(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132707
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20230914BHJP
【FI】
H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038192
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】榎 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇輔
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CB07
5H050CB11
5H050CB29
5H050FA17
5H050GA22
5H050GA27
5H050GA29
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】チャンバ内に流入する空気による気流の基材フィルムへの影響を抑制すること。
【解決手段】電池用電極製造装置は、粉体状の活物質を基材フィルムの一方の面に塗布して活物質層を形成する部分を含む電極形成部に向けて基材フィルムを搬送する電池用電極製造装置であって、内部に前記電極形成部を有し、内部が大気圧よりも減圧されるチャンバと、基材フィルムが載置される搬送用フィルムを供給する搬送用フィルム供給部と、前記チャンバに形成され、前記搬送用フィルムを前記チャンバ内に導入する開口部とを備え、前記搬送用フィルムを前記チャンバ内に導入する部分に、前記開口部を介してチャンバ内に流れる気流を整流する整流部を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体状の活物質を基材フィルムの一方の面に塗布して活物質層を形成する部分を含む電極形成部に向けて基材フィルムを搬送する電池用電極製造装置であって、
内部に前記電極形成部を有し、内部が大気圧よりも減圧されるチャンバと、
基材フィルムが載置される搬送用フィルムを供給する搬送用フィルム供給部と、
前記チャンバに形成され、前記搬送用フィルムを前記チャンバ内に導入する開口部とを備え、
前記搬送用フィルムを前記チャンバ内に導入する部分に、前記開口部を介してチャンバ内に流れる気流を整流する整流部を有する、電池用電極製造装置。
【請求項2】
前記チャンバは、前記開口部として、前記搬送用フィルムの搬送方向において手前に位置するスリット部と、スリット部より奥に位置するボックス部と、を有し、
前記スリット部又は前記ボックス部の少なくとも一方の内壁に整流部を備える、請求項1に記載の電池用電極製造装置。
【請求項3】
前記整流部は、前記スリット部又は前記ボックス部の少なくとも一方における幅方向の気流を整流する、請求項2に記載の電池用電極製造装置。
【請求項4】
前記開口部は、スリット部と、当該スリット部におけるいずれか一方の内面に設けられた曲面状の補強体とを備え、
前記補強体は、当該補強体における曲面に搬送用フィルムが押し当てられるように構成され、
前記整流部は、当該スリット部における前記補強体とは異なる側の内面であって、前記搬送用フィルムの搬送方向における奥側の端部に設けられる、請求項1に記載の電池用電極製造装置。
【請求項5】
前記開口部は、スリット部と、当該スリット部におけるいずれか一方の内面に設けられた曲面状の補強体とを備え、
前記補強体は、当該補強体における曲面に搬送用フィルムが押し当てられるように構成され、
前記整流部は、当該スリット部における前記補強体とは異なる側の内面から、前記搬送用フィルムの搬送方向における奥側にせり出した位置に設けられる、請求項1に記載の電池用電極製造装置。
【請求項6】
前記整流部は、等間隔に配置される、請求項1~5のいずれか一項に記載の電池用電極製造装置。
【請求項7】
基材フィルムが載置される搬送用フィルムを供給し、
粉体状の活物質を基材フィルムの一方の面に塗布して活物質層を形成する部分を含む電極形成部を内部に有し、内部が大気圧よりも減圧されるチャンバに形成される開口部を通して、前記搬送用フィルムを前記チャンバ内に導入し、
前記搬送用フィルムを前記チャンバ内に導入する部分に設けられる整流部により、前記開口部を介してチャンバ内に流れる気流を整流する、電池用電極製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は高容量の二次電池であり、近年様々な用途で使用されている。リチウムイオン電池の電極は、活物質層、集電体層、セパレータ、及び、活物質層を封入する枠体等によって構成される(例えば、特許文献1参照)。リチウムイオン電池における活物質層は、例えば、帯状の基材フィルムに対して電極組成物を供給し、ロールプレス等によって圧縮することで形成することができる。
【0003】
ここで、基材フィルムへの電極組成物の供給、ロールプレスといった各種の工程を、内部が大気圧よりも減圧されたチャンバ内で実行することにより、電極組成物の内部に空気が残留することを防止し、活物質層の均一性を向上させることができる。このため、チャンバにはスリットが設けられ、基材フィルムは当該スリットを通してチャンバ内に搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6633866号公報
