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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132697
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】制御装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20230914BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J7/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038177
(22)【出願日】2022-03-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 歩夢
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066HA13
5G066HA15
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA07
5G503EA05
5G503GB06
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】本発明は、蓄電池の残量が空になることや満充電になることを効果的に防止することができる制御装置、プログラムを提供する。
【解決手段】電力系統からの周波数を監視する周波数監視部と、蓄電池の充電率を監視する充電率監視部と、前記充電率に応じて、不感帯以外の前記周波数における周波数変化量あたりの出力変化量であるドループ特性の傾きを変更する変更部と、前記変更部により変更された前記ドループ特性の傾きにより、前記蓄電池の充電又は放電を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統からの周波数を監視する周波数監視部と、
蓄電池の充電率を監視する充電率監視部と、
前記充電率に応じて、不感帯以外の前記周波数における周波数変化量あたりの出力変化量であるドループ特性の傾きを変更する変更部と、
前記変更部により変更された前記ドループ特性の傾きにより、前記蓄電池の充電又は放電を制御する制御部と、を備える制御装置。
【請求項2】
前記変更部は、
前記充電率がしきい値を下回った場合は、電力系統からの前記周波数の前記不感帯以下の前記ドループ特性の傾きを、前記不感帯以上のドループ特性の傾きに比べ緩やかになるように変更する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記変更部は、
前記充電率がしきい値を下回った場合は、電力系統からの前記周波数の前記不感帯以上の前記ドループ特性の傾きを、前記不感帯以下の前記ドループ特性の傾きに比べ急になるように変更する請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記変更部は、
前記充電率がしきい値を上回った場合は、電力系統からの前記周波数の前記不感帯以下の前記ドループ特性の傾きを、前記不感帯以上の前記ドループ特性の傾きに比べ急になるように変更する請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記変更部は、
前記充電率がしきい値を上回った場合は、電力系統からの前記周波数の前記不感帯以上の前記ドループ特性の傾きを、前記不感帯以下の前記ドループ特性の傾きに比べ緩やかになるように変更する請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項6】
前記変更部は、
前記充電率により、予め定められた傾きから前記ドループ特性の傾きを選択する請求項1~5の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記不感帯は、基準周波数の前後の予め定められた範囲である請求項1~6の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記不感帯は、基準周波数から予め定められたマイナスの範囲である請求項1~6の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
コンピュータを、
電力系統からの周波数を監視する周波数監視部、
蓄電池の充電率を監視する充電率監視部、
前記充電率に応じて、不感帯以外の前記周波数における周波数変化量あたりの出力変化量であるドループ特性の傾きを変更する変更部、
