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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132804
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】キャスタの転回固定器具
(51)【国際特許分類】
   B60B 33/00 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
B60B33/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038340
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】596027782
【氏名又は名称】大一機材工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592192907
【氏名又は名称】日建リース工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】橋本 智文
(72)【発明者】
【氏名】橋場 健二
(57)【要約】
【課題】キャスタの鉛直方向軸回りの転回を強固に固定する。
【解決手段】相互に離間する一対の係合部2と、一対の係合部2の間の中間部3と、を有し、一対の係合部2それぞれが移動式足場8の支柱81と係合して一対のキャスタ9の間に掛け渡された状態で、中間部3が、キャスタ9の車輪93を保持するとともに鉛直方向軸回りに転回自在なホルダ92のブレーキ操作レバー96と係合し、ブレーキ操作レバー96が鉛直方向軸回りに転回しようとする動きを受け止める。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に離間する一対の係合部と、前記一対の係合部の間の中間部と、を有し、
前記一対の係合部それぞれがキャスタまたはキャスタと連結する構造と係合して一対のキャスタの間に掛け渡された状態で、前記中間部が、前記キャスタの車輪を保持するとともに鉛直方向軸回りに転回自在な車輪保持構造に設けられるまたは取り付けられる構造と係合し、前記車輪保持構造に設けられるまたは取り付けられる前記構造が鉛直方向軸回りに転回しようとする動きを受け止める、
ことを特徴とするキャスタの転回固定器具。
【請求項2】
前記係合部が前記キャスタの主軸と係合する、
ことを特徴とする請求項1に記載のキャスタの転回固定器具。
【請求項3】
前記車輪保持構造に設けられるまたは取り付けられる前記構造が、前記キャスタのブレーキ操作レバーまたはブレーキ操作バーである、
ことを特徴とする請求項2に記載のキャスタの転回固定器具。
【請求項4】
前記中間部に、前記中間部を分割したり結合したりするための連結部を有する、
ことを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項に記載のキャスタの転回固定器具。
【請求項5】
前記連結部において分割された前記中間部どうしの間に繋合せ部材をさらに有する、
ことを特徴とする請求項4に記載のキャスタの転回固定器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、キャスタの転回固定器具に関し、移動式足場などに設けられるキャスタの鉛直方向軸回りの転回を固定する際に用いられる器具に関する。
【背景技術】
【0002】
キャスタの鉛直方向軸回りの転回(即ち、水平転回)を阻止したり許容したりする従来の器具として、台車の支持台に上下方向軸回りに回転自在に支持されたホルダと、該ホルダに支持された車輪本体とを備える車輪に設けられ、該車輪の上下方向軸回りの回転を阻止しまたは許容する台車用ロック部材であって、支持台に取り付けられる取付け部と、ホルダまたは車輪本体に係合して車輪の上下方向軸回りの回転を阻止するロック位置とホルダまたは車輪本体に係合している状態を解除して車輪の上下方向軸回りの回転を許容するフリー位置との間で回動可能に取付け部に支持された係合部と、を有し、係合部は、ロック位置に回動させたときにホルダまたは車輪本体に当接する当接部と、該当接部からホルダまたは車輪本体を挟み込むように延びる一対の張り出し部と、を有する台車用ロック部材が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-228749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のようなロック部材では、係合部が板材によってコ字状に形成されているため、車輪(別言すると、キャスタ)が大きい場合に特に、ホルダまたは車輪本体と係合する長さが十分とは言えず、ホルダや車輪本体の向きを十分に保持する(言い換えると、ホルダや車輪本体の鉛直方向軸回りの転回を強固に固定する)ことができない、という問題がある。
【0005】
そこでこの発明は、キャスタの鉛直方向軸回りの転回を強固に固定することが可能な、キャスタの転回固定器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明に係るキャスタの転回固定器具は、相互に離間する一対の係合部と、前記一対の係合部の間の中間部と、を有し、前記一対の係合部それぞれがキャスタまたはキャスタと連結する構造と係合して一対のキャスタの間に掛け渡された状態で、前記中間部が、前記キャスタの車輪を保持するとともに鉛直方向軸回りに転回自在な車輪保持構造に設けられるまたは取り付けられる構造と係合し、前記車輪保持構造に設けられるまたは取り付けられる前記構造が鉛直方向軸回りに転回しようとする動きを受け止める、ことを特徴とする。
【0007】
この発明に係るキャスタの転回固定器具は、前記係合部が前記キャスタの主軸と係合する、ようにしてもよい。
【0008】
この発明に係るキャスタの転回固定器具は、前記車輪保持構造に設けられるまたは取り付けられる前記構造が、前記キャスタのブレーキ操作レバーまたはブレーキ操作バーである、ようにしてもよい。
