(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132628
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】巻線装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/095 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
H02K15/095
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038053
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大河原 友樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 貴一
(72)【発明者】
【氏名】福島 佑介
(72)【発明者】
【氏名】杉山 正幸
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615AA05
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615BB16
5H615QQ02
5H615QQ19
5H615QQ25
5H615SS10
5H615SS11
5H615SS57
(57)【要約】
【課題】巻線の断面形状を途中で変形させてから巻装対象に対して巻装する場合であっても、巻線の傷に起因する製品の品質低下を抑える。
【解決手段】本開示は、巻線リール21からの巻線を分割コア7側へ供給して分割コア7のティース部に巻装する巻線装置20であって、巻線リール21の下流側に配置され、巻線リール21側から送り出される断面略円形状の丸素線の断面形状を変形させて、断面略長方形状の平角線を成形する平角線成形機22と、平角線成形機22の下流側に配置され、平角線の傷を検出する傷検出部24と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材供給源からの巻線を巻装対象側へ供給して前記巻装対象に巻装する巻線装置であって、
前記線材供給源の下流側に配置され、前記巻線の断面形状を変化させる巻線変形部と、
前記巻線変形部の下流側に配置され、前記巻線の傷を検出する傷検出部と、を備える
ことを特徴とする巻線装置。
【請求項2】
前記傷検出部による傷の検出に基づいて所定の処理を実行する制御部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の巻線装置。
【請求項3】
前記制御部は、1つの前記巻装対象に巻装される単位量あたりの巻線に含まれる傷の数が所定の閾値以上である場合に前記所定の処理を実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の巻線装置。
【請求項4】
前記線材供給源から引き出された前記巻線の引出し量を検出する引出し量検出部、を備え、
前記制御部は、前記引出し量検出部が検出する現在の引出し量と、前記傷検出部が傷を検出したときの引出し量とに基づいて、前記単位量あたりの巻線に含まれる傷の数を検出する
ことを特徴とする請求項3に記載の巻線装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記傷検出部が前記巻線の傷を検出したときに前記所定の処理を実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の巻線装置。
【請求項6】
前記制御部に制御されて、前記巻線の傷に関する情報を報知可能な報知部を備え、
前記制御部が実行する前記所定の処理は、前記報知部による報知を含む
ことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の巻線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、巻線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、マグネットが設けられているロータと、巻線が巻回されているステータとにより構成されているブラシレスモータ等は、そのステータのティースに巻回されている巻線の密度(占積率)が高いほど性能を高めることができる。ここで、占積率を高めるために、断面略長方形のいわゆる平角線からなる巻線を用いる場合がある。平角線は、その形状の特徴から丸線と比較してステータ内での巻線間の隙間を小さくできるため、占積率をさらに向上させることができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、平角線成形装置によって丸素線から平角線を成形し、成形された平角線を分割コアのティース部に巻装する技術が開示されている。