(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132759
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】溶融金属の測温監視装置、溶融金属の測温監視方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01J 5/00 20220101AFI20230914BHJP
F27D 21/02 20060101ALI20230914BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
G01J5/00 101D
F27D21/02
F27D21/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038275
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼下 陽右
(72)【発明者】
【氏名】池野 鎮彦
(72)【発明者】
【氏名】冨田 誠人
(72)【発明者】
【氏名】田原 汰朗
(72)【発明者】
【氏名】近藤 孝司
【テーマコード(参考)】
2G066
4K056
【Fターム(参考)】
2G066AC01
2G066AC11
2G066BA14
2G066BC11
2G066BC15
4K056AA06
4K056CA01
4K056FA12
4K056FA23
(57)【要約】
【課題】溶融金属保持設備において設備内の溶融金属湯面が撮影可能となる位置にカメラ等の撮像部を設置し、溶融金属湯面を撮影して得られる画像の輝度情報から溶融金属の温度を連続的に測定する連続測温監視技術を提供すること。
【解決手段】溶融金属を保持する設備に設置され、溶融金属の温度の測定と当該設備内の状態を監視することができる溶融金属の測温監視装置であって、前記設備の監視撮像孔の上方に位置しており前記監視撮像孔を通じて前記設備内の溶融金属湯面の画像を取得する撮像部と前記監視撮像孔の下方に位置しており一定の回転速度で回転するスリットを有する回転盤と前記撮像部が前記溶融金属湯面の画像を取得するタイミングと前記回転盤の回転速度とを制御する制御部と前記溶融金属湯面の画像に基づいて前記溶融金属湯面の温度を算出する算出部とを備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属を保持する設備に設置され、溶融金属の温度の測定と当該設備内の状態を監視することができる溶融金属の測温監視装置であって、
前記設備の監視撮像孔の上方に位置しており前記監視撮像孔を通じて前記設備内の溶融金属湯面の画像を取得する撮像部と、
前記監視撮像孔の下方に位置しており一定の回転速度で回転するスリットを有する回転盤と、
前記撮像部が前記溶融金属湯面の画像を取得するタイミングと前記回転盤の回転速度とを制御する制御部と、
前記溶融金属湯面の画像に基づいて前記溶融金属湯面の温度を算出する算出部と、を備えることを特徴とする溶融金属の測温監視装置。
【請求項2】
前記撮像部の露光時間を一定に維持した状態で前記溶融金属の画像の明度を調整する明度調整部と、をさらに備えたことを特徴とする請求項1に溶融金属の測温監視装置。
【請求項3】
請求項2に記載の溶融金属の測温監視装置を用い、
前記撮像部が前記溶融金属の画像を取得するタイミングにおいて前記回転盤のスリットを当該撮像部の視野の前方を開放するように同期させて前記溶融金属湯面の画像を取得する工程と、
前記撮像部の露光時間を一定に維持した状態で前記溶融金属の画像の明度を調整することにより明度調整画像を取得する工程と、
前記明度調整画像に基づいて前記溶融金属湯面の温度を算出する工程と、を含むことを特徴とする溶融金属の測温監視方法。
【請求項4】
請求項3に記載の溶融金属の測温監視方法を実施するために用いるコンピュータプログラムであって、
前記撮像部が前記溶融金属の画像を取得するタイミングにおいて前記回転盤のスリットを当該撮像部の視野の前方を開放するように同期させて前記溶融金属湯面の画像を取得する工程と、
前記撮像部の露光時間を一定に維持した状態で前記溶融金属の画像の明度を調整することにより明度調整画像を取得する工程と、
前記明度調整画像に基づいて前記溶融金属湯面の温度を算出する工程と、を含む処理をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属を保持する設備内の溶融金属表面情報の詳細な測定技術に関するものである。とりわけ、本発明は、溶融金属の温度の連続的な測定と設備内の状態を監視することができる溶融金属の測温監視装置、当該溶融金属の測温監視装置を用いた溶融金属の測温監視方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の溶融金属を保持する設備としては、転炉、電気炉、RH真空脱ガス槽、KR脱硫設備、溶銑鍋、溶湯鍋、溶鋼鍋、タンディッシュなどを例示することができる。これらの溶融金属を保持する設備内における溶融金属の温度測定方法としては、測温プローブでバッチ測温を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、特許文献1には、測温サンプリングの水平方向の位置決めにおいて、測温サンプリングプローブが槽本体をガイドとして、狭い間隙を安全にプローブが昇降出来る真空脱ガス装置用測温サンプリング装置が開示されている。
【0003】
また、溶融金属の連続測温技術としては、転炉底部に設けられた羽口からCCDカメラを用いて、輝度を測定して温度に変換するような方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。すなわち、特許文献2には、転炉内の溶鋼温度を測定するための視野を確保して、溶鋼温度を連続的に測定することができると共に、羽口溶損を抑制して羽口の長寿命化を達成可能な転炉内溶鋼の測温方法が開示されている。
