(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132764
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 19/04 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
F04D19/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038281
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】508275939
【氏名又は名称】エドワーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 俊介
【テーマコード(参考)】
3H131
【Fターム(参考)】
3H131AA02
3H131BA06
3H131CA31
(57)【要約】
【課題】ボルトの本数が増えても、外筒と締結される外周部品の変形を防止できる真空ポンプを提供する。
【解決手段】本発明に係る真空ポンプは、回転体(103)と、回転体を収容する外筒(127)と、回転体の外周側かつ外筒と同軸上に配置される外周部品(126,128)と、外筒と外周部品とを締結する複数のボルト(115,116)と、外筒に作用するボルト軸力を低減させる軸力低減手段(117)と、を有し、軸力低減手段が、複数のボルトの少なくとも1つに備えられている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と、
前記回転体を収容する外筒と、
前記回転体の外周側かつ前記外筒と同軸上に配置される外周部品と、
前記外筒と前記外周部品とを締結する複数のボルトと、
前記外筒に作用するボルト軸力を低減させる軸力低減手段と、を有し、
前記軸力低減手段が、前記複数のボルトの少なくとも1つに備えられた真空ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の真空ポンプにおいて、
前記軸力低減手段は、ボルトの頭部と、前記外筒の外面であって前記ボルトの頭部と対向するボルト締結面との間に隙間を形成する構造である
ことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載の真空ポンプにおいて、
前記外筒には、前記複数のボルトが貫通する複数の貫通孔が設けられ、
前記外周部品には、前記複数のボルトと螺合する複数のネジ孔が設けられ、
前記複数の貫通孔の少なくとも1つには、前記軸力低減手段としての円筒状のスペーサが挿入され、
前記スペーサを介して、前記ボルトの頭部と前記ボルト締結面との間に前記隙間が形成される
ことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項4】
請求項2に記載の真空ポンプにおいて、
前記外筒には、前記複数のボルトが貫通する複数の貫通孔が設けられ、
前記外周部品には、前記複数のボルトと螺合する複数のネジ孔が設けられ、
前記複数のボルトの少なくとも1つは、貫通孔の長さとネジ孔のネジ深さの合計値よりも大きい呼び長さで形成されることで前記軸力低減手段として機能して、前記ボルトの頭部と前記ボルト締結面との間に前記隙間を形成する
ことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項5】
請求項2に記載の真空ポンプにおいて、
前記外筒には、前記複数のボルトが貫通する複数の貫通孔が設けられ、
前記外周部品には、前記複数のボルトと螺合する複数のネジ孔が設けられ、
前記複数のネジ孔の少なくとも1つの底部には、前記軸力低減手段としてのストッパが設置され、
前記ボルトの先端部が前記ストッパと当接することで、前記ボルトの頭部と前記ボルト締結面との間に前記隙間が形成される
ことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項6】
請求項2~5の何れか1項に記載の真空ポンプにおいて、
前記軸力低減手段は、前記隙間に配置された弾性部材をさらに備えることを特徴とする記載の真空ポンプ。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の真空ポンプにおいて、
前記軸力低減手段が備えられたボルトの本数は、前記軸力低減手段が備えられていないボルトの本数より少ないことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の真空ポンプにおいて、
前記軸力低減手段が備えられたボルトの本数は、前記軸力低減手段が備えられていないボルトの本数より多いことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の真空ポンプにおいて、
前記複数のボルトは同一のボルトであることを特徴とする真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ターボ分子ポンプ等に代表される真空ポンプでは、ケーシング(外筒)及び外周部品(例えば、冷却スペーサ、ベース等)がボルトにより締結されて真空ポンプの外装体を構成している。回転翼を有する回転体は、このケーシングの内部に収容されて、高速で回転する(特許文献1参照)。真空ポンプの運転中に回転体が破壊すると、回転体の回転方向に大きな捩じりトルク(以下、破壊トルクと言う)が発生する。破壊トルクは、ケーシングと外周部品を締結しているボルトに作用するため、ボルトは、この破壊トルクを吸収する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ポンプ仕事量の増加に伴う大型化や高温要求に伴う高耐熱性材への材料変更によって、回転体の重量が重くなる傾向にある。回転体の重量が重くなると破壊トルクも大きくなり、それに伴ってボルトのサイズ及び本数が多くなる。そのため、ケーシング及び外周部品にはボルトの高い軸力が掛かり、外周部品が変形する可能性がある。特に、特許文献1のように、ケーシングと外周部品との間に軸方向に隙間がある場合、ボルトの軸力によって外周部品には曲げモーメントが掛かるため、外周部品が変形する虞がある。