【0009】
この発明に係るキャスタの転回固定器具は、前記中間部に、前記中間部を分割したり結合したりするための連結部を有する、ようにしてもよい。
【0010】
この発明に係るキャスタの転回固定器具は、前記連結部において分割された前記中間部どうしの間に繋合せ部材をさらに有する、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係るキャスタの転回固定器具によれば、一対のキャスタの間に掛け渡された状態で、中間部が、車輪保持構造に設けられるまたは取り付けられる構造と係合して前記構造が鉛直方向軸回りに転回しようとする動きを受け止めるようにしているので、キャスタの鉛直方向軸回りの転回を強固に固定することが可能となる。
【0012】
この発明に係るキャスタの転回固定器具によれば、中間部が、キャスタのブレーキ操作レバーまたはブレーキ操作バーと係合するようにした場合には、キャスタ側に特別の部品などを新たに取り付けることなく使用することができ、汎用性を向上させることが可能となる。
【0013】
この発明に係るキャスタの転回固定器具によれば、中間部が、分割/結合自在の連結部を有するようにした場合には、一対のキャスタへの装着や一対のキャスタからの取り外しを容易に行うことが可能となり、また、キャスタの構造などにかかわらず一対のキャスタへの装着や一対のキャスタからの取り外しを確実に行うことが可能となる。
【0014】
この発明に係るキャスタの転回固定器具によれば、繋合せ部材をさらに有するようにした場合には、係合部を含む両端部分を共通で固定的な形状としたうえで、一対のキャスタどうしのさまざまな間隔に対して柔軟に、容易に、そして効率的に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態における移動式足場の構造を示す正面図である。
図2図1の移動式足場に設けられるキャスタの構造を示す正面図である。
図3図2のキャスタの側面図である。
図4】この発明の実施の形態に係るキャスタの転回固定器具の構造を示す正面図である。
図5図4のキャスタの転回固定器具の平面図である。
図6図4のキャスタの転回固定器具の連結部の構造を示す側面図である。
図7図4のキャスタの転回固定器具が図2のキャスタへと装着された状態を示す正面図である。
図8図4のキャスタの転回固定器具が図2のキャスタへと装着された状態を示す平面図である。
図9】繋合せ部材の構造を示す図である。(A)は正面図である。(B)は平面図である。(C)は側面図である。
図10】操舵用バーの構造を示す正面図である。
図11図10の操舵用バーの平面図である。
図12図10の操舵用バーが図2のキャスタへと装着された状態を示す正面図である。
図13】操舵用バーの他の構造を示す図であり、図2のキャスタへと装着された状態を示す正面図である。
図14図13の操舵用バーが図2のキャスタへと装着された状態を示す平面図である。
図15図1の移動式足場に設けられるキャスタの他の構造を示す正面図である。
図16】この発明のキャスタの転回固定器具の他の構造を示す正面図である。
図17図16のキャスタの転回固定器具の平面図である。
図18図16のキャスタの転回固定器具が図15のキャスタへと装着された状態を示す正面図である。
図19図16のキャスタの転回固定器具が図15のキャスタへと装着された状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。以下の説明では、各図中に示すZ軸の矢印の向きを上向きとするとともにZ軸の矢印の向きとは反対の向きを下向きとする。すなわち、Z軸の方向は鉛直方向であり、Z軸と直交する方向(図中の両矢印の軸の方向)は水平方向である。
【0017】
この実施の形態では、キャスタの転回固定器具1が、3階構造の移動式足場8に設けられるキャスタ9に装着されて使用される場合を例に挙げて説明する。
【0018】
(移動式足場)
図1は、実施の形態における移動式足場8の構造を示す正面図である。
【0019】
移動式足場8は、主に、複数の支柱81(尚、「建地」などとも呼ばれる),根がらみ82,筋交い83,手摺84,および足場板85を有する。移動式足場8は、必要に応じて階段などを備えるようにしてもよい。
【0020】
支柱81は、軸心方向直交断面が円形の金属製単管パイプからなる部材であり、軸心方向が鉛直方向に沿うとともに、水平方向において相互に離間して複数本配置される。
【0021】
複数の支柱81各々の下端部にキャスタ9が取り付けられる。キャスタ9として、鉛直方向軸回りに転回(別言すると、旋回)自在な自在輪(即ち、水平転回自在なキャスタ)が用いられる。複数のキャスタ9が地面に当接して走行することにより、移動式足場8は水平方向に移動する。
【0022】
根がらみ82は、複数の支柱81を固定的に相互に連結する部材であり、軸心方向が水平方向に沿うとともに、複数の支柱81それぞれの下端部近傍位置に配設される。
【0023】
筋交い83は、相互に交差する2本の斜材83aを一組として構成され、1階乃至3階の各々に相当する部分において隣り合う支柱81どうしの間それぞれに配設される。各斜材83aの両端部それぞれは、支柱81に固定される支柱ディスクと斜材83aに設けられるクサビとを介して支柱81に対して連結される。
【0024】
手摺84は、複数の筋交い83各々の上部に配設される部材であり、軸心方向が水平方向に沿うとともに、両端部それぞれが斜材83aの上部に連結される。
【0025】
足場板85は、2階および3階の床を構成するための部材であり、板面が水平方向に沿うとともに、複数の筋交い83各々の下部に配設される。各足場板85は、両端部それぞれが支柱81に対して直交する方向に設けられる棒部材(「ころばし」などとも呼ばれる)に係合して設置される。
【0026】
(キャスタ)
図2は移動式足場8に設けられるキャスタ9の構造を示す正面図であり、図3はキャスタ9の側面図である。
【0027】
キャスタ9は、主に、ねじ棒91,ホルダ92,車輪93,調整部94,ブレーキ板95,およびブレーキ操作レバー96を有する。
【0028】
