(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132814
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】床版
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
E01D19/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038355
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 公生
(72)【発明者】
【氏名】新井 崇裕
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】せん断力をより効果的に伝達できる床版を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る床版は、橋軸方向D1、橋軸方向D1に直交する橋軸直角方向D2、及び、橋軸方向D1と橋軸直角方向D2の双方に直交する高さ方向D3に延びる床版70である。床版70は、他の床版に対向する端面73を有し、端面73には、他の床版に向かって突出する複数の凸部74が並んでいる。各凸部74の少なくとも1つの面は、橋軸方向D1、橋軸直角方向D2、及び高さ方向D3に対して傾斜する傾斜面78であり、一の凸部74の傾斜面78は、高さ方向D3の一方から他方に向かうに従って、他の凸部74に接近又は離隔するように傾斜している。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋軸方向、前記橋軸方向に直交する橋軸直角方向、及び、前記橋軸方向と前記橋軸直角方向の双方に直交する高さ方向に延びる床版であって、
他の床版に対向する端面を有し、
前記端面には、前記他の床版に向かって突出する複数の凸部が並んでおり、
各前記凸部の少なくとも1つの面は、前記橋軸方向、前記橋軸直角方向、及び前記高さ方向に対して傾斜する傾斜面であり、
一の前記凸部の前記傾斜面は、前記高さ方向の一方から他方に向かうに従って、他の前記凸部に接近又は離隔するように傾斜している、
床版。
【請求項2】
前記凸部は、複数の前記傾斜面を有し、
複数の前記傾斜面は、前記高さ方向の一方側に位置する第1傾斜面と、前記高さ方向の他方側に位置する第2傾斜面とを含んでおり、
前記第1傾斜面及び前記第2傾斜面は、前記高さ方向に並んでおり、
前記第1傾斜面は、斜め下方及び斜め上方のうち一方を向いており、
前記第2傾斜面は、斜め下方及び斜め上方のうち他方を向いている、
請求項1に記載の床版。
【請求項3】
前記凸部から突出する鉄筋を備える、
請求項1又は2に記載の床版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、床版に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-186614号公報には、プレキャスト床版の接続部構造及び接続部の施工方法が記載されている。プレキャスト床版の接続部構造では、橋桁の上部に複数のプレキャスト床版が設置されている。各プレキャスト床版は、他のプレキャスト床版に対向する接続端部を有する。
【0003】
接続端部には継手鉄筋が設けられ、更に接続端部の天端部には所定の高さを有する切り欠き凹部が形成されている。一対のプレキャスト床版の一対の切り欠き凹部には接続天端部材が設置される。また、各接続端部は凹凸面を有し、一対の接続端部の当該凹凸面の間に間詰め硬化材が充填される。この凹凸面は側面視において凹凸状とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したプレキャスト床版では、一対のプレキャスト床版のそれぞれと間詰材との間に高さ方向にせん断力を伝達できる。しかしながら、高さ方向以外の方向にはせん断力を伝達できないことがあるので、せん断力の伝達の点において改善の余地がある。従って、せん断力をより効果的に伝達できることが求められる。
【0006】
本開示は、せん断力をより効果的に伝達できる床版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る床版は、橋軸方向、橋軸方向に直交する橋軸直角方向、及び、橋軸方向と橋軸直角方向の双方に直交する高さ方向に延びる床版である。床版は、他の床版に対向する端面を有し、端面には、他の床版に向かって突出する複数の凸部が並んでいる。各凸部の少なくとも1つの面は、橋軸方向、橋軸直角方向、及び高さ方向に対して傾斜する傾斜面である。一の凸部の傾斜面は、高さ方向の一方から他方に向かうに従って、他の凸部に接近又は離隔するように傾斜している。
