(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132756
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】電解水生成装置および電解水生成方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20230914BHJP
【FI】
C02F1/461 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038272
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】522021136
【氏名又は名称】有限会社アクア環境テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100192326
【弁理士】
【氏名又は名称】水庭 浩吉
(72)【発明者】
【氏名】美和 清二
(72)【発明者】
【氏名】関口 信藏
(72)【発明者】
【氏名】美和 成禎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 政夫
【テーマコード(参考)】
4D061
【Fターム(参考)】
4D061DA03
4D061DA04
4D061DB07
4D061DB09
4D061EA02
4D061EB02
4D061EB04
4D061EB14
4D061EB19
4D061EB30
4D061EB31
4D061EB37
4D061EB38
4D061EB39
4D061ED12
4D061ED20
4D061GA12
4D061GA21
4D061GA22
4D061GB30
4D061GC01
4D061GC12
4D061GC14
4D061GC15
4D061GC18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】利便性の高い、電解水の生成装置および生成方法を提供する。
【解決手段】一対の電解電極を配設した無隔膜電解槽3を着脱自在に連結する連結部と、複数種類の電解水の中から生成する電解水を選定し、一対の電解電極33に電解電源を供給して無隔膜電解槽内に予め貯留された被電解水を電解する電解時間を、選定した電解水の実測電解時間に制御する電解制御部49とを有する電解水生成装置4である。例えば、複数種類の電解水は、有効塩素濃度が各々異なる微酸性次亜塩素酸水を含む。また、例えば、複数種類の電解水は、pH値が各々異なる弱酸性次亜塩素酸水、微酸性次亜塩素酸水および電解次亜水のうちの少なくとも2つを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電解電極を配設した無隔膜電解槽を着脱自在に連結する連結部と、
複数種類の電解水の中から生成する電解水を選定し、前記一対の電解電極に電解電源を供給して前記無隔膜電解槽内に予め貯留された被電解水を電解する電解時間を、前記選定した電解水の実測電解時間に制御する電解制御部と
を有する電解水生成装置。
【請求項2】
前記複数種類の電解水は、有効塩素濃度が各々異なる微酸性次亜塩素酸水を含む
請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項3】
前記複数種類の電解水は、pH値が各々異なる弱酸性次亜塩素酸水、微酸性次亜塩素酸水および電解次亜水のうちの少なくとも2つを含む
請求項1または2に記載の電解水生成装置。
【請求項4】
前記無隔膜電解槽は、開口部を有するボトル状の本体部と、前記開口部を閉塞するボトルキャップ状の蓋部とを有し、
前記一対の電解電極は、前記蓋部に配設され、
前記連結部は、箱形状の筐体の上面部に前記本体部が立設する状態で前記蓋部を嵌合する嵌合形状を有している
請求項1から3のうちの何れかに記載の電解水生成装置。
【請求項5】
前記電解制御部は、前記一対の電解電極間に流れる電流値を取得し、前記取得した電流値により前記被電解水の塩濃度を判定し、前記判定した塩濃度に応じて生成する電解水を自動的に選定する
請求項1から4のうちの何れかに記載の電解水生成装置。
【請求項6】
一対の電解電極を配設した無隔膜電解槽を着脱自在に電解水生成装置に連結させ、
複数種類の電解水の中から生成する電解水を選定し、前記一対の電解電極に電解電源を供給して前記無隔膜電解槽内に予め貯留された被電解水を電解する電解時間を、前記選定した電解水の実測電解時間に制御する処理を前記電解水生成装置に行わせる
