(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132632
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、医用情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 30/40 20180101AFI20230914BHJP
【FI】
G16H30/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038063
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩村 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】高澤 純一
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 智
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA26
(57)【要約】
【課題】アプリケーションの実行に係る情報の提供を可能にすること。
【解決手段】実施形態の医用情報処理装置は、実行部と、比較部と、表示制御部とを持つ。実行部は、予め定められた参照情報に基づいて、複数のアプリケーションの内、処理対象とする医用画像に対して実行するアプリケーションを自動で選択して実行する。比較部は、参照情報に含まれる複数のアプリケーションの各々の実行条件を示す第1情報と、医用画像の撮影条件を示す第2情報とを比較する。表示制御部は、複数のアプリケーションの内で実行されなかったアプリケーションのリストと、第1情報と第2情報との比較結果とを表示部に表示させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた参照情報に基づいて、複数のアプリケーションの内、処理対象とする医用画像に対して実行するアプリケーションを自動で選択して実行する実行部と、
前記参照情報に含まれる前記複数のアプリケーションの各々の実行条件を示す第1情報と、前記医用画像の撮影条件を示す第2情報とを比較する比較部と、
前記複数のアプリケーションの内で実行されなかったアプリケーションのリストと、前記第1情報と前記第2情報との比較結果とを表示部に表示させる表示制御部と、
を備える医用情報処理装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記実行されなかったアプリケーションが実行されなかった理由を前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記第1情報と前記第2情報との相違点を示す情報を、前記表示部に表示させる、
請求項1または2に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記実行部は、さらに、前記医用画像に対して、ユーザにより手動で指定されたアプリケーションを実行する、
請求項1から3の何れか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記比較部は、前記ユーザにより手動で指定されたアプリケーションの前記第1情報と、前記医用画像の前記第2情報とが合致するか否かを判定し、
前記第1情報と前記第2情報とが合致しないと判定された場合、前記表示制御部は、前記ユーザにより手動で指定されたアプリケーションを実行するか否かの第1指示を受け付けるための第1受付部を含む確認画面を、前記表示部に表示させる、
請求項4に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記第1受付部に加えて、前記第2情報の内容を前記第1情報に適用するか否かの第2指示を受け付けるための第2受付部を含む前記確認画面を、前記表示部に表示させる、
請求項5に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記第2情報によって示される撮影条件が所定条件ではない場合、前記第2受付部を前記確認画面に含めない、
請求項6に記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記第2指示を受け付けた回数が所定の閾値以上である場合、前記第2情報の内容を前記第1情報に適用して前記参照情報を更新する更新部をさらに備える、
請求項6または7に記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
医用情報処理装置のコンピュータが、
予め定められた参照情報に基づいて、複数のアプリケーションの内、処理対象とする医用画像に対して実行するアプリケーションを自動で選択して実行し、
前記参照情報に含まれる前記複数のアプリケーションの各々の実行条件を示す第1情報と、前記医用画像の撮影条件を示す第2情報とを比較し、
前記複数のアプリケーションの内で実行されなかったアプリケーションのリストと、前記第1情報と前記第2情報との比較結果とを表示部に表示させる、
医用情報処理方法。
【請求項10】
医用情報処理装置のコンピュータに、
