(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132757
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】パルスオキシメーター用プローブ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1455 20060101AFI20230914BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20230914BHJP
H01L 31/12 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A61B5/1455
H01L33/00 L
H01L31/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038273
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康之
【テーマコード(参考)】
4C038
5F142
5F889
【Fターム(参考)】
4C038KK01
4C038KL05
4C038KL07
4C038KY01
4C038KY07
5F142AA42
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(57)【要約】
【課題】発光部および受光部が突出しておらず、発光部の温度上昇を抑制することのでき、被検体への装着時に発光部と受光部の位置合わせの必要のないパルスオキシメーター用プローブを提供する。
【解決手段】リング状の可撓性の基材にベアチップの半導体発光素子を実装する。半導体受光素子は、基材の外周の表面の配線上に搭載する。半導体受光素子は、半導体発光素子から出射され、被検体と透明な基材とを通過した光を受光する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の基材と、前記基材にそれぞれ搭載された半導体発光素子および半導体受光素子と、前記半導体発光素子および半導体受光素子を封止する封止材とを有し、
前記基材の表面には、配線が備えられ、
前記半導体発光素子は、半導体発光層と、前記半導体発光層に電流を供給するための一対の電極層とを備えたベアチップであり、前記ベアチップは、前記基材の前記配線上に接合材により直接接合され、
前記半導体受光素子は、前記基材の両面のうち、被検体に対向する面とは逆側の面に搭載され、前記逆側の面に設けられた前記配線に接合され、
前記基材は、少なくとも前記半導体受光素子が配置されている領域が透明であり、
前記半導体受光素子は、前記半導体発光素子から出射され、透明な前記基材を通過した光を受光することを特徴とするパルスオキシメーター用プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載のパルスオキシメーター用プローブであって、前記基材は、リング状であることを特徴とするパルスオキシメーター用プローブ。
【請求項3】
請求項2に記載のパルスオキシメーター用プローブであって、前記半導体受光素子は、前記リング状の基材の内側の空間を挟んで、前記半導体発光素子と対向する位置の前記基材の外周の表面に搭載されていることを特徴とするパルスオキシメーター用プローブ。
【請求項4】
請求項2に記載のパルスオキシメーター用プローブであって、前記半導体発光素子は、前記基材の内周の表面の前記配線上に接合され、前記リング状の基材の内側の空間に向かって光を出射することを特徴とするパルスオキシメーター用プローブ。
【請求項5】
請求項1に記載のパルスオキシメーター用プローブであって、前記基材は、前記半導体発光素子が搭載されている領域が透明であり、
前記半導体発光素子は、前記基材の一方の表面の前記配線上に接合され、前記半導体発光素子は前記基材に向かって光を出射し、出射された光は、透明な前記基材を通して前記被検体に向かって照射されることを特徴とするパルスオキシメーター用プローブ。
【請求項6】
請求項1に記載のパルスオキシメーター用プローブであって、前記接合材は、金属粒子の焼結体であることを特徴とするパルスオキシメーター用プローブ。
【請求項7】
