(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132768
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】流体荷役装置用の緊急離脱装置
(51)【国際特許分類】
B67D 9/00 20100101AFI20230914BHJP
B67D 7/32 20100101ALI20230914BHJP
【FI】
B67D9/00 Z
B67D7/32 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038287
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】508173901
【氏名又は名称】TBグローバルテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】村山 謙義
【テーマコード(参考)】
3E083
【Fターム(参考)】
3E083AG22
3E083BB04
3E083BB16
(57)【要約】
【課題】簡易な構成にして低コストで容易に製造可能でありながら、良好な緊急離脱動作性能を発揮する流体荷役装置用の緊急離脱装置を提供する。
【解決手段】各カプラー1,2の各弁体1a,2aを閉弁させる弁体操作機構が、シリンダ装置4と、このシリンダ装置4に連結されるロッド5と、このロッド5と係合し各弁体1a,2aの回転軸9に設けられるスコッチヨーク7とで構成され、また、各カプラー1,2の連結状態を保持する保持手段3が、一対の保持半体3a,3bと、この一対の保持半体3a,3bの先端部間に架設され該一対の保持半体3a,3bの開放動作を阻止する開放動作阻止部材8とで構成されている流体荷役装置用の緊急離脱装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流通を遮断する第一弁体を有する第一カプラーと、流体の流通を遮断する第二弁体を有し前記第一カプラーと連結される第二カプラーと、前記第一カプラーと前記第二カプラーとの連結状態を保持する保持手段と、前記第一弁体及び前記第二弁体を開閉動作させる弁体操作機構とを備え、前記弁体操作機構の作動により前記第一弁体及び前記第二弁体が閉弁状態にされた後、前記カプラー連結保持機構による前記第一カプラーと前記第二カプラーとの連結状態の保持が解除され、前記第一カプラーと前記第二カプラーとが切り離されて緊急離脱するように構成されている流体荷役装置用の緊急離脱装置であって、前記弁体操作機構は、シリンダ装置と、このシリンダ装置に連結され該シリンダ装置の作動により進退動作するロッドと、前記第一弁体及び前記第二弁体の夫々の回転軸に設けられ前記ロッドと係合するスコッチヨークとを備え、前記ロッドには前記スコッチヨークに係合する係合部が設けられ、また、前記スコッチヨークには夫々、他端が開放する係合溝が設けられ、この係合溝に前記ロッドの前記係合部が係合し、この係合部が前記係合溝内を移動することにより回動動作し前記回転軸を回転させて前記第一弁体及び前記第二弁体が開閉動作するように構成され、また、前記保持手段は、前記第一カプラーと前記第二カプラーとの連結部に抱着する一対の保持半体と、この一対の保持半体の先端部間に架設され該一対の保持半体の開放動作を阻止する開放動作阻止部材とを備え、前記弁体操作機構の前記ロッドの前記開放動作阻止部材に対する押動作用により該開放動作阻止部材が解除動作し前記一対の保持半体が開放動作して前記第一カプラーと前記第二カプラーとの連結状態の保持が解除されるように構成されていることを特徴とする流体荷役装置用の緊急離脱装置。
【請求項2】
請求項1記載の流体荷役装置用の緊急離脱装置において、前記係合部は、前記第一弁体及び前記第二弁体が開弁状態、閉弁状態の夫々の状態において前記スコッチヨークに係合して該スコッチヨークの回動動作を抑制し、前記第一弁体及び前記第二弁体の前記状態を保持するように構成されていることを特徴とする流体荷役装置用の緊急離脱装置。
【請求項3】