予め定められた参照情報に基づいて、複数のアプリケーションの内、処理対象とする医用画像に対して実行するアプリケーションを自動で選択して実行させ、
前記参照情報に含まれる前記複数のアプリケーションの各々の実行条件を示す第1情報と、前記医用画像の撮影条件を示す第2情報とを比較させ、
前記複数のアプリケーションの内で実行されなかったアプリケーションのリストと、前記第1情報と前記第2情報との比較結果とを表示部に表示させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用情報処理装置、医用情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医用画像診断の分野において、AI機能(Artificial Intelligence;人工知能)を用いた技術についての開発が進められており、目的に応じた様々なAIアプリケーションがベンダーから供給されている。このAIアプリケーションは、種々の解析や演算を医師等に代わって実行する。医療機関では、このようなAIアプリケーションを導入することにより、医療診療の効率化を図ることができる。
【0003】
また、上記のAIアプリケーションの進歩に伴い、AIアプリケーションを実行するプラットフォーム(以下、「AIプラットフォーム」とも言う)の開発も進められている。AIプラットフォームにおける重要な機能の一つが、解析対象となる画像に対して、どのAIアプリケーションを実行するかを判断する「ルールエンジン」である。例えば、DICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)規格に準拠した画像の場合、ルールエンジンは、DICOMタグ等の付帯情報を用いて、画像に適したAIアプリケーションを自動で選択して実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなAIプラットフォームでは、画像の付帯情報が、ルールエンジンにおいて予め定められたルールに合致しない限り、AIアプリケーションは実行されない。このため、AIプラットフォームのユーザの期待に反して、解析対象の画像に対して所望のAIアプリケーションが実行されない場合がある。この場合、ユーザは、何が原因でAIアプリケーションが実行されなかったのかを把握することができなかった。
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、アプリケーションの実行に係る情報の提供を可能にすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の医用情報処理装置は、実行部と、比較部と、表示制御部とを持つ。実行部は、予め定められた参照情報に基づいて、複数のアプリケーションの内、処理対象とする医用画像に対して実行するアプリケーションを自動で選択して実行する。比較部は、参照情報に含まれる複数のアプリケーションの各々の実行条件を示す第1情報と、医用画像の撮影条件を示す第2情報とを比較する。表示制御部は、複数のアプリケーションの内で実行されなかったアプリケーションのリストと、第1情報と第2情報との比較結果とを表示部に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る医用情報処理装置1の利用環境および機能ブロックの一例を示す図。
【
図2】実施形態に係るルールRLのデータ構成の一例を示す図。
【
図3】実施形態に係る医用情報処理装置1のアプリケーション自動実行処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図4】実施形態に係る未実行アプリケーション画面P1の一例を示す図。
【
図5】実施形態に係る医用情報処理装置1のアプリケーション手動実行処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図6】実施形態に係る手動実行画面P2の一例を示す図。
【
図7】実施形態に係る医用情報処理装置1のルール更新処理の流れの一例を示すフローチャート。
【
図8】実施形態に係るルールRLの更新後のデータ構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態の医用情報処理装置、医用情報処理方法、およびプログラムについて説明する。
【0010】
[医用情報処理装置の構成]
図1は、実施形態に係る医用情報処理装置1の利用環境および機能ブロックの一例を示す図である。医用情報処理装置1は、アプリケーションを実行するAIプラットフォームの機能を提供する。アプリケーションは、解析対象となる医用画像に対して目的に応じた様々な解析処理を行う。アプリケーションには、例えば、患者の病変を検知するための臨床アプリケーション、部位のセグメンテーションを行うアプリケーション、腫瘍をチェックするアプリケーション、病変の進行具合を判定するアプリケーション、脳梗塞等の特定の病変の場所を検知するアプリケーション等が含まれる。アプリケーションは、例えば、ディープラーニング等の機械学習の技術を用いた学習処理により生成された機械学習モデルである。
【0011】
