(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132654
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】直動案内装置
(51)【国際特許分類】
F16C 33/76 20060101AFI20230914BHJP
F16C 29/06 20060101ALI20230914BHJP
F16J 15/40 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
F16C33/76 Z
F16C29/06
F16J15/40 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038110
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】中野 健太
【テーマコード(参考)】
3J042
3J104
3J216
【Fターム(参考)】
3J042AA02
3J042AA08
3J042AA12
3J042BA03
3J042CA15
3J042DA06
3J042DA10
3J104AA02
3J104AA65
3J104AA69
3J104AA74
3J104AA76
3J104AA77
3J104BA62
3J104CA06
3J104CA13
3J104DA04
3J104DA05
3J104EA01
3J104EA04
3J216AA02
3J216AA16
3J216AB22
3J216BA30
3J216CA01
3J216CA04
3J216CC03
3J216CC33
3J216CC51
3J216CC70
3J216DA01
3J216DA02
3J216DA11
3J216EA06
3J216EA07
3J216FA02
(57)【要約】
【課題】エアーシールを設けることにより端面給脂が可能とし、また、圧縮空気を用いて効率よく異物侵入を防ぐことができる直動案内装置を提供できる。
【解決手段】本発明の直動案内装置は、案内レール10とスライダー20とを備え、スライダー20の長手方向の少なくとも一方の端部にエアーシール31を備え、エアーシール31は案内レール10内に異物の侵入を阻止するプロテクター30と隣接するエアーシール蓋部31aとスライダー20内に異物の侵入を阻止するサイドシール32と隣接するエアーシール底部31bとで構成され、エアーシール蓋部31の端面とエアーシール31b底部の端面との隙間に外部より圧縮空気を供給する圧縮空気供給継ぎ手40と連通する圧縮空気を供給する空気供給路42が形成され、空気供給路42の空気吐出部Fには案内レール上面10bに対し圧縮空気を傾斜角に吐出する傾斜面からなる空気傾斜部31eを設けている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延びる案内レールと、
前記案内レールに複数の転動体を介してスライド移動可能に跨設されるスライダーと、を備える直動案内装置であって、
前記スライダーの長手方向の少なくとも一方の端部にエアーシールを備え、
前記エアーシールは、
前記案内レール内に異物の侵入を阻止するプロテクターと隣接するエアーシール蓋部と
前記スライダー内に異物の侵入を阻止するサイドシールと隣接するエアーシール底部と、で構成され、
前記エアーシール蓋部の端面とエアーシール底部の端面との隙間に、外部より圧縮空気を供給する圧縮空気供給継ぎ手と連通する前記圧縮空気を供給する空気供給路が形成され、
前記空気供給路の空気吐出部には、案内レール上面に対し圧縮空気を傾斜角に吐出する傾斜面からなる空気傾斜部を設けていることを特徴とする直動案内装置。
【請求項2】
前記空気吐出部には、前記空気供給路への異物侵入を防ぐフィルターを備えていることを特徴とする請求項1に記載の直動案内装置。
【請求項3】
前記エアーシールの中央部に潤滑剤供給用の貫通孔を有することを特徴とする請求項1または2に記載の直動案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用機械等に用いられる直動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な、直動案内装置は、外面に転動溝を有する案内レールと、その案内レールを跨いで組み付けられたスライダーが備えられるとともに、プロテクター、サイドシール、積層シールといったスライダー端部を密封するシールが多くに使用されている。しかしながら、これらのシールを用いても、非常に微細な異物やクーラントのような液体までシールすることは困難である。そこで、圧縮空気を吐出して異物やクーラントのスライダーへの侵入を防ぐ試みがなされている。例えば、特許文献1では、圧縮空気を複数の小さな孔より吐出させて異物を除去する提案がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特許文献1では圧縮空気を供給する配管がシール端面に設けられているため、当該端面より潤滑剤を供給することができない。この場合、側面より給脂することは出来るが、側面給脂は構造上4溝均等に潤滑剤を分配することが難しい問題がある。また、異物が侵入する環境下では、より多くの潤滑剤を与える必要があり、潤滑剤のアンバランスな分配供給は避けるべきである。
【0005】