【0005】
ボルトの軸力を変えずに破壊トルクの増加分を吸収するには、例えば、ボルトのピッチ円径(PCD)を大きくすれば良いが、真空ポンプのサイズが大きくなってしまうため、好ましくない。また、特殊な高強度のボルトを使用すれば、ボルト本数を増やさなくて済むが、汎用性に乏しく、コストが嵩んでしまうといった課題もある。
【0006】
そこで、本発明は、ボルトの本数が増えても、外筒と締結される外周部品の変形を防止できる真空ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、回転体と、前記回転体を収容する外筒と、前記回転体の外周側かつ前記外筒と同軸上に配置される外周部品と、前記外筒と前記外周部品とを締結する複数のボルトと、前記外筒に作用するボルト軸力を低減させる軸力低減手段と、を有し、前記軸力低減手段が、前記複数のボルトの少なくとも1つに備えられた真空ポンプである。
【0008】
また、上記構成において、前記軸力低減手段は、ボルトの頭部と、前記外筒の外面であって前記ボルトの頭部と対向するボルト締結面との間に隙間を形成する構造であるのが好ましい。
【0009】
また、上記構成において、前記外筒には、前記複数のボルトが貫通する複数の貫通孔が設けられ、前記外周部品には、前記複数のボルトと螺合する複数のネジ孔が設けられ、前記複数の貫通孔の少なくとも1つには、前記軸力低減手段としての円筒状のスペーサが挿入され、前記スペーサを介して、前記ボルトの頭部と前記ボルト締結面との間に前記隙間が形成されるのが好ましい。
【0010】
また、上記構成において、前記外筒には、前記複数のボルトが貫通する複数の貫通孔が設けられ、前記外周部品には、前記複数のボルトと螺合する複数のネジ孔が設けられ、前記複数のボルトの少なくとも1つは、貫通孔の長さとネジ孔のネジ深さの合計値よりも大きい呼び長さで形成されることで前記軸力低減手段として機能して、前記ボルトの頭部と前記ボルト締結面との間に前記隙間を形成するのが好ましい。
【0011】
また、上記構成において、前記外筒には、前記複数のボルトが貫通する複数の貫通孔が設けられ、前記外周部品には、前記複数のボルトと螺合する複数のネジ孔が設けられ、前記複数のネジ孔の少なくとも1つの底部には、前記軸力低減手段としてのストッパが設置され、前記ボルトの先端部が前記ストッパと当接することで、前記ボルトの頭部と前記ボルト締結面との間に前記隙間が形成されるのが好ましい。
【0012】
また、上記構成において、前記軸力低減手段は、前記隙間に配置された弾性部材をさらに備えるのが好ましい。
【0013】
また、上記構成において、前記軸力低減手段が備えられたボルトの本数は、前記軸力低減手段が備えられていないボルトの本数より少なくても良い。
【0014】
また、上記構成において、前記軸力低減手段が備えられたボルトの本数は、前記軸力低減手段が備えられていないボルトの本数より多くても良い。
【0015】
また、上記構成において、前記複数のボルトは同一のボルトであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る真空ポンプよれば、ボルトの本数が増えても、外筒と締結される外周部品の変形を防止できる。なお、上記した以外の課題、構成、及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るターボ分子ポンプの縦断面図である。
【
図2】
図1に示すターボ分子ポンプのアンプ回路の回路図である。
【
図3】電流指令値が検出値より大きい場合におけるアンプ制御回路の制御を示すタイムチャートである。
【
図4】電流指令値が検出値より小さい場合におけるアンプ制御回路の制御を示すタイムチャートである。
【
図5】第1ボルト及び第2ボルトの位置をターボ分子ポンプの上面から見て模式的に示した図である。
【
図8】変形例1に係る第2ボルトの締結部分の要部拡大図である。
【
図9】変形例2に係る第2ボルトの締結部分の要部拡大図である。
【
図10】変形例3に係る第2ボルトの締結部分の要部拡大図である。
【
図11】変形例4に係る第2ボルトの締結部分を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る真空ポンプの実施形態について、ターボ分子ポンプを例に挙げて、図面を参照しながら説明する。
【0019】
このターボ分子ポンプ100の縦断面図を
図1に示す。
図1において、ターボ分子ポンプ100は、円筒状の外筒127の上端に吸気口101が形成されている。そして、外筒127の内方には、ガスを吸引排気するためのタービンブレードである複数の回転翼102(102a、102b、102c・・・)を周部に放射状かつ多段に形成した回転体103が備えられている。この回転体103の中心にはロータ軸113が取り付けられており、このロータ軸113は、例えば5軸制御の磁気軸受により空中に浮上支持かつ位置制御されている。回転体103は、一般的に、アルミニウム又はアルミニウム合金、あるいはステンレスなどの金属によって構成されている。
【0020】
また、
図1に示すように、回転体103の外周側には、外周部品である水冷スペーサ128及びアウターウォール126が配置されている。水冷スペーサ128は、円環状の冷却管110(
図6参照)が内蔵されたリング状の部材である。この冷却管110に冷却水が供給されることで、水冷スペーサ128の周辺の部品が冷却される。即ち、回転体103の回転により発生した熱は、水冷スペーサ128によって冷却される。アウターウォール126は、ターボ分子ポンプ100の略下半分を囲う円筒状の部材である。水冷スペーサ128とアウターウォール126とは、外筒127の下方に、外筒127と同軸上に順に並べて配置される。これら外筒127、水冷スペーサ128、及びアウターウォール126は、複数のボルト115,116により締結されて一体化されており、ベース部129と共に回転体103を収容するターボ分子ポンプ100の外装体(ケーシング)を構成している。
【0021】