医用情報処理装置1は、例えば、病院等の医療機関に配置される。医用情報処理装置1は、例えば、ワークステーション、サーバ等であってよい。医用情報処理装置1は、例えば、通信ネットワークNWを介して、少なくとも1つの端末装置3、少なくとも1つの医用画像診断装置5、医用画像データベースDB等と、データ送受信可能に接続されている。
【0012】
通信ネットワークNWは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を示す。通信ネットワークNWは、病院基幹LAN(Local Area Network)等の無線/有線LANやインターネット網のほか、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワークおよび衛星通信ネットワーク等を含む。
【0013】
端末装置3は、医用情報処理装置1により提供されるAIプラットフォームの機能を利用するための装置である。端末装置3は、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレットやスマートフォン等の携帯端末等である。端末装置3は、例えば、医師、技師等によって操作される。端末装置3は、専用のアプリケーションプログラムあるいはブラウザなどが起動し、医用情報処理装置1により提供される各種情報を医者等に提供する。
【0014】
医用画像診断装置5は、診断対象となる患者(被検体)を撮像して医用画像を生成する。医用画像診断装置5は、例えば、X線CT(Computed Tomography:コンピュータ断層診断)装置、X線診断装置、磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置、核医学診断装置等のモダリティである。医用画像診断装置5は、付帯情報が付与された画像を生成する。医用画像診断装置5は、例えば、DICOM規格に準拠した画像(以下「DICOM画像」と言う)を生成する。DICOM画像には、付帯情報としてDICOMタグ(以下、単に「タグ」と言う)が付与されている。タグには、例えば、各装置(モダリティ)を識別する装置ID、検査部位、造影剤の有無、撮影のプロトコル番号、患者を識別する患者ID、検査を識別する検査ID、装置が配置されている施設の情報、装置のメーカ、装置の操作者(技師等)により手入力で入力された情報等が含まれる。
【0015】
医用画像データベースDBは、医用画像診断装置5により生成された各種画像を記憶する。医用画像データベースDBは、例えば、患者ごとのCT画像、MR(Magnetic Resonance)画像、超音波画像等を記憶する。医用画像データベースDBは、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスクによって実現される。
【0016】
医用情報処理装置1は、例えば、処理回路100と、通信インターフェース110と、入力インターフェース120と、ディスプレイ130と、メモリ140とを備える。通信インターフェース110は、通信ネットワークNWを介して、端末装置3、医用画像診断装置5、医用画像データベースDB等の外部装置と通信する。通信インターフェース110は、例えば、NIC(Network Interface Card)等の通信インターフェースを含む。
【0017】
入力インターフェース120は、医用情報処理装置1の操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路100に出力する。例えば、入力インターフェース120は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパネル等を含む。入力インターフェース120は、例えば、マイク等の音声入力を受け付けるユーザインターフェースであってもよい。
【0018】
なお、本明細書において入力インターフェースはマウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0019】
ディスプレイ130は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ130は、処理回路100によって生成された画像や、操作者からの各種の入力操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を表示する。例えば、ディスプレイ130は、LCD(Liquid Crystal Display)や、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等である。
【0020】
