(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132627
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】巻線供給方法及び巻線供給装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/04 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
H02K15/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038052
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大河原 友樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 貴一
(72)【発明者】
【氏名】福島 佑介
(72)【発明者】
【氏名】杉山 正幸
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB07
5H615BB14
5H615BB16
5H615PP01
5H615PP12
5H615QQ02
5H615QQ19
5H615QQ27
5H615SS11
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で丸素線から平角線を成形して巻装対象へ供給する。
【解決手段】本開示は、巻線リール31からの丸素線13を平角線11に変形させた後、平角線11をノズル33から分割コア7のティース部へ供給する巻線供給方法であって、巻線リール31よりも下流側、かつノズル33よりも上流側で、丸素線13を幅方向から圧縮する第1工程と、巻線リール31よりも下流側、かつノズル33よりも上流側で、第1工程の後、丸素線13を幅方向と交叉する厚さ方向から圧縮して、厚さ方向の長さが幅方向の長さ以下の長さになるように平角線11を成形する第2工程と、第2工程で成形された平角線11を、平角線11の幅方向が分割コア7のティース部の軸方向に沿い、平角線11の厚さ方向が分割コア7のティース部の径方向に沿うように、ノズル33から分割コア7のティース部9へ供給する第3工程と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材供給源からの丸素線を平角線に変形させた後、前記平角線を巻線供給部材から巻装対象へ供給する巻線供給方法であって、
前記線材供給源よりも下流側、かつ前記巻線供給部材よりも上流側で、前記丸素線を幅方向から圧縮する第1工程と、
前記線材供給源よりも下流側、かつ前記巻線供給部材よりも上流側で、前記第1工程の後、前記丸素線を前記幅方向と交叉する厚さ方向から圧縮して、前記厚さ方向の長さが前記幅方向の長さ以下の長さになるように前記平角線を成形する第2工程と、
前記第2工程で成形された前記平角線を、前記平角線の前記幅方向が前記巻装対象の軸方向に沿い、前記平角線の前記厚さ方向が前記巻装対象の径方向に沿うように、前記巻線供給部材から前記巻装対象へ供給する第3工程と、を含む
ことを特徴とする巻線供給方法。
【請求項2】
前記第2工程で成形される前記平角線の前記幅方向の長さは、前記丸素線の直径に対して25/31以上35/31以下の長さである
ことを特徴とする請求項1に記載の巻線供給方法。
【請求項3】
線材供給源からの丸素線を幅方向の両側から圧縮する1対の第1ローラと、前記1対の第1ローラの下流側に配置されて前記1対の第1ローラからの前記丸素線を前記幅方向と交叉する厚さ方向から圧縮する1対の第2ローラとを有し、前記厚さ方向の長さが前記幅方向の長さ以下の長さになるように平角線を成形する平角線成形機と、
前記平角線成形機の下流側に配置されて、前記平角線成形機で成形された前記平角線を、前記平角線の前記幅方向が巻装対象の軸方向に沿い、前記平角線の前記厚さ方向が前記巻装対象の径方向に沿うように、前記巻装対象側へ供給する巻線供給部材と、を備える
ことを特徴とする巻線供給装置。
【請求項4】
前記平角線成形機は、前記平角線の前記幅方向の長さが前記丸素線の直径に対して25/31以上35/31以下の長さとなるように前記平角線を成形する