前記変更部により変更された前記ドループ特性の傾きにより、前記蓄電池の充電又は放電を制御する制御部、として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、及びプログラムに関するものである。詳しくは、蓄電池の残量が空になることや満充電になることを防止する制御装置、及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
需給調整市場の商品区分のうち一次調整力では、要件として電力系統の周波数に基づくドループ特性(速度垂下特性)による応動が求められている。ドループ特性とは、周波数が低下すると発電電力が増加し、周波数変化を抑制するように働く特性であり、回転機を持ち系統に接続された発電機に見られる。蓄電池の制御部にドループ特性を持たせることで、蓄電装置にドループ特性を付与する先行技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-141761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、充電電流の和と放電電流の和とを等しくする制御を行うものであり、充電指令又は放電指令の一方の指令が継続的に出力された場合に、蓄電池の残量が空になることや満充電になることを防ぐことができず、電力系統の需給を満たす制御をすることができなかった。
また、特に、蓄電池を、需給調整市場への供出以外のピークカットなどの用途にも同時に使用する際には、蓄電池の残量が空になる可能性が高まるおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決することであり、蓄電池の残量が空になることや満充電になることを効果的に防止することができる制御装置、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1態様に係る制御装置は、電力系統からの周波数を監視する周波数監視部と、蓄電池の充電率を監視する充電率監視部と、前記充電率に応じて、不感帯以外の前記周波数における周波数変化量あたりの出力変化量であるドループ特性の傾きを変更する変更部と、前記変更部により変更された前記ドループ特性の傾きにより、前記蓄電池の充電又は放電を制御する制御部と、を備える。
【0007】
第1態様に係る制御装置によれば、蓄電池の残量が空になることや満充電になることを効果的に防止することができる。
【0008】
また、第2態様に係る制御装置は、第1態様に係る制御装置において、前記変更部は、前記充電率がしきい値を下回った場合は、電力系統からの前記周波数の前記不感帯以下の前記ドループ特性の傾きを、前記不感帯以上のドループ特性の傾きに比べ緩やかになるように変更する。
【0009】
第2態様に係る制御装置によれば、充電率がしきい値を下回った場合は、電力系統からの周波数の不感帯以下のドループ特性の傾きを、不感帯以上のドループ特性の傾きに比べ緩やかになるように変更することで、放電量を少なくすることができ、蓄電池の残量が空になることを防止することができる。
【0010】
また、第3態様に係る制御装置は、第1態様又は第2態様に係る制御装置において、前記変更部は、前記充電率がしきい値を下回った場合は、電力系統からの前記周波数の前記不感帯以上の前記ドループ特性の傾きを、前記不感帯以下の前記ドループ特性の傾きに比べ急になるように変更する。
【0011】
第3態様に係る制御装置によれば、充電率がしきい値を下回った場合は、電力系統からの周波数の不感帯以上の前記ドループ特性の傾きを、不感帯以下のドループ特性の傾きに比べ急になるように変更することで、充電量を多くすることができ、蓄電池の残量が空になることを防止することができる。
【0012】
また、第4態様に係る制御装置は、第1態様に係る制御装置において、前記変更部は、前記充電率がしきい値を上回った場合は、電力系統からの前記周波数の前記不感帯以下の前記ドループ特性の傾きを、前記不感帯以上の前記ドループ特性の傾きに比べ急になるように変更する。
【0013】
第4態様に係る制御装置によれば、充電率がしきい値を上回った場合は、電力系統からの周波数の不感帯以下のドループ特性の傾きを、不感帯以上のドループ特性の傾きに比べ急になるように変更することで、放電量を多くすることができ、蓄電池の残量が満充電になることを防止することができる。
【0014】
また、第5態様に係る制御装置は、第1態様又は第2態様に係る制御装置において、前記変更部は、前記充電率がしきい値を上回った場合は、電力系統からの前記周波数の前記不感帯以上の前記ドループ特性の傾きを、前記不感帯以下の前記ドループ特性の傾きに比べ緩やかになるように変更する。
【0015】