請求項1に記載のパルスオキシメーター用プローブであって、前記封止材は、前記半導体発光素子および前記半導体受光素子の周囲をそれぞれ封止する透明封止材と、前記透明封止材の側面を覆う光反射性封止材と、前記基材の前記半導体発光素子と前記半導体受光素子が搭載されていない領域を封止する遮光性封止材とを含むことを特徴とするパルスオキシメーター用プローブ。
【請求項8】
請求項7に記載のパルスオキシメーター用プローブであって、前記封止材の上面には、金属膜が配置されていることを特徴とするパルスオキシメーター用プローブ。
【請求項9】
請求項1に記載のパルスオキシメーター用プローブであって、前記半導体発光素子が接合されている前記配線は、前記半導体発光素子から離れるにしたがって幅が大きくなっていることを特徴とするパルスオキシメーター用プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルスオキシメーター用の光源部および受光部を備えたプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
パルスオキシメーターは、指先等にプローブを装着し、プローブ内の発光部から指先等に光(赤色光と赤外光)を照射し、指先等を透過した光をプローブ内の受光部により受光する。これにより、血液中のヘモグロビンのうち、酸素と結合した酸化ヘモグロビンと結合していない還元ヘモグロビンの存在比を赤色光と赤外光の吸収率の差を利用して測定する。
【0003】
医療現場では、感染症予防のためにディスポタイプのプローブが使用されることが多い。ディスポタイプのプローブは、指を覆う大きさの粘着テープの内側に発光部と受光部が配置されており、指先にテープを貼り付けて固定し、使用する。市販のパルスオキシメーター用プローブでは、ガラスエポキシなどの剛性のある回路基板に、予めパッケージングされたLEDを実装したものが発光部として用いられる。受光部にはフォトダイオードが用いられている。これらがそれぞれ粘着テープ上に搭載されている。
【0004】
特許文献1には、LEDが発生する熱が粘着テープの内側にこもり、被検者のプローブ装着部の体温を5~6℃上昇させ、被検者に低温やけどをおこさせる恐れがあるという課題と、その課題の解決するために、熱良導性で可撓性の保持材(粘着テープ)を用いるプローブが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のパルスオキシメーター用プローブは、熱良導性の保持材(粘着テープ)を用いることにより、発光部の熱がこもることを抑制し、発光部が粘着テープから突出する問題は保持材の可撓性で解決しようとしている。しかしながら、ガラスエポキシなどの剛性のある回路基板に予めパッケージングされたLEDを実装した発光部のサイズは、粘着テープの粘着面に対して1.5-3mmの高さで突出するため、粘着テープの可撓性で発光部の突出を完全に吸収することは困難である。
【0007】
突出した発光部と受光部が粘着テープで指に押し付けられると、血流が滞り、発光部からの熱を血流によって周囲に逃がすことができにくくなり、指の温度が上昇する。指の圧迫と温度上昇との相互作用により、指の皮膚に痕がついたり、かぶれが生じたりしやすくなり、長時間装着すると低温やけどが発生する恐れがある。医療従事者は、低温やけどを避けるために、成人で約8時間おき、新生児や高齢者や皮膚が弱い患者では8時間より短い間隔で頻繁にプローブを貼り替える必要があり、医療従事者の負担になっている。
【0008】
このため、発光部や受光部が突出しない構造にすることは、血流の滞り、および、低温やけどの防止のために重要である。
【0009】
また、従来のパルスオキシメーター用プローブは、装着の際に、発光部と受光部の光軸を、指を挟んで正確に位置合わせして、粘着テープを指に貼り付ける必要があるため、プローブを貼り替えの際の位置合わせの作業も医療従事者の負担となっている。
【0010】