この平角線成形装置では、巻線リールからの断面円形の丸素線を、第1ローラによって上下方向から押し潰した後、第2ローラによって横方向から押し潰して断面略正方形の仮平角線を成形し、最後に第3ローラによって再度上下方向から押し潰して平角線を成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術のように、巻線の断面形状を変化させて分割コアのティース部へ供給する場合、巻線の断面形状を変化させる際に巻線に傷が生じてしまう可能性がある。このため、巻線の断面形状を変化させた後、巻線を分割コアのティース部に複数層となるように巻装してコイルを形成する場合、巻線の傷が発生している箇所が1つのコイルに多数含まれてしまう可能性があり、製品の品質が低下してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本開示は、巻線の断面形状を途中で変形させてから巻装対象に対して巻装する場合であっても、巻線の傷に起因する製品の品質低下を抑えることが可能な巻線装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、線材供給源からの巻線を巻装対象側へ供給して前記巻装対象に巻装する巻線装置であって、前記線材供給源の下流側に配置され、前記巻線の断面形状を変化させる巻線変形部と、前記巻線変形部の下流側に配置され、前記巻線の傷を検出する傷検出部と、を備える。
【0008】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の巻線装置であって、前記傷検出部による傷の検出に基づいて所定の処理を実行する制御部を備える。
【0009】
本発明の第3の態様は、上記第2の態様の巻線装置であって、前記制御部は、1つの前記巻装対象に巻装される単位量あたりの巻線に含まれる傷の数が所定の閾値以上である場合に前記所定の処理を実行する。
【0010】
本発明の第4の態様は、上記第3の態様の巻線装置であって、前記線材供給源から引き出された前記巻線の引出し量を検出する引出し量検出部、を備え、前記制御部は、前記引出し量検出部が検出する現在の引出し量と、前記傷検出部が傷を検出したときの引出し量とに基づいて、前記単位量あたりの巻線に含まれる傷の数を検出する。
【0011】
本発明の第5の態様は、上記第2の態様の巻線装置であって、前記制御部は、前記傷検出部が前記巻線の傷を検出したときに前記所定の処理を実行する。
【0012】
本発明の第6の態様は、上記第2の態様から上記第5の態様のいずれかの巻線装置であって、前記制御部に制御されて、前記巻線の傷に関する情報を報知可能な報知部を備え、前記制御部が実行する前記所定の処理は、前記報知部による報知を含む。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、巻線の断面形状を途中で変形させてから巻装対象に対して巻装する場合であっても、巻線の傷に起因する製品の品質低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】本発明の一実施形態に係る巻線装置の概略図である。
【
図7】単位量あたりの巻線に含まれる傷を検出する際の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、Wは平角線の幅方向を、Tは平角線の厚さ方向を、Aはコイルの軸方向を、Rはコイルの径方向をそれぞれ示す。
【0016】
図1は、分割コアを有するモータの斜視図である。
図2は、分割コア及びコイルの側面図である。
図3は、
図2のIII-III矢視断面図である。
【0017】
図1に示すように、本開示に係る巻線装置は、例えば、ブラシレスモータ1(回転電機)のステータ2を製造する際の巻線装置に適用される。ブラシレスモータ1(以下、「モータ1」という。)は、ハウジング(図示省略)に圧入されたステータ2と、ステータ2のモータ径方向の内側に配置されてステータ2に対して回転可能に設けられるロータ3とを有する。
【0018】
ステータ2は、ステータコア4と、ステータコア4に装着される絶縁性のインシュレータ5と、コイル6とを備える。本実施形態のステータコア4は、モータ周方向に分割された分割コア方式のステータコア4であって、複数の分割コア7をモータ周方向に環状に連結して形成される。
【0019】
図2及び
