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特開2023-132808エラストマー用表面改質剤組成物及びこれを含むエラストマー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132808
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】エラストマー用表面改質剤組成物及びこれを含むエラストマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20230914BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038345
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】清水 湧太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉村 健司
(72)【発明者】
【氏名】森重 貴裕
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
4J002BB061
4J002BD051
4J002BD131
4J002BP011
4J002CK021
4J002CP031
4J002EP026
4J002EP027
4J002FD106
4J002FD107
4J002FD176
4J002FD177
4J002FD206
4J002FD207
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】親水性及び低摩擦性を付与することが可能なエラストマー用表面改質剤組成物、並びに耐熱性に優れ、親水性及び低摩擦性の経時安定性にも優れるエラストマー組成物を提供すること。
【解決手段】(A)構造中に不飽和結合を1つ有する炭素数16~24の不飽和脂肪酸と炭素数1~6のアルキレンジアミンから誘導されるビスアミド及び(B)構造中に不飽和結合を2つ有する炭素数18~22の不飽和脂肪酸と炭素数1~6のアルキレンジアミンから誘導されるビスアミドを含み、(A)と(B)の質量比が99.9:0.1~70:30であるエラストマー用表面改質剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)構造中に不飽和結合を1つ有する炭素数16~24の不飽和脂肪酸と炭素数1~6のアルキレンジアミンから誘導されるビスアミド及び(B)構造中に不飽和結合を2つ有する炭素数18~22の不飽和脂肪酸と炭素数1~6のアルキレンジアミンから誘導されるビスアミドを含み、(A)と(B)の質量比が99.9:0.1~70:30であるエラストマー用表面改質剤組成物。
【請求項2】
エラストマー100質量部に対し、請求項1に記載のエラストマー用表面改質剤組成物を0.5~30質量部含有するエラストマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性及び低摩擦性を付与するエラストマー用表面改質剤組成物、並びに耐熱性に優れ、親水性及び低摩擦性の経時安定性にも優れるエラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エラストマーは、耐熱性、弾性に優れることから、日用雑貨や建築・土木素材、電化製品部品、自動車部品等幅広い分野に使用されている。各用途での要求特性に合わせてエラストマーを改質することが一般的に行われており、エラストマーの表面処理や改質剤を適用することで、様々な機能を付与することができる。
【0003】
エラストマーに改質剤を添加する手法として、特許文献1には、ポリウレタンエラストマーに滑剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル及び脂肪酸アミドを含む低摩擦性に優れたエラストマー組成物が開示されている。一方、改質剤の耐久性が低い場合、エラストマーを用いた製品製造時の加熱工程(例えばゴムの加硫工程)、高温多湿に長期間さらされる条件(例えばエンジン用部材用途)において改質剤が分解し、機能を損なう可能性がある。特許文献1に開示されている改質剤は耐熱性に関して十分な検討がなされておらず、条件によっては改質剤が分解し、性能が発揮されない可能性があった。
【0004】
特許文献2には滑剤として不飽和脂肪酸アミドを用いた低摩擦性に優れるゴム組成物が開示され、特許文献3には親水化剤としてポリエチレングリコールエステルを用いたゴム組成物が開示されている。これら改質剤は、加硫工程を経ても性能が発揮されていることから耐熱性に優れていると言える。しかしながら、特許文献2及び3に開示されている改質剤は、ゴム組成物製造後の初期段階においては優れた性能を発揮しているものの、高温多湿環境下における経時変化に伴う性能の持続性については検討がなされていない。そのため、時間の経過とともに十分な性能が発揮されない可能性があった。
【0005】