ねじ棒91は、キャスタ9にとっての主軸であり、外周面に雄ねじが形成されるとともに、軸心方向が鉛直方向に沿った姿勢で支柱81(即ち、金属製単管パイプであり、円筒状である)へと差し込み可能に形成される。
【0029】
ホルダ92は、車輪93を保持する構造/部材であり、板面が水平面に沿う上壁部921、および、上壁部921の、水平方向において相互に対向する端部各々から下向きに延出して板面が鉛直面に沿いつつ相互に対向する一対の側壁部922を有する。
【0030】
ホルダ92は、ねじ棒91の下端に、ねじ棒91に対して鉛直方向軸回り(即ち、ねじ棒91の軸心回り)に転回可能であるように可動部97を介在させたうえで上壁部921が連結されることにより、鉛直方向軸回りに転回自在に取り付けられる。可動部97は、ベアリングなどを含み、ねじ棒91に対して鉛直方向軸回りに転回可能であるようにホルダ92を連結する機序である。
【0031】
車輪93は、一対の側壁部922の間に、軸心方向が水平方向に沿うとともに両端部それぞれが側壁部922の下端付近に支持される回転軸923を介して水平方向軸回りに回転自在に保持される。
【0032】
車輪93は、ねじ棒91に対して鉛直方向軸回りに転回可能であるホルダ92に保持されることにより、鉛直方向軸回りに転回(別言すると、旋回,水平転回)自在な自在輪として構成される。
【0033】
調整部94は、内周面に雌ねじが形成される環状の支持部941と、支持部941の外周面から水平面に沿いつつ(言い換えると、径方向において)相互に反対向きに延出する一対のハンドル942と、を有し、ねじ棒91に対して取り付けられる。
【0034】
調整部94は、支持部941の内周面の雌ねじがねじ棒91の外周面の雄ねじに螺合しつつ回転することにより、ねじ棒91の軸心方向(即ち、鉛直方向)に沿って上下に移動する。そして、調整部94の支持部941が移動式足場8の支柱81の下端を支持しつつ調整部94が上下に移動して支柱81の下端と車輪93との離隔距離が調整されることにより、すべての支柱81の軸心方向が鉛直方向に沿って移動式足場8の姿勢が適正になるように且つ複数の車輪93のすべてが良好に(言い換えると、均等に)地面に当接するように、支柱81の下端の高さ位置が調整される。
【0035】
支柱81の下端の高さ位置が調整可能であるキャスタ9は「ジャッキ付キャスタ」などとも呼ばれる。ただし、この発明が適用され得るキャスタはジャッキ付キャスタに限定されるものではなく、この発明は、移動式足場8の支柱81へと差し込み可能な、外周面に雄ねじが形成されていない主軸を有する(そして、調整部94を有しない)キャスタに対しても適用され得る。
【0036】
ブレーキ板95およびブレーキ操作レバー96は、車輪93の水平方向軸回り回転を阻止したり許容したりするための仕組みである。
【0037】
ブレーキ板95は、折り曲げられた板状の部材であり、ホルダ92に対して取り付けられる。
【0038】
ブレーキ操作レバー96は、軸心方向が水平方向に沿うとともに両端部それぞれが側壁部922の上端付近に支持される回動軸924を介して水平方向軸回りに回動自在に取り付けられる。
【0039】
ブレーキ操作レバー96は、(平面視/側面視において)コ字形に形成され、コ字形のうちの相互に平行に対向する一対のアーム部961各々の開口側の端部が回動軸924によって回動自在に支持される。コ字形のうちの相互に平行に対向する一対のアーム部961の間の、開口側の回動軸924と反対側の辺のことを「持ち手部962」と呼ぶ。コ字形の内側の空間(即ち、一対のアーム部961と持ち手部962とによって囲まれる空間)のことを「係合部材内側空間963」と呼ぶ。
【0040】
ブレーキ操作レバー96の持ち手部962が引き上げられて、ブレーキ操作レバー96が図2図3に示す姿勢のとき、ブレーキ板95が車輪93から離れた位置に静止し、車輪93が回転可能な状態が維持される。
【0041】
一方、ブレーキ操作レバー96の持ち手部962が引き下げられて、ブレーキ操作レバー96が図2図3に示す姿勢よりも下向きに回動すると、ブレーキ板95がブレーキ操作レバー96(のうちの回動軸924側の端面)によって押されて車輪93の表面へと押し付けられて、車輪93の回転が阻止される。
【0042】
(キャスタの転回固定器具)
図4はこの発明の実施の形態に係るキャスタの転回固定器具1の構造を示す正面図であり、図5はキャスタの転回固定器具1の平面図である。図6は連結部4の構造を示す側面図である。
【0043】
キャスタの転回固定器具1は、ねじ棒91に対するホルダ92の鉛直方向軸回り(即ち、ねじ棒91の軸心回り)の転回を阻止し、延いては支柱81に対するホルダ92の鉛直方向軸回りの転回を阻止して、車輪93の向きを固定するための器具である。下記では、キャスタの転回固定器具1の使用時の姿勢を基準として鉛直や水平などを定義する。
【0044】
実施の形態に係るキャスタの転回固定器具1は、長手方向における両端部それぞれに設けられる係合部2と、これら一対の係合部2の間の中間部3と、中間部3に設けられる連結部4と、を有する。実施の形態に係るキャスタの転回固定器具1は、同一の2個の部品(具体的には、第1の部品1Aおよび第2の部品1B)が各々の長手方向が沿うように反対向きに並べられた状態で各々の連結部4を介して結合されて使用される。
【0045】
係合部2は、キャスタの転回固定器具1の長手方向における両端部それぞれに、前記長手方向において凹んで水平面視における凹部として形成される。
【0046】
中間部3は、係合部2と連接する第1の水平部31と、第1の水平部31と連接する傾斜部32と、傾斜部32と連接する第2の水平部33と、を有する。中間部3は、傾斜部32により、全体として、側面視において第1の水平部31が第2の水平部33よりも上方に位置する形態に形成される。
【0047】
中間部3は、第1の水平部31,傾斜部32,および第2の水平部33のそれぞれが金属角パイプで形成され、前記の各部の端どうしが溶接されるとともに前記の各部の側面に溶接される接合部材34が取り付けられることにより、前記の各部が一体に接合されて形成される(尚、係合部2と第1の水平部31とは一体の金属角パイプによって形成される)。
