(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132698
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】補強部材の製造方法及び補強部材を用いたクッション体の製造方法
(51)【国際特許分類】
A47C 27/22 20060101AFI20230914BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20230914BHJP
B29C 44/12 20060101ALI20230914BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A47C27/22 B
B29C44/00 A
B29C44/12
B29C44/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038178
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000219705
【氏名又は名称】東海興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 誠二
(72)【発明者】
【氏名】城戸 武
【テーマコード(参考)】
3B096
4F214
【Fターム(参考)】
3B096AA01
3B096AB11
3B096AD04
4F214AB02
4F214AC05
4F214AD16
4F214AD19
4F214AG20
4F214AH26
4F214AJ08
4F214UA01
4F214UB01
4F214UB12
4F214UD13
4F214UD17
4F214UF05
4F214UK31
(57)【要約】
【課題】立体的形状の補強部材を形成するための作業工程を減らすことができ、作業工程の管理を簡単にすることができる補強部材の製造方法及び補強部材を用いたクッション体の製造方法を提供する。
【解決手段】補強部材3の製造方法は、クッションパッドの裏側面に一体化される補強部材3を、シート状素材30から立体的形状に形成するものである。補強部材3の製造方法においては、上型部41及び下型部42にヒータ44が内蔵された成形型4を用いる。そして、シート状素材30を下型部42に配置し、ヒータ44によって加熱された成形型4の上型部41と下型部42との間にシート状素材30を挟み込み、シート状素材30の少なくとも一部を変形させて、立体的形状の補強部材3を形成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッションパッドの裏側面に一体化される補強部材を、シート状素材から立体的形状に形成する製造方法であって、
上型部及び下型部を有し、前記上型部及び前記下型部の少なくとも一方にヒータが内蔵された成形型を用い、
前記クッションパッドの裏側面の展開形状に応じた形状の前記シート状素材を準備する準備工程と、
前記シート状素材を前記上型部又は前記下型部に配置する配置工程と、
前記ヒータによって加熱された前記成形型の前記上型部と前記下型部との間に前記シート状素材を挟み込み、前記シート状素材の少なくとも一部を変形させて、立体的形状の前記補強部材を形成する形成工程と、を含む、補強部材の製造方法。
【請求項2】
前記成形型は、前記上型部と前記下型部との開閉方向に対して交差する方向にスライド可能なスライド型部をさらに有する、請求項1に記載の補強部材の製造方法。
【請求項3】
前記形成工程においては、前記ヒータによって、前記成形型における成形面の表面温度を前記シート状素材の軟化点よりも高くする、請求項1又は2に記載の補強部材の製造方法。
【請求項4】
前記形成工程の後には、前記補強部材の一部を切除して前記クッションパッドの裏側面に一体化するための製品形状に形成する切除工程を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の補強部材の製造方法。
【請求項5】
前記形成工程においては、前記補強部材に、前記シート状素材の一部が重なって接合された接合部を形成する、請求項1~4のいずれか1項に記載の補強部材の製造方法。
【請求項6】
前記形成工程においては、スリットが設けられた前記シート状素材を用いる、請求項1~5のいずれか1項に記載の補強部材の製造方法。
【請求項7】
前記成形型における、前記上型部の成形面又は前記下型部の成形面には、磁石が設けられており、
前記配置工程においては、前記シート状素材に設けられた磁性体を前記磁石に吸着させることにより、前記磁石が設けられた前記成形面に前記シート状素材を配置する、請求項1~6のいずれか1項に記載の補強部材の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載された補強部材の製造方法によって製造された立体的形状の前記補強部材を用いたクッション体の製造方法であって、