電解水生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水生成装置および電解水生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナ禍の影響を受けて安心で清潔な環境作りのために様々な場所で「ニューノーマル(新しい生活様式)」が強く求められている。例えば、日常的な作業として殺菌、消毒等が頻繁に行われるようになっている。殺菌、消毒等に有効なものとして次亜塩素酸水などの電解水が知られている。例えば、下記の特許文献1には、電解槽内に予め貯留された被電解水を電解して電解水を生成するバッチ式の生成装置について開示されている。バッチ式を採用することで被電解水を生成する装置が不要となるため、流動する被電解水を電解する連続式を採用した場合と比較して生成装置の小型化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、昨今、電解水生成装置の需要が高まっており、より利便性の高い電解水生成装置が望まれている。例えば、従来の電解水生成装置では、需要者のニーズに応じたpH値および有効塩素濃度の電解水を安定的に生成することが困難であった。
【0005】
本発明は、利便性の高い電解水の生成を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
一対の電解電極を配設した無隔膜電解槽を着脱自在に連結する連結部と、
複数種類の電解水の中から生成する電解水を選定し、前記一対の電解電極に電解電源を供給して前記無隔膜電解槽内に予め貯留された被電解水を電解する電解時間を、前記選定した電解水の実測電解時間に制御する電解制御部と
を有する電解水生成装置である。
【0007】
本発明は、
一対の電解電極を配設した無隔膜電解槽を着脱自在に電解水生成装置に連結させ、
複数種類の電解水の中から生成する電解水を選定し、前記一対の電解電極に電解電源を供給して前記無隔膜電解槽内に予め貯留された被電解水を電解する電解時間を、前記選定した電解水の実測電解時間に制御する処理を前記電解水生成装置に行わせる
電解水生成方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、利便性の高い電解水の生成を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】有効塩素残存率とpH値との関係を表すグラフである。
【
図2】電解水生成システムの構成例を示す図である。
【
図3】電解水生成装置に電解槽を連結させた状態の構成例を示す断面図である。
【
図5】コンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態等について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態等は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容がこれらの実施形態等に限定されるものではない。また、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、または、図示簡略化のため誇張していることがある。さらに、図示が煩雑となることを防止するために参照符号の一部のみを図示する場合や、構成の一部を省略して図示する場合もある。なお、説明は、以下の順に行う。
1.本発明の基本的概念
2.第1実施形態
3.第2実施形態
4.変形例
【0011】
<1.本発明の基本的概念>
消毒、殺菌、減菌、酸化作用、食品添加物、消臭、除菌等、多くの用途で電解水が使用されている。電解水は、pH値によって性状が変わり、それによって用途も異なる。
図1に示すように、電解水は、酸性側から順にpH値に応じて、「強酸性次亜塩素酸水(強酸性電解水)」、「弱酸性次亜塩素酸水(弱酸性電解水)」、「微酸性次亜塩素酸水(微酸性電解水)」、「混合次亜水(中性電解水)」、「電解次亜水(弱アルカリ性電解水)」、「次亜塩素酸ナトリウム」に大別される。特に、次亜塩素酸水(酸性電解水)は、不安定な物質で「温度」や「紫外線」に弱く、経時変化により自然分解して有効塩素濃度が低下するため、長期保存には注意が必要である。そこで、以下の実施形態等で説明するように、本発明では、電解水を長期保存せずに必要な時に生成し、必要な有効塩素濃度を安定的に確保して目的の用途に使用することができるようにする。
【0012】
<2.第1実施形態>
[2-1.システム構成例]
図2は、本発明の第1実施形態に係る電解水生成システム(電解水生成システム1)の構成例を示す。電解水生成システム1は、3種類の電解水を生成可能なものである。本実施形態では、有効塩素濃度が各々異なる3種類(例えば、100mg/L、250mg/L、400mg/L)の微酸性次亜塩素酸水(pH5.0以上、6.5以下)を生成する。なお、微酸性次亜塩素酸水としては、pH6.0以上、6.5以下の中性域のものを生成することが好ましい。これにより、殺菌効果を高くすることができ、肌や衣服に散布しても安全性が高いものとすることができる。