【0048】
キャスタの転回固定器具1は、係合部2および中間部3の第1の水平部31がブレーキ操作レバー96の係合部材内側空間963を通過して係合部2内にキャスタ9のねじ棒91が入り込んだ状態(別言すると、嵌合した状態;言い換えると、係合部2がねじ棒91と係合した状態,係合部2がねじ棒91に掛かった状態)で、キャスタ9に対して装着される。
【0049】
連結部4は、中間部3を分割したり結合したりすることを可能とするための構造/仕組みである。
【0050】
連結部4は、キャスタの転回固定器具1のうちの半分を構成する第1の部品1Aの第2の水平部33(図中、符号33A)の端に設けられる(図中、符号4A)とともに、キャスタの転回固定器具1のうちの残り半分を構成する第2の部品1Bの第2の水平部33(図中、符号33B)の端に設けられる(図中、符号4B)。
【0051】
連結部4は、側面視において矩形の板状に形成されるとともに、四隅それぞれの端寄りの位置に貫通孔41が形成される。そして、貫通孔41を介して、キャスタの転回固定器具1の第1の部品1Aの連結部4Aと第2の部品1Bの連結部4Bとがボルト5によって連結される。
【0052】
キャスタの転回固定器具1が分割および結合可能であることにより、構築された状態の移動式足場8に設けられている一対のキャスタ9へのキャスタの転回固定器具1の装着および一対のキャスタ9からのキャスタの転回固定器具1の取り外しが容易になる。さらに言えば、キャスタ9の特にブレーキ操作レバー96の構造・形状・寸法によっては移動式足場8に設けられている一対のキャスタ9へのキャスタの転回固定器具1の装着や一対のキャスタ9からのキャスタの転回固定器具1の取り外しが不可能である場合もあり得るところ、キャスタの転回固定器具1が分割および結合可能であることによってキャスタ9へのキャスタの転回固定器具1の装着およびキャスタ9からのキャスタの転回固定器具1の取り外しが可能となる。
【0053】
キャスタの転回固定器具1は、2個のキャスタ9の組み合わせに対して、つまり一対のキャスタ9に対して装着される。例えば、隣り合う支柱81各々の下端部に取り付けられているキャスタ9の組み合わせに対してキャスタの転回固定器具1が装着される(図7図8参照;尚、図8では、キャスタ9について、キャスタの転回固定器具1と特に関係する構造のみを図示してその他の構造の図示を省略している)。
【0054】
具体的には、キャスタ9が鉛直方向軸回りに転回させられて、一対のキャスタ9各々のブレーキ操作レバー96がこれら一対のキャスタ9が取り付けられている隣り合う支柱81どうしの間に(別言すると、内側に)位置して相互に対向する向きにされる。また、持ち手部962が引き上げられて、車輪93が回転可能な状態にされる。
【0055】
そのうえで、連結部4(4A,4B)で相互に結合されていない状態の、キャスタの転回固定器具1を構成する第1の部品1Aの係合部2側(尚、第1の水平部31と傾斜部32の一部とを含む)が、隣り合う支柱81のうちの一方に取り付けられているキャスタ9のブレーキ操作レバー96の係合部材内側空間963へと差し込まれて、係合部2の凹部へとねじ棒91が嵌り込み(言い換えると、係合部2がねじ棒91と係合し,係合部2がねじ棒91に掛かり)、また、キャスタの転回固定器具1を構成する第2の部品1Bの係合部2側(尚、第1の水平部31と傾斜部32の一部とを含む)が、隣り合う支柱81のうちの他方に取り付けられているキャスタ9のブレーキ操作レバー96の係合部材内側空間963へと差し込まれて、係合部2の凹部へとねじ棒91が嵌り込む(言い換えると、係合部2がねじ棒91と係合する,係合部2がねじ棒91に掛かる)。図に示す例では、係合部2が、ねじ棒91のうちの調整部94と可動部97との間の部分と係合する。
【0056】
そして、第1の部品1Aおよび第2の部品1B各々の係合部2がねじ棒91と係合し且つ中間部3が係合部材内側空間963を貫通している状態の第1の部品1Aの連結部4Aと第2の部品1Bの連結部4Bとがボルト5によって連結される。
【0057】
これにより、隣り合う支柱81各々の下端に取り付けられている一対のキャスタ9の間にキャスタの転回固定器具1が掛け渡され、当該キャスタの転回固定器具1によって前記一対のキャスタ9各々のブレーキ操作レバー96が相互に対向する向きで固定される。そして、ブレーキ操作レバー96の向きが固定されることにより、ブレーキ操作レバー96が取り付けられているホルダ92の鉛直方向軸回りの転回が不能になり、ホルダ92に保持されている車輪93の鉛直方向軸回りの転回が不能になる。
【0058】
上記のようにキャスタの転回固定器具1がキャスタ9に対して装着された状態で、一対のキャスタ9各々の車輪93の向きが、キャスタの転回固定器具1の長手方向に沿った向きで同時に固定される。これにより、移動式足場8を移動させる際、進行方向に対して移動式足場8がふらついて意図しない方向に進んでしまうことを防止し、移動式足場8を安定させて移動させることができる。
【0059】
上記のようにキャスタの転回固定器具1がキャスタ9に対して装着された状態で、また、ブレーキ操作レバー96の持ち手部962が傾斜部32に当接してブレーキ操作レバー96の下向きの回動が阻止される。これにより、車輪93が回転可能な状態が維持される。
【0060】
キャスタの転回固定器具1の中間部3の側面とブレーキ操作レバー96の係合部材内側空間963(具体的には、アーム部961)の内側面との間隔を小さくすることにより、車輪93の向きをがたつくことなく(別言すると、揺れ動くことなく、首振りなく)良好に安定させて固定することが可能となる。このため、キャスタの転回固定器具1の中間部3の平面視における幅の寸法や接合部材34の厚さを調整することにより、キャスタの転回固定器具1の中間部3の側面とブレーキ操作レバー96の係合部材内側空間963(具体的には、アーム部961)の内側面との間隔を小さくすることが好ましく、さらに言えば、キャスタの転回固定器具1の中間部3の側面とブレーキ操作レバー96の係合部材内側空間963(具体的には、アーム部961)の内側面とを接触/摺動させるようにすることが好ましい。
【0061】