上側型部及び下側型部を有するクッション体用成形型を用い、
前記下側型部に対して開かれた前記上側型部に前記補強部材を配置する配置工程と、
クッションパッドを構成する発泡原料を前記下側型部に注入する注入工程と、
前記下側型部に対して前記上側型部を閉じ、前記上側型部及び前記下側型部によるキャビティ内において、前記発泡原料を発泡させて、前記補強部材が裏側面に一体化された前記クッションパッドを成形する成形工程と、を含むクッション体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強部材の製造方法及び補強部材を用いたクッション体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両等に用いられるクッション体は、発泡成形体からなるクッションパッドの裏側面に補強部材が配置されて用いられることがある。補強部材は、繊維状の熱可塑性樹脂がシート状に形成された不織布等によって構成される。補強部材は、成形型によってクッションパッドの発泡成形を行う際に、シート状のものを成形型に沿うように配置することが多い。
【0003】
一方、成形型によってクッションパッドの発泡成形を行う際には、立体的形状に形成された補強部材を用いることもある。例えば、特許文献1に記載された不織布成形体の製造方法においては、成形型によって、不織布からなる生地シートを不織布成形体に成形することが行われている。この不織布成形体の製造方法においては、不織布からなる生地シートを加熱した後、加熱された生地シートの成形面に切込を入れ、成形型によって生地シートを立体形状に成形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の不織布成形体の製造方法においては、生地シートを加熱する工程と、生地シートを立体形状に成形する工程とが別々に行われている。そのため、不織布成形体を成形するための作業工程が多く、作業工程の管理が煩雑である。従って、立体的形状を有する、不織布成形体等の補強部材を少ない作業工程で形成するためには、更なる工夫が必要とされる。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、立体的形状の補強部材を形成するための作業工程を減らすことができ、作業工程の管理を簡単にすることができる補強部材の製造方法及び補強部材を用いたクッション体の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
クッションパッドの裏側面に一体化される補強部材を、シート状素材から立体的形状に形成する製造方法であって、
上型部及び下型部を有し、前記上型部及び前記下型部の少なくとも一方にヒータが内蔵された成形型を用い、
前記クッションパッドの裏側面の展開形状に応じた形状の前記シート状素材を準備する準備工程と、
前記シート状素材を前記上型部又は前記下型部に配置する配置工程と、
前記ヒータによって加熱された前記成形型の前記上型部と前記下型部との間に前記シート状素材を挟み込み、前記シート状素材の少なくとも一部を変形させて、立体的形状の前記補強部材を形成する形成工程と、を含む、補強部材の製造方法にある。
【0008】
本発明の他の態様は、
前記補強部材の製造方法によって製造された立体的形状の前記補強部材を用いたクッション体の製造方法であって、
上側型部及び下側型部を有するクッション体用成形型を用い、
前記下側型部に対して開かれた前記上側型部に前記補強部材を配置する配置工程と、
クッションパッドを構成する発泡原料を前記下側型部に注入する注入工程と、
前記下側型部に対して前記上側型部を閉じ、前記上側型部及び前記下側型部によるキャビティ内において、前記発泡原料を発泡させて、前記補強部材が裏側面に一体化された前記クッションパッドを成形する成形工程と、を含むクッション体の製造方法にある。
【発明の効果】
【0009】
(補強部材の製造方法)
前記一態様の補強部材の製造方法においては、上型部及び下型部の少なくとも一方にヒータが内蔵された成形型を用いる。そして、形成工程においては、ヒータによって加熱された成形型の上型部と下型部との間にシート状素材を挟み込む。このとき、成形型の熱によってシート状素材の一部が変形し、立体的形状の補強部材が形成される。
【0010】
このような構成により、シート状素材の加熱は、シート状素材を形成する形成工程において用いる成形型によって行うことができる。それ故、前記一態様の補強部材の製造方法によれば、立体的形状の補強部材を形成するための作業工程を減らすことができ、作業工程の管理を簡単にすることができる。