ことを特徴とする請求項3に記載の巻線供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、巻線供給方法及び巻線供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、マグネットが設けられているロータと、巻線が巻回されているステータとにより構成されているブラシレスモータ等は、そのステータのティースに巻回されている巻線の密度(占積率)が高いほど性能を高めることができる。ここで、占積率を高めるために、断面略長方形のいわゆる平角線からなる巻線を用いる場合がある。平角線は、その形状の特徴から丸線と比較してステータ内での巻線間の隙間を小さくできるため、占積率をさらに向上させることができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、平角線の巻線構造が開示されている。この平角線の巻線構造では、平角線の断面形状における厚さ寸法(積層方向に沿って測った寸法)に対する幅寸法(同一層において平角線が隣接する方向に沿って測った寸法)の比である扁平率を、巻線機の上流側に設けられる平角線成形装置によって変更し、コイルの内層から外層に進むにしたがって大きくしている。平角線成形装置は、断面円形の丸素線を巻回した巻線リールと、平角線を形成するための第1ローラ、第2ローラ、及び第3ローラを備える。第1ローラは、丸素線を上下方向(平角線の厚さ方向)から押し潰すためのもので、上下一対のローラが回転自在に設けられている。第2ローラは、丸素線を横方向(平角線の幅方向)から押し潰すためのもので、左右一対のローラが回転自在に設けられている。第3ローラは、丸素線を再び上下方向(平角線の厚さ方向)から押し潰すためのもので上下一対のローラが回転自在に設けられている。第3ローラの上下一対のローラは、それぞれ上下方向にスライド可能に設けられており、制御部の信号に基づいてローラ間の距離を適宜設定できるようになっている。巻線リールから引出された丸素線は、まず、第1ローラを通過することによって上下方向に押し潰される。次に、第2ローラを通過することによって横方向が押し潰され、扁平率の一番小さい断面略正方形の仮平角線が形成される。この後、第3ローラによって仮平角線が所定の厚さに押し潰され、仮平角線から所定の扁平率の平角線に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の平角線成形装置では、丸素線を断面略正方形の仮平角線に変形させた後、所望の扁平率の仮平角線に変形させるので、3箇所にローラが必要となってしまい、平角線の供給装置が大型化してしまうおそれがある。平角線の供給装置が大型化を抑えるために、ローラを2箇所にすると、上流側のローラで押し潰された巻線を下流側のローラによって押し潰す際に、上流側のローラにおける巻線の押し潰し量によっては、下流側のローラ間で巻線が捻れて(倒れて)しまい、平角線の成形が難しくなる可能性がある。また、下流側のローラ間での巻線の捻れを防止するための構成を設けると、構造が複雑化してしまう可能性がある。
【0006】
そこで、本開示は、簡単な構成で丸素線から平角線を成形して巻装対象へ供給することが可能な巻線供給方法及び巻線供給装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、線材供給源からの丸素線を平角線に変形させた後、前記平角線を巻線供給部材から巻装対象へ供給する巻線供給方法であって、前記線材供給源よりも下流側、かつ前記巻線供給部材よりも上流側で、前記丸素線を幅方向から圧縮する第1工程と、前記線材供給源よりも下流側、かつ前記巻線供給部材よりも上流側で、前記第1工程の後、前記丸素線を前記幅方向と交叉する厚さ方向から圧縮して、前記厚さ方向の長さが前記幅方向の長さ以下の長さになるように前記平角線を成形する第2工程と、前記第2工程で成形された前記平角線を、前記平角線の前記幅方向が前記巻装対象の軸方向に沿い、前記平角線の前記厚さ方向が前記巻装対象の径方向に沿うように、前記巻線供給部材から前記巻装対象へ供給する第3工程と、を含む。
【0008】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の巻線供給方法であって、前記第2工程で成形される前記平角線の前記幅方向の長さは、前記丸素線の直径に対して25/31以上35/31以下の長さである。
【0009】