【0013】
電解水生成システム1は、原液容器2、電解槽3および電解水生成装置4を有している。原液容器2は、被電解水生成用の原液が収容されている小型(電解槽3と比較して小型)の容器である。例えば、図示するようなチューブ容器を原液容器2として用いることができる。原液容器2は、例えば、原液収容状態で製造販売され、使用者は、原液容器2を販売元から購入するなどして入手する。原液容器2は、収容されている原液の量、塩濃度(塩水濃度)およびpH値が、各々所定値となるように製造されたものである。
【0014】
本実施形態では、原液容器2に被電解水生成用の原液として濃縮酸性塩水が充填されている。この濃縮酸性塩水は、例えば、塩水(塩化ナトリウム水溶液)に、pH調整用の所定量の塩酸(HCl)を混合して生成されたものである。塩水の生成には不純物が含まれていない精製塩を用いることが好ましい。濃縮酸性塩水は、例えば、生成電解水の目標有効塩素濃度に必要となる食塩量の食塩水に、pH値が目的の範囲に入るように弱塩酸を加えて調整したものである。
【0015】
電解槽3内に貯留される被電解水は、例えば、上述したように事前に調合溶解された原液容器2内の原液を精製水または水道水で所定量に希釈して生成する。これにより、被電解水の量、塩濃度およびpH値が常に同条件となる被電解水(目的の量、塩濃度およびpH値の被電解水)を生成することができる。電解水生成システム1では、使用する原液容器2の個数を変更することで、生成される電解水の有効塩素濃度を所定値に調整可能となっている。例えば、1個の原液容器2の原液を希釈した被電解水を電解して有効塩素濃度100mg/Lの微酸性次亜塩素酸水を生成可能となっている。同様に、2個の原液容器2の原液を用いて有効塩素濃度250mg/Lの微酸性次亜塩素酸水を生成可能となっており、3個の原液容器2の原液を用いて有効塩素濃度400mg/Lの微酸性次亜塩素酸水を生成可能となっている。
【0016】
電解槽3は、生成の度に被電解水の入れ替えを行うバッチ式の電解に使用可能な無隔膜電解槽(電解槽内に隔膜のない一室型の電解槽)である。電解槽3は、電解水生成装置4に着脱自在に連結されるものであり、本体部31、蓋部32および一対の電解電極33を有している。本体部31は、開口部から被電解水を注入して貯留可能に構成されている。本体部31は、具体的には、上部(テーブル等に載置した際の上側部分)に開口部による注ぎ口を有するボトル状に構成されている。本体部31は、上部とは反対側の下部に、開閉自在に構成されているガス抜き用の開閉弁311を有している。
【0017】
蓋部32は、本体部31の開口部を閉塞するものである。蓋部32は、具体的には、図示するように、ボトルキャップ状に構成されている。なお、本体部31および蓋部32の形状は、各々、図示したものに限らず、他の形状を採用してもよい。
【0018】
一対の電解電極33(電極331および電極332)は、電解槽3内の被電解水の電解に使用する電極であり、蓋部32に配設されている。電極331および電極332は、例えば、各々チタン(Ti)を基材とし、これに白金(Pt)を被覆して形成されたものである。一対の電解電極33は、例えば、図示するように、各々断面円形の棒状に形成され、蓋部32に嵌挿され、一端部が接続端子として使用可能となっている。このように、一対の電解電極33およびその設置を単純な構造とすることで電解槽3の製造を容易とし、製造誤差を小さくすることができる。これにより、電解槽3における一対の電解電極33の構造(材質、形状、面積等)が常に同じとなり、一対の電解電極33に起因する電解条件を常に同じとすることができる。また、一対の電解電極33を蓋部32に設けることで、蓋部32を交換するだけで一対の電解電極33を容易に交換することができる。
【0019】
なお、一対の電解電極33の構造は、これに限らず、電解環境に応じて適切に設定されているものであればよい。例えば、上述した基材は、チタン合金、白金等であってもよいし、基材を被覆する材料は、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)等の他の白金系金属であってもよい。また、電極形状は、棒状に限らず、板状などであってもよい。さらに、電極331および電極332の一端部を接続端子とせずに、電極331および電極332の一端部に各々接続されている他の導電体を接続端子とする構成であってもよい。
【0020】
[2-2.電解水生成装置の構成例]
電解水生成装置4は、電解槽3内に予め貯留された被電解水を電解して電解水を生成するものである。つまり、電解水生成装置4は、バッチ式の電解により電解水を生成する。電解水生成装置4は、筐体41、連結部42、操作部43、通知部44および電源端子部45を有している。
【0021】