また、上面より給脂を行うことも可能であるが、一般的に上面給脂では上部のテーブルに配管の追加工が必要となり、コスト面で上昇する問題がある。このように、特許文献1の提案では端面給脂が行えないのは実用上問題が多い。
【0006】
さらに、特許文献1ではシール内周が矩形なうえ、圧縮空気が案内レールへ垂直に当たるため、効率よく異物を除去することが難しい。このためスライダーの運動状態(高速等)によっては、圧縮空気が接触シールを通過しスライダー内へ入ってしまう可能性も否定できない。
【0007】
そこで、本発明はこのような課題を解決するためになされてものであり、エアーシールを設けることにより端面給脂が可能とし、また、圧縮空気を用いて効率よく異物侵入を防ぐことができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の直動案内装置は、上記の目的を達成するために、一方向に延びる案内レールと、
前記案内レールに複数の転動体を介してスライド移動可能に跨設されるスライダーと、を備える直動案内装置であって、
前記スライダーの長手方向の少なくとも一方の端部にエアーシールを備え、
前記エアーシールは、
前記案内レール内に異物の侵入を阻止するプロテクターと隣接するエアーシール蓋部と
前記スライダー内に異物の侵入を阻止するサイドシールと隣接するエアーシール底部と、で構成され、
前記エアーシール蓋部の端面とエアーシール底部の端面との隙間に、外部より圧縮空気を供給する圧縮空気供給継ぎ手と連通する前記圧縮空気を供給する空気供給路が形成され、
前記空気供給路の空気吐出部には、案内レール上面に対し圧縮空気を傾斜角に吐出する傾斜面からなる空気傾斜部を設けていることを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、前記空気吐出部には、前記空気供給路への異物侵入を防ぐフィルターを備えていることを特徴とする。
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、前記エアーシールの中央部に潤滑剤供給用の貫通孔を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エアーシールを設けることにより端面給脂が可能とし、また、圧縮空気を用いて効率よく異物侵入を防ぐことができる直動案内装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は、実施形態1の直動案内装置の正面図で、(b)はその直動案内装置の側面図である。
【
図2】実施形態1の直動案内装置のシール構成を示す断面図で、
図1(a)におけるA-A断面に相当する図である。
【
図3】実施形態1の直動案内装置のエアーシールの構成を示す正面図である。
【
図4】実施形態2の直動案内装置のエアーシールの構成を示す断面図で、
図1(a)におけるA-A断面に相当する図である。
【
図5】他の実施形態の直動案内装置の実施形態のエアーシールの構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態1]
以下、本発明の実施形態1について、
図1から
図3を用いて説明する。
図1(a)は、直動案内装置1の長手方向端部からみた正面図で、
図1(b)は直動案内装置1の長手方向からみた側面図である。本発明の直動案内装置1は、一方向に延びる案内レール10と、当該案内レール10に図示しない複数の転動体を介してスライド移動可能に跨設されるスライダー20と、を備え、当該スライダー20の長手方向の少なくとも一方の端部にエアーシール31を備え、エアーシール31は、案内レール10内に異物の侵入を阻止するプロテクター30と隣接するエアーシール蓋部とスライダー内に異物の侵入を阻止するサイドシール32と隣接するエアーシール底部と、で構成され、エアーシール蓋部の端面とエアーシール底部の端面との隙間に、外部より圧縮空気を供給する圧縮空気供給継ぎ手と連通する圧縮空気を供給する空気供給路が形成され、空気供給路の空気吐出部には、案内レール上面に対し圧縮空気を傾斜角に吐出する傾斜面からなる空気傾斜部を設けている。以下、詳細に説明する。
【0012】
図1(a)および
図1(b)に示すように、一方向に延びる案内レール10と、この案内レール10に複数の転動体(図示せず)を介してスライド移動可能に跨設されるスライダー20を備え、スライダー20は、スライダー本体21と、その長手方向両端部の前後面に着脱可能に取り付けられたエンドキャップ22とで構成されている。
【0013】
スライダー本体21は、
図1に示すように、案内レール10の長手方向に沿って、案内レール10の移動方向の両端の開口部が略コ字状に形成され、案内レール10上に跨架されている。また、スライダー20には、長手方向に沿った左右両側に袖部を有し、その内側面には、スライダー側軌道面(図示せず)が案内レール1の転動体転動面10a,10aに相対向して長手方向に沿って形成されている。
【0014】
そして、案内レール10の転動体転動面10aとスライダー20の転動体転動溝21aとの間に転動体(図示せず)が転動自在に装填される。これらの転動体の転動を介してスライダー20が案内レール10上を長手方向に沿って相対移動される。
【0015】
エンドキャップ22は、スライダー本体21と同じく開口部が略コ字状に形成され、スライダー本体21と同様に案内レール10へ上面から跨架される。また、スライダー本体21の長手方向の両端部に固定するためのねじ穴とねじからなる固定手段を通してスライダー本体21に固定される。そして、スライダー本体21の内形状に沿って案内レール10が移動可能とする溝(図示しない)が相対向して形成されている。