第5態様に係る制御装置によれば、充電率がしきい値を上回った場合は、電力系統からの周波数の不感帯以上のドループ特性の傾きを、不感帯以下のドループ特性の傾きに比べ緩やかになるように変更することで、充電量を少なくすることができ、蓄電池の残量が満充電になることを防止することができる。
【0016】
また、第6態様に係る制御装置は、第1態様~第5態様のいずれか1の態様に係る制御装置において、前記変更部は、前記充電率により、予め定められた傾きから前記ドループ特性の傾きを選択する。
【0017】
第6態様に係る制御装置によれば、充電率から、予め定められた傾きのドループ特性を選択することができる。
【0018】
第7態様に係る制御装置は、第1態様~第6態様のいずれか1の態様に係る制御装置において、前記不感帯は、基準周波数の前後の予め定められた範囲である。
【0019】
第7態様に係る制御装置によれば、基準周波数の前後にドループ特性の傾きを変更しない不感帯を設けることで、過剰なドループ特性の傾きの変更を防止することができる。
【0020】
第8態様に係る制御装置は、第1態様~第6態様のいずれか1の態様に係る制御装置において、前記不感帯は、基準周波数から予め定められたマイナスの範囲である。
【0021】
第8態様に係る制御装置によれば、不感帯をマイナスの範囲のみにすることで、充電する機会を増やすことができる。特に、蓄電池を需給調整市場への供出以外の用途にも使用する場合に、蓄電池の残量が空になることを防止することができる。
【0022】
第9態様に係る制御プログラムは、コンピュータを、電力系統からの周波数を監視する周波数監視部、蓄電池の充電率を監視する充電率監視部、前記充電率に応じて、不感帯以外の前記周波数における周波数変化量あたりの出力変化量であるドループ特性の傾きを変更する変更部、前記変更部により変更された前記ドループ特性の傾きにより、前記蓄電池の充電又は放電を制御する制御部、として機能させる。
【0023】
第9態様に係るプログラムによれば、蓄電池の残量が空になることや満充電になることを効果的に防止することができるプログラムを提供することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上詳述したように、本発明によれば、蓄電池の残量が空になることや満充電になることを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る蓄電池制御システムの構成の一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る制御装置の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る制御装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係るドループ特性の傾きについて説明するための説明図である。
図5】本発明の実施形態に係る充電率が空になることを回避する場合のドループ特性の傾きを説明するための説明図である。
図6】本発明の実施形態に係る充電率が満充電になることを回避する場合のドループ特性の傾きを説明するための説明図である。
図7】本発明の実施形態に係るドループ特性の傾きの段階を説明するための説明図である。
図8】本発明の実施形態に係るドループ特性の傾きの段階を説明するための説明図である。
図9】本発明の実施形態に係るドループ特性の傾きを変更する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の一例について詳細に説明する。
【0027】
図1は、本実施形態に係る蓄電池制御システム100の構成の一例を示す図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係る蓄電池制御システム100は、一般送配電事業者が管理対象とする電力系統(図示せず)に接続されている。
【0029】
本実施形態に係る蓄電池制御システム100は、制御装置10と、AC/DC変換器20と、蓄電池30と、を備えている。
【0030】
また、本実施形態では、電力系統からの受電電力で蓄電池30を充電し、蓄電池30の電力を電力系統へ放電する制御装置10について説明する。特に、本実施形態では、蓄電池30を、需給調整市場の一次調整力への供出に使用する。また、蓄電池30を、需給調整市場への供出以外のピークカットなどの用途にも使用する。需給調整市場の一次調整力では、蓄電池30の残量が空になることや満充電になることで供出が停止してしまうことを防止することが望まれる。しかし、蓄電池30を需給調整市場への供出に加え、ピークカットなどの用途にも使用する場合は、例えば、電力系統への蓄電池30からの放電とピークカットの要求とが重複する場合など蓄電池30の残量が空になることが考えられる。そのため、本実施形態のように、制御装置10で蓄電池30の充電と放電とを制御することで、蓄電池30の残量が空になることや満充電になることを防止する。
