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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132678
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】フラックス及びソルダペースト
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20230914BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20230914BHJP
   C22C 13/02 20060101ALN20230914BHJP
   C22C 13/00 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
B23K35/363 C
B23K35/363 E
B23K35/26 310A
C22C13/02
C22C13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038142
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000143215
【氏名又は名称】株式会社弘輝
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】行方 一博
(72)【発明者】
【氏名】青木 淳一
(57)【要約】
【課題】ソルダペーストの印刷性を向上させることが可能なフラックスを提供することを課題とする。また、印刷性を向上させることが可能なソルダペーストを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係るフラックスは、はんだ付けに用いられるフラックスであって、樹脂と、炭素原子数が18以上22以下であり、かつ、1つの不飽和結合を有する不飽和脂肪族化合物と、チキソ剤と、溶剤と、を含有し、前記樹脂は、ロジン系樹脂と、E型粘度計にて測定温度30℃、及び、回転数50rpmの条件で測定される粘度が300mPa・s以上55000mPa・s以下である液状樹脂と、を含み、前記不飽和脂肪族化合物の含有量が、フラックス全体に対して、3.0質量%以上25.0質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ付けに用いられるフラックスであって、
樹脂と、炭素原子数が18以上22以下であり、かつ、1つの不飽和結合を有する不飽和脂肪族化合物と、チキソ剤と、溶剤と、を含有し、
前記樹脂は、ロジン系樹脂と、E型粘度計にて測定温度30℃、及び、回転数50rpmの条件で測定される粘度が300mPa・s以上55000mPa・s以下である液状樹脂と、を含み、
前記不飽和脂肪族化合物の含有量が、フラックス全体に対して、3.0質量%以上25.0質量%以下である、フラックス。
【請求項2】
前記不飽和脂肪族化合物が、不飽和脂肪族アルコール、不飽和脂肪酸、及び、不飽和脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
前記不飽和脂肪族化合物の含有量が、フラックス全体に対して、5.0質量%以上15.0質量%以下である、請求項1又は2に記載のフラックス。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のフラックスと、はんだ合金粉末と、を含有する、ソルダペースト。
【請求項5】
前記はんだ合金粉末の合金が、Sn/Ag/Cu合金である、請求項4に記載のソルダペースト。
【請求項6】
前記Sn/Ag/Cu合金が、さらに、In、Bi、Sb及びNiから選択される少なくとも1種を含有する、請求項5に記載のソルダペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付けに用いられるフラックス、及び、該フラックスを含むソルダペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板等の電子回路基板上に、チップ部品、パッケージ基板等の電子部品を搭載する実装技術には、はんだ合金とフラックスとを混合したソルダペーストが用いられる。具体的には、電子回路基板表面のパッド上に、メタルマスクを用いてソルダペーストをスクリーン印刷した後、電子部品をマウントして加熱(リフロー)することにより、電子回路基板上に電子部品が接合される。
【0003】
従来、ソルダペーストに含まれるフラックスとしては、合成樹脂やロジン系樹脂等を樹脂成分として含む樹脂系のフラックスが広く用いられている。そして、樹脂系のフラックスを含むソルダペーストを用いてはんだ付けをすると、はんだ付けを行った後の電子回路基板に、前記樹脂成分に起因するフラックス残渣といわれる皮膜部分が残ることが広く知られている。
【0004】