筐体41は、装置外観を形成するものであり、図示するように、例えば、テーブルなどの載置面に載置可能な底面部を有する扁平の箱形状を有している。これにより、電解水生成装置4を省スペースで卓上設置することができる。連結部42は、電解槽3を連結する構造を有している。連結部42は、例えば、図示するように、筐体41の上面部に電解槽3の蓋部32が嵌合する嵌合形状を有している。つまり、電解槽3は、本体部31が立設する状態(蓋部32側が下側に位置する向き)で電解水生成装置4に連結される。このように電解槽3が連結される構造とすることで効率的に電解槽3の設置が可能となる。
【0022】
操作部43は、使用者が電解水生成装置4の操作に用いるものである。操作部43は、例えば、複数のスイッチ群による操作ユニットで構成されている。通知部44は、電解水生成装置4の状態を使用者に通知するものである。通知部44は、例えば、LED(Light Emitting Diode)などで構成され、使用者に視覚的な通知を行う。なお、ブザーなどにより聴覚的な通知を行うものとしてもよい。電源端子部45は、電解水生成装置4への外部電源入力用の接続端子で構成されている。この外部電源は、例えば、家庭用電源のAC100Vを変換したDC12~24Vである。
【0023】
ここで、電解水生成装置4への電解槽3の連結例について詳しく説明する。
図3は、電解水生成装置4に電解槽3を連結させた状態の構成例を示す断面図である。電解水生成装置4の連結部42の下部には、電極331と接続される接続端子46と、電極332と接続される接続端子47とが設けられている。接続端子46,47は、例えば、図示するように、各々ばね状導電体で構成することができる。これにより、電極331,332との接続状態を、ばね状導電体の弾性力によって、それぞれ良好に保つことができる。なお、電極331,332への接続構造は、これ以外であっても構わない。
【0024】
次に、
図4を参照して、電解水生成装置4の構成例について詳細に説明する。操作部43は、例えば、図示するように、使用者が操作可能な5つのスイッチ(スイッチ431~435)を有している。なお、操作部43は、これに限らず、使用者が操作可能な構成であればよく、例えば、タッチパネル、遠隔操作、音声操作等により操作するものであってもよい。
【0025】
スイッチ431~433は、使用者に手動で電解槽3内の被電解水に応じた生成電解水(生成水A,生成水Bまたは生成水C)を選択させる選択スイッチである。このスイッチ431~433は、電解水生成装置4による電解時間をタイマ設定するものである。本実施形態では、操作部43は、生成電解水の有効塩素濃度を複数候補の中から選択的に設定可能に構成されている。例えば、生成水Aは、有効塩素濃度100mg/Lの微酸性次亜塩素酸水であり、生成水Bは、有効塩素濃度250mg/Lの微酸性次亜塩素酸水であり、生成水Cは、有効塩素濃度400mg/Lの微酸性次亜塩素酸水である。
【0026】
スイッチ434は、生成電解水の選定の自動設定をオンまたはオフに切り替える自動設定スイッチである。スイッチ435は、電解開始を指示する電解開始スイッチである。操作部43は、電解制御部49と接続されており、使用者の操作に応じた操作情報が操作部43から電解制御部49に供給される。
【0027】
電解電源部48は、例えば、電源回路で構成されており、電源端子部45と接続端子46,47とに接続されている。電解電源部48は、接続端子46,47を介して一対の電解電極33に電解電源(例えば、DC12V)を供給する。電解電源部48は、この電解電源の電解電圧および電解電流を調整可能に構成されている。なお、電解電源部48は、例えば、電解水生成装置4内でAC/DC変換するものであってもよいし、バッテリなどによる内部電源を使用するものなどであってもよい。電解電源部48は、電解制御部49と接続されている。
【0028】
電解制御部49は、例えば、マイクロコンピュータなどのコンピュータで構成されており、操作部43から供給される操作情報等に基づいて電解電源部48を制御する。つまり、電解制御部49は、一対の電解電極33への電解電源の供給を制御する。電解制御部49は、機能ブロックとして電解選定部491、時間情報取得部492および電解電源制御部493を有している。電解選定部491は、操作部43から供給される操作情報等に応じて生成する電解水の種類を生成水A,B,Cの中から選定する。
【0029】
例えば、操作情報により、ユーザが手動で生成水Bを選択して電解開始を指示したと判定された場合には、電解選定部491は、生成する電解水として生成水Bを選定する。また、例えば、操作情報により、ユーザが自動設定で電解開始を指示したと判定された場合には、電解選定部491は、生成する電解水を生成水A,B,Cの中から自動的に選定する。例えば、この選定は、以下のようにして行うことができる。
【0030】