請求項2記載の流体荷役装置用の緊急離脱装置において、前記スコッチヨークは、正面視略U字状に形成され、各先端部に前記ロッドの前記係合部と係合する係合受面が設けられ、一方の係合受面は、前記第一弁体及び前記第二弁体が開弁状態において前記係合部と係合し、他方の係合受面は、前記第一弁体及び前記第二弁体が閉弁状態において前記係合部と係合するように構成されていることを特徴とする流体荷役装置用の緊急離脱装置。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項に記載の流体荷役装置用の緊急離脱装置において、前記ロッドは、前記シリンダ装置のシリンダロッドに連結される第一ロッドと、この第一ロッドに分離自在に嵌合連結される第二ロッドとからなり、前記シリンダロッドの前進移動により前記第一ロッドが前進移動すると共に、前記第二ロッドが前記第一ロッドに押動されて前進移動することで前記スコッチヨークが回動動作し、前記第一弁体及び前記第二弁体が同時に閉弁状態となるように構成されていることを特徴とする流体荷役装置用の緊急離脱装置。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載の流体荷役装置用の緊急離脱装置において、前記開放動作阻止部材は、基端部が一方の前記保持半体の先端部に水平回動自在に設けられ、先端部が他方の前記保持半体の先端部に係脱自在に係合され、また、前記ロッドは、前記一対の保持半体の先端部間に架設される前記開放動作阻止部材の内側に配されると共に、前記開放動作阻止部材側に該開放動作阻止部材を押動する押動部が設けられ、この押動部の前記開放動作阻止部材に対する押動作用により該開放動作阻止部材の先端部が前記他方の保持半体から離脱し前記一対の保持半体が開放動作することで、前記保持手段による前記第一カプラーと前記第二カプラーとの連結状態の保持が解除されるように構成されていることを特徴とする流体荷役装置用の緊急離脱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体荷役装置用の緊急離脱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体荷役装置は、海上のタンカーと陸上の貯蔵設備との間の液化天然ガスや液化石油ガス等の各種流体の荷役作業に用いられるものであり、この流体荷役装置は、強風や高潮、或いは津波等によるタンカーの予期せぬ移動で海上側、陸上側の各流体荷役装置間で流体搬送ラインの破断が生じ、搬送中の流体が外部流出してしまう不具合が発生する可能性があることから、この流体荷役装置の多くには、前記不具合の発生を防止するために、緊急時に速やかに流体の搬送(流通)を遮断して流体の外部への流出防止を確保した後、搬送ラインを海上側、陸上側の夫々に分離し、海上側、陸上側の搬送ライン夫々に掛かる負荷を低減する緊急離脱装置が設けられている。
【0003】
ところで、上記緊急離脱装置に関し、本出願人は特許文献1に示す緊急離脱装置(以下、「従来例」という。)を提案している。
【0004】
この従来例は、
図7に図示したように、第一弁体23を有する第一カプラー21と、第二弁体24を有する第二カプラー22と、第一カプラー21と第二カプラー22とを切り離し自在に連結するカプラー連結機構25と、第一弁体23及び第二弁体24を同時に閉弁させる閉弁機構とを備え、閉弁機構が、シリンダ装置26と、このシリンダ装置26の作動により進退移動する弁体操作ロッド27と、この弁体操作ロッド27と係合し弁体操作ロッド27の進退移動を第一弁体23及び第二弁体24を閉弁させる回動動作に変換するカム機構とで構成され(
図7(a)参照)、緊急時に閉弁機構の作動により第一弁体23及び第二弁体24が閉弁され、この第一弁体23と第二弁体24とが閉弁した後、カプラー連結機構25の解除作動により第一カプラー21と第二カプラー22との連結が解除され、第一カプラー21と第二カプラー22とが緊急離脱可能な状態となるように構成され(
図7(b)参照)、さらに、弁体操作ロッド27は、シリンダ装置26に連結される第一操作ロッド27aと、この第一操作ロッド27aとロッド連結手段を介して係脱自在に連結される第二操作ロッド27bとで構成されると共に、第一弁体23及び第二弁体24が閉弁動作中は、第一操作ロッド27aと第二操作ロッド27bとがロッド連結手段により連結しており、第一弁体23と第二弁体24の閉弁動作完了後は、ロッド連結解除手段28によりロッド連結手段による第一操作ロッド27aと第二操作ロッド27bとの連結が解除されて、第一操作ロッド27aと第二操作ロッド27bとが分離可能な状態となるように構成され(