【0008】
この床版は、他の床版に対向する端面を有し、この端面には他の床版に向かって突出する凸部が形成されている。従って、この床版と当該他の床版との間に間詰材が充填された後に各床版と間詰材との間に作用するせん断力を伝達できるので、せん断強度を高めることができる。更に、他の床版に対向する端面に形成された凸部は、橋軸方向、橋軸直角方向、及び高さ方向に対して傾斜する傾斜面を有する。この傾斜面は、高さ方向の一方から他方に向かうに従って、他の凸部に接近又は離隔するように傾斜している。従って、この傾斜面を介して床版と間詰材との間で橋軸方向、橋軸直角方向、及び高さ方向の3方向にせん断力を伝達できるので、より効果的にせん断力を伝達できる。
【0009】
前述した床版において、凸部は、複数の傾斜面を有し、複数の傾斜面は、高さ方向の一方側に位置する第1傾斜面と、高さ方向の他方側に位置する第2傾斜面とを含んでおり、第1傾斜面及び第2傾斜面は、高さ方向に並んでもよい。第1傾斜面は、斜め下方及び斜め上方のうち一方を向いており、第2傾斜面は、斜め下方及び斜め上方のうち他方を向いていてもよい。この場合、間詰材に対して床版が下方へのせん断力を受けた場合、及び床版に対して間詰材が下方へのせん断力を受けた場合、の双方の場合に第1傾斜面及び第2傾斜面のいずれかを介して3方向にせん断力を伝達できる。従って、床版と間詰材との間におけるせん断力の伝達をより効果的にすることができる。
【0010】
前述した床版は、凸部から突出する鉄筋を備えてもよい。この場合、凸部以外の部分から突出する鉄筋を備える床版と比較して、床版の製造時に用いる型枠を外しやすくすることができる。従って、床版の製造を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、せん断力をより効果的に伝達できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る接合構造を示す側断面図である。
【
図3】連続繊維補強材を模式的に示す斜視図である。
【
図4】第2実施形態に係る接合構造を示す側断面図である。
【
図6】第3実施形態に係る床版を示す斜視図である。
【
図9】第4実施形態に係る床版を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る床版、及び床版の接合構造の実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る接合構造1を示す断面図である。
図2は、接合構造1を示す平面図である。
図1及び
図2に示されるように、接合構造1は、第1床版10と、第1床版10から離隔した位置に設けられる第2床版20と、第1床版10及び第2床版20の間に充填された間詰材30とを備える。
【0015】
第1床版10、第2床版20及び間詰材30は、例えば、橋梁を構成する。一例として、当該橋梁は高速道路の橋梁である。橋梁は、例えば、橋軸方向D1に延びる複数の桁と、複数の桁の間において橋軸直角方向D2に延在する複数の支持部材とを備え、複数の桁の上において第1床版10及び第2床版20が橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2に延びるように配置される。橋軸直角方向D2は橋軸方向D1に直交する。
【0016】
第1床版10及び第2床版20のそれぞれは、例えば、予め工場において製造されたプレキャストコンクリート床版である。第1床版10及び第2床版20のそれぞれは、例えば、鉄筋を有しておらず、且つ超高強度繊維補強コンクリート(UFC:Ultra high strength Fiber reinforce Concrete)によって構成されているUFC床版である。また、第1床版10及び第2床版20は、UHPFRC(Ultra High Performance Fiber Reinforced Cementitious Composite)によって構成されていてもよい。
【0017】
第1床版10は、橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2に延びる上面11と、第1床版10の上面11との反対側において橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2に延びる下面12と、橋軸直角方向D2及び高さ方向D3に延びる第1端面13とを有する。高さ方向D3は、第1床版10及び第2床版20の厚さ方向に一致する。
【0018】