一対の電解電極33間に流れる電流値は、電解槽3内の被電解水の塩濃度に応じて変化する。そこで、電解選定部491は、自動設定で電解開始が指示された場合に、一対の電解電極33間に流れる電流値を取得し、取得した電流値により被電解水の塩濃度を判定し、判定した塩濃度に応じて生成する電解水を自動的に選定する。例えば、電流値が有効塩素濃度100mg/Lの範囲にあるか否かを判定し、範囲内にある場合には、生成する電解水を有効塩素濃度100mg/Lの電解水に選定する。範囲内にない場合には、電流値が有効塩素濃度250mg/Lの範囲にあるか否かを判定し、範囲内にある場合には、生成する電解水を有効塩素濃度250mg/Lの電解水に選定する。範囲内にない場合には、電流値が有効塩素濃度400mg/Lの範囲にあるか否かを判定し、範囲内にある場合には、生成する電解水を有効塩素濃度400mg/Lの電解水に選定する。なお、各判定で範囲内にないと判定された場合には、所定時間間隔で所定回数判定を行ってもよい。この電流値は、例えば、電解電源部48から取得することができる。なお、この電流値の取得は、これに限らず、例えば、一対の電解電極33間の電流値を計測する電流計(図示略)を設置し、設置した電流計から直接取得してもよい。
【0031】
この一対の電解電極33間を流れる電流値は、手動設定での使用者の生成電解水の選択の正誤判定にも用いられている。例えば、電解槽3内の被電解水が生成水Aの生成用であるにも関わらず、使用者が生成水Bを選択していたとする。この場合、電解制御部49は、例えば、通知部44を制御して設定エラーである旨を使用者に通知するようにする。これにより、使用者の手動設定による誤りをなくすことができる。また、例えば、一対の電解電極33間を流れる電流値が異常な値である場合は本体をリセットし、電源をオフにしてもよい。これにより、安全性を高めることができる。
【0032】
時間情報取得部492は、電解選定部491で選定された電解水が生成される実測電解時間を記憶部(ここでは図示略)から読み出して取得する。この記憶部には、電解水A,B,Cが各々生成される実測電解時間(例えば、生成水Aは○秒、生成水Bは△秒、生成水Cは□秒など)が予め記憶されており、時間情報取得部492は、電解選定部491が選定した生成電解水の実測電解時間を読み出して取得する。なお、実測電解時間は、電解水生成装置4(例えば、同機種などで電解条件が全て同じものであればよい)を用いて各電解水が得られる電解時間(電解開始から終了までの時間)を予め実際に計測して(例えば、電解試験を繰り返して)求めたものである。例えば、この実測時の電解は、定電圧および定電流で行われる。なお、生成水A,B,Cの各々に対して個別タイマが予め設定されている構成であってもよい。
【0033】
電解電源制御部493は、電解電源部48を以下のように制御する。電解電源制御部493は、一対の電解電極33に電解電源を供給して電解槽3内に予め貯留された被電解水を電解する電解時間を、電解選定部491により選定された電解水の実測電解時間、つまり、時間情報取得部492が取得した実測電解時間に制御するとともに、その被電解水を電解する電解電圧および電解電流の値を、各々、時間情報取得部492が取得した実測電解時間の測定時と同じに制御する。電解電源制御部493は、例えば、この電解電圧および電解電流を実測時と同じ定電圧および定電流に制御する。
【0034】
生成電解水の安定した有効塩素濃度を確保するためには、被電解水の量、塩濃度およびpH値と、被電解水を電解する電解電圧・電流の値および電解時間と、被電解水の温度等とを一定に保つことが重要である。これにより、生成電解水のpH値および有効塩素濃度の値を常に再現することができる。例えば、電解電圧・電流の値は、被電解水の温度によって影響を受けるが電解水生成装置4では、電解電圧および電解電流の値を含め、これら全てを実測時と同じ条件としているため、電解後の電解水のpH値および有効塩素濃度の値を常に再現することができる。例えば、電流値一定制御を行うことで、過剰な電解電流を防止でき、電解時や外部からの被電解水の温度変化に影響されることを防止することができる。また、電解時間を制御するだけで3種類の有効塩素濃度の異なる電解水を、各々、簡単かつ安定的に生成することができる。
【0035】
[2-3.コンピュータのハードウェア構成例]
図5は、上述した電解制御部49を構成し得るコンピュータ(コンピュータ10)のハードウェア構成例を示すブロック図である。コンピュータ10は、バスにより相互接続されている制御部101、記憶部102、入力部103、計時部104および出力部105を有している。
【0036】
制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などで構成されている。ROMには、CPUにより読み込まれ動作されるプログラム等が記憶されている。RAMは、CPUのワークメモリとして用いられる。CPUは、ROMに記憶されたプログラムに従い、様々な処理を実行してコマンドの発行を行うことによってコンピュータ10全体の制御を行う。