【0004】
さらに、溶融金属を保持する設備である真空脱ガス槽内を監視する方法として、槽内監視可能位置に設置したカメラで撮影した槽内画像の輝度情報を基に合金投入や槽内付着地金の落下を検出する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。すなわち、特許文献3には、真空脱ガス槽の上部に設けられた撮像装置により撮像された真空脱ガス槽内部の画像の輝度情報から予め設定した輝度レベルを超える部分の面積が画像全体に占める比率を計算し、この比率を基準として、合金投入、地金落下を自動的に検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-207331号公報
【特許文献2】特開2007-322382号公報
【特許文献3】特開平7-150227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術には、以下のような問題がある。すなわち、特許文献1に記載された測温プローブで溶融金属のバッチ測温を行う方法では、溶融金属の精錬処理中の測温間の温度推移が不明であるという問題点があった。また、特許文献2に記載されたカメラを用いた連続測温技術において、画像輝度情報から温度に変換する測温方法では、カメラの露光時間を変更すると検出した輝度も変化するため連続測温中は露光時間を一定とする必要があるという課題があった。さらに、特許文献3に記載された溶融金属保持設備内をカメラで監視する方法では、設備内を確認するためにカメラにより撮影された画像の輝度を確保する際、設備内の撮影画像輝度に応じて露光時間を変える必要があるという問題点があった。そのうえ、スリットを有する回転盤を溶融金属湯面とカメラの間に設けるとき、回転盤スリット部が撮影視野を通過するタイミングでシャッターを切らなければ、溶鋼湯面の輝度情報の取得や溶融金属保持設備内の監視ができない問題点がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、溶融金属保持設備において設備内の溶融金属湯面が撮影可能となる位置にカメラ等の撮像部を設置し、溶融金属湯面を撮影して得られる画像の輝度情報から溶融金属の温度を連続的に測定する連続測温監視技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を有利に解決する本発明に係る溶融金属の測温監視装置は、溶融金属を保持する設備に設置され、溶融金属の温度の測定と当該設備内の状態を監視することができる溶融金属の測温監視装置であって、前記設備の監視撮像孔の上方に位置しており前記監視撮像孔を通じて前記設備内の溶融金属湯面の画像を取得する撮像部と、前記監視撮像孔の下方に位置しており一定の回転速度で回転するスリットを有する回転盤と、前記撮像部が前記溶融金属湯面の画像を取得するタイミングと前記回転盤の回転速度とを制御する制御部と、前記溶融金属湯面の画像に基づいて前記溶融金属湯面の温度を算出する算出部と、を備えることを特徴とする。
なお、本発明係る溶融金属の測温監視装置は、前記撮像部の露光時間を一定に維持した状態で前記溶融金属の画像の明度を調整する明度調整部と、をさらに備えたこと等がより好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
【0009】
さらに、本発明に係る溶融金属の測温監視方法は、前記溶融金属の測温監視装置を用い、前記撮像部が前記溶融金属の画像を取得するタイミングにおいて前記回転盤のスリットを当該撮像部の視野の前方を開放するように同期させて前記溶融金属湯面の画像を取得する工程と、前記撮像部の露光時間を一定に維持した状態で前記溶融金属の画像の明度を調整することにより明度調整画像を取得する工程と、前記明度調整画像に基づいて前記溶融金属湯面の温度を算出する工程と、を含むことを特徴とする溶融金属の測温監視方法。
【0010】
さらに、本発明に係るコンピュータプログラムは、前記溶融金属の測温監視方法を実施するために用いるコンピュータプログラムであって、前記撮像部が前記溶融金属の画像を取得するタイミングにおいて前記回転盤のスリットを当該撮像部の視野の前方を開放するように同期させて前記溶融金属湯面の画像を取得する工程と、前記撮像部の露光時間を一定に維持した状態で前記溶融金属の画像の明度を調整することにより明度調整画像を取得する工程と、前記明度調整画像に基づいて前記溶融金属湯面の温度を算出する工程と、を含む処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、溶融金属保持設備において設備内の溶融金属湯面が撮影可能となる位置にカメラ等の撮像部を設置し、溶融金属湯面を撮影して得られる画像の輝度情報から溶融金属の温度を連続的に測定することができる。本発明に係る溶融金属の測温監視装置は、監視撮像孔の下方に位置しており一定の回転速度で回転するスリットを有する回転盤を備えているので、設備の内部を環流する溶融金属がカメラ等の撮像部に飛散することがない。
【0012】
また、本発明によれば、カメラ等の撮像部の露光時間を一定としたまま、ソフトウェア内で撮影した映像に対しガンマ補正(画像処理)ができる。このため、本発明によれば、露光時間の変更による輝度情報の変化により発生する溶融金属の算出温度の変化や明度調整をするための遮光レンズ等のカメラ付帯部品を必要とすることなく、溶融金属湯面の連続測温および槽内監視ができる。
【0013】
