(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132803
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/42 20100101AFI20230914BHJP
【FI】
H01L33/42
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038338
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 健太郎
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA03
5F241CA03
5F241CA40
5F241CA64
5F241CA65
5F241CA88
5F241CA92
5F241CA98
(57)【要約】
【課題】光取り出し効率を向上した発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】発光素子100の製造方法は、第一半導体層11と、第二半導体層12と、第一半導体層11と第二半導体層12との間に位置する活性層13と、を含む半導体構造体10を準備する工程と、第二半導体層12上に、第一膜厚の第一透光性導電層21を第一温度で形成する工程と、第一透光性導電層21を、酸素を含む雰囲気中で、第一温度よりも高い第二温度で加熱する工程と、加熱する工程の後、第一透光性導電層21上に、第一膜厚よりも厚い第二膜厚の第二透光性導電層22を、第一温度よりも高い第三温度で形成する工程とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一半導体層と、
第二半導体層と、
前記第一半導体層と第二半導体層との間に位置する活性層と、
を含む半導体構造体を準備する工程と、
前記第二半導体層上に、第一膜厚の第一透光性導電層を第一温度で形成する工程と、
前記第一透光性導電層を、酸素を含む雰囲気中で、前記第一温度よりも高い第二温度で加熱する工程と、
前記加熱する工程の後、前記第一透光性導電層上に、前記第一膜厚よりも厚い第二膜厚の第二透光性導電層を、前記第一温度よりも高い第三温度で形成する工程と、
を含む発光素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の発光素子の製造方法であって、
前記第一透光性導電層を、蒸着法で形成する発光素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発光素子の製造方法であって、
前記第二透光性導電層を、スパッタリング法又は蒸着法で形成する発光素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の発光素子の製造方法であって、
前記第二温度が、200℃以上500℃以下である発光素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の発光素子の製造方法であって、
前記第二膜厚が、前記第一膜厚の5倍以上40倍以下である発光素子の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の発光素子の製造方法であって、
前記第一膜厚が、2nm以上8nm以下である発光素子の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の発光素子の製造方法であって、
前記第二膜厚が、40nm以上80nm以下である発光素子の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の発光素子の製造方法であって、
前記第一温度が、25℃以上35℃以下である発光素子の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の発光素子の製造方法であって、
前記第一透光性導電層及び第二透光性導電層が、酸化インジウム錫である発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、窒化物半導体等の半導体を用いた発光素子において、半導体層上にITO等の透光性を有する透光性の導電層を配置することが開示されている。このような発光素子において、高い透光性を有する導電層を配置し、光取り出し効率を向上することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的の一は、光取り出し効率を向上した発光素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係る発光素子の製造方法は、第一半導体層と、第二半導体層と、前記第一半導体層と第二半導体層との間に位置する活性層と、を含む半導体構造体を準備する工程と、前記第二半導体層上に、第一膜厚の第一透光性導電層を第一温度で形成する工程と、前記第一透光性導電層を、酸素を含む雰囲気中で、前記第一温度よりも高い第二温度で加熱する工程と、前記加熱する工程の後、前記第一透光性導電層上に、前記第一膜厚よりも厚い第二膜厚の第二透光性導電層を、前記第一温度よりも高い第三温度で形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施形態に係る発光素子の製造方法によれば、低い抵抗率と高い透光性を有する透光性導電層が形成され、光取り出し効率を向上した発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る発光素子を示す模式断面図である。