上側径方向電磁石104は、4個の電磁石がX軸とY軸とに対をなして配置されている。この上側径方向電磁石104に近接して、かつ上側径方向電磁石104のそれぞれに対応して4個の上側径方向センサ107が備えられている。上側径方向センサ107は、例えば伝導巻線を有するインダクタンスセンサや渦電流センサなどが用いられ、ロータ軸113の位置に応じて変化するこの伝導巻線のインダクタンスの変化に基づいてロータ軸113の位置を検出する。この上側径方向センサ107はロータ軸113、すなわちそれに固定された回転体103の径方向変位を検出し、制御装置200に送るように構成されている。
【0022】
この制御装置200においては、例えばPID調節機能を有する補償回路が、上側径方向センサ107によって検出された位置信号に基づいて、上側径方向電磁石104の励磁制御指令信号を生成し、
図2に示すアンプ回路150(後述する)が、この励磁制御指令信号に基づいて、上側径方向電磁石104を励磁制御することで、ロータ軸113の上側の径方向位置が調整される。
【0023】
そして、このロータ軸113は、高透磁率材(鉄、ステンレスなど)などにより形成され、上側径方向電磁石104の磁力により吸引されるようになっている。かかる調整は、X軸方向とY軸方向とにそれぞれ独立して行われる。また、下側径方向電磁石105及び下側径方向センサ108が、上側径方向電磁石104及び上側径方向センサ107と同様に配置され、ロータ軸113の下側の径方向位置を上側の径方向位置と同様に調整している。
【0024】
さらに、軸方向電磁石106A、106Bが、ロータ軸113の下部に備えた円板状の金属ディスク111を上下に挟んで配置されている。金属ディスク111は、鉄などの高透磁率材で構成されている。ロータ軸113の軸方向変位を検出するために軸方向センサ109が備えられ、その軸方向位置信号が制御装置200に送られるように構成されている。
【0025】
そして、制御装置200において、例えばPID調節機能を有する補償回路が、軸方向センサ109によって検出された軸方向位置信号に基づいて、軸方向電磁石106Aと軸方向電磁石106Bのそれぞれの励磁制御指令信号を生成し、アンプ回路150が、これらの励磁制御指令信号に基づいて、軸方向電磁石106Aと軸方向電磁石106Bをそれぞれ励磁制御することで、軸方向電磁石106Aが磁力により金属ディスク111を上方に吸引し、軸方向電磁石106Bが金属ディスク111を下方に吸引し、ロータ軸113の軸方向位置が調整される。
【0026】
このように、制御装置200は、この軸方向電磁石106A、106Bが金属ディスク111に及ぼす磁力を適当に調節し、ロータ軸113を軸方向に磁気浮上させ、空間に非接触で保持するようになっている。なお、これら上側径方向電磁石104、下側径方向電磁石105及び軸方向電磁石106A、106Bを励磁制御するアンプ回路150については、後述する。
【0027】
一方、モータ121は、ロータ軸113を取り囲むように周状に配置された複数の磁極を備えている。各磁極は、ロータ軸113との間に作用する電磁力を介してロータ軸113を回転駆動するように、制御装置200によって制御されている。また、モータ121には図示しない例えばホール素子、レゾルバ、エンコーダなどの回転速度センサが組み込まれており、この回転速度センサの検出信号によりロータ軸113の回転速度が検出されるようになっている。
【0028】
さらに、例えば下側径方向センサ108近傍に、図示しない位相センサが取り付けてあり、ロータ軸113の回転の位相を検出するようになっている。制御装置200では、この位相センサと回転速度センサの検出信号を共に用いて磁極の位置を検出するようになっている。
【0029】
回転翼102(102a、102b、102c・・・)とわずかの空隙を隔てて複数枚の固定翼123(123a、123b、123c・・・)が配設されている。回転翼102(102a、102b、102c・・・)は、それぞれ排気ガスの分子を衝突により下方向に移送するため、ロータ軸113の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜して形成されている。固定翼123(123a、123b、123c・・・)は、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス、銅などの金属、又はこれらの金属を成分として含む合金などの金属によって構成されている。
【0030】
また、固定翼123も、同様にロータ軸113の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜して形成され、かつ外筒127の内方に向けて回転翼102の段と互い違いに配設されている。そして、固定翼123の外周端は、複数の段積みされた固定翼スペーサ125(125a、125b、125c・・・)の間に嵌挿された状態で支持されている。
【0031】
固定翼スペーサ125はリング状の部材であり、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス、銅などの金属、又はこれらの金属を成分として含む合金などの金属によって構成されている。固定翼スペーサ125の外周には、わずかの空隙を隔てて外筒127が固定されている。外筒127の底部(より詳細には、アウターウォール126の底部)にはベース部129が配設されている。ベース部129の上方には排気口133が形成され、外部に連通されている。チャンバ(真空チャンバ)側から吸気口101に入ってベース部129に向かって移送されてきた排気ガスは、排気口133へと送られる。
【0032】
さらに、ターボ分子ポンプ100の用途によって、固定翼スペーサ125の下部とベース部129の間には、ネジ付スペーサ131が配設される。ネジ付スペーサ131は、アルミニウム、銅、ステンレス、鉄、又はこれらの金属を成分とする合金などの金属によって構成された円筒状の部材であり、その内周面に螺旋状のネジ溝131aが複数条刻設されている。ネジ溝131aの螺旋の方向は、回転体103の回転方向に排気ガスの分子が移動したときに、この分子が排気口133の方へ移送される方向である。回転体103の回転翼102(102a、102b、102c・・・)に続く最下部には円筒部102dが垂下されている。この円筒部102dの外周面は、円筒状で、かつネジ付スペーサ131の内周面に向かって張り出されており、このネジ付スペーサ131の内周面と所定の隙間を隔てて近接されている。回転翼102および固定翼123によってネジ溝131aに移送されてきた排気ガスは、ネジ溝131aに案内されつつベース部129へと送られる。