【特許文献2】特開2010-174264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チャンバ内の減圧状態を維持するため、例えばスリットを細く構成する等して、空気の流入を抑制することが考えられる。例えば、特許文献2には、チャンバ内の減圧状態を維持するための技術として、高真空へ順次複数段階的に減圧させることについて記載されている。しかしながら、空気の流入を完全に遮断することは難しく、例えばスリットと基材フィルムとの隙間からいくらかの空気は流入し、気流が発生する。この気流によって基材フィルムが不規則に移動し、がたついてしまう場合がある。本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、チャンバ内に流入する空気による気流の基材フィルムへの影響を抑制することができる電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る電池用電極製造装置は、粉体状の活物質を基材フィルムの一方の面に塗布して活物質層を形成する部分を含む電極形成部に向けて基材フィルムを搬送する電池用電極製造装置であって、内部に前記電極形成部を有し、内部が大気圧よりも減圧されるチャンバと、基材フィルムが載置される搬送用フィルムを供給する搬送用フィルム供給部と、前記チャンバに形成され、前記搬送用フィルムを前記チャンバ内に導入する開口部とを備え、前記搬送用フィルムを前記チャンバ内に導入する部分に、前記開口部を介してチャンバ内に流れる気流を整流する整流部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法によれば、チャンバ内に流入する空気による気流の基材フィルムへの影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の電池用電極製造装置を用いて製造される電池の単セルの断面模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態の電池用電極製造装置の概略図である。
【
図3B】
図3Bは、実施形態の開口部に設けられるフィンを示す図である。
【
図4B】
図4Bは、実施形態の開口部に設けられるフィンを示す図である。
【
図5B】
図5Bは、実施形態の開口部に設けられるフィンを示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態の電池用電極製造装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
以下、図面を参照して、本発明を適用した実施形態について説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、一部を省略して図示している場合がある。
【0010】
<組電池(二次電池)>
実施形態の電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法は、例えば、リチウムイオン電池の製造に適用される。リチウムイオン電池は、複数のリチウムイオン単電池(単セル又は電池セルとも記載する)を組み合わせてモジュール化した組電池、或いは、このような組電池を複数組み合わせて電圧及び容量を調整した電池パックの形態で使用される。
【0011】
<単セル(電池セル)>
図1は、単セル10の断面模式図である。単セル10を複数組み合わせることで上記の組電池を作製することが可能である。例えば、単セル10は、2つの電極20(電池用電極)としての正極20a及び負極20bと、セパレータ30とを有する。
【0012】
セパレータ30は、正極20aと負極20bとの間に配置される。組電池において、複数の単セル10は、正極20aと負極20bとを同方向に向けて積層される。
【0013】
セパレータ30には、電解質が保持される。これにより、セパレータ30は、電解質層として機能する。セパレータ30は、正極20a及び負極20bの電極活物質層22の間に配置され、これらが互いに接触することを抑制する。これにより、セパレータ30は、正極20aと負極20bとの間の隔壁として機能する。
【0014】
セパレータ30に保持される電解質としては、例えば、電解液またはゲルポリマー電解質等が挙げられる。これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保される。セパレータの形態としては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
【0015】
正極20a及び負極20bは、それぞれ、集電体21と、電極活物質層22と、枠体35とを有する。電極活物質層22と集電体21とは、セパレータ30側からこの順に並ぶ。枠体35は、額縁状(環状)である。枠体35は、電極活物質層22の周囲を囲む。正極20aの枠体35と負極20bの枠体35とは、互いに溶着され一体化されている。以下の説明において、正極20a及び負極20bの電極活物質層22を互いに区別する場合、これらをそれぞれ正極活物質層22a、負極活物質層22bと呼ぶ。