斯かるフラックス残渣には、冷熱サイクル等の温度変化等により亀裂(クラック)が入る虞がある。そのため、該クラックから水分がフラックス残渣内部に浸透した場合には、リード間の絶縁低下が発生する等の不良の原因になる虞がある。そこで、クラックの発生を抑制する目的で、フラックス中の樹脂成分として比較的に粘度の高い液状樹脂を用いることが提案されている。例えば、特許文献1には、ポリブタジエン(メタ)アクリレート化合物と、水素添加されたダイマー酸とが含まれるフラックスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-188761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のようにフラックス中の樹脂成分として比較的に粘度の高い液状樹脂を用いると、ソルダペーストがメタルマスクの開口部側面に付着しやすくなり、はんだ供給量が低下する虞がある。特に、アスペクト比(開口側面積に対する開口面積の比)の低いメタルマスクを用いた場合には、ソルダペーストがメタルマスクの開口部側面により付着しやすくなることから、はんだ供給量が不足する虞もある。そのため、フラックス中の樹脂成分として比較的に粘度の高い液状樹脂を用いた際においても、メタルマスクの開口部へのはんだ供給量の低下を抑制し、ソルダペーストの印刷性を向上させることが望まれている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ソルダペーストの印刷性を向上させることが可能なフラックスを提供することを課題とする。また、印刷性を向上させることが可能なソルダペーストを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るフラックスは、はんだ付けに用いられるフラックスであって、樹脂と、炭素原子数が18以上22以下であり、かつ、1つの不飽和結合を有する不飽和脂肪族化合物と、チキソ剤と、溶剤と、を含有し、前記樹脂は、ロジン系樹脂と、E型粘度計にて測定温度30℃、及び、回転数50rpmの条件で測定される粘度が300mPa・s以上55000mPa・s以下である液状樹脂と、を含み、前記不飽和脂肪族化合物の含有量が、フラックス全体に対して、3.0質量%以上25.0質量%以下である。
【0009】
本発明に係るソルダペーストは、上述のフラックスと、はんだ合金粉末と、を含有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ソルダペーストの印刷性を向上させることが可能なフラックスを提供することができる。また、印刷性を向上させることが可能なソルダペーストを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係るフラックス及びソルダペーストについて説明する。
【0012】
<フラックス>
本実施形態に係るフラックスは、樹脂と、不飽和脂肪族化合物と、チキソ剤と、溶剤と、を含有する。
【0013】
(樹脂)
樹脂は、ロジン系樹脂と、E型粘度計にて測定温度30℃、及び、回転数50rpmの条件で測定される粘度が300mPa・s以上55000mPa・s以下である液状樹脂と、を含有する。
【0014】
前記ロジン系樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ロジン及びロジン誘導体(例えば、水素添加ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、アクリル酸変性ロジン等)から選択される1種以上のロジン系樹脂を用いることができる。
【0015】
前記ロジン系樹脂の含有量は、チキソ剤の分散性を高めて印刷性を向上させるとともに、ソルダペーストの粘度を安定させる観点から、前記フラックス全体に対して、10.0質量%以上であることが好ましく、20.0質量%以上であることがより好ましい。また、前記ロジン系樹脂の含有量は、ソルダペーストとしての形態を維持する観点から、前記フラックス全体に対して、60.0質量%以下であることが好ましく、35.0質量%以下であることがより好ましい。なお、ロジン系樹脂が2種以上含まれる場合、前記含有量はロジン系樹脂の合計含有量である。
【0016】
液状樹脂は、JIS K 7117-2に準じて、E型粘度計にて測定温度30℃、及び、回転数50rpmの条件で測定される粘度が、300mPa・s以上55000mPa・s以下であり、5000mPa・s以上50000mPa・s以下であることが好ましい。