【0033】
より詳細には、ネジ溝131aに案内された排気ガスは、ベース部129の上方に形成された環状空間135へと送られ、環状空間135を周回しながら排気口133を介して外部に排出される。この環状空間135は、回転体(ロータ)103の円筒部102d、ネジ付スペーサ(ステータ部)131、ヒータスペーサ153、及びベース部129とで仕切られた環状の空間である。
【0034】
ここで、ヒータスペーサ153は、円筒状に形成された部材であり、本実施形態ではネジ付スペーサ131と一体で構成される。勿論、ヒータスペーサ153とネジ付スペーサ131とは別体で構成されていても良い。ヒータスペーサ153は、例えばアルミニウムやステンレス等の金属により構成される。ヒータスペーサ153には加熱手段としてのヒータ195が差し込まれており、ヒータ195が発熱することで、ヒータスペーサ153を介してネジ付スペーサ131が加熱される。また、ヒータ195により、環状空間135を流れる排気ガスも加熱される。これにより、排気ガスの温度低下による堆積物の生成が抑制される。
【0035】
ベース部129は、ターボ分子ポンプ100の基底部を構成する円盤状の部材であり、一般には鉄、アルミニウム、ステンレスなどの金属によって構成されている。ベース部129はターボ分子ポンプ100を物理的に保持すると共に、熱の伝導路の機能も兼ね備えているので、鉄、アルミニウムや銅などの剛性があり、熱伝導率も高い金属が使用されるのが望ましい。
【0036】
かかる構成において、回転翼102がロータ軸113と共にモータ121により回転駆動されると、回転翼102と固定翼123の作用により、吸気口101を通じてチャンバから排気ガスが吸気される。回転翼102の回転速度は通常20000rpm~90000rpmであり、回転翼102の先端での周速度は200m/s~400m/sに達する。吸気口101から吸気された排気ガスは、回転翼102と固定翼123の間を通り、ベース部129へ移送される。このとき、排気ガスが回転翼102に接触する際に生ずる摩擦熱や、モータ121で発生した熱の伝導などにより、回転翼102の温度は上昇するが、この熱は、輻射又は排気ガスの気体分子などによる伝導により固定翼123側に伝達される。
【0037】
固定翼スペーサ125は、外周部で互いに接合しており、固定翼123が回転翼102から受け取った熱や排気ガスが固定翼123に接触する際に生ずる摩擦熱などを外部へと伝達する。
【0038】
なお、上記では、ネジ付スペーサ131は回転体103の円筒部102dの外周に配設し、ネジ付スペーサ131の内周面にネジ溝131aが刻設されているとして説明した。しかしながら、これとは逆に円筒部102dの外周面にネジ溝が刻設され、その周囲に円筒状の内周面を有するスペーサが配置される場合もある。
【0039】
また、ターボ分子ポンプ100の用途によっては、吸気口101から吸引されたガスが上側径方向電磁石104、上側径方向センサ107、モータ121、下側径方向電磁石105、下側径方向センサ108、軸方向電磁石106A、106B、軸方向センサ109などで構成される電装部に侵入することのないよう、電装部は周囲をステータコラム122で覆われ、このステータコラム122内はパージガスにて所定圧に保たれる場合もある。
【0040】
この場合には、ベース部129には図示しない配管が配設され、この配管を通じてパージガスが導入される。導入されたパージガスは、保護ベアリング120とロータ軸113間、モータ121のロータとステータ間、ステータコラム122と回転翼102の内周側円筒部の間の隙間を通じて排気口133へ送出される。なお、
図1に示す通り、ステータコラム122は、ベース部129の中心位置に立設している。また、本実施形態では、ベース部129に冷却手段としての水冷管149が設けられている。この水冷管149に冷却水が供給されることで、ベース部129及びステータコラム122は好適な温度に保たれている。
【0041】
ここに、ターボ分子ポンプ100は、機種の特定と、個々に調整された固有のパラメータ(例えば、機種に対応する諸特性)に基づいた制御を要する。この制御パラメータを格納するために、上記ターボ分子ポンプ100は、その本体内に電子回路部141を備えている。電子回路部141は、EEP-ROM等の半導体メモリ及びそのアクセスのための半導体素子等の電子部品、それらの実装用の基板143等から構成される。この電子回路部141は、ターボ分子ポンプ100の下部を構成するベース部129の例えば中央付近の図示しない回転速度センサの下部に収容され、気密性の底蓋145によって閉じられている。
【0042】
ところで、半導体の製造工程では、チャンバに導入されるプロセスガスの中には、その圧力が所定値よりも高くなり、或いは、その温度が所定値よりも低くなると、固体となる性質を有するものがある。ターボ分子ポンプ100内部では、排気ガスの圧力は、吸気口101で最も低く排気口133で最も高い。プロセスガスが吸気口101から排気口133へ移送される途中で、その圧力が所定値よりも高くなったり、その温度が所定値よりも低くなったりすると、プロセスガスは、固体状となり、ターボ分子ポンプ100内部に付着して堆積する。
【0043】
例えば、Alエッチング装置にプロセスガスとしてSiCl4が使用された場合、低真空(760[torr]~10-2[torr])かつ、低温(約20[℃])のとき、固体生成物(例えばAlCl3)が析出し、ターボ分子ポンプ100内部に付着堆積することが蒸気圧曲線からわかる。これにより、ターボ分子ポンプ100内部にプロセスガスの析出物が堆積すると、この堆積物がポンプ流路を狭め、ターボ分子ポンプ100の性能を低下させる原因となる。そして、前述した生成物は、排気口133付近やネジ付スペーサ131付近の圧力が高い部分で凝固、付着し易い状況にあった。