【0037】
記憶部102は、例えば、SSD(Solid State Drive)、半導体メモリ等により構成された記憶媒体であり、プログラム(例えば、電解制御部49に上述した制御を実行させる電解制御用のプログラム)や該プログラム用データ(例えば、上述した各実測電解時間)等の各種情報を記憶するものである。
【0038】
入力部103は、コンピュータ10に対して各種情報を入力するものである。入力部103により情報が入力されると、制御部101は、その入力情報に対応した各種処理を行う。計時部104は、各種時間(例えば、上述した被電解水の電解開始からの経過時間)を計時するものである。計時部104は、例えば、タイマを含むタイマ回路などで構成されている。出力部105は、コンピュータ10から各種情報を出力するものである。
【0039】
制御部101は、例えば、記憶部102に記憶されているプログラム(例えば、上述した電解制御用のプログラム)を読み出し実行することで各種処理を行う。なお、プログラムおよび各種情報は、記憶部102以外の記憶部に記憶されているものであってもよい。例えば、プログラムおよび各種情報は、コンピュータ10に対して着脱自在な記憶媒体や、通信部を介して取得可能なネットワーク上に記憶されているものなどであってもよい。
【0040】
[2-4.電解水生成方法のフロー例]
図5は、本実施形態に係る電解水生成方法のフロー例を示す。本実施形態では、電解水を生成するにあたり、先ず、使用者が被電解水を生成する(ステップS10)。具体的には、使用者は、電解水生成装置4で電解生成する電解水の種類を決定し、それに合わせて被電解水を生成する。例えば、生成水Bを生成する場合、2個の原液容器2の原液を電解槽3の本体部31内に入れ、精製水または水道水で所定量に希釈して被電解水を生成し、本体部31の開口部を蓋部32で閉塞する。このとき、電解槽3の開閉弁311(
図2を参照)は、閉状態とする。
【0041】
次に、使用者が電解水生成装置4に電解槽3を連結する(ステップS20)。具体的には、
図3に示すように、電解水生成装置4の連結部42に電解槽3の蓋部32を嵌合させる。そして、電解槽3の開閉弁311を開状態にする。これにより、電解水生成装置4による電解の準備が完了する。
【0042】
準備完了後に、使用者が電解水生成装置4の操作部43(
図4等を参照)を操作すると、電解水生成装置4は、操作に応じて生成する電解水を選定する(ステップS30)。例えば、使用者が手動で生成水Bを選択し電解開始を指示した場合、電解水生成装置4は、生成電解水として生成水Bを選定する。
【0043】
次に、電解水生成装置4は、ステップS30で選定した電解水が生成される実測電解時間を記憶部102等から読み出して取得する(ステップS40)。そして、電解水生成装置4は、この取得した実測電解時間の実測時と同条件で電解を開始する(ステップS50)。具体的には、被電解水を電解する電解電圧および電解電流の値を、この取得した実測電解時間の測定時と同じに制御する。
【0044】
そして、電解水生成装置4は、被電解水の電解時間が、この取得した実測電解時間を経過したか否かを判定し(ステップS60)、経過していない(No)と判定された場合は電解を継続し、経過した(Yes)と判定された場合は電解を終了する。なお、電解終了時に通知部44により使用者に通知してもよい。電解終了後は、電解槽3の開閉弁311を閉状態にする。
【0045】
以上により、電解水生成システム1による電解水の生成が完了する。生成完了後の電解水は、例えば、詰替用ボトルなどに入れ替えて使用する。例えば、詰替用ボトルをスプレー容器とすることで、電解水を吹きかけて使用することができる。なお、詰替用ボトルなどに入れ替えず、電解槽3に入れたまま使用してもよい。
【0046】
[2-5.実施例]
本願発明者は、以下のように電解水の生成を試みた。まず、pH値が6.0以上、6.5以下で、有効塩素濃度が100mg/L、250mg/L、400mg/Lの次亜塩素酸水(微酸性次亜塩素酸水)の安定的な生成を目標とした。
【0047】
なお、有効塩素濃度は、以下のように選定した。次亜塩素酸水の有効塩素濃度は、例えば、以下のように推奨されている。
・新型コロナウィルスが不活化する拭き掃除などへの使用:80mg/L
・キッチン周り除菌などへの使用:200mg/L
・ノロウィルス対応およびトイレ除菌などへの使用:400mg/L
【0048】
そこで、本実施例では、日常の用途別に自然分解での有効塩素濃度の低下を想定して、100mg/L、250mg/L、400mg/Lの3種類の有効塩素濃度の次亜塩素酸水の生成を試みた。
【0049】