このような液状樹脂としては、例えば、両末端に水酸基を有する水素添加ポリブタジエン(両末端水酸基水素化ポリブタジエン)であるGI-1000、GI-2000、GI-3000(以上、日本曹達社製)、両末端に水酸基を有する液状ポリブタジエン(水酸基末端液状ポリブタジエン)であるG-1000、G-2000、G-3000(以上、日本曹達社製)、Poly-bd R-15HT、Poly-bd R-45HT(以上、出光興産社製)、両末端に水酸基を有する液状ポリイソプレン(水酸基末端液状ポリイソプレン)であるPoly-ip(出光興産社製)、両末端に水酸基を有する液状ポリオレフィン(水酸基末端液状ポリオレフィン)であるEPOL(出光興産社製)、ポリブテンである日油ポリブテンO-15N、日油ポリブテン3N、日油ポリブテン10N、日油ポリブテン30N(以上、日油社製)、日石ポリブテングレートLV-7、グレードLV-50、グレートLV-100、グレードHV-15、グレード35、グレードHV-50、グレードHV-100、グレードHV-300(以上、ENEOS社製)、アクリル樹脂であるアクリルO(荒川化学工業社製)、アウトフローUMM-1001、UT-1001、CB-3060、CBB-3098(総研化学社製)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であるYD-8125、YD-825GS(日鉄ケミカル&マテリアル社製)、EPICLON840、840-S、850、850-S、EXA-850CRP、850-LC(DIC社製)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂であるYDF-YDF-8170、YDF-870GS(日鉄ケミカル&マテリアル社製)、EPICLON830、830-S、835、EXA-830CRP、EXA-830LVP、EXA-835LV(DIC社製)等が挙げられる。これらの中でも、フラックス残渣のクラック低減効果と樹脂の扱いやすさの観点から、前記液状樹脂は、両末端水酸基水素化ポリブタジエン、及び、アクリル樹脂から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。なお、前記液状樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0017】
前記液状樹脂の含有量は、フラックス残渣にクラックが発生することを抑制する観点から、前記フラックス全体に対して、10.0質量%以上であることが好ましく、20.0質量%以上であることがより好ましい。また、前記液状樹脂の含有量は、ソルダペーストとしての形態を維持する観点から、前記フラックス全体に対して、60.0質量%以下であることが好ましく、35.0質量%以下であることがより好ましい。なお、前記液状樹脂が2種以上含まれる場合、前記含有量は液状樹脂の合計含有量である。
【0018】
前記樹脂は、前記ロジン系樹脂、及び、前記液状樹脂以外のその他の樹脂を含んでいてもよい。その他の樹脂としては、例えば、テルペンフェノール樹脂、フェノール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ乳酸、ポリスチレン等が挙げられる。なお、前記その他の樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記その他の樹脂の含有量は、はんだの濡れ性への影響の観点から、前記フラックス全体に対して、5.0質量%以上であることが好ましく、10.0質量%以上であることがより好ましい。また、前記その他の樹脂の含有量は、はんだの濡れ性への影響の観点から、前記フラックス全体に対して、30.0質量%以下であることが好ましく、20.0質量%以下であることがより好ましい。なお、前記その他の樹脂が2種以上含まれる場合、前記含有量はその他の樹脂の合計含有量である。
【0020】
前記樹脂の合計含有量は、前記フラックス全体に対して、30.0質量%以上であることが好ましく、40.0質量%以上であることがより好ましい。また、前記樹脂の合計含有量は、前記フラックス全体に対して、70.0質量%以下であることが好ましく、60.0質量%以下であることがより好ましい。
【0021】
(不飽和脂肪族化合物)
本実施形態に係るフラックスは、炭素原子数が18以上22以下であり、かつ、1つの不飽和結合を有する不飽和脂肪族化合物を含有する。前記不飽和脂肪族化合物は、不飽和脂肪族アルコール、不飽和脂肪酸、及び、不飽和脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、不飽和脂肪族アルコールを含むことがより好ましい。
【0022】
前記不飽和脂肪族化合物の含有量は、ソルダペーストの滑り性を向上させる観点から、前記フラックス全体に対して、3.0質量%以上であり、5.0質量%以上であることが好ましい。また、前記不飽和脂肪族化合物の含有量は、ソルダペーストとしての形態を維持する観点から、前記フラックス全体に対して、25.0質量%以下であり、15.0質量%以下であることが好ましい。なお、前記不飽和脂肪族化合物が2種以上含まれる場合、前記含有量は不飽和脂肪族化合物の合計含有量である。
【0023】