【0044】
そのため、この問題を解決するために、従来はベース部129等の外周に図示しないヒータや環状の水冷管149を巻着させ、かつ例えばベース部129に図示しない温度センサ(例えばサーミスタ)を埋め込み、この温度センサの信号に基づいてベース部129の温度を一定の高い温度(設定温度)に保つようにヒータの加熱や水冷管149による冷却の制御(以下TMSという。TMS;Temperature Management System)が行われている。
【0045】
次に、このように構成されるターボ分子ポンプ100に関して、その上側径方向電磁石104、下側径方向電磁石105及び軸方向電磁石106A、106Bを励磁制御するアンプ回路150について説明する。このアンプ回路150の回路図を
図2に示す。
【0046】
図2において、上側径方向電磁石104等を構成する電磁石巻線151は、その一端がトランジスタ161を介して電源171の正極171aに接続されており、また、その他端が電流検出回路181及びトランジスタ162を介して電源171の負極171bに接続されている。そして、トランジスタ161、162は、いわゆるパワーMOSFETとなっており、そのソース-ドレイン間にダイオードが接続された構造を有している。
【0047】
このとき、トランジスタ161は、そのダイオードのカソード端子161aが正極171aに接続されるとともに、アノード端子161bが電磁石巻線151の一端と接続されるようになっている。また、トランジスタ162は、そのダイオードのカソード端子162aが電流検出回路181に接続されるとともに、アノード端子162bが負極171bと接続されるようになっている。
【0048】
一方、電流回生用のダイオード165は、そのカソード端子165aが電磁石巻線151の一端に接続されるとともに、そのアノード端子165bが負極171bに接続されるようになっている。また、これと同様に、電流回生用のダイオード166は、そのカソード端子166aが正極171aに接続されるとともに、そのアノード端子166bが電流検出回路181を介して電磁石巻線151の他端に接続されるようになっている。そして、電流検出回路181は、例えばホールセンサ式電流センサや電気抵抗素子で構成されている。
【0049】
以上のように構成されるアンプ回路150は、一つの電磁石に対応されるものである。そのため、磁気軸受が5軸制御で、電磁石104、105、106A、106Bが合計10個ある場合には、電磁石のそれぞれについて同様のアンプ回路150が構成され、電源171に対して10個のアンプ回路150が並列に接続されるようになっている。
【0050】
さらに、アンプ制御回路191は、例えば、制御装置200の図示しないディジタル・シグナル・プロセッサ部(以下、DSP部という)によって構成され、このアンプ制御回路191は、トランジスタ161、162のon/offを切り替えるようになっている。
【0051】
アンプ制御回路191は、電流検出回路181が検出した電流値(この電流値を反映した信号を電流検出信号191cという)と所定の電流指令値とを比較するようになっている。そして、この比較結果に基づき、PWM制御による1周期である制御サイクルTs内に発生させるパルス幅の大きさ(パルス幅時間Tp1、Tp2)を決めるようになっている。その結果、このパルス幅を有するゲート駆動信号191a、191bを、アンプ制御回路191からトランジスタ161、162のゲート端子に出力するようになっている。
【0052】
なお、回転体103の回転速度の加速運転中に共振点を通過する際や定速運転中に外乱が発生した際等に、高速かつ強い力での回転体103の位置制御をする必要がある。そのため、電磁石巻線151に流れる電流の急激な増加(あるいは減少)ができるように、電源171としては、例えば50V程度の高電圧が使用されるようになっている。また、電源171の正極171aと負極171bとの間には、電源171の安定化のために、通常コンデンサが接続されている(図示略)。
【0053】
かかる構成において、トランジスタ161、162の両方をonにすると、電磁石巻線151に流れる電流(以下、電磁石電流iLという)が増加し、両方をoffにすると、電磁石電流iLが減少する。
【0054】
また、トランジスタ161、162の一方をonにし他方をoffにすると、いわゆるフライホイール電流が保持される。そして、このようにアンプ回路150にフライホイール電流を流すことで、アンプ回路150におけるヒステリシス損を減少させ、回路全体としての消費電力を低く抑えることができる。また、このようにトランジスタ161、162を制御することにより、ターボ分子ポンプ100に生じる高調波等の高周波ノイズを低減することができる。さらに、このフライホイール電流を電流検出回路181で測定することで電磁石巻線151を流れる電磁石電流iLが検出可能となる。
【0055】
すなわち、検出した電流値が電流指令値より小さい場合には、
図3に示すように制御サイクルTs(例えば100μs)中で1回だけ、パルス幅時間Tp1に相当する時間分だけトランジスタ161、162の両方をonにする。そのため、この期間中の電磁石電流iLは、正極171aから負極171bへ、トランジスタ161、162を介して流し得る電流値iLmax(図示せず)に向かって増加する。
【0056】
一方、検出した電流値が電流指令値より大きい場合には、
図4に示すように制御サイクルTs中で1回だけパルス幅時間Tp2に相当する時間分だけトランジスタ161、162の両方をoffにする。そのため、この期間中の電磁石電流iLは、負極171bから正極171aへ、ダイオード165、166を介して回生し得る電流値iLmin(図示せず)に向かって減少する。
【0057】
そして、いずれの場合にも、パルス幅時間Tp1、Tp2の経過後は、トランジスタ161、162のどちらか1個をonにする。そのため、この期間中は、アンプ回路150にフライホイール電流が保持される。
【0058】
次に、本実施形態に係るターボ分子ポンプ100の特徴部分について、詳しく説明する。本実施形態では、外筒127と水冷スペーサ128とアウターウォール126とを、複数のボルト115,116で固定しているが、第1ボルト115と第2ボルト116とで固定の方法が異なっている。なお、第1ボルト115と第2ボルト116とは同一である。