図7(b)参照)、また、ロッド連結手段は、第一操作ロッド27aと第二操作ロッド27bとのいずれか一方に設けられる係止部29と、いずれか他方に設けられる係止受部30と、係止部29の係止受部30への係止状態を保持する係止状態保持部31とで構成され、第一弁体23及び第二弁体24が開弁状態並びに閉弁動作中は、係止状態保持部31により係止部29の係止受部30への係止状態が保持され、第一弁体23及び第二弁体24が閉弁状態になると、係止状態保持部31による係止部29の係止受部30への係止状態の保持が解除されると共に、ロッド連結解除手段28により係止部29の係止受部30からの係止解除動作が行われ、係止部29の係止受部30への係止状態が解除されて、第一操作ロッド27aと第二操作ロッド27bとが分離可能な状態となるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来例は、閉弁機構及び操作ロッドを構成する部品の形状が複雑であり、且つ、部品点数も多いことから、製造時の組立作業が煩雑であり、また、コスト高となる問題を有している。
【0007】
本発明は上記従来例の改良発明であり、簡易な構成にして低コストで容易に製造可能でありながら、従来例と同等若しくはそれ以上の緊急離脱動作性能を発揮する流体荷役装置用の緊急離脱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
流体の流通を遮断する第一弁体1aを有する第一カプラー1と、流体の流通を遮断する第二弁体2aを有し前記第一カプラー1と連結される第二カプラー2と、前記第一カプラー1と前記第二カプラー2との連結状態を保持する保持手段3と、前記第一弁体1a及び前記第二弁体2aを開閉動作させる弁体操作機構とを備え、前記弁体操作機構の作動により前記第一弁体1a及び前記第二弁体2aが閉弁状態にされた後、前記カプラー連結保持機構による前記第一カプラー1と前記第二カプラー2との連結状態の保持が解除され、前記第一カプラー1と前記第二カプラー2とが切り離されて緊急離脱するように構成されている流体荷役装置用の緊急離脱装置であって、前記弁体操作機構は、シリンダ装置4と、このシリンダ装置4に連結され該シリンダ装置4の作動により進退動作するロッド5と、前記第一弁体1a及び前記第二弁体2aの夫々の回転軸9に設けられ前記ロッド5と係合するスコッチヨーク7とを備え、前記ロッド5には前記スコッチヨーク7に係合する係合部6が設けられ、また、前記スコッチヨーク7には夫々、他端が開放する係合溝7aが設けられ、この係合溝7aに前記ロッド5の前記係合部6が係合し、この係合部6が前記係合溝7a内を移動することにより回動動作し前記回転軸9を回転させて前記第一弁体1a及び前記第二弁体2aが開閉動作するように構成され、また、前記保持手段3は、前記第一カプラー1と前記第二カプラー2との連結部13に抱着する一対の保持半体3a,3bと、この一対の保持半体3a,3bの先端部間に架設され該一対の保持半体3a,3bの開放動作を阻止する開放動作阻止部材8とを備え、前記弁体操作機構の前記ロッド5の前記開放動作阻止部材8に対する押動作用により該開放動作阻止部材8が解除動作し前記一対の保持半体3a,3bが開放動作して前記第一カプラー1と前記第二カプラー2との連結状態の保持が解除されるように構成されていることを特徴とする流体荷役装置用の緊急離脱装置に係るものである。
【0010】
また、請求項1記載の流体荷役装置用の緊急離脱装置において、前記係合部6は、前記第一弁体1a及び前記第二弁体2aが開弁状態、閉弁状態の夫々の状態において前記スコッチヨーク7に係合して該スコッチヨーク7の回動動作を抑制し、前記第一弁体1a及び前記第二弁体2aの前記状態を保持するように構成されていることを特徴とする流体荷役装置用の緊急離脱装置に係るものである。
【0011】
また、請求項2記載の流体荷役装置用の緊急離脱装置において、前記スコッチヨーク7は、正面視略U字状に形成され、各先端部に前記ロッド5の前記係合部6と係合する係合受面7b,7cが設けられ、一方の係合受面7bは、前記第一弁体1a及び前記第二弁体2aが開弁状態において前記係合部6と係合し、他方の係合受面7cは、前記第一弁体1a及び前記第二弁体2aが閉弁状態において前記係合部6と係合するように構成されていることを特徴とする流体荷役装置用の緊急離脱装置に係るものである。
【0012】