【0031】
制御装置10は、蓄電池30の充電及び放電を制御する制御を行う装置である。
【0032】
AC/DC変換器20は、電力系統から入力される交流電力を直流電力に変換して蓄電池30に入力し、また、蓄電池30から出力される直流電力を交流電力に変換して電力系統に出力する装置である。
【0033】
蓄電池30は、制御装置10により制御され、電力を充電又は放電する蓄電池である。また、本実施形態における蓄電池30は、需給調整市場の一次調整力に供出されるものである。また、本蓄電池は、需給調整市場の一次調整力以外のピークカットなどの用途にも同時に活用することが想定されている。そのため、ピークカットなどの用途に用いつつ、一次調整力の要件を満たす必要がある。
【0034】
次に、図2及び図3を参照して、第1の実施形態に係る制御装置10の具体的な構成について説明する。
【0035】
図2は、第1の実施形態に係る制御装置10の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
【0036】
図2に示すように、本実施形態に係る制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、ストレージ14と、入力部15と、通信部16と、を備えている。各構成は、バス17を介して相互に通信可能に接続されている。
【0037】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12又はストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12又はストレージ14に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12又はストレージ14には、プログラムが格納されている。
【0038】
ROM12は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ14、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリなどにより構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。
【0039】
プログラムは、例えば、制御装置10に予めインストールされていてもよい。プログラムは、不揮発性の記憶媒体に記憶して、又はネットワークを介して配布して、制御装置10に適宜インストールすることで実現してもよい。なお、不揮発性の記憶媒体の例としては、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、光磁気ディスク、HDD、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、フラッシュメモリ、メモリカード等が想定される。
【0040】
入力部15は、マウス等のポインティングデバイス、およびキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0041】
通信部16は、蓄電池30などと通信可能に接続するための通信インターフェースであり、通信方式は、有線通信でもよいし、無線通信でもよい。
【0042】
図3は、第1の実施形態に係る制御装置10の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0043】
図3に示すように、本実施形態に係る制御装置10のCPU11は、受信部11A、周波数監視部11B、充電率監視部11C、変更部11D、制御部11Eとして機能する。
【0044】
本実施形態に係る受信部11Aは、管理者からPC(Personal Computer)などの管理装置(図示せず)や入力部15により、後述する不感帯や、ドループ特性の傾きの段階の設定を受け付ける。
【0045】
本実施形態に係る周波数監視部11Bは、電力系統からの周波数を監視する。電力系統の周波数は、予め定められた周波数(「基準周波数」ともいう)、例えば50Hzを維持するように制御されているが、電力の需要と供給とのバランスにより変動する。そのため、周波数監視部11Bは、予め定められた時間毎に周波数を取得する。
【0046】
本実施形態に係る充電率監視部11Cは、蓄電池30の充電率(SOC:State Of Charge)を監視する。かかる充電率の監視は、予め定められた間隔、例えば、1分毎に行われる。
【0047】