【0016】
<正極集電体の具体例>
正極集電体層21aを構成する正極集電体としては、公知のリチウムイオン単電池に用いられる集電体を用いることができ、例えば、公知の金属集電体及び導電材料と樹脂とから構成されてなる樹脂集電体(特開2012-150905号公報及び国際公開第2015/005116号等に記載の樹脂集電体等)を用いることができる。正極集電体層21aを構成する正極集電体は、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。
【0017】
金属集電体としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン及びこれらの金属を1種以上含む合金、並びに、ステンレス合金からなる群から選択される一種以上の金属材料が挙げられる。これらの金属材料は、薄板や金属箔等の形態で用いてもよい。また、上記金属材料以外で構成される基材表面にスパッタリング、電着、塗布等の方法により上記金属材料を形成したものを金属集電体として用いてもよい。
【0018】
樹脂集電体としては、導電性フィラーとマトリックス樹脂とを含むことが好ましい。マトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)等が挙げられるが、特に限定されない。また、導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択されれば特に限定されない。導電性フィラーは、その形状が繊維状である導電性繊維であってもよい。
【0019】
樹脂集電体は、マトリックス樹脂及び導電性フィラーのほかに、その他の成分(分散剤、架橋促進剤、架橋剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤等)を含んでいてもよい。また、複数の樹脂集電体を積層して用いてもよく、樹脂集電体と金属箔とを積層して用いても良い。
【0020】
正極集電体層21aの厚さは、特に限定されないが、5~150μmであることが好ましい。複数の樹脂集電体を積層して正極集電体層21aとして用いる場合には、積層後の全体の厚さが5~150μmであることが好ましい。正極集電体層21aは、例えば、マトリックス樹脂、導電性フィラー及び必要により用いるフィラー用分散剤を溶融混練して得られる導電性樹脂組成物を公知の方法でフィルム状に成形することにより得ることができる。
【0021】
<正極活物質の具体例>
正極活物質層22aは、正極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。ここで、非結着体とは、正極活物質層中において正極活物質の位置が固定されておらず、正極活物質同士及び正極活物質と集電体とが不可逆的に固定されていないことを意味する。正極活物質層22aが非結着体である場合、正極活物質同士は不可逆的に固定されていないため、正極活物質同士の界面を機械的に破壊することなく分離することができ、正極活物質層22aに応力がかかった場合でも正極活物質が移動することで正極活物質層22aの破壊を防止することができ好ましい。非結着体である正極活物質層22aは、正極活物質層22aを、正極活物質と電解液とを含みかつ結着剤を含まない正極活物質層22aにする等の方法で得ることができる。なお、本明細書において、結着剤とは、正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない薬剤を意味し、デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン及びポリプロピレン等の公知の溶剤乾燥型のリチウムイオン電池用結着剤等が挙げられる。これらの結着剤は、溶剤に溶解又は分散して用いられ、溶剤を揮発、留去することで表面が粘着性を示すことなく固体化するので正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない。
【0022】
正極活物質としては、例えば、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属元素が2種である複合酸化物、金属元素が3種類以上である複合酸化物等が挙げられるが、特に限定されない。
【0023】
正極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆正極活物質であってもよい。正極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、正極の体積変化が緩和され、正極の膨張を抑制することができる。
【0024】
被覆材を構成する高分子化合物としては、特開2017-054703号公報及び国際公開第2015/005117号等に活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができる。
【0025】
被覆材には、導電剤が含まれていてもよい。導電剤としては、正極集電体層21aに含まれる導電性フィラーと同様のものを好適に用いることができる。