【0059】
図5は、第1ボルト115及び第2ボルト116の位置をターボ分子ポンプ100の上面から見て模式的に示した図である。
図5に示すように、第1ボルト115と第2ボルト116とは、外筒127の中心Oと同心円上に等間隔で配置されているが、等間隔に配置されていなくても良いし、必ずしも第1ボルト115と第2ボルトとが同心円上に配置されていなくても良い。また、本実施形態において、第1ボルト115の本数は12本、第2ボルト116の本数は4本であり、第2ボルト116の本数が第1ボルト115の本数より少ない。勿論、第2ボルト116の本数が第1ボルト115の本数より多くても良いし、両者の本数が同じでも良い。外筒127と水冷スペーサ128とアウターウォール126とをボルト締結するのに必要な軸力と、回転体103の破壊時に受ける破壊トルクとを考慮して、好適なボルト本数とすれば良い。そして、
図5において、第1ボルト115は、通常の手法により締め付けられているが、第2ボルト116は、後述する軸力低減手段(スペーサ117)を介して締め付けられている。
【0060】
図6は第1ボルト115の締結部分の要部拡大図であり、
図7は第2ボルト116の締結部分の要部拡大図である。
図6及び
図7に示すように、外筒127には、第1ボルト115及び第2ボルト116が貫通する貫通孔127aが設けられている。水冷スペーサ128にも同様に貫通孔128aが設けられている。一方、アウターウォール126には、第1ボルト115のネジ部115b及び第2ボルト116のネジ部116bと螺合するネジ孔126aが設けられている。ボルト115,116を貫通孔127a,128aを介してネジ孔126aに挿入して所定のトルクで締め付けることで、外筒127と水冷スペーサ128とアウターウォール126とが一体的に固定される。なお、第2ボルト116が貫通する貫通孔127a,128aは、後述するスペーサ117が挿入されるため、第1ボルト115が貫通する貫通孔127a,128aより直径が大きい。
【0061】
図6に示すように、第1ボルト115は、貫通孔127a,128aを介してネジ孔126aに挿入され、従来と同様の手法で締め付けられる。そのため、第1ボルト115の頭部115aがボルト締結面127bと当接し、第1ボルト115の軸力は、外筒127及び水冷スペーサ128に作用する。
【0062】
これに対して、第2ボルト116は、
図7に示すように、スペーサ117を介して締め付けられる構成となっている。以下、軸力低減手段であるスペーサ117の構成について詳しく説明する。
【0063】
スペーサ117は、筒状に形成され、金属により構成され部材であって、
図7に示すように外筒127の貫通孔127a及び水冷スペーサ128の貫通孔128aに挿入される。なお、スペーサ117は金属以外の材料から構成されても良いが、ボルト締結の緩みの原因となり得る、ボルト締結後の径時変化による変形が発生し難い金属の方が好ましい。スペーサ117は、貫通孔127a,128aにスムーズに挿抜可能な外径を有し、かつ、第2ボルト116のネジ部116bがちょうど挿抜可能な内径を有している。そして、スペーサ117は、貫通孔127aの長さと貫通孔128aの長さの合計より若干長い寸法で形成されている。そのため、
図7に示すように、スペーサ117を貫通孔127a,128aに挿入すると、外筒127の表面(ボルト締結面127b)より若干突出した状態となる。
【0064】
第2ボルト116を、スペーサ117を介してネジ孔126aに挿入し、所定のトルクで締め付けると、スペーサ117の長さが邪魔をして、第2ボルト116の頭部116aがボルト締結面127bに接することができない。そのため、第2ボルト116の頭部116aと外筒127の表面のうち頭部116aと対向するボルト締結面127bとの間に、隙間Cが生じる。これにより、第2ボルト116の軸力は、アウターウォール126のみに作用し、外筒127及び水冷スペーサ128に作用しない。即ち、第2ボルト116の軸力が外筒127及び水冷スペーサ128に作用するのを、スペーサ117が低減している(阻止している)。
【0065】
次に、このように構成された本実施形態の効果について説明する。
【0066】
例えば、仕様変更等によって回転体103の重量が重くなると、当然、破壊トルクも大きくなる。特殊なボルトを使用したり、ボルトのピッチ円径(PCD)を大きくしたりすれば、破壊トルクの増加分を吸収できる。しかし、これらの方策を採用したくない場合、ボルト115,116の本数を増やして破壊トルクの増加分を吸収しなければならない。
【0067】
その際、第1ボルト115だけでなく第2ボルト116も
図6に示す従来の手法により締め付けると、外筒127及び水冷スペーサ128に余計な軸力が掛かるため、水冷スペーサ128が変形する虞がある。
【0068】
より詳細に説明すると、第2ボルト116を
図6に示す従来の手法により締め付けると、第2ボルト116の軸力が外筒127及び水冷スペーサ128に作用する。そのため、水冷スペーサ128の外周側の部分は第2ボルト116により締め付けられて固定される。つまり、水冷スペーサ128の外周側は固定端となる。
【0069】
第2ボルト116の軸力は外筒127にも作用するので、外筒127は
図6の下向きに軸力を受ける。そのため、外筒127の上端のフランジ部127f(
図1参照)も、下向きに軸力を受ける。外筒127のフランジ部127fと最上段の固定翼スペーサ125aとは当接しており、各段の固定翼スペーサ125(125a,125b,125c・・・)もそれぞれ当接しているため、外筒127に第2ボルト116の軸力がかかると、その軸力は、固定翼スペーサ125に伝達する。つまり、外筒127のフランジ部127fが第2ボルト116の軸力を受けて、固定翼スペーサ125を下方に押圧する。
図6に示すように、固定翼スペーサ125と水冷スペーサ128とが軸方向において当接しているため、外筒127に掛かる軸力は、固定翼スペーサ125を介して、水冷スペーサ128の内周側の部分(