本発明の第3の態様は、巻線供給装置であって、線材供給源からの丸素線を幅方向の両側から圧縮する1対の第1ローラと、前記1対の第1ローラの下流側に配置されて前記1対の第1ローラからの前記丸素線を前記幅方向と交叉する厚さ方向から圧縮する1対の第2ローラとを有し、前記厚さ方向の長さが前記幅方向の長さ以下の長さになるように平角線を成形する平角線成形機と、前記平角線成形機の下流側に配置されて、前記平角線成形機で成形された前記平角線を、前記平角線の前記幅方向が巻装対象の軸方向に沿い、前記平角線の前記厚さ方向が前記巻装対象の径方向に沿うように、前記巻装対象側へ供給する巻線供給部材と、を備える。
【0010】
本発明の第4の態様は、上記第3の態様の巻線供給装置であって、前記平角線成形機は、前記平角線の前記幅方向の長さが前記丸素線の直径に対して25/31以上35/31以下の長さとなるように前記平角線を成形する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、簡単な構成で丸素線から平角線を成形して巻装対象へ供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】本発明の一実施形態に係る巻線供給装置を含む巻線装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、Wは平角線の幅方向を、Tは平角線の厚さ方向を、Aはコイルの軸方向を、Rはコイルの径方向をそれぞれ示す。
【0014】
図1は、分割コア7を有するモータ1の斜視図である。
図2は、分割コア7及びコイル6の側面図である。
図3は、
図2のIII-III矢視断面図である。
【0015】
図1に示すように、本開示に係る巻線供給方法及び巻線供給装置は、例えば、ブラシレスモータ1(回転電機)のステータ2を製造する際の巻線供給方法及び巻線供給装置に適用される。ブラシレスモータ1(以下、「モータ1」という。)は、ハウジング(図示省略)に圧入されたステータ2と、ステータ2のモータ径方向の内側に配置されてステータ2に対して回転可能に設けられるロータ3とを有する。
【0016】
ステータ2は、ステータコア4と、ステータコア4に装着される絶縁性のインシュレータ5と、コイル6とを備える。本実施形態のステータコア4は、モータ周方向に分割された分割コア方式のステータコア4であって、複数の分割コア7をモータ周方向に環状に連結して形成される。
【0017】
図2及び
図3に示すように、ステータコア4の分割コア7は、モータ径方向の外側でモータ周方向に延びる断面略円弧状のヨーク部8と、ヨーク部8からモータ径方向の内側へ延びるティース部(巻装対象)9と、ティース部9のモータ径方向の内端部からモータ周方向の両側へ延びる鍔部10とを備える。本実施形態では、分割コア7は、例えば金属板をモータ軸方向に複数積層して形成され、モータ軸方向に沿って直線状に延びる。複数の分割コア7をモータ周方向に環状に連結してステータコア4を形成した状態で、ヨーク部8は、環状の磁路となる略円筒状のバックヨークを構成する。本実施形態のコイル6は、巻線としての平角線11をティース部9に巻装することによって形成される。なお、分割コア7は、分割コア7の長さ方向(モータ軸方向)に対して傾斜するスキュー角を有してもよい。また、本実施形態では、巻装対象としてステータコア4の分割コア7のティース部9を例示しているが、巻装対象は任意であり、アーマチュアコアなどにも適用可能である。また、本発明は、非磁性体に対してコイルを巻装する場合にも適用され、コイルの機能、用途も任意である。
【0018】
ヨーク部8のモータ周方向の両端部には、隣接する分割コア7同士を連結するための連結部8a,8bが形成される。一方の連結部8aは、モータ周方向の外側へ突出する状態でモータ軸方向に延びる。他方の連結部8bは、モータ周方向の内側へ凹む状態でモータ軸方向に延びる溝状に形成され、上記一方の連結部8aと係合可能である。ヨーク部8のモータ周方向の両端部の連結部8a,8bを、モータ周方向の両側に隣接する他の分割コア7のヨーク部8の連結部8b,8aと係合させることによって、複数の分割コア7を連結してステータコア4を形成することができる。ティース部9は、ヨーク部8の内周面のうちモータ周方向の中間部分(本実施形態では略中央)からモータ径方向の内側(モータ1の回転中心側)へ向かって突出した状態で、モータ軸方向に延びる。鍔部10は、ティース部9のモータ径方向の内端部からモータ周方向の両側へ突出した状態でモータ軸方向に延びる。
【0019】