【
図2】発光装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】発光装置の製造工程を説明するための断面図である。
【
図4】発光装置の製造工程を説明するための断面図である。
【
図5】発光装置の製造工程を説明するための断面図である。
【
図6】発光装置の製造工程を説明するための断面図である。
【
図7】発光装置の製造工程を説明するための断面図である。
【
図8】発光装置の製造工程を説明するための断面図である。
【
図9】発光装置の製造工程を説明するための断面図である。
【
図10】発光装置の製造工程を説明するための断面図である。
【
図11】発光装置の製造工程を説明するための断面図である。
【
図12】実施例1、比較例1、比較例2の透光性導電層のXRD測定結果を示すグラフである。
【
図13】実施例1に係る透光性導電層のAFM写真である。
【
図14】比較例1に係る透光性導電層のAFM写真である。
【
図15】比較例2に係る透光性導電層のAFM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
【0009】
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
[実施形態1]
【0010】
実施形態1に係る発光素子の模式断面図を
図1に示す。この図に示す発光素子100は、基板1と、半導体構造体10と、透光性導電層20と、電極30とを備える。半導体構造体10は、第一半導体層11と、第二半導体層12と、第一半導体層11と第二半導体層12との間に位置する活性層13とを含む。透光性導電層20は、第一透光性導電層21と、第二透光性導電層22とを含む。電極30は、第一電極31と第二電極32を含む。
(基板1)
【0011】
基板1は、半導体構造体10を支持するものである。基板1は、半導体構造体10をエピタキシャル成長させるための成長基板であってもよい。基板1としては、例えば半導体構造体10に窒化物半導体を用いる場合、サファイア(Al2O3)基板や窒化ガリウム基板、SiC基板等を用いることができる。半導体構造体10は、例えば、サファイア基板のC面上に配置される。
(半導体構造体10)
【0012】
半導体構造体10は、基板1の上面に配置される。半導体構造体10は、第一導電型の第一半導体層11と、第二導電型の第二半導体層12と、第一半導体層11と第二半導体層12との間に位置する活性層13とを有する。第一導電型は、n型もしくはp型である。第二導電型は、第一導電型とは異なる導電型であり、p型もしくはn型である。本実施形態では、第一導電型はn型であり、第二導電型はp型である。第一半導体層11上に配置される第一電極31と、第二半導体層12上に配置される第二電極32との間に電圧を印加することで、活性層13が発光する。活性層13からの光は、例えば、紫外光又は可視光である。活性層13の発光ピーク波長は、例えば、400nm以上540nm以下である。
【0013】
第一半導体層11は、第二半導体層12及び活性層13から露出した露出部を有する。第一半導体層11の露出部には、第二半導体層12及び活性層13が配置されていない。
【0014】
半導体構造体10は、例えば、窒化物半導体からなる複数の半導体層が積層された積層体である。ここで、「窒化物半導体」とは、窒素を含む半導体であって、典型的には、InxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1,0≦y≦1,x+y≦1)なる化学式において組成比xおよびyをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものである。
(誘電体層40)
【0015】
誘電体層40は、第一半導体層11の上面の一部及び第二半導体層12の上面の一部にそれぞれ配置される。誘電体層40は、第一半導体層11と第一電極31との間と、第二半導体層と第二電極32との間とにそれぞれ配置される。誘電体層40は、活性層13から第一電極31又は第二電極32に向かう光を半導体構造体10と誘電体層40との界面で全反射し、光取り出し効率を向上させるために配置する。誘電体層40には、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン等の絶縁部材を用いることができる。誘電体層40は、配置しなくてもよい。
(透光性導電層20)
【0016】