さらに、本発明によれば、スリットを有する回転盤を溶融金属湯面とカメラの間に設けた状態で、カメラ等の撮像部の露光時間を回転盤の回転周期と相関を持たせた値に設定することにより、回転盤のスリット部が撮影視野を通過するタイミングでシャッターを切ることができ、溶鋼湯面の輝度情報の取得や溶融金属設備内の監視を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態を示すRH真空脱ガス槽内に設置された溶融金属の連続測温装置の構成を示したブロック図である。
【
図2】本実施形態を示すRH真空脱ガス槽内に設置された溶融金属の連続測温装置の構成を示した概略図である。
【
図3】本実施形態に係る溶融金属の連続測温装置が設置されているRH真空脱ガス槽に設けられた監視撮像孔の周辺設備の構成を示した概略図である。
図3(a)は、監視撮像孔の周辺設備の構成を示した断面図であり、
図3(b)は、監視撮像孔の周辺設備の構成を示した平面図である。
図3(c)は、監視撮像孔の周辺設備を構成するスリット入り回転盤と撮像部の撮像視野との関係を示した概略図である。
【
図4】本発明の実施例を示すRH真空脱ガス設備における溶鋼環流処理中のCCDカメラ槽内撮影像、影像ガンマ補正後のモニター出力像および溶鋼温度算出ソフトウェアによる溶鋼温度算出フローを示した図である。
【
図5】本実施形態の溶融金属の連続測温装置を用いてRH真空脱ガス槽内の溶融金属の温度を連続測温した結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本実施形態の溶融金属の測温監視装置について説明する。各図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、それらの構成を下記のものに限定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る溶融金属の測温監視装置100について説明する。ここで、本発明に係る溶融金属の測温監視装置100は、溶融金属を保持することができる設備である転炉、電気炉、RH真空脱ガス槽、KR脱硫設備、溶銑鍋、溶湯鍋、溶鋼鍋、タンディッシュ等のあらゆる設備に採用することができる。本実施形態では、溶融金属を保持することができる設備がRH真空脱ガス設備である場合に設置される溶融金属の測温監視装置100について説明する。
【0017】
本実施形態に係る溶融金属の測温監視装置は、溶融金属を保持する設備に設置され、溶融金属の温度の測定と当該設備内の状態を監視することができる溶融金属の測温監視装置であって、前記設備の監視撮像孔の上方に位置しており前記監視撮像孔を通じて前記設備内の溶融金属湯面の画像を取得する撮像部と、
前記監視撮像孔の下方に位置しており一定の回転速度で回転するスリットを有する回転盤と、前記撮像部が前記溶融金属湯面の画像を取得するタイミングと前記回転盤の回転速度とを制御する制御部と、前記溶融金属湯面の画像に基づいて前記溶融金属湯面の温度を算出する算出部と、を備える。以下、本実施形態の溶融金属の測温監視装置を構成する各部材について説明する。
【0018】
図1は、本実施形態を示すRH真空脱ガス槽内に設置された溶融金属の連続測温装置100の構成を示したブロック図である。溶融金属の連続測温装置100は、設備内の溶融金属湯面の画像を取得する撮像部101と円板形状を有し一定の回転速度で回転するスリット入り回転盤102を備える。溶融金属の連続測温装置100は、撮像部101が溶融金属湯面の画像を取得するタイミングと回転盤102の回転速度とを制御する制御部103を備える。撮像部101が取得した溶融金属湯面の画像は、溶融金属の温度を算出するための算出部104に送信される。算出部104は、撮像部101が取得した溶融金属湯面の画像の最大輝度を検出して、最大輝度に基づいて溶融金属の温度を算出する。明度調整部105は、撮像部101が取得した溶融金属湯面の画像の明度が低い場合には、ガンマ補正を行うことにより、溶融金属湯面の画像の明度を調整する。算出部104が算出した溶融金属の温度は、出力部106により出力される。明度調整部105が明度調整を行った溶融金属湯面の画像は、出力部106により出力される。
【0019】
図2は、本実施形態を示すRH真空脱ガス槽内に設置された溶融金属の連続測温装置100の構成を示した概略図である。
図2に示されるように溶融金属の測温監視装置100は、溶融金属を保持することができる設備であるRH真空脱ガス槽107の内部及び外部に設置され部材より構成される。RH真空脱ガス槽107の下部には、取鍋108が取り付けられている。真空下において、RH真空脱ガス槽107及び取鍋108は、真空に保持されており、その内部には、溶融金属109(以下「溶鋼109」という場合がある。)が保持されている。なお、溶融金属109は、RH真空脱ガス槽107及び取鍋108の内部を環流する。溶鋼109が取鍋108の内部を環流することにより、溶鋼109に含まれる不要なガスが除去される。
【0020】
溶融金属の測温監視装置100は、RH真空脱ガス槽107の監視撮像孔111の上方に位置しており当該監視撮像孔111を通じてRH真空脱ガス槽107内に存在する溶融金属109の溶融金属湯面112の画像を取得する撮像部101を備えている。すなわち、撮像部101は、RH真空脱ガス槽107の上蓋110に設けられた監視撮像孔111の上方に設置されている。監視撮像孔111の孔径は、撮像部101の先端部に設置されているレンズの有効口径との相対的な関係を考慮して決定することができる。
【0021】