前記不飽和脂肪族アルコールは、炭素原子数が18以上22以下であり、かつ、1つの不飽和結合を有する。前記不飽和脂肪族アルコールとしては、オレイルアルコール、エライジルアルコール、リシノレイルアルコール、エルシルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、ソルダペーストの滑り性を向上させる観点から、前記不飽和脂肪族アルコールは、オレイルアルコールを含むことが好ましく、オレイルアルコールからなることがより好ましい。なお、前記不飽和脂肪族アルコールは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記不飽和脂肪族アルコールの含有量は、ソルダペーストの滑り性を向上させる観点から、前記フラックス全体に対して、3.0質量%以上であることが好ましく、5.0質量%以上であることがより好ましい。また、前記不飽和脂肪族アルコールの含有量は、ソルダペーストとしての形態を維持する観点から、前記フラックス全体に対して、25.0質量%以下であることが好ましく、15.0質量%以下であることがより好ましい。なお、前記不飽和脂肪族アルコールが2種以上含まれる場合、前記含有量は不飽和脂肪族アルコールの合計含有量である。
【0025】
前記不飽和脂肪酸は、炭素原子数が18以上22以下であり、かつ、1つの不飽和結合を有する。前記不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸等が挙げられる。これらの中でも、ソルダペーストの滑り性を向上させる観点から、前記不飽和脂肪酸は、オレイン酸を含むことが好ましい。なお、前記不飽和脂肪酸は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記不飽和脂肪酸の含有量は、ソルダペーストの滑り性を向上させる観点から、前記フラックス全体に対して、3.0質量%以上であることが好ましく、5.0質量%以上であることがより好ましい。また、前記不飽和脂肪酸の含有量は、ソルダペーストとしての形態を維持する観点から、前記フラックス全体に対して、25.0質量%以下であることが好ましく、15.0質量%以下であることがより好ましい。なお、前記不飽和脂肪酸が2種以上含まれる場合、前記含有量は不飽和脂肪酸の合計含有量である。
【0027】
前記不飽和脂肪酸エステルは、炭素原子数が18以上22以下であり、かつ、1つの不飽和結合を有する。前記不飽和脂肪酸エステルとしては、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ペンチル、オレイン酸へキシル、オレイン酸へプチル、オレイン酸オクチル、オレイン酸ノニル、オレイン酸ドシル、オレイン酸ウンデシル、オレイン酸ドデシル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸イソブチル、オレイン酸2エチルへキシル、オレイン酸オクチルドデシル、エルカ酸メチル、エルカ酸エチル、エルカ酸ブチル、エルカ酸へキシル、エルカ酸へプチル、エルカ酸オクチル、エルカ酸ノニル、エルカ酸ドシル、エルカ酸ウンデシル、エルカ酸ドデシル、エルカ酸イソプロピル、エルカ酸イソブチル、エルカ酸2エチルへキシル、エルカ酸オクチルドデシル等が挙げられる。これらの中でも、ソルダペーストの滑り性を向上させる観点から、前記不飽和脂肪酸エステルは、オレイン酸メチルを含むことが好ましい。なお、前記不飽和脂肪酸エステルは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記不飽和脂肪酸エステルの含有量は、ソルダペーストの滑り性を向上させる観点から、前記フラックス全体に対して、3.0質量%以上であることが好ましく、5.0質量%以上であることがより好ましい。また、前記不飽和脂肪酸エステルの含有量は、ソルダペーストとしての形態を維持する観点から、前記フラックス全体に対して、25.0質量%以下であることが好ましく、15.0質量%以下であることがより好ましい。なお、前記不飽和脂肪酸エステルが2種以上含まれる場合、前記含有量は不飽和脂肪酸エステルの合計含有量である。
【0029】
(チキソ剤)
本実施形態に係るフラックスは、チキソ剤を含む。チキソ剤としては、例えば、ヒマシ硬化油、脂肪酸アミド、脂肪酸ビスアマイド、ポリアミド化合物、カオリン、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、ガラスフリット等が挙げられる。これらの中でも、チキソ剤は、耐熱性の観点から、脂肪酸ビスアマイド(脂肪酸ビスアミド)又はポリアミド化合物であることが好ましい。脂肪酸ビスアマイドとしては、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-キシリレンビス-12-ヒドロキシステアリルアミド等が挙げられる。ポリアミド化合物としては、例えば、脂肪族ポリアミド化合物であるターレンVA-79、AMX-6096A、WH-215、WH-255(以上、共栄社化学社製)、SP-10、SP-500(以上、東レ社製)、グリルアミドL20G、グリルアミドTR55(以上、エムスケミ-・ジャパン社製)等、主鎖にベンゼン環、ナフタレン環等の環式化合物含む芳香族ポリアミド化合物(半芳香族ポリアミド化合物又は全芳香族ポリアミド化合物)であるJH-180(伊藤製油社製)等が挙げられる。