図6の斜線Aの部分)に作用する。
【0070】
即ち、水冷スペーサ128は、外周側が固定端となり、内周側が自由端となり、その自由端側に第2ボルト116の軸力が下方に作用する。そのため、水冷スペーサ128には固定端を支点にして曲げモーメントが働き、内周側の部分が下方に変形する(曲がる)。よって、破壊トルクの増加分を吸収するために単にボルト本数を増やすと、水冷スペーサ128が変形する虞があるため、必ずしも好ましいとは言えない。
【0071】
一方、本実施形態では、
図7に示すように、第2ボルト116はスペーサ117を介して外筒127と水冷スペーサ128とアウターウォール126とを締結しているため、第2ボルト116の軸力は水冷スペーサ128に作用しない。即ち、
図7の斜線部分に対して下向きの力が掛からない。よって、本実施形態によれば、ターボ分子ポンプ100の仕様変更等によって回転体103の重量が増加し、破壊トルクが大きくなる場合であっても、水冷スペーサ128の変形を防止しつつ、ボルト本数を増やすにより破壊トルクの増加分を吸収できる。
【0072】
つまり、本実施形態は、外筒127と水冷スペーサ128とアウターウォール126との軸方向における締結を第1ボルト115の軸力により確保して、水冷スペーサ128の変形を防止しつつ、破壊トルクを第1ボルト115及び第2ボルト116で吸収できる。
【0073】
このように、本実施形態によれば、ターボ分子ポンプ100の大型化や高温化に伴う仕様変更が要求される場合であっても、汎用性の高いボルトを使用し、ボルト115,116の本数を増やすだけの設計変更で対応できるため、低コスト化を実現できる。また、ボルトのピッチ円径(PCD)を大きくする必要もないので、ターボ分子ポンプ100のサイズ(特に外径)を大きくしなくて済むといった利点もある。
【0074】
(変形例1)
次に、軸力低減手段の変形例1について説明する。変形例1に係る軸力低減手段は、第2ボルト116の頭部116aと外筒127のボルト締結面127bとの間に隙間Cが形成されるように、第2ボルト116の呼び長さLを長くした構成に特徴がある。
図8を参照して詳しく説明する。
図8は、変形例1に係る第2ボルト116の締結部分の要部拡大図である。
【0075】
図8に示すように、変形例1では、外筒127の貫通孔127aの長さと水冷スペーサ128の貫通孔128aの長さとアウターウォール126のネジ孔126aのネジ深さの合計値Dより、第2ボルト116の呼び長さLが大きい。そのため、第2ボルト116を締め付けると、第2ボルト116の頭部116aが外筒127のボルト締結面127bに接する前に、第2ボルト116のネジ部116bの先端がネジ孔126aの底部に突き当たる。その結果、第2ボルト116の頭部116aとボルト締結面127bとの間に隙間Cが形成される。
【0076】
また、ネジ孔126aのネジ深さを第1のボルトのネジ孔126aのネジ深さよりも短くしておくことで、同様の構造を構成することも可能である。
【0077】
この変形例1の構成であっても、隙間Cが形成されていることで、第2ボルト116の軸力は外筒127及び水冷スペーサ128に作用しない。即ち、変形例1では、第2ボルト116自身が、軸力低減手段として機能する。よって、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。即ち、水冷スペーサ128の変形を防止することができる。また、スペーサ117が不要となるため、部品点数の削減にも貢献する。
【0078】
(変形例2)
次に、軸力低減手段の変形例2について説明する。変形例2では、スペーサ117に替えてストッパ118を軸力低減手段として用いた点に特徴がある。
図9を参照して詳しく説明する。
図8は、変形例2に係る第2ボルト116の締結部分の要部拡大図である。
【0079】
図8に示すように、ネジ孔126aの底部には、金属製のストッパ118が螺合されて埋め込まれている。なお、ストッパ118は金属以外の材料で構成されても良いが、ボルト締結の緩みの原因となり得る、ボルト締結後の径時変化による変形が発生し難い金属の方が好ましい。このストッパ118により、第2ボルト116のネジ部116bの先端部がストッパ118と当接した際に、第2ボルト116の頭部116aが外筒127のボルト締結面127bとの間に隙間Cが形成される。
【0080】
この変形例2では、ストッパ118によって隙間Cが形成されているため、第2ボルト116の軸力は外筒127及び水冷スペーサ128に作用しない。よって、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。即ち、水冷スペーサ128の変形を防止することができる。
【0081】
(変形例3)
次に、軸力低減手段の変形例3について説明する。変形例3では、ストッパ118を軸力低減手段として用いていることに加えて、隙間Cに皿バネ159を複数枚配置した点に特徴がある。
図10を参照して詳しく説明する。
図10は、変形例3に係る第2ボルト116の締結部分の要部拡大図である。
【0082】
図10に示すように、変形例3では、隙間Cに弾性部材である皿バネ159が配置されている。具体的には、外筒127に凹部127cが形成されており、この凹部127cに皿バネ159が3枚重ねて配置されている。よって、凹部127cは皿バネ159を収容するための空間となっている。
【0083】
この変形例3によれば、皿バネ159が熱膨張を吸収できるため、第2ボルト116の緩み止めとして効果的である。なお、皿バネ159に替えて、弾性部材として発泡剤やウレタンゴム等を凹部127cに設ける構成としても良い。勿論、皿バネ159等の弾性部材を、本明細書において開示されるあらゆる実施形態や変形例に適用することもできる。
【0084】
(変形例4)
次に、軸力低減手段の変形例4について説明する。変形例4では、第2ボルトとして段付きボルト160を用いている点に特徴がある。段付きボルト160の円筒部(段部)160aは、アウターウォール126と当接するため、スペーサ117と同様の機能を有している。即ち、変形例4は、第2ボルト116とスペーサ117の構成の代わりに、第2ボルト116とスペーサ117を一体化した段付きボルト160により軸力低減手段を構成し、外筒127に軸力が作用しないようにしている。この変形例4によっても、本実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、スペーサ117が不要となるため、部品点数の削減及びコスト削減が期待できる。また、組立が簡単であり、作業性が向上するといった利点もある。