【0026】
正極活物質層22aには、粘着性樹脂が含まれていてもよい。粘着性樹脂としては、例えば、特開2017-054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調節したもの、及び、特開平10-255805号公報に粘着剤として記載されたもの等を好適に用いることができる。なお、粘着性樹脂は、溶媒成分を揮発させて乾燥させても固体化せずに粘着性(水、溶剤、熱等を使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。一方、結着剤として用いられる溶液乾燥型の電極用バインダーは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質同士を強固に接着固定するものを意味する。したがって、上述した結着剤(溶液乾燥型の電極バインダー)と粘着性樹脂とは、異なる材料である。
【0027】
正極活物質層22aには、電解質と非水溶媒を含む電解液が含まれていてもよい。電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用できる。非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの(例えば、リン酸エステル、ニトリル化合物等及びこれらの混合物等)等が使用できる。例えば、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合液、又は、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合液を用いることができる。
【0028】
正極活物質層22aには、導電助剤が含まれていてもよい。導電助剤としては、正極集電体層21aに含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0029】
正極活物質層22aの厚さは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0030】
実施形態において、正極活物質層22aを形成するために供給される正極組成物は、正極活物質と非水電解液を含んでなる湿潤粉体である。また、湿潤粉体はペンデュラー状態又はファニキュラー状態であることがより好ましい。
【0031】
湿潤粉体における非水電解液の割合は、特に限定されないが、ペンデュラー状態又はファニキュラー状態とするためには、正極の場合には非水電解液の割合を湿潤粉体全体の0.5~15重量%とすることが望ましい。
【0032】
<負極集電体の具体例>
負極集電体層21bを構成する負極集電体としては、正極集電体で記載した構成と同様のものを適宜選択して用いることができ、同様の方法により得ることができる。負極集電体層21bは、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。負極集電体層21bの厚さは、特に限定されないが、5~150μmであることが好ましい。
【0033】
<負極活物質の具体例>
負極活物質層22bは、負極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。負極活物質層が非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である負極活物質層22bを得る方法等は、正極活物質層22aが非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である正極活物質層22aを得る方法と同様である。
【0034】
負極活物質としては、例えば、炭素系材料、珪素系材料及びこれらの混合物等を用いることができるが、特に限定されない。
【0035】
負極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆負極活物質であってもよい。負極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、負極の体積変化が緩和され、負極の膨張を抑制することができる。
【0036】
被覆材としては、被覆正極活物質を構成する被覆材と同様のものを好適に用いることができる。
【0037】
負極活物質層22bは、電解質と非水溶媒を含む電解液を含有する。電解液の組成は、正極活物質層22aに含まれる電解液と同様の電解液を好適に用いることができる。
【0038】
負極活物質層22bには、導電助剤が含まれていてもよい。導電助剤としては、正極活物質層22aに含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0039】
負極活物質層22bには、粘着性樹脂が含まれていてもよい。粘着性樹脂としては、正極活物質層22aの任意成分である粘着性樹脂と同様のものを好適に用いることができる。
【0040】
負極活物質層22bの厚さは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0041】
実施形態において、負極活物質層22bを形成するために供給される負極組成物は、負極活物質と非水電解液を含んでなる湿潤粉体である。また、湿潤粉体はペンデュラー状態又はファニキュラー状態であることがより好ましい。