撮像部101は、RH真空脱ガス槽107の内部に存在する溶融金属109の界面に存在する溶融金属湯面112の画像を撮影する。撮像部101は、溶融金属湯面112の画像を電気信号に変換して取り出すことができる測定機器等の部材であれば、特に制限されない。撮像部101としては、例えば、CCDカメラ、CMOSカメラ、二色温度計、放射温度計のような対象物の輝度情報を得られる機器であってもよく、これらの機器の中でも、特にCCDカメラが好ましい。CCDカメラとしては、例えば、電子冷却型CCDカメラ、液体窒素型CCDカメラ、イメージインテンシファイア付きCCDカメラ等を挙げることができる。なお、RH真空脱ガス槽107の監視撮像孔111の上方に設置されている撮像部101は、単数のみならず、複数個から構成されていてもよい。
【0022】
溶融金属109は、RH真空脱ガス槽107及び取鍋108の内部を環流することにより、その脱ガス処理の進行状況に応じて、異なる溶融金属湯面112を形成する。撮像部101は、所定のタイミングにおいて、溶融金属109の脱ガス処理の進行状況に応じて形成された異なる溶融金属湯面112の画像を取得する。撮像部101は、溶融金属湯面112を撮影することにより、溶融金属湯面112の画像を取得する。撮像部101が溶融金属湯面112を撮影することにより取得した画像は、有線LAN113を通じて、画像情報として溶融金属湯面112の温度を算出する算出部104に送信される。算出部104に送信された溶融金属湯面112の画像は、算出部104と接続された設備内監視用モニター114に出力される。
【0023】
ここで、撮像部101が溶融金属湯面112の画像を撮影する際において、溶融金属湯面112の界面にスラグが発生している場合がある。溶融金属湯面112の界面にスラグが発生している場合には、溶融金属湯面112が溶融金属109の表面に表出していないことから撮像部101は、溶融金属109の溶融金属湯面112の画像を撮影することができないことも想定される。しかしながら、このような場合であっても、RH環流処理中であれば、溶融金属湯面112の湯面上一様にスラグが発生していないため、溶融金属湯面112は、部分的に表出しており、当該表出している溶融金属湯面112の画像を撮影することができる。
【0024】
本実施形態に係る溶融金属の測温監視装置は、監視撮像孔の下方に位置しており一定の回転速度で回転するスリットを有する回転盤を備える。すなわち、溶融金属の測温監視装置100は、監視撮像孔111の下方に位置したスリット入り回転盤102を備えている。スリット入り回転盤102は、RH真空脱ガス槽107の監視撮像孔111に隣接して位置する回転軸116を中心軸として回転する。なお、回転軸116は、当該回転軸116が駆動する駆動回転軸であってもよいし、他の駆動回転軸の連動した従動回転軸であってもよい。
【0025】
図3は、本実施形態に係る溶融金属の連続測温装置100が設置されているRH真空脱ガス槽107に設けられた監視撮像孔111の周辺設備の構成を示した概略図である。
図3(a)は、監視撮像孔111の周辺設備の構成を示した断面図であり、
図3(b)は、監視撮像孔111の周辺設備の構成を示した平面図であり、
図3(c)は、監視撮像孔の周辺設備を構成するスリット入り回転盤と撮像部の撮像視野との関係を示した概略図である。
【0026】
図3(a)に示されるように、RH真空脱ガス槽107の上蓋110には、監視撮像孔111が設けられている。監視撮像孔111の周辺には、周辺設備が設けられている。周辺設備は、監視撮像孔111とスリット入り回転盤102とを含む。監視撮像孔111の内部には、撮像部101側であって、監視撮像孔111の上面を形成するガラス板117aと、スリット入り回転盤102側であって、監視撮像孔111の下面を形成するガラス117bとから構成される2枚のガラス板117が設けられている。2枚のガラス117は、監視撮像孔111の孔内に設けられた壁面の凹部118に嵌め込まれるにことによって、監視撮像孔111の孔内に固定される。さらに、2枚のガラス板117を構成するガラス板117aとガラス板117bとの間には、シール用Oリング119が介在する。監視撮像孔111は、2枚のガラス板117を通して、RH真空脱ガス槽107内の溶融金属湯面112を撮影する。ここで、監視撮像孔111の平面形状は、スリット入り回転盤102のスリット124の長さの範囲内となる直径を持つ円形であることが好ましい。ガラス板117の形状は、例えば、監視撮像孔111と同径(Φ50~200mm)の円形であることが好ましい。ガラス板117の厚みは、例えば、5~30mmであることが好ましい。シール用Oリング119の厚みは、例えば、2.0~3.0mmであることが好ましい。
【0027】
図3(b)に示されるように、スリット入り回転盤102は、監視撮像孔111の下方に位置しており、監視撮像孔111の孔内に設けられたガラス117bに対向している。スリット入り回転盤102を構成する円板120は、円形形状であって、所定の厚みを有する盤状の部材から構成される。スリット入り回転盤102は、耐熱金属材料、セラミックス等の耐熱性を備えた材料から構成される。監視撮像孔111の下方に位置したスリット入り回転盤102は、モーター等の駆動回転軸121による回転駆動力がベルト122を介して回転軸(従動回転軸)123に伝達されることにより、所定の方向に所定の回転速度で回転駆動する。その結果、スリット入り回転盤102は、回転軸(従動回転軸)123を中心にして回転する。なお、スリット入り回転盤102の回転方向及び回転数は、回転軸(従動回転軸)123の回転駆動力により決定される。回転軸(従動回転軸)123の回転駆動力は、溶融金属の測温監視装置100が備えている制御部103によって制御される。なお、制御部103によって制御されているスリット入り回転盤102の回転状況は、駆動回転軸121と有線LAN等により接続された操作盤モニター115により監視することができる。
【0028】