【0016】
また、スライダー20の移動方向の最先端から、プロテクター30、エアーシール31、サイドシール32の順に配置され、ボルトの固定手段により固定されている。スライダー20の移動方向の最後端から、プロテクター30、サイドシール32の順に配置され、ボルトの固定手段により固定されている。なお、本実施形態では、エアーシール31は、スライダー20の移動方向の最先端側のみとしているが、最後端にも設けて両端としてもよい。これにより、スライダー20の移動方向の両端からの異物侵入を防ぐことができる直動案内装置が提供できる。
【0017】
サイドシール32は、
図1に示すように、スライダー20内に異物の侵入を阻止する目的で、スライダー本体21の長手方向端部に接して固定され、スライダー本体21及びエンドキャップ22と同様に案内レール10に上面から跨架される。また、サイドシール32は、エンドキャップ22の正面形状とほぼ同じ略コの字状の正面形状を有し、サイドシール32の側面からみた断面図である
図2に示すように、ゴム製の板状部32a、中間部32eおよびシールリップ32bと、金属板32fとから構成される。
【0018】
中間部32eは、板状部32aからシールリップ32bが形成される繋ぎの部分で、板状部32aの厚さの略半分程度の厚さと薄くなっている。また、金属板32fはサイドシール32の芯金であり、金型を用い金属板32fの一方の面にゴムを溶着することで、板状部32aとシールリップ32bが形成される。
【0019】
また、このシールリップ32bは、
図2に示すように、逆Y字状(二股)に形成され、案内レール上面10bに向かって2つに分かれて延びている。この逆Y字状(二股)のシールリップ32bは、エアーシール31側に向いたリップ32cと、エンドキャップ32側に向いたリップ32dとの2つからなる。これらのリップ32c、32dが案内レール上面10bに押し付けら弾性変形されることで、異物の滞留が防止される。
【0020】
プロテクター30は、スライダー本体21と同じく開口部が略コ字状に形成され、スライダー本体21と同様に案内レール10へ上面から跨架される。そして、エアーシール31の変形や損傷や案内レール10内に異物の侵入を防ぐために、スライダー本体21の長手方向の最先端部の外側に平板状で設けられている。
【0021】
エアーシール31は、サイドシール32の外側でプロテクター30の内側との間に設けられている。エアーシール31の厚さは、サイドシール32およびプロテクター30の厚さよりも厚く略4倍となっている。
この理由は、エアーシール31が厚みのあるエアーシール蓋部31aとエアーシール底部31bによって構成されるからである。
【0022】
すなわち、エアーシール31の内部に圧縮空気を誘導する空気供給路42が設けるにあたり、その内部形状が複雑にならないようにするため、エアーシール31をエアーシール蓋部31aとエアーシール底部31bの2部品による構成とし、プロテクター30およびサイドシール32と共に一緒にネジで固定することにした。
【0023】
エアーシール底部31bの全体の厚みは、
図2の断面視に示すように、エアーシール31全長厚みの4/5程度の厚みであって、サイドシール32の板状部32aと接しているエアーシール底部31bの部分は1/5程度の厚みである。すなわち、外部から供給された圧縮空気をシール内部へ取り込む空気供給路42である空間(連通路)を形成するため、エアーシール底部31bの底面(壁)31dの厚みを薄くしている。そして、エアーシール蓋部31aとエアーシール底部31bの間は、隙間(空間)をもって対向して、この隙間(空間)が空気供給路42を形成する。
【0024】
エアーシール底部31bの底面(壁)31dは、サイドシール32の板状部32aの端面と平行してほぼ垂直面である。その垂直面から中間部32eに変わる境目近傍の部分を起点とした、案内レール10に向かってエアーシール底部31bの底面(壁)31dが低くなる傾斜面31fが始まる空気供給傾斜部31eを設けている。
空気供給傾斜部31eの傾斜面31fの所定の傾斜角度θは、
図2において略15度としているが、略15度に限定されない。すなわち、エアーシール31のエアーシール蓋部31aの蓋面(壁)31cの大きさで、好ましい所定の傾斜面が形成されるからである。
【0025】
エアーシール蓋部31aの蓋面(壁)31cは、エアーシール底部31bの底面(壁)31dと対向して空気供給路42を形成しておりほぼ垂直面である。また、案内レール10に向かって傾斜が始まり、空気供給傾斜部31eに対向した傾斜面31gを設けている。傾斜面31fと傾斜面31gとで形成され、空気吐出部Fを先端に有する空気供給路42の延長である連通路43が形成される。
【0026】
圧縮空気供給用継ぎ手40より供給された圧縮空気は、この空気供給傾斜部31eを介して連通路43内を抜けて空気吐出部Fから案内レール上面10bへと吹き付けられ、プロテクター30と案内レール10間の隙間より排出される(空気吐出部F部分近傍の矢印で示す。)。
また、空気吐出部Fは、案内レール10外周に沿った形状とし、空気吐出部Fと案内レール上面10bの隙間は、1mm以下とすることが望ましい。
このような構成によって、圧縮空気が垂直に吐射されるより斜めに吐射されることができ、効率よく異物やクーラントの侵入を防げることが可能となる.