図に示す例では、一対のキャスタ9各々のブレーキ操作レバー96がこれら一対のキャスタ9が取り付けられている隣り合う支柱81どうしの間に(別言すると、内側に)位置して相互に対向する向きとされた状態でキャスタの転回固定器具1がキャスタ9に対して装着されるようにしているが、下記のアやイのような状態でキャスタの転回固定器具1がキャスタ9に対して装着されるようにしてもよい。
【0062】
ア)一対のキャスタ9各々のブレーキ操作レバー96がこれら一対のキャスタ9が取り付けられている隣り合う支柱81どうしの間の外側に位置して相互に外側向きとされた状態でキャスタの転回固定器具1がキャスタ9に対して装着される。この場合、キャスタの転回固定器具1の長手方向における両端部それぞれの係合部2は、凹みの深さが図に示す例よりも深い形態で、ねじ棒91が嵌り込んでいる位置よりも先端(即ち、中間部3とは反対側の端)が延出するように形成され、ねじ棒91を通り過ぎた先端部分がキャスタ9のブレーキ操作レバー96の係合部材内側空間963へと差し込まれる。
【0063】
イ)一対のキャスタ9のうちの一方のキャスタ9のブレーキ操作レバー96が前記一対のキャスタ9が取り付けられている隣り合う支柱81どうしの間に(別言すると、内側に)位置するとともに、他方のキャスタ9のブレーキ操作レバー96が前記隣り合う支柱81どうしの間の外側に位置して、一対のキャスタ9各々のブレーキ操作レバー96が同じ向きとされた状態でキャスタの転回固定器具1がキャスタ9に対して装着される。この場合、キャスタの転回固定器具1の長手方向における両端部それぞれの係合部2のうちの一方の係合部2は図に示す例と同様の形態に形成され、他方の係合部2は、凹みの深さが図に示す例よりも深い形態で、ねじ棒91が嵌り込んでいる位置よりも先端(即ち、中間部3とは反対側の端)が延出するように形成され、ねじ棒91を通り過ぎた先端部分がキャスタ9のブレーキ操作レバー96の係合部材内側空間963へと差し込まれる。
【0064】
(繋合せ部材)
キャスタの転回固定器具1は、第1の部品1Aと第2の部品1Bとの間に、繋合せ部材6をさらに有するようにしてもよい(図9参照)。繋合せ部材6は、中間部3の長さを調節する部品として用いられる。繋合せ部材6を利用することにより、第1の部品1Aおよび第2の部品1Bを共通で固定的な形状としたうえで、キャスタの転回固定器具1の装着対象の一対のキャスタ9どうしのさまざまな間隔に対して柔軟に、容易に、そして効率的に対応することが可能となる。
【0065】
繋合せ部材6は、水平部として形成される中間部61と、中間部61の長手方向における両端それぞれに設けられる連結部62と、を有する。
【0066】
中間部61は、一体の金属角パイプで形成される。
【0067】
連結部62は、側面視において矩形の板状に形成されるとともに、四隅それぞれの端寄りの位置に貫通孔63が形成される。そして、一方の連結部62がキャスタの転回固定器具1の第1の部品1Aの連結部4Aと貫通孔63および貫通孔41を介してボルト5によって連結されるとともに、他方の連結部62がキャスタの転回固定器具1の第2の部品1Bの連結部4Bと貫通孔63および貫通孔41を介してボルト5によって連結される。
【0068】
(操舵用バー)
キャスタの転回固定器具1は、移動式足場8に設けられるキャスタ9のすべてに対して装着される(即ち、すべてのキャスタ9各々の車輪93の向きが固定される)ようにしてもよく、或いは、移動式足場8に設けられるキャスタ9のうちの一部のみに対して装着される(即ち、一部のキャスタ9各々の車輪93の向きが固定され、その他のキャスタ9各々の車輪93の向きは固定されない)ようにしてもよい。
【0069】
移動式足場8に設けられるキャスタ9のうちの一部に対してキャスタの転回固定器具1が装着されるとともにその他のキャスタ9にはキャスタの転回固定器具1が装着されないようにしたうえで、キャスタの転回固定器具1が装着されていないキャスタ9が転回操作されることにより、すべてのキャスタ9各々の車輪93の向きが固定されていない場合と比べて、移動式足場8を意図する方向に向けて安定させて移動させることができる。
【0070】
一部のキャスタ9にはキャスタの転回固定器具1が装着されない場合は、進行方向において先頭に位置するキャスタ9にはキャスタの転回固定器具1が装着されないようにすることが好ましく、進行方向において先頭に位置するキャスタ9が3つ以上ある場合には進行方向と直交する方向において中央/内側に位置するキャスタ9にはキャスタの転回固定器具1が装着されないようにすることが好ましい。
【0071】
一部のキャスタ9にはキャスタの転回固定器具1が装着されない場合に、キャスタの転回固定器具1が装着されていないキャスタ9の車輪93の鉛直方向軸回りの転回の程度を制御/調節して移動式足場8の進行方向の舵取りをするための操舵用バー7が使用されるようにしてもよい(図10乃至図12参照)。下記では、操舵用バー7の使用時の姿勢を基準として鉛直や水平などを定義する。
【0072】
操舵用バー7は、長手方向における一端部に設けられる係合部71と、係合部71と連接する水平部72と、水平部72と連接する第1の傾斜部73と、第1の傾斜部73と連接する第2の傾斜部74と、第2の傾斜部74の上端部と接続傾斜部76を介して接続する握り部75と、を有する。第1の傾斜部73は水平部72との連接箇所から下向きに傾斜し、第2の傾斜部74は第1の傾斜部73との連接箇所(具体的には、下側の端)から上向きに傾斜し、操舵用バー7は、全体として、側面視において握り部75が係合部71よりも上方に位置する形態に形成される。
【0073】
水平部72,第1の傾斜部73,および第2の傾斜部74のそれぞれが金属角パイプで形成され、前記の各部の端どうしが溶接されるとともに前記の各部の側面に溶接される接合部材77が取り付けられることにより、前記の各部が一体に接合される。また、握り部75と接続傾斜部76とが金属棒部材が曲げ加工されて形成される。そして、第2の傾斜部74の上端部に接続傾斜部76が溶接されて操舵用バー7が形成される。
【0074】