本発明の目的は、発光部および受光部が突出しておらず、発光部の温度上昇を抑制することのでき、被検体への装着時に発光部と受光部の位置合わせの必要のないパルスオキシメーター用プローブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明によれば、可撓性の基材と、基材にそれぞれ搭載された半導体発光素子および半導体受光素子と、半導体発光素子および受光素子を封止する封止材とを有するパルスオキシメーター用プローブが提供される。基材の表面には、配線が備えられている。半導体発光素子は、ベアチップである。ベアチップは、半導体発光層と、半導体発光層に電流を供給するための一対の電極層とを備えている。ベアチップは、基材の配線上に接合材により直接接合されている。半導体受光素子は、基材の両面のうち、被検体に対向する面とは逆側の面に搭載され、この面に設けられた配線に接合されている。基材は、少なくとも半導体受光素子が配置されている領域が透明である。半導体受光素子は、半導体発光素子から出射され、透明な基材を通過した光を受光する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のパルスオキシメーター用プローブは、発光部および受光部が基材から突出しておらず、発光部がベアチップであるため熱伝導性がよく温度上昇を抑制することができ、被検体への装着時に発光部と受光部の光軸の位置合わせが不要である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)および(b)は、本発明の実施形態1のパルスオキシメーター用プローブの断面図である。
【
図2】(a)実施形態1のパルスオキシメーター用プローブの斜視図、(b)側面図。
【
図3】(a)~(d)実施形態1の
図1(a)のパルスオキシメーター用プローブの製造工程を示す説明図。
【
図4】(a)~(f)実施形態1の
図1(a)のパルスオキシメーター用プローブの製造工程を示す説明図。
【
図5】(a)~(e)実施形態1の
図1(a)のパルスオキシメーター用プローブの製造工程を示す説明図、(f)製造されたプローブの断面図。
【
図6】実施形態1の
図1(b)のパルスオキシメーター用プローブの製造工程を示す説明図。
【
図7】(a-1)および(a-2)実施形態1のパルスオキシメーター用プローブのLED素子21a,21bが実装された配線11bの上面図と断面図、(b-1)および(b-2)実施形態2のパルスオキシメーター用プローブのLED素子21a,21bが実装された配線11bの上面図と断面図。
【
図8】実施形態3のパルスオキシメーター用プローブの側面図。
【
図9】実施形態4のパルスオキシメーター用プローブの断面図。
【
図10】実施形態1、2および比較例のパルスオキシメーター用プローブの使用時の実験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について図面を用いて以下に説明する。
【0015】
<<<実施形態1>>>
<<構成>>
本実施形態のパルスオキシメーター用プローブの中心軸を含む面の断面図を
図1(a),(b)に示す。また、側面図を
図2(b)に示す。
【0016】
図1(a),(b)のように、本実施形態のパルスオキシメーター用プローブは、リング状で可撓性の基材10に配線11aまたは11bを設け、ベアチップの半導体発光素子(LED素子)21a,21bを、基材10の配線11aまたは11b上に接合材により直接接合した構造である。LED素子21a,21bを搭載する面は、被検体1と接する基材10の内周面であってもよいし(
図1(a))、外周面であってもよい(
図1(b))。
【0017】
なお、LED素子21a,21bを、基材10の配線11aまたは11b上に接合する接合材は、金属粒子の焼結体を用いることが好ましい。金属粒子の焼結体を用いることにより、可撓性の基材10にダメージを与えない温度で焼結することが可能である。
【0018】
LED素子21aの発光波長は、赤色光であり、LED素子21bの発光波長は、赤外光である。
【0019】
LED素子21a、21bの周囲は、透明封止材22により封止されている。
【0020】
LED素子21a,21bのベアチップの高さ(厚さ)は、一般的に100μm以下にできるため、透明封止材22によりベアチップを埋め込んで、封止材22の表面を平坦にすることができる。よって、被検体1の皮膚を圧迫する突起のない発光部20を構成することができる。
【0021】
また、ベアチップのLED素子21a、21bは、発生する熱を直接配線11aまたは11bに熱伝導させ、配線11aまたは11bに伝導させながら放熱することができる。すなわち、ベアチップのLED素子21a、21bは、パッケージングされたLEDと比較して、配線11aまたは11bとLED素子との間に、パッケージ基板やキャビティ等、熱伝導のボトルネックとなる部材や、蓄熱し得る部材がないため、熱引き特性に優れ、配線11aまたは11bから効率よく放熱することができる。これにより、発光部20の温度上昇を抑制することができる。