ティース部9のモータ周方向の両側には、コイル6を形成する巻線(平角線11)を巻装するための1対のスロット12が、ヨーク部8とティース部9と鍔部10とによって区画される。すなわち、ヨーク部8のモータ周方向の端部と鍔部10のモータ周方向の端部とを結んだ仮想線(
図3における二点鎖線L)より内側がスロット12となる。なお、ティース部9の軸方向A(巻装対象の軸方向A)とは、ティース部9に巻装されたコイル6の軸方向となる方向である。また、ティース部9の径方向R(巻装対象の径方向R)とは、ティース部9に巻装されたコイル6の径方向となる方向である。
【0020】
インシュレータ5は、ティース部9の周囲を覆うように、分割コア7に対して装着される。インシュレータ5は、分割コア7のうちスロット12に面する部分を被覆するとともに、ティース部9のモータ軸方向の両側の端部を被覆する。
【0021】
図4は、本発明の一実施形態に係る巻線供給装置30を含む巻線装置20の概略図である。
【0022】
図4に示すように、巻線装置20は、分割コア7のティース部9(
図3参照)に平角線11を巻装してコイル6を形成する装置であって、巻線を巻装対象である分割コア7のティース部9側へ供給する巻線供給装置30と、巻線供給装置30側から供給される平角線11を分割コア7のティース部9に巻装する巻線機40とを含む。
【0023】
巻線供給装置30は、平角線11を巻線として巻装対象である分割コア7のティース部9側へ供給する。巻線供給装置30は、巻線リール(線材供給源)31側から送り出される(
図4の白抜き矢印方向に送り出される)丸素線13を変形させて平角線11を成形する平角線成形機32と、平角線成形機32で成形した平角線11を巻線機40側の分割コア7のティース部9側へ供給するノズル(巻線供給部材)33とを備える。
【0024】
巻線リール31には、丸素線13が予め巻回されている。本実施形態では、直径dが1.86mmの丸素線13が巻線リール31に巻回されている。なお、本開示における巻線(丸素線13及び平角線11)の寸法は、絶縁性の皮膜を含む寸法を意味する。
【0025】
図5は、平角線成形機32の斜視図である。
図6は、平角線11の成形工程を示す説明図である。
図7は、平角線11の成形範囲を示すグラフである。なお、
図6は、巻線となる丸素線13及び平角線11を流通方向から視た状態を示す。また、
図7は、直径dが1.86mmの丸素線13から成形する平角線11の成形範囲を示す。
【0026】
図4及び
図5に示すように、平角線成形機32は、上流側の1対の第1ローラ34,34と、下流側の1対の第2ローラ35,35とを有する。第1ローラ34,34は、巻線リール31から白抜き矢印方向に送り出される丸素線13に対して幅方向W(
図5では上下方向)から圧縮力を与える。第2ローラ35,35は、第1ローラ34,34の下流側に配置され、第1ローラ34,34を経由した巻線に厚さ方向T(
図5では横方向)から圧縮力を与える。なお、幅方向Wは、平角線11を分割コア7のティース部9に巻装した際に(
図3参照)、ティース部9の軸方向Aに沿う方向(同一層の平角線11が隣接する方向)を意味する。また、厚さ方向Tは、幅方向Wと交叉する方向であって、平角線11を分割コア7のティース部9に巻装した際に、ティース部9の径方向Rに沿う方向(平角線11の積層方向)を意味する。
【0027】
図6に示すように、平角線成形機32は、厚さ方向Tの長さXが幅方向Wの長さY以下の長さになるように平角線11を成形する。本実施形態では、平角線成形機32は、厚さ方向Tの長さX(1.32mm)が幅方向Wの長さY(1.82mm)よりも短い断面略矩形状の平角線11を成形する。巻線リール31からの丸素線13は、先ず、第1ローラ34,34によって幅方向Wの両側から圧縮され、次に、第2ローラ35,35によって厚さ方向Tの両側から圧縮される。第1ローラ34,34間の間隔s1は、平角線11の幅方向W両側の面を平面状に成形でき、かつ幅方向Wの長さYを所定の目標値(1.82mm)にするために最低限必要な間隔(上記所定の目標値よりも短い間隔)に設定される。第2ローラ35,35間の間隔s2は、平角線11の厚さ方向Tの長さXの所定の目標値(1.32mm)と略同じ間隔に設定される。第1ローラ34,34間の間隔s1、及び第2ローラ35,35間の間隔s2は、駆動機構(図示省略)によって変更可能に制御される。この第1ローラ34,34間の間隔s1、及び第2ローラ35,35間の間隔s2によって、平角線11の断面形状が規定される。第1ローラ34,34間の間隔s1、及び第2ローラ35,35間の間隔s2が丸素線13の直径d以上である場合には、丸素線13は、平角線成形機32における変形を受けることなく、断面形状(断面円形状)が維持される。