処理回路100は、例えば、取得機能101と、実行機能102と、比較機能103と、表示制御機能104と、更新機能105とを備える。処理回路100は、例えば、ハードウェアプロセッサ(コンピュータ)がメモリ140(記憶回路)に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0021】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA))等の回路(circuitry)を意味する。メモリ140にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは、回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。上記のプログラムは、予めメモリ140に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の非一時的記憶媒体に格納されており、非一時的記憶媒体が医用情報処理装置1のドライブ装置(不図示)に装着されることで非一時的記憶媒体からメモリ140にインストールされてもよい。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0022】
取得機能101は、通信ネットワークNWを介して、医用画像データベースDBや医用画像診断装置5から、医用画像データを取得する。
【0023】
実行機能102は、例えば、自動実行機能102-1と、手動実行機能102-2とを備える。自動実行機能102-1は、端末装置3からの要求に応じて、解析対象となる医用画像に対して、ルールエンジンによりアプリケーションを自動で選択して実行する。自動実行機能102-1は、メモリ140に記憶されたルールRL(参照情報)に基づいて、アプリケーションを自動で選択して実行する。手動実行機能102-2は、端末装置3からの要求に応じて、解析対象となる医用画像に対して、端末装置3のユーザ(医師等)により手動で指定されたアプリケーションを実行する。実行機能102は、「実行部」の一例である。すなわち、実行機能102は、予め定められた参照情報に基づいて、複数のアプリケーションの内、処理対象とする医用画像に対して実行するアプリケーションを自動で選択して実行する。実行機能102は、さらに、医用画像に対して、ユーザにより手動で指定されたアプリケーションを実行する。
【0024】
比較機能103は、ルールRLに予め定められた設定情報(実行条件,第1情報)と、解析対象となる医用画像に付与された医用画像の撮影条件を示す付帯情報(検査情報,第2情報)との比較を行い、両者が合致するか否かを判定する。比較機能103は、「比較部」の一例である。すなわち、比較機能103は、参照情報に含まれる複数のアプリケーションの各々の実行条件を示す第1情報と、医用画像の撮影条件を示す第2情報とを比較する。
【0025】
表示制御機能104は、実行機能102により実行されたアプリケーションの処理結果や、比較機能103による比較結果に基づいて各種画面の情報を生成し、端末装置3に送信する。表示制御機能104は、「表示制御部」の一例である。すなわち、表示制御機能104は、複数のアプリケーションの内で実行されなかったアプリケーションのリストと、第1情報と前記第2情報との比較結果とを表示部に表示させる。表示制御機能104は、実行されなかったアプリケーションが実行されなかった理由を表示部に表示させる。表示制御機能104は、第1情報と第2情報との相違点を示す情報を、表示部に表示させる。
【0026】
更新機能105は、ルールRLの更新処理を行う。更新機能105による更新処理の詳細については後述する。更新機能105は、「更新部」の一例である。
【0027】
メモリ140は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスクによって実現される。これらの非一過性の記憶媒体は、NAS(Network Attached Storage)や外部ストレージサーバ装置といった通信ネットワークNWを介して接続される他の記憶装置によって実現されてもよい。また、メモリ140には、ROM(Read Only Memory)やレジスタ等の非一過性の記憶媒体が含まれてもよい。メモリ140は、例えば、ルールRL、アプリケーションAP、履歴情報H等を記憶する。アプリケーションAPには、目的に応じた様々な解析処理を行う第1アプリケーションAP1、第2アプリケーションAP2、第3アプリケーションAP3等が含まれる。その他、メモリ140は、処理回路100が利用するプログラムやパラメータデータやその他のデータを記憶する。
【0028】
図2は、ルールRLのデータ構成の一例を示す図である。
図2に示すように、ルールRLでは、アプリケーションごとに、該アプリケーションを実行するための各条件がタグ形式で定義されている。例えば、「第1アプリケーション」については、「モダリティ」タグが“CT”であり且つ「検査部位」タグが“HEAD”であることが、同アプリケーションの実行条件として定義されている。
【0029】
履歴情報Hは、端末装置3のユーザ(医師等)による指示に基づいて各アプリケーションが手動実行機能102-2により実行された場合の履歴を記録する。この履歴情報Hは、更新機能105により参照される。履歴情報Hの詳細については後述する。
【0030】
[処理フロー]
(アプリケーション自動実行処理)
次に、実施形態に係る医用情報処理装置1の各種処理について説明する。まず、医用情報処理装置1のアプリケーション自動実行処理について説明する。
図3は、医用情報処理装置1のアプリケーション自動実行処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図3に示すアプリケーション自動実行処理は、例えば、医者等の操作に基づいて端末装置3から送信された処理要求を、医用情報処理装置1が受信したときに実行される。
