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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132815
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】冷蔵/冷凍車
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/04 20060101AFI20230914BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20230914BHJP
   F02D 41/10 20060101ALI20230914BHJP
   B60W 50/12 20120101ALI20230914BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20230914BHJP
   F25B 27/00 20060101ALI20230914BHJP
   B60K 28/10 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
F02D29/04 B
F02D29/02 J
F02D41/10
F02D29/02 K
B60W50/12
B60W40/02
F25B27/00 C
B60K28/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038358
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】石井 昴瑠
【テーマコード(参考)】
3D037
3D241
3G093
3G301
【Fターム(参考)】
3D037FA16
3D037FB02
3D241BA31
3D241BA70
3D241CC02
3D241CE01
3D241CE05
3D241DA13Z
3D241DC01Z
3D241DC25Z
3D241DC33Z
3G093AA13
3G093BA04
3G093BA14
3G093CB05
3G093CB06
3G093DB05
3G093EA02
3G301HA26
3G301JA04
3G301KA10
3G301KB01
3G301ND03
3G301PF01Z
3G301PF03Z
3G301PF07Z
3G301PF11Z
(57)【要約】
【課題】冷蔵/冷凍庫の作動状況に拘わらず安定的な誤発進抑制効果が得られる冷蔵/冷凍車を提供する。
【解決手段】トルク要求に応じてエンジン(12)を制御するエンジン制御部(10)と、前記エンジンの出力で作動するコンプレッサ(22)により冷却を行う冷蔵/冷凍庫(2)とを備えた冷蔵/冷凍車(1)であって、所定低車速以下で進行方向の所定距離内に障害物が検知されている状態でアクセルペダルが操作された場合にエンジントルクを抑制する機能(30)を有するものにおいて、前記エンジントルク抑制機能の作動時に、前記コンプレッサに割り当てるトルク要求値を一定またはゼロにするように構成されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルク要求に応じてエンジンを制御するエンジン制御部と、
前記エンジンの出力で作動するコンプレッサにより冷却を行う冷蔵/冷凍庫と、
を備えた冷蔵/冷凍車であって、
所定低車速以下で進行方向の所定距離内に障害物が検知されている状態でアクセルペダルが操作された場合にエンジントルクを抑制する機能を有するものにおいて、
前記エンジントルク抑制機能の作動時に、前記コンプレッサに割り当てるトルク要求値を一定またはゼロにするように構成されていることを特徴とする冷蔵/冷凍車。
【請求項2】
所定低車速以下で進行方向の所定距離内に障害物が検知されている状態でアクセルペダルが操作され、前記エンジントルク抑制機能の介入条件が成立し、第1の所定の時間が経過後に、前記コンプレッサに割り当てられるトルク要求値を一定またはゼロにするように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵/冷凍車。
【請求項3】
前記第1の所定の時間は、前記障害物までの距離に応じて動的に設定され、前記障害物までの距離が大きいほど長く設定されることを特徴とする請求項2に記載の冷蔵/冷凍車。
【請求項4】