上面11及び下面12のそれぞれは、例えば、平坦状とされている。第1端面13は、第2床版20に向けて突出する第1凸部14と、第2床版20から離隔する方向に窪む第1凹部15とを有する。第1端面13は、例えば、複数の第1凸部14を有する。第1凸部14は側面視(水平方向に沿って見た場合)において突出し、第1凹部15は側面視において窪んでいる。第1凸部14及び第1凹部15は高さ方向D3に沿って並んでいる。
【0019】
第1凸部14は、例えば、天面14bと、天面14bから見て高さ方向D3の両側のそれぞれに位置する一対の傾斜面14cとを有する台形状を呈する。第1凹部15は、例えば、底面15bと、底面15bから見て高さ方向D3の両側のそれぞれに位置する一対の傾斜面15cとを有する台形状を呈する。各傾斜面15cは傾斜面14cの延長上(同一平面上)に設けられる。
【0020】
第2床版20の構成は、例えば、第1床版10の構成と同様である。第2床版20は、上面21と、下面22と、第1端面13に橋軸方向D1に対向する第2端面23とを有する。第2端面23は、第1床版10に向けて突出する第2凸部24と、第1床版10から離隔する方向に窪む第2凹部25とを有する。
【0021】
例えば、第2凸部24は側面視において突出し、第2凹部25は側面視において窪んでいる。第2凸部24は、例えば、天面24bと、天面24bから見て高さ方向D3の両側のそれぞれに位置する一対の傾斜面24cとを有し、第2凹部25は、底面25bと、底面25bから見て高さ方向D3の両側のそれぞれに位置する一対の傾斜面25cとを有する。
【0022】
例えば、接合構造1では、第1凸部14の天面14bと、第2凸部24の天面24bとが橋軸方向D1に対向し、第1凹部15の底面15bと、第2凹部25の底面25bとが橋軸方向D1に対向するように、第1床版10及び第2床版20が設置されている。しかしながら、接合構造では、第1凸部14の天面14bと、第2凹部25の底面25bとが橋軸方向D1に対向し、第1凹部15の底面15bと、第2凸部24の天面24bとが橋軸方向D1に対向するように、第1床版10及び第2床版20が設置されていてもよい。
【0023】
また、上記では、第1凸部14が、天面14b及び一対の傾斜面14cを有する台形状を呈し、第1凹部15が、底面15b及び一対の傾斜面15cを有する台形状である例について説明した。しかしながら、第1凸部14及び第1凹部15は、台形状以外の形状であってもよい。例えば、第1凸部は、天面、上面及び下面を有する矩形状を呈し、第1凹部は、底面、上面及び下面を有する矩形状を呈していてもよい。第2凸部24及び第2凹部25についても同様である。
【0024】
例えば、間詰材30は、充填時には流動性を有し、充填時から一定時間経過後に硬化するセメント系材料である。間詰材30は、無収縮モルタルであってもよいし、場所打ちUFC、又はUHPFRCであってもよく、間詰材30としては種々のものを用いることが可能である。
【0025】
第1床版10は、第1端面13から第2床版20に向かって突出する第1連続繊維補強材16を有する。第1連続繊維補強材16は、例えば、橋軸方向D1に沿って延在する。第1連続繊維補強材16の一部は第1床版10に埋設されており、第1連続繊維補強材16の第1床版10に埋設されている部分の深さ(橋軸方向D1への長さ)は、第1床版10のコンクリートが定着できる長さ以上である。例えば、第1床版10は、複数の第1連続繊維補強材16を有し、複数の第1連続繊維補強材16は高さ方向D3に沿って並んでいる。また、複数の第1連続繊維補強材16は、橋軸直角方向D2に沿って並んでいる。
【0026】
例えば、第1連続繊維補強材16は第1凸部14(一例として第1凸部14の天面14b)から突出している。しかしながら、第1連続繊維補強材16は、傾斜面14c(又は傾斜面15c)から突出していてもよいし、第1凹部15(一例として第1凹部15の底面15b)から突出していてもよい。このように、第1連続繊維補強材16が突出する場所は特に限定されない。
【0027】
第2床版20は、第1床版10と同様、第2端面23から第1床版10に向かって突出する第2連続繊維補強材26を有する。第2連続繊維補強材26の一部は第2床版20に埋設されており、第2連続繊維補強材26の第2床版20に埋設されている部分の深さは、第2床版20のコンクリートが定着できる長さ以上である。第2床版20は、複数の第2連続繊維補強材26を有し、複数の第2連続繊維補強材26は橋軸直角方向D2及び高さ方向D3のそれぞれに沿って並んでいる。
【0028】
例えば、第2連続繊維補強材26は第2凸部24(一例として第2凸部24の天面24b)から突出している。しかしながら、第2連続繊維補強材26が突出する場所は、第1連続繊維補強材16と同様、特に限定されない。例えば、第2連続繊維補強材26の高さ方向D3の位置は、第1連続繊維補強材16の高さ方向D3の位置と同一である。