また、請求項1~3いずれか1項に記載の流体荷役装置用の緊急離脱装置において、前記ロッド5は、前記シリンダ装置4のシリンダロッド4aに連結される第一ロッド5aと、この第一ロッド5aに分離自在に嵌合連結される第二ロッド5bとからなり、前記シリンダロッド4aの前進移動により前記第一ロッド5aが前進移動すると共に、前記第二ロッド5bが前記第一ロッド5aに押動されて前進移動することで前記スコッチヨーク7が回動動作し、前記第一弁体1a及び前記第二弁体2aが同時に閉弁状態となるように構成されていることを特徴とする流体荷役装置用の緊急離脱装置に係るものである。
【0013】
また、請求項1~4いずれか1項に記載の流体荷役装置用の緊急離脱装置において、前記開放動作阻止部材8は、基端部が一方の前記保持半体3aの先端部に水平回動自在に設けられ、先端部が他方の前記保持半体3bの先端部に係脱自在に係合され、また、前記ロッド5は、前記一対の保持半体3a,3bの先端部間に架設される前記開放動作阻止部材8の内側に配されると共に、前記開放動作阻止部材8側に該開放動作阻止部材8を押動する押動部10が設けられ、この押動部10の前記開放動作阻止部材8に対する押動作用により該開放動作阻止部材8の先端部が前記他方の保持半体3bから離脱し前記一対の保持半体3a,3bが開放動作することで、前記保持手段3による前記第一カプラー1と前記第二カプラー2との連結状態の保持が解除されるように構成されていることを特徴とする流体荷役装置用の緊急離脱装置に係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述のように構成したから、簡易な構成にして低コストで容易に製造可能でありながら、従来例と同等若しくはそれ以上の緊急離脱動作性能を発揮する流体荷役装置用の緊急離脱装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本実施例の弁体操作機構(a)及び各弁体(b)の動作説明図である。
【
図3】本実施例の弁体操作機構(a)及び各弁体(b)の動作説明図である。
【
図4】本実施例の弁体操作機構(a)及び各弁体(b)の動作説明図である。
【
図5】本実施例の弁体操作機構(a)及び各弁体(b)の動作説明図である。
【
図6】本実施例のクランプレバーの解除動作を示す説明図である。
【
図7】従来例の連結状態(a)及び分離状態(b)を示す説明正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0017】
緊急離脱する場合、シリンダ装置4が作動し、このシリンダ装置4の作動によりロッド5が移動し、このロッド5に設けられた各係合部6が夫々、第一弁体1aの回転軸9と連結されたスコッチヨーク7及び第二弁体2aの回転軸9に連結されたスコッチヨーク7の係合溝7aに夫々、嵌合し、ロッド5の移動に伴い、各係合部6が各係合溝7a内を移動することにより各スコッチヨーク7が回動動作し、このスコッチヨーク7の回動動作により第一弁体1a及び第二弁体2aが夫々閉弁動作し、第一弁体1a及び第二弁体2aが閉弁状態となることで係合部6が係合溝7aから離脱しスコッチヨーク7の回動動作が終了し第一弁体1a及び第二弁体2aの閉弁動作が終了する。
【0018】
第一弁体1a及び第二弁体2aが閉弁状態となった後、さらにロッド5が移動し、保持手段3(一対の保持半体3a,3b)の開放動作を阻止している開放動作阻止部材8を押動し、このロッド5による押動作用により開放動作阻止部材8が解除動作し、保持手段3(一対の保持半体3a,3b)が開放動作して、第一カプラー1と第二カプラー2との連結状態の保持が解除される。
【0019】
このように、本発明は、一本のロッド5とスコッチヨーク7の動作により、第一弁体1aと第二弁体2aとをスムーズに閉弁状態にすることができ、さらに、この一本のロッド5の動作により、保持手段3による第一カプラー1と第二カプラー2との連結状態も解除することができる、簡易な構成にして低コストで容易に製造可能な流体荷役装置用の緊急離脱装置となる。
【実施例0020】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0021】