【0022】
一方、受光部30を構成する半導体受光素子31が、リング状の基材10の両面のうち、被検体1に対向する面(内周面)とは逆側の面(外周面)に搭載され、外周の面に設けられた配線11bに接合されている。半導体受光素子31の周囲は、透明封止材32により封止されている。基材10は、少なくとも半導体受光素子31が配置されている領域が透明である。半導体受光素子31は、LED素子21a,21bから出射され、被検体1を通過し、さらに、透明な基材10と封止材32を通過した光を受光する。
【0023】
半導体受光素子31を、リング状の可撓性の基材10の外周の表面に搭載したことにより、パッケージングされた半導体受光素子31を用いた場合でも、基材10の内周面に半導体受光素子31が突出せず、被検体1を圧迫しない。なお、半導体受光素子31として、パッケージングされていないベアチップを用いることも可能である。
【0024】
また、基材10がリング状であるため、LED素子21a,21bと半導体受光素子31とがリング状の基材10の内側の被検体1が配置される空間を挟んで、対向させた位置に搭載することができる。よって、基材10にLED素子21a,21bと半導体受光素子31とを搭載する際に、光軸を一致させる位置合わせを完了させることができるため、被検体1に本実施形態のプローブを装着する際には、リング状の基材10を被検体1の指に嵌めるだけでよく、LED素子21a,21bと半導体受光素子31の位置合わせをする必要がない。これにより、医療従事者や被検体の位置合わせの負担を軽減することができる。
【0025】
上述したように、LED素子21a、21bは、
図1(a)のように、基材10の内周の表面の配線11a上に接合され、リング状の基材10の内側の空間の被検体1に向かって光を出射する構成であってもよい。また、
図1(b)のように、LED素子21a、21bは、基材10の外周の表面の配線11b上に接合され、LED素子21a、21bが基材10に向かって光を出射し、出射された光は、基材10を通過して、リング状の基材10の内側の空間の被検体1に向かって照射される構成であってもよい。
図1(b)の構成の場合、基材10は、少なくともLED素子21a、21bが搭載されている領域が透明なものを用いる。
【0026】
なお、LED素子21a,21bの周囲を封止する透明封止材22および半導体受光素子の周囲を封止する透明封止材32は、被検体1に対向する面を除いた面(側面及び外周面)が、光反射性封止材23、33により覆われていることが望ましい。これにより、LED素子21a,21bから発せられた光を、光反射性封止材23により反射して、被検体1に向かわせることができるため、被検体1に照射される光量を増加させることができる。また、被検体1を通過して受光部30に到達した光のうち、半導体受光素子31の受光面に直接入射しなかった光を、光反射性封止材33により反射して、受光面に入射させることができるため、受光効率を向上させることができる。
【0027】
また、
図2(b)に本実施形態のプローブの側面図を示したように、発光部20と受光部30が配置されている領域以外の基材10上の領域は、保護用封止材70により封止されていることが望ましい。保護用封止材70は、基材10および基材10上の配線11a,11bを被覆し保護する。保護用封止材70は、遮光性であることが望ましい。遮光性の保護用封止材を用いることにより、発光部20の光反射性封止材33の側面から漏れ出た光が、保護用封止材70を伝搬して、受光部30に到達することを防ぐ。
【0028】
透明封止材22、32、光反射性封止材23,33、および、保護用封止材70は、弾性のある材料であることが望ましい。光反射性封止材23,33と保護用封止材70は、それぞれ光反射性および遮光性のある同材料で構成することができる。
【0029】