【0042】
湿潤粉体における非水電解液の割合は、特に限定されないが、ペンデュラー状態又はファニキュラー状態とするためには、負極の場合には非水電解液の割合を湿潤粉体全体の0.5~25重量%とすることが望ましい。
【0043】
<セパレータの具体例>
セパレータ30に保持される電解質としては、例えば、電解液又はゲルポリマー電解質等が挙げられる。セパレータ30は、これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保される。セパレータ30の形態としては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム等が挙げられるが、特に限定されない。
【0044】
<枠体の具体例>
枠体35としては、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、例えば、高分子材料が好ましく、熱硬化性高分子材料がより好ましい。枠体35を構成する材料としては、絶縁性、シール性(液密性)、電池動作温度下での耐熱性等を有するものであればよく、樹脂材料が好適に採用される。より具体的には、枠体35としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリフッ化ビニリデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。
【0045】
<電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法>
次に、本実施形態の電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法(以下、製造方法と略して呼ぶ)について説明する。例えば、電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法では、まず正極20a及び負極20bが製造される。正極20aの製造方法と負極20bの製造方法とは、主に電極活物質層22に含まれる電極活物質が異なる。ここでは、電極20の製造方法として、正極20a及び負極20bの製造方法をまとめて説明する。
【0046】
図2は、電池用電極製造装置1000の概略図である。例えば、電池用電極製造装置1000は、チャンバ100、搬送装置200、電極組成物供給装置300、枠体供給装置400及びプレス装置500を含む。
【0047】
また、
図2に示す通り、チャンバ100には、帯状のフィルム24Bを内部に導入するための開口部600が設けられる。フィルム24Bは、少なくとも基材フィルムを含む。基材フィルムは、例えば帯状の集電体であり、後にカットされて
図1の正極集電体層21a又は負極集電体層21bが形成される。フィルム24Bは、搬送用フィルムを含んでもよい。搬送用フィルムには、基材フィルムが載置される。
【0048】
チャンバ100は、内部を大気圧よりも減圧された状態に保持できる部屋である。チャンバ100の内部は、図示しない減圧ポンプにより大気圧よりも減圧される。なお、標準大気圧は、約1013hPa(約105Pa)である。
【0049】
例えば、チャンバ100の外部にロール24Rが配置され、ロール24Rから引き出されたフィルム24Bが、スリットを通してチャンバ100の内部に搬送される。或いは、ロール24Rからは搬送用フィルムが引き出され、搬送用フィルムに基材フィルムを載置した後、基材フィルムが載置された搬送用フィルムをチャンバ100の内部に搬送してもよい。フィルム24Bは、搬送方向Daに沿って所定の速度で搬送される。以下では、フィルム24Bが搬送される方向を下流側Da1、その反対方向を上流側Da2として説明する。なお、ロール24Rが配置されるチャンバ100の外部空間は、常圧であってもよいし、チャンバ100と異なるチャンバによって減圧されていてもよい。
【0050】
なお、
図2に示す通り、鉛直方向Dbにおける上側をDb1、鉛直方向Dbにおける下側をDb2として説明する。また、搬送方向Da及び鉛直方向Dbに対して直交する方向については幅方向Dcとして説明する。
【0051】
搬送装置200は、開口部600を通して、フィルム24Bをチャンバ100の内部に搬送する。即ち、搬送装置200は、フィルム24Bをチャンバ100に供給する。フィルム24Bに搬送用フィルムが含まれる場合、搬送装置200は、基材フィルムが載置される搬送用フィルムを供給することとなる。搬送装置200は、搬送用フィルム供給部の一例である。
【0052】
例えば、チャンバ100の外部において、搬送装置200は、2つのローラでフィルム24Bを挟み込みつつ当該ローラを回転させることで、フィルム24Bを搬送方向Daの下流側Da1に搬送する。これにより、搬送装置200は、開口部600を通してフィルム24Bをチャンバ100内に搬送する。また、チャンバ100の内部において、搬送装置200は、フィルム24Bを下側から支持するベルトコンベアにより、フィルム24Bを搬送方向Daの下流側Da1に搬送する。
【0053】
電極組成物供給装置300は、