本実施例は、海上のタンカーと陸上の貯蔵設備との間の液化天然ガスや液化石油ガス等の各種流体の荷役作業に用いられる流体荷役装置(ローディングアーム)における、強風や高潮、或いは津波等によるタンカーの予期せぬ移動で海上側、陸上側の各流体荷役装置間で流体搬送ラインの破断が生じるおそれが生じた場合、或いは、海上側、陸上側の一方で火災など不測の事態が生じた場合などの緊急時に、アーム(配管)の破損の防止や被害の拡大を防止するために、速やかに流体の搬送(流通)を遮断して流体の外部への流出防止を確保した後、アームを海上側、陸上側の夫々に分離し、海上側、陸上側のアーム夫々に掛かる負荷を低減するために、この流体荷役装置に設けられる緊急離脱装置であり、流体の流通を遮断する第一弁体1aを有する第一カプラー1と、流体の流通を遮断する第二弁体2aを有し第一カプラー1と連結される第二カプラー2と、第一カプラー1と第二カプラー2との連結状態を保持する保持手段3と、第一弁体1a及び第二弁体2aを開閉動作させる弁体操作機構とを備え、弁体操作機構の作動により第一弁体1a及び第二弁体2aが閉弁状態にされた後、カプラー連結保持機構による第一カプラー1と第二カプラー2との連結状態の保持が解除され、第一カプラー1と第二カプラー2とが切り離されて緊急離脱するように構成されているものである。
【0022】
以下、本実施例に係る構成各部について詳述する。
【0023】
本実施例の第一カプラー1及び第二カプラー2は、
図1に示すように、円筒状に形成され、互いに開口部同士を突き合わせた状態で上下方向に配され(本実施例は、第一カプラー1が上側、第二カプラー2が下側)、保持手段3により連結状態が保持されている。
【0024】
また、第一カプラー1と第二カプラー2には、これらの突き合わせ連結位置を位置決めする(芯出しする)ための位置決め機構が設けられている。
【0025】
具体的には、位置決め機構は、第一カプラー1に設けられた差し込み杆11aを有する一側位置決め部11と、第二カプラー2に設けられ前記差し込み杆11aが挿通される挿通孔12aを有する他側位置決め部12とからなり、一側位置決め部11の差し込み杆11aを他側位置決め部12の挿通孔12aに挿通することにより第一カプラー1と第二カプラー2とが芯出しされた状態で突き合わさるように構成されている。
【0026】
また、この第一カプラー1と第二カプラー2との連結状態を保持する保持手段3は、第一カプラー1と第二カプラー2とのフランジ部同士が連結される連結部13に抱着する一対の保持半体3a,3bと、この一対の保持半体3a,3bの先端部間に架設され該一対の保持半体3a,3bの開放動作を阻止する開放動作阻止部材8とを備え、後述する弁体操作機構のロッド5により開放動作阻止部材8が解除操作され、一対の保持半体3a,3bが開放動作し、第一カプラー1と第二カプラー2との連結状態の保持を解除するように構成されている。
【0027】
具体的には、本実施例は、保持手段3としてクランプ半体3a,3b(保持半体3a,3b)とクランプレバー8(開放動作阻止部材8)とからなるクランプ体3が採用されている。
【0028】
クランプ半体3a,3bは、夫々、第一カプラー1に設けられたクランプ取付部14に水平回動自在に設けられ、緊急離脱時に、第一カプラー1、第二カプラー2に対して(第一カプラー1、第二カプラー2の連結部13から)離反移動するように構成されている。
【0029】
また、クランプ半体3a,3bは、先端側が直線的に形成され、これにより第一カプラー1、第二カプラー2を締め上げているクランプレバー8の締結力が小さくなり、クランプレバー8の係脱動作がスムーズに行われるように構成されている。
【0030】
さらに、クランプ半体3a,3bは、先端部側にシリンダ装置4が設けられる架台15から垂下される線材16が連結され、第一カプラー1と第二カプラー2との連結状態の保持を解除した状態において、先端部側が前記線材16に吊設された状態になり、先端部側の下方への垂れ下がりが抑制されるように構成されている。
【0031】
また、クランプレバー8は、基端部が一方のクランプ半体3aの先端部に水平回動自在に設けられ、先端部が他方のクランプ半体3bの先端部に係脱自在に係合された状態でクランプ半体3a,3bの先端部間に架設され、クランプ半体3a,3bの開放動作を阻止するように構成されている。
【0032】
このクランプレバー8は、前述のとおり、弁体操作機構のロッド5により解除操作されるように構成されており、具体的には、ロッド5の押動作用により外方に押動され、先端部がクランプ半体3bから離脱する解除動作がなされ、クランプ半体3a,3bの開放動作の阻止が解除されるように構成されている。
【0033】
また、第一カプラー1に設けられた第一弁体1a及び第二カプラー2に設けられた第二弁体2aは、夫々、回転軸9が設けられ、後述する弁体操作機構の作動によって回転軸9が回動することにより開閉動作するように構成されている。なお、本実施例では、図示するように弁体にボールバルブ(鋳造タイプ)を採用しているが、バタフライバルブ等、他種のバルブを採用しても良い。