このように、本実施形態のパルスオキシメーター用プローブは、配線が施されたリング状の可撓性の基材10上に、発光部20としてベアチップのLED素子21a、21bを、受光部30として半導体受光素子31をそれぞれ直接実装している。こうすることで、被検体1の指に発光部20のLED素子21a、21bおよび受光部30の半導体受光素子31が直接あたることがないため、測定時に指に当たる部分の凹凸を小さくすることができ、指を圧迫しない。特に、リング状の基材10の外周の表面上にLED素子21a,21bと半導体受光素子31とを実装した
図1(b)の構造は、指に装着した際に、発光部20と受光部30がともに指と反対側に配置されるため、指にあたる凹凸がなく、指を圧迫しないという効果をより発揮することができる。
【0030】
なお、本実施形態のリング状のプローブにおいて、配線11a,11bには、LED素子21a,21bに給電を行い、半導体受光素子31の出力信号を取り出すだめの給電・信号取り出し用配線50が接続され、その先端には、接続端子60が取り付けられている。
【0031】
プローブを使用する際には、
図2(a)に示すように、被検体1の指にプローブを嵌め、端子60をパルスオキシメーター装置に接続し、給電・信号取り出し用配線50および配線11aまたは11bを介して、LED素子21a,21bに給電する。LED素子21a,21bから出射された赤色光と赤外光は、指を通過し、半導体受光素子31によって受光される。半導体受光素子31の出力は、配線11bおよび給電・信号取り出し用配線50を介してパルスオキシメーターに入力される。パルスオキシメーターは、半導体受光素子31の出力から、赤色光と赤外光の強度比等から血中のヘモグロビンのうち酸化ヘモグロビンの比率(SpO
2)を算出して表示する。
【0032】
<<詳細な構造と製造方法>>
本実施形態のパルスオキシメーター用プローブの詳細な構造と製造方法について、
図3および
図4を用いて説明する。まず、
図1(a)の構造のプローブの製造方法について説明する。
【0033】
(配線11a,11b付き基材10の作製工程)
図3(a)のように、銅箔11(例えば厚み12μm)上に、未硬化の透明ポリイミド層100をダイコーターを用いて一定の厚み(例えば70μm)で塗工する。
【0034】
図3(b)のように、未硬化のポリイミド層100つき銅箔11をホットプレート等を用いて所定の温度および時間(例えば100℃、10min)で加熱して、仮乾燥を実施する。このとき、ホットプレートに穴を設けておき、ポリイミド層100付き銅箔11をホットプレートに吸着しながら加熱してもよい。また、必要に応じて、ポリイミド層100付き銅箔11の上から枠を載せて押下してもよい。
【0035】
図3(c)のように、オーブンを用い、窒素雰囲気下で、ポリイミド層100付き銅箔11を所定温度で所定時間(例えば、260℃、60min)加熱し、本乾燥を実施する。これにより、銅箔11が一体化された透明な基材10(透明ポリイミド:厚み35μm)を形成する(
図3(d))。
【0036】
次に、
図3(d)の基材10上の銅箔をエッチングにより加工し、LED素子21a、21bを搭載する配線11aのパターン、半導体受光素子31を搭載する配線11bのパターン、給電・信号取り出し用配線50のパターンの形状にする。加工後の銅箔表面に無電解めっきにより金めっき層を形成する。なお、ここでは、いずれの配線11a、11bも、基材10上の同じ面の銅箔を加工して形成する。
【0037】
(LED素子21a、21bの実装工程)
基材10上の配線11aの上に、LED素子21a、21bを実装する。LED素子21a、21bは、電極が同一面側にあり、電極とは反対側の面から出射するフリップチップタイプのものを使用する。
【0038】
図4(a)のように、平均粒径30nmの金粒子を溶媒(グリセリン)に82wt%の濃度で分散させたAuインク80を用意し、配線11aのLED素子21a、21bを実装する部分にディスペンサーで塗布する。このとき、基材10は、シリコン基板に搭載し、さらにガラス基板に搭載しておくことが好ましい。
【0039】
つぎに、
図4(b)のように、ホットプレート上で所定の温度および時間(例えば、50℃、45-60分)加熱し、Auインク80を乾燥させる。
【0040】
図4(c)のように、光ボンディング装置81に、基材10をセッティングし、
図4(d)のように、Auインク80の上にLED素子21a,21bの電極を搭載し、荷重コレット82で、LED素子21a,21bを配線11aに所定の圧力で押しつける。
【0041】