透光性導電層20は、第二半導体層12上に配置される。透光性導電層20は、第二半導体層12側から順に、第一透光性導電層21と第二透光性導電層22とが積層された積層構造を有する。透光性導電層20は、第二半導体層12と電気的に接続されている。透光性導電層20は、第二半導体層12の上面の略全面を覆って設けられ、第二電極32に供給される電流を第二半導体層12のより広い範囲に拡散させることができる。
【0017】
透光性導電層20には、例えば、導電性を有する金属酸化物を用いることができる。透光性導電層20は、例えば、Zn、In、Sn、Ga及びTiからなる群から選択された少なくとも1種の元素を含む酸化物が挙げられる。例えば、透光性導電層20には、ITOやZnOを用いることができる。ITOやZnOは、電気抵抗率の低い材料であることから、第一半導体層11上の上面の略全面を覆うのに好適な材料である。
(第一透光性導電層21)
【0018】
第一透光性導電層21は、第二半導体層12上に配置される。第一透光性導電層21は、例えば、第二半導体層12と誘電体層40とを被覆して配置される。第一透光性導電層21の膜厚を、第一膜厚とする。第一膜厚は、例えば、2nm以上8nm以下とすることが好ましい。第一透光性導電層21の膜厚を薄くすることで、第一透光性導電層21による光吸収を低減することができる。
(第二透光性導電層22)
【0019】
第二透光性導電層22は、第一透光性導電層21上に配置される。この第二透光性導電層22は、第一透光性導電層21の膜厚である第一膜厚よりも厚い、第二膜厚を有する。
【0020】
第一透光性導電層21及び第二透光性導電層22の結晶粒の平均径は、例えば、1μm以上であることが好ましく、1μm以上10μm以下とすることがより好ましい。透光性導電層20の結晶粒の平均径がより大きいことで、透光性導電層20の透光性が向上される。第一透光性導電層21と第二透光性導電層22とを含む透光性導電層20の光透過率は、例えば、60%以上とすることができ、好ましくは70%以上とすることできる。
【0021】
また第二膜厚は、第一膜厚の5倍以上40倍以下とすることが好ましい。具体的には、第二膜厚は、40nm以上300nm以下とすることが好ましい。第二透光性導電層22の膜厚を薄くすることにより、透光性導電層20の抵抗率の上昇を低減できる。第一透光性導電層21と第二透光性導電層22とを含む透光性導電層20の抵抗率は、150μΩ・cm以下とすることができる。
【0022】
第一電極31は、第一半導体層11上に配置され、第一半導体層11と電気的に接続されている。第一電極31は、ワイヤボンディングなどによる外部との接続に適するように、例えばCu、Au又はこれらの金属を主成分とする合金を用いることができる。第一電極31は、複数の金属層を含む積層構造としてよい。
【0023】
また第二電極32は、第二透光性導電層22上に配置され、第一透光性導電層21及び第二透光性導電層22を介して第二半導体層12と電気的に接続されている。第二電極32は、ワイヤボンディングなどによる外部との接続に適するように、例えば、Cu、Au又はこれらの金属を主成分とする合金を用いることができる。第二電極32は、複数の金属層を含む積層構造としてよい。
【0024】
発光素子100の表面は、保護膜60で被覆されている。保護膜60は、p側電極32bの上面の一部及び第二n側電極31bの上面の一部を露出させる開口部を有する。保護膜60の開口部において、第一電極31及び第二電極32は外部と電気的に接続される。保護膜60は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン等の絶縁部材を用いることができる。保護膜60は、配置しなくてもよい。
[発光素子の製造方法]
【0025】
実施形態1の発光素子の製造方法を、
図1~
図11を用いて説明する。まず、ステップS1として半導体構造体10を準備する工程を行う。例えば、
図3に示すように、基板1としてサファイア基板を準備し、基板1上に、第一半導体層11と、活性層13と、第二半導体層12とを含む半導体構造体10を形成することで半導体構造体10を準備する。半導体構造体10は、例えば、基板1上に第一半導体層11としてn型半導体層を形成し、n型半導体層上に活性層13を形成し、さらに活性層13上に第二半導体層12としてp型半導体層を、順に形成することで形成する。このような半導体構造体10は、液相成長法、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法やMOCVD(metal organic chemical vapor deposition)法により形成することができる。
【0026】
次に
図4に示すように、第二半導体層12の一部、活性層13の一部、及び第一半導体層11の一部を第二半導体層12側からエッチングなどにより除去して、第一半導体層11の一部を第二半導体層12及び活性層13から露出させる。次に
図5に示すように、第二半導体層12上、及び露出された第一半導体層11上にそれぞれ、誘電体層40を部分的に形成する。誘電体層40は、例えば、蒸着法やスパッタリング法で形成することができる。なお、本明細書において半導体構造体10を準備するとは、既製品の半導体構造を入手することも含む。
【0027】
次にステップS2として第二半導体層12上に第一膜厚の第一透光性導電層21を第一温度で形成する工程を行う。第一透光性導電層21は、例えば