特許文献4には、親水化剤としてアクリル変性グリコール系ポリマーを用いた、親水効果の持続性に優れた熱可塑性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、より長期間かつ高温条件にさらされた場合の親水効果の持続性については検討はなされておらず、より過酷な条件下では十分な性能が発揮されない可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-48319号公報
【特許文献2】特開平6-234886号公報
【特許文献3】特開2018-53160号公報
【特許文献4】特開2011-32467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の先行技術等における問題点に鑑みて、本発明の目的は、親水性及び低摩擦性を付与することが可能なエラストマー用表面改質剤組成物、並びに耐熱性に優れ、親水性及び低摩擦性の経時安定性にも優れるエラストマー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討を行った結果、特定の異なるビスアミドを特定の量比で含むエラストマー用表面改質剤組成物、及び当該エラストマー用表面改質剤組成物とエラストマーを特定の量比で含むエラストマー組成物により、上記課題を解決できることを見出した。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0009】
(1)(A)構造中に不飽和結合を1つ有する炭素数16~24の不飽和脂肪酸と炭素数1~6のアルキレンジアミンから誘導されるビスアミド及び(B)構造中に不飽和結合を2つ有する炭素数18~22の不飽和脂肪酸と炭素数1~6のアルキレンジアミンから誘導されるビスアミドを含み、(A)と(B)の質量比が99.9:0.1~70:30であるエラストマー用表面改質剤組成物。
(2)エラストマー100質量部に対し、前項(1)に記載のエラストマー用表面改質剤組成物を0.5~30質量部含有するエラストマー組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、親水性及び低摩擦性を付与することが可能なエラストマー用表面改質剤組成物、並びに耐熱性に優れ、親水性及び低摩擦性の経時安定性にも優れるエラストマー組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係るエラストマー用表面改質剤組成物及びエラストマー組成物について説明する。なお、本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限及び下限)の数値を含むものとする。例えば「2~10」は2以上10以下を表す。
【0012】
〔エラストマー用表面改質剤組成物〕
本発明の実施形態に係るエラストマー用表面改質剤組成物は、(A)構造中に不飽和結合を1つ有する炭素数16~24の不飽和脂肪酸と炭素数1~6のアルキレンジアミンから誘導されるビスアミド(以下、「ビスアミド(A)」と称する場合がある。)及び(B)構造中に不飽和結合を2つ有する炭素数18~22の不飽和脂肪酸と炭素数1~6のアルキレンジアミンから誘導されるビスアミド(以下、「ビスアミド(B)」と称する場合がある。)を含み、(A)と(B)の質量比(A:B)が99.9:0.1~70:30である。
【0013】
構造中に不飽和結合を1つ有する炭素数16~24の不飽和脂肪酸と炭素数1~6のアルキレンジアミンから誘導されるビスアミド(ビスアミド(A))としては、例えば、メチレンビスパルミトオレイン酸アミド、メチレンビスサピエン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスエライジン酸アミド、メチレンビスバクセン酸アミド、メチレンビスガドレイン酸アミド、メチレンビスエイコセン酸アミド、メチレンビスエルカ酸アミド、メチレンビスネルボン酸アミド、等のメチレンビスモノ不飽和脂肪酸アミド;エチレンビスパルミトオレイン酸アミド、エチレンビスサピエン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエライジン酸アミド、エチレンビスバクセン酸アミド、エチレンビスガドレイン酸アミド、エチレンビスエイコセン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスネルボン酸アミド、等のエチレンビスモノ不飽和脂肪酸アミド;ヘキサメチレンビスパルミトオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスサピエン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスエライジン酸アミド、ヘキサメチレンビスバクセン酸アミド、ヘキサメチレンビスガドレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスエイコセン酸アミド、ヘキサメチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスネルボン酸アミド、等のヘキサメチレンビスモノ不飽和脂肪酸アミド等が挙げられる。