図3に示すように、ステータコア4の分割コア(巻装対象)7は、モータ径方向の外側でモータ周方向に延びる断面略円弧状のヨーク部8と、ヨーク部8からモータ径方向の内側へ延びるティース部9と、ティース部9のモータ径方向の内端部からモータ周方向の両側へ延びる鍔部10とを備える。本実施形態では、分割コア7は、例えば金属板をモータ軸方向に複数積層して形成され、モータ軸方向に沿って直線状に延びる。複数の分割コア7をモータ周方向に環状に連結してステータコア4を形成した状態で、ヨーク部8は、環状の磁路となる略円筒状のバックヨークを構成する。本実施形態のコイル6は、平角線(巻線)11をティース部9に巻装することによって形成される。なお、分割コア7は、分割コア7の長さ方向(モータ軸方向)に対して傾斜するスキュー角を有してもよい。また、本実施形態では、巻装対象としてステータコア4の分割コア7のティース部9を例示しているが、巻装対象は任意であり、アーマチュアコアなどにも適用可能である。また、本発明は、非磁性体に対してコイルを巻装する場合にも適用され、コイルの機能、用途も任意である。
【0020】
ヨーク部8のモータ周方向の両端部には、隣接する分割コア7同士を連結するための連結部8a,8bが形成される。一方の連結部8aは、モータ周方向の外側へ突出する状態でモータ軸方向に延びる。他方の連結部8bは、モータ周方向の内側へ凹む状態でモータ軸方向に延びる溝状に形成され、上記一方の連結部8aと係合可能である。ヨーク部8のモータ周方向の両端部の連結部8a,8bを、モータ周方向の両側に隣接する他の分割コア7のヨーク部8の連結部8b,8aと係合させることによって、複数の分割コア7を連結してステータコア4を形成することができる。ティース部9は、ヨーク部8の内周面のうちモータ周方向の中間部分(本実施形態では略中央)からモータ径方向の内側(モータ1の回転中心側)へ向かって突出した状態で、モータ軸方向に延びる。鍔部10は、ティース部9のモータ径方向の内端部からモータ周方向の両側へ突出した状態でモータ軸方向に延びる。
【0021】
ティース部9のモータ周方向の両側には、コイル6を形成する巻線(平角線11)を巻装するための1対のスロット12が、ヨーク部8とティース部9と鍔部10とによって区画される。すなわち、ヨーク部8のモータ周方向の端部と鍔部10のモータ周方向の端部とを結んだ仮想線(
図3における二点鎖線)より内側がスロット12となる。
【0022】
インシュレータ5は、ティース部9の周囲を覆うように、分割コア7に対して装着される。インシュレータ5は、分割コア7のうちスロット12に面する部分を被覆するとともに、ティース部9のモータ軸方向の両側の端部を被覆する。
【0023】
図4は、本発明の一実施形態に係る巻線装置20の概略図である。
【0024】
図4に示すように、本実施形態に係る巻線装置20は、巻線リール(線材供給源)21と、平角線成形機(巻線変形部)22と、引出し量検出部23と、傷検出部24と、テンション装置25と、ノズル26と、巻線機27と、報知部28と、コントローラ(制御部)29と、を備える。巻線装置20は、巻線リール21からの巻線を、巻装対象である分割コア7(本実施形態では巻線機27に支持される分割コア7)側へ供給して分割コア7のティース部9(
図3参照)に巻装する。巻線の移動方向の上流側から、巻線リール21、平角線成形機22、テンション装置25、ノズル26、巻線機27の順に、各装置が設けられる。
【0025】
巻線リール21は、巻線としての線材の供給源(線材供給源)であって、巻線としての丸素線(巻線)13が予め巻回されている。丸素線13の導体の表面は、絶縁皮膜で覆われている。なお、線材供給源は、巻線としての線材の供給源であればよく、巻線リール21に限定されるものではない。
【0026】
図5は、平角線成形機22の斜視図である。
図6は、平角線11の成形工程を示す説明図である。なお、
図6は、巻線となる丸素線13及び平角線11を流通方向から視た状態を示す。
【0027】
図4~
図6に示すように、平角線成形機22は、巻線リール21の下流側、かつノズル26の上流側(すなわち、巻線機27の上流側)に配置され、巻線の断面形状を変化させる。本実施形態の平角線成形機22は、巻線リール21側から送り出される(
図4及び
図5の白抜き矢印方向に送り出される)断面略円形状の丸素線13の断面形状を変形させて、断面略長方形状の平角線11を成形する。
【0028】
本実施形態の平角線成形機22は、上流側の1対の第1ローラ30,30と、下流側の1対の第2ローラ31,31とを有する。第1ローラ30,30は、巻線リール21から白抜き矢印方向に送り出される丸素線13に対して幅方向W(
図5では上下方向)から圧縮力を与える。第2ローラ31,31は、第1ローラ30,30の下流側に配置され、第1ローラ30,30を経由した巻線に厚さ方向T(
図5では横方向)から圧縮力を与える。なお、幅方向Wは、平角線11を分割コア7のティース部9に巻装した際に(
図3参照)、ティース部9の軸方向A(コイル6の軸方向)に沿う方向(同一層の平角線11が隣接する方向)を意味する。また、厚さ方向Tは、幅方向Wと交叉する方向であって、平角線11を分割コア7のティース部9に巻装した際に、ティース部9の径方向R(コイル6の径方向)に沿う方向(平角線11の積層方向)を意味する。
【0029】