図2に示す通り、チャンバ100内で搬送されるフィルム24B上に電極組成物22cを供給する。一例を挙げると、電極組成物供給装置300は、ホッパ及びシャッタから構成される。この場合、電極組成物供給装置300は、鉛直方向Dbの下側Db2に開口を有するホッパの内部に電極組成物22cを保持するとともに、ホッパの開口をシャッタで開閉することにより、所定の供給位置に対して所定量の電極組成物22cを供給することができる。電極組成物22cは、例えば、粉体状の活物質である。即ち、電極組成物供給装置300は、粉体状の活物質を基材フィルムの一方の面に塗布する。
【0054】
枠体供給装置400は、搬送されるフィルム24Bに対して枠体35を供給する。例えば、枠体供給装置400は、ロボットアームを有し、事前に製造された枠体35を、搬送されるフィルム24B上の所定の位置に配置する。或いは、枠体供給装置400は、フィルム24Bの上で枠体35を製造してもよい。一例を挙げると、フィルム24Bを基材とし、ディスペンサーやコーター等によってフィルム24B上に所定の材料を所定の形状に吐出又は塗布することで、フィルム24B上に枠体35を形成することができる。
【0055】
プレス装置500は、フィルム24Bに供給された電極組成物22cを圧縮する。例えば、プレス装置500は、
図2に示す通り、上部ローラ501及び下部ローラ502を有する。プレス装置500は、上部ローラ501及び下部ローラ502により、フィルム24Bに供給された電極組成物22cを挟み込んで圧縮する。即ち、プレス装置500は、電極組成物22cに対するロールプレスを実行する。
【0056】
プレス装置500が電極組成物22cを圧縮することにより、
図1の正極活物質層22a又は負極活物質層22bが形成される。即ち、電極組成物供給装置300及びプレス装置500は、粉体状の活物質を基材フィルムの一方の面に塗布して活物質層を形成する。電極組成物供給装置300及びプレス装置500は、電極形成部の一例である。
【0057】
プレス装置500による圧縮工程の後、
図1に示したセパレータ30が更に供給され、単セル10が作製される。セパレータ30の供給は、搬送方向Daに沿って搬送されるフィルム24B及び電極組成物22cに対して連続的に行なわれてもよいし、フィルム24Bや電極組成物22cを所定単位に分割した後、枚葉に行なってもよい。
【0058】
図2においては、電極組成物供給装置300による電極組成物22cの供給後に、枠体供給装置400による枠体35の供給が行なわれる例を説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、枠体供給装置400による枠体35の供給が行なわれた後、枠体35の内部の位置に対して、電極組成物供給装置300による電極組成物22cの供給が行なわれてもよい。
【0059】
次に、開口部600の詳細について、図を参照しながら説明する。例えば、開口部600には、
図3A及び
図3Bに示す部材610が設けられる。部材610は、搬送方向Daに貫通する孔を有し、スリット部を形成する。なお、
図3Bにおいては図示を省略するが、フィルム24Bは、当該スリット部を通してチャンバ100内に導入される。
【0060】
また、
図3Bに示す通り、部材610におけるスリット部の内壁には、フィン611、フィン612、フィン613、フィン614及びフィン615が設けられる。即ち、電池用電極製造装置1000は、フィルム24Bをチャンバ内に導入する部分にフィン611~615を有する。
【0061】
フィン611~615は、開口部600を介してチャンバ100内に流れる気流を整流する。より具体的には、フィン611~615は、部材610におけるスリット部の幅方向Dcの気流を整流する。フィン611~615は、例えば
図3Bに示す通り、等間隔に配置される。フィン611~615は、整流部の一例である。
【0062】
開口部600の他の例について、
図4A及び
図4Bを用いて説明する。
図4Aに示す場合、部材621及び部材622によってスリット部が形成されている。フィルム24Bは、当該スリット部を通してチャンバ100内に導入される。
【0063】
図4Aに示すように、部材621は、スリット部における一方の内面に設けられた曲面状の補強体である。フィルム24Bは、ローラ711及びローラ712によって、下側Db2への力が付加され、部材621に対して押し当てられる。即ち、部材621は、部材621における曲面にフィルム24Bが押し当てられるように構成される。これにより、スリット部を通る気流が発生するとしても、スリット部においてフィルム24Bががたつくことは回避される。
【0064】
更に、
図4Aに示す通り、部材622の下流側Da1の端部には、フィン623が設けられる。即ち、フィン623は、スリット部における部材621とは異なる側の内面であって、搬送方向Daにおける奥側の端部に設けられる。フィン623は、例えば
図4Bに示す通り、等間隔に配置されたフィン623a、フィン623b、フィン623c及びフィン623dから構成される。フィン623は、部材621及び部材622から構成されるスリット部における幅方向Dcの気流を整流する。フィン623は、整流部の一例である。
【0065】
開口部600の他の例について、
図5A及び