【0029】
例えば、平面視(高さ方向D3に沿って見た場合)において、第1連続繊維補強材16及び第2連続繊維補強材26は橋軸直角方向D2に沿って交互に並んでいる。しかしながら、第1連続繊維補強材16及び第2連続繊維補強材26の位置は、上記の例に限られず、適宜変更可能である。また、第1連続繊維補強材16の構成は、例えば、第2連続繊維補強材26の構成と同一である。従って、以下では、第1連続繊維補強材16及び第2連続繊維補強材26を識別する必要がない場合には、第1連続繊維補強材16及び第2連続繊維補強材26を纏めて連続繊維補強材6として説明する。
【0030】
図3は、連続繊維補強材6を模式的に示す斜視図である。
図3に示されるように、連続繊維補強材6は、例えば、連続繊維補強撚り線である。すなわち、連続繊維補強材6は、連続繊維が束ねられて形成された複数の素線7が撚り合わされ樹脂によって固められた状態とされている。連続繊維補強材6は、鉄筋よりも高い防錆性を有しており、鉄よりも耐腐食性が高い材料によって構成されている。
【0031】
連続繊維補強材6は、例えば、炭素繊維ロッドである。一例として、連続繊維補強材6は、複数の素線7を含んでおり、複数の素線7が螺旋状に撚り合わされて形成されている。素線7は、樹脂を含んで構成されている。素線7は、例えば、マトリクス樹脂によって構成されている。マトリクス樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂等である。素線7は、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、バサルト繊維又はガラス繊維によって補強されていてもよい。
【0032】
次に、本実施形態に係る接合構造1から得られる作用効果について説明する。
図1及び
図2に示されるように、接合構造1では、第1床版10が第2床版20に対向する第1端面13を有し、第2床版20が第1床版10に対向する第2端面23を有し、第1端面13と第2端面23の間に間詰材30が充填される。第1床版10は第1端面13から突出する第1連続繊維補強材16を有し、第2床版20は第2端面23から突出する第2連続繊維補強材26を有する。従って、鉄筋ではなく、錆が生じにくい第1連続繊維補強材16及び第2連続繊維補強材26のそれぞれが第1端面13及び第2端面23のそれぞれから突出しているので、腐食の可能性を低減させることができる。よって、第1床版10及び第2床版20を構成する部材の腐食をより確実に抑制して腐食防止の信頼性を高めることができる。
【0033】
更に、第1端面13には、第2床版20に向かって突出する第1凸部14と、第2床版20から離隔する方向に窪む第1凹部15が形成されている。第2端面23には、第1床版10に向かって突出する第2凸部24と、第1床版10から離隔する方向に窪む第2凹部25が形成されている。例えば、第1凸部14及び第2凸部24のそれぞれは、側面視において突出しており、第1凹部15及び第2凹部25のそれぞれは、側面視において窪んでいる。従って、第1床版10及び第2床版20のそれぞれと間詰材30との間に作用する高さ方向D3のせん断力をより効果的に伝達できるので、せん断強度を高めることができる。
【0034】
本実施形態において、第1床版10及び第2床版20は、鉄筋を有しておらず、且つ超高強度繊維補強コンクリートによって構成されている。よって、第1床版10及び第2床版20が鉄筋を有しないことにより、第1床版10及び第2床版20を構成する部材の腐食をより確実に回避できる。更に、第1床版10及び第2床版20が鉄筋を有さず且つ超高強度繊維補強コンクリートによって構成されていることにより、高い強度を維持しつつ第1床版10及び第2床版20を薄くすることができる。
【0035】
本実施形態において、間詰材30は、超高強度繊維補強コンクリートによって構成されている。よって、高い強度を維持しつつ第1端面13と第2端面23との距離を短くできると共に、第1端面13と第2端面23の間に配置する鉄筋を不要とすることができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る接合構造41について
図4及び
図5を参照しながら説明する。接合構造41の一部の構成は、前述した接合構造1の一部の構成と同一である。従って、以降の説明では、接合構造1の説明と重複する説明を同一の符号を付して適宜省略する。接合構造41は、橋軸方向D1に延びる支持部材42と、支持部材42の上において橋軸直角方向D2に並ぶように配置される第1床版50及び第2床版60と、第1床版50及び第2床版60の間に充填される間詰材30とを備える。