【0011】
(クッション体の製造方法)
前記他の態様のクッション体の製造方法においては、前記一態様の補強部材の製造方法によって製造された立体的形状の補強部材を用いる。そして、配置工程においては、補強部材を、上側型部の目的とする位置に簡単に配置することができる。また、成形工程においては、補強部材を配置したクッションパッドの成形により、クッションパッドの裏側面における目的とする位置に、皺の発生が抑制されて補強部材が配置され、クッションパッドの裏面形状に沿って補強部材が一体化されたクッション体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1にかかる、クッションパッドの裏側面に補強部材が一体化されたクッション体を、裏側から見た状態で示す説明図。
【
図2】実施形態1にかかる、補強部材を裏側から見た状態で示す説明図。
【
図3】実施形態1にかかる、上型部、下型部及びスライド型部を有する成形型を斜視によって示す説明図。
【
図4】実施形態1にかかる、上型部、下型部及びスライド型部を有する成形型を、
図3のIV-IV断面に相当する断面によって示す説明図。
【
図5】実施形態1にかかる、上型部、下型部及びスライド型部を有する成形型を、
図3のV-V断面に相当する断面によって示す説明図。
【
図6】実施形態1にかかる、補強部材を構成するシート状素材を示す説明図。
【
図7】実施形態1にかかる、原反から複数のシート状素材を切り抜く状態を示す説明図。
【
図8】実施形態1にかかる、成形型に設けられた磁石に、シート状素材の磁性体が吸着される状態を、
図4のVIII枠部分を拡大して示す説明図。
【
図9】実施形態1にかかる、シート状素材に接合部が形成される状態を示す説明図。
【
図10】実施形態1にかかる、シート状素材に他の接合部が形成される状態を示す説明図。
【
図11】実施形態2にかかる、上側型部及び下側型部を有するクッション体用成形型を、左右方向に沿った断面によって示す説明図。
【
図12】実施形態2にかかる、上側型部及び下側型部を有するクッション体用成形型を、上下方向に沿った断面によって示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
前述した補強部材の製造方法及び補強部材を用いたクッション体の製造方法にかかる好ましい実施の態様について説明する。
前記一態様の補強部材の製造方法においては、前記成形型は、前記上型部と前記下型部との開閉方向に対して交差する方向にスライド可能なスライド型部をさらに有していてもよい。この構成により、いわゆるアンダーカット形状等の複雑な形状を有する補強部材の形成が容易になる。
【0014】
また、前記形成工程においては、前記ヒータによって、前記成形型における成形面の表面温度を前記シート状素材の軟化点よりも高くしてもよい。この構成により、シート状素材の少なくとも一部を素早く軟化させて、変形させることが容易になる。
【0015】
また、前記形成工程の後には、前記補強部材の一部を切除して前記クッションパッドの裏側面に一体化するための製品形状に形成する切除工程を行ってもよい。この構成により、補強部材の外形形状を整えることができる。
【0016】
また、前記形成工程においては、前記補強部材に、前記シート状素材の一部が重なって接合された接合部を形成してもよい。この構成により、補強部材の皺の発生を抑制することができる。
【0017】
前記形成工程においては、スリットが設けられた前記シート状素材を用いてもよい。この構成により、補強部材を見栄えよく立体的に形成することができる。
【0018】
前記成形型における、前記上型部の成形面又は前記下型部の成形面には、磁石が設けられており、前記配置工程においては、前記シート状素材に設けられた磁性体を前記磁石に吸着させることにより、前記磁石が設けられた前記成形面に前記シート状素材を配置してもよい。この構成により、成形型の成形面に配置したシート状素材を位置ずれしにくくすることができる。
【0019】
前述した補強部材の製造方法及び補強部材を用いたクッション体の製造方法にかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
<実施形態1>
本形態の補強部材3の製造方法は、
図1及び
図2に示すように、クッションパッド2の裏側面201に一体化される補強部材3を、シート状素材30から立体的形状に形成するものである。補強部材3の製造方法においては、
図3~
図5に示すように、上型部41及び下型部42を有し、上型部41及び下型部42にヒータ44が内蔵された成形型4を用い、準備工程、配置工程及び形成工程を行う。
【0020】