前記コンプレッサに割り当てられる前記トルク要求値をゼロにする場合に、前記コンプレッサを停止することを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の冷蔵/冷凍車。
【請求項5】
前記コンプレッサを停止後、前記エンジントルク抑制機能の終了条件が成立した場合に、第2の所定時間経過後に前記クラッチを接続するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の冷蔵/冷凍車。
【請求項6】
前記エンジントルク抑制機能の作動時に、前記コンプレッサが停止中の場合は、前記エンジントルク抑制機能の終了条件が成立するまで、前記コンプレッサの作動が禁止されるように構成されていることを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の冷蔵/冷凍車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵/冷凍車に関し、さらに詳しくは、誤発進抑制機能を有する冷蔵/冷凍車に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン出力を利用して冷凍サイクルを作動させる冷凍車が公知である。例えば、特許文献1には、常に安定した冷却性能が得られるようにすることを目的として、エンジン回転が設定値以下の場合に、インバータの周波数を許容値よりも高い値にすることで、エンジン回転数が低下した場合でも圧縮機の運転を継続できるようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4199380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、冷凍車は、冷凍庫の設定温度により、あるいはドアの開閉後やスイッチオン操作直後など冷却能力が要求される状況では、エンジントルクへの影響が変化する。そのため、冷凍庫の負荷によりエンジントルクが低下している状態で、誤発進抑制機能が作動すると、エンジンのトルクダウン量が大きくなり過ぎる虞がある。
【0005】
例えば、前方に停車車両がある状況で誤ってアクセルペダルが踏み込まれ、誤発進抑制機能が作動した場合に、上り坂であれば、車両が後退しないようなレベルのエンジントルクは必要であるが、冷凍庫の負荷によりエンジンのトルクダウン量が大きくなると、後退する虞があり、それに対備してトルクダウン量を少なく設定すると状況によっては誤発進抑制効果が損なわれることにもなりかねない。
【0006】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷蔵/冷凍庫の作動状況に拘わらず安定的な誤発進抑制効果が得られる冷凍車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、
トルク要求に応じてエンジンを制御するエンジン制御部と、
前記エンジンの出力で作動するコンプレッサにより冷蔵/冷却を行う冷蔵/冷凍庫と、
を備えた冷蔵/冷凍車であって、
所定低車速以下で進行方向の所定距離内に障害物が検知されている状態でアクセルペダルが操作された場合にエンジントルクを抑制する機能を有するものにおいて、
前記エンジントルク抑制機能の作動時に、前記コンプレッサに割り当てるトルク要求値を一定またはゼロにするように構成されていることを特徴とする冷蔵/冷凍車にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る冷蔵/冷凍車は、上記のように、エンジントルク抑制機能の作動時に、冷蔵/冷凍庫のコンプレッサに割り当てるトルク要求値を一定またはゼロにすることで、冷蔵/冷凍庫の作動状況に拘わらず安定的な誤発進抑制効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】冷蔵/冷凍車の概略を示す側面図である。
図2】冷蔵/冷凍車の制御システムを示すブロック図である。
図3】本発明第1実施形態に係る誤発進抑制御を示すフローチャートである。
図4】本発明第2実施形態に係る誤発進抑制御を示すフローチャートである。
図5】本発明第3実施形態に係る誤発進抑制御を示すフローチャートである。
図6】本発明第4実施形態に係る誤発進抑制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(冷蔵/冷凍車の基本構成)