【0028】
図7に示すように、平角線成形機32は、平角線11の厚さ方向Tの長さX(厚み寸法X)及び幅方向Wの長さY(幅寸法Y)が所定の範囲(
図7に示す(a)の範囲)内となるように、平角線11を成形する。上記所定の範囲(a)の幅方向Wの長さYの範囲は、丸素線13の直径d(本実施形態では1.86mm)に対して25/31(本実施形態では1.50mm)以上35/31(本実施形態では2.10mm)以下の長さであることが好ましい。すなわち、平角線成形機32が成形する平角線11の幅方向Wの長さYは、丸素線13の直径dに対して25/31以上35/31以下の長さであることが好ましい。
【0029】
平角線11の厚さ方向Tの長さXが幅方向Wの長さYよりも長くなる範囲(
図7に示す(b)の範囲)の平角線11では、平角線11の厚さ方向Tの長さXと幅方向Wの長さYとの比が逆転してしまう。このため、平角線11を分割コア7のティース部9に巻装する際に、平角線11が安定し難く、倒れ易いので、安定的な巻き付け作業ができなくなってしまう。また、平角線11の幅方向Wの長さYを丸素線13の直径に対して25/31の長さよりも短くすると(
図7に示す(c)の範囲)、丸素線13が第1ローラ34,34での圧縮によって厚さ方向Tに大きく延びてしまう。このため、第1ローラ34,34での圧縮によって厚さ方向Tに大きく延びた楕円状の丸素線13が、第2ローラ35,35で圧縮される際に、第2ローラ35,35間で捻れて(倒れて)しまい、平角線11を成形することが難しい。また、平角線11の幅方向Wの長さYを長くし過ぎると(
図7に示す(d)の範囲)、平角線11の幅方向Wの両側の面が曲面となってしまい、断面形状が小判型や丸型になるので、断面略矩形状の平角線11を成形することができない。また、平角線11の厚さ方向Tの長さXは、例えば設備的な限界等により、それ以上短く(薄く)することができない範囲がある(
図7に示す(e)の範囲)。このため、平角線11の幅方向Wの長さYを丸素線13の直径に対して35/31の長さよりも長くすることは難しい。
【0030】
図4に示すように、ノズル33は、平角線成形機32の下流側に配置され、巻線機40の後述するコア支持部41に支持される分割コア7のティース部9側へ平角線11を供給する。ノズル33は、平角線成形機32で成形された平角線11を、平角線11の幅方向Wがティース部9の軸方向A(巻装対象の軸方向A)に沿い、平角線11の厚さ方向Tがティース部9の径方向R(巻装対象の径方向R)に沿うように(
図3参照)、巻線機40の分割コア7のティース部9側へ供給する。
【0031】
巻線機40は、巻線供給装置30のノズル33の下流側に配置される。巻線機40は、分割コア7を支持可能なコア支持部41と、分割コア7のティース部9の軸方向Aに沿った回転軸を中心としてコア支持部41を回転させる回転機構42とを有する。巻線機40の回転機構42によって分割コア7を回転させることによって、平角線11がノズル33から引き出されて、平角線11が分割コア7のティース部9に巻装される。なお、巻線機40は、分割コア7のティース部9の所定の位置へ平角線11を案内するガイド部材(図示省略)を備えていてもよい。
【0032】
次に、本発明の一実施形態に係る巻線供給方法について説明する。
【0033】
本実施形態に係る巻線供給方法は、巻線リール31からの丸素線13を平角線11に変形させた後、平角線11をノズル33から巻装対象である分割コア7のティース部9側へ供給する供給方法であって、第1工程、第2工程、及び第3工程を含む。
【0034】
第1工程では、巻線リール31よりも下流側、かつノズル33よりも上流側で、丸素線13を幅方向Wから圧縮する。具体的には、巻線リール31よりも下流側、かつノズル33よりも上流側に配置される平角線成形機32の第1ローラ34,34によって、巻線リール31からの丸素線13を幅方向Wから圧縮する。
【0035】