準備工程においては、
図6及び
図7に示すように、クッションパッド2の裏側面201の展開形状に応じた形状のシート状素材30を準備する。配置工程においては、
図8に示すように、シート状素材30を下型部42に配置する。形成工程においては、
図4及び
図5に示すように、ヒータ44によって加熱された成形型4の上型部41と下型部42との間にシート状素材30を挟み込み、シート状素材30の少なくとも一部を変形させて、立体的形状の補強部材3を形成する。
【0021】
以下に、本形態の補強部材3の製造方法について詳説する。
(補強部材3及びクッション体1)
図1及び
図2に示すように、補強部材3は、クッションパッド2の裏側面201に配置されて、クッション体1を構成するものである。
図1は、クッション体1を裏側から見た状態で示し、
図2は、補強部材3を裏側から見た状態で示す。
図1及び
図2においては、上側を符号H1で示し、下側を符号H2で示す。また、裏側を符号D1で示し、表側を符号D2で示す。クッション体1は、車両のシート等を構成するために用いることができる。補強部材3は、繊維状の熱可塑性樹脂がシート状に形成された不織布等によって構成される。補強部材3は、クッション体1をシートフレーム等の骨組体に配置したときに、骨組体と接触して異音の発生を少なくするために用いられる。
【0022】
本形態のクッション体1は、車両のシートの背もたれ部を構成するものである。クッション体1のクッションパッド2は、本体部21と、本体部21の上部211及び左右の側部212が裏側に折り返された折返し部221とを有する。クッションパッド2の上部211及び左右の側部212においては、折返し部221が繋がった袋形状部22が形成されている。なお、クッションパッド2の本体部21の裏側は、車両においては前後方向の後側に位置する。
【0023】
クッションパッド2の裏側面201には、本体部21の裏側面201の他に、袋形状部22(折返し部221)の裏側面201としての内側面も含まれる。補強部材3は、クッションパッド2の裏側面201のほぼ全体に配置される。そして、補強部材3は、クッションパッド2の裏側面201の形状に沿った形状を有する。補強部材3は、クッションパッド2の本体部21の裏側面201に配置される本体部31と、クッションパッド2の袋形状部22の裏側面201に配置される袋形状部32とを有する。袋形状部32は、本体部31の上部311及び左右の側部312が裏側に折り返された折返し部321が繋がった形状を有する。
【0024】
補強部材3の本体部31には、クッション体1が撓みやすくするための複数の変形用開口部341が、上下方向に沿って長尺状に形成されている。また、補強部材3の一方の側部には、シート内に配置されるエアバッグが、作動時にシートの外部へ出やすくするためのエアバッグ用開口部342も形成されている。
【0025】
図2及び
図6に示すように、補強部材3は、シート状素材30を立体的に変形させて、部分的に接合させたものである。シート状素材30には、山形状の折曲げ部33を形成する位置にスリット331が設けられている部分がある。
図10に示すように、スリット331は、スリット331の両側に位置する、シート状素材30の部分が二重以上に重なって接合された折曲げ部33を形成するために設けられている。スリット331により、シート状素材30を見栄えよく立体的に折り曲げることができる。
【0026】
図6及び
図7に示すように、補強部材3の製造方法において用いられるシート状素材30は、配置工程の前に準備工程が行われることによって、所定のシート形状に形成される。配置工程において成形型4に配置されるシート状素材30は、準備工程において、長尺状の原反300から、補強部材3の展開形状に近い所定のシート形状に切り抜かれたものである。原反300から切り抜かれたシート状素材30には、変形用開口部341、エアバッグ用開口部342、ヘッドレスト用挿入孔343、スリット331等が形成される。
【0027】
配置工程において用いられるシート状素材30が、所定のシート形状に切り抜かれていることにより、複数のシート状素材30を、原反300において互いに隣接して横並びの状態で切り抜くことができる。この構成により、シート状素材30の原反において使用されずに捨てられる部分を少なくすることができ、シート状素材30の歩留まりを良くすることができる。
【0028】
シート状素材30を構成する繊維状の熱可塑性樹脂は、成形型4によって迅速に軟化できるように、100℃以下の軟化点を有する。成形型4におけるヒータ44は、シート状素材30を軟化点以上の温度に加熱するよう構成されている。軟化点とは、熱可塑性樹脂等の材料が加熱されるときに、変形又は軟化を始める温度のことをいう。換言すれば、軟化点は、軟化温度とも呼ばれ、硬い状態から軟らかく塑性変形可能な状態に変化する温度を示す。