図4(e)のように、基材10の下面から所定のビーム径の青色レーザー光を、配線11aのAuインク80が搭載された領域に対して照射する。配線11aのうち青色レーザー光が照射された領域は、青色レーザー光を吸収し加熱され、この熱がAuインク80に伝導し、Auインク80を加熱する。Auインク80の金粒子は、平均粒径が30nmと小さいため、Auの融点よりも低い温度で焼結されて焼結体となり、配線11aとLED素子21a,21bの電極とを接合する接合材83が形成される。
【0042】
このとき、基材10は、透明であるため、青色レーザー光を吸収せず、直接的には加熱されない。青色レーザー光で加熱された配線11aの熱は、青色レーザー光が照射されていない配線11aの領域に熱伝導し、急速に放熱される。よって、LED素子21a,21bや樹脂製の基材10にダメージを与えることなく、光ボンディングにより、金粒子焼結体の接合材83によりLED素子21a,21bを配線11aに実装することができる。
【0043】
(半導体受光素子31の実装工程)
半導体受光素子31は、一対の電極が同一面側にあるフリップチップタイプのフォトダイオードであり、一対の電極間に受光面がある物を用いる。
【0044】
半導体受光素子31は、基材10の配線11b上に実装する。実装方法は、
図4(a)~(f)と同様の光ボンディング法によって実装してもよいし、LED素子21a,21bに比べて半導体受光素子31は、サイズが大きいので、はんだで接合してもよい。
【0045】
(封止および組み立て工程)
図5(a)のように、LED素子21a,21bが実装された配線11aとそれに接続された給電・信号取り出し用配線50が形成された基材10と、半導体受光素子31が実装された配線11bとそれに接続された給電・信号取り出し用配線50が形成された基材10とを別々のパーツA,Bとして切り出す。
【0046】
図5(b)のように、シリコーン樹脂に酸化チタンもしくは酸化亜鉛もしくは酸化アルミニウムを分散させた未硬化の白色樹脂を用意し、LED素子21a,21bおよび半導体受光素子31から所定の距離だけ離れた位置に、LED素子21a,21bおよび半導体受光素子31をそれぞれ囲む枠状に塗布し、未硬化の光反射性封止材23、33を形成する。枠状の光反射性封止材23,33の高さは、LED素子21a,21bおよび半導体受光素子31の高さよりも高い予め設計した高さとなるように形成する。
【0047】
図5(c)のように、形成した枠状の光反射性封止材23、33の中に、透明なシリコーン樹脂を注入し、未硬化の透明封止材22、32を形成する。その後、予め定めた温度および時間(例えば、150℃、4h)で基材10を加熱し、光反射性封止材23,33および透明封止材22,32を硬化させる。これにより、ここでは、光軸方向の厚みが30μmの光反射性封止材23,33および透明封止材22,32を形成した。
【0048】
図5(d)のように、LED素子21a,21bが実装された基材10のパーツAと、半導体受光素子31が実装された基材10のパーツBの裏面同士を貼り合わせる。貼り合わせには、樹脂や接着剤テープの接着層を用いることができる。この貼り合わせの接着層は、遮光性のものが望ましい。
【0049】
リング形状の凹部が形成された金型にそって基材10がリング状になるようにセットする。このとき、給電・信号取り出し用配線50およびそれが搭載された基材10の部分は、金型から引き出されるようにセットする。遮光性を有するシリコーン樹脂を基材10の周囲に充填する。これにより、遮光性の保護用封止材70を形成する。このとき、発光部20および受光部30の内周面には、遮光性の保護用封止材70が付着しないように金型が形成されている。
【0050】
金型内の保護用封止材70を、所定の温度および時間(例えば、150℃、4h)で加圧しながら硬化させる。硬化後、
図5(e)のように、保護用封止材70で覆われたリング状の基材10全体を金型から取り出す。
図5(e)の保護用封止材70で覆われたリング状の基材10の断面図を
図5(f)に示す。
図5(f)のように、保護用封止材70は、発光部20の周辺では、基材10の内周面側を覆い、受光部30周辺では、基材10の外周面側を覆い、発光部20と受光部30の間では、基材10の内周面と外周面の両側を覆い、かつ、保護用封止材70の外形は滑らかなリング形状に成形されている。
【0051】