被電解水の塩濃度については、0.1%~3.0%の範囲で試験を行った。最初に酸を加えず塩水のみで電解生成を行った。当然のことながら塩濃度が高いほど生成された次亜塩素酸水の有効塩素濃度が高い。しかしながら、同時にpH値も高くなり、電解時間によるが、多量(例えば、数千ppm)の次亜塩素酸ナトリウムを生成する。
【0050】
一方、日常生活での使用を考慮して、生成される次亜塩素酸水について、以下の点に留意した。
(1)噴霧して乾燥後、食塩の結晶を限りなく少なくする。
(2)口内除菌に使用するときに塩辛さを抑える。
(3)次亜塩素酸水として日常使う濃度を用途に応じたもの(上述した100mg/L、
250mg/L、450mg/L)に限定する。
【0051】
これらのことから、被電解水は、生成される次亜塩素酸水のpH値および有効塩素濃度が上述した目標を満たし得る最小限の塩濃度であることが望ましい。試験の結果、最小有効塩素濃度100mg/Lの場合、0.2%の塩濃度で生成可能であることが分かった。
【0052】
また、生成される次亜塩素酸水のpH値の調整は、以下のように行った。まず、塩水のみで電解生成した次亜塩素酸水に塩酸を滴定して、pH6.5以下になる量を決定した。次に、その塩酸量を予め塩水に注入して電解生成した次亜塩素酸水のpH値がpH6.0以上、6.5以下で有効塩素濃度が100mg/L以上を再現できる酸性塩水の濃度(塩濃度および塩酸濃度)を決めた。そして、精製水または水道水で希釈した際に、その濃度の酸性塩水になる量の食塩および塩酸を少量の精製水に溶かして作った濃縮酸性塩水を原液容器2に規定量、充填した。
【0053】
そして、その原液容器2の個数を、1個で有効塩素濃度100mg/L以上、2個で250mg/L以上、3個で400mg/L以上の微酸性次亜塩素酸水が生成される電解時間を割り出した。
【0054】
なお、電解時間については、複数の電解水生成装置4を用い、以下の条件で上述したように被電解水を生成することで、各々の被電解水の量、塩濃度およびpH値を固定するとともに、各装置とも同じ形状の電極で電解電圧および電解電流の値を固定して電解を行い、実測することで決定した。つまり、電解時間以外の電解条件を同じにして電解試験を繰り返し行った。なお、1回の電解(ワンバッチ)で生成される微酸性次亜塩素酸水の量は、900mLとした。
【0055】
(1)原液
・塩水と塩酸の混合水
・量30mL
(2)被電解水
・原液を水道水で希釈したもの
・量:900mL
・pH値:2.5
・塩濃度:0.4%
【0056】
表1は、3つの電解水生成装置4(装置X,Y,Z)で生成した結果を表している。
【0057】
【0058】
結果、電解時間を適切に設定することで、pH値および有効塩素濃度が各々目標を満たし得ることが分かった。なお、原液の量を15mLとし、被電解水の量を450mLとし、1回の電解で生成される微酸性次亜塩素酸水の量を450mLとした場合も同様の結果が得られた。したがって、家庭用、業務用などの使用用途に応じて生成される電解水の量を変えることができる。
【0059】
[2-6.一実施形態により得られる効果]
以上、説明した本実施形態によれば、電解水生成装置4は、バッチ式の電解を行うことで、装置の小型化を図ることができるとともに、被電解水の量、塩濃度およびpH値を常に同じにすることができる。また、電解水生成装置4は、電解槽3内の被電解水を電解する電解時間を、生成する電解水の実測電解時間に制御するとともに、電解槽3内の被電解水を電解する電解電圧および電解電流の値を、各々、生成する電解水の実測電解時間の測定時と同じに制御する。これにより、電解時間を適切に設定するだけで、需要者のニーズに応じた有効塩素濃度の電解水を安定的に生成することができる。
【0060】
<3.第2実施形態>
本実施形態の電解水生成システムは、pH値が各々異なる複数種類の電解水を生成するものである。なお、本実施形態に係る電解水生成システムの基本的な構成は、第1実施形態の電解水生成システム1と同様であるため、ここでは、第1実施形態で説明に用いた図面を参照し、相違点についてのみ説明する。
【0061】
本実施形態では、pH値の各々異なる3種類の電解水を生成する。3種類の電解水は、例えば、弱酸性次亜塩素酸水(pH2.7以上、5.0以下)、微酸性次亜塩素酸水(pH5.0以上、6.5以下)および電解次亜水(pH8.0以上、9.0以下)である。
【0062】
弱酸性次亜塩素酸水および微酸性次亜塩素酸水は、第1実施形態で説明した濃縮酸性塩水を原液としてそのまま使用することができる。一方、電解次亜水は、原液として高純度の濃縮塩水(塩化ナトリウム水溶液)を使用する。つまり、本実施形態では、
図2に示す原液容器2は、濃縮酸性塩水が充填されているものと、濃縮塩水が充填されているものの2種類を有しており、生成する電解水に応じて使い分けて使用する。なお、原液を水で希釈することに替えてタブレット状、粉末状またはゲル状の被希釈体を水で溶かすことなどにより被電解水を生成するようにしてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、
