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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132760
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/14 20060101AFI20230914BHJP
   B60R 21/18 20060101ALI20230914BHJP
   B60R 21/262 20110101ALI20230914BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20230914BHJP
【FI】
B60R22/14
B60R21/18
B60R21/262
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038276
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】折▲高▼ 早苗
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
【テーマコード(参考)】
3B087
3D054
【Fターム(参考)】
3B087DE06
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA25
3D054CC15
3D054DD14
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】エアバッグを組み付けたシートベルトにおける繰出口部からの出し入れを、円滑に、行える乗員保護装置を提供すること。
【解決手段】シート1の背もたれ部2の上端3t側に、巻き取り装置27から延びるシートベルト29を前方側に繰出可能に繰出口38を開口させた繰出口部37が、配設され、シートベルトが、タング34をバックル33に締結させて、乗員MPの上半身MUを拘束可能なショルダーベルト部30と、腰部MWを拘束可能なラップベルト部31とを備えて、ラップベルト部の部位に、乗員の上半身を拘束可能に膨張するエアバッグ50が、組み付けられている乗員保護装置MS。背もたれ部の前面5側が、左右非対称として、繰出口部の下方側の近傍領域3nだけに、繰出口部から出し入れするシートベルトとの干渉を抑制する干渉抑制部9、を配設させている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と背もたれ部とを有したシートにおける前記背もたれ部の左右方向の一方の上端側に、巻き取り装置から延びるシートベルトを前方側に繰出可能に繰出口を開口させた繰出口部が、配設され、
前記シートベルトが、前記繰出口部から繰り出された前記シートベルトのタングを、前記座部における前記繰出口部と反対側の左右方向の他方側に配設されたバックルに締結させて、前記繰出口部から前記バックルまでの部位を、乗員の上半身の前面側を拘束可能な前記シートベルトのショルダーベルト部として、前記バックルから、前記座部における前記繰出口部側の左右方向の一方側に設けられた固定端側までの部位を、乗員の腰部の前面側を拘束可能な前記シートベルトのラップベルト部として、前記シートに着座した乗員に対して装着される構成とするとともに、
前記ラップベルト部の部位に、作動時に、膨張用ガスを流入させて、乗員の上半身を拘束可能に膨張するエアバッグが、折り畳まれて組み付けられている乗員保護装置であって、
前記背もたれ部の乗員を受け止める領域を含めた前面側が、
左右非対称として構成されて、
前記繰出口部の下方の近傍領域だけに、前記繰出口部からの繰出時、若しくは、前記繰出口部側への巻き取り時、における前記シートベルトとの干渉を抑制する干渉抑制部、を配設させて構成されていることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記干渉抑制部は、前記背もたれ部の前面の上端側において、左右方向の前記繰出口部を設けた繰出口部側を、前記繰出口部を設けていない非配設部側と比べて、後下方側に凹ませた凹状部位、を備えて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員保護装置としては、シートベルトのラップベルト部に、膨張用ガスを流入させて膨張するエアバッグを組み付けて、シートに着座した乗員を保護するものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。