【0029】
図8に示すように、シート状素材30の適宜箇所の縁部には、成形型4の成形面401に沿った配置を容易にするための磁性体36が設けられている。磁性体36は、成形型4の成形面401に設けられた磁石45に吸着して、成形型4に対するシート状素材30の配置位置を保持するために使用される。磁性体36としては、例えば、ステープラー等の止め針、鉄粉テープ、マグネット等が用いられる。
【0030】
(成形型4)
図3~
図5に示すように、補強部材3を立体的形状に形成する成形型4は、上型部41、下型部42及びスライド型部43によって構成されている。成形型4は、本体部31の表側面302が上側に向けられた状態の補強部材3を形成するよう構成されている。上型部41は、補強部材3の表側面302を押さえ込み、下型部42は、補強部材3の裏側面301を支えるよう構成されている。スライド型部43は、上型部41と下型部42とに側方から合わさる状態で、補強部材3の上部311及び左右の側部312のそれぞれを押さえ込むよう3つに分割して形成されている。
【0031】
下型部42の成形面401は、補強部材3の立体的形状に沿った形状に形成されている。
図3~
図5及び
図8に示すように、下型部42のうち袋形状部32(折返し部321)に対応する位置には、上面が上方に隆起し、かつ下型部42の中央部分から外方に突出する隆起部421が形成されている。
【0032】
本形態のシート状素材30のうち袋形状部32(折返し部321)が形成される部位は、下型部42の隆起部421の成形面401に配置される。隆起部421の成形面401には、シート状素材30の磁性体36を吸着するための磁石45が設けられている。本形態の磁石45は、表面の一部が成形面401に露出する状態で、隆起部421に埋設されている。換言すれば、隆起部421の成形面401の一部は、磁石45の表面によって形成されている。
【0033】
磁石45は、隆起部421の成形面401の複数箇所に分散して配置されている。また、磁石45は、シート状素材30における縁部の磁性体36が設けられた位置に対応して、隆起部421の成形面401に設けられている。下型部42の隆起部421の複数の磁石45に、シート状素材30の複数の磁性体36が吸着されることにより、シート状素材30を下型部42における目標とする位置に、位置ずれしにくい状態で安定して配置することができる。
【0034】
図3に示すように、上型部41の成形面401は、下型部42の成形面401と対向してシート状素材30を挟み込む形状に形成されている。スライド型部43は、上型部41と下型部42との開閉方向Kに対して交差する方向(本形態では直交する方向)にスライド可能である。3つのスライド型部43は、下型部42又は上型部41との間にシート状素材30を挟み込むことにより、シート状素材30に袋形状部32を形成する。袋形状部32は、いわゆるアンダーカット形状を形成するものであり、スライド型部43を用いることによって形成及び離型が可能になる。
【0035】
図2、
図4及び
図5に示すように、補強部材3の上部を押さえ込むスライド型部43は、主に補強部材3の上部311の折返し部321を形成する。補強部材3の左右の側部312を押さえ込む一対のスライド型部43は、主に補強部材3の左右の側部312の折返し部321を形成する。
【0036】
本形態のヒータ44は、上型部41、下型部42及びスライド型部43のそれぞれに埋設されている。ヒータ44は、上型部41、下型部42及びスライド型部43における成形面401に近い位置に埋設するとよい。本形態のヒータ44は、工場において使用される温水が流れる温水配管によって構成されている。なお、ヒータ44には、温水配管を用いる代わりに、電気によって発熱する電熱ヒータもしくはプレートヒータ、又は加熱されたオイルを熱媒とするオイルヒータなどを用いてもよい。本形態のように、成形型4にヒータ44を埋設することにより、成形型4とは別に加熱装置を設ける場合に比べて、装置を設置するために必要なスペースを小さくすることができる。
【0037】
(補強部材3の製造方法の詳細)
シート状素材30を立体的形状の補強部材3に成形するに際しては、準備工程、配置工程及び形成工程を行う。
図6及び
図7に示すように、準備工程においては、長尺状の原反300にプレス加工(切り抜き加工)が行われて、複数のシート状素材30が形成される。
図3及び
図8に示すように、配置工程においては、シート状素材30を下型部42に配置する。このとき、シート状素材30における複数の磁性体36を、隆起部421における複数の磁石45に吸着させることにより、シート状素材30を下型部42に固定することができる。
【0038】