操舵用バー7の係合部71は、キャスタの転回固定器具1の係合部2と同様の形態および機能を備える構造部であり、操舵用バー7の長手方向における一端部に、前記長手方向において凹んで水平面視における凹部として形成される。
【0075】
操舵用バー7は、キャスタの転回固定器具1のキャスタ9への装着と同様に、係合部71および水平部72がブレーキ操作レバー96の係合部材内側空間963を通過して係合部71内にキャスタ9のねじ棒91が入り込んだ状態(別言すると、嵌合した状態;言い換えると、係合部71がねじ棒91と係合した状態,係合部71がねじ棒91に掛かった状態)で、キャスタ9に対して装着される。
【0076】
キャスタ9に対して装着された操舵用バー7の握り部75を握って当該握り部75を水平面に沿って旋回/揺動させることにより、ブレーキ操作レバー96との係合を介して当該ブレーキ操作レバー96が取り付けられているホルダ92の鉛直方向軸回りの転回を制御/調節することが可能になり、ホルダ92に保持されている車輪93の鉛直方向軸回りの転回の程度を制御/調節することが可能になり、延いては移動式足場8の進行方向の舵取りをすることが可能になる。
【0077】
上記のように操舵用バー7がキャスタ9に対して装着された状態で、ブレーキ操作レバー96の持ち手部962が第1の傾斜部73に当接してブレーキ操作レバー96の下向きの回動が阻止される。これにより、車輪93が回転可能な状態が維持される。
【0078】
操舵用バー7の水平部72や第1の傾斜部73の側面とブレーキ操作レバー96の係合部材内側空間963(具体的には、アーム部961)の内側面との間隔を小さくすることにより、車輪93の向きをがたつくことなく(別言すると、揺れ動くことなく、首振りなく)良好に安定させて制御/調節することが可能となる。このため、操舵用バー7の水平部72や第1の傾斜部73の平面視における幅の寸法や接合部材77の厚さを調整することにより、操舵用バー7の水平部72や第1の傾斜部73の側面とブレーキ操作レバー96の係合部材内側空間963(具体的には、アーム部961)の内側面との間隔を小さくすることが好ましく、さらに言えば、操舵用バー7の水平部72や第1の傾斜部73の側面とブレーキ操作レバー96の係合部材内側空間963(具体的には、アーム部961)の内側面とを接触/摺動させるようにすることが好ましい。
【0079】
操舵用バーの形態は、図10乃至図12に示す形態に限定されるものではなく、例えば図13および図14に示す形態でもよい。
【0080】
図13および図14に示す操舵用バー7Aは、係合部71と、係合部71と連接する水平部72と、水平部72と連接する傾斜部73Aと、傾斜部73Aと連接する垂直部78と、垂直部78と連結する握り部75Aと、垂直部78と連結する支柱係合部79と、を有する。傾斜部73Aは水平部72との連接箇所から下向きに傾斜し、垂直部78は傾斜部73Aとの連接箇所(具体的には、下側の端)から上向きに延びて、操舵用バー7Aは、全体として、側面視において握り部75Aが係合部71よりも上方に位置する形態に形成される。
【0081】
水平部72,傾斜部73A,および垂直部78のそれぞれが金属角パイプで形成され、前記の各部の端どうしが溶接されるとともに前記の各部の側面に溶接される接合部材77Aが取り付けられることにより、前記の各部が一体に接合される。そして、垂直部78の上端部に接合部材が使用されて握り部75Aが溶接されて接合されるとともに垂直部78の上端部寄りの位置に接合部材が使用されて支柱係合部79が溶接されて接合されて操舵用バー7Aが形成される。
【0082】
支柱係合部79は、垂直部78から相互に対向しつつ水平方向に沿う一対のアームとして形成される。支柱係合部79を構成する一対のアーム各々の先端部(即ち、垂直部78とは反対側の端部)に、水平方向に沿う貫通孔が形成される。
【0083】
操舵用バー7Aの係合部71は、キャスタの転回固定器具1の係合部2や操舵用バー7の係合部71と同様の形態および機能を備える構造部であり、当該係合部71,水平部72,および傾斜部73Aが連接する方向(また、握り部75Aおよび支柱係合部79の長手方向)において凹んで水平面視における凹部として形成される。
【0084】
操舵用バー7Aは、キャスタの転回固定器具1や操舵用バー7のキャスタ9への装着と同様に、係合部71および水平部72がブレーキ操作レバー96の係合部材内側空間963を通過して係合部71内にキャスタ9のねじ棒91が入り込んだ状態(別言すると、嵌合した状態;言い換えると、係合部71がねじ棒91と係合した状態,係合部71がねじ棒91に掛かった状態)で、キャスタ9に対して装着される。
【0085】
支柱係合部79は、当該支柱係合部79を構成する一対のアームどうしの間に移動式足場8の支柱81を入り込ませた状態で前記一対のアーム各々の先端部の貫通孔に係合ピン791が挿通されることにより、握り部75A側が移動式足場8の支柱81から離れて操舵用バー7Aが傾斜しないように操舵用バー7Aの姿勢を安定させる。
【0086】
キャスタ9に対して装着された操舵用バー7Aの握り部75Aを握って当該握り部75Aを水平面に沿って旋回/揺動させることにより、ブレーキ操作レバー96との係合を介して当該ブレーキ操作レバー96が取り付けられているホルダ92の鉛直方向軸回りの転回を制御/調節することが可能になり、ホルダ92に保持されている車輪93の鉛直方向軸回りの転回の程度を制御/調節することが可能になり、延いては移動式足場8の進行方向の舵取りをすることが可能になる。
【0087】
上記のように操舵用バー7Aがキャスタ9に対して装着された状態で、ブレーキ操作レバー96の持ち手部962が傾斜部73Aに当接してブレーキ操作レバー96の下向きの回動が阻止される。これにより、車輪93が回転可能な状態が維持される。
【0088】