好ましくはエチレンビスモノ不飽和脂肪酸アミド、ヘキサメチレンビスモノ不飽和脂肪酸アミドであり、より好ましくは、エチレンビスモノ不飽和脂肪酸アミドである。エチレンビスモノ不飽和脂肪酸アミドとしては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエライジン酸アミドが好ましく、ヘキサメチレンビスモノ不飽和脂肪酸アミドとしては、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミドが好ましい。
これらは、1種用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0014】
構造中に不飽和結合を2つ有する炭素数18~22の不飽和脂肪酸と炭素数1~6のアルキレンジアミンから誘導されるビスアミド(ビスアミド(B))としては、メチレンビスリノール酸アミド、メチレンビスエイコサジエン酸アミド、メチレンビスドコサジエン酸アミド、等のメチレンビスジ不飽和脂肪酸アミド;エチレンビスリノール酸アミド、エチレンビスエイコサジエン酸アミド、エチレンビスドコサジエン酸アミド、等のエチレンビスジ不飽和脂肪酸アミド;ヘキサメチレンビスリノール酸アミド、ヘキサメチレンビスエイコサジエン酸アミド、ヘキサメチレンビスドコサジエン酸アミド、等のヘキサメチレンビスジ不飽和脂肪酸アミド;等が挙げられる。好ましくはエチレンビスジ不飽和脂肪酸アミド、ヘキサメチレンビスジ不飽和脂肪酸アミドであり、より好ましくは、エチレンビスジ不飽和脂肪酸アミドである。エチレンビスジ不飽和脂肪酸アミドとしては、エチレンビスリノール酸アミドが好ましく、ヘキサメチレンビスジ不飽和脂肪酸アミドとしては、ヘキサメチレンビスジリノール酸アミドが好ましい。
これらは、1種用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0015】
ビスアミド(A)、(B)の組み合わせとしては、特に限定はないが、それぞれの合成に用いたアルキレンジアミンのアルキレン基が同じものを組み合わせることが好ましい。また、ビスアミド(A)について2種以上を組合わせて用いる場合も同様に、それぞれの合成に用いたアルキレンジアミンのアルキレン基が同じものを組合わせて用いることが好ましい。ビスアミド(B)について2種以上を組合わせて用いる場合も、同様にして組み合わせることができる。
【0016】
上記ビスアミド(A)、(B)の製造法としては、特に限定されないが、例えば、所定の不飽和脂肪酸と所定のアルキレンジアミンを70~250℃でアミド化反応を行う方法が挙げられる。この際、所定の不飽和脂肪酸と所定のアルキレンジアミンをアミド化して、ビスアミド(A)、(B)をそれぞれ別々に合成した後に溶融混合しても良く、ビスアミド(A)、(B)の原料となる所定の不飽和脂肪酸及び所定のアルキレンジアミンを混合した上でアミド化反応を行っても良い。
【0017】
ビスアミド(A)及びビスアミド(B)の質量比(A:B)は99.9:0.1~70:30であり、好ましくは99.5:0.5~80:20であり、より好ましくは99.5:0.5~90:10であり、さらに好ましくは99.5:0.5~95:5である。質量比が上記の範囲外である場合、エラストマー用表面改質剤組成物においては十分な親水性、低摩擦性、エラストマー組成物においては十分な耐熱性、並びに親水性及び低摩擦性の経時安定性が得られないことがある。
【0018】
上記ビスアミド(A)、(B)はそれぞれ2種類以上用いることができ、例えば、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスリノール酸アミドの組み合わせに加え、エチレンビスエライジン酸アミドを用いることで、より優れた親水性、低摩擦性、耐熱性、経時安定性が得られる。エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスリノール酸アミド、エチレンビスエライジン酸アミドの質量比として、好ましくは99.0:0.9:0.1~70:25:5であり、より好ましくは99.0:0.9:0.1~80:15:5であり、さらに好ましくは99.0:0.9:0.1~90:8:2である。
【0019】
〔エラストマー組成物〕
本発明の実施形態に係るエラストマー組成物は、エラストマー100質量部に対し、上記エラストマー用表面改質剤組成物を0.5~30質量部含有する。
【0020】