なお、チキソ剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記チキソ剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、1.0質量%以上であることが好ましく、3.0質量%以上であることがより好ましい。また、チキソ剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、7.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましい。なお、チキソ剤が2種以上含まれる場合、前記含有量はチキソ剤の合計含有量である。
【0031】
(溶剤)
本実施形態に係るフラックスは、溶剤を含む。前記溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(ジブチルジグリコール)、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(2エチルヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルジグリコール)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルトリグリコール)、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル等のグリコールエーテル類;n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族系化合物;酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、ジエチルケトン等のケトン類;エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール類等の公知の溶剤を用いることができる。なお、前記溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記溶剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、15.0質量%以上であることが好ましく、23.0質量%以上であることがより好ましい。また、溶剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、40.0質量%以下であることが好ましく、30.0質量%以下であることがより好ましい。なお、前記溶剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は溶剤の合計含有量である。
【0033】
(飽和脂肪族アルコール)
本実施形態に係るフラックスは、飽和脂肪族アルコールを含んでいてもよい。前記飽和脂肪族アルコールとしては、特に限定されるものではなく、例えば、1-トリデカノール、セタノール、1-ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール等が挙げられる。前記飽和脂肪族アルコールの含有量は、メタルマスクの開口部側面に対するソルダペーストの滑り性を向上させる観点から、前記フラックス全体に対して、8.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、飽和脂肪族アルコールを含まないことがさらに好ましい。なお、前記飽和脂肪族アルコールは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0034】
(活性剤)
本実施形態に係るフラックスは、活性剤を含んでいてもよい。活性剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、有機酸系活性剤、アミン化合物、アミノ酸化合物、アミンハロゲン塩やハロゲン化合物等のハロゲン系活性剤等が挙げられる。なお、前記活性剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記有機酸系活性剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、グリコール酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、ジグリコール酸等のジカルボン酸;ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、ピコリン酸、トリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌル酸、トリス(2-カルボキシプロピル)イソシアヌル酸等のその他の有機酸が挙げられる。
【0036】