図6に示すように、平角線成形機22は、厚さ方向Tの長さXが幅方向Wの長さYよりも短い断面略矩形状の平角線11を成形する。巻線リール21からの丸素線13は、先ず、第1ローラ30,30によって幅方向Wの両側から圧縮され、次に、第2ローラ31,31によって厚さ方向Tの両側から圧縮される。第1ローラ30,30間の間隔、及び第2ローラ31,31間の間隔は、駆動機構(図示省略)によって変更可能に制御される。この第1ローラ30,30間の間隔、及び第2ローラ31,31間の間隔によって、平角線11の断面形状が規定される。第1ローラ30,30間の間隔、及び第2ローラ31,31間の間隔が丸素線13の直径以上である場合には、丸素線13は、平角線成形機22における変形を受けることなく、断面形状(断面円形状)が維持される。この場合、丸素線13は、平角線成形機22、傷検出部24、テンション装置25、ノズル26を介して、巻線機27へ供給される。なお、丸素線13に対し、幅方向W及び厚さ方向Tへ圧縮する順序は問わない。また、第1ローラ30,30及び第2ローラ31,31に加えて、他のローラを追加し、巻線に対し、同一方向(横方向または縦方向)へ複数回、圧縮を加えてもよい。さらに、巻線に対し、一方向への圧縮のみを1回または複数回、加えてもよい。
【0030】
図4に示すように、引出し量検出部23は、巻線リール21から引き出された巻線の引出し量L(以下、単に「巻線の引出し量L」という。)を検出する。本実施形態の引出し量検出部23は、平角線成形機22の下流側に配置されるエンコーダである。引出し量検出部23は、コントローラ29に接続される。これにより、コントローラ29は、巻線の引出し量Lを引出し量検出部23から取得可能となっている。本実施形態の引出し量検出部23は、巻線装置20の作動を開始してから引き出された巻線の総量(総長さ)を巻線の引出し量Lとして検出する。また、本実施形態の引出し量検出部23は、巻線の供給経路中に配置されて巻線の移動によって回転するローラ23aを有し、ローラ23aの回転量(回転数)に基づいて巻線の引出し量Lを検出する。なお、引出し量検出部23の構成は、上記に限定されるものではなく、巻線の引出し量を検出可能な構成であればよい。例えば、巻線リール21の回転数(回転角度)等に基づいて巻線の引出し量Lを検出してもよい。また、本実施形態では、引出し量検出部23を、平角線成形機22の下流側に配置したが、引出し量検出部23の配置位置はこれに限定されるものではなく、巻線リール21からの巻線の引出し量Lを検出可能な様々な位置に配置することができる。
【0031】
傷検出部24は、平角線成形機22の下流側、かつ巻線機27の上流側に配置され、平角線成形機22によって断面形状が変形された後の巻線(平角線11)の傷を検出する。本実施形態の傷検出部24は、引出し量検出部23よりも下流側、かつテンション装置25よりも上流側に配置される。傷検出部24は、コントローラ29に接続される。これにより、コントローラ29は、巻線の傷の有無に関する情報を傷検出部24から取得可能となっている。本実施形態では、傷検出部24は、巻線の導体の表面の絶縁皮膜を貫通する傷を検出する。傷検出部24としては、例えば、平角線成形機22側から巻線機27側へ移動中の巻線(平角線11)に電圧を印可し、通電状態(例えば電流漏れ)を監視することで巻線の傷(絶縁皮膜のピンホール)を検出するピンホールチェッカが挙げられる。傷検出部24が検出する傷は、平角線成形機22による巻線の変形時に生じた傷に限定されるものではなく、丸素線13に初期不良として元々入っていた傷も含む。なお、傷検出部24による傷の検出方法は、巻線に電圧を印可して通電状態を監視する方法に限定されるものではなく、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラ等による巻線の外観画像から傷を判別する方法であってもよい。また、
図4では、傷検出部24をテンション装置25よりも上流側に配置しているが、これに限定されるものではなく、平角線成形機22の下流側、かつ巻線機27の上流側に配置していればよい。
【0032】
テンション装置25は、平角線成形機22の下流側(本実施形態では、傷検出部24よりも下流側)、かつノズル26の上流側に配置される。テンション装置25は、テンションプーリ25a等を有し、平角線成形機22とノズル26との間の巻線(平角線11)に引張力を付与し、巻線の緩みを防止する。
【0033】
ノズル26は、平角線成形機22の下流側(本実施形態では、テンション装置25よりも下流側)、かつ巻線機27の上流側に配置され、平角線成形機22で成形した平角線11を巻線機27側の分割コア7のティース部9側へ供給する。ノズル26は、平角線成形機22で成形された平角線11を、平角線11の幅方向Wがティース部9の軸方向Aに沿い、平角線11の厚さ方向Tがティース部9の径方向Rに沿うように(
図3参照)、巻線機27に支持される分割コア7のティース部9側へ供給する。
【0034】