図4中のスイッチ431~433で使用者に選択させる生成水(生成水A~C)は、それぞれ、弱酸性次亜塩素酸水、微酸性次亜塩素酸水、電解次亜水となっている。電解選定部491は、操作部43から供給される操作情報等に応じてpH値が各々異なる3種類の電解水(例えば、弱酸性次亜塩素酸水、微酸性次亜塩素酸水、電解次亜水)の中から生成する電解水を選定する。
【0064】
そして、電解制御部49の時間情報取得部492は、電解選定部491で選定された電解水が生成される実測電解時間を記憶部102等から読み出して取得する。また、電解電源制御部493は、第1実施形態と同様に、一対の電解電極33に電解電源を供給して電解槽3内に予め貯留された被電解水を電解する電解時間を、時間情報取得部492が取得した実測電解時間に制御するとともに、その被電解水を電解する電解電圧および電解電流の値を、各々、時間情報取得部492が取得した実測電解時間の測定時と同じに制御する。
【0065】
本願発明者は、上述した生成水Aを、pH値が4.0以上、5.0以下で、有効塩素濃度が100mg/Lの弱酸性次亜塩素酸水とし、生成水Bを、pH値が6.0以上、6.5以下で、有効塩素濃度が400mg/Lの微酸性次亜塩素酸水とし、生成水Cを、pH値が8.5以上、9.0以下で、有効塩素濃度が1,000mg/Lの電解次亜水として、各電解水の生成を試みた。なお、生成水Aは、2個の原液容器2の濃縮酸性塩水を希釈して生成した被電解水を使用し、生成水Bは、3個の原液容器2の濃縮酸性塩水を希釈して生成した被電解水を使用した。また、生成水Cは、1個の原液容器2の濃縮塩水を希釈して生成した被電解水(塩濃度1.2%)を使用した。
【0066】
結果、電解時間を適切に設定することで、pH値および有効塩素濃度が各々目標を満たし得ることが分かった。
【0067】
以上説明したように、本実施形態においても第1実施形態と同様、電解後の電解水のpH値および有効塩素濃度の値を常に再現することができる。また、電解時間を制御するだけで3種類のpH値の異なる電解水を、各々、簡単かつ安定的に生成することができる。つまり、電解時間を適切に設定するだけで、需要者のニーズに応じたpH値の電解水を安定的に生成することができる。
【0068】
<4.変形例>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明の内容は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0069】
例えば、上述した各実施形態の電解水生成システム1では、3種類の電解水の中から選択的に電解生成を行うものについて例示したが、選択候補数は2以上であればよい。また、pH値および有効塩素濃度の両方を選択的に電解生成するものであってもよい。これにより、電解槽3および電解水生成装置4を共通とする単純な構成で種々の電解水を生成することができる。なお、この場合、例えば、pH値が2.0以上、7.0以下で、塩濃度0.1以上、3.0以下の被電解水を用いて、弱酸性次亜塩素酸水、微酸性次亜塩素酸水および電解次亜水を生成することができる。
【0070】
また、例えば、各実施形態における生成電解水のpH値(例えば、電解水種別)および有効塩素濃度の組み合わせは、あくまで例示的なものであり、適宜、変更することも可能である。また、例えば、電解水生成装置4は、電解槽3内の被電解水のpH値を電解槽3に設置したpH計などで計測するpH計測部を有していてもよく、その場合、計測部の計測結果を利用して生成電解水のpH値を目標値に正確に制御することができる。計測部の計測結果は、上述した自動設定や使用者の生成電解水の選択の正誤判定に使用してもよい。
【0071】
上述した実施形態および変形例においてあげた構成(相対的な配置を含む)、方法、工程、形状、材料および数値等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値等を用いてもよく、公知のもので置き換えることも可能である。また、実施形態および変形例における構成、方法、工程、形状、材料および数値等は、技術的な矛盾が生じない範囲において、互いに組み合わせることが可能であり、適宜、省略することも可能である。
【0072】
なお、本明細書中で例示された効果により本発明の内容が限定して解釈されるものではない。
【符号の説明】
【0073】
1・・・電解水生成システム
2・・・原液容器
3・・・電解槽
4・・・電解水生成装置
31・・・本体部
32・・・蓋部
33・・・一対の電解電極
41・・・筐体
42・・・連結部
43・・・操作部
48・・・電解電源部
49・・・電解制御部
491・・・電解選定部
492・・・時間情報取得部
493・・・電解電源制御部