本実施形態に係る変更部11Dは、充電率監視部11Cにより監視されている蓄電池30の充電率に応じて、不感帯以外の周波数における周波数変化量あたりの出力変化量であるドループ特性の傾きを変更する。不感帯は、本実施形態では、基準周波数50Hzの±0.01Hzの範囲、すなわち、49.99Hzから50.01Hzの範囲である。周波数監視部11Bにより取得された周波数が、かかる不感帯である場合は、変更部11Dは、ドループ特性の傾きを変更しない。ここで、ドループ特性の傾きは、図4に示すように、周波数変化量あたり(図4の横軸)の出力変化量(図4の縦軸)であり、kW/Hzで表される。ドループ特性の傾きを急にするとは、周波数変化量あたりの出力変化量である充電量又は放電量を多くすることであり、ドループ特性の傾きを緩やかにするとは、周波数変化量あたりの出力変化量である充電量又は放電量を少なくすることである。
【0048】
本実施形態に係る制御部11Eは、変更部11Dにより変更されたドループ特性の傾きにより、蓄電池30の充電又は放電を制御する。
【0049】
図5から図8を用いて、変更部11Dにより変更されるドループ特性の傾きについて説明する。
【0050】
図5は、充電率が空になることを回避する場合のドループ特性の傾きを説明するための説明図である。
【0051】
図5に示すように、変更部11Dは、充電率がしきい値、例えば50%を下回った場合は、電力系統からの周波数の不感帯以下のドループ特性の傾きを、不感帯以上のドループ特性の傾きに比べ緩やかになるように変更する。すなわち、周波数監視部11Bにより取得された周波数が、不感帯以下の周波数である場合は、ドループ特性の傾きを図5に示す1点鎖線から実線に変更することで、放電量を少なくして、充電率が空にならないようにする。また、図5に示すように、変更部11Dは、充電率がしきい値を下回った場合は、さらに、電力系統からの周波数の不感帯以上のドループ特性の傾きを、不感帯以下のドループ特性の傾きに比べ急になるように変更する。すなわち、周波数監視部11Bにより取得された周波数が、不感帯以上の周波数である場合は、ドループ特性の傾きを図5に示す2点鎖線から実線に変更することで、充電量を多くして、充電率が空にならないようにする。なお、充電率がしきい値を下回った場合に、変更部11Dは、電力系統からの周波数の不感帯以下のドループ特性の傾きを、不感帯以上のドループ特性の傾きに比べ緩やかになるように変更することと、電力系統からの周波数の不感帯以上のドループ特性の傾きを、不感帯以下のドループ特性の傾きに比べ急になるように変更することとの、いずれか一方のみを変更するようにしてもよい。
【0052】
図6は、充電率が満充電になることを回避する場合のドループ特性の傾きを説明するための説明図である。
【0053】
図6に示すように、変更部11Dは、充電率がしきい値、例えば50%を上回った場合は、電力系統からの周波数の不感帯以下のドループ特性の傾きを、不感帯以上のドループ特性の傾きに比べ急になるように変更する。すなわち、周波数監視部11Bにより取得された周波数が、不感帯以下の周波数である場合は、ドループ特性の傾きを図6に示す1点鎖線から実線に変更することで、放電量を多くして、充電率が満充電にならないようにする。また、図6に示すように、変更部11Dは、充電率がしきい値を上回った場合は、電力系統からの周波数の不感帯以上のドループ特性の傾きを、不感帯以下のドループ特性の傾きに比べ緩やかになるように変更する。すなわち、周波数監視部11Bにより取得された周波数が、不感帯以上の周波数である場合は、ドループ特性の傾きを図6に示す2点鎖線から実線に変更することで、充電量を少なくして、充電率が満充電にならないようにする。なお、充電率がしきい値を上回った場合に、変更部11Dは、電力系統からの周波数の不感帯以下のドループ特性の傾きを、不感帯以上のドループ特性の傾きに比べ急になるように変更することと、電力系統からの周波数の不感帯以上のドループ特性の傾きを、不感帯以下のドループ特性の傾きに比べ緩やかになるように変更することとの、いずれか一方のみを変更するようにしてもよい。
【0054】
図7及び図8は、ドループ特性の傾きの段階を説明するための説明図である。
本実施形態では、変更部11Dは、充電率により、予め定められた傾きからドループ特性の傾きを選択する。また、本実施形態では、ドループ特性の傾きを調定率により算出する。すなわち、図7に示すように、第1段階から第5段階まで設け、第1段階はドループ特性の傾き(調定率)を5%、第2段階は4%、第3段階は3%、第4段階は2%、第5段階は1%に設定されている。変更部11Dは、かかる段階からドループ特性の傾きを選択する。
【0055】