前記ハロゲン化合物としては、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌル酸、2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール、2-ブロモ-3-ヨード-2-ブテン-1,4-ジオール、TBA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)等が挙げられる。
【0037】
前記活性剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、3.0質量%以上であることがより好ましい。また、前記活性剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、20.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以下であることがより好ましい。なお、前記活性剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は活性剤の合計含有量である。
【0038】
本実施形態に係るフラックスは、その他の添加剤として、例えば、安定剤、界面活性剤、消泡剤、及び、酸化防止剤から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。その他の添加剤の合計含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、前記フラックス全体に対して、5.0質量%以下とすることができる。
【0039】
本実施形態に係るフラックスは、はんだ付けに用いられるフラックスであって、樹脂と、炭素原子数が18以上22以下であり、かつ、1つの不飽和結合を有する不飽和脂肪族化合物と、チキソ剤と、溶剤と、を含有し、前記樹脂は、ロジン系樹脂と、E型粘度計にて測定温度30℃、及び、回転数50rpmの条件で測定される粘度が300mPa・s以上55000mPa・s以下である液状樹脂と、を含み、前記不飽和脂肪族化合物の含有量が、フラックス全体に対して、3.0質量%以上25.0質量%以下であることにより、メタルマスクの開口部側面に対するソルダペーストの滑り性が向上し、メタルマスクの開口部側面にソルダペーストが付着しにくくなる。その結果、前記フラックスは、ソルダペーストの印刷性を向上させることができる。
【0040】
本実施形態に係るフラックスは、前記不飽和脂肪族化合物が、不飽和脂肪族アルコール、不飽和脂肪酸、及び、不飽和脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種を含むことにより、メタルマスクの開口部側面に対するソルダペーストの滑り性が向上し、メタルマスクの開口部側面にソルダペーストが付着しにくくなる。その結果、前記フラックスは、ソルダペーストの印刷性を向上させることができる。
【0041】
本実施形態に係るフラックスは、前記不飽和脂肪族化合物の含有量が、フラックス全体に対して、5.0質量%以上15.0質量%以下であることにより、メタルマスクの開口部側面に対するソルダペーストの滑り性が向上し、メタルマスクの開口部側面にソルダペーストが付着しにくくなる。その結果、ソルダペーストの印刷性を向上させることができる。
【0042】
<ソルダペースト>
本実施形態に係るソルダペーストは、上述のフラックスと、はんだ合金粉末と、を含有する。前記ソルダペーストは、前記フラックスと前記はんだ合金粉末とを混合することにより得られる。前記フラックスの含有量は、前記ソルダペースト全体に対して、5.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。また、前記はんだ合金粉末の含有量は、前記ソルダペースト全体に対して、80.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
【0043】
前記はんだ合金粉末の合金としては、鉛フリーはんだ合金、鉛を含む共晶はんだ合金が挙げられるが、環境負荷低減の観点から、鉛フリーはんだ合金であることが好ましい。鉛フリーはんだ合金としては、例えば、スズ、銀、銅、インジウム、亜鉛、ビスマス、アンチモン等を含む合金が挙げられる。より具体的には、Sn/Ag、Sn/Ag/Cu、Sn/Cu、Sn/Ag/Bi、Sn/Bi、Sn/Ag/Cu/Bi、Sn/Sb、Sn/Zn/Bi、Sn/Zn、Sn/Zn/Al、Sn/Ag/Bi/In、Sn/Ag/Cu/Bi/In/Sb、In/Ag等の合金が挙げられる。これらの中でも、前記はんだ合金粉末の合金は、Sn/Ag/Cu合金であることが好ましい。また、Sn/Ag/Cu合金は、さらに、In、Bi、Sb及びNiから選択される少なくとも1種を含有することがより好ましい。また、前記合金には、不可避的不純物が含まれる。不可避的不純物とは、製造過程において不可避的に混入する成分であって、本発明の効果に影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