スリット入り回転盤102は、単数又は複数個のスリット124を有する。スリット124の個数は、特に制限されるものではないが、2~8個であることが好ましい。スリット入り回転盤102が複数個のスリット124を有する場合には、これらの複数のスリット124は、スリット入り回転盤102の平面内において対向する位置に設けることが好ましい。スリット124の数が2個以上であれば、カメラ露光時間が短くできるため好ましい。スリット124の数が8個以下であれば、監視孔へのダスト飛散を防止できるため好ましい。
【0029】
図3(c)は、監視撮像孔の周辺設備を構成するスリット入り回転盤と撮像部の撮像視野との関係を示した概略図である。スリット入り回転盤102は、監視撮像孔111の下方に位置しており、監視撮像孔111の孔内に設けられたガラス板117bに対向している。このため、監視撮像孔111の上方に設置された撮像部101は、監視撮像孔111とスリット入り回転盤102が有しているスリット124とが重なり合う範囲において、撮像部101の撮像視野125を形成することができる。撮像部101は、RH真空脱ガス槽107の内部に存在する溶融金属109の溶融金属湯面112の画像を撮影することができる。
【0030】
一方、監視撮像孔111の上方に設置された撮像部101は、監視撮像孔111とスリット入り回転盤102が有しているスリット124とが重なり合わない範囲において、撮像部101の撮像視野125を形成することができない。このため、撮像部101は、RH真空脱ガス槽107の内部に存在する溶融金属109の溶融金属湯面112を撮影することができない。このように本実施形態の溶融金属の測温監視装置100は、RH真空脱ガス槽107の監視撮像孔111に隣接して位置する回転軸116を中心として回転することができるスリット入り回転盤102を設けることによって、溶融金属109の溶融金属湯面112の画像を撮影することができる状態と溶融金属109の溶融金属湯面112の画像を撮影することができない状態とを形成する。
【0031】
本実施形態に係る溶融金属の測温監視装置は、撮像部が溶融金属湯面の画像を取得するタイミングと回転盤の回転速度とを制御する制御部を備える。すなわち、溶融金属の測温監視装置100は、撮像部101が溶融金属109の溶融金属湯面112の画像を撮影するタイミングとスリット入り回転盤102の回転速度とを制御する制御部103を備える。制御部103は、スリット入り回転盤102の回転周期nを制御する。制御部103は、スリット入り回転盤102が有するスリット124の個数Aを認識する。そして、制御部103は、スリット入り回転盤102の回転周期nとスリット入り回転盤102が有するスリット124の個数Aに基づいて、撮像部101の露光時間[秒]を決定する。撮像部101の露光時間[秒]は、以下の一般式(1)により算出され、決定される。
【0032】
【0033】
上記一般式(1)において、nはスリット入り回転盤の回転周期、Aはスリット入り回転盤に設けられたスリットの個数、Nは整数、αは補正値である。ここで、N及びαは、それぞれ独立に0.75≦γ≦3.0の範囲において、γ値を変更し槽内を確認できるモニター出力明度になるような値のうち最小の値を表す。このように、本実施形態に係る溶融金属の測温監視装置100が備える制御部103は、撮像部101の露光時間[秒]の設定する際に、上記一般式(1)において、Nを最小値とすることにより、撮像部101の露光時間延長を最小限に留めている。
【0034】
このように、制御部103は、撮像部101の露光時間を一定に設定することにより、スリット入り回転盤102のスリット124が撮像部101の撮影視野を通過するタイミングにおいて、撮像部101が溶融金属湯面112を撮影することを可能としている。制御部103がスリット入り回転盤102の回転周期と撮像部101の露光時間[秒]とを合わせることによる技術的意義は以下の通りである。
【0035】
すなわち、スリット入り回転盤102のスリット124部分による撮像部101の撮像視野の開放部分とスリット入り回転盤102のスリット124以外の部分による撮像部101の撮像視野の非開放部分は、周期的に撮像部101の撮影範囲内に現われる。このため、撮像部101が上記露光時間中に採取した光量は、溶融金属湯面112の画像輝度を減衰させる。その結果、撮像部101が取得する溶融金属湯面112の画像輝度が安定せず、撮像部101は、溶融金属湯面112の画像の最大輝度を取得することができなくなる。つまり、本実施形態の溶融金属の測温監視装置100が連続測温した溶融金属湯面112の温度に測定誤差が発生し易くなる。
【0036】
また、撮像部101の露光時間を所定の露光時間よりも長く設定することにより、その露光時間を延長する場合には、撮像部101の露光中における採取光量が過蓄積されることになる。このため、溶融金属湯面112の画像の輝度が発散することによって、撮像部101は、正確な溶融金属湯面112の画像の輝度を取得することができない。その結果、撮像部101が溶融金属湯面112の画像の最大輝度を取得することができなくなる。つまり、本実施形態の溶融金属の測温監視装置100は、溶融金属湯面112の温度を連続測温することができない。
【0037】
さらに、本実施形態に係る溶融金属の測温監視装置は、溶融金属湯面の画像に基づいて溶融金属湯面の温度を算出する算出部を備える。すなわち、溶融金属の測温監視装置100が備えている算出部104は、撮像部101が撮影した溶融金属湯面112の画像が有する最大輝度に基づいて溶融金属湯面112の温度T[℃](以下、「溶鋼温度T[℃]」ともいう。)を算出する。算出部104は、撮像部101が溶融金属湯面112を撮影することにより取得した溶融金属湯面112の画像の輝度を検出する。すなわち、算出部104は、RH真空脱ガス槽107の内部に存在する当該溶融金属109の溶融金属湯面112が有する輝度を検出する。算出部104は、取得した溶融金属湯面112の画像が有する輝度情報に基づいて当該画像中の最大輝度を特定する。