【0037】
支持部材42は、例えば、上フランジ42b、ウェブ42c及び下フランジ42dを有する鋼桁である。しかしながら、支持部材42は、鋼桁に限られず、例えば、PC桁であってもよい。接合構造41は現場Aに設けられ、一例として、現場Aは高速道路における工事現場である。例えば、現場Aでは、第1床版50及び第2床版60を含む床版の更新工事が行われる。
【0038】
例えば、第1床版50及び第2床版60は、橋軸方向D1に延びる短辺と、橋軸直角方向D2に延びる長辺とを有し、高さ方向D3に厚みを有する矩形板状を呈する。第1床版50及び第2床版60は、例えば、前述した第1床版10及び第2床版20と同様、超高強度繊維補強コンクリートによって構成されるUFC床版である。第1床版50及び第2床版60の材料は、例えば、第1床版10及び第2床版20の材料と同一である。
【0039】
第1床版50は、橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2に延びる上面51と、第1床版50の上面51との反対側において橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2に延びる下面52と、橋軸方向D1及び高さ方向D3に延びる第1端面53とを有する。第1端面53は、第2床版20に向けて突出する第1凸部54と、第2床版60から離隔する方向に窪む第1凹部55とを有する。
【0040】
第1凸部54は平面視において突出し、第1凹部55は平面視において窪んでいる。第1凸部54及び第1凹部55は橋軸方向D1に沿って並んでいる。第1凸部54及び第1凹部55のそれぞれの形状は、例えば、前述した第1凸部14及び第1凹部15のそれぞれの形状と同一である。従って、第1凸部54及び第1凹部55の形状の詳細な説明は省略する。
【0041】
第2床版60の構成は、例えば、第1床版50の構成と同様である。第2床版60は、上面61と、下面62と、第1端面53に橋軸直角方向D2に対向する第2端面63とを有する。第2端面63は、第1床版50に向けて突出する第2凸部64と、第1床版50から離隔する方向に窪む第2凹部65とを有する。
【0042】
第2凸部64は平面視において突出し、第2凹部65は平面視において窪んでいる。第2凸部64及び第2凹部65のそれぞれの形状及び配置態様は、例えば、前述した第2凸部24及び第2凹部25のそれぞれの形状及び配置態様と同様である。従って、第2凸部64及び第2凹部65の形状及び配置態様の詳細な説明は省略する。
【0043】
第1床版50は、前述した第1床版10と同様、第1端面53から第2床版60に向かって突出する第1連続繊維補強材16を有する。第2床版60は、前述した第2床版20と同様、第2端面63から第1床版50に向かって突出する第2連続繊維補強材26を有する。
【0044】
第1床版50において、複数の第1連続繊維補強材16は橋軸方向D1及び高さ方向D3のそれぞれに沿って並んでいる。同様に、第2床版60において、複数の第2連続繊維補強材26は橋軸方向D1及び高さ方向D3のそれぞれに沿って並んでいる。接合構造41では、平面視において、第1連続繊維補強材16及び第2連続繊維補強材26が交互に並んでいる。
【0045】
接合構造41は、第1床版50及び第2床版60の間に入り込むずれ止め部材43を備える。ずれ止め部材43は、例えば、スタッドジベル(頭付きスタッド)である。ずれ止め部材43は、例えば、支持部材42の上フランジ42bに固定された固定部43bと、固定部43bから高さ方向D3に沿って棒状に延在する棒状部43cとを有する。
【0046】
例えば、接合構造41は複数のずれ止め部材43を有し、複数のずれ止め部材43は橋軸方向D1に沿って並んでいる。例えば、複数のずれ止め部材43は橋軸直角方向D2に沿って並んでいる。接合構造41では、ずれ止め部材43と間詰材30が一体化されると共に、第1床版50及び第2床版60のそれぞれと間詰材30が一体化されている。
【0047】
以上、第2実施形態に係る接合構造41は、第1床版50及び第2床版60を支持する支持部材42を備え、第1床版50及び第2床版60は、支持部材42の上部において橋軸直角方向D2に沿って互いに対向している。第1凸部54及び第2凸部64のそれぞれは、平面視において突出しており、第1凹部55及び第2凹部65のそれぞれは、平面視において窪んでいる。
【0048】