ここで、第1段階の調定率5%とは、5%の周波数変動(50Hz系統では2.5Hzの変動)が生じたとき、発電機・蓄電池の定格出力100%まで変化するという意味である。すなわち、蓄電池30の定格が100kWの場合は、2.5Hz(50Hz×5%)の変動で100kW出力変化させるため、「100÷2.5」から算出される40kWが周波数1Hzあたりの傾き「40kW/Hz」となる。同様に、第2段階の調定率4%は、2.0Hz(50Hz×4%)の変動で100kW出力変化させるため、「100÷2.0」から算出される50kWが周波数1Hzあたりの傾き「200kW/Hz」となる。また、第3段階の調定率3%は、1.5Hz(50Hz×3%)の変動で100kW出力変化させるため、「100÷1.5」から算出される66.7kWが周波数1Hzあたりの傾き「200kW/Hz」となる。また、第4段階の調定率2%は、1.0Hz(50Hz×2%)の変動で100kW出力変化させるため、「100÷1.0」から算出される100kWが周波数1Hzあたりの傾き「200kW/Hz」となる。また、第5段階の調定率1%は、0.5Hz(50Hz×1%)の変動で100kW出力変化させるため、「100÷0.5」から算出される200kWが周波数1Hzあたりの傾き「200kW/Hz」となる。かかるドループ特性の傾きを図に示したのが、図8である。図8に示すように、調定率は低いほどドループ特性の傾きは急なものになる。
【0056】
なお、充電率により、予め定められた傾きからドループ特性の傾きを選択する場合に限定されない。また、本実施形態では、第1段階である調定率5%をドループ特性の傾きの下限に設定しており、又、第3段階をドループ特性の傾きの初期値に設定している。ドループ特性の傾きの上限は設定していないが、第5段階をドループ特性の傾きの上限に設定してもよい。また、ドループ特性の傾きの段階は、第1段階から第5段階に限定されず、第1段階から第5段階よりも少ない段階であってもよいし、又、第1段階から第5段階よりも多い段階であってもよい。
【0057】
次に、図9を参照して、本実施形態に係る制御装置10の作用について説明する。
【0058】
図9は、本実施形態に係る制御装置10がドループ特性の傾きを変更する処理の一例を示すフローチャートである。
【0059】
図9に示すステップS100において、変更部11Dは、充電率監視部11Cにより監視している充電率が50%より大きいか否かを判定する。50%より大きいと判定した場合は、次のステップS102に進む。
【0060】
ステップS102において、変更部11Dは、充電率が90%より大きいか否かを判定する。90%よりも大きいと判定した場合は、次のステップS104に進む。
【0061】
ステップS104において、変更部11Dは、基準周波数50Kz未満の周波数のドループ特性の傾きを第5段階に、50Hzを超える周波数のドループ特性の傾きを第1段階に、それぞれ設定する。すなわち、基準周波数未満の周波数のドループ特性の傾きを基準周波数を超える周波数のドループ特性の傾きよりも急にして、放電量を増やすと共に、基準周波数を超える周波数のドループ特性の傾きを基準周波数未満の周波数のドループ特性の傾きよりも緩やかにすることで充電量を減らす。そして、処理を終了する。
【0062】
上述したステップS102において、充電率が90%より大きいと判定しない場合、すなわち、充電率が50%を超過し90%未満の場合は、ステップS110に進み、充電率が70%より大きいか否かを判定する。充電率が70%より大きいと判定した場合は、次のステップS112に進む。
【0063】
ステップS112において、変更部11Dは、基準周波数50Kz未満の周波数のドループ特性の傾きを第4段階に、50Hzを超える周波数のドループ特性の傾きを第2段階に、それぞれ設定する。すなわち、基準周波数未満の周波数のドループ特性の傾きを基準周波数を超える周波数のドループ特性の傾きよりも急にして、放電量を増やすと共に、基準周波数を超える周波数のドループ特性の傾きを基準周波数未満の周波数のドループ特性の傾きよりも緩やかにすることで充電量を減らす。そして、処理を終了する。
【0064】
上述したステップS110において、充電率が70%よりも大きいと判定しない場合、すなわち、充電率が50%を超過し70%未満の場合は、次のステップS120に進み、基準周波数50Kz未満の周波数のドループ特性の傾きを第3段階に、50Hzを超える周波数のドループ特性の傾きを第3段階に、それぞれ設定する。すなわち、基準周波数未満の周波数のドループ特性の傾きと、基準周波数を超える周波数のドループ特性の傾きとを同じにする。そして、処理を終了する。
【0065】
上述したステップS100において、充電率が50%より大きいと判定しない場合、すなわち、充電率が50%以下の場合は、ステップS130に進み、充電率が10%より低いか否かを判定する。充電率が10%より低いと判定した場合は、次のステップS132に進む。
【0066】