図6に示すように、第二半導体層12上、第一半導体層11上、及び誘電体層40を覆うように形成される。第一温度で形成することで、第一透光性導電層21は、非結晶状態で形成される。第一温度は、例えば、25℃以上35℃以下である。
【0028】
第一透光性導電層21は、例えば、蒸着法やスパッタリング法で形成することができる。第一透光性導電層21の形成には、例えば、蒸着法の一つであるRPD(Reactive Plasma Deposition)法が利用できる。また、第一透光性導電層21を形成する際、真空中で蒸着する真空蒸着法を用いることが好ましい。第一透光性導電層21を形成する時の第二半導体層12へのダメージを考慮すると、第一透光性導電層21をスパッタリング法よりも蒸着法で形成することが好ましい。一方でスパッタリング法は、後述する第二透光性導電層22の形成にも利用できることから、生産性を向上する点では好ましい。
【0029】
次にステップS3として、第一透光性導電層21を、酸素を含む雰囲気中で、第一温度よりも高い第二温度で加熱する工程を行う。第二温度は、200℃以上500℃以下とすることが好ましい。このように、第一透光性導電層21は、比較的低温の第一温度で非結晶状態で形成された後に、第一温度よりも高い第二温度で加熱される。このように、第一透光性導電層21を結晶化していない状態で形成し、酸素を含む雰囲気中で加熱することにより、第一透光性導電層21の表面に大きな結晶粒が形成される。また、第一温度で形成した後の第一透光性導電層21は結晶配向が揃いにくい傾向があり、第一透光性導電層21に対して第二温度により加熱することで結晶配向が揃う傾向がある。このように、第一透光性導電層21を形成後に加熱することにより結晶配向を揃えることができるので、第一透光性導電層21における電子移動度が高くなりシート抵抗を低減できる。
【0030】
次にステップS4として、第一透光性導電層21上に、第二膜厚の第二透光性導電層22を第三温度で形成する工程を行う。第二透光性導電層22は、例えば
図7に示すように、第二半導体層12上及び第一半導体層11上に形成された第一透光性導電層21上に形成される。第三温度は、第一温度よりも高い温度である。第三温度は、例えば、200℃以上500℃以下である。
【0031】
第二透光性導電層22は、例えば、蒸着法やスパッタリング法で形成することができる。第二透光性導電層22の膜厚は、第一膜厚よりも厚い。第二膜厚は、例えば、40nm以上80nm以下である。
【0032】
以上のように、加熱することで表面に比較的大きな結晶粒が形成されている第一透光性導電層21の上に、第一温度よりも高い第三温度で第二透光性導電層22を形成する。これにより、第一透光性導電層21の表面の結晶状態を引き継いで結晶成長された第二透光性導電層22を形成することができる。
【0033】
本実施形態に係る発光素子100の製造方法は、第一透光性導電層21と第二透光性導電層22と含む、高い透光性を有する透光性導電層20を形成することができるので、光取り出し効率を向上した発光素子を得ることができる。第二透光性導電層22よりも抵抗率の高い第一透光性導電層21の膜厚を薄くすることで、透光性導電層20の抵抗率が悪化することを低減できる。そして、加熱された第一透光性導電層21上に第二透光性導電層22を形成することで、第一透光性導電層21及び第二透光性導電層22における結晶粒を大きくし、低い抵抗率と高い透光性を両立させた透光性導電層20を実現している。
【0034】
次にステップS5として、第一透光性導電層21の一部及び第二透光性導電層22の一部を除去する工程を行う。具体的には、
図8に示すように、第二半導体層12の上方に位置する第二透光性導電層22上の一部にレジストマスク50を形成する。この状態で
図9に示すように、レジストマスク50を介して、第一透光性導電層21の一部及び第二透光性導電層22の一部をエッチングする。その後、レジストマスク50を除去することで、第二半導体層12上の一部に形成された透光性導電層20を形成する。このようにして、低い抵抗率と高い透光性を有する透光性導電層20を形成できる。
【0035】
次にステップS6として、電極を形成する工程を行う。具体的には、
図10に示すように、露出された第一半導体層11の上面に誘電体層40を覆う第一n側電極31aを形成する。次に
図11に示すように、第二透光性導電層22の上面にp側電極32bを、第一n側電極31aの上面に第二n側電極31bを、それぞれ形成する。電極は、例えば、蒸着法やスパッタリング法で形成することができる。
【0036】
最後にステップS7として、保護膜60を形成する。具体的には、
図1に示すように、半導体構造体10、透光性導電層20、第一n側電極31a、第二n側電極31b、及びp側電極32bを被覆するように保護膜60を形成する。保護膜60は、
図1に示すように、p側電極32bの上面の一部及び第二n側電極31bの上面の一部を露出させる開口部を有する。保護膜60は、例えば、蒸着法やスパッタリング法で形成することができる。このようにして、実施例1に係る発光素子100が得られる。
[実施例1]
【0037】