シートは、座部と背もたれ部とを有して、背もたれ部の左右方向の一方の上端に、巻き取り装置(リトラクタ)から延びるシートベルトを前方側に繰出可能に繰出口を開口させた繰出口部が、配設されている。そして、シートベルトは、繰出口部から繰り出されたシートベルトのタングを、座部における繰出口部と反対側の左右方向の他方側に配設されたバックルに締結させて、繰出口部からバックルまでの部位を、乗員の上半身の前面側を拘束可能なシートベルトのショルダーベルト部として、バックルから、座部における繰出口部側の左右方向の一方側に設けられた固定端側までの部位を、乗員の腰部の前面側を拘束可能なシートベルトのラップベルト部として、シートに着座した乗員に対して装着される構成としていた。そして、エアバッグは、既述したように、ラップベルト部の部位に、作動時に膨張用ガスを流入させて乗員の上半身を拘束可能に膨張するように、折り畳まれて組み付けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-56345号公報
【特許文献1】特開2020-66425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の乗員保護装置では、ラップベルト部に折り畳まれたエアバッグが膨張可能に組み付けられており、シートベルトを装着した後のシートベルトを外した際、すなわち、シートベルトの装着解除時、巻き取り装置の引張力により、シートベルトが、繰出前の初期位置に戻ろうとするが、折り畳まれたエアバッグの重量等により、繰出口部付近と干渉して、円滑に、初期位置に復帰できない課題があった。勿論、シートベルト装着時のシートベルトの繰出時にも、繰出口部付近と干渉して、行い難かった。そして特に、良好な座り心地の着座状態を確保できるように、シートの背もたれ部のクッション層の厚みが厚くなれば、一層、背もたれ部における繰出口部付近とシートベルトとの干渉が大きくなってしまう。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、エアバッグを組み付けたシートベルトにおける繰出口部からの出し入れを、円滑に、行える乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗員保護装置では、座部と背もたれ部とを有したシートにおける前記背もたれ部の左右方向の一方の上端側に、巻き取り装置から延びるシートベルトを前方側に繰出可能に繰出口を開口させた繰出口部が、配設され、
前記シートベルトが、前記繰出口部から繰り出された前記シートベルトのタングを、前記座部における前記繰出口部と反対側の左右方向の他方側に配設されたバックルに締結させて、前記繰出口部から前記バックルまでの部位を、乗員の上半身の前面側を拘束可能な前記シートベルトのショルダーベルト部として、前記バックルから、前記座部における前記繰出口部側の左右方向の一方側に設けられた固定端側までの部位を、乗員の腰部の前面側を拘束可能な前記シートベルトのラップベルト部として、前記シートに着座した乗員に対して装着される構成とするとともに、
前記ラップベルト部の部位に、作動時に、膨張用ガスを流入させて、乗員の上半身を拘束可能に膨張するエアバッグが、折り畳まれて組み付けられている乗員保護装置であって、
前記背もたれ部の乗員を受け止める領域を含めた前面側が、
左右非対称として構成されて、
前記繰出口部の下方の近傍領域だけに、前記繰出口部からの繰出時、若しくは、前記繰出口部側への巻き取り時、における前記シートベルトとの干渉を抑制する干渉抑制部、を配設させて構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る乗員保護装置では、乗員への装着時、シートベルトを繰出口部から繰り出したり、あるいは、装着解除時の巻き取り装置の作動による繰出口部側への巻き取り時、シートベルトが、繰出口部の周縁と干渉しようとしても、背もたれ部の前面側における繰出口部の下方の近傍領域には、干渉抑制部が配設されており、シートベルトと背もたれ部における繰出口部の周縁との干渉が抑制されることから、円滑に、繰出口部を経て、シートベルトを出し入れできる。そして、干渉抑制部は、背もたれ部の左右方向の一方側の繰出口部側にだけ、配設されるものであり、繰出口部側から離れた背もたれ部の左右方向の他方側では、干渉抑制部を配設させない構成であり、背もたれ部の左右方向の他方側や、背もたれ部の干渉抑制部の周縁では、クッション層の厚みを厚くすることが可能であり、良好な感触の着座状態を確保できる。