ステップS132において、変更部11Dは、基準周波数50Kz未満の周波数のドループ特性の傾きを第1段階に、50Hzを超える周波数のドループ特性の傾きを第5段階に、それぞれ設定する。すなわち、基準周波数未満の周波数のドループ特性の傾きを基準周波数を超える周波数のドループ特性の傾きよりも緩やかにして、放電量を減らすと共に、基準周波数を超える周波数のドループ特性の傾きを基準周波数未満の周波数のドループ特性の傾きよりも急にすることで充電量を増やす。そして、処理を終了する。
【0067】
上述したステップS130において、充電率が10%より小さいと判定しない場合、すなわち、充電率が10%を超過し50%未満の場合は、ステップS140に進み、充電率が30%より小さいか否かを判定する。充電率が30%より小さいと判定した場合は、次のステップS142に進む。
【0068】
ステップS142において、変更部11Dは、基準周波数50Kz未満の周波数のドループ特性の傾きを第2段階に、50Hzを超える周波数のドループ特性の傾きを第4段階に、それぞれ設定する。すなわち、基準周波数未満の周波数のドループ特性の傾きを基準周波数を超える周波数のドループ特性の傾きよりも緩やかにして、放電量を減らすと共に、基準周波数を超える周波数のドループ特性の傾きを基準周波数未満の周波数のドループ特性の傾きよりも急にすることで充電量を増やす。そして、処理を終了する。
【0069】
上述したステップS140において、充電率が30%よりも小さいと判定しない場合、すなわち、充電率が30%を超過し50%未満の場合は、上述したステップS120に進み、基準周波数50Kz未満の周波数のドループ特性の傾きを第3段階に、50Hzを超える周波数のドループ特性の傾きを第3段階に、それぞれ設定する。すなわち、基準周波数未満の周波数のドループ特性の傾きと、基準周波数を超える周波数のドループ特性の傾きとを同じにする。そして、処理を終了する。
【0070】
なお、ステップS102、ステップS110、ステップS130、及びステップS140で判断される充電率は、図9に示すものに限定されず、他の充電率であってもよい。例えば、ステップS102で判断される充電率とステップS110で判断される充電率とは、ステップS102で判断される充電率の方が高ければ良い。また、ステップS130で判断される充電率とステップS140で判断される充電率とは、ステップS140で判断される充電率の方が低ければ良い。
【0071】
このように本実施形態によれば、蓄電池30の残量が空になることや満充電になることを効果的に防止することができる。
【0072】
以上、上述した実施形態として、制御装置10を例示して説明したが、実施形態は、制御装置10が備える各部の機能をコンピュータに実行させるためのプログラムの形態としてもよい。実施形態は、このプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体の形態としてもよい。
【0073】
その他、上述した実施形態で説明した制御装置10の構成は、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更してもよい。
【0074】
例えば、上述した実施形態では、不感帯を基準周波数50Hzの前後の予め定められた範囲に設定しているが、これに限定されず、不感帯を基準周波数50Hzから予め定められたマイナスの周波数の範囲又はプラスの周波数の範囲の何れか一方のみに設定するようにしてもよい。マイナスの範囲は、例えば、基準周波数50Hzから-0.01Hzの間であり、プラスの範囲は、例えば、基準周波数50Hzから+0.01Hzの間である。不感帯を基準周波数からマイナスの範囲に設定した場合は、充電機会が増えることにより、充電率が空になることを防止する。一方、基準周波数からプラスの範囲に設定した場合は、放電機会が増えることにより、充電率が満充電になることを防止する。プラスの範囲に設定した場合は、特に深夜電力で電力系統から充電するように設定している場合などに有効である。また、管理者の設定により、不感帯を基準周波数からマイナスの範囲にするかプラスの範囲にするかを変更することを可能にしてもよい。
【0075】
また、ドループ特性の傾きを初期値である第3段階から他の段階に変更した後に、初期値である第3段階に戻る前に、更に他の段階に変更するようにしてもよい。すなわち、初期値である第3段階から第2段階に変更した後に、充電率により、更に、第1段階に変更してもよいし、又、第3段階から第2段階に変更した後に、充電率により、第4段階に変更してもよい。
【0076】