【0034】
また、第一弁体1a及び第二弁体2aを動作させる(操作する)弁体操作機構は、シリンダ装置4と、このシリンダ装置4に連結され、このシリンダ装置4の作動により進退動作するロッド5と、第一弁体1a及び第二弁体2aの夫々の回転軸9に設けられロッド5と係合するスコッチヨーク7とで構成されている。
【0035】
具体的には、シリンダ装置4には、シリンダロッド4aが一側に進退移動する片ロッド式の油圧シリンダ装置が用いられ、シリンダロッド4aの前進(突出)方向が下方側となるようにして上側の第一カプラー1に配設されている。
【0036】
また、ロッド5は、シリンダロッド4aの先端に垂下連結され、シリンダロッド4aの進退(上下)移動に連動して進退(上下)移動するように構成されている。
【0037】
具体的には、ロッド5は、シリンダロッド4aに連結される第一ロッド5aと、この第一ロッド5aに分離自在(係脱自在)に嵌合連結される第二ロッド5bとからなり、シリンダロッド4aの前進移動により第一ロッド5aが前進移動すると共に、第二ロッド5bが第一ロッド5aに押動されて同時に前進移動するように構成され、また、第一カプラー1と第二カプラー2の離脱動作に連動して、第一ロッド5aと第二ロッド5bとが自動分離するように構成されている。
【0038】
より具体的には、本実施例のロッド5は、第一ロッド5aの先端部(第二ロッド5bとの連結部となる下端部)に凸部17が設けられ、第二ロッド5bの基端部(第一ロッド5aとの連結部となる上端部)に凹部18が設けられ、この凸部17と凹部18との凹凸嵌合により自動分離自在に連結されている。なお、本実施例のロッド5は、前記凸部17と凹部18との凹凸嵌合を保持する嵌合保持機構(図示省略)を有し、メンテナンス等で第一弁体1a及び第二弁体2aを開閉動作させる場合は、この嵌合保持機構により第一ロッド5aと第二ロッド5bとを分離不能状態にすることができるように構成されている。
【0039】
また、本実施例のロッド5は、クランプ半体3a,3bの先端部間に架設されるクランプレバー8の内側(カプラー側)にして、このクランプレバー8に近接状態に配されると共に、クランプレバー8側にこのクランプレバー8を外方に押動する押動部10が設けられている。
【0040】
具体的には、押動部10は、摺動傾斜面10aを有し、ロッド5が前進移動する際にこの摺動傾斜面10aがクランプレバー8に当接し摺動することによりクランプレバー8を外方に押動し、クランプレバー8を解除動作させるように構成されている。
【0041】
また、第一ロッド5a及び第二ロッド5bには、夫々、後述するスコッチヨーク7に係合する係合部6が設けられている。
【0042】
本実施例の係合部6は、スコッチヨーク7の係合溝7a内をスムーズに移動(摺動)することができるよう、円形状(ローラ形状)に形成されている。なお、係合部6の形状は本実施例に限定されるものではない。
【0043】
また、この係合部6が係合するスコッチヨーク7は、他端が開放する係合溝7aが設けられ、この係合溝7aにロッド5に設けられた各係合部6が係合し、この係合部6が係合溝7a内を移動することにより回動動作するように構成されている。
【0044】
具体的には、スコッチヨーク7は、図示するように、正面視略U字状に形成され、各先端部にロッド5の係合部6と係合する係合受面7b,7cが設けられ、一方の係合受面7b(本実施例では図中の上側の係合受面7b、以下、「上側係合受面7b」という。)は、第一弁体1a及び第二弁体2aが開弁状態において係合部6と当接係合し、他方の係合受面7c(本実施例では図中の下側の係合受面7c、以下、「下側係合受面7c」という。)は、第一弁体1a及び第二弁体2aが閉弁状態において係合部6と当接係合するように構成されている。なお、本実施例において、「当接係合」は、近接状態にあり少しの移動で当接する近接係合状態を含む。
【0045】
すなわち、本実施例は、第一弁体1a及び第二弁体2aが開弁状態において、各スコッチヨーク7の上側係合受面7bがロッド5の係合部6に当接係合することにより、スコッチヨーク7の回動動作を抑制し、第一弁体1a及び第二弁体2aの開弁状態を保持し、また、第一弁体1a及び第二弁体2aが閉弁状態において、各スコッチヨーク7の下側係合受面7cがロッド5の係合部6に当接係合することにより、スコッチヨーク7の回動動作を抑制し、第一弁体1a及び第二弁体2aの閉弁状態を保持するように構成されている。