【0038】
算出部104は、溶鋼温度算出ソフトウェアを備えており、当該溶鋼温度算出ソフトウェアを用いて撮像部101が取得した溶融金属湯面112の画像の輝度情報のうち最大輝度I[-]を検出する。算出部104は、所定の一次関数を用い、最大輝度I[-]を温度に換算することにより溶鋼温度T[℃]を算出する。ここで、溶融金属湯面112の最大輝度I[-]は、設定された所定の露光時間において、RH真空脱ガス槽107内の溶融金属湯面112を監視撮像孔111及びスリット入り回転盤102のスリット124を介して撮像部101で撮影し得られた画像内の最大輝度とする。溶鋼温度T[℃]の算出は、以下の一般式(2)により算出される。
【0039】
【0040】
上記一般式(2)において、上記I[-]は、溶融金属湯面の画像を撮影して得られた撮影像内の最大輝度であり、所定の係数a、bの値は、溶融金属を保持する設備内において、溶融金属を処理する際に使用される係数であって、例えば、溶融金属保持設備の種類ごとに経験則によって定められる係数である。なお、所定の係数aの値は、溶融金属の処理条件によって適宜設定することができるが、溶鋼温度T[℃]が高くなるとその輝度が大きくなることから、a>0であることが好ましい。
【0041】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る溶融金属の測温監視装置について説明する。すなわち、本実施形態に係る溶融金属の測温監視装置100は、上記溶融金属の測温監視装置100において、撮像部の露光時間を一定に維持した状態で溶融金属湯面の画像の明度を調整する明度調整部105をさらに備えることを特徴とする。本実施形態に係る溶融金属の測温監視装置100が備えている明度調整部105は、撮像部101から送信された溶融金属湯面112の画像に対してガンマ補正(画像処理)をかける。明度調整部105は、溶融金属画像112に対してガンマ補正(画像処理)をかけることによって、ガンマ補正後の画像出力値D[-]を得ることができる。ガンマ補正後の画像出力値D[-]は、以下の一般式(3)により算出することができる。
【0042】
【0043】
上記一般式(3)に示されるようにガンマ補正後の画像出力値D[-]は、入力光量E[-]と補正値γ[-]との積により算出することができる。上記一般式(3)において、入力光量E[-]は画像影像内における入力光量[-]を表し、補正値γ[-]は、ガンマ補正(画像処理)をかける際に用いられる補正値を表す。ここで、撮影された映像に対し、ガンマ補正(画像処理)をかける際に用いられる補正値γは、0.75≦γ≦3.0であることが好ましい。補正値γが0.75以上であれば、モニター明度が暗くなり過ぎずに槽内視認可能な状態であるため好ましい。補正値γが3.0以下であれば、モニター明度が明るくなり過ぎずに槽内視認可能な状態であるため好ましい。
【0044】
明度調整部105は、例えば、撮像部101から送信され、明度調整部105のモニターに出力される溶融金属湯面112の画像の明度が低い場合には、明度(入力光量)に対して補正値γを大きくする。一方、溶融金属湯面112の画像の明度が高い場合には、補正値γを小さくする。このように、本実施形態に係る溶融金属の測温監視装置100が備えている明度調整部105は、溶融金属湯面112の画像の明度に応じて補正値γ[-]を変化させることにより、撮像部101の露光時間を一定としたまま、撮像部101の溶融金属湯面112の画像のモニター出力明度を変更できる。すなわち、本実施形態に係る溶融金属の測温監視装置100は、任意の明度による撮影像により、溶融金属を保持する設備内の状態を監視することができる。
【0045】
以上説明したように、第2実施形態に係る溶融金属の測温監視装置によれば、溶融金属の画像の明度を調整することにより、遮光レンズ等のカメラ付帯部品が必要なく、溶融金属の連続測温および槽内監視をすることができる。
【0046】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る溶融金属の測温監視方法について説明する。すなわち、本実施形態は、上記溶融金属の測温監視装置を用いた溶融金属の測温監視方法である。本実施形態の溶融金属の測温監視方法は、(a)前記撮像部が前記溶融金属湯面の画像を取得するタイミングにおいて前記スリット入り回転盤のスリットを当該撮像部の視野の前方を開放するように同期させて前記溶融金属湯面の画像を取得する工程と、(b)前記撮像部の露光時間を一定に維持した状態で前記溶融金属の画像の明度を調整することにより明度調整画像を取得する工程と、(c)前記明度調整画像に基づいて前記溶融金属湯面の温度を算出する工程と、を含むことを特徴とする。以下、本実施形態に係る溶融金属の測温監視方法に含まれる各工程について説明する。
【0047】
(溶融金属湯面の画像を取得する工程)
本実施形態の溶融金属の測温監視方法は、溶融金属湯面の画像を取得する工程を含む。すなわち、溶融金属湯面の画像を取得する工程は、上記溶融金属の連続測温装置を用いてRH真空脱ガス槽107の内部に存在する溶融金属109の溶融金属湯面112の画像を取得する工程である。溶融金属湯面112の画像を撮影する工程は、撮像部101が溶融金属湯面112を撮影するタイミングにおいて、スリット入り回転盤102のスリット124が当該撮像部101の視野の前方を開放するように同期させることによって行う。すなわち、制御部103は、撮像部101が溶融金属湯面112を撮影するタイミングとスリット入り回転盤102のスリット124が当該撮像部101の視野の前方を開放するように同期させる。
【0048】