上記のように、第1床版50及び第2床版60が支持部材42上において橋軸直角方向D2に沿って互いに対向しており、且つ支持部材42上に第1床版50及び第2床版60の接合部が位置する場合、当該接合部には上縁引張となる負曲げが作用することがある。これに対し、第2実施形態では、第1連続繊維補強材16及び第2連続繊維補強材26が第1床版50、第2床版60及び間詰材30に定着するので、上記の負曲げに抵抗できる。更に、第1凸部54及び第2凸部64は平面視において突出し、第1凹部55及び第2凹部65は平面視において窪んでいる。すなわち、接合構造41では、第1端面53及び第2端面63が平面視において凹凸状を呈するので、第1床版50及び第2床版60のそれぞれと間詰材30に水平剪断力をより効果的に伝達できる。
【0049】
接合構造41は、第1床版50及び第2床版60を支持する支持部材42と、支持部材42から上方に突出すると共に第1床版50及び第2床版60の間に入り込むずれ止め部材43と、を備える。従って、ずれ止め部材43によって支持部材42と間詰材30との間で水平せん断力を伝達し、第1床版50及び第2床版60のそれぞれの凹凸で間詰材30と第1床版50及び第2床版60のそれぞれとの間で水平せん断力を伝達することが可能となる。従って、支持部材42に対する間詰材30、並びに第1床版50及び第2床版60のずれをより確実に抑制できる。
【0050】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係る床版70について
図6、
図7及び
図8を参照しながら説明する。床版70は、例えば、前述した第1床版50又は第2床版60に代えて用いることが可能である。更に、床版70は、前述した第1床版10又は第2床版20に代えて用いることも可能である。
図6は、床版70の端面73を下方から見た斜視図である。
図7は、床版70の端面73を示す平面図である。
図8は、端面73の正面図である。
【0051】
床版70は、例えば、鉄筋76を有する。しかしながら、床版70は、例えば、床版70がUFC床版である場合には鉄筋76を有しなくてもよい。床版70は、橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2に延びる上面71と、床版70の上面71との反対側において橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2に延びる下面72と、橋軸直角方向D2及び高さ方向D3に延びる端面73とを有する。
【0052】
端面73は、他の床版に対向する面である。端面73と当該他の床版との間には間詰材(例えば間詰材30)が充填される。端面73は、当該他の床版に向けて突出する凸部74と、当該他の床版から離隔する方向に窪む凹部75とを有する。端面73は、複数の凸部74、及び複数の凹部75を有する。
【0053】
例えば、凸部74は平面視において突出し、凹部75は平面視において窪んでいる。一例として、凸部74及び凹部75は橋軸直角方向D2に沿って並んでいる。しかしながら、第3実施形態において、凸部74及び凹部75は橋軸方向D1又は高さ方向D3に沿って並んでいてもよく、凸部74及び凹部75が並ぶ方向は特に限定されない。
【0054】
凸部74は、例えば、天面77と、橋軸方向D1、橋軸直角方向D2、及び高さ方向D3に対して傾斜する複数の傾斜面78とを有する。凹部75は、例えば、底面79と、橋軸方向D1、橋軸直角方向D2、及び高さ方向D3に対して傾斜する複数の傾斜面80とを有する。各傾斜面80は各傾斜面78の延長上(同一平面上)に設けられる。一の凸部74の傾斜面78は、高さ方向D3の一方から他方に向かうに従って、他の凸部74に接近又は離隔するように傾斜している。すなわち、傾斜面78は、高さ方向D3の一方から他方に向かうに従って凸部74が広がる方向、又は狭まる方向に傾斜している。
【0055】
凸部74からは鉄筋76が突出している。床版70は、例えば、複数の鉄筋76を有し、複数の鉄筋76は高さ方向D3に沿って並んでいる。一例として、鉄筋76は凸部74の天面77から突出しており、天面77において上下一対に鉄筋76が並んでいる。しかしながら、床版70は、鉄筋76を有しなくてもよく、例えば、鉄筋76に代えて前述した連続繊維補強材6を有していてもよい。
【0056】
例えば、天面77は平坦面である。一例として、天面77は鼓形状を呈する。この場合、天面77の水平方向(例えば、橋軸直角方向D2)の長さは、端面73の高さ方向D3の中央から高さ方向D3の両端のそれぞれに向かうに従って長くなる。例えば、底面79は平坦面である。一例として、底面79は六角形状を呈する。この場合、底面79の水平方向の長さは、端面73の高さ方向D3の中央から高さ方向D3の両端のそれぞれに向かうに従って短くなる。
【0057】