【0008】
したがって、本発明に係る乗員保護装置では、エアバッグを組み付けたシートベルトにおける繰出口部からの出し入れを、円滑に、行え、さらに、クッション層を厚くすることも可能となって、良好な座り心地の着座状態を確保可能となる。
【0009】
そして、本発明に係る乗員保護装置では、前記干渉抑制部は、前記背もたれ部の前面の上端側において、左右方向の前記繰出口部を設けた繰出口部側を、前記繰出口部を設けていない非配設部側と比べて、後下方側に凹ませた凹状部位、を備えて構成されていることが望ましい。
【0010】
このような構成では、シートの背もたれ部において、繰出口部側の干渉抑制部は、前面の上端側を面取りした状態の凹状部位を設けた構成となって、上端側から下方へ長く延びるように、干渉抑制部を配設するものではないことから、背もたれ部の乗員の背面を受け止めるクッション層の厚い乗員受止面を、繰出口部側の部位でも、広く確保することができて、良好な座り心地の着座状態を確保可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態である乗員保護装置の概略斜視図である。
図2】実施形態の乗員保護装置において、シートベルトを二点鎖線で示した状態の概略斜視図である。
図3】実施形態の乗員保護装置の概略左側面図である。
図4】実施形態の乗員保護装置の概略部分平面図である。
図5】実施形態の乗員保護装置における干渉抑制部でのシートベルトの摺動状態を説明する概略部分縦断面図である。
図6】実施形態の乗員保護装置における乗員にシートベルトを装着した状態の概略正面図である。
図7】実施形態の乗員保護装置における乗員にシートベルトを装着した状態の概略左側面図である。
図8】実施形態の乗員保護装置におけるエアバッグが膨張した状態を示す概略斜視図である。
図9】実施形態の乗員保護装置における作動時の概略左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の乗員保護装置MSは、図1~7に示すように、車両の乗員MPが着座する座部20と背もたれ部2とを具備したシート1と、シート1に組み付けられるシートベルト装置25と、エアバッグ装置40と、を備えて構成されている。
【0013】
エアバッグ装置40は、図7~9に示すように、シートベルト装置25のシートベルト29におけるラップベルト部31の組付部位35に組み付けられるバッグ組付体46と、バッグ組付体46のエアバッグ50に膨張用ガスを供給するインフレーター42と、を備えて構成されている。
【0014】
インフレーター42は、膨張用ガスを吐出する略円柱状のインフレーター本体43と、インフレーター本体43から突出して略L字状に屈曲するパイプ部44と、を備えて、シート1の座部20の後面側に取付固定されている(図1,7参照)。パイプ部44には、エアバッグ50の後述するガス供給路部65の先端67aが、外装され、さらに、クランプ45で締め付けられて、連結されている。
【0015】
バッグ組付体46は、エアバッグ50と、バッグ連結部69と、バッグカバー71と、を備え、さらに、実施形態の場合、エアバッグ50とインフレーター42とを連結してインフレーター42からの膨張用ガスをエアバッグ50に供給するガス供給路部65、を備えて構成されている(図8参照)。
【0016】
エアバッグ50は、図8,9に示すように、膨張完了時に、周壁51が、側方から見て略三角柱状に膨張する構成として、底面側の底壁部52、後面側の後壁部53、前面側の前壁部54、及び、左右の側壁部55(L,R)、を備えて構成されている。そして、膨張完了時のエアバッグ50は、底壁部52の下面52a側を、乗員MPの大腿部MFに支持させる支持面57とし、後壁部53の後面53a側を、前方移動する乗員MPの上半身MUを受け止める乗員拘束面58としている。
【0017】
底壁部52の後縁52b付近には、ガス供給路部65からの膨張用ガスを流入させる複数の流入口60aを開口させた流入口部60が配設されている。また、左右の側壁部55L,55Rの前部側には、エアバッグ50内に流入する膨張用ガスの余剰分を排気するベントホール62が開口されている。
【0018】
なお、エアバッグ50は、ガス供給路部65やバッグ連結部69とともに、ポリエステル等の織布から形成されている。
【0019】