図1において、冷蔵/冷凍車1は、車室下側に内燃式のエンジン12を搭載したキャブオーバー型トラックの車体後部に冷蔵/冷凍庫2を備える。冷蔵/冷凍庫2は、例えば断熱材を用いた断熱構造のコンテナとして構成され、後部および/または側面に開閉式扉を備えている。
【0011】
冷蔵/冷凍庫2の冷凍システムとしては、エンジン12の動力により駆動されるコンプレッサ22、車体後部側面下部に搭載されたコンデンサ23とレシーバドライヤ24、および、冷蔵/冷凍庫2の天井部に配設されたエバポレータ25を備え、それらを配管で連結して冷媒を循環させ冷凍サイクル(圧縮、凝縮、膨張、蒸発)を実行することで庫内を冷却するように構成されている。
【0012】
冷媒を圧縮するコンプレッサ22は、エンジン12によりベルト駆動されるプーリに電磁クラッチが付設されており、冷蔵/冷凍庫2内に設置した温度センサに検知される庫内温度に基づいて、冷蔵/冷凍庫制御部20により電磁クラッチがオン/オフ制御されることで、コンプレッサ22の作動/不作動(冷却オン/オフ)が切替わり、庫内が所定の温度域に維持されるように構成されている。
【0013】
図2は、冷蔵/冷凍車1の制御システムを示している。エンジン12が作動している状態で、冷蔵/冷凍庫2の操作部21(コントロールパネル)の冷却スイッチをオンにすると、冷蔵/冷凍庫制御部20は、設定温度と庫内温度に基づいて電磁クラッチをオンにしてコンプレッサ22を作動させるとともに、コンデンサ23のファンモータおよびエバポレータ25のファンモータを作動させ、冷蔵/冷凍庫2が作動状態となり、庫内の空気が冷却される。
【0014】
冷蔵/冷凍車1は、アクセルペダルセンサ11に検知されるアクセルペダルの踏込量(トルク要求)に応じて、エンジンコントローラ10によりエンジン12のスロットルバルブの開度(スロットルモータ)が制御されるように構成された電子制御スロットルシステムを備えている。エンジンコントローラ10には、アクセルペダルの踏込量以外にも、エンジン12の運転状態や車両の走行状態を示す種々の検出値が取得され、エンジン12の運転状態を最適に維持する。
【0015】
例えば、アイドリング時であっても、冷蔵/冷凍庫2の冷却スイッチがオン操作され、コンプレッサ22が作動している場合は、エンジンコントローラ10は、冷蔵/冷凍庫制御部20からのトルク要求により、コンプレッサ22の負荷に応じたエンジン12の出力になるようにスロットル開度を制御する。また、冷蔵/冷凍庫2(コンプレッサ22)に割り当てるトルク要求値に応じて、ドライバのアクセル操作、すなわち、アクセルペダルセンサ11に割り当てられるトルク要求値を減少させることで、エンジン12の出力が走行と冷却に効率良く配分されるようにしている。
【0016】
(誤発進抑制制御)
以上のような基本構成を備えた冷蔵/冷凍車1は、誤発進抑制制御を実行するための誤発進抑制制御部30を備える。誤発進抑制制御部30は、障害物検出手段31に検出される障害物までの距離、車速センサ41(または車輪速センサ)に検出される車速、および、アクセルペダルセンサ11に検知されるアクセルペダルの踏込量を取得し、それらに基づいて誤発進抑制制御(エンジントルク抑制制御)の介入条件が成立するか否かを判定する。
【0017】
すなわち、車速センサ41に検出される車速が所定以下の低速域にあるかまたは停車している状態であり、かつ、障害物検出手段31に進行方向の所定距離内に障害物が検知されている状態において、アクセルペダルセンサ11に所定以上のアクセル踏込量が検出された場合に、誤発進抑制制御の介入条件成立と判断される。
【0018】
誤発進抑制制御の介入条件が成立した場合、アクセルペダルの踏込量(トルク要求)に拘わらず、エンジンコントローラ10は、誤発進抑制制御部30のトルク抑制指令に基づいてアクセル開度を制限し、エンジントルクを抑制する。
【0019】
なお、誤発進抑制制御部30には、上記以外に、加速度センサ42に検出される加速度、傾斜センサ43に検出される車両の傾斜(路面傾斜)、さらに、不図示のトランスミッション制御部の選択ギヤ段などの情報も取得される。
【0020】
例えば、傾斜センサ43に傾斜が検出されている場合は、その傾斜方向と傾斜度に応じて抑制すべきトルクダウン量を調整する。また、誤発進抑制制御の作動中に、選択ギヤ段が後退でないにも拘わらず加速度センサ42に後退方向の加速度が検出された場合は、ずり下がりと判定され、トルクダウン量が小さくなるように調整され、ずり下がりを防止するクリープトルクが維持浚えるようにする。なお、傾斜センサ43としては、重力加速度に基づいて冷蔵/冷凍車1の前後方向の傾斜を検知する傾斜センサ、加速度センサ、多軸慣性センサなどを利用可能である。