次に、本願発明の効果を確認すべく、実施例1に係る透光性導電層を作成し、比較例1、2に係る透光性導電層と比較した。実施例1に係る透光性導電層として、第一透光性導電層と第二透光性導電層とを含む透光性導電層を形成した。まず、サファイア基板上に、第一透光性導電層として膜厚が3nmのITO層を形成した。また第一透光性導電層は、温度を30℃とした真空蒸着法により形成した。
【0038】
次に、第一透光性導電層を、酸素を含む雰囲気中で250℃の温度で加熱した。
【0039】
さらに、加熱された第一透光性導電層上に、第二透光性導電層を第三温度で形成した。第二透光性導電層として膜厚が57nmのITO層を形成した。また、第二透光性導電層は、温度を250℃とした真空蒸着法により形成した。このようにして、実施例1に係る透光性導電層を形成した。
[比較例1]
【0040】
比較例1では、透光性導電層として膜厚が60nmのITO層を形成した。また比較例1に係る透光性導電層は、温度を30℃としたスパッタリング法により形成した。
[比較例2]
【0041】
比較例2では、比較例1と同様に透光性導電層を60nmのITO層を形成した。また比較例2に係る透光性導電層は、実施例1に係る第二透光性導電層と同じ成膜方法及び温度で形成した。
(比較試験)
【0042】
以上のようにして得られた実施例1、比較例1、2に係る透光性導電層の抵抗率、光透過率、XRDを測定した。各測定は、実施例1、比較例1、2に係る透光性導電層に対して、酸素を含む雰囲気で455℃の熱処理と、真空中で400℃の熱処理とを実施した後に行った。
【0043】
実施例1、比較例1~2に係る透光性導電層の抵抗率を測定した。測定には、三菱化学株式会社製Loresta-GP装置を用いて行った。この結果を表1に示す。なお表1の抵抗率の変化率は、比較例1の抵抗率を基準とした場合の比較例2及び実施例1の抵抗率の変化率を、それぞれ示している。
【表1】
【0044】
表1に示すように、実施例1では抵抗率を比較例1及び比較例2よりも低減できていることが確認された。特に実施例1の抵抗率は、比較例1との対比では、抵抗率を半分程度とすることができている。また比較例2との対比から、透光性導電層を蒸着法のみで形成した比較例2よりも、第一透光性導電層を蒸着法により形成した後、第一透光性導電層に対して熱処理を行った上で第二透光性導電層を蒸着法により形成した実施例1の方が、抵抗率の低減に有効であることが確認された。
【0045】
次に、実施例1、比較例1、2に係る透光性導電層の光透過率を測定した。測定には、JASCO社製ARM-500装置を用いて行った。この結果を表2に示す。なお表2の透過率の変化率は、比較例1の透過率を基準とした場合の比較例2及び実施例1の透過率の変化率を、それぞれ示している。
【表2】
【0046】
表2に示すように、実施例1では透過率を比較例1及び比較例2よりも向上できていることが確認された。また、比較例1と比較例2とで透過率に大きな差は確認されなかった。
【0047】
次に、結晶性を確認すべく、実施例1、比較例1、2に係る透光性導電層のXRD(2θ-ω)を測定した。測定には、PANalytical社製X’Pert PRO装置を用いて行った。この結果を
図12のグラフに示す。
図12は、実施例1、比較例1、比較例2の測定波形を縦方向にずらして配置して示したものである。
図12に示すとおり、実施例1では比較例1、2に比べて、In
2O
3の(400)が大きく表れていることが確認された。一方、比較例2では、In
2O
3の(222)が表れていることが確認された。また、実施例1は、比較例1よりもIn
2O
3の(400)におけるピークが高く表れており、比較例1よりもITOの結晶配向が揃っていることが確認できた。
【0048】
最後に、結晶粒の大きさを確認すべく、実施例1、比較例1、2に係る透光性導電層のAFM画像を観察した。ここでは、実施例1、比較例1、2に係る透光性導電層に対し、酸素を含む雰囲気で455℃の熱処理と、真空中で400℃の熱処理とを実施した後、さらに透光性導電層の表面を塩酸で30秒間エッチングした後に観察している。観察には、BRUKER社製DIMENSION FastScan装置を用いて行った。この結果を
図13、
図14及び
図15に示す。これらの図において、
図13は実施例1、
図14は比較例1、
図15は比較例2の写真を示している。
【0049】
実施例1、比較例1、2に係る透光性導電層の表面に形成された1つの結晶粒の大きさを測定したところ、実施例1では2μm以上の大きさの結晶粒を複数確認できた。比較例1では1μm以下の大きさの結晶粒が確認でき、比較例2では0.1μm以下の大きさの結晶粒が確認できた。これらのことから、実施例1では、比較例1、2より大きな結晶粒が形成されていることが確認された。
【符号の説明】
【0050】
100…発光素子
1…基板
10…半導体構造体
11…第一半導体層
12…第二半導体層
13…活性層
20…透光性導電層
21…第一透光性導電層
22…第二透光性導電層
30…電極
31…第一電極;31a…第一n側電極;31b…第二n側電極
32…第二電極;32b…p側電極
40…誘電体層
50…レジストマスク
60…保護膜