【0085】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例や組合せ例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0086】
本発明は、例えば、水冷スペーサ128とアウターウォール126とが一体化されて外周部品を構成するようなターボ分子ポンプや、水冷スペーサ128がなく外筒127とアウターウォール126とが直接締結される構成のターボ分子ポンプなど、あらゆる真空ポンプに適用可能である。即ち、外筒と外周部品とをボルトで締結する構成を備えた真空ポンプにおいて、ボルトの軸力を過度に外周部品に掛けたくない箇所に、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
100 ターボ分子ポンプ(真空ポンプ)
101 吸気口
102(102a,102b,102c) 回転翼
102d 円筒部
103 回転体
115 第1ボルト
116 第2ボルト
116a 頭部
116b ネジ部
117 スペーサ(軸力低減手段)
118 ストッパ(軸力低減手段)
122 ステータコラム
123(123a,123c、123c) 固定翼
125(125a,125b,125c) 固定翼スペーサ
126 アウターウォール(外周部品)
126a ネジ孔
127 外筒
127a 貫通孔
127b ボルト締結面
127c 凹部
128 水冷スペーサ(外周部品)
128a 貫通孔
129 ベース部
131 ネジ付スペーサ
133 排気口
159 皿バネ
160 段付きボルト(第2ボルト)
C 隙間
【手続補正書】
【提出日】2023-02-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0076
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0076】
また、第2ボルト116のネジ孔126aのネジ深さを第1のボルト115のネジ孔126aのネジ深さよりも短くしておくことで、同様の構造を構成することも可能である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0078
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0078】
(変形例2)
次に、軸力低減手段の変形例2について説明する。変形例2では、スペーサ117に替えてストッパ118を軸力低減手段として用いた点に特徴がある。
図9を参照して詳しく説明する。図
9は、変形例2に係る第2ボルト116の締結部分の要部拡大図である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
図9に示すように、ネジ孔126aの底部には、金属製のストッパ118が螺合されて埋め込まれている。なお、ストッパ118は金属以外の材料で構成されても良いが、ボルト締結の緩みの原因となり得る、ボルト締結後の径時変化による変形が発生し難い金属の方が好ましい。このストッパ118により、第2ボルト116のネジ部116bの先端部がストッパ118と当接した際に、第2ボルト116の頭部116aが外筒127のボルト締結面127bとの間に隙間Cが形成される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0084
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0084】
(変形例4)
次に、軸力低減手段の変形例4について説明する。変形例4では、第2ボルトとして段付きボルト160を用いている点に特徴がある。
図11を参照して詳しく説明する。段付きボルト160の円筒部(段部)160aは、アウターウォール126と当接するため、スペーサ117と同様の機能を有している。即ち、変形例4は、第2ボルト116とスペーサ117の構成の代わりに、第2ボルト116とスペーサ117を一体化した段付きボルト160により軸力低減手段を構成し、外筒127に軸力が作用しないようにしている。この変形例4によっても、本実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、スペーサ117が不要となるため、部品点数の削減及びコスト削減が期待できる。また、組立が簡単であり、作業性が向上するといった利点もある。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0087
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0087】
100 ターボ分子ポンプ(真空ポンプ)
101 吸気口
102(102a,102b,102c) 回転翼
102d 円筒部
103 回転体
115 第1ボルト
116 第2ボルト
116a 頭部
116b ネジ部
117 スペーサ(軸力低減手段)
118 ストッパ(軸力低減手段)
122 ステータコラム
123(123a,123b、123c) 固定翼
125(125a,125b,125c) 固定翼スペーサ
126 アウターウォール(外周部品)
126a ネジ孔
127 外筒
127a 貫通孔
127b ボルト締結面
127c 凹部
128 水冷スペーサ(外周部品)
128a 貫通孔
129 ベース部
131 ネジ付スペーサ
133 排気口
159 皿バネ
160 段付きボルト(第2ボルト)
C 隙間
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正9】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】