第2工程では、巻線リール31よりも下流側、かつノズル33よりも上流側で、第1工程の後、丸素線13を幅方向Wと交叉する厚さ方向Tから圧縮して、厚さ方向Tの長さXが幅方向Wの長さY以下の長さになるように平角線11を成形する。具体的には、平角線成形機32の第2ローラ35,35によって、第1ローラ34,34を経由した丸素線13を幅方向Wから圧縮し、厚さ方向Tの長さXが幅方向Wの長さY以下の長さになるように平角線11を成形する。この第2工程において成形される平角線11の幅方向Wの長さYは、丸素線13の直径d(本実施形態では1.86mm)に対して25/31(本実施形態では1.50mm)以上35/31(本実施形態では2.10mm)以下の長さであることが好ましい。
【0036】
第3工程では、第2工程で成形された平角線11を、平角線11の幅方向Wがティース部9の軸方向A(巻装対象の軸方向A)に沿い、平角線11の厚さ方向Tがティース部9の径方向R(巻装対象の径方向R)に沿うように、ノズル33から巻装対象である分割コア7のティース部9側へ供給する。
【0037】
なお、巻線供給方法は、上述した第1工程、第2工程、及び第3工程を含んでいればよく、第1工程、第2工程、及び第3工程に加えて他の工程を含んでもよい。
【0038】
上記のように構成された巻線供給方法及び巻線供給装置30では、巻線リール31からの丸素線13を、第1ローラ34,34によって幅方向Wの両側から圧縮した後、第2ローラ35,35によって厚さ方向Tの両側から圧縮して、厚さ方向Tの長さXが幅方向Wの長さY以下の長さになるように平角線11を成形する。このように、丸素線13を、平角線11にした際に長さが長くなる方(幅方向W側)から先に圧縮するので、長さが短くなる方(厚さ方向T側)から先に圧縮する場合とは異なり、圧縮後の断面略楕円形の丸素線13の長手方向の長さを抑えることができる。これにより、次に第2ローラ35,35で圧縮する際に、第2ローラ35,35間での断面略楕円形の丸素線13の捻れ(倒れ)を防止することができる。このため、3箇所以上のローラを設けることなく、2箇所のローラ(第1ローラ34,34及び第2ローラ35,35)で、丸素線13から平角線11を成形することができるので、コンパクトな構成にすることができる。
【0039】
また、平角線成形機32は、平角線11の幅方向Wの長さYが丸素線13の直径に対して25/31以上35/31以下の長さとなるように、平角線11を成形することが好ましい。このように、平角線11の幅方向Wの長さYを、丸素線13の直径に対して25/31以上の長さにすることによって、丸素線13を幅方向Wから圧縮した後の断面略楕円形の丸素線13の長手方向の長さを抑えることができ、次に第2ローラ35,35で圧縮する際に、第2ローラ35,35間での断面略楕円形の丸素線13の捻れ(倒れ)を防止することができる。また、平角線11の幅方向Wの長さYを、丸素線13の直径に対して35/31以下の長さにすることによって、平角線11の厚さ方向Tの長さXが小さくなり過ぎることを防止することができるので、厚さ方向Tの長さXを成形可能な範囲で、平角線11を容易に成形することができる。
【0040】
また、平角線成形機32で成形された平角線11を、平角線11の幅方向Wがティース部9の軸方向A(巻装対象の軸方向A)に沿い、平角線11の厚さ方向Tがティース部9の径方向R(巻装対象の径方向R)に沿うように、ノズル33から分割コア7のティース部9側へ供給する。これにより、平角線11の断面において長手方向に延びる面を、ティース部9の径方向の内側のインシュレータ5又は径方向の内側の層の平角線11に当接させた状態で、平角線11をティース部9に巻回することができる。このため、平角線11の断面において短手方向に延びる面を径方向の内側へ当接させる場合とは異なり、平角線11をティース部9に巻回する際に、平角線11の倒れを抑えることができ、平角線11を安定的にティース部9に巻回することができる。
【0041】
このように、本実施形態によれば、2箇所のローラ(第1ローラ34,34及び第2ローラ35,35)を設け、平角線11にした際に長さが長くなる方(幅方向W側)から先に圧縮するという簡単な構成で、丸素線13から平角線11を成形して、平角線11を巻装対象である分割コア7のティース部9側へ供給することができる。
【0042】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
7:分割コア
9:ティース部(巻装対象)
11:平角線
13:丸素線
30:巻線供給装置
31:巻線リール(線材供給源)
32:平角線成形機
33:ノズル(巻線供給部材)
34,34:1対の第1ローラ
35,35:1対の第2ローラ