【0044】
前記はんだ合金粉末の粒子径は、5μm以上45μm以下であることが好ましく、15μm以上39μm以下であることがより好ましい。
【0045】
本実施形態に係るソルダペーストは、上述のフラックスと、はんだ合金粉末と、を含有する。前記フラックスは、メタルマスクの開口部側面に対するソルダペーストの滑り性を向上させ、ソルダペーストをメタルマスクの開口部側面に付着しにくくする。その結果、前記ソルダペーストは、印刷性を向上させることができる。
【0046】
本実施形態に係るソルダペーストは、前記はんだ合金粉末の合金が、Sn/Ag/Cu合金であってもよい。前記ソルダペーストは、広く一般的に使用されているSn/Ag/Cu合金に対しても、印刷性を向上させることができる。
【0047】
本実施形態に係るソルダペーストは、前記Sn/Ag/Cu合金が、さらに、In、Bi、Sb及びNiから選択される少なくとも1種を含有していてもよい。前記ソルダペーストは、はんだ合金の冷熱耐久性を向上させる目的でこれらの金属元素を添加したとしても、印刷性を向上させることができる。
【実施例0048】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
<ソルダペーストの作製>
表1~表4に示す配合量の各原料を加熱容器に投入し、加熱することにより、全原料を溶解させた。その後、室温まで冷却することにより、均一に分散されたフラックスを得た。なお、表1~表4に示す各配合量は、フラックスに含まれる各成分の含有量と等しい。次に、各フラックスを11.8質量%、表1~表4に示すはんだ合金粉末を88.2質量%となるように混合して、各実施例及び各比較例のソルダペーストを得た。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
表1~表4に示すフラックスに含まれる各原料の詳細を表5に示す。また、表1~表4に示すはんだ合金の詳細を表6に示す。また、表1~表4に示す不飽和脂肪族アルコールの詳細を表7に示す。表7における「オレイルアルコール以外の成分」には、ステアリルアルコール、パルミトレイルアルコール、及び、セタノールが含まれる。なお、表1~表4のオレイルアルコール有効割合は、表7に示す各不飽和脂肪族アルコールに含まれるオレイルアルコールの含有量から算出した。表1~表4に示すオレイルアルコールの有効割合は、明細書中におけるオレイルアルコールの含有量と等しい。
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
【表7】
【0058】
<液状樹脂の粘度の測定>
液状樹脂の粘度(Pa・s)を、E型粘度計(RE-100U、東機産業社製)を用いて、JIS K 7117-2に準じた測定方法により、下記測定条件で測定した。なお、比較例4で用いた液状樹脂「TEAI-1000」は、上記のE型粘度計で測定できる範囲の上限(60,000mPa・s)を超えたため測定ができなかった。測定結果を表5に示す。
【0059】
(測定条件)
測定時の回転数:50rpm
測定温度:30℃
粘度値:測定開始2分後の値を読み取る
【0060】
<印刷性の評価>
各実施例及び各比較例のソルダペーストを、印刷機(YVP-Xg、YAMAHA Motor社製)にセッティングしたメタルマスクの上に300g載せ、メタルマスクにソルダペーストをなじませるため、ローリングを4回行った。そして、メタルマスクの版裏を乾式クリーニングした後、下記印刷条件で印刷を2回行った。
【0061】
(印刷条件)
印刷環境:温度が24~26℃、湿度が50~60%RH
印刷スキージ:メタルスキージ
スキージ角度:60°
メタルマスク厚:150μm
印刷速度:40mm/sec
パッドの形状及び大きさ:□形状、0.30mm×0.30mm
パッド数:100(50パッド×n=2)
パッドの材質:OSP処理銅
メタルマスクのアスペクト比(メタルマスクの開口面積(0.09mm)/メタルマスクの開口側面積(0.18mm)):0.50
【0062】
はんだの転写率は、印刷した各基板の銅パッド上にあるはんだをKOHYOUNG aSPIer(KOH YOUNG TECHNOROGY社製)で検出し、その体積%を求めることにより算出した。パッド全体(100個)に対する、体積%が105%以上(充填率105%以上)のパッドの割合、体積%が75%以上105%未満(充填率75%以上105%未満)のパッドの割合、及び、体積%が75%未満(充填率75%未満)のパッドの割合を表1~表4に示す。
【0063】
転写率の評価は、充填率75%以上105%未満の割合が90%以上の場合に「1(優)」と判定し、充填率105%以上の割合が10%以上の場合に「2(良)」、それ以外の場合は「3(不良)」と判定した。判定結果を表1~表4に示す。
【0064】
表1~表4の結果から分かるように、本発明の要件をすべて満たす各実施例のソルダペーストは、充填率75%以上105%未満の割合が90%以上であることから、優れた印刷性を示す。