【0027】
以上のとおり、空気供給路42とその延長である連通路43は、エアーシール底部31bとエアーシール蓋部31aとが組み合わせされ、その間の隙間として形成される。したがって、エアーシール31に複雑或いは微細な形状の加工をすることなく圧縮空気の供給通路が構成できるため製作が容易である。
【0028】
次に、本実施形態による圧縮空気の供給過程について説明する。圧縮空気の供給は、外部の供給源より圧縮空気供給用継ぎ手41を介してエアーシール31の空気供給路42の空気入口部Eへと供給する。圧縮空気供給用継ぎ手41の位置は、本実施形態においてエアーシール31側面に設けられた圧縮空気供給用継ぎ手41より行われているが、直動案内装置1の構造にあわせて長手方向エアーシール31端面としても良いしエアーシール31上面としても良い。いずれにしても、外部から供給された圧縮空気をシール内部へ取り込む空気供給路42を有すればよい。
【0029】
また、
図3に示すように、正面左端に位置する圧縮空気供給用継ぎ手41から供給される圧縮空気エアーシール31の空気供給路42までの間には、圧縮空気を一時的に溜める空気溜り41がエアーシール31の正面左側上方に設けられている。空気溜り41は、エアーシール31内部に設けられた空間領域である。この空間領域は、圧縮空気供給用継ぎ手41の径と同程度の幅から空気供給路42の空気入口部Eへ向かってすぼむように形成されて連通している。
【0030】
このように、外部の圧縮空気供給源より供給される圧縮空気は、空気溜り41へ供給され、その後、徐々に径の細い空気供給路42へ誘導され、流速が早い状態でエアーシール31外周へ分配される。本実施形態では、
図3に示すように、空気供給路42が潤滑剤供給用貫通穴50の外周を回り込むように配置され、エアーシール31中央より左右のエアーシール31外周へと圧縮空気が分配される(
図3参照。)。
【0031】
また、エアーシール蓋部31aとエアーシール底部31bの間は必要に応じてシーリングを行い、密封性を向上させる。シーリングは、プロテクター30とサイドシール32の間でも行う場合があり、この場合、部品間の隙間からの異物やクーラント侵入を防ぐ効果が期待される。シーリング材としては、市販のシリコン系シーリング材などが考えられる。
【0032】
プロテクター30は、案内レール10との間に隙間があり、これに対しサイドシール32は案内レール10と接触している。したがって、エアーシール31より排出された空気は、プロテクター30と案内レール10の隙間より外部へ出る構造となっており、その圧力で異物ならびにクーラント侵入を防ぐ。
【0033】
なお、エアーシール31自体は、サイドシール32内部に設けスライダー20の内圧を高めても良いが、その場合は別途、内圧を調整し外部へ余分な圧縮空気を排出する機構が必要となる。
【0034】
エアーシール31の材料としては、ポリアセタール等のエンジニアリングプラスチック材が挙げられる。強度を上げたい場合は、ジュラルミン・アルミニウム等の軽金属でもよい。
【0035】
[実施形態2]
本発明の直動案内装置の他の実施形態2について説明する。
図4は、他の実施形態のエアーシール構成を示す断面図である。本実施形態2は、実施形態1とエアーシール31の構造は同じで、案内レール10面への吐出では、
図3に示すように空気供給傾斜部を設けている。
図4に付されている符号は、
図3と同一の符号を付しているが、ここでの同様な説明は重複となるので省いている。また、空気吐出部は、案内レール外周に沿った形状とし、空気吐出部Fと案内レール上面10bのスキマは、1mm以下とすることが望ましい。作用面においても、同様に圧縮空気は傾斜面に沿って案内レール10に当たるため、圧縮空気が垂直に案内レール10に吐射されるより効率よく異物やクーラント侵入を防げる。
【0036】
本実施形態2は、実施形態1と対比してエアーシール31の空気吐出部Fには、シール内部への異物侵入を防ぐフィルター60が備わっていることが相違する。なお、空気吐出部Fには、フィルター60等を設けてエアーシール31の内部への異物侵入を防ぐ構造としている(