操舵用バー7Aの水平部72や傾斜部73Aの側面とブレーキ操作レバー96の係合部材内側空間963(具体的には、アーム部961)の内側面との間隔を小さくすることにより、車輪93の向きをがたつくことなく(別言すると、揺れ動くことなく、首振りなく)良好に安定させて制御/調節することが可能となる。このため、操舵用バー7Aの水平部72や傾斜部73Aの平面視における幅の寸法や接合部材77Aの厚さを調整することにより、操舵用バー7Aの水平部72や傾斜部73Aの側面とブレーキ操作レバー96の係合部材内側空間963(具体的には、アーム部961)の内側面との間隔を小さくすることが好ましく、さらに言えば、操舵用バー7Aの水平部72や傾斜部73Aの側面とブレーキ操作レバー96の係合部材内側空間963(具体的には、アーム部961)の内側面とを接触/摺動させるようにすることが好ましい。
【0089】
(作用効果)
実施の形態に係るキャスタの転回固定器具1によれば、一対のキャスタ9の間に掛け渡された状態で、中間部3が、ブレーキ操作レバー96と係合してブレーキ操作レバー96が鉛直方向軸回りに転回しようとする動きを受け止めるようにしているので、キャスタ9の鉛直方向軸回りの転回を強固に固定することが可能となる。
【0090】
実施の形態に係るキャスタの転回固定器具1によれば、中間部3が、キャスタ9のブレーキ操作レバー96と係合するようにしているので、キャスタ9側に特別の部品などを新たに取り付けることなく使用することができ、汎用性を向上させることが可能となる。
【0091】
実施の形態に係るキャスタの転回固定器具1によれば、中間部3が、分割/結合自在の連結部4を有するようにしているので、一対のキャスタ9への装着や一対のキャスタ9からの取り外しを容易に行うことが可能となり、また、キャスタ9の構造などにかかわらず一対のキャスタ9への装着や一対のキャスタ9からの取り外しを確実に行うことが可能となる。
【0092】
実施の形態に係るキャスタの転回固定器具1によれば、繋合せ部材6をさらに有するようにした場合には、係合部2を含む両端部分を共通で固定的な形状としたうえで、一対のキャスタ9どうしのさまざまな間隔に対して柔軟に、容易に、そして効率的に対応することが可能となる。
【0093】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0094】
例えば、上記の実施の形態ではこの発明に係るキャスタの転回固定器具1が図に示される3階構造の移動式足場8のキャスタ9に装着されて使用されるようにしているが、この発明が適用され得る移動式足場の形状や規模は上記の実施の形態における移動式足場8に限定されるものではなく、例えば各種建築物の建築・建設作業やメンテナンス作業の内容や規模などに応じて様々な形状や規模の移動式足場が考えられる。さらに言えば、この発明に係るキャスタの転回固定器具1が装着される対象は移動式足場に限定されるものではなく、様々な機器,装備,機材,機具,装置,設備などに設けられるキャスタに対して装着可能である。
【0095】
上記の実施の形態では中間部3が第1の水平部31と傾斜部32と第2の水平部33とを有して側面視において第1の水平部31が第2の水平部33よりも上方に位置する形態に形成されるようにしているが、中間部3の形態は上述の実施の形態における形態には限定されない。例えば、キャスタ9のねじ棒91に対する係合部2の位置とブレーキ操作レバー96の位置や寸法(特に、係合部材内側空間963の位置や寸法)によっては、キャスタの転回固定器具1がキャスタ9に対して装着可能であれば、中間部3は側面視において水平方向に沿う形態(即ち、単一の水平部のみを有して上記の実施の形態における傾斜部32を有しない形態)に形成されるようにしてもよい。
【0096】
上記の実施の形態では中間部3が分割/結合自在の連結部4を有するようにしているが、連結部4を有することはこの発明において必須の構成ではない。例えばキャスタ9のブレーキ操作レバー96の構造・形状・寸法により、移動式足場8に設けられている一対のキャスタ9へのキャスタの転回固定器具1の装着や一対のキャスタ9からのキャスタの転回固定器具1の取り外しが支障なく行える場合には、キャスタの転回固定器具1が連結部4を有しないようにしてもよい。
【0097】
上記の実施の形態ではキャスタの転回固定器具1の係合部2がキャスタ9のねじ棒91(即ち、キャスタ9にとっての主軸)と係合するようにしているが、係合部2が係合する箇所はこれに限定されるものではなく、係合部2は、例えば、キャスタ9のホルダ92(また、図に示す例におけるキャスタ9のホルダ92に相当する箇所),キャスタ9の可動部97(また、図に示す例におけるキャスタ9の可動部97に相当する箇所),または移動式足場8の支柱81と係合するようにしてもよい。
【0098】
上記の実施の形態ではキャスタの転回固定器具1の中間部3がキャスタ9のブレーキ操作レバー96と係合する(具体的には、中間部3のうちの傾斜部32がブレーキ操作レバー96の係合部材内側空間963を貫通して両者が相互に係合する)ようにしているが、キャスタの転回固定器具1とキャスタ9との係合の態様は、キャスタ9の車輪93(具体的には、車輪93を保持するホルダ92、また、図に示す例におけるホルダ92に相当する構造)に設けられたり取り付けられたりする構造とキャスタの転回固定器具1とが相互に係合して車輪93の鉛直方向軸回りの転回が阻止され得る態様であれば、前記の態様には限定されない。例えば、ホルダ92から相互に平行に対向する一対の棒部材または板部材が上向きに伸びて設けられ、これら一対の棒部材/板部材の間にキャスタの転回固定器具1(の中間部3)が入り込んで両者が相互に係合するようにしてもよい。
【0099】
キャスタの転回固定器具1は、例えば、図15に示すようなキャスタ9に対して装着されるようにしてもよい。図15に例として示すキャスタ9は、上記の実施の形態において図2図3に例として示すキャスタ9と、ブレーキ操作レバー96の代わりにブレーキ操作バー98を有する点で異なり、その他の構成/構造は同様である。
【0100】
ブレーキ操作バー98は、軸心方向が水平方向に沿うとともに両端部それぞれが側壁部922の上端付近に支持される回動軸924を介して水平方向軸回りに回動自在に取り付けられる。
【0101】
ブレーキ操作バー98は、棒状に形成され、一方の端部が回動軸924によって回動自在に支持される。
【0102】
ブレーキ操作バー98の端部(具体的には、回動軸924側とは反対側の端部)が引き上げられて、ブレーキ操作バー98が図15に示す姿勢のとき、ブレーキ板95が車輪93から離れた位置に静止し、車輪93が回転可能な状態が維持される。