また、上記実施形態で説明したプログラムの処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、プログラムを実行することにより、実施形態に係る処理がコンピュータを利用してソフトウェア構成により実現される場合について説明したが、これに限らない。実施形態は、例えば、ハードウェア構成や、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって実現してもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 制御装置
11 CPU
11A 受信部
11B 周波数監視部
11C 充電率監視部
11D 変更部
11E 制御部
12 ROM
13 RAM
14 ストレージ
15 入力部
16 通信部
17 バス
20 AC/DC変換器
30 蓄電池
100 蓄電池制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-07-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統からの周波数を監視する周波数監視部と、
蓄電池の充電率を監視する充電率監視部と、
前記充電率に応じて、不感帯以外の前記周波数における周波数変化量あたりの出力変化量であるドループ特性の傾きを変更する変更部と、
前記変更部により変更された前記ドループ特性の傾きにより、前記蓄電池の充電又は放電を制御する制御部と、を備え
前記変更部は、
前記充電率がしきい値を下回った場合は、電力系統からの前記周波数の前記不感帯以下の前記ドループ特性の傾きを、前記不感帯以上のドループ特性の傾きに比べ緩やかになるように変更するとともに、電力系統からの前記周波数の前記不感帯以上の前記ドループ特性の傾きを、前記変更前の前記不感帯以下の前記ドループ特性の傾きに比べ急になるように変更する制御装置。
【請求項2】
電力系統からの周波数を監視する周波数監視部と、
蓄電池の充電率を監視する充電率監視部と、
前記充電率に応じて、不感帯以外の前記周波数における周波数変化量あたりの出力変化量であるドループ特性の傾きを変更する変更部と、
前記変更部により変更された前記ドループ特性の傾きにより、前記蓄電池の充電又は放電を制御する制御部と、を備え、
前記変更部は、
前記充電率がしきい値を上回った場合は、電力系統からの前記周波数の前記不感帯以下の前記ドループ特性の傾きを、前記不感帯以上の前記ドループ特性の傾きに比べ急になるように変更するとともに、電力系統からの前記周波数の前記不感帯以上の前記ドループ特性の傾きを、前記変更前の前記不感帯以下の前記ドループ特性の傾きに比べ緩やかになるように変更する制御装置。
【請求項3】
前記変更部は、
前記充電率により、予め定められた傾きから前記ドループ特性の傾きを選択する請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記不感帯は、基準周波数の前後の予め定められた範囲である請求項1~の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記不感帯は、基準周波数から予め定められたマイナスの範囲である請求項1~の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
コンピュータを、
電力系統からの周波数を監視する周波数監視部、
蓄電池の充電率を監視する充電率監視部、
前記充電率に応じて、不感帯以外の前記周波数における周波数変化量あたりの出力変化量であるドループ特性の傾きを変更する変更部、
前記変更部により変更された前記ドループ特性の傾きにより、前記蓄電池の 充電又は放電を制御する制御部と、して機能させ
前記充電率がしきい値を下回った場合は、電力系統からの前記周波数の前記不感帯以下の前記ドループ特性の傾きを、前記不感帯以上のドループ特性の傾きに比べ緩やかになるように変更するとともに、電力系統からの前記周波数の前記不感帯以上の前記ドループ特性の傾きを、前記変更前の前記不感帯以下の前記ドループ特性の傾きに比べ急になるように変更させるためのプログラム。
【請求項7】
コンピュータを、
電力系統からの周波数を監視する周波数監視部、
蓄電池の充電率を監視する充電率監視部、
前記充電率に応じて、不感帯以外の前記周波数における周波数変化量あたりの出力変化量であるドループ特性の傾きを変更する変更部、
前記変更部により変更された前記ドループ特性の傾きにより、前記蓄電池の 充電又は放電を制御する制御部と、して機能させ、
前記充電率がしきい値を上回った場合は、電力系統からの前記周波数の前記不感帯以下の前記ドループ特性の傾きを、前記不感帯以上の前記ドループ特性の傾きに比べ急になるように変更するとともに、電力系統からの前記周波数の前記不感帯以上の前記ドループ特性の傾きを、前記変更前の前記不感帯以下の前記ドループ特性の傾きに比べ緩やかになるように変更させるためのプログラム。