例えば、傾斜面78は平坦状である。一例として、傾斜面78は四角形状を呈する。複数の傾斜面78は、高さ方向D3の一方側(例えば、上側)に位置する第1傾斜面78bと、高さ方向D3の他方側(例えば、下側)に位置する第2傾斜面78cとを有する。第1傾斜面78bの向きは、第2傾斜面78cの向きとは異なっている。一の凸部74の第1傾斜面78bは、上端から下方に向かうに従って、他の凸部74から離隔するように(凸部74が狭まる方向に)傾斜している。また、一の凸部74の第2傾斜面78cは、上端から下方に向かうに従って、他の凸部74に接近するように(凸部74が広がる方向に)傾斜している。
【0058】
第1傾斜面78bは斜め下方及び斜め上方のうち一方を向いており、第2傾斜面78cは斜め下方及び斜め上方のうち他方を向いている。具体例として、第1傾斜面78bは斜め下方に向けられ、第2傾斜面78cは斜め上方に向けられる。すなわち、第1傾斜面78bの法線は第1傾斜面78bから斜め下方に延びており、第2傾斜面78cの法線は第2傾斜面78cから斜め上方に延びている。
【0059】
以上、第3実施形態に係る床版70は、他の床版に対向する端面73を有し、端面73には他の床版に向かって突出する凸部74が形成されている。従って、床版70と当該他の床版との間に間詰材が充填された後に各床版と間詰材との間に作用するせん断力をより効果的に伝達できるので、せん断強度を高めることができる。更に、他の床版に対向する端面73に形成された凸部74は、橋軸方向D1、橋軸直角方向D2、及び高さ方向D3に対して傾斜する傾斜面78を有する。傾斜面78は、高さ方向D3の一方から他方に向かうに従って、他の凸部74に接近又は離隔するように傾斜している。従って、傾斜面78を介して床版70と間詰材との間で橋軸方向D1、橋軸直角方向D2、及び高さ方向D3の3方向にせん断力を伝達できるので、より効果的にせん断力を伝達できる。更に、第3実施形態では、第1実施形態よりも一層確実に間詰材30を充填できる。例えば、第1実施形態の場合、凸部の下に空気溜まりが形成される懸念があるが、第3実施形態ではこのような空気溜まりの発生をより確実に抑制できる。
【0060】
第3実施形態に係る床版70において、凸部74は、複数の傾斜面78を有し、複数の傾斜面78は、高さ方向D3の一方側に位置する第1傾斜面78bと、高さ方向D3の他方側に位置する第2傾斜面78cとを含んでおり、第1傾斜面78b及び第2傾斜面78cは、高さ方向D3に並んでいる。第1傾斜面78bは、斜め下方及び斜め上方のうち一方(上記の例では斜め下方)を向いており、第2傾斜面78cは、斜め下方及び斜め上方のうち他方(上記の例では斜め上方)を向いている。従って、間詰材に対して床版70が下方へのせん断力を受けた場合、及び床版70に対して間詰材が下方へのせん断力を受けた場合、の双方の場合に第1傾斜面78b及び第2傾斜面78cのいずれかを介して3方向にせん断力を伝達できる。よって、床版70と間詰材との間におけるせん断力の伝達をより効果的にすることができる。
【0061】
第3実施形態に係る床版70は、凸部74から突出する鉄筋76を備えてもよい。よって、凸部74以外の部分(例えば凹部75)から突出する鉄筋を備える床版と比較して、床版70の製造時に用いる型枠を外しやすくすることができる。従って、床版70の製造を容易に行うことができる。
【0062】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る床版90について
図9及び
図10を参照しながら説明する。床版90は、床版70と同様、前述した第1床版50又は第2床版60に代えて用いることが可能である。床版90の一部の構成は、床版70の一部の構成と同一である。従って、床版70と重複する説明を適宜省略する。
【0063】
図9は、床版90の端面93を下方から見た斜視図である。
図10は、床版90の端面93を示す平面図である。
図9及び
図10に示されるように、橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2に延びる上面91と、床版90の上面91との反対側において橋軸方向D1及び橋軸直角方向D2に延びる下面92と、橋軸直角方向D2及び高さ方向D3に延びる端面93とを有する。
【0064】
端面93は、前述した他の床版に向けて突出する凸部94と、当該他の床版から離隔する方向に窪む凹部95とを有する。凸部94は、例えば、天面97と、橋軸方向D1、橋軸直角方向D2、及び高さ方向D3に対して傾斜する複数の傾斜面98とを有する。凹部95は、例えば、底面99と、橋軸方向D1、橋軸直角方向D2、及び高さ方向D3に対して傾斜する複数の傾斜面100とを有する。一の凸部94の傾斜面98は、上端から下端に向かうに従って、他の凸部94に接近するように(凸部94が広がる方向に)傾斜している。
【0065】