溶融金属湯面112の画像を取得する工程において、制御部103は、スリット入り回転盤102が有するスリット124の個数Aを認識する。制御部103は、スリット入り回転盤102の回転周期nと、スリット124の個数Aに基づいて、撮像部101の露光時間を決定する。撮像部101の露光時間[秒]は、以下の一般式(1)により算出され、決定される。
【0049】
【0050】
上記一般式(1)において、nはスリット入り回転盤の回転周期、Aはスリット入り回転盤に設けられたスリットの個数、Nは整数、αは補正値であり、それぞれ独立に0.75≦γ≦3.0の範囲において、γ値を変更し槽内を確認できるモニター出力明度になるような値のうち最小の値を表す。
【0051】
このように、溶融金属湯面112の画像を取得する工程において、制御部103は、撮像部101の露光時間を設定することにより、スリット入り回転盤102が有しているスリット124が撮像部101の撮影視野を通過するタイミングにより、撮像部101が溶融金属湯面112を撮影すること(例えば、CCDカメラ等がシャッターを切ること)ができ、撮影された溶融金属湯面112の画像に基づいて、溶融金属湯面112の輝度情報の取得や溶融金属を保持する設備内の監視を行うことができる。
【0052】
(明度調整画像を取得する工程)
次に、本実施形態の溶融金属の測温監視方法は、明度調整画像を取得する工程を含む。明度調整画像を取得する工程は、上記溶融金属湯面112の画像を撮影する工程によって取得された画像に対してガンマ補正を掛ける工程である。さらに、明度調整画像を取得する工程は、露光時間を一定に維持した状態下において、上記工程において取得された溶融金属湯面112の画像の明度調整を行なうことによって、明度調整画像を取得する。明度調整画像の取得は、溶融金属湯面112の画像を取得する工程においてソフトウェア内で撮影された映像に対し、ガンマ補正(画像処理)をかけることによって行われる。
【0053】
明度調整画像を取得する工程において、明度調整部105は、撮像部101から送信された溶融金属湯面112の画像に対してガンマ補正(画像処理)をかける。明度調整部105は、溶融金属湯面112の画像に対してガンマ補正(画像処理)をかけることによって、ガンマ補正後の画像出力値D[-]を得ることができる。ガンマ補正後の画像出力値D[-]は、以下の一般式(3)により算出することができる。
【0054】
【0055】
すなわち、ガンマ補正後の画像出力値D[-]は、入力光量E[-]と補正値γ[-]との積により算出することができる。上記一般式(3)において、入力光量E[-]は画像影像内における入力光量[-]を表し、補正値γ[-]は、ガンマ補正(画像処理)をかける際に用いられる補正値を表す。ここで、撮影された映像に対し、ガンマ補正(画像処理)をかける際に用いられる補正値γは、0.75≦γ≦3.0であることが好ましい。補正値γが0.75以上であれば、モニター明度が暗くなり過ぎずに槽内視認可能な状態であるため好ましい。補正値γが3.0以下であれば、モニター明度が明るくなり過ぎずに槽内視認可能な状態であるため好ましい。
【0056】
明度調整画像を取得する工程において、算出部104が備えている槽内監視用モニター114に出力される槽内画像の明度が低い場合には、明度(入力光量)に対して補正値γを大きくする。一方、上記溶融金属湯面の画像を取得する工程において、槽内画像の明度が高い場合には、明度(入力光量)に対して補正値γを小さくする。このように、本実施形態に係る溶融金属の測温監視方法において、明度調整画像を取得する工程は、溶融金属湯面112の画像の明度に応じて補正値γを変化させることにより、撮像部101の露光時間を一定としたまま、撮像部101の溶融金属湯面112の画像の槽内監視用モニターの出力明度を変更できる。すなわち、本実施形態に係る溶融金属の測温監視方法は、任意の明度による撮影像により、溶融金属を保持する設備内の状態を監視することができる。
【0057】
(溶融金属湯面の温度を算出する工程)
さらに、本実施形態に係る溶融金属の測温監視方法は、溶融金属湯面の温度を算出する工程を含む。溶融金属湯面の温度を算出する工程は、明度調整を行なった明度調整画像から溶融金属湯面の温度(溶鋼温度T[℃])を算出する。溶鋼温度T[℃]の算出は、算出部104が備えているソフトウェアで撮影像の輝度情報のうち最大輝度を温度に一次関数を用いて換算することにより、溶鋼温度T[℃]を行うことができる。溶鋼温度T[℃]は、以下の一般式(2)により算出され、決定される。
【0058】
【0059】
上記一般式(2)において、上記I[-]は、溶融金属湯面の画像を撮影して得られた撮影像内の最大輝度であり、所定の係数a、bの値は、溶融金属を保持する設備内において、溶融金属を処理する際に使用される係数であって、経験則によって定められる係数である。なお、所定の係数aの値は、溶融金属の処理条件によって適宜設定することができるが、溶鋼温度T[℃]が高くなるとその輝度が大きくなることから、a>0であることが好ましい。
【0060】
本実施形態に係る溶融金属の測温監視方法では、明度調整画像を取得する工程において、ガンマ補正(画像処理)をかける際に用いられる補正値γを例えば、補正値γ=1.8~2.4の任意の値を用い、槽内を確認できるモニター明度により、溶融金属の連続測温を行うことが好ましい。また、溶融金属湯面の温度を算出する工程において、槽内輝度から溶鋼温度T[℃]を算出する際は、撮影像内の最大輝度I[-]、係数a、bを用いて、T=a×I+bの一次関数を用いることが好ましい。具体的に本実施形態の溶融金属の測温方法において係数a=0.400、b=1446.4とし、算出部104が備えている溶鋼温度算出ソフトウェアで槽内最大輝度から溶鋼温度T[℃]を算出することができる。
【0061】