【0021】
障害物検出手段31は、図1に示すように、車両前方の障害物を検出する前方障害物センサ31aと、車両後方の障害物を検出する後方障害物センサ31bとを含み、トランスミッション制御部の選択ギヤ段情報に応じて、前進方向の誤発進抑制制御と、後退方向の誤発進抑制制御が選択的に実行されるように構成されることが好適である。
【0022】
障害物検出手段31としては、障害物の有無および障害物までの距離情報を取得可能な各種センサ、例えば超音波センサ、ミリ波レーダなどを好適に利用でき、ステレオカメラやLIDARを利用または併用することもできる。
【0023】
誤発進抑制制御部30は、以上のような制御を実行するための制御プログラムや設定データなどを格納するROM、演算処理結果を一時記憶するRAM、演算処理を行うCPU、通信I/Fなどからなるコンピュータ(ECU)で構成され、車載ネットワークを介して、各検出情報を取得可能である。
【0024】
ところで、冷蔵/冷凍車1は、冷蔵/冷凍庫2の設定温度により、あるいはドアの開閉後や冷却スイッチオン操作直後など冷却能力が要求される状況では、コンプレッサ22を高回転で駆動する必要があるため、冷蔵/冷凍庫制御部20からエンジンコントローラ10へのトルク要求値が増大する。そのため、コンプレッサ22の負荷によりエンジントルクが低下している状態で、誤発進抑制制御(エンジントルク抑制制御)が実行されると、エンジン12のトルクダウン量が大きくなり過ぎる虞がある。
【0025】
(改良された誤発進抑制制御)
そこで、本発明に係る冷蔵/冷凍車1の誤発進抑制制御部30は、誤発進抑制制御の介入条件成立時に、エンジンコントローラ10において冷蔵/冷凍庫1のコンプレッサ22に割り当てるトルク要求値を一定またはゼロにするように構成されている。以下、改良された誤発進抑制制御のいくつかの実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図3は、第1実施形態に係る誤発進抑制御を示すフローチャートである。誤発進抑制御は、冷蔵/冷凍車1のエンジン12が作動している状態で起動し(ステップ100)、誤発進抑制御部30は、車速センサ41(または車輪速センサ)に検出される車速、障害物検出手段31に検出される障害物までの距離、および、アクセルペダルセンサ11に検知されるアクセルペダルの踏込量を監視する(ステップ101)。
【0027】
車速が所定以下の低速域にあるかまたは停車している状態、かつ、進行方向の所定距離内に障害物が検知されている状態で、所定以上のアクセル踏込量が検出され、誤発進抑制制御の介入条件成立と判定された時に(ステップ101;YES)、冷蔵/冷凍庫2のコンプレッサ22が停止中(冷却オフ)であれば(ステップ102;NO)、誤発進抑制制御の終了条件が成立するまでコンプレッサ22の作動を禁止する(ステップ103)。
【0028】
一方、誤発進抑制制御の介入条件成立と判定された時に、冷蔵/冷凍庫2のコンプレッサ22が作動中(冷却オン)であれば(ステップ102;YES)、冷蔵/冷凍庫制御部20は、コンプレッサ22の電磁クラッチを遮断してコンプレッサ22を停止(冷却オフ)にする(ステップ105)。
【0029】
同時に、エンジンコントローラ10は、コンプレッサ22に割り当てるトルク要求値をゼロにしたうえで、傾斜センサ43に検出される傾斜度を必要に応じて参照してエンジン12のトルクダウン量を決定し、アクセル開度を制限してエンジントルクを抑制する。
【0030】
例えば、誤発進抑制制御部30において、誤発進抑制制御の介入条件成立と判定されると、誤発進抑制制御作動フラグがオンになり、エンジンコントローラ10が、コンプレッサ22に割り当てるトルク要求値をゼロにすることにより、冷蔵/冷凍庫制御部20がコンプレッサ22を停止するか、または、誤発進抑制制御作動フラグがオンになった場合に冷蔵/冷凍庫制御部20がコンプレッサ22を停止すると同時にエンジンコントローラ10へのトルク要求をゼロにする。
【0031】
誤発進抑制制御部30は、エンジンコントローラ10によるエンジントルク抑制制御(誤発進抑制制御)の作動中も誤発進抑制制御の介入条件の監視を継続しており、誤発進抑制制御作動フラグがオンの間は、コンプレッサ22に割り当てるトルク要求値がゼロに維持され、冷蔵/冷凍庫制御部20はコンプレッサ22を停止状態(冷却オフ)に維持する。
【0032】