ガス供給路部65は、エアバッグ50に連結されるバッグ側部66と、バッグ側部66からインフレーター42側に延びる筒状のガス流路部67と、を備えて構成されている(図8参照)。ガス流路部67は、既述したように、先端67aを、インフレーター42のパイプ部44に、連結させている。バッグ側部66には、エアバッグ50の流入口部60の流入口60aと連通する連通口66aが、配設され、連通口66aの周縁が、流入口60aの周縁に縫合されて、バッグ側部66が、エアバッグ50の下端50aとなる底壁部52の後縁52b側に連結されている。
【0020】
バッグ連結部69は、折り畳まれたエアバッグ50を、ラップベルト部31に対し、ラップベルト部31に沿って、摺動可能に連結させるものであり、筒形状として、実施形態の場合、ガス供給路部65のバッグ側部66を介在させて、エアバッグ50の下面52a側に連結されている。
【0021】
バッグカバー71は、折り畳まれたエアバッグ50とラップベルト部31におけるエアバッグ50の組付部位35とを、膨張時のエアバッグ50を突出可能に覆うように、筒形状として、配設される(図6参照)。実施形態の場合、バッグカバー71は、さらに、エアバッグ50に連結されるガス供給路部65のバッグ側部66、及び、バッグ連結部69も、覆っている。このバッグカバー71は、エアバッグ50等の素材と異なり、意匠性を低下させないように、シート1のシート素材に使用されるようなファブリックから形成されている。
【0022】
なお、バッグ組付体46をラップベルト部31に組み付ける際には、まず、筒状にする前のバッグ連結部69を連結させたガス供給路部65を、エアバッグ50に連結して、エアバッグ50を折り畳む。ついで、筒状にする前のバッグ連結部69により、ラップベルト部31の組付部位35を包んで、バッグ連結部69を筒状に形成する。そして、折り畳んだエアバッグ50等を、組付部位35のラップベルト部31とともに、包んで、バッグカバー71を筒状に形成すれば、バッグ組付体46を、ラップベルト部31の組付部位35に、組み付けて、バッグカバー71で覆うことができる。
【0023】
また、バッグ組付体46をラップベルト部31に組み付けた際には、シートベルト29を乗員MPに装着した状態では、ラップベルト部31の乗員側面31a側が、バッグ連結部69とバッグカバー71とを介在させて、乗員MPの腹部MB側に配置され、ラップベルト部31の反乗員側面31b側では、バッグカバー71に覆われたガス供給路部のバッグ側部66とエアバッグ50とのバッグ組付体46における組付本体46a側が、配設されることとなる。そして、シートベルト29の非装着状態として後述する巻き取り装置27で巻き取られた状態では、ラップベルト部31の反乗員側面31b側が、背もたれ部2の前面5(6a)側と対向して、バッグ組付体46の組付本体46a側を前面5(6a)側に接触させる状態となる。
【0024】
シートベルト装置25は、滑り性能の良好なポリエステル繊維等を編んだ帯状のシートベルト29と、シートベルト29を巻き取る巻き取り装置(リトラクタ)27と、シートベルト29に取り付けられるタング34を締結するバックル33と、を備えて構成されている(図1,3,6参照)。
【0025】
巻き取り装置27は、ベルト29の急激な引き出しがあれば、引き出しを停止させ、さらに、車両の衝突等があれば、引き出したベルト29を巻き取り可能なプリテンショナーを配設させて構成されており、実施形態の場合、シート1の背もたれ部2の本体部3内における上部3a側の左側部3aLに、図示しないシートバックフレームに保持されて、配設されている。
【0026】
シートベルト29は、巻き取り装置27側となる部位を上端29a側として、繰出口部37の繰出口38から突出させている。繰出口部37は、背もたれ部2の本体部3における上端3tの左上端部3tL側に配設されており、繰出口38は、前向きに開口されて、シートベルト29を前方側に引き出し可能に配設されている。そして、シートベルト29は、下端29b側を、シート1の座部20における左側部21側に配設されたアンカ部材32に固定される固定端として、配設されている。アンカ部材32は、座部20における背もたれ部2の繰出口部37を設けた左側の左側部21に、配設されている。
【0027】