上記エラストマー組成物に用いられるエラストマーとしては、熱硬化性エラストマーと熱可塑性エラストマーが挙げられる。熱硬化性エラストマーとしては、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムなどのジエン系ゴム;ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムの非ジエン系ゴム等が挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレンブタジエンエラストマー等のポリスチレン系エラストマー、エチレン酢酸ビニルエラストマー等のオレフィン/アルケン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー等が挙げられる。好ましくは、スチレンブタジエンゴム、エチレン酢酸ビニルエラストマーである。上記エラストマーは単独もしくは複数種を併用して用いることができる。
【0021】
エラストマー組成物中における上記エラストマー用表面改質剤組成物の含有量は、エラストマーの質量を100質量部としたとき、0.5質量部~30質量部であり、好ましくは1質量部~20質量部であり、より好ましくは2質量部~10質量部である。含有量が上記範囲外である場合、十分な親水性及び低摩擦性の経時安定性が得られないことがある。
【0022】
またエラストマー組成物は、必要に応じて物性を調整するために一般的に添加される各種成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、可塑剤、架橋剤、軟化剤、粘着付与剤、帯電防止剤、充填剤、老化防止剤、シランカップリング剤、亜鉛華(酸化亜鉛)、加硫促進剤、加硫剤、ステアリン酸、作業改良剤、樹脂、ワックス、オイル、溶媒等が挙げられ、これらを、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して含有していても良い。
【0023】
エラストマー組成物は、上述した各成分を配合して、配合物の性状等に応じて、撹拌や混練などの公知の方法により均質に混合することによって製造することができる。
【0024】
熱硬化性エラストマー中に上記ビスアミド(A)、(B)を共存させる場合は、加硫前の熱硬化性エラストマーを含むゴム組成物とビスアミド(A)、(B)を混合し、その後加硫することが好ましい。
【0025】
上記エラストマー組成物を用いて、エラストマーの種類に応じて公知の方法で成形することで成形体を形成することができる。成形体の製法としては、例えばT字型の金型から樹脂を押し出して成形するTダイ法や、加熱した樹脂をロールの間に通して所定の厚さに成形するカレンダー成形等が挙げられる。成形体の耐熱性、親水性及び低摩擦性の経時安定性は、例えば後述する実施例の評価法により行うことができ、これにより、エラストマー用表面改質剤組成物及びエラストマー組成物の評価を行うことができる。また、このような成形体は様々な用途に用いることができ、日用雑貨や建築・土木素材、電化製品部品、自動車部品等の用途、特に、帯電防止やほこり等の付着防止が望まれる電化製品や異音防止素材として自動車用部品に好適である。
【実施例0026】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の実施形態を具体的に説明する。
【0027】
〔ビスアミド(A)、(B)の合成〕
下記合成例1~5にビスアミド(A)及びビスアミド(B)の製造例を示す。なお、合成例1~5において用いた、オレイン酸とは炭素数18の1価の不飽和脂肪酸のうち9位がシス型のもの、エライジン酸とは9位がトランス型のもの、リノール酸とは炭素数18の2価の不飽和脂肪酸のうち9位と12位が共にシス型のものを指す。
【0028】
〔合成例1、エチレンビスオレイン酸アミド〕
温度計、窒素導入管、空冷管を取り付けた300mLの5つ口フラスコにオレイン酸(220g、0.78mol)を仕込み、滴下ロートにてエチレンジアミン(23.9g、0.40mol)を滴下した。その後、220℃で反応を行い、1時間当たりの酸価の下がり幅が0.5mgKOH/g以下となった時点で反応を終了し、エチレンビスオレイン酸アミドを229.9g(0.39mol)得た。
【0029】
〔合成例2、エチレンビスリノール酸アミド〕
オレイン酸(220g、0.78mol)に替えて、リノール酸(220g、0.78mol)を用いた以外は合成例1と同様にしてエチレンビスリノール酸アミドを229.9g(0.39mol)得た。
【0030】
〔合成例3、エチレンビスエライジン酸アミド〕
オレイン酸(220g、0.78mol)に替えて、エライジン酸(220g、0.78mol)を用いた以外は合成例1と同様にしてエチレンビスエライジン酸アミドを229.9g(0.39mol)得た。
【0031】
〔合成例4、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド〕
エチレンジアミン(23.9g、0.40mol)に替えて、ヘキサメチレンジアミン(46.2g、0.40mol)を用いた以外は合成例1と同様にしてヘキサメチレンビスオレイン酸アミドを252.2g(0.39mol)得た。
【0032】
〔合成例5、ヘキサメチレンビスリノール酸アミド〕