巻線機27は、ノズル26の下流側に配置される。巻線機27は、分割コア7を支持可能(セット可能)なコア支持部32と、分割コア7のティース部9の軸方向Aに沿った回転軸を中心としてコア支持部32を回転させる回転機構33とを有する。コア支持部32に分割コア7をセットした状態で回転機構33によってコア支持部32を回転させると、分割コア7が軸方向Aに沿った回転軸を中心としてノズル26に対して回転する。巻線機27が分割コア7を回転させることによって、平角線11がノズル26から引き出されて、平角線11が分割コア7のティース部9に巻装される。なお、巻線機27は、分割コア7のティース部9の所定の位置へ平角線11を案内するガイド部材(図示省略)を備えていてもよい。また、本実施形態では、巻線機27のコア支持部32にセットされる分割コア7をノズル26に対して回転させたが、これに限定されるものではなく、例えば、巻線機27のコア支持部32にセットされる分割コア7に対してノズル26を回転させてもよい。
【0035】
報知部28は、コントローラ29に制御されて、巻線の傷に関する情報(以下、「巻線傷情報」という。)を報知可能な装置である。巻線傷情報とは、巻線の傷に起因する製品の品質低下を防止するためにユーザに対して知らせる情報であって、例えば、巻線に傷が存在する旨の情報、巻線に所定の数以上の傷が存在する旨の情報、巻線に所定の大きさ以上の傷が存在する旨の情報、等が挙げられる。報知部28としては、例えば、ユーザが視認可能なランプ、音又は音声を発生可能なスピーカ、文字や画像を表示可能な表示装置、等が挙げられる。報知部28による巻線傷情報の報知は、例えば、ランプの点灯、ブザー音又は音声の発生、表示装置への文字又は画像の表示等によって行う。すなわち、報知部28による巻線傷情報の報知は、傷の詳細な情報の提示に限定されるものではなく、単に上記巻線傷情報をユーザに対して知らせるための報知であってよい。なお、報知部28を設ける数は、1つに限定されるものではなく、複数であってもよい。また、複数の報知部28を設ける場合には、同種の複数の報知部28であってもよいし、あるいは異種の複数の報知部28であってもよい。
【0036】
コントローラ29は、傷検出部24による傷の検出に基づいて所定の処理を実行する。コントローラ29は、図示しないCPU(Central Processing Unit)及び記憶部を備え、上記記憶部に記憶されたプログラムなどのソフトウェアと協働して情報処理を実行することによって、判定手段34及び装置制御手段35として機能する。コントローラ29には、引出し量検出部23、傷検出部24、及び報知部28が電気的に接続されている。コントローラ29は、引出し量検出部23が検出する巻線の引出し量L、及び傷検出部24が検出する巻線の傷の有無に関する情報を、リアルタイムで取得可能である。
【0037】
判定手段34は、上記巻線傷情報を検出するための所定の判定を行う。判定手段34が行う上記所定の判定は、1つであってもよいし、複数であってもよい。本実施形態の巻線傷情報は、1つの分割コア7(巻装対象)に巻装される単位量あたりの巻線(以下、単に「単位量あたりの巻線」という。)に含まれる傷の数が所定の閾値(例えば3つ)以上である旨の情報である。すなわち、本実施形態では、判定手段34は、単位量あたりの巻線に含まれる傷の数が所定の閾値以上であるか否かの判定(上所定の判定)を行う。
【0038】
図7は、単位量あたりの巻線に含まれる傷を検出する際の説明図である。なお、
図7には、巻線の傷iが傷検出部24よりも下流側へ移動した状態を図示している。
【0039】
判定手段34による単位量あたりの巻線に含まれる傷の検出について、
図7に基づいて説明する。ここで、所定の分割コア7aに巻線を巻装した後に巻線が切断される巻線切断位置xから傷検出部24までの巻線の長さA、及び巻線切断位置xから上流側へ連続して存在する次の分割コア7bに巻装される巻線(単位量あたりの巻線)の長さBは、一定の長さに決まっている。判定手段34は、傷検出部24が巻線の傷iを検出すると、その時の巻線の引出し量Liを、傷iを検出する毎に上記記憶部に記憶する。これにより、判定手段34は、現在の巻線の引出し量Lと傷検出時の巻線の引出し量Liとの差(L-Li)から、現在の傷iの位置(傷検出部24から下流側への移動距離)を把握することができる。判定手段34は、巻線切断位置xから傷検出部24までの巻線の長さAと傷検出部24から下流側への傷iの移動距離(L-Li)との差C(C=A-(L-Li))を、傷i毎に算出する。判定手段34は、次の分割コア7bに巻線を供給する前の任意のタイミング(例えば、分割コア7bへの巻線を開始する直前のタイミング)で、巻線の長さAと傷iの移動距離(L-Li)との差Cが単位量あたりの巻線の長さBよりも短い傷iの数((C<B)となる傷iの数)を求める。すなわち、コントローラ29は、引出し量検出部23が検出する現在の引出し量Lと、傷検出部24が傷iを検出したときの引出し量Liとに基づいて、単位量あたりの巻線に含まれる傷の数を検出する。そして、判定手段34は、単位量あたりの巻線に含まれる傷の数が所定の閾値以上であるか否かの判定(上所定の判定)を行う。