また、シートベルト29には、タング34が配設され、タング34は、シート1の座部20における繰出口部37側と逆の右側の右側領域7側(座部20の右側部22側)に配設されたバックル33に、締結されることとなる。そして、タング34をバックル33に締結させた状態のシートベルト29は、タング34から繰出口部37側に延びる部位を、乗員MPの上半身MUの前面側に配置されるショルダーベルト部30とし、タング34から固定端29b側に延びる部位を、乗員MPの腰部MWの前面側に配置されるラップベルト部31としている。なお、バックル33には、図示しないリリースボタンが配設されており、締結したタング34を締結解除する際、リリースボタンを押圧操作すれば、タング34をバックル33から取り外すことができる。
【0028】
そして、シート1の背もたれ部2は、乗員MPの上半身MUを受け止める略長方形板状の本体部3と、本体部3の上端3tの左右方向の中央から上方へ延びるヘッドレスト部4と、を備えて構成されている。本体部3は、左右両縁側を前方に延ばすように、湾曲した略長方形板状としている。背もたれ部2は、本体部3内に配設される逆U字形状の金属製の図示しないシートバックフレームと、シートバックフレームの内側を覆うように配設される図示しないシートバックスプリングと、を備えるとともに、これらのフレームやスプリングとの周囲を覆うように、発泡ポリウレタン等からなるクッション層16と、クッション層16の表面側を覆うファブリック等からなる表皮材17と、が配設されて構成されている(図5参照)。
【0029】
さらに、この背もたれ部2では、本体部3の前面5は、乗員を受け止める乗員受止面5aを中央に配置させるるとともに、乗員受止面5aの左右方向の中央5aaを基準に、繰出口部37側の左側領域6と、左側領域6と反対の右側の右側領域7と、を備えて構成されている。そして、左側領域6と右側領域7とは、左側領域6が、干渉抑制部9を具備している点を除いて、左右対称的な構成としている。
【0030】
干渉抑制部9は、左側領域6の前面6a側における繰出口部37の下方近傍、すなわち、本体部3の前面5側における左上端部3tLの繰出口部37の下方側の近傍領域3nに、配設されて、繰出口部37の繰出口38からの繰出時、及び、繰出口部37側への巻き取り時、におけるシートベルト29との干渉を抑制するように、配設されている。この干渉抑制部9は、背もたれ部2の前面5側の左上端部3tL側において、繰出口部37を設けていない非配設部側、すなわち、右側領域7の右上端部3tR側と比べて、後下方側に凹ませた凹状部位10、を設けて構成されている(図5参照)。
【0031】
凹状部位10は、底面10aの上端10aaが、繰出口部37の前側近傍に配置され、下端10abが、上端10aaの斜め前下方向に位置して、右側領域7の右上端部3tR側の略三角柱状の部位11を面取り(切除)したと同等の形状に、形成されている。下端10ab付近は、徐々に凹みが浅くなって、左側領域6の一般部12、すなわち、右側領域7の前面7aと左右対称の左側領域6の前面6aの部位と面一となるように、構成されている
実施形態の場合、凹状部位10は、底面10aの上下方向の長さ寸法Wlを約50mm、左右方向の幅寸法Wbを、ラップベルト部31の幅寸法Wr(約45mm)より広い約100mm、底面10aにおける右縁10dの中央5aaからの距離Wcを約100mm、として、配設され(図6参照)、底面10aにおける左縁10cは、本体部3の左縁3bと一致させている。
【0032】
また、凹状部位10の底面10aの水平方向からの傾斜角度θは、20~60°程度の範囲内の約40°としている。
【0033】
なお、干渉抑制部9を形成する凹状部位10は、表皮材17に覆われるクッション層16に、背もたれ部2の右上端部3tR側より突出しないように、凹みを設けて、形成されている。
【0034】
実施形態の乗員保護装置MSでは、上記のように、車両に搭載したシート1に装着済みのシートベルト29におけるラップベルト部31の組付部位35に、バッグ組付体46を組み付け、そして、シート1に取付済みのインフレーター42のパイプ部44に、ガス供給路部65の先端67aを、クランプ45を利用して、連結させれば、組み立てることができる。
【0035】
そして、実施形態の乗員保護装置MSでは、シート1に着座した乗員MPが、シートベルト29を装着する際、繰出口部37の繰出口38から引き出しつつ、タング34をバックル33に締結することとなる。その際、シートベルト29が、繰出口部37の下方の近傍領域3nと干渉しようとしても、繰出口部37の下方の前面6a側には、干渉抑制部9が配設されており、シートベルト29と背もたれ部2における繰出口部37の近傍領域3nとの干渉が抑制されることから、円滑に、繰出口部37を経て、シートベルト29を引き出すことができる(図5参照)。また、装着したシートベルト29を取り外す際には、バックル33の図示しないリリースボタンを操作して、タング34をバックル33から外せば、シートベルト29が、巻き取り装置27の引張力を受けて、繰出口部37の繰出口38内に引き込まれて、シートベルト29の引き出し前の初期状態に戻る。その際、シートベルト29が、繰出口部37の近傍領域3nと干渉しようとしても、繰出口部37の下方の前面6a側には、干渉抑制部9が配設されており、シートベルト29と背もたれ部2における繰出口部37の近傍領域3nとの干渉が抑制されることから、円滑に、初期位置に復帰する。