【0103】
一方、ブレーキ操作バー98の端部(具体的には、回動軸924側とは反対側の端部)が引き下げられて、ブレーキ操作バー98が図15に示す姿勢よりも下向きに回動すると、ブレーキ板95がブレーキ操作バー98(のうちの回動軸924側の端面)によって押されて車輪93の表面へと押し付けられて、車輪93の回転が阻止される。
【0104】
図16図15に例として示すキャスタ9に対して装着されるキャスタの転回固定器具1の構造を示す正面図であり、図17は前記キャスタの転回固定器具1の平面図である。
【0105】
図16図17に例として示すキャスタの転回固定器具1は、上記の実施の形態において図4乃至図6に例として示すキャスタの転回固定器具1と、係合部2としての凹部の形状が異なり、その他の構成/構造は同様である。
【0106】
図16図17に例として示すキャスタの転回固定器具1の係合部2は、上記の実施の形態において図4乃至図6に例として示すキャスタの転回固定器具1の係合部2と同様にキャスタ9のねじ棒91が嵌り込む部分(言い換えると、ねじ棒91と係合する部分,ねじ棒91に掛かる部分)に加えて、図15に例として示すキャスタ9のブレーキ操作バー98が嵌り込む部分(言い換えると、ブレーキ操作バー98と係合する部分,ブレーキ操作バー98に掛かる部分;「固定係合部35」と呼ぶ)を有する。
【0107】
固定係合部35は、係合部2の開口側の凹部と連通する、キャスタの転回固定器具1の長手方向に沿って切り込まれて水平面視におけるスリットとして形成される。固定係合部35は、係合部2の開口側の凹部と連通して、中間部3のうちの長手方向における両端部それぞれに形成される。
【0108】
図16図17に例として示すキャスタの転回固定器具1は、上記の実施の形態において図4乃至図6に例として示すキャスタの転回固定器具1と同様に、2個のキャスタ9の組み合わせに対して、つまり一対のキャスタ9に対して装着される。例えば、隣り合う支柱81各々の下端部に取り付けられているキャスタ9の組み合わせに対してキャスタの転回固定器具1が装着される(図18図19参照;尚、図19では、キャスタ9について、キャスタの転回固定器具1と特に関係する構造のみを図示してその他の構造の図示を省略している)。
【0109】
図16図17に例として示すキャスタの転回固定器具1の場合は、連結部4(4A,4B)で相互に結合されていない状態の、キャスタの転回固定器具1を構成する第1の部品1Aの係合部2側(尚、第1の水平部31と傾斜部32の一部とを含む)が、隣り合う支柱81のうちの一方に取り付けられているキャスタ9のブレーキ操作バー98が係合部2の開口から固定係合部35へと入り込むとともに係合部2の開口側の凹部へとねじ棒91が嵌り込み(言い換えると、係合部2がねじ棒91と係合し,係合部2がねじ棒91に掛かり)、また、キャスタの転回固定器具1を構成する第2の部品1Bの係合部2側(尚、第1の水平部31と傾斜部32の一部とを含む)が、隣り合う支柱81のうちの他方に取り付けられているキャスタ9のブレーキ操作バー98が係合部2の開口から固定係合部35へと入り込むとともに係合部2の開口側の凹部へとねじ棒91が嵌り込む(言い換えると、係合部2がねじ棒91と係合する,係合部2がねじ棒91に掛かる)。図に示す例では、係合部2の開口側の凹部が、ねじ棒91のうちの調整部94と可動部97との間の部分と係合する。
【0110】
そして、第1の部品1Aおよび第2の部品1B各々の係合部2がねじ棒91と係合し且つ中間部3が係合部材内側空間963を貫通しているとともにブレーキ操作バー98が固定係合部35へと入り込んでいる状態の第1の部品1Aの連結部4Aと第2の部品1Bの連結部4Bとがボルト5によって連結される。
【0111】
隣り合う支柱81各々の下端に取り付けられている一対のキャスタ9の間にキャスタの転回固定器具1が掛け渡されて装着されることによる作用効果は、上記の実施の形態と同様である。
【0112】
上記もふまえ、この発明の要点は、相互に離間する一対の係合部2と、一対の係合部2の間の中間部3と、を有し、一対の係合部2それぞれがキャスタ9またはキャスタ9と連結する構造(上記の実施の形態における移動式足場8の支柱81)と係合して一対のキャスタ9の間に掛け渡された状態で、中間部3が、キャスタ9の車輪93を保持するとともに鉛直方向軸回りに転回自在な車輪保持構造(上記の実施の形態におけるホルダ92)に設けられるまたは取り付けられる構造(上記の実施の形態におけるブレーキ操作レバー96やブレーキ操作バー98)と係合し、車輪保持構造に設けられるまたは取り付けられる前記構造が鉛直方向軸回りに転回しようとする動きを受け止めること、である。
【符号の説明】
【0113】
1 キャスタの転回固定器具
1A 第1の部品
1B 第2の部品
2 係合部
3 中間部
31 第1の水平部
32 傾斜部
33 第2の水平部
33A 第1の部品の第2の水平部
33B 第2の部品の第2の水平部
34 接合部材
35 固定係合部
4 連結部
4A 第1の部品の連結部
4B 第2の部品の連結部
41 貫通孔
5 ボルト
6 繋合せ部材
61 中間部(水平部)
62 連結部
63 貫通孔
7 操舵用バー
71 係合部
72 水平部
73 第1の傾斜部
74 第2の傾斜部
75 握り部
76 接続傾斜部
77 接合部材
7A 操舵用バー
73A 傾斜部
75A 握り部
77A 接合部材
78 垂直部
79 支柱係合部
791 係合ピン
8 移動式足場
81 支柱
82 根がらみ
83 筋交い
83a 斜材
84 手摺
85 足場板
9 キャスタ
91 ねじ棒
92 ホルダ
921 上壁部
922 側壁部
923 回転軸
924 回動軸
93 車輪
94 調整部
941 支持部
942 ハンドル
95 ブレーキ板
96 ブレーキ操作レバー
961 アーム部
962 持ち手部
963 係合部材内側空間
97 可動部
98 ブレーキ操作バー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19