【0040】
装置制御手段35は、判定手段34が上記所定の判定を行った結果、単位量あたりの巻線に含まれる傷の数が所定の閾値以上である(巻線傷情報を検出した)場合に、所定の処理を実行する。本実施形態では、装置制御手段35は、報知部28を制御して巻線傷情報を報知する。なお、本実施形態では、装置制御手段35が上記所定の処理を実行する対象を報知部28とし、上記所定の処理を報知部28による報知としたが、上記所定の処理を実行する対象及び上記所定の処理はこれに限定されるものではない。例えば、
図4に二点鎖線で示すように、装置制御手段35は、判定手段34が巻線傷情報を検出した場合に、上記所定の処理を実行する対象として巻線機27を制御してもよい。この場合、装置制御手段35は、上記所定の処理として、巻線機27を停止させる処理を実行してもよいし、あるいは、巻線が完了した後、巻線傷情報を検出した巻線が巻装された分割コア7を、正常な分割コア7とは分離して巻線機27から取り除いてもよい。これにより、品質の低い分割コア7(例えば、傷が多く含まれる巻線を巻装した分割コア7)の流通を防止することができる。
【0041】
なお、巻線傷情報は、単位量あたりの巻線に含まれる傷の数が所定の閾値以上である旨の情報に限定されるものではなく、上述したように、巻線に傷が存在する旨の情報や、巻線に所定の大きさ以上の傷が存在する旨の情報等であってもよい。例えば、判定手段34が行う上記所定の判定は、傷検出部24が巻線の傷を検出したか否かの判定であってもよい。すなわち、装置制御手段35は、傷検出部24が巻線の傷を検出したときに上記所定の処理を実行してもよい。
【0042】
上記のように構成された巻線装置20では、巻線の傷を検出する傷検出部24を平角線成形機22の下流側に配置しているので、巻線時に巻線の傷をリアルタイムで検出することができる。このため、ユーザは傷検出部24による巻線の傷の検出に応じて対応することができるので、巻線の傷に起因する製品(市場に流通する分割コア7)の品質低下を抑えることができる。
【0043】
また、傷検出部24による傷の検出に基づいて所定の処理を実行するコントローラ29を備えるので、巻線の傷の検出結果を報知部28や巻線機27等の動作に反映させることができる。このため、ユーザに傷の存在を認識させたり、上記品質の低い分割コア7(巻装対象)を分離して取り除いたりすることができ、上記品質の低い分割コア7の流通を防止することができるので、巻線の傷に起因する製品の品質低下を抑えることができる。
【0044】
また、コントローラ29の装置制御手段35は、判定手段34が上記所定の判定を行った結果、単位量あたりの巻線に含まれる傷の数が所定の閾値以上である場合に、所定の処理を実行する。このため、上記品質の低い分割コア7の存在をユーザに認識させたり、上記品質の低い分割コア7を分離して取り除いたりすることができるので、品質の低い分割コア7の流通を防止することができ、巻線の傷に起因する製品の品質低下を抑えることができる。
【0045】
また、引出し量検出部23が、巻線の引出し量Lを検出し、コントローラ29が、引出し量検出部23が検出する現在の引出し量Lと、傷検出部24が傷iを検出したときの引出し量Liとに基づいて、単位量あたりの巻線に含まれる傷の数を検出する。このように、巻線の引出し量Lを検出する引出し量検出部23を設けるという簡易な構造で、単位量あたりの巻線に含まれる傷の数を検出することができる。
【0046】
また、コントローラ29の装置制御手段35は、傷検出部24が巻線の傷を検出したときに上記所定の処理を実行してもよい。例えば、コントローラ29は、傷検出部24が巻線の傷を検出する度に、ランプ(報知部28)を点灯させて直ぐに消灯させてもよい。
【0047】
また、コントローラ29に制御されて、巻線傷情報を報知可能な報知部28を備えるので、巻線傷情報をユーザに認識させることができる。これにより、ユーザは巻線傷情報に応じて対応することができるので、巻線の傷に起因する製品(分割コア7)の品質低下を抑えることができる。
【0048】
このように、本実施形態によれば、巻線時に巻線の傷をリアルタイムで検出することができるので、巻線の断面形状を途中で変形させてから巻装対象に対して巻装する場合であっても、巻線の傷に起因する製品の品質低下を抑えることができる。
【0049】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
7:分割コア(巻装対象)
11:平角線(巻線)
13:丸素線(巻線)
20:巻線装置
21:巻線リール(線材供給源)
22:平角線成形機(巻線変形部)
23:引出し量検出部
24:傷検出部
27:巻線機
28:報知部
29:コントローラ(制御部)