配置工程においては、シート状素材30のうち袋形状部32(折返し部321)が形成される部位は、下型部42の隆起部421の形状に合わせて折り曲げるようにして隆起部421に配置される。シート状素材30には、
図2及び
図9に示すように、上部311と左右の側部312との間の角部313の付近には、接合部37が形成される部分が設定される。この接合部37が形成される部分は、シート状素材30の一部が、三重以上に重なるようにして折れ曲がって隆起部421に配置される。接合部37により、後の形成工程において、補強部材3の皺の発生を抑制して、シート状素材30から補強部材3を所望の形状に形成することができる。
【0039】
また、
図2に示すように、シート状素材30を隆起部421に立体的に配置するときには、一方の側部312の下側部分の付近には、切り込みとしてのスリット331が設けられる部分が設定される。このスリット331が設けられる部分は、スリット331の両側に位置するシート状素材30の部分が、二重以上に重なるようにして折れ曲がって隆起部421に配置される。
【0040】
配置工程においては、上型部41、下型部42及びスライド型部43に埋設されたヒータ44によって、上型部41、下型部42及びスライド型部43のそれぞれが加熱される。本形態においては、配置工程及び形成工程が行われている間は、常時、ヒータ44を構成する温水配管に温水が流れており、上型部41、下型部42及びスライド型部43のそれぞれが常時加熱されている。
【0041】
そして、特に、形成工程においては、ヒータ44の加熱によって、上型部41、下型部42及びスライド型部43における各成形面401の表面温度をシート状素材30の軟化点よりも高くする。シート状素材30の軟化点は70℃以上100℃未満の範囲内にあり、本形態のヒータ44は、上型部41、下型部42及びスライド型部43を100℃に加熱する。
【0042】
図4及び
図5に示すように、形成工程においては、下型部42にシート状素材30が配置された後、下型部42に対して複数のスライド型部43が閉じられ、下型部42及び複数のスライド型部43に対して上型部41が閉じられる。そして、シート状素材30が、上型部41、下型部42及び複数のスライド型部43によって挟み込まれる。なお、製造する補強部材3の形状によっては、下型部42にシート状素材30が配置された後、下型部42に対して上型部41が閉じられ、下型部42及び上型部41に対して複数のスライド型部43が閉じられてもよい。
【0043】
形成工程においては、加熱された上型部41、下型部42及び複数のスライド型部43によってシート状素材30が挟み込まれることによって、シート状素材30が上型部41、下型部42及び複数のスライド型部43から伝わる熱によって軟化する。シート状素材30が軟化したときには、シート状素材30は適度に溶融した状態になる。
【0044】
そして、軟化したシート状素材30は、上型部41、下型部42及び複数のスライド型部43の各成形面401に沿って変形し、各成形面401によってプレス成形される。このとき、
図2に示すように、シート状素材30の袋形状部32における、上部311と左右の側部312との間の角部313の付近には、
図9に示すように、シート状素材30の一部が三重以上に重なって接合された接合部37が形成される。また、このとき、
図2に示すように、シート状素材30における一方の側部312の下側部分の付近には、
図10に示すように、シート状素材30における、スリット331の両側に位置する部分が二重以上に重なって接合された接合部38が形成される。
【0045】
次いで、形成工程においては、上型部41、下型部42及び複数のスライド型部43によってシート状素材30が挟み込まれた状態が所定時間維持される。これにより、シート状素材30から立体的形状の補強部材3が形成される。その後、下型部42に対して、上型部41及び複数のスライド型部43が開き(退避し)、下型部42から補強部材3が取り出される。
【0046】
(作用効果)
本形態の補強部材3の製造方法においては、上型部41、下型部42及び複数のスライド型部43にヒータ44が内蔵された成形型4を用いる。そして、形成工程においては、ヒータ44によって加熱された上型部41、下型部42及び複数のスライド型部43の間にシート状素材30が挟み込まれる。このとき、上型部41、下型部42及び複数のスライド型部43の熱によってシート状素材30の一部が溶融するとともに接合され、立体的形状の補強部材3が形成される。
【0047】
このような構成により、シート状素材30の加熱は、シート状素材30を形成する形成工程において用いる成形型4によって行うことができる。それ故、本形態の補強部材3の製造方法によれば、立体的形状の補強部材3を形成するための作業工程を減らすことができ、作業工程の管理を簡単にすることができる。