例えば、天面97は台形状を呈する。この場合、天面97の水平方向(例えば、橋軸直角方向D2)の長さは、端面93の高さ方向D3の一方側(例えば、上側)から他方側(例えば、下側)に向かうに従って長くなる。例えば、底面99は台形状を呈する。この場合、底面99の水平方向の長さは、端面93の高さ方向D3の一方側から他方側に向かうに従って短くなる。例えば、傾斜面98は四角形状を呈する。一例として、傾斜面98は平行四辺形状を呈する。傾斜面98は、斜め下方及び斜め上方のうち一方を向いており、一例として、斜め上方に向けられる。すなわち、傾斜面98の法線は傾斜面98から斜め上方に延びている。
【0066】
以上、第4実施形態に係る床版90は、他の床版に対向する端面93を有し、端面93には他の床版に向かって突出する凸部94が形成されている。そして、他の床版に対向する端面93に形成された凸部94は、橋軸方向D1、橋軸直角方向D2、及び高さ方向D3に対して傾斜する傾斜面98を有する。従って、傾斜面98を介して床版90と間詰材との間で橋軸方向D1、橋軸直角方向D2、及び高さ方向D3の3方向にせん断力を伝達できるので、より効果的にせん断力を伝達できる。従って、床版90からは床版70と同様の効果が得られる。なお、第4実施形態では、斜め上方に向けられる傾斜面98を有する凸部94が形成された床版90について説明した。しかしながら、斜め上方に向けられる傾斜面98と、斜め下方に向けられる傾斜面との両方を有する凸部が形成された床版であってもよい。このように、床版の凸部の傾斜面の種類及び配置態様については適宜変更可能である。
【0067】
以上、本開示に係る床版、及び床版の接合構造の種々の実施形態について説明した。しかしながら、本開示に係る床版、及び床版の接合構造は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨の範囲内において適宜変更することが可能である。すなわち、床版、及び床版の接合構造における各部の形状、大きさ、材料、数及び配置態様は、上記の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
【0068】
例えば、前述の第1実施形態では、
図1に示されるように、橋軸方向D1に沿って互いに対向する第1床版10及び第2床版20を備える接合構造1について説明した。しかしながら、第1床版10及び第2床版20は橋軸直角方向D2に沿って互いに対向していてもよく、第1床版及び第2床版が対向する方向は特に限定されない。
【0069】
例えば、前述の第2実施形態では、スタッドジベルであるずれ止め部材43を備えた接合構造41について説明した。しかしながら、ずれ止め部材の種類はスタッドジベルに限定されない。例えば、ずれ止め部材は、穴あき鋼板ジベルであってもよい。すなわち、ずれ止め部材は、第1床版及び第2床版の間で間詰材と一体化できる部材であれば種々のものを用いることができる。
【0070】
例えば、前述の第3実施形態では、鼓形状を呈する天面77を有する凸部74、及び六角形状を呈する底面79を有する凹部75を備えた床版70について説明した。しかしながら、凸部74及び凹部75に代えて、六角形状を呈する天面を有する凸部、及び鼓形状を呈する底面を有する凹部を備えた床版であってもよい。すなわち、床版70において凹凸が逆であってもよい。更に、床版70の凸部及び凹部の形状は、前述した実施形態のものに限られず適宜変更可能である。第4実施形態に係る床版90についても同様である。
【符号の説明】
【0071】
1,41…接合構造、6…連続繊維補強材、7…素線、10…第1床版、11…上面、12…下面、13…第1端面、14…第1凸部、14b…天面、14c…傾斜面、15…第1凹部、15b…底面、15c…傾斜面、16…第1連続繊維補強材、20…第2床版、21…上面、22…下面、23…第2端面、24…第2凸部、24b…天面、24c…傾斜面、25…第2凹部、25b…底面、25c…傾斜面、26…第2連続繊維補強材、30…間詰材、42…支持部材、42b…上フランジ、42c…ウェブ、42d…下フランジ、43…ずれ止め部材、43b…固定部、43c…棒状部、50…第1床版、51…上面、52…下面、53…第1端面、54…第1凸部、55…第1凹部、60…第2床版、61…上面、62…下面、63…第2端面、64…第2凸部、65…第2凹部、70…床版、71…上面、72…下面、73…端面、74…凸部、75…凹部、76…鉄筋、77…天面、78…傾斜面、78b…第1傾斜面、78c…第2傾斜面、79…底面、80…傾斜面、90…床版、91…上面、92…下面、93…端面、94…凸部、95…凹部、97…天面、98…傾斜面、99…底面、100…傾斜面、A…現場、D1…橋軸方向、D2…橋軸直角方向、D3…高さ方向。