最後に、リング状の基材10から引き出されている給電・信号取り出し用配線50の先端に接続端子60を接続する。
【0052】
以上により、
図5(e)のように、本実施形態のリング状のパルスオキシメーター用プローブが完成する。
【0053】
つぎに、
図1(b)の構造のプローブの製造方法について説明する。
【0054】
図1(b)の構造のプローブが、
図1(a)の構造と異なる点は、LED素子21a,21bと半導体受光素子31の両方が、基材10の外周側の面の配線11bに搭載される点である。よって、
図1(a)の構造のプローブの製造工程において
図5(a)の工程において、基材10を2つのパーツA,Bに分けて切り出す必要がなく、
図5(d)の工程において、2つの基材10のパーツA,Bを貼り合わせる必要もない。よって、
図1(a)の構造のプローブの製造方法の
図5(a)の工程において、
図6に示したように、LED素子21a,21bと半導体受光素子31の両方が搭載された一つのパーツを切り出せばよい。なお、配線11bのパターンは、
図1(a)の構造のプローブとは異なるので、適切に設計する。
【0055】
他の工程は、
図1(a)の構造のプローブと同様であるので説明を省略する。なお、
図5(e)の工程において、保護用封止材70は、発光部20の周辺においても、受光部30の周辺においても、その間の領域においても、基材10の外周面を覆ってリング形状に成形される。
【0056】
以上により、
図1(b)の構造のプローブを製造することができる。
【0057】
<<<実施形態2>>>
実施形態2のパルスオキシメーター用プローブについて
図7を用いて説明する。
【0058】
実施形態1の
図1(b)の構造のプローブは、発光部20のLED素子21a,21bが、リング状の基材10の外周面の配線11bに搭載されているため、LED素子21a,21bから出射される光は、配線11bの間隙と、透明な基材10を通って、被検体1に対して照射される。発光部20から被検体1に照射される光量を大きくするためには、配線11bの幅を小さくし、配線11bの間隙が大きいほうが望ましい。その一方で、配線11bは、LED素子21a,21bで生じた熱を拡散させ、放熱する役割も持っており、低温やけどなどを防ぎ、患者の負担を低減するためには、LED素子21a,21bが実装される部分の配線11bの面積は大きいほうが望ましい。
【0059】
そこで、実施形態2では、LED素子21a,21bが接合されている配線11bは、LED素子21a,21bから離れるにしたがって幅が大きくなった形状とする。
【0060】
これを
図7を用いて説明する。
図7(a-1)、(a-2)は、実施形態1の配線11bのLED素子21a、21bの実装領域の上面図と断面図であり、
図7(b-1)、(b-2)は、実施形態2の配線11bのLED素子21a、21bの実装領域の上面図と断面図である。
【0061】
図7(a-1)の実施形態1の配線11bは、矩形であり、幅が一定であるのに対し、
図7(b-1)の実施形態2の配線11bは、LED素子21a,21bが搭載される部分の配線11bの幅が狭められた台形であり、LED素子21a,21bから離れるにしたがって幅が大きくなっている。
【0062】
これにより、LED素子21a,21bの光が照射される基材10上の領域において、配線11bが覆う面積は、小さくなる。よって、
図7(b-2)のように、LED素子21a、21bから発せられた光のうち、配線11bの表面で反射される光量を、
図7(b-1)の矩形の配線11bよりも小さくすることができる。
【0063】
したがって、実施形態2の配線11bは、配線11bの間隙から基材10に入射し、基材10を通り抜けて、被検体1に照射される光量を増加させることができる。
【0064】
また、実施形態2の配線は、LED素子21a,21bから離れるにつれ幅が広くなっているため、LED素子21a,21bで生じた熱を拡散させ、放熱する作用を維持することができる。よって、放熱特性を維持しながら、被検体1への光量を増加させることができる。
【0065】
なお、
図7(b-1)では、配線11bは、幅が連続的に増加する台形の例を示したが、階段状に増加する形状であってもよい。
【0066】
実施形態2のプローブの配線11bの形状以外の他の構成および製造方法は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0067】