以上説明したように、第3実施形態に係る溶融金属の測温監視方法によれば、溶融金属湯面を撮影することにより得られる輝度情報から溶融金属の温度を連続的に測定することができる。さらに、第3実施形態の溶融金属の測温監視方法によれば、スリット入り回転盤のスリット部が撮像部の撮影視野を通過するタイミングで溶融金属湯面の画像を取得することができ、溶鋼湯面の輝度情報の取得や溶融金属設備内の監視を行うことができる。
【0062】
[第4実施形態]
第4実施形態に係るコンピュータプログラムについて説明する。すなわち、本実施形態に係るコンピュータプログラムは、上記実施形態に係る溶融金属の測温監視方法を実施するために用いるコンピュータプログラムである。すなわち、本実施形態のコンピュータプログラムは、上記実施形態の溶融金属の測温監視装置の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムまたはプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得る。このため、本発明の技術的範囲には、これらも包含されると理解されたい。
【0063】
本実施形態のコンピュータプログラムは、システムあるいは装置に直接又は遠隔から供給されていてもよい。従って、本発明に係る上記実施形態をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、又は当該プログラムを格納した媒体、当該プログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバーも、本発明の技術的範囲の範疇に含まれる。さらに、上記実施形態の溶融金属の測温監視方法を実施するための処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体も、本発明の技術的範囲の範疇に含まれる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態のコンピュータプログラムは、上記実施形態の溶融金属の測温監視方法の各工程を実現することができるように構成されているので、溶融金属湯面を撮影することにより得られる溶融金属の輝度情報から溶融金属の温度を連続的に測定することができ、明度が調整された溶融金属湯面の画像により槽内監視ができる。
【0065】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術的範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【実施例0066】
真空脱ガス槽内において、本発明に係る溶融金属の測温監視装置を用い、溶融金属を測温した一実施例を示す。本実施例では、取鍋溶鋼量280~350tを処理する真空脱ガス槽を用い、温度1620~1700℃の溶鋼を10~50分間、環流処理したときの処理中の溶融金属の連続測温結果の一部である。
【0067】
図4は、溶鋼環流処理中のCCDカメラ槽内撮影像126から取得される撮影像ガンマ補正前のモニター出力像127及び撮影像ガンマ補正後のモニター出力像128である。
図4から明らかなように、溶鋼環流処理中のCCDカメラ槽内撮影像127の明度は低くなっているのに対して、撮影像ガンマ補正後のCCDカメラ槽内撮影像128の明度は、高くなっていることが理解される。また、
図4に示されるように溶鋼温度T[℃]の算出は、算出部104が備えている溶鋼温度算出ソフトウェアで槽内の最大輝度から算出される。具体的には、本実施例においては、最大輝度I[-]、係数a、bを用いて、T=a×I+bの一次関数を用い、a=0.400、b=1446.4に設定し、溶鋼温度算出ソフトウェアで槽内最大輝度129から溶鋼温度T[℃]を算出した。
【0068】
さらに、本実施例において用いた溶融金属の測温監視装置が備えている溶鋼湯面とCCDカメラとの間に設けた監視撮像孔の下部に回転周期n=25[Hz]、スリット個数A=4のスリット入り回転盤を設けた。スリット入り回転盤が有するスリット部が撮影視野を通過するタイミングでCCDカメラのシャッターを切ることとした。ここで、CCDカメラの露光時間は、上記一般式(3)により算出した。上記一般式(3)において、N=2、α=420×10-6の値を採用し、露光時間を決定した。露光時間は、溶鋼環流処理中に変更せず、一定のまま溶鋼の連続測温と、槽内部の状況の監視を行った。
【0069】
図5は、本発明に係る溶融金属の測温監視装置を真空脱ガス設備に設置して、溶鋼環流処理中の溶融金属の連続測温を実施した結果を示したグラフである。
図5に示されるように溶融金属の連続測温を実施した結果は、経過時間[min](横軸)に対する溶鋼温度T[℃](縦軸)の測温値として示される。なお、
図5中、溶融金属の連続測温は、1秒間に1プロット(測温)として、60プロット/分に設定して行い、5区間の平均値を5秒間の平均値として算出した後、折れ線にて表示した。
図5からも明らかなように、溶鋼温度T[℃]が1580~1595℃の範囲において、溶融金属の連続測温ができることが判明した。すなわち、本発明に係る溶融金属の測温監視装置によれば、真空脱ガス設備の溶鋼環流処理中における溶融金属の連続測温ができた。
【0070】
このように、本発明に係る溶融金属の測温監視装置を用い、溶融金属湯面を撮影することにより得られる輝度情報から溶融金属の温度を連続的に測定することができ、明度を調整した設備内の状況を監視することができる。
本発明に係る溶融金属の測温監視装置は、溶融金属湯面を撮影し得られる輝度情報から溶融金属の温度を連続的に測定することができ、カメラ露光時間を一定としたままソフトウェア内で撮影した映像に対しガンマ補正(画像処理)ができるようになったため、遮光レンズのようなカメラ付帯部品が必要なく連続測温および槽内監視ができるので、製鉄業等の産業上きわめて有用である。