図5Bを用いて説明する。
図5Aに示す場合、部材631及び部材632によってスリット部が形成されている。フィルム24Bは、当該スリット部を通してチャンバ100内に導入される。
【0066】
図5Aに示すように、部材631は、スリット部における一方の内面に設けられた曲面状の補強体である。フィルム24Bは、ローラ721及びローラ722によって、下側Db2への力が付加され、部材631に対して押し当てられる。即ち、部材631は、部材631における曲面にフィルム24Bが押し当てられるように構成される。これにより、スリット部を通る気流が発生するとしても、スリット部においてフィルム24Bががたつくことは回避される。
【0067】
更に、
図5Aに示す通り、部材632から下流側Da1にせり出した位置には、フィン633が設けられる。即ち、フィン633は、スリット部における部材631とは異なる側の内面から、搬送方向Daにおける奥側にせり出した位置に設けられる。フィン633は、例えば
図5Bに示す通り、等間隔に配置されたフィン633a、フィン633b、フィン633c及びフィン633dから構成される。フィン633は、部材631及び部材632から構成されるスリット部における幅方向Dcの気流を整流する。フィン633は、整流部の一例である。
【0068】
上述した例では、開口部600にスリット部が設けられる場合について説明した。ここで、開口部600には、スリット部に加えて、ボックス部が含まれてもよい。ボックス部について、
図6を用いて説明する。
【0069】
図6に示す場合、開口部600には、上述した部材610に加えて、チャンバ640と部材650とが含まれる。部材610は、上述した通り、フィルム24Bが通過するためのスリット部を形成する。なお、
図6に示す場合、フィルム24Bは、部材610により形成されるスリット部を通して、チャンバ640内に導入される。チャンバ640は、ボックス部の一例であり、内部が大気圧よりも減圧された状態に保持される。部材650は、部材610と同様、フィルム24Bが通過するためのスリット部を形成する。フィルム24Bは、部材650により形成されるスリット部を通して、チャンバ100内に導入される。なお、
図6では図示を省略するが、チャンバ100内には、電極組成物供給装置300やプレス装置500が配置される。
【0070】
部材650に対しては、
図3Bに示したフィン611~615と同様、整流部が設けられる。或いは、部材650は、
図4A及び
図4Bに示した部材621及び部材622と同様に構成され、フィン623と同様の整流部が設けられてもよい。或いは、部材650は、
図5A及び
図5Bに示した部材631及び部材632と同様に構成され、フィン633と同様の整流部が設けられてもよい。
【0071】
更に、チャンバ640に対しては、フィン641及びフィン642が設けられる。フィン641及びフィン642は、例えば
図3Bに示したフィン611~615と同様、等間隔に配置された複数のフィンから構成される。フィン641及びフィン642は、ボックス部における幅方向Dcの気流を整流する。フィン641及びフィン642は、整流部の一例である。
【0072】
なお、
図6では、スリット部及びボックス部の内壁に整流部を備えるものとして説明したが、スリット部及びボックス部のいずれか一方にのみ、整流部を設けることとしてもよい。また、部材610により形成されるスリット部、及び、部材650により形成されるスリット部の双方に整流部を備えるものとして説明したが、いずれか一方のスリット部にのみ、整流部を設けることとしてもよい。
【0073】
上述した実施形態では、フィルム24Bに含まれる基材フィルムが、帯状の集電体であるものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、フィルム24Bは、帯状の集電体に代えて、帯状のセパレータシートを基材フィルムとして含んでもよい。なお、帯状のセパレータシートは、後にトリミングすることで、
図1に示したセパレータ30を形成することができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。更に、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
10:単セル
20:電極
20a:正極
20b:負極
21:集電体
21a:正極集電体層
21b:負極集電体層
21B:帯状の集電体
21R:集電体ロール
22:電極活物質層
22a:正極活物質層
22b:負極活物質層
22c:電極組成物
30:セパレータ
35:枠体
100,640:チャンバ
200:搬送装置
300:電極組成物供給装置
400:枠体供給装置
500:プレス装置
501:上部ローラ
502:下部ローラ
600:開口部
610,621,622,631,632,650:部材
611,612,613,614,615,623,623a,623b,623c,623d,633,633a,633b,633c,633d,641,642:フィン
711,712,721,722:ローラ
1000:電池用電極製造装置
Da:搬送方向
Da1:下流側
Da2:上流側
Db:鉛直方向
Db1:上側
Db2:下側
Dc:幅方向