<<<実施形態3>>>
実施形態3のパルスオキシメーター用プローブについて
図8を用いて説明する。
【0068】
実施形態3のプローブは、
図8のように発光部20、受光部30および遮光性の保護用封止材70の外周側の表面に、金属膜90が配置されている。
【0069】
金属膜90は、発光部20の発する熱を放出することができるため、プローブの放熱作用を高めることができる。また、金属膜90は、電磁シールドとしても作用し、外部からの電磁ノイズが、発光部20、受光部30および配線11a,11bに混入するのを防止することができる。
【0070】
金属膜90の材質は銅やアルミニウムなどの導電性の高い金属を用いることができる。膜厚は、1μm~100μmであることが好ましい。
【0071】
金属膜90は、
図5(e)の保護用封止材70の形成工程の後に、気相成長法やめっきにより成膜することが可能である。また、保護用封止材70の形成時に外周部に沿うように金属箔を配置して同時に硬化させてもよいし、予め金属加工の技術を用いて、別途生成しておいた金属リングを、
図5(e)の保護用封止材70の形成後にその外側に装着して勘合や接着剤などで固定してもよい。
【0072】
また、本実施形態3では、プローブの最表面に金属膜90を配置した構造を示したが、
図5(e)の保護用封止材70の形成工程の前に、金属膜を形成し、その後、
図5(e)の工程を行って、金属膜90の上に保護用封止材70を形成してもよい。
【0073】
<<<実施形態4>>>
実施形態4のパルスオキシメーター用プローブについて
図9を用いて説明する。
【0074】
実施形態1~3は、基材10がリング状のプローブであったが、実施形態4では、実施形態1の
図1(b)の構造を適用した平面状の反射型プローブについて説明する。平面型プローブは、新生児の足裏等に貼って用いられ、発光部20から発せられた光のうち、被検体1からの反射光を受光部30によって受光する。
【0075】
実施形態4のプローブは、
図9のように、
図1(b)の構造のリング状の基材10を平面にした構造であり、基材10の上面の配線11bにLED素子21a,21bのベアチップと、半導体受光素子31を直接実装する構造としたものである。
【0076】
これにより、反射型のプローブでありながら、被検体1に接する面に凹凸がなく、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0077】
平面状であることと反射光を受光する以外の他の構造および作用等は、実施形態1と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0078】
なお、
図9の構造では、実施形態3の金属膜90も配置している。
<<<本実施形態のプローブの効果の検証>>>
低温やけどのリスクを評価するため、実施形態1(断面構造は
図1(a))のプローブと、実施形態2(断面構造は
図1(b))のプローブと、比較例の市販品(アズワン株式会社製、型番:NF503-16)のプローブとをハンドマネキンに装着し、装着部の温度上昇を測定する実験を行った。
【0079】
各プローブは、赤色光と赤外光のLED素子に、同時に5mAを連続通電して点灯させ、その際のハンドマネキンの装着部の温度上昇を測定した。その結果を、
図10の表に示す。
【0080】
図10から明らかなように、実施形態1および実施形態2のプローブの方が、比較例よりも、温度上昇が抑制されることが確認できた。
【0081】
温度上昇は、被検体1のかぶれや低温やけどの原因となるので、本実施形態のプローブは、被検体1の負担を低減できる。
【0082】
<<<製品への適用>>>
本実施形態のパルスオキシメーター用プローブであるが、スマートリング等の生体情報を光学的に取得する他のウェアラブルデバイスの光源ユニットとしても用いることができる。
【符号の説明】
【0083】
1 被検体
10 基材
11 銅箔
11a 配線
11b 配線
20 発光部
21a LED素子
21b LED素子
22 透明封止材
23 光反射性封止材
30 受光部
31 半導体受光素子
32 透明封止材
33 光反射性封止材
50 配線
60 接続端子
70 保護用封止材
80 インク
81 光ボンディング装置
82 荷重コレット
83 接合材
90 金属膜
100 ポリイミド層