【0031】
まず、取得機能101は、端末装置3からの処理要求に応じて、解析対象とする患者の医用画像データを、医用画像データベースDBから取得する(ステップS101)。取得機能101は、例えば、処理要求に含まれる患者IDに基づいて、医用画像データを医用画像データベースDBから取得する。
【0032】
次に、自動実行機能102-1は、メモリ140に記憶されたルールRLに基づいて、取得された医用画像データに対応するアプリケーションを自動で選択して実行する(ステップS103)。例えば、自動実行機能102-1は、解析対象となる医用画像の検査情報と、メモリ140に記憶されたルールRLに予め定められた設定情報との比較を行い、医用画像の検査情報と合致する設定情報を持つアプリケーションを自動で選択して実行する。
【0033】
次に、表示制御機能104は、アプリケーションの実行結果を示す実行結果画面および/または未実行のアプリケーションを示す未実行アプリケーション画面を表示させるための情報を生成し、端末装置3に出力する(ステップS105)。アプリケーションの実行結果画面には、例えば、臨床アプリケーションにより検知された患者の病変に関する情報等が表示される。
【0034】
図4は、端末装置3の表示部に表示される未実行アプリケーション画面P1の一例を示す図である。
図4に示す例では、未実行のアプリケーションとして、「第1アプリケーション」と、「第2アプリケーション」とが表示されている。この未実行アプリケーション画面P1においては、アプリケーションごとに、比較機能103による比較結果が表示される。
【0035】
図4において、「第1アプリケーション」に関しては、ルールRL上において「モダリティ」タグが“CT”であり且つ「検査部位」タグが“HEAD”であることが同アプリケーションの実行条件として定義されているのに対して、解析対象である医用画像データの検査情報では「モダリティ」タグが“CT”であり、「検査部位」タグが“NECK”となっている。この場合、「モダリティ」タグについては両者の内容(“CT”)が合致しているが、「検査部位」タグについては両者の内容が異なっている。
図4の箇所D1に示すように、このタグの相違点が強調して表示される。医師等は、この未実行アプリケーション画面P1を参照することで、この「検査部位」タグの内容の相違が原因で、第1アプリケーションが未実行となったことを把握することできる。
【0036】
図4において、「第2アプリケーション」に関しては、ルールRL上において「モダリティ」タグが“CT”であり且つ「造影剤」タグが“Not Null(すなわち、造影剤あり)”であることが同アプリケーションの実行条件として定義されているのに対して、解析対象である医用画像データの検査情報では「モダリティ」タグが“CT”であり、「造影剤」タグが“Null(すなわち、造影剤なし)”となっている。この場合、「モダリティ」タグについては両者の内容(“CT”)が合致しているが、「造影剤」タグについては両者の内容が異なっている。
図4の箇所D2に示すように、このタグの相違点が強調して表示される。医師等は、この未実行アプリケーション画面P1を参照することで、この「造影剤」タグの内容の相違が原因で、第2アプリケーションが未実行となったことを把握することできる。
【0037】
医師等は、端末装置3に表示された未実行アプリケーション画面P1を確認すること(相違点の強調表示を確認すること)で、各アプリケーションが実行されなかった原因を把握することができる。強調表示については、任意の表示方法が利用されてよい。強調表示には、例えば、相違点の文字または背景の色を変えて表示すること、相違点の文字を拡大して表示すること、相違点の文字を点滅させて表示すること等が含まれる。以上により、本フローチャートの処理が完了する。
【0038】
(アプリケーション手動実行処理)
次に、医用情報処理装置1のアプリケーション手動実行処理について説明する。
図5は、医用情報処理装置1のアプリケーション手動実行処理の流れの一例を示すフローチャートである。例えば、医師等は、所望のアプリケーションが自動で実行されなかった場合、手動操作により指定したアプリケーションを実行することができる。
図5に示すアプリケーション手動実行処理は、例えば、医者等の操作に基づいて端末装置3から送信された処理要求を、医用情報処理装置1が受信したときに実行される。
【0039】
まず、取得機能101は、端末装置3からの処理要求に応じて、解析対象とする患者の医用画像データを、医用画像データベースDBから取得する(ステップS201)。取得機能101は、例えば、処理要求に含まれる患者IDに基づいて、医用画像データを医用画像データベースDBから取得する。
【0040】
次に、表示制御機能104は、手動実行に関する指示を受け付けるための手動実行画面の情報を生成し、端末装置3に出力する(ステップS203)。端末装置3は、受信した手動実行画面の情報に基づいて、手動実行画面を表示部に表示する。医師等は、この端末装置3に表示された手動実行画面において、解析対象とする医用画像と、該医用画像に対して実行するアプリケーションとを手動で指定することができる。
【0041】