【0036】
なお、引き出し前のシートベルト29における繰出口部37の近傍領域3nの部位は、ラップベルト部31の初期位置の配設部位であり、さらに、背もたれ部2の前面6a側の部位は、バッグカバー71で覆われたバッグ組付体46のエアバッグ50を配置させた組付本体46a側で部位であって、嵩張っており、バッグ組付体46を組み付けていないラップベルト部31の単体ではないことから、干渉抑制部9が無ければ、バッグ組付体46を組み付けたラップベルト部31は、切除部位11のない繰出口部37の近傍の隆起部位3m(図5参照)と干渉して、初期位置まで引き込まれない状態となり易い。
【0037】
そして、干渉抑制部9は、背もたれ部2の左右方向の一方側の繰出口部37側となる左側領域6にだけ、配設されるものであり、繰出口部37側から離れた背もたれ部2の左右方向の他方側の右側領域7では、干渉抑制部9を配設させない構成であり、背もたれ部2の左右方向の他方側の右側領域7や、背もたれ部2の干渉抑制部9の周縁では、クッション層16の厚みを厚くすることが可能であり、良好な感触の着座状態を確保できる。
【0038】
したがって、実施形態の乗員保護装置MSでは、エアバッグ50を組み付けたシートベルト29における繰出口部37からの出し入れを、円滑に、行え、さらに、クッション層16を厚くすることも可能となって、良好な座り心地の着座状態を確保可能となる。
【0039】
なお、実施形態の乗員保護装置MSでは、シート1に着座した乗員MPがシートベルト29を装着した状態で、エアバッグ装置40が作動すれば、折り畳まれたエアバッグ50が、膨張用ガスを流入させ、バッグカバー71を開かせつつ膨張し、そして、支持面57を乗員MPの大腿部MFに支持させ、乗員拘束面58を、乗員MPの上半身MUの前面側を覆えるように、円滑、展開させて、膨張を完了させることとなる(図9参照)。
【0040】
また、実施形態の乗員保護装置MSでは、干渉抑制部9が、背もたれ部2の前面5の上端3t側において、左右方向の繰出口部37を設けた左上端部3tL側を、繰出口部37を設けていない非配設部側の右上端部3tR側と比べて、後下方側に凹ませた凹状部位10、を備えて構成されている。
【0041】
そのため、実施形態では、シート1の背もたれ部2において、繰出口部37側の干渉抑制部9は、左側領域6の前面6aの左上端部3tL側を面取りした状態の凹状部位10を設けた構成となって、上端3t側から下方へ長く延びるように、干渉抑制部9を配設するものではないことから、背もたれ部2の乗員MPの背面MUBを受け止めるクッション層16の厚い乗員受止面5aを、繰出口部37側の部位でも、広く確保することができて、良好な座り心地の着座状態を確保可能となる。
【0042】
なお、実施形態では、シート1の背もたれ部2の左側に、巻き取り装置27、繰出口部37、シートベルト29の固定端29b、エアバッグ装置40のインフレーター42等を配設したが、左右の配置を逆としてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…シート、2…背もたれ部、3…本体部、3a…上部、3aL…(上部)左側部、3t…上端、3tL…左上端部、3tR…右上端部、3n…(繰出口部)近傍部位、5…前面、5a…乗員受止面、6…(繰出口部側)左側領域、6a…前面、7…(反繰出口部側)右側領域、7a…前面、9…干渉抑制部、10…凹状部位、10a…底面、10aa…上端部、10ab…下端部、16…クッション層、20…座部、25…シートベルト装置、27…(リトラクタ)巻き取り装置、29…シートベルト、30…ショルダーベルト部、31…ラップベルト部、33…バックル、34…タング、37…繰出口部、38…繰出口、40…エアバッグ装置、50…エアバッグ、
MS…乗員保護装置、MP…乗員、MW…腰部、MU…上半身、MUB…背面。
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9