【0046】
以上のように構成される本実施例の作用効果を、
図2~5に示す動作説明図に基づいて説明する。
【0047】
図2は本実施例の開弁状態における弁体操作機構の状態(a)及び第一弁体1a、第二弁体2aの各弁体の状態(b)を示している。
【0048】
この開弁状態では、
図2(a)に示すように、ロッド5に設けられた各係合部6に各スコッチヨーク7の上側係合受面7bが当接係合しており、この当接係合によりスコッチヨーク7の閉弁方向への回動動作が抑制され、第一弁体1a及び第二弁体2aの開弁状態が保持されている。
【0049】
緊急離脱時は、
図3(a)に示すように、シリンダ装置4の作動によりシリンダロッド4aが前進移動(伸張動作)し、このシリンダロッド4aの前進移動に連動して、ロッド5が前進移動(第一ロッド5aはシリンダロッド4aに押動され、第二ロッド5bは第一ロッド5aに押動されて下方に向かって移動)し、各係合部6と各スコッチヨーク7の上側係合受面7bとの当接係合が解除され、各スコッチヨーク7が回動動作可能となり、ロッド5のさらなる前進移動により、第一ロッド5aに設けられた係合部6が第一弁体1aの回転軸9に設けられたスコッチヨーク7の係合溝7aに嵌合し、スコッチヨーク7を押動しながら移動することでスコッチヨーク7が閉弁方向に回動動作し、これと同時に、第二ロッド5bに設けられた係合部6が第二弁体2aの回転軸9に設けられたスコッチヨーク7の係合溝7aに嵌合し、スコッチヨーク7を押動しながら移動することでスコッチヨーク7が閉弁方向に回動動作し、
図3(b)に示すように、第一弁体1a及び第二弁体2aが同時に閉弁動作する。
【0050】
そして、さらにシリンダロッド4aの前進移動に連動してロッド5が前進移動することで、
図4(b)に示すように、第一弁体1a及び第二弁体2aが閉弁状態になり、また、第一弁体1a及び第二弁体2aが閉弁状態になった時点で各係合部6が各スコッチヨーク7の係合溝7aから離脱しスコッチヨーク7に対する押動作用が解除され、第一弁体1a及び第二弁体2aの閉弁動作が停止する。この際、各スコッチヨーク7の下側係合受面7cが各係合部6に当接係合し、この当接係合によりスコッチヨーク7の開弁方向への回動動作が抑制され、第一弁体1a及び第二弁体2aの閉弁状態が保持されることとなる。
【0051】
この第一弁体1a及び第二弁体2aの閉弁後、さらにシリンダロッド4aの前進移動に連動して、ロッド5が前進移動することで、ロッド5(本実施例では第二ロッド5b)に設けられた押動部10の摺動傾斜面10aがクランプレバー8に当接し、ロッド5の前進移動により摺動傾斜面10aがクランプレバー8を摺動しながら外方に押動し、
図6に示すように、この摺動傾斜面10a(押動部10)の押動作用によりクランプレバー8が解除動作し、
図5(a)に示すように、各クランプ半体3a,3bが開放動作し、クランプ体3による第一カプラー1と第二カプラー2との連結状態の保持が解除され、第一カプラー1と第二カプラー2とが分離(緊急離脱)する。
【0052】
なお、第一ロッド5aと分離した第二ロッド5bは、図示省略の第二ロッド保持手段により分離時の位置状態が保持され、これにより、第一カプラー1と第二カプラー2とが分離した状態においても、各スコッチヨーク7の下側係合受面7cが夫々の係合部6に当接係合状態にあり、この当接係合によりスコッチヨーク7の開弁方向への回動動作が抑制され、第一弁体1a及び第二弁体2aの閉弁状態が保持されることとなる。
【0053】
このように、本実施例は、一本のロッド5と、二つのスコッチヨーク7とを備える簡易な構成にして低コストで容易に製造可能でありながら、第一弁体1a及び第二弁体2aを同時にスムーズに閉弁状態にすることができ、さらに、この第一弁体1a及び第二弁体2aを閉弁させるためのロッド5の移動の延長動作により、連続的にクランプ体3による第一カプラー1と第二カプラー2との連結状態を解除することができ、しかも、ロッド5に設けた係合部6とスコッチヨーク7(上側係合受面7b及び下側係合受面7c)との当接係合により第一弁体1a及び第二弁体2aの開弁状態、閉弁状態を保持することができる実用性に優れた流体荷役装置用の緊急離脱装置となる。
【0054】
なお、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。