図6は、端末装置3に表示された手動実行画面P2の一例を示す図である。
図6に示す例では、解析対象とする医用画像として「CT画像(首画像)CT1」が選択され、領域R1に表示されたアプリケーションの候補リストの中から該医用画像に対して実行するアプリケーションとして「第1アプリケーション」が選択されている。端末装置3は、医用画像およびアプリケーションの選択情報を医用情報処理装置1に送信する。
【0042】
次に、比較機能103は、選択された医用画像の検査情報と、ルールRLに予め定められたタグの設定情報との比較を行い、両者が合致するか否かを判定する(ステップS207)。比較機能103により両者が合致すると判定された場合(ステップS207;YES)、手動実行機能102-2は、選択されたアプリケーションを実行する(ステップS217)。そして、表示制御機能104は、アプリケーションの実行結果を示す画面の情報を生成し、端末装置3に出力する。
【0043】
一方、比較機能103により両者が合致しないと判定された場合(ステップS207;NO)、表示制御機能104は、医師等にアプリケーションの実行を確認するための確認表示(確認画面)の情報を生成し、端末装置3に出力する(ステップS209)。端末装置3は、受信した情報に基づいて、確認表示R2を表示する。
図6に示す例では、確認表示R2において、第1アプリケーションに関して、医用画像の検査情報と、ルールRLに予め定められたタグの設定情報との相違点である「検査部位」タグの箇所D3が強調して表示されている。また、確認表示R2において、「ルールに合致しない情報があります。実行しますか?」の問い掛けとともに、アプリケーションの最終的な実行指示(第1指示)を受け付けるボタンB1(「はい」、「いいえ」)が表示されている。医師等は、この確認表示R2の内容を確認した上で、「はい」または「いいえ」のいずれかのボタンB1を押下することで、アプリケーションの実行/非実行の指示を行うことができる。端末装置3は、アプリケーションの実行/非実行の指示を医用情報処理装置1に送信する。
【0044】
ボタンB1は、「第1受付部」の一例である。すなわち、比較機能103は、ユーザにより手動で指定されたアプリケーションの第1情報と、医用画像の第2情報とが合致するか否かを判定し、第1情報と第2情報とが合致しないと判定された場合、表示制御機能104は、ユーザにより手動で指定されたアプリケーションを実行するか否かの第1指示を受け付けるための第1受付部を含む確認画面を、表示部に表示させる。
【0045】
また、
図6に示す例では、確認表示R2において、医用画像の検査情報の設定を、ルールRLに適応するか否かの指示(第2指示)を受け付けるためのチェックボックスC1が表示されている。医師等は、このチェックボックスC1をチェックすることで、ルールRLへの適用の指示を行うことができる。適用の指示が行われた場合、ルールRLが更新されることとなる。ルールRLの更新処理については後述する。端末装置3は、ルールRLへの適用/非適用の指示を医用情報処理装置1に送信する。
【0046】
チェックボックスC1は、「第2受付部」の一例である。すなわち、表示制御機能104は、第1受付部に加えて、第2情報の内容を前記第1情報に適用するか否かの第2指示を受け付けるための第2受付部を含む確認画面を、表示部に表示させる。
【0047】
尚、解析対象の医用画像が、他の病院等から取り込まれたものである(「装置が配置されている施設の情報」のタグが、医用情報処理装置1を管理する病院とは異なる病院等を示している)等、通常のデータではない場合、上記のルールRLに適応するか否かの指示を受け付けるためのチェックボックスC1は表示されないようにしてもよい。すなわち、表示制御機能104は、第2情報によって示される撮影条件が所定条件ではない場合、第2受付部を確認画面に含めないようにしてもよい。
【0048】
図5に戻り、手動実行機能102-2は、端末装置3からアプリケーションの非実行の指示を受け付けた場合(ステップS211;NO)、同アプリケーションを実行せずに、本フローチャートの処理を終了する。
【0049】
一方、手動実行機能102-2は、端末装置3からアプリケーションの実行の指示を受け付けた場合(ステップS211;YES)、ルールRLへの適用の指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS213)。手動実行機能102-2は、ルールRLへの適用の指示を受け付けていないと判定した場合(ステップS213;NO)、選択されたアプリケーションを実行する(ステップS217)。そして、表示制御機能104は、アプリケーションの実行結果を示す画面の情報を生成し、端末装置3に出力する。
【0050】
一方、手動実行機能102-2は、ルールRLへの適用の指示を受け付けたと判定した場合(ステップS213;YES)、アプリケーションの実行対象となる医用画像の検査情報を含む実行履歴を、メモリ140に記憶されている履歴情報Hに登録する(ステップS215)。次に、手動実行機能102-2は、選択されたアプリケーションを実行する(ステップS217)。そして、表示制御機能104は、アプリケーションの実行結果を示す画面の情報を生成し、端末装置3に出力する。以上により、本フローチャートの処理が終了する。