その後、ドライバがアクセルペダルを戻すなど、誤発進抑制制御の介入条件が不成立となり、誤発進抑制制御の終了条件が成立した場合は(ステップ107;YES)、誤発進抑制制御作動フラグがオフになり、冷蔵/冷凍庫制御部20は電磁クラッチを接続してコンプレッサ22を作動状態(冷却オン)にする(ステップ109)。
【0033】
上記のような制御を実行することで、誤発進抑制制御の作動時における冷蔵/冷凍庫2の作動状態の如何に拘わらず、エンジンコントローラ10は、コンプレッサ22の負荷が存在しない状態で、車両の状態に基づいて適正なトルクダウン量を決定でき、的確な誤発進抑制制御を実行できる。その間、冷蔵/冷凍庫2の作動は停止されるが、短時間の停止であれば、冷却状態に大きな影響が及ぶこともない。誤発進抑制制御の発生頻度は少ないが優先度は高い実状に即した制御を低コストで実行できる利点がある。
【0034】
なお、誤発進抑制制御の介入条件が成立してコンプレッサ22の電磁クラッチが遮断された後、誤発進抑制制御の終了条件が成立した場合(ステップ107;YES)に、所定時間(第2の所定時間;1分程度)が経過してからコンプレッサ22の電磁クラッチが接続されるように構成されても良い。この構成により、コンプレッサへの負担を軽減し高寿命化できる利点がある。
【0035】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係る誤発進抑制御を示すフローチャートであり、基本的な流れは、第1実施形態と同様であるため、以下、変更点について説明する。
【0036】
上述した第1実施形態では、誤発進抑制制御の介入条件の成立時に冷蔵/冷凍庫2のコンプレッサ22が作動中(冷却オン)であれば(ステップ102;YES)、コンプレッサ22を直ちに停止(冷却オフ)にする場合を示したが、図4に示す第2実施形態では、誤発進抑制制御の介入条件の成立後、所定時間(第1の所定時間)の経過後に(ステップ104;YES)、エンジンコントローラ10は、コンプレッサ22に割り当てるトルク要求値をゼロにし、冷蔵/冷凍庫制御部20は、コンプレッサ22の電磁クラッチを遮断してコンプレッサ22を停止(冷却オフ)にする(ステップ105)。
【0037】
この場合、エンジンコントローラ10は、誤発進抑制制御の介入条件の成立時に、コンプレッサ22を作動状態に維持したまま(したがってコンプレッサ22のトルク要求(負荷)を考慮して)トルクダウン量を決定し、エンジントルク抑制制御を実行するので、所定時間が経過するまではトルクダウン量は少なくなる。
【0038】
その後、障害物に衝突しない程度(または車輪止めを乗り越えない程度)のタイミング(例えば0.5~2秒)で、コンプレッサ22に割り当てるトルク要求値をゼロにして、エンジントルクをさらに抑制することで、より強力な誤発進抑制制御に移行する。
【0039】
このような制御を行うことで、ドライバが所定時間経過までにアクセル・オフにするなど、誤発進抑制制御の終了条件が成立した場合は(ステップ108;YES)、その時点で誤発進抑制制御が終了し、冷蔵/冷凍庫2(コンプレッサ22)は作動状態(冷却オン)に維持される。したがって、冷蔵/冷凍庫2の冷却性能への影響を低減しつつ実用的な誤発進抑制を行える利点がある。
【0040】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態に係る誤発進抑制御を示すフローチャートであり、基本的な流れは、第1実施形態と同様であるため、以下、変更点について説明する。
【0041】
先述した第1実施形態では、誤発進抑制制御の介入条件の成立時に冷蔵/冷凍庫2のコンプレッサ22が作動中(冷却オン)であれば(ステップ102;YES)、コンプレッサ22を停止(冷却オフ)にする場合を示したが、図5に示す第3実施形態では、コンプレッサ22の電磁クラッチの接続は維持され、エンジンコントローラ10は、コンプレッサ22に割り当てるトルク要求値をゼロにする代わりに一定にして、冷蔵/冷凍庫2を定出力運転に移行させる(ステップ106)。
【0042】
この場合、エンジンコントローラ10は、誤発進抑制制御の介入条件の成立時に、コンプレッサ22を作動状態に維持したまま(したがってコンプレッサ22のトルク要求(負荷)を考慮して)トルクダウン量を決定し、エンジントルク抑制制御を実行するので、コンプレッサ22を停止する場合に比べてトルクダウン量は少なくなる。
【0043】
しかし、その後、誤発進抑制制御中に冷蔵/冷凍庫2の温度変化などで冷却要求があっても、コンプレッサ22に割り当てるトルク要求値は一定に維持されるので、冷却要求に起因したトルク変動は回避され、安定的な誤発進抑制制御を行える。