図4参照)。
【0037】
フィルター60は、
図4に示すように、断面視上略五角形の各フィルター辺面60a、60b、60c、60d、60eからなり、フィルター辺面60aは空気吐出部Fの開口部を塞ぐように対面して圧縮空気をフィルター60に導入し、フィルター辺面60bはエアーシール蓋部側内側壁部31cの空気吐出部F近傍の面と当接して保持し、フィルター辺面60cはプロテクター30のスライダー20側の面と当接して圧縮空気排出によるフィルター60の移動をストッパー保持し、フィルター辺面60dはエアーシール底部側内側壁面31dの空気供給路傾斜部31eの突端の面と当接して保持するように配置されている。フィルター辺面60eはフィルター60に導入された圧縮空気を案内レール上面10bに向けて吐出するように配置されておりエアーシール31のいずれの面にも当接していない。
【0038】
このようにフィルター60を配置するのは、圧縮空気を供給していないときにスライダー20と移動させた場合における異物がエアーシール31の内部へ侵入するリスクがあるためである。
また、フィルター60の素材としては、フェルト材等が用いられる。
【0039】
[実施形態3]
また、実施形態1および実施形態2では、空気供給路42と、空気供給路42の延長である連通路43の径を調節し、流速を上げることで案内レール10全周に圧縮空気が供給されるようにしている。しかし、案内レール10外周が長い場合などは、最も遠い位置にある転動体転動面10aへの供給が弱くなる可能性がある。
そのため実施形態3では、
図5に示すように、案内レール10転動体転動面10aへの圧縮空気供給を優先した圧縮空気供給路43を備える。この圧縮空気供給路43への圧縮空気供給を行うために、
図3で示されている空気供給路42の距離d1と対比して、本実施形態3の
図5で示されている空気供給路42の距離d2が短く形成され、そして、空気供給路42は、案内レール上面10bより距離d3高い位置に設けられるようにエアーシール31が形成されている。
図3では、案内レール上面10bへの圧縮空気吐出がなされるので距離d3が設けられていない。
これにより、案内レール上面10bへの圧縮空気吐出は行わないで、転動体転動面10aを優先的に保護可能とする。
【0040】
[潤滑剤供給継ぎ手]
次に、
図1に示すように、潤滑剤はスライダー20端面の潤滑剤供給継ぎ手50よりスライダー20内部へ供給されている。この潤滑剤供給継ぎ手50は、装置の構造にあわせて側面としても良いし上面としても良い。いずれにしても、潤滑剤をスライダー20内部へ取り込む油路を有する。
【0041】
潤滑剤供給継ぎ手50がスライダー20端面に設けられたエアーシール31の内部には、エアーシール31の上部中央位置に潤滑剤を端面より供給するための円形状の貫通穴51が設けられている。過酷な異物環境下において、全ての溝へ均等に潤滑剤を分配するには、端面からの給脂が最も有利であることより、エアーシール31の端面に潤滑剤供給用の貫通穴51を設けることが重要となるからである。
【符号の説明】
【0042】
1 直動案内装置
10 案内レール
10a 転動体転動面
10b 案内レール上面
20 スライダー
21 スライダー本体
30 プロテクター
31 エアーシール
31a エアーシール蓋部
31b エアーシール底部
31c エアーシール蓋部側内側壁部
31d エアーシール底部側内側壁面
31e 空気供給路傾斜部
31f 傾斜面(エアーシール底部側内側壁面)
31g 傾斜面(エアーシール蓋部側内側壁面)
32 サイドシール
32a 板状部
32b シールリップ
32c、32d リップ
32e 中間部
32f 金属板
40 圧縮空気供給継ぎ手
41 空気溜り
42 空気供給路
50 潤滑剤供給用貫通穴
50 潤滑剤供給継ぎ手
60 フィルター
60a、60b、60c、60d、60e フィルター辺面
E 空気入口部(空気供給路)
F 空気吐出部(空気供給路)