【0048】
<実施形態2>
本形態は、補強部材3の製造方法によって製造された立体的形状の補強部材3を用いたクッション体1の製造方法について示す。クッション体1の製造方法においては、配置工程、注入工程及び成形工程を行って、補強部材3がクッションパッド2の裏側面201に一体化されたクッション体1が成形される。クッション体1の製造方法においては、立体的形状の補強部材3を裏側面201に一体化するよう、クッションパッド2を発泡成形する。
【0049】
図11及び
図12に示すように、クッション体1の製造方法においては、クッション体1を成形するための上側型部51及び下側型部52を有するクッション体用成形型5が用いられる。上側型部51は、補強部材3が配置されるクッションパッド2の裏側面201を成形し、下側型部52は、クッションパッド2の表側面を成形するよう構成されている。
【0050】
配置工程においては、下側型部52に対して開かれた上側型部51に補強部材3を配置する。このとき、補強部材3が立体的形状に形成されていることにより、補強部材3を、容易に上側型部51の所望の位置に配置することができる。次いで、注入工程においては、クッションパッド2を構成する発泡原料20を下側型部52内に注入する。発泡原料20は、熱可塑性樹脂の液状の原料に発泡剤が含まれるものである。
【0051】
次いで、成形工程においては、下側型部52に対して上側型部51を閉じる。そして、上側型部51及び下側型部52によるキャビティ53内においては、下側型部52と補強部材3との間で発泡原料20が発泡して流動し、発泡原料20がキャビティ53内に充填される。これにより、キャビティ53内においては、補強部材3が裏側面201に一体化されたクッションパッド2が成形され、クッションパッド2及び補強部材3を有するクッション体1が製造される。その後、下側型部52に対して上側型部51が開かれ、上型部41から製造後のクッション体1が取り出される。
【0052】
本形態のクッション体1の製造方法においては、補強部材3の製造方法によって製造された立体的形状の補強部材3を用いる。そして、配置工程においては、補強部材3を、上側型部51の目的とする位置に簡単に配置することができる。また、成形工程においては、補強部材3を配置したクッションパッド2の成形により、クッションパッド2の裏側面201における目的とする位置に所望の形状の補強部材3が配置される。そのため、クッションパッド2の成形時にも補強部材3に皺が発生することが抑制され、クッションパッド2の裏側面201の形状に沿って皺がなく一体化された補強部材3を有するクッション体1を製造することができる。
【0053】
本形態の補強部材3は、実施形態1において示されるものと同様である。また、本形態においても、実施形態1に示した符号と同一の符号が示す構成要素は、実施形態1の構成要素と同様である。
【0054】
<その他の実施形態>
立体的形状の補強部材3は、補強部材3の製造方法において形成された後に、不要な端部を切除してもよい。より具体的には、補強部材3の製造方法の形成工程の後には、立体的形状の補強部材3の一部を切除して、補強部材3を、クッションパッド2の裏側面201に一体化するための製品形状に形成する切除工程を行ってもよい。
【0055】
この場合には、補強部材3の一部を切除することにより、補強部材3の外形形状を整えることができる。また、この場合、シート状素材30を準備するときには、シート状素材30が大まかな形状に形成されていてもよいため、シート状素材30の準備を容易にすることができる。
【0056】
また、補強部材3に袋形状部32が形成されない場合や補強部材3が単純な形状の場合には、スライド型部43が不要になり、成形型4は上型部41及び下型部42によって構成してもよい。例えば、シートの着座部を構成するクッション体1の補強部材3を製造する場合には、スライド型部43が不要となることがある。
【0057】
本発明は、各実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態を構成することが可能である。また、本発明は、様々な変形例、均等範囲内の変形例等を含む。
【符号の説明】
【0058】
1 クッション体
2 クッションパッド
20 発泡原料
201 裏側面
21 本体部
22 袋形状部
221 折返し部
3 補強部材
30 シート状素材
31 本体部
32 袋形状部
321 折返し部
33 折曲げ部
331 スリット
36 磁性体
37,38 接合部
4 成形型
401 成形面
41 上型部
42 下型部
421 隆起部
43 スライド型部
44 ヒータ
45 磁石
5 クッション体用成形型
51 上側型部
52 下側型部
53 キャビティ