【0051】
(ルール更新処理)
次に、医用情報処理装置1のルール更新処理について説明する。
図7は、医用情報処理装置1のルール更新処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7に示すルール更新処理は、例えば、所定期間ごと(例えば、1日ごと)のバッチ処理により実行される。或いは、ルール更新処理は、例えば、医用情報処理装置1の操作者による入力インターフェース120を介した実行指示に応じて実行されてもよい。この例では、メモリ140に記憶されている履歴情報Hには、医師等の指示に基づいてルールRLへの適用対象となった実行履歴が複数登録されているものとする。
【0052】
まず、更新機能105は、メモリ140から履歴情報Hを取得する(ステップS301)。次に、更新機能105は、履歴情報Hに含まれる実行履歴に基づいて、アプリケーションの実行対象となった医用画像の検査情報の設定ごとに、その実行回数をカウントし、実行回数が、所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS303)。例えば、履歴情報Hにおいて、医用画像の検査情報の設定(「モダリティ」タグが“CT”、「検査部位」タグが“NECK”)に対する第1アプリケーションの実行回数が所定の閾値(例えば、3回等)以上である場合、この医用画像の検査情報の設定は、以後の自動実行の条件(ルール)として適用しても問題ないと判断することができる。一方、この第1アプリケーションの実行回数が所定の閾値未満である場合は、例外的に手動実行された可能性があるため、自動実行の条件(ルール)として適用しないと判断する。
【0053】
更新機能105は、実行回数が閾値以上であると判定した場合(ステップS303;YES)、ルールの更新を行う(ステップS305)。
図8は、ルールRLの更新後のデータ構成の一例を示す図である。
図2に示すルールRLと比較して、
図8に示す更新後のルールRLでは、更新機能105による更新処理の結果、「第1アプリケーション」の「検査部位」タグの設定値が“HEAD/NECK”が更新されている。以後、この更新後のルールRLを用いた自動実行機能102-1の処理では、「第1アプリケーション」の「検査部位」タグの設定値が“HEAD”の医用画像に加えて、“NECK”の医用画像についても、第1アプリケーションが自動で実行されることとなる。
【0054】
すなわち、更新機能105は、第2指示を受け付けた回数が所定の閾値以上である場合、第2情報の内容を第1情報に適用して参照情報を更新する。
【0055】
一方、更新機能105は、実行回数が閾値以上ではないと判定した場合(ステップS303;NO)、ルールRLの更新を行わない。これにより、本フローチャートの処理が終了する。尚、更新機能105は、設定済みのルールの一部を削除する機能を有してもよい。例えば、更新機能105は、上記のような更新処理により「第1アプリケーション」の「検査部位」タグの設定値として追加された“NECK”を、ユーザの指示に応じて削除するようにしてもよい。
【0056】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、予め定められた参照情報に基づいて、複数のアプリケーションの内、処理対象とする医用画像に対して実行するアプリケーションを自動で選択して実行する実行部と、参照情報に含まれる複数のアプリケーションの各々の実行条件を示す第1情報と、医用画像の撮影条件を示す第2情報とを比較する比較部と、複数のアプリケーションの内で実行されなかったアプリケーションのリストと、第1情報と第2情報との比較結果とを表示部に表示させる表示制御部と、を備えることで、アプリケーションの実行に係る情報を提供することが可能となる。
【0057】
尚、上記の医用情報処理装置1の機能の一部または全部は、端末装置3において実現されてもよい。この場合、端末装置3は、「医用情報処理装置」の一例となる。
【0058】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
処理回路(processing circuitry)を備え、
前記処理回路は、
予め定められた参照情報に基づいて、複数のアプリケーションの内、処理対象とする医用画像に対して実行するアプリケーションを自動で選択して実行し、
前記参照情報に含まれる前記複数のアプリケーションの各々の実行条件を示す第1情報と、前記医用画像の撮影条件を示す第2情報とを比較し、
前記複数のアプリケーションの内で実行されなかったアプリケーションのリストと、前記第1情報と前記第2情報との比較結果とを表示部に表示させる、
医用情報処理装置。
【0059】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0060】
1 医用情報処理装置
3 端末装置
5 医用画像診断装置
DB 医用画像データベース
100 処理回路
110 通信インターフェース
120 入力インターフェース
130 ディスプレイ
140 メモリ
101 取得機能
102 実行機能
102-1 自動実行機能
102-2 手動実行機能
103 比較機能
104 表示制御機能
105 更新機能