【0044】
また、誤発進抑制制御の作動中は、コンプレッサ22が低回転に維持されるものの、コンプレッサ22の作動は継続されるので、コンプレッサ22を停止する場合に比較して、冷蔵/冷凍庫2の冷却状態は良好に維持される利点もある。
【0045】
その後、ドライバのアクセル・オフなどで誤発進抑制制御の終了条件が成立した場合は(ステップ107;YES)、誤発進抑制制御作動フラグがオフになり、エンジンコントローラ10は、冷蔵/冷凍庫制御部20のトルク要求に従ってコンプレッサ22にトルク要求値を割り当てる通常運転に移行する(ステップ109)。
【0046】
(第4実施形態)
図6は、第4実施形態に係る誤発進抑制御を示すフローチャートであり、基本的な流れは、図4に示した第2実施形態と同様であるため、以下、変更点について説明する。
【0047】
第4実施形態に係る誤発進抑制御では、誤発進抑制制御の介入条件の成立時に冷蔵/冷凍庫2のコンプレッサ22が作動中(冷却オン)である場合に(ステップ102;YES)、障害物検出手段31に検出される障害物までの距離に応じて制御を切り替える。
【0048】
すなわち、障害物までの距離が所定値以上であれば(ステップ104;YES)、誤発進抑制制御の介入条件の成立後、所定時間(第1の所定時間)の計時を開始し、所定時間の経過後に(ステップ105;YES)、コンプレッサ22に割り当てるトルク要求値をゼロにしてコンプレッサ22を停止(冷却オフ)するか、または、コンプレッサ22に割り当てるトルク要求値を一定にして定出力運転に移行する(ステップ106)。
【0049】
この場合、エンジンコントローラ10は、誤発進抑制制御の介入条件の成立時に、コンプレッサ22を作動状態に維持したまま(コンプレッサ22のトルク要求(負荷)を考慮して)トルクダウン量を決定し、エンジントルク抑制制御を実行するので、所定時間が経過するまではトルクダウン量は少なくなる。
【0050】
その後、障害物に衝突しない程度(または車輪止めを乗り越えない程度)のタイミング(例えば0.5~2秒)で、コンプレッサ22に割り当てるトルク要求値をゼロにして、エンジントルクをさらに抑制し、より強力な誤発進抑制制御に移行する。
【0051】
また、ドライバが所定時間経過までにアクセル・オフにするなど、誤発進抑制制御の終了条件が成立した場合は(ステップ108;YES)、誤発進抑制制御が終了し、冷蔵/冷凍庫2(コンプレッサ22)が作動状態に維持される。
【0052】
一方、障害物までの距離が所定値未満であれば(ステップ104;NO)、誤発進抑制制御の介入条件の成立後、直ちにコンプレッサ22に割り当てるトルク要求値をゼロにしてコンプレッサ22を停止(冷却オフ)するか、または、コンプレッサ22に割り当てるトルク要求値を一定にして定出力運転に移行する(ステップ106)。
【0053】
上記のように、障害物までの距離に応じて冷蔵/冷凍庫2の制御を切り替えることで、誤発進による障害物との衝突を抑制しつつ、冷蔵/冷凍庫2の冷却性能への影響を低減できる。
【0054】
なお、上記所定時間(第1の所定時間)により冷凍庫作動時の誤発進抑制制御作動時のトルクを冷凍庫作動の影響によっても、ずり下がりの生じない程度に高めに設定することで、冷蔵/冷凍庫2のコンプレッサ22をむやみに停止しない、または保冷性能を落とさないようにすることができる。
【0055】
また、上記所定時間(第1の所定時間)は、障害物検出手段31に検出される障害物までの距離に応じて動的に設定されるように構成されても良い。すなわち、上記所定時間(第1の所定時間)は、障害物までの距離が大きいほど長く設定され、障害物までの距離が小さいほど短く設定されるようにすることで、誤発進抑制性能と冷却性能の両立を図るうえで有利である。
【0056】
以上、本発明のいくつかの実施形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいてさらに各種の変形および変更が可能であることを付言する。
【符号の説明】
【0057】
1 冷蔵/冷凍車
2 冷蔵/冷凍庫
10 エンジンコントローラ
11 アクセルペダルセンサ
12 エンジン
20 冷蔵/冷凍庫制御部
21 操作部
22 コンプレッサ
23 コンデンサ
24 レシーバドライヤ
25 エバポレータ
30 誤発進抑制制御部
31 障害物検出センサ
41 車速センサ
42 加速度センサ
43 傾斜センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6