可能な端末装置200とを備える。圃場管理サーバ100は、さらに、気温の推定結果を端末装置200に向けて送信する情報送信部118を備える。また、端末装置200は、通信ネットワークNETを介して受信した気温の推定結果を表示する表示部210を備える。このように、本実施形態の圃場管理システム10では、圃場管理サーバ100の情報送信部118が、気温の推定結果を端末装置200に向けて送信し、端末装置200の表示部210が気温の推定結果を表示するため、端末装置200の使用者は、植物工場PF以外の地点に居ても植物工場PF内の気温を把握することができ、植物工場PFの管理の効率化や最適化をさらに効果的に実現することができる。
【0046】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0047】
上記実施形態における圃場管理システム10の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、圃場管理システム10が植物工場PFに設置された撮影装置300を備えなくてもよい。
【0048】
上記実施形態における圃場管理サーバ100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、圃場管理サーバ100の記憶部120に訓練データTDや気温推定モデルMOが格納されているが、訓練データTDや気温推定モデルMOが別のサーバに格納され、圃場管理サーバ100が該別のサーバに格納された訓練データTDや気温推定モデルMOを参照するものとしてもよい。
【0049】
上記実施形態における気温推定モデル作成処理の内容は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態の気温推定モデル作成処理では、植物工場PFを撮影した画像Iを説明変数とし、該画像Iの撮影時の植物工場PF内の気温を目的変数とし、所定の学習手法を用いた機械学習を行うことにより気温推定モデルMOを作成しているが、該説明変数が、さらに、画像Iの撮影時を示す情報を含んでもよい。撮影時を示す情報としては、例えば、撮影日および/または撮影時刻を示す情報が用いられる。あるいは、撮影日を示す情報に代えて、撮影月を示す情報や撮影季節を示す情報が用いられてもよい。説明変数が画像Iの撮影時を示す情報を含むことにより、気温推定モデルMOを用いてさらに精度良く気温を推定することができる。また、説明変数が画像Iの撮影日時を示す情報を含むことにより、気温推定モデルMOを用いて、異なる日の同じ時刻(対応する時刻)における気温を推定することができる。
【0050】
また、気温推定モデルMOの作成の際の上記説明変数が、さらに、画像Iの輝度特性を示す情報を含んでもよい。画像Iの輝度特性を示す情報としては、例えば、画像Iの輝度の頻度分布、平均値、最小値、最大値等を示す情報が用いられる。説明変数が画像Iの輝度特性を示す情報を含むことにより、気温推定モデルMOを用いてさらに精度良く気温を推定することができる。
【0051】
上記実施形態における植物栽培支援処理の内容は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態の植物栽培支援処理では、圃場管理サーバ100が端末装置200に向けて気温の推定結果を送信しているが、そのような送信が行われなくてもよい。
【0052】
上記実施形態では、圃場として植物工場PFを例に説明しているが、本明細書に開示される技術は、他の種類の圃場(例えば、露地栽培用の圃場)にも同様に適用可能である。また、上記実施形態では、圃場の環境指標値の1つとして気温を例に説明しているが、本明細書に開示される技術は、気温に代えて、または、気温に加えて、他の環境指標値(例えば、日射量、湿度等)の推定にも同様に適用可能である。
【0053】
上記実施形態において、ハードウェアによって実現されている構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、反対に、ソフトウェアによって実現されている構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10:圃場管理システム 100:圃場管理サーバ 110:制御部 111:圃場管理部 112:訓練データ取得部 114:モデル取得部 115:対象画像取得部 116:気温推定部 118:情報送信部 120:記憶部 130:表示部 140:操作入力部 150:インターフェース部 190:バス 200:端末装置 210:表示部 300:撮影装置 MO:気温推定モデル PF:植物工場
図1
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