オレイン酸(220g、0.78mol)に替えて、リノール酸(220g、0.78mol)を用いた以外は合成例4と同様にしてヘキサメチレンビスリノール酸アミドを252.4g(0.39mol)得た。
【0033】
〔実施例1、改質剤1〕
温度計及び窒素導入管を取り付けた500mLの5つ口フラスコに、ビスアミド(A)として、合成例1で得られたエチレンビスオレイン酸アミドを196g(0.33mol)及び合成例3で得られたエチレンビスエライジン酸アミドを1g(0.002mol)、ビスアミド(B)として合成例2で得られたエチレンビスリノール酸アミドを3g(0.005mol)仕込み、130℃で1時間撹拌配合し、エラストマー用表面改質剤組成物1(改質剤1)を200g得た。
【0034】
〔実施例2~5、改質剤2~5〕
表1に示す配合比になるように合成例1、2、4、5で得られたビスアミド(A)、(B)を用いた以外は実施例1と同様にしてエラストマー用表面改質剤組成物2~5(改質剤2~5)を得た。
【0035】
〔比較例1、改質剤6〕
合成例1で得られたエチレンビスオレイン酸アミドを改質剤6として用いた。
【0036】
【表1】
【0037】
〔エラストマー組成物の調製〕
(実施例6~10、比較例2)
実施例1~5で得られた改質剤1~5及び比較例1の改質剤6をそれぞれ0.05g秤量し、オレフィン/アルケン系エラストマー(製品名:ウルトラセン(登録商標)685、東ソー(株)製、エチレン酢酸ビニル共重合体)0.95g、及び溶媒(トルエン)49gと混合して、実施例6~10及び比較例2のエラストマー組成物を調製した。得られたエラストマー組成物について、下記の評価試験を行った。
【0038】
(実施例11)
実施例1で得られた改質剤1を0.09g秤量し、スチレンブタジエンゴム(製品名:JSR 1500、JSR(株)製)0.91g、及び溶媒(トルエン)49gと混合して、実施例11のエラストマー組成物を調製した。得られたエラストマー組成物について、下記の評価試験を行った。
【0039】
〔評価〕
(1)親水性(初期親水性)の評価
実施例6~11、比較例2のエラストマー組成物を、それぞれガラス基板上にバーコーターにより塗布し、ホットプレートにて100℃で30分間乾燥した、これにより、厚さ1μmの樹脂膜を形成した。得られた樹脂膜の接触角を、JIS R3257に準じて接線法により測定した。以下の指標により、樹脂膜の親水性を評価した。評価基準は下記の通りである。
◎:30°未満
○:30°以上45°未満
△:45°以上75°未満
×:75°以上
【0040】
(2)摩擦係数の評価
実施例6~11、比較例2のエラストマー組成物を、それぞれガラス基板上にバーコーターにより塗布し、ホットプレートにて100℃で30分間乾燥した、これにより、厚さ1mmの樹脂膜を形成した。得られた樹脂膜について、バウデン試験機にて接触子(半円柱ステンレス、1cm)、荷重:100g、速度:2.5mm/s、測定距離:10mm、試験回数:10回の条件下摩擦係数を測定し、平均値を算出した。評価基準は下記の通りである。
◎:0.200未満
○:0.200以上0.250未満
△:0.250以上0.300未満
×:0.300以上
【0041】
(3)耐熱性の評価
実施例6~11、比較例2のエラストマー組成物をそれぞれ10g取り、真空乾燥オーブンにて120℃、-0.1kPa以下で1時間乾燥し、試料を作製した。得られた試料10mgをアルミパンに入れ、熱質量分析装置(STA7200、(株)日立ハイテクサイエンス製)を用いて、空気雰囲気下で10℃/分の速度で300℃まで昇温し、熱重量減少率を測定した。熱重量減少率が5%になった時の温度(Td5)を用いて、耐熱性を評価した。評価基準は下記の通りである。
◎:270℃以上
○:250℃以上270℃未満
△:240℃以上250℃未満
×:240℃未満
【0042】
(4)経時安定性の評価
上記(1)及び(2)の評価において作製した樹脂膜を形成したガラス基板を80℃湿度70%にて1週間保管し、加速試験を行った。その後樹脂膜を水洗し、室温で1日乾燥させた。乾燥後の樹脂膜の接触角及び摩擦係数を上記(1)及び(2)の評価と同様の方法で測定した。(1)及び(2)で測定した値を基準として、下記式より変化率を算出した。
変化率(%)=|(初期の値)-(加速試験後の値)|/(初期の値)×100
評価基準は下記の通りである。
◎:3.0未満
○:3.0以上5.0未満
△:5.0以上10.0未満
×:10.0以上
【0043】
以上の評価結果を表2に示す。表2中、括弧内の数値は、上記(1)~(4)の評価において得られた測定値又は算出値である。
【0044】
【表2】
【0045】
表2に示すように、実施例1~5のエラストマー用表面改質剤組成物を含む実施例6~11のエラストマー組成物は、親水性及び低摩擦性に優れており、高温多湿条件での保管後も親水性、低摩擦性の変化が小さく、経時安定性に優れる結果が得られた。、また、耐熱性評価の結果から、実施例1~5の改質剤1~5を含むエラストマー組成物は耐熱性に優れることが示された。一方、比較例2は低摩擦性、耐熱性は良好であるものの親水